説明

カバー付きコネクタ

【課題】ハウジング本体に対するカバーの装着開始時におけるカバーの傾きを一定の傾きに規制することで、カバーの挿入時にカバーの端子押し込み突片の先端部と端子金具の段差面との間の係り代が浅くなることを防止することができ、中途挿入状態の端子金具をカバーの挿入操作によって確実に正規の挿入完了位置に押し込むことができるカバー付きコネクタを提供すること。
【解決手段】ハウジング本体10の後端に装着されるカバー20がハウジング本体10内の中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む端子押し込み突片25を備え、カバー20のハウジング本体10への装着開始時には、ハウジング本体10のカバー案内リブ11の先端部に延設された装着方向規制突片12がカバー20のリブ係合溝21の幅狭溝部211に挿入されることで、カバー20の装着開始時におけるカバー20の傾きが一定の傾きに規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング本体の後端に装着されるカバーが、前記ハウジング本体内の中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む端子押し込み突片を備えて成るカバー付きコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図30及び図31は、下記特許文献1に開示されたカバー付きコネクタを示している。
このカバー付きコネクタ100は、複数の端子挿入孔(不図示)を備えるハウジング本体110と、端子挿入孔の後端から導出される電線を収容するようにハウジング本体110の後端110aに装着されるカバー120と、を備える。
【0003】
ハウジング本体110の端子挿入孔には、電線端に接続された端子金具が、図30に矢印X1で示すように後方から挿入される。矢印X1で示す方向は、前記端子挿入孔の貫通方向であり、以下、端子挿入方向と呼ぶ。
【0004】
ハウジング本体110は、カバー案内リブ111と、カバー係止部112と、を備える。
【0005】
カバー案内リブ111は、カバー120の装着時に当該カバー120を前記端子挿入方向(図30の矢印X1方向)に沿って誘導するための凸条で、ハウジング本体110の左右の両側壁113に突設されている。特許文献1の場合、カバー案内リブ111は、端子挿入方向に沿って直線状に延設されている。また、各側壁113には、2本のカバー案内リブ111が互いに平行に、上下に離間して配置されている。
【0006】
カバー係止部112は、ハウジング本体110に対してカバー120の装着が完了したときに、後述するカバー120のハウジング係合部122と係合してカバー120を固定する突起である。
【0007】
カバー120は、リブ係合溝121と、ハウジング係合部122と、端子押し込み突片123と、を備えている。
【0008】
リブ係合溝121は、カバー案内リブ111が挿入されることで、ハウジング本体110への装着時における当該カバー120の移動方向を規制する溝である。リブ係合溝121は、ハウジング本体110の側壁113の外面に重なるカバー外側壁124の内面に形成されている。リブ係合溝121は、前記端子挿入方向に沿う直線状に形成されている。
【0009】
ハウジング係合部122は、ハウジング本体110に対して正規の装着完了位置に到達したときにカバー係止部112と係合することで、当該カバー120をハウジング本体110に固定する凹みである。ハウジング係合部122は、カバー外側壁124の内面に形成されている。
【0010】
端子押し込み突片123は、当該カバー120のハウジング本体110への嵌合に伴って前記端子挿入孔に挿入されて、前記端子挿入孔内の中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む突片である。
【0011】
特許文献1における端子押し込み突片123は、端子挿入方向に平行な直線状に延出した先端部123aと、先端部123aを支える基端部123bと、を備えている。
【0012】
基端部123bは、先端部123aを前記端子金具に押し付けるために、傾斜して設けられている。
【0013】
端子押し込み突片123は、端子挿入孔に挿入された際に、端子金具の中間部に突出形成されている段差面(肩部)を先端部123aにより端子挿入方向に押圧することによって、中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2000−348810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところが、特許文献1に開示されたカバー付きコネクタ100の場合、ハウジング本体110に対するカバー120の装着開始時に、カバー120の傾きを規制する手段がなく、カバー120は先端部が図10に矢印R1で示す上向き、或いは矢印R2で示す下向きのいずれにも、傾いてしまう可能性がある。
