説明

カプセル化物及びその製造方法並びにインク組成物

【課題】芯物質を被覆する壁材の強度が高く耐溶剤性に優れたカプセル化物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】表面に電荷を有する芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆され、該ポリマーが下記(I)〜(IV)を有するカプセル化物。(I)上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。(II)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。(III)構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。(IV)上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物質及び有機物質のカプセル化物、特にこれらの物質のナノオーダーでのカプセル化物の製造方法並びにインク組成物に関する。特に、内包物の長期にわたる安定的な保持や機能の付与や高性能が望まれる様々な産業・技術分野において、これらの機能を効果的に発揮することのできるカプセル化物、カプセル化物の製造方法およびインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの産業・技術分野で各種物質のカプセル化が行われている。印刷、塗料、インク業界では、顔料や色素等を芯(コア)物質とするカプセル化が数多く実用化されている。また、医薬、農薬分野では、効力増強や毒性軽減、安定性付与、効果の遅延等を目的として薬物を芯物質とするカプセル化が数多く試みられている。カプセル化方法としては、一般に相分離法(コアセルベーション法)、液中乾燥法(界面沈澱法)、スプレードライイング法、パンコーティング法、液中硬化被覆法、界面重合法、界面無機反応法、In-situ重合法等が知られている。しかしながら、これらの方法では、芯物質が限定される、芯物質を被覆するシェル層(壁材)の厚みを自由に設計しにくい、芯物質一個をカプセル化することが難しい、カプセル表面の官能基を自由に設計することが難しい、均一な表面状態を有する粒子を製造することが容易でない、ナノオーダーでのカプセル化が容易でない、比較的不安定な化合物へ適用しにくい、製剤製造時に使用する溶媒が製品へ混入しやすい、あるいは得られるカプセルの性状が満足できない等の問題があり、また得られるカプセル化物自体にも用途によっては課題があった。
【0003】
また、In-situ重合法や界面重合法を用いてコア物質をポリマーで内包した場合、溶媒あるいは界面活性剤等によって該ポリマーが膨潤または溶解し、内包されたコア物質の一部が放出されることがあり、溶媒あるいは界面活性剤の存在下においても安定的にコア物質を内包する必要のある用途においては課題があった。この課題を解決する方法としては架橋剤の使用があるが、例えば、印刷、塗装、捺染のように色材である顔料の基材への定着が要求される分野においては、定着性が低下してしまうという課題があった。
【0004】
また、微細なノズルヘッドからインク液滴を吐出して、文字や図形を紙などの記録媒体の表面に記録するインクジェット記録方法において、最近では、耐水性や耐光性に優れるという理由から顔料を水中に分散させた水系顔料インクが使用されてきている。このような水系顔料インクには、一般的には界面活性剤や高分子分散剤等の分散剤を用いて顔料を水性分散媒中に分散させたものが使用されることが多い。そして、インクジェットインクとして好ましい特性を確保するためにインク組成においては調節すべき点が多い。例えば、高い印字濃度を得るために顔料の含有量を増したり、定着性や耐擦性を得るために水溶性高分子や高分子微粒子を添加したりすることが行われるが、上記のように分散剤を用いて顔料粒子を分散した場合の多くは、粘度が高くなるとともに非ニュートン流動を示すため、吐出性が悪化し、極端な場合は吐出しないという問題を生じた。
【0005】
さらに、これらの水系顔料インクにおいては、分散剤が顔料粒子表面に単に吸着しているだけであり、強い剪断力が顔料粒子に加わるようなインクジェット記録方法では、顔料粒子表面に吸着していた分散剤が離脱してしまい、これによって、顔料インクの分散性が低下し、吐出安定性(記録ヘッドから一定方向に安定して吐出される特性)が悪化することがある。また、分散剤で顔料粒子を分散させた水系顔料インクにおいては、インクを構成する水溶性有機溶媒や界面活性剤によって、これらの分散剤の脱着が起こりやすく、長期間保存した場合にも分散が不安定となりやすい。
【0006】
一方、上記水系顔料インクの如き粒子分散系インクジェットインクにおいて、該インクに含まれる顔料粒子の記録媒体に対する定着性を向上させる目的で、色材粒子がポリマーで被覆されたカプセル化物を使用する技術が知られている。このようなカプセル化物として、例えば、顔料粒子をカプセル化したもの(例えば、特許文献1、2、3参照)や、顔料粒子の表面にポリマーをグラフト重合したもの(例えば、特許文献4〜7参照)が提案されている。また特許文献8には、両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性粉体をカプセル化する方法が提案されているが、カプセル化にあたり、予め重合したポリマーを用いるとカプセル化後の粒子径が大きくなりすぎるという問題があった。
【0007】
カプセル化物に関しては、上記の提案の他に、転相乳化法によって室温で皮膜形成可能な樹脂で被覆された顔料を用いたインク(例えば、特許文献9〜17参照)や、酸析法によってアニオン性基含有有機高分子化合物で被覆された顔料を用いたインク(例えば、特許文献18〜27参照)、あるいは転相乳化法によってポリマー微粒子と色材を含浸させてなるポリマーエマルションを用いたインク(例えば、特許文献28〜33参照)が提案されている。しかしながら、転相乳化法や酸析法によって得られた色材(顔料粒子)をインクジェットインクに用いた場合、インクに用いられる浸透剤等の有機溶媒の種類によっては、色材に吸着されたポリマーの脱離が起きてインク中に溶解することがあり、インクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等が十分でないという問題があった。また、転相乳化法においては、その製造過程で使用される有機溶剤の残留によって、インクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等に変動が生じたり、プリンタのプラスチック部材の侵食等が生じたりすることがあった。また、転相乳化法においては、あらゆる顔料に対して同一のポリマーで安定した分散性を得ることは難しく、それぞれの顔料に適するポリマーを選択する必要があるという課題がある。また、転相乳化法においては、ポリマーの顔料への吸着性を十分に確保するためにはポリマーの構造や酸価を低くすることで疎水性を高める必要があるが、それによって親水性が低下するため水性媒体中での分散性が低下するという課題がある。このポリマーの顔料への吸着性と顔料の水性媒体への分散性を両立した状態では、顔料に吸着していない半溶解状態のポリマーが水性媒体中に存在しており、例えば、捺染に使用した場合では、洗濯堅牢性に劣るという問題があった。これを、防止するための架橋剤による架橋構造の導入が難しいという課題がある。また、転相乳化法は転相のために多量の有機溶剤を使用することから、有機溶剤の除去とその回収のために多くのエネルギーを必要とするといった課題もある。転相乳化法や酸析法によって得られた色材をインクジェットインクに使用した場合、該色材をあらゆる水溶性有機溶媒や界面活性剤に対して耐溶剤性を得ることは容易ではなく、インク中に含まれる浸透剤等の有機溶媒や界面活性剤によっては顔料に吸着していたポリマーの脱離が起きてインク中に溶解または分散することがあり、十分なインクの分散安定性や吐出安定性、画像品質等が得られない場合や目詰まりが起きやすくなる場合などもある。
【0008】
【特許文献1】特公平7−94634号公報
【特許文献2】特開平8−59715号公報
【特許文献3】特開2003−306661号公報
【特許文献4】特開平5−339516号公報
【特許文献5】特開平8−302227号公報
【特許文献6】特開平8−302228号公報
【特許文献7】特開平8−81647号公報
【特許文献8】特開平5−320276号公報
【特許文献9】特開平8−218015号公報
【特許文献10】特開平8−295837号公報
【特許文献11】特開平9−3376号公報
【特許文献12】特開平8−183920号公報
【特許文献13】特開平10−46075号公報
【特許文献14】特開平10−292143号公報
【特許文献15】特開平11−80633号公報
【特許文献16】特開平11−349870号公報
【特許文献17】特開2000−7961号公報
【特許文献18】特開平9−31360号公報
【特許文献19】特開平9−217019号公報
【特許文献20】特開平9−316353号公報
【特許文献21】特開平9−104834号公報
【特許文献22】特開平9−151342号公報
【特許文献23】特開平10−140065号公報
【特許文献24】特開平11−152424号公報
【特許文献25】特開平11−166145号公報
【特許文献26】特開平11−199783号公報
【特許文献27】特開平11−209672号公報
【特許文献28】特開平9−286939号公報
【特許文献29】特開2000−44852号公報
【特許文献30】特開2000−53897号公報
【特許文献31】特開2000−53898号公報
【特許文献32】特開2000−53899号公報
【特許文献33】特開2000−53900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたカプセル化物において、該壁材のポリマーが機械的に強靭で、かつ、溶媒や界面活性剤の存在下においても内包されたコア物質の放出がなく化学的に非常に安定であって、必要に応じて十分な塗膜形成能(成膜性)をも付加することができる、インクジェット記録の分野をはじめ、特に内包物を長期にわたり安定的に保持することが望まれる様々な産業・技術分野において様々な機能を効果的に発揮することのできるカプセル化物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、以下の通りの技術的構成を見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
[適用例1]表面に電荷を有する芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆され、該ポリマーが下記(I)〜(IV)を有することを特徴とするカプセル化物。
(I)上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(II)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(III)構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(IV)上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位。
【0012】
[適用例2]上記架橋性モノマーが、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする[適用例1]に記載のカプセル化物。
【0013】
【化1】

【0014】
[適用例3]上記架橋性モノマーが、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする[適用例1]に記載のカプセル化物。
【0015】
【化2】

【0016】
[適用例4]上記架橋性モノマーが、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする[適用例1]に記載のカプセル化物。
【0017】
【化3】

【0018】
[適用例5]上記芯物質が色材である上記[適用例1]乃至[適用例4]のいずれか一項に記載のカプセル化物。
【0019】
[適用例6]表面に電荷を有する芯物質が、ポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたカプセル化物の製造方法であって、(1)下記工程1、工程2a、工程3a及び工程4aを有するか、又は(2)下記工程1、工程2b、工程3b及び工程4bを有することを特徴とするカプセル化物の製造方法。
工程1:上記芯物質を含む水性溶媒に、該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有するイオン性モノマーを添加・混合し、該芯物質の表面に第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーを吸着させる工程。
工程2a:上記工程1を経た混合液に疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーを添加・混合する工程。
工程3a:上記工程2aを経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を添加・混合する工程。
工程4a:上記工程3aを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤とを重合して上記ポリマーを形成する工程。
工程2b:上記工程1を経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を、添加・混合する工程。
工程3b:上記工程2bを経た混合液に疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーを添加・混合する工程。
工程4b:上記工程3bを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤と疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーとを重合して上記ポリマーを形成する工程。
【0020】
[適用例7]上記(1)及び/又は(2)の工程1において、上記水性分散液に該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーを添加・混合した後、該水性分散液に超音波を照射することを特徴とする[適用例6]に記載のカプセル化物の製造方法。
【0021】
[適用例8][適用例1]乃至[適用例5]のいずれか一項に記載のカプセル化物を含有することを特徴とするインク組成物。
【0022】
本発明のカプセル化物によれば、芯物質を被覆する壁材のポリマーが強靭で、かつ、溶媒や界面活性剤の存在下においても内包されたコア物質の放出がなく、必要に応じて十分な塗膜形成能(成膜性)をも付加することができ、インクジェット記録の分野をはじめ、特に内包物を長期にわたり安定的に保持することが望まれる様々な産業・技術分野において、様々な機能を効果的に発揮することができる高機能材料として使用することができる。
【0023】
また、本発明のカプセル化物の製造方法によれば、上記の特長を有するカプセル化物を好適に製造することができる。特に、上記架橋性モノマーの作用により、本発明のカプセル化物の製造方法では、イオン性重合性界面活性剤やイオン性モノマー等のモノマー成分のポリマーへの転化が促進されるので、カプセル化物を効率良く製造することができる。
【0024】
より具体的には、本発明によれば、下記(イ)〜(ル)の全てを満足するカプセル化物を提供することができる。
(イ)芯物質が限定されない。即ち、本発明では、芯物質として無機物粒子、有機物粒子、ポリマー粒子等が使用可能であり、無機物、有機物を問わない。
(ロ)壁材(芯物質の被覆層)の厚みを自由に設計できる。
(ハ)芯物質一個をカプセル化できる。
(ニ)芯物質と壁材とでその機能を分離することができる。従って、カプセル化物の設計自由度が高く、用途に適した高機能なカプセル化物が得られる。
(ホ)均一な表面状態を有する粒子を製造することができる。
(ヘ)ナノオーダーでのカプセル化が容易である。
(ト)均一な粒子径を有する粒子を製造することができる。
(チ)環境に対して優しい。即ち、本発明の製造方法は、生体に対して有害な有機溶剤を使用しない、水系での反応によって実施可能であるため、環境に悪影響を及ぼすおそれが少ない。
(リ)毒性などのある芯物質のカプセル化によって低毒化又は無害化が可能である。
(ヌ)溶媒や界面活性剤の存在下においても内包されたコア物質の放出がされにくく、内包物を長期にわたり安定的に保持することができる。
(ル)必要に応じて十分な塗膜形成能(成膜性)をも付加することができる。
【0025】
また、本発明のカプセル化物の製造方法によって得られたカプセル化物は、インクの色材として特に有用であり、下記(i)〜(vi)の効果を奏する。
(i)インク用の色材として用いた場合、水性分散液中における分散安定性に特に優れる。
(ii)内包された色材が放出されない。
(iii)インクとしたとき、画像の堅牢性に特に優れた記録物を得ることができる。
(iv)必要に応じて十分な塗膜形成能(成膜性)をも付加することができ、耐擦性に優れた記録物を得ることができる。
(v)インクジェット記録用インクとしたとき、記録ヘッドからの吐出安定性に優れる。
(vi)インクジェット記録用インクとしたとき、画像品質に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のカプセル化物及びその製造方法について詳細に説明する。
【0027】
本発明のカプセル化物は、表面に電荷を有する芯物質がポリマーからなる壁材によって被覆され、該ポリマーが下記(I)〜(IV)を有することを特徴とする。
(I)上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(II)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(III)構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(IV)上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位。
【0028】
上記架橋性モノマーは、特に、上記一般式(1)で表される化合物が好ましい。上記架橋性モノマーは、上記一般式(2)で表される化合物、または、上記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0029】