【0016】
そして、カバー120の先端部(正確には、端子押し込み突片123の先端部123a)が矢印R1方向に振れた(傾いた)状態で、カバー120がハウジング本体110に挿入されると、端子押し込み突片123の先端部123aと端子金具の段差面との間の係り代が標準よりも浅くなってしまう。その結果、カバー120の挿入途中で端子押し込み突片123の先端部123aが端子金具の段差面から外れてしまって、中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に復旧させることができなくなるおそれがあった。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消することに係り、ハウジング本体に対するカバーの装着開始時におけるカバーの傾きを一定の傾きに規制することで、カバーの挿入時にカバーの端子押し込み突片の先端部と端子金具の段差面との間の係り代が浅くなることを防止することができ、中途挿入状態の端子金具をカバーの挿入操作によって確実に正規の挿入完了位置に押し込むことができるカバー付きコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の前述した目的は、下記の構成により達成される。
(1)電線端に接続された端子金具が後方から挿入される複数の端子挿入孔を備えるハウジング本体と、前記端子挿入孔の後端から導出される電線を収容するように前記ハウジング本体の後端に装着されるカバーと、を備え、
前記ハウジング本体は、側壁に突設されて前記カバーの装着時に前記カバーを前記端子金具の挿入方向に沿って誘導するためのカバー案内リブと、前記カバーの装着が完了したときに前記カバーと係合して前記カバーを固定するカバー係止部と、を備え、
前記カバーは、前記カバー案内リブが挿入されることで前記ハウジング本体への装着時における当該カバーの移動方向を規制するリブ係合溝と、前記ハウジング本体に対して正規の装着完了位置に到達したときに前記カバー係止部と係合することで当該カバーを前記ハウジング本体に固定するハウジング係合部と、当該カバーの前記ハウジング本体への装着に伴って前記端子挿入孔に挿入されて前記端子挿入孔内の中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む端子押し込み突片と、
を備えるカバー付きコネクタであって、
前記カバー案内リブは、前記リブ係合溝に最初に進入する先端部から前記端子金具の挿入方向に対して傾斜する方向に延出して設けられ、前記カバーの装着当初の傾きを前記端子金具に斜めに衝突する方向に規制する装着方向規制突片を備え、
前記リブ係合溝は、前記装着方向規制突片が通過するまで前記カバーの挿入方向を前記装着方向規制突片の傾斜方向に規制する幅狭溝部と、前記装着方向規制突片が前記幅狭溝部を通過する際に前記カバーの挿入方向を前記端子金具の挿入方向に一致する方向に転換するように前記幅狭溝部に連なって設けられた幅広溝部と、を備え、
前記端子押し込み突片は、前記装着方向規制突片が前記幅狭溝部を通過し終えたときには先端部が前記端子挿入孔の底面及び前記端子金具に所定の押圧接触状態となり、前記カバーが前記カバー案内リブの案内によって前記端子金具の挿入方向に沿って移動するときには、先端部が前記端子挿入孔の底面及び前記端子金具に押圧接触した状態で前記端子金具の挿入方向に進むように、寸法設定されていることを特徴とするカバー付きコネクタ。
【0019】
(2)前記リブ係合溝は、前記ハウジング本体に対して前記カバーが天地反転した向きで装着されるときには、前記装着方向規制突片が溝の内側面に干渉して前記装着方向規制突片が挿入できないように、寸法設定されていることを特徴とする上記(1)に記載のカバー付きコネクタ。
【0020】
上記(1)の構成によれば、ハウジング本体に対するカバーの装着開始時には、ハウジング本体上の装着方向規制突片がリブ係合溝の幅狭溝部に突入することで、カバーの装着開始時におけるカバーの傾きが一定の傾きに規制され、カバーの傾きに振れが生じることを防止することができる。そして、装着開始時において傾きが規制されたカバーの挿入方向は、着方向規制突片が幅狭溝部を通過するまでは、端子金具に斜めに衝突する方向となるため、端子押し込み突片の先端部を確実に端子挿入孔の底面及び端子金具に押圧接触させることができる。そして、着方向規制突片が幅狭溝部を通過して、カバーがカバー案内リブの案内によって端子金具の挿入方向に沿って移動するときには、先端が端子挿入孔の底面及び端子金具に押圧接触した状態のままで端子挿入方向に進む。
【0021】