上記ポリマーにおける上記(I)の繰り返し構造単位の含有量は、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤」、及び/又は、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマー」が芯物質表面のイオン性基の総モル数(即ち、用いた芯物質1gの芯物質表面に存在するイオン性基量[mol/g])に対して、0.5倍モル〜2倍モルの範囲であることが好ましく、更に0.8倍モル〜1.2倍モルの範囲であることが好ましい。0.5倍モル〜2倍モルの範囲においては、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤」、及び/又は、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマー」のイオン性基との間の静電相互作用が好適な状態となり、芯物質が「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤」、及び/又は、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマー」で好適に覆われることで疎水性となり、アドミセルの形成が容易となる。特に0.8倍モル〜1.2倍モルの範囲はより好適な状態が得られ、高収率でカプセル化物を得ることができる。
【0030】
上記ポリマーにおける上記(II)の繰り返し構造単位の含有量は、目的とするカプセル化物の壁材の厚みに応じて決定することができる。具体的には、目的とするカプセル化物の壁材の厚みを得るのに必要な疎水性モノマーの添加量を芯物質に対する疎水性モノマーの体積比と芯物質の平均粒子径とから求めて決定することができる。すなわち、本発明においては、反応系に添加された疎水性モノマーの量に比例した壁材の厚みを得ることが可能であり、従来のカプセル化法では得られなかった壁材(芯物質の被覆層)の厚みを自由に設計できることから、目的のカプセル化物の粒子径を自由に設計することができる。また、本発明においては、壁材の厚みとともに上記(II)の繰り返し構造単位の含有量によって、壁材の機械的特性や塗膜形成能(成膜性)を自由に制御することもできる。尚、本発明においては、通常、疎水性モノマー以外の他の重合成分(イオン性重合性界面活性剤、イオン性モノマー)は、疎水性モノマーに比して反応系に添加される量が圧倒的に少ないため、壁材の厚みは、反応系におけるこれら他の重合成分の多少によっては実質的に影響されない。
【0031】
上記ポリマーにおける上記(III)の繰り返し構造単位の含有量は、上記ポリマーに構成単位として含まれる全モノマーに対して、好ましくは0.01重量%〜15重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜10重量%である。上記(III)の繰り返し構造単位の含有量が0.01重量%未満では壁材が溶媒や界面活性剤等によって溶出または膨潤が起こり内包された芯物質が壁材から放出される恐れがあるなど化学的な安定が得にくく、また壁材の強度を十分に高めることができない恐れがある。逆に15重量%超では壁材の硬度は非常に高まるが塗膜が脆くなり強靭性に劣るようになり、また、成膜し難くなることが多いといった恐れがある。特に、カプセル化物にさらに良好な成膜性(塗膜形成能)を求める場合は、上記(II)の繰り返し構造単位の構成と含有量と共に、上記(III)の繰り返し構造単位の含有量を最適にすることが必要であり、好ましくは、0.01重量%〜5重量%、さらに充分な化学的な安定性を確保するには、0.1重量%〜5重量%の範囲が好ましい。
【0032】
上記ポリマーにおける上記(IV)の繰り返し構造単位の含有量は、上記(I)の繰り返し構造単位の含有量の0.1倍〜1.5倍であることが好ましく、さらに好ましくは0.4倍〜1.0倍である。上記(I)の繰り返し構造単位の含有量が0.1倍未満では凝集しやすくなり、水性媒体中への分散性が劣るおそれがある。逆に、1.5倍を超えるとカプセル化効率が低下して、芯物質を含まないポリマー粒子の生成が増す。0.4倍〜1.0倍の範囲は特に好適な状態が得られ、高収率でカプセル化物を得ることができる。
【0033】
斯かるカプセル化物は、該壁材のポリマーが機械的に強靭で、かつ、溶媒や界面活性剤の存在下においても内包されたコア物質の放出がない化学的に非常に安定であって、必要に応じて十分な塗膜形成能(成膜性)をも付加することができる、インクジェット記録の分野をはじめ、特に内包物を長期にわたり安定的に保持することが望まれる様々な産業・技術分野において様々な機能を効果的に発揮することができる。
【0034】
このようなカプセル化物は、下記工程1、工程2a、工程3a及び工程4aを有するか、又は、下記工程1、工程2b、工程3b及び工程4bを有するカプセル化物の製造方法により好適に製造できる。
【0035】
工程1:上記芯物質を含む水性溶媒に、該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有するイオン性モノマーを添加・混合し、該芯物質の表面に第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーを吸着させる工程。
【0036】
工程2a:上記工程1を経た混合液に疎水性モノマーと上記構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーを添加・混合する工程。
【0037】
工程3a:上記工程2aを経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を添加・混合する工程。
【0038】
工程4a:上記工程3aを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと疎水性モノマーと上記構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤とを重合して上記ポリマーを形成する工程。
【0039】
工程2b:上記工程1を経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を、添加・混合する工程。
【0040】
工程3b:上記工程2bを経た混合液に疎水性モノマーと上記構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーを添加・混合する工程。
【0041】
工程4b:上記工程3bを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤と疎水性モノマーと上記構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーとを重合して上記ポリマーを形成する工程。
【0042】
上記のカプセル化物の製造方法によれば、表面に電荷を有する芯物質上に芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーのイオン性基によって静電的に結合し、第1のイオン性重合性界面活性剤の疎水性基及び重合性基もしくは第1のイオン性モノマーの重合性基と芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤の疎水性基と重合性基が相対して形成される疎水相に構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する上記一般式の構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマー及び/又は疎水性モノマーが包含され、特に上記一般式の架橋性モノマーはその構造にポリエチレンオキサイド基等の親水性基を有することから外郭側に配位し、最外郭に第2のイオン性重合性界面活性剤のイオン性基および/または親水性基が水相に向かって配向されたアドミセル(admicell)が形成され、このように高度に制御された状態で重合反応を行うことによって、高度に構造が制御された状態でポリマーに転化することができる。こうして製造される本発明のカプセル化物は、極めて高精度に構造が制御されたものとなる。