従って、カバーの挿入時にカバーの端子押し込み突片の先端部と端子金具の段差面との間の係り代が浅くなることを防止することができ、中途挿入状態の端子金具をカバーの挿入操作によって確実に正規の挿入完了位置に押し込むことができる。
【0022】
上記(2)の構成によれば、端子押し込み突片が天地逆向きの状態では、装着方向規制突片が溝の内側面に干渉してしまい、装着方向規制突片を溝に挿入させることができない。従って、ハウジング本体に対してカバーが天地反転した誤った状態でハウジング本体に組み付けられることを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるカバー付きコネクタによれば、ハウジング本体に対するカバーの装着開始時には、ハウジング本体上の装着方向規制突片がリブ係合溝の幅狭溝部に突入することで、カバーの装着開始時におけるカバーの傾きが一定の傾きに規制され、カバーの傾きに振れが生じることを防止することができる。そして、装着開始時において傾きが規制されたカバーの挿入方向は、着方向規制突片が幅狭溝部を通過するまでは、端子金具に斜めに衝突する方向となるため、端子押し込み突片の先端部を確実に端子挿入孔の底面及び端子金具に押圧接触させることができる。そして、着方向規制突片が幅狭溝部を通過して、カバーがカバー案内リブの案内によって端子金具の挿入方向に沿って移動するときには、先端が端子挿入孔の底面及び端子金具に押圧接触した状態のままで端子挿入方向に進む。
【0024】
従って、カバーの挿入時にカバーの端子押し込み突片の先端部と端子金具の段差面との間の係り代が浅くなることを防止することができ、中途挿入状態の端子金具をカバーの挿入操作によって確実に正規の挿入完了位置に押し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るカバー付きコネクタの一実施形態の分解斜視図である。
【図2】図1に示したハウジング本体及びカバーの側面図である。
【図3】一実施形態のハウジング本体に収容される端子金具の斜視図である。
【図4】図2に示したカバーの正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】一実施形態のハウジング本体とカバーとの嵌合開始時の状態を示す斜視図である。
【図7】図6のB矢視図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】図8のD部拡大図である。
【図10】図7のE−E断面図である。
【図11】図10のF部拡大図である。
【図12】一実施形態のハウジング本体とカバーとの嵌合途中の状態を示す斜視図である。
【図13】図12のG矢視図である。
【図14】図13のH−H断面図である。
【図15】図14のI部拡大図である。
【図16】図13のJ−J断面図である。
【図17】図16のK部拡大図である。
【図18】一実施形態のハウジング本体とカバーとの嵌合完了状態の斜視図である。
【図19】図18のL矢視図である。
【図20】図19のM−M断面図である。
【図21】図20のN部拡大図である。
【図22】図19のO−O断面図である。
【図23】図22のP部拡大図である。
【図24】図19のQ−Q断面図である。
【図25】図24のR部拡大図である。
【図26】一実施形態のカバーが天地逆向きでハウジング本体に嵌合開始された状態の斜視図である。
【図27】図26のS矢視図である。
【図28】図27のT−T断面図である。
【図29】図28のU部の拡大図である。
【図30】従来のカバー付きコネクタのハウジング本体とカバーの組立前の状態の側面図である。
【図31】図30のカバー付きコネクタの組立状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るカバー付きコネクタの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1〜図29は本発明に係るカバー付きコネクタの一実施形態を示したもので、図1は一実施形態のカバー付きコネクタの分解斜視図、図2は図1に示したハウジング本体及びカバーの側面図、図3は一実施形態のハウジング本体に収容される端子金具の斜視図、図4は図2に示したカバーの正面図、図5は図4のA−A断面図である。また、図6は一実施形態のハウジング本体とカバーとの嵌合開始時の状態を示す斜視図、図7は図6のB矢視図、図8は図7のC−C断面図、図9は図8のD部拡大図、図10は図7のE−E断面図、図11は図10のF部拡大図、図12は一実施形態のハウジング本体とカバーとの嵌合途中の状態を示す斜視図、図13は図12のG矢視図、図14は図13のH−H断面図、図15は図14のI部拡大図、図16は図13のJ−J断面図、図17は図16のK部拡大図である。また、図18は一実施形態のハウジング本体とカバーとの嵌合完了状態の斜視図、図19は図18のL矢視図、図20は図19のM−M断面図、図21は図20のN部拡大図、図22は図19のO−O断面図、図23は図22のP部拡大図、図24は図19のQ−Q断面図、図25は図24のR部拡大図、図26は一実施形態のカバーが天地逆向きでハウジング本体に嵌合開始された状態の斜視図、図27は図26のS矢視図、図28は図27のT−T断面図、図29は図28のU部の拡大図である。
【0028】
この一実施形態のカバー付きコネクタ1は、図1及び図2に示すように、複数の端子挿入孔10aを備えるハウジング本体10と、ハウジング本体10の後端に装着されるカバー20と、を備える。ハウジング本体10の端子挿入孔10aには、図3に示すように電線30の端部に接続された端子金具40が、ハウジング本体10の後方から挿入される。
【0029】
図2に示す矢印X3方向は、ハウジング本体10への端子金具40の挿入方向で、以下の説明では、端子挿入方向と呼ぶ。
【0030】
本実施形態の場合、端子金具40は、電線30の端部の被覆部を把持する被覆把持部41と、電線30の導体部に圧着接続される導体加締め部42と、相手の端子金具の舌状片を嵌合接続可能な嵌合接続部43と、を備えている。また、嵌合接続部43と導体加締め部42との間には、後述する端子押し込み突片の先端部により押圧される段差面である肩部44が形成されている。肩部44は、端子底板40aよりも高さ方向(図3のZ2方向)に突出(起立)した垂直面に形成される。
【0031】
端子金具40が挿入される端子挿入孔10a内には、図23に示すように、端子金具40が正規の挿入完了位置まで挿入されたときに、嵌合接続部43の後端部43aに係合して端子金具40を抜け止めするランス10bが設けられている。
【0032】
ハウジング本体10は、カバー案内リブ11と、装着方向規制突片12と、カバー係止部13と、を備えている。
【0033】
カバー案内リブ11は、カバー20の装着時に当該カバー20を端子挿入方向(図2の矢印X3方向)に沿って誘導するための凸条で、ハウジング本体10の左右の両側壁15に突設されている。カバー案内リブ11は、端子挿入方向に沿って直線状に延設されている。また、各側壁15には、2本のカバー案内リブ11が互いに平行に、上下(図2の矢印Z3方向)に離間して配置されている。
【0034】
装着方向規制突片12は、1つの側壁15に平行に装備される一対のカバー案内リブ11の内の上側に位置するカバー案内リブ11の先端からハウジング後方に延出するように、カバー案内リブ11に一体形成されている。装着方向規制突片12は、一対のカバー案内リブ11の内の下側に位置するカバー案内リブ11には装備されていない。
【0035】
更に詳しく説明すると、装着方向規制突片12は、後述するリブ係合溝21に最初に進入するカバー案内リブ11の先端部(図2では右端部)から斜め後方に延出して設けられている。また、本実施形態における装着方向規制突片12は、図2に示すように、端子挿入方向に対して角度θだけ傾斜する方向に延出して設けられている。前述の角度θは、ハウジング本体10に対するカバー20の装着当初の傾きを端子金具40に斜めに衝突する方向に規制する角度である。
【0036】
カバー係止部13は、ハウジング本体10に対してカバー20の装着が完了したときに、図21に示すように後述するカバー20のハウジング係合部24と係合して、カバー20を固定する突起である。カバー係止部13は、側壁15の外面に突設されている。
【0037】
カバー20は、図1及び図2に示すように、端子挿入孔10aの後端から導出される電線30を収容するように、ハウジング本体10の後端に装着される。本実施形態におけるカバー20は、2種のリブ係合溝21,22と、ハウジング係合部24と、端子押し込み突片25と、を備えている。
【0038】
リブ係合溝21,22は、一対のカバー案内リブ11が挿入されることでハウジング本体10への装着時における当該カバー20の移動方向を規制する一対の溝である。リブ係合溝21,22は、ハウジング本体10の側壁15の外面に重なるカバー外側壁27の内面に形成されている。
【0039】
一方のリブ係合溝21は、先端に装着方向規制突片12を有したカバー案内リブ11用の溝である。このリブ係合溝21は、入口側となる幅狭溝部211と、該幅狭溝部211に連なる幅広溝部212とを備えている。
【0040】
幅狭溝部211は、図8及び図9に示すように、装着方向規制突片12が通過するまで、カバー20の挿入方向を装着方向規制突片12の傾斜方向(図8に示す端子挿入方向X4に対して角度θだけ傾斜した方向)に規制する。
【0041】
リブ係合溝21は、装着方向規制突片12が幅狭溝部211を通過する際に、カバー20の挿入方向を端子挿入方向に一致する方向に転換するように、幅狭溝部211に連なって設けられた幅広溝部212を備えている。幅広溝部212は、幅狭溝部211を通過した装着方向規制突片12が逃げ込めるように、幅狭溝部211よりも溝幅を拡げた溝である。