【0043】
さらに詳細に図1を用いて説明をする。ただし、図1ならびにその説明は上記の説明を補足するためのものであって、これらによって本発明は拘束されない。図1は、本発明のカプセル化物の製造過程で形成される上記アドミセルの一例を示す模式図である。上記の「表面に電荷を有する芯物質」はアニオン性基21と疎水性基22とを有するアニオン性界面活性剤2が吸着して構成されたもので水を主成分とする溶媒(水性溶媒)中に分散している。この「表面に電荷を有する芯物質」に対して反対荷電を有するカチオン性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤3(第1のイオン性モノマー及び/又は第1のイオン性重合性界面活性剤)が、そのカチオン性基31を静電相互作用によって芯物質1に吸着したアニオン性界面活性剤2のアニオン性基21に相対して配置されてイオン性の強い結合で吸着する。そして、このカチオン性モノマー及び/又はカチオン性重合性界面活性剤3の疎水性基32及び重合性基33に対して、アニオン性重合性界面活性剤4(第2のイオン性重合性界面活性剤)の疎水性基42及び重合性基43が疎水性相互作用によって相対し、その間に形成される疎水層に上記一般式で示される構造中に重合性基71と疎水性基73と親水性基72とを有する架橋性モノマーと疎水性モノマー5を含んで、アニオン性重合性界面活性剤4のアニオン性基41が水性溶媒の存在する方向に配向する。このとき、疎水性モノマー5はより芯物質側に、構造中に重合性基71と疎水性基73と親水性基72とを有する架橋性モノマー7はより水相側に配置する。
【0044】
この図1に示されるアドミセルが存在する水性溶媒に重合開始剤を加え、これを活性化してアドミセルを構成する重合性成分を重合することによって芯物質1をポリマーで被覆した本発明のカプセル化物を得ることができる。
【0045】
上記の本発明のカプセル化物は、上記アドミセルの形成を経て製造されることによって、最表面にアニオン性重合性界面活性剤に由来するアニオン性基21が水相に向いて密に配向した層を形成し、その層の内側に上記一般式で示される構造中に重合性基71と疎水性基73と親水性基72とを有する架橋性モノマーから構成される架橋構造が水相側を密にカプセル粒子中心に向かって徐々に疎になるグラデーションを構成し、それとは逆に疎水性モノマー5に誘導される繰り返し構造の比率がカプセル化粒子の中心側から水相側に向かって徐々に小さくなっているものと推定される。従って、本発明のカプセル化物は、水性媒体中での分散安定性に特に優れるとともに、溶媒や界面活性剤の存在下においても内包されたコア物質の放出が起こらずに化学的に非常に安定な状態を維持することができ、機械的強度も非常に強靭であって、さらに十分な成膜性(塗膜形成能)をも有したものとなることから、上記(イ)〜(ル)及び上記(i)〜(vi)の全てを満足し得るものである。なお、一般的な架橋剤を使用した場合は成膜性(塗膜形成能)が低下する傾向がある。
【0046】
尚、上記のカプセル化物の製造方法、即ち、「芯物質の水性分散液中にて、第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと、第2のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第2のイオン性モノマーと、架橋性モノマーとが該芯物質上でアドミセルを形成した後に、該水性分散液中に重合開始剤を添加する工程を有するカプセル化物の製造方法」以外の他のカプセル化物の製造方法、例えば転相乳化法や酸析法等では、上記(イ)〜(ル)及び上記(i)〜(vi)の全てを満足し得るカプセル化物は得られない。その理由は定かではないが、転相乳化法や酸析法等では、芯物質を被覆する被覆層として、予め作製されたポリマーを用いるため、芯物質に対する被覆層の被覆状態が完全ではない(芯物質が被覆層によって完全には被覆されていない)ためと推察される。
【0047】
以下に、本発明のカプセル化物の製造に用いられる各種原料について説明する。
【0048】
[芯物質]
本発明に用いられる芯物質としては、特に限定されず、色材、無機物、有機物、無機有機複合粒子、無機コロイド、ポリマー粒子、金属酸化物(シリカ、チタニア等)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。有機物として、例えば危険な薬品等の使用を意図した場合でも、本発明に係るカプセル化物は、そのような危険な薬品等の取り扱い性を良くする等の効果を奏する。無機有機複合粒子のカプセル化物は、樹脂成型体等の充填材として用いられることにより、その成型体の特性を向上させることができる。無機コロイドのカプセル化物は、透明性の高いハードコート層に使用できる。色材としては、所望の色を発色し得る無機顔料や有機顔料等の顔料、分散染料や油溶性染料等の水に不溶又は難溶の染料(水不溶性染料)を挙げることができる。色材を芯物質としてカプセル化物を製造した場合、該カプセル化物は、塗料や顔料インク、トナー等の着色剤として使用することができる。
【0049】
芯物質として使用可能な無機顔料(色材)としては、ファーネスブラック,ランブブラック,アセチレンブラック,チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、あるいは、酸化鉄顔料等を挙げることができる。
【0050】
また、芯物質として使用可能な有機顔料(色材)としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などを含む。)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、又はキノフラノン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート又は酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、又はアニリンブラック等を挙げることができる。
【0051】
更に詳しくは、ブラック用として使用される無機顔料として、以下のカーボンブラック、例えば、三菱化学製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、又はNo2200B等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、又はRaven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、又はMonarch 1400等;あるいは、デグッサ社製のColor Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、又はSpecial Black 4等を挙げることができる。
また、ブラック用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を挙げることができる。
【0052】
イエロー有機顔料としては、C.I.Pigment Yellow 1, C.I.Pigment Yellow 2, C.I.Pigment Yellow 3, C.I.Pigment Yellow 4, C.I.Pigment Yellow 5, C.I.Pigment Yellow 6, C.I.Pigment Yellow 7, C.I.Pigment Yellow 10, C.I.Pigment Yellow 11,C.I.Pigment Yellow 12, C.I.Pigment Yellow 13, C.I.Pigment Yellow 14, C.I.Pigment Yellow 16, C.I.Pigment Yellow 17, C.I.Pigment Yellow 24, C.I.Pigment Yellow 34, C.I.Pigment Yellow 35, C.I.Pigment Yellow 37, C.I.Pigment Yellow 53, C.I.Pigment Yellow 55, C.I.Pigment Yellow 65,C.I.Pigment Yellow 73, C.I.Pigment Yellow 74, C.I.Pigment Yellow 75, C.I.Pigment Yellow 81, C.I.Pigment Yellow 83, C.I.Pigment Yellow 93, C.I.Pigment Yellow 94, C.I.Pigment Yellow 95, C.I.Pigment Yellow 97, C.I.Pigment Yellow 98, C.I.Pigment Yellow 99, C.I.Pigment Yellow 108, C.I.Pigment Yellow 109, C.I.Pigment Yellow 110, C.I.Pigment Yellow 113, C.I.Pigment Yellow 114, C.I.Pigment Yellow 117, C.I.Pigment Yellow 120, C.I.Pigment Yellow 124, C.I.Pigment Yellow 128, C.I.Pigment Yellow 129, C.I.Pigment Yellow 133, C.I.Pigment Yellow 138, C.I.Pigment Yellow 139, C.I.Pigment Yellow 147, C.I.Pigment Yellow 151, C.I.Pigment Yellow 153, C.I.Pigment Yellow 154, C.I.Pigment Yellow 167, C.I.Pigment Yellow 172,C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
【0053】
マゼンタ有機顔料としては、C.I.Pigment Red 1, C.I.Pigment Red 2, C.I.Pigment Red 3, C.I.Pigment Red 4, C.I.Pigment Red 5, C.I.Pigment Red 6, C.I.Pigment Red 7, C.I.Pigment Red 8, C.I.Pigment Red 9, C.I.Pigment Red 10, C.I.Pigment Red 11, C.I.Pigment Red 12, C.I.Pigment Red 14, C.I.Pigment Red 15, C.I.Pigment Red 16, C.I.Pigment Red 17, C.I.Pigment Red 18, C.I.Pigment Red 19, C.I.Pigment Red 21, C.I.Pigment Red 22, C.I.Pigment Red 23, C.I.Pigment Red 30, C.I.Pigment Red 31, C.I.Pigment Red 32, C.I.Pigment Red 37, C.I.Pigment Red 38, C.I.Pigment Red 40, C.I.Pigment Red 41, C.I.Pigment Red 42, C.I.Pigment Red 48(Ca), C.I.Pigment Red 48(Mn), C.I.Pigment Red 57(Ca), C.I.Pigment Red 57:1, C.I.Pigment Red 88, C.I.Pigment Red 112, C.I.Pigment Red 114, C.I.Pigment Red 122, C.I.Pigment Red 123, C.I.Pigment Red 144, C.I.Pigment Red 146, C.I.Pigment Red 149, C.I.Pigment Red 150, C.I.Pigment Red 166, C.I.Pigment Red 168, C.I.Pigment Red 170, C.I.Pigment Red 171, C.I.Pigment Red 175, C.I.Pigment Red 176, C.I.Pigment Red 177, C.I.Pigment Red 178, C.I.Pigment Red 179, C.I.Pigment Red 184, C.I.Pigment Red 185, C.I.Pigment Red 187, C.I.Pigment Red 202 ,C.I.Pigment Red 209, C.I.Pigment Red 219, C.I.Pigment Red 224, C.I.Pigment Red 245,又はC.I.Pigment Violet 19, C.I.Pigment Violet 23, C.I.Pigment Violet 32, C.I.Pigment Violet 33, C.I.Pigment Violet 36, C.I.Pigment Violet 38, C.I.Pigment Violet 43, C.I.Pigment Violet 50等が挙げられる。
【0054】
シアン有機顔料としては、C.I.Pigment Blue 1, C.I.Pigment Blue 2, C.I.Pigment Blue 3, C.I.Pigment Blue 15, C.I.Pigment Blue 15:1, C.I.Pigment Blue 15:2, C.I.Pigment Blue 15:3, C.I.Pigment Blue 15:34, C.I.Pigment Blue 15:4, C.I.Pigment Blue 16, C.I.Pigment Blue 18, C.I.Pigment Blue 22, C.I.Pigment Blue 25, C.I.Pigment Blue 60,C.I.Pigment Blue 65, C.I.Pigment Blue 66, C.I.Vat Blue 4, C.I.Vat Blue 60等が挙げられる。
【0055】
また、マゼンタ、シアン、イエロー以外の有機顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7, C.I.Pigment Green 10, C.I.Pigment Brawn 3, C.I.Pigment Brawn 5, C.I.Pigment Brawn 25, C.I.Pigment Brawn 26, C.I.Pigment Orange 1, C.I.Pigment Orange 2, C.I.Pigment Orange 5, C.I.Pigment Orange 7, C.I.Pigment Orange 13, C.I.Pigment Orange 14, C.I.Pigment Orange 15, C.I.Pigment Orange 16, C.I.Pigment Orange 24, C.I.Pigment Orange 34, C.I.Pigment Orange 36, C.I.Pigment Orange 38, C.I.Pigment Orange 40, C.I.Pigment Orange 43, C.I.Pigment Orange 63等が挙げられる。
【0056】
本発明においては、上記に挙げた有機顔料以外にも分散染料や油溶性染料等の水に不溶もしくは難溶の染料も好適に使用することができる。
【0057】
芯物質の平均粒子径に制約は無いが、カプセル化物の用途に応じて芯物質の平均粒子径は適宜選択される。例えば、インクジェット用記録用インクの色材として使用する場合には、芯物質の平均粒子径は150nm以下が好ましく、より好ましくは80nm以下であり、さらに5nm〜50nmが好ましい(ここでいう平均粒子径は、レーザ光散乱法による計測値である。)。芯物質の平均粒子径が斯かる範囲にあると、インクジェット記録用インクは分散安定性及び吐出安定性等の信頼性に優れるとともに高画質の画像を出力することができる。
【0058】
本発明においては、上述の如き芯物質において、その表面に電荷を有する芯物質が用いられる。従って、元来表面に電荷を有している物質であれば、そのまま本発明で芯物質として使用できるが、元来表面に電荷を有していない物質、あるいは表面に電荷を有していても非常にその電荷が低い物質(例えば、絶縁体や有機顔料)を芯物質として使用するためには、化学反応や吸着等の物理的作用を利用して、電荷を有する官能基(イオン性基等)や化学物質をその表面に導入する必要がある。このような物質の表面処理の具体例としては、本出願人の先の出願に係る特開2005−97476号公報の〔0036〕〜〔0056〕の記載(親水性基付与剤による顔料粒子の表面処理)が挙げられる。
【0059】
例えば、図1に記載の芯物質1のような、「イオン性基(アニオン性基)と疎水性基とを有するイオン性界面活性剤が表面に吸着した芯物質」を製造するには、芯物質が顔料粒子等の固体である場合、該イオン性界面活性剤を溶解させたイオン交換水に該芯物質を添加・混合し、得られた混合液をボールミル、ロールミル、アイガーミル、ジェットミル等の一般的な分散機に入れて分散処理を行い、該イオン性界面活性剤を該芯物質の表面に吸着させることが好ましい。更に、分散処理済みの混合液に対し限外濾過等を行い、芯物質に未吸着の該イオン性界面活性剤を低減させることが好ましい。未吸着のイオン性界面活性剤が多量に存在していると、副生成物であるポリマー粒子の生成量が増加して芯物質のカプセル化が不充分となるおそれがある。但し、未吸着のイオン性界面活性剤を低減しすぎると、芯物質の分散が不安定になる場合があるので、限外濾過等の程度は、芯物質の分散安定性とカプセル化の状況とを鑑み、適宜決定することが好ましい。
【0060】
尚、芯物質の表面に吸着させる物質は、「イオン性基と疎水性基と重合性基とを有するイオン性重合性界面活性剤」に、芯物質の分散媒への分散性を考慮して、「非イオン性基と疎水性基とを有する非イオン性界面活性剤」、または、「非イオン性基と疎水性基と重合性基とを有する非イオン性重合性界面活性剤」を併用しても良い。
【0061】
[第1のイオン性重合性界面活性剤]
第1のイオン性重合性界面活性剤は、芯物質を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と、疎水性基と、重合性基とを有する。
【0062】
上記イオン性基としては、カチオン性基及びアニオン性基が挙げられ、上記イオン性基としてカチオン性基を有するイオン性重合性界面活性剤は、「カチオン性重合性界面活性剤」と称され、上記イオン性基としてアニオン性基を有するイオン性重合性界面活性剤は、「アニオン性重合性界面活性剤」と称される。本発明では、第1のイオン性重合性界面活性剤として、カチオン性重合性界面活性剤、アニオン性重合性界面活性剤のいずれを用いても良く、カプセル化物の用途に応じていずれかを適宜選択すれば良い。
【0063】
上記カチオン性基(イオン性基)としては、一級アンモニウムカチオン、二級アンモニウムカチオン、三級アンモニウムカチオン、及び第四級アンモニウムカチオンなる群から選択されたカチオン性基が好ましい。一級アンモニウムカチオンとしてはモノアルキルアンモニウムカチオン(RNH3+)等を、二級アンモニウムカチオンとしてはジアルキルアンモニウムカチオン(R2NH2+)等を、三級アンモニウムカチオンとしてはトリアルキルアンモニウムカチオン(R3NH+)等を、第四級アンモニウムカチオンとしては(R4+)等を挙げることができる。ここで、Rは、疎水性基であり、以下に示すものを挙げることができる。また、上記カチオン性基の対アニオンとしては、Cl-、Br-、I-、CH3OSO3-、C25OSO3-等を挙げることができる。
【0064】
上記アニオン性基(イオン性基)としては、スルホン酸基、スルフィン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基、リン酸エステル基、及び、これらの塩の群から選択されたものを好適に例示できる。塩としては、Na塩、K塩、Ca塩、有機アミン塩等を挙げることができる。
【0065】
上記疎水性基としては、炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基からなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましく、分子中にアルキル基及びアリール基の両者を有することもできる。
【0066】
上記重合性基としては、ラジカル重合が可能な不飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基からなる群から選択された基であることが好ましい。これらの中でも特にアリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基が好ましい。
【0067】
上記カチオン性重合性界面活性剤としては、例えば、一般式R[4-(l+m+n)]1l2m3n+・X-で表される化合物を挙げることができる(上記一般式中、Rは重合性基であり、R1、R2、R3はそれぞれ炭素数が8〜16のアルキル基及びフェニル基、フェニレン基等のアリール基であり、X-はCl-、Br-、I-、CH3OSO3-、C25OSO3-であり、l、m及びnはそれぞれ1又は0である)。ここで、重合性基としては、上述したものを挙げることができる。
【0068】
上記カチオン性重合性界面活性剤の具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルオクチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルセチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルデシルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルドデシルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルテトラデシルクロライド塩、ジアリルメチルドデシルアンモニウムブロマイド等を挙げることができる。
【0069】
以上例示したカチオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として本発明に用いることができる。
【0070】
上記アニオン性重合性界面活性剤の具体例としては、特公昭49−46291号公報、特公平1−24142号公報、又は特開昭62−104802号公報に記載されているようなアニオン性のアリル誘導体、特開昭62−221431号公報に記載されているようなアニオン性のプロペニル誘導体、特開昭62−34947号公報又は特開昭55−11525号公報に記載されているようなアニオン性のアクリル酸誘導体、特公昭46−34898号公報又は特開昭51−30284号公報に記載されているようなアニオン性のイタコン酸誘導体等を挙げることができる。
【0071】
本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(31):
【0072】
【化4】

で表される化合物、又は、例えば、下記一般式(32):
【0073】
【化5】

で表される化合物が好ましい。
【0074】
上記一般式(31)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、特開平5−320276号公報、又は特開平10−316909号公報に記載されている化合物を挙げることができる。上記一般式(31)におけるmの値を適宜調整することによって、芯物質をカプセル化して得られるカプセル化物の表面の親水性を調整することが可能である。上記一般式(31)で表される好ましい重合性界面活性剤としては、下記一般式(310)で表される化合物を挙げることができ、さらに具体的には、下記式(31a)〜(31d)で表される化合物を挙げることができる。
【0075】
【化6】

【0076】
【化7】

【0077】
【化8】

【0078】
【化9】

【0079】
【化10】

【0080】
上記一般式(310)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。例えば、旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−10Nは、上記一般式(310)で表される化合物において、M1がNH4、R31がC919、m=10とされる化合物である。旭電化工業株式会社のアデカリアソープSE−20Nは、上記一般式(310)で表される化合物において、M1がNH4、R31がC919、m=20とされる化合物である。
【0081】
また、本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(33):
【0082】
【化11】

で表される化合物が好ましい。上記一般式(33)で表される好ましいアニオン性重合性界面活性剤としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0083】
【化12】

上記一般式(33)、上記式(33a)に記載の式で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンKHシリーズ(アクアロンKH−5、及びアクアロンKH−10)(以上、商品名)などを挙げることができる。アクアロンKH−5は、上記式(33a)で表される化合物において、rが9及びsが5である化合物と、rが11及びsが5である化合物との混合物である。アクアロンKH−10は、上記式(33a)に記載の式で表される化合物において、rが9及びsが10である化合物と、rが11及びsが10である化合物との混合物である。
【0084】
また、本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(34)で表される化合物が好ましい。
【0085】
【化13】

上記一般式(34)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、旭電化工業株式会社製のアデカリアソープSRシリーズ(アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−1025)(以上、商品名)などを挙げることができる。アデカリアソープSRシリーズは、上記一般式(34)において、BがNH4で表される化合物であって、SR−10はn=10、SR−20はn=20である化合物である。
【0086】
また、本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、下記一般式(A)で表される化合物も使用できる。
【0087】
【化14】

上記一般式(A)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のアクアロンHSシリーズ(アクアロンHS−10、HS−20、及びHS−1025)(以上、商品名)が挙げられる。
【0088】
また、本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(35)で表されるアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩を挙げることができる。
【0089】
【化15】

上記一般式(35)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社のエレミノール JS−2を挙げることができ、上記一般式(35)において、m=12又はm=16で表される化合物である。
【0090】
また、本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(36)で表されるメタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩を挙げることができる。下記一般式(36)中、nは1〜20である。
【0091】
【化16】

上記一般式(36)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社のエレミノール RS−30を挙げることができ、上記一般式(36)において、n=9で表される化合物である。
【0092】
また、本発明に用いられる上記アニオン性重合性界面活性剤としては、例えば、下記一般式(37)で表される化合物を用いることができる。
【0093】
【化17】

上記一般式(37)で表される化合物(アニオン性重合性界面活性剤)としては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社のAntox MS−60を挙げることができる。
【0094】
以上に例示したアニオン性重合性界面活性剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0095】
[第1のイオン性モノマー]
第1のイオン性モノマーは、芯物質を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と、重合性基とを有し、水溶性である。
【0096】
上記イオン性基としては、アニオン性基、カチオン性基のいずれでもよく、カプセル化物の用途に応じて適宜選択される。上記イオン性基として、アニオン性基、カチオン性基のいずれを有するかによって、それぞれアニオン性水溶性モノマー、カチオン性水溶性モノマーと称される。該アニオン性基、該カチオン性基、該重合性基としては、それぞれ、上記[第1のイオン性重合性界面活性剤]の項に記載したものが挙げられる。
【0097】
本発明に用いられる上記アニオン性水溶性モノマーの好ましい具体例としては、カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えば、4−スチレンスルホン酸及びその塩、ビニルスルホン酸及びその塩、スルホエチルアクリレート及びその塩、スルホエチルメタクリレート及びその塩、スルホアルキルアクリレート及びその塩、スルホアルキルメタクリレート及びその塩、スルホプロピルアクリレート及びその塩、スルホプロピルメタクリレート及びその塩、スルホアリールアクリレート及びその塩、スルホアリールメタクリレート及びその塩、ブチルアクリルアミドスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。また、ホスホン基を有するモノマーとしては、ホスホエチルメタクリレート等のリン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。以上例示したアニオン性水溶性モノマーは、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0098】
本発明に用いられる上記カチオン性水溶性モノマーの好ましい具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド塩、及び2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド塩、等が挙げられる。上記のカチオン性水溶性モノマーとしては市販品を用いることもでき、例えば、アクリエステルDMC(三菱レイヨン(株))、アクリエステルDML60(三菱レイヨン(株))、及びC−1615(第一工業製薬(株))などを挙げることができる。以上例示したカチオン性水溶性モノマーは、単独で、又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0099】
[第2のイオン性重合性界面活性剤]
第2のイオン性重合性界面活性剤は、芯物質を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と、疎水性基と、重合性基とを有する。
上記イオン性基、上記疎水性基、上記重合性基としては、それぞれ、上記[第1のイオン性重合性界面活性剤]の項で記載のものと同じである。また、本発明に係る第2のイオン重合性界面活性剤として用いられる、アニオン性重合性界面活性剤、カチオン性重合性界面活性剤としては、それぞれ、上記[第1のイオン性重合性界面活性剤]の項で記載のものと同じである。
【0100】
[架橋性モノマー]
架橋性モノマーは、芯物質を被覆する壁材の主成分であるポリマーの重合成分であり、上記第2のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第2のイオン性モノマーとの共重合によって、壁材の特に外殻部の機械的強度や耐熱性、形態維持性を向上させる。また、架橋性モノマーは、有機溶剤によるポリマーの膨潤や有機溶剤のポリマー内部への浸透を抑制することができ、壁材の耐溶剤性を高めることができる。これによって、壁材が溶媒や界面活性剤等によって溶出または膨潤することで内包された芯物質が壁材から放出されることはなくなる。また、例えば、水溶性有機溶剤を共存するインクジェット記録用インク組成物においては、色材粒子の分散性や、インク組成物の保存安定性、さらにインクジェットヘッドからのインク組成物の吐出性をも高めることができる。さらに、架橋性モノマーは、カプセル化物の製造で使用される他のモノマー成分(第1のイオン性重合性界面活性剤等)のポリマーへの転化促進作用を有しており、カプセル化物の製造効率の向上に効果がある。
【0101】
架橋性モノマーとしては、その構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する物質が用いられる。
上記重合性基、上記疎水性基としては、それぞれ、上記[第1のイオン性重合性界面活性剤]の項で記載のものと同じである。
上記親水性基としては、ポリオキシエチレングリコールが好ましく、特にエチレンオキサイドの付加モル数が2以上が好ましい。
【0102】
架橋性モノマーとして特に好ましいものは、上記一般式(1)で表される化合物である。
上記一般式(1)で表される架橋性モノマーの具体例としては、上記一般式(1)において、RがCH2=CXCOO−(式中、XはHまたはCH3を表し)、AがC24O、BがC