【0042】
本実施形態の場合、リブ係合溝21は、図26に示すようにハウジング本体10に対してカバー20が天地反転した向きで装着されるときには、装着方向規制突片12が幅広溝部212の内側面に干渉して装着方向規制突片12が幅狭溝部211を通過できないように、幅広溝部212が片側(図9において、矢印Y4側)に偏って(偏心して)形成されている。
【0043】
リブ係合溝21に並んで配置されたリブ係合溝22は、先端に装着方向規制突片12を有していないカバー案内リブ11用の溝である。このリブ係合溝22は、溝幅が、幅狭溝部211よりも広く、且つ、幅広溝部212よりも狭く設定されている。リブ係合溝22の溝幅は、端部に装着方向規制突片12を有していないカバー案内リブ11が、端子挿入方向に沿って円滑に摺動できるように、カバー案内リブ11の幅よりも僅かに大きく設定されている。
【0044】
ハウジング係合部24は、ハウジング本体10に対して正規の装着完了位置に到達したときにカバー係止部13と係合することで当該カバー20をハウジング本体10に固定する凹みである。ハウジング係合部24は、カバー外側壁27の内面に形成されている。
【0045】
端子押し込み突片25は、カバー20のハウジング本体10への装着に伴って端子挿入孔10aに挿入されて、端子挿入孔10a内の中途挿入状態の端子金具40を正規の挿入完了位置に押し込む突片である。
【0046】
この端子押し込み突片25は、端子挿入方向に平行な直線状に延出した先端部25aと、先端部25aを支える基端部25bと、を備えている。基端部25bは、先端部25aを端子金具40に押し付けるために、傾斜して設けられている。
【0047】
また、本実施形態の端子押し込み突片25は、装着方向規制突片12が幅狭溝部211を通過し終えたときには、図17に示すように、先端部25aが端子挿入孔10aの底面及び端子金具40の肩部44に所定の押圧接触状態となる。端子挿入孔10aの底面及び端子金具40の肩部44に押圧接触した先端部25aは、図17に矢印F1で示す方向の反力を受け、その反力で撓んだ状態で、端子金具40との接触を維持する。
【0048】
また、装着方向規制突片12が幅狭溝部211を通過し終えるときには、装着方向規制突片12を有しないカバー案内リブ11が、リブ係合溝22に嵌合し始める。装着方向規制突片12を有しないカバー案内リブ11がリブ係合溝22に挿入されることで、カバー20は、図16に矢印R5で示すように、ハウジング本体10への挿入方向を端子挿入方向に転換する拗り力が働く。
【0049】
更に、本実施形態における端子押し込み突片25は、カバー20がカバー案内リブ11の案内によって端子挿入方向に沿って移動するときには、先端部25aが端子挿入孔10aの底面及び端子金具40の肩部44に押圧接触した状態を保って端子挿入方向に進むように、先端部25a及び基端部25bが寸法設定されている。
【0050】
図6〜図11はカバー20がハウジング本体10の後端に嵌合装着される初期の状態を示している。そして、図12〜図17はハウジング本体10に対してカバー20が嵌合途中の状態を示し、図18〜図25はハウジング本体10に対してカバー20が嵌合完了した状態を示している。
【0051】
また、図26〜図29は、カバー20が天地反転した向きでハウジング本体10の後端に装着されるときの状態を示している。
【0052】
以上に説明した一実施形態のカバー付きコネクタ1の構成によれば、ハウジング本体10に対するカバー20の装着開始時には、図8及び図9に示すようにハウジング本体10上の装着方向規制突片12がリブ係合溝21の幅狭溝部211に突入することで、カバー20の装着開始時におけるカバー20の傾きが一定の傾きに規制され、カバー20の傾きに振れが生じることを防止することができる。
【0053】
そして、装着開始時において傾きが規制されたカバー20の挿入方向は、装着方向規制突片12が幅狭溝部211を通過するまでは、図8に示したように端子挿入方向に対して角度θだけ傾斜した方向で、端子金具40に斜めに衝突する方向となるため、図11及び図17に示すように端子押し込み突片25の先端部25aを確実に端子挿入孔10aの底面及び端子金具40の肩部44に押圧接触させることができる。
【0054】
そして、装着方向規制突片12が幅狭溝部211を通過して、カバー20がカバー案内リブ11の案内によって端子挿入方向に沿って移動するときには、先端部25aが端子挿入孔10aの底面及び端子金具40の肩部44に押圧接触した状態のままで端子挿入方向に進む。
【0055】
従って、カバー20の挿入時にカバー20の端子押し込み突片25の先端部25aと端子金具40の肩部44との間の係り代が浅くなることを防止することができ、中途挿入状態の端子金具40をカバー20の挿入操作によって確実に正規の挿入完了位置に押し込むことができ、図23に示したように端子金具40がランス10bにより抜け止めされた状態を得ることができる。
【0056】
また、カバー付きコネクタ1の構成によれば、リブ係合溝21における幅広溝部212の配置が片側に偏って(偏心して)形成されていて、端子押し込み突片25が天地逆向きの状態ではリブ係合溝21に挿通させることができない。しかも、ハウジング本体10に対してカバー20が天地反転した向きで装着されるときには、図28及び図29に示すように、装着方向規制突片12が当該装着方向規制突片12の挿通を想定していないリブ係合溝22に挿入されるようになる。
【0057】
そのため、図29に示すように、装着方向規制突片12がリブ係合溝22の内側面に干渉して、装着方向規制突片12を溝に挿通させることができない。従って、カバー20が、天地反転させた誤った状態でハウジング本体10に組み付けられることを防止することができる。
【0058】
なお、本発明のカバー付きコネクタは、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0059】
例えば、ハウジング本体の側面に配置するカバー案内リブの数量等は、前述した実施形態に限らず、単一、又は3以上装備した構成とすることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 カバー付きコネクタ
10 ハウジング本体
11 カバー案内リブ
12 装着方向規制突片
15 側壁
20 カバー
21 リブ係合溝
22 リブ係合溝
25 端子押し込み突片
25a 先端部
30 電線
40 端子金具
44 肩部
211 幅狭溝部
212 幅広溝部
θ 角度(傾斜角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線端に接続された端子金具が後方から挿入される複数の端子挿入孔を備えるハウジング本体と、前記端子挿入孔の後端から導出される電線を収容するように前記ハウジング本体の後端に装着されるカバーと、を備え、
前記ハウジング本体は、側壁に突設されて前記カバーの装着時に前記カバーを前記端子金具の挿入方向に沿って誘導するためのカバー案内リブと、前記カバーの装着が完了したときに前記カバーと係合して前記カバーを固定するカバー係止部と、を備え、
前記カバーは、前記カバー案内リブが挿入されることで前記ハウジング本体への装着時における当該カバーの移動方向を規制するリブ係合溝と、前記ハウジング本体に対して正規の装着完了位置に到達したときに前記カバー係止部と係合することで当該カバーを前記ハウジング本体に固定するハウジング係合部と、当該カバーの前記ハウジング本体への装着に伴って前記端子挿入孔に挿入されて前記端子挿入孔内の中途挿入状態の端子金具を正規の挿入完了位置に押し込む端子押し込み突片と、
を備えるカバー付きコネクタであって、
前記カバー案内リブは、前記リブ係合溝に最初に進入する先端部から前記端子金具の挿入方向に対して傾斜する方向に延出して設けられ、前記カバーの装着当初の傾きを前記端子金具に斜めに衝突する方向に規制する装着方向規制突片を備え、
前記リブ係合溝は、前記装着方向規制突片が通過するまで前記カバーの挿入方向を前記装着方向規制突片の傾斜方向に規制する幅狭溝部と、前記装着方向規制突片が前記幅狭溝部を通過する際に前記カバーの挿入方向を前記端子金具の挿入方向に一致する方向に転換するように前記幅狭溝部に連なって設けられた幅広溝部と、を備え、
前記端子押し込み突片は、前記装着方向規制突片が前記幅狭溝部を通過し終えたときには先端部が前記端子挿入孔の底面及び前記端子金具に所定の押圧接触状態となり、前記カバーが前記カバー案内リブの案内によって前記端子金具の挿入方向に沿って移動するときには、先端部が前記端子挿入孔の底面及び前記端子金具に押圧接触した状態で前記端子金具の挿入方向に進むように、寸法設定されていることを特徴とするカバー付きコネクタ。
【請求項2】
前記リブ係合溝は、前記ハウジング本体に対して前記カバーが天地反転した向きで装着されるときには、前記装着方向規制突片が溝の内側面に干渉して前記装着方向規制突片が挿入できないように、寸法設定されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー付きコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−101876(P2013−101876A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245595(P2011−245595)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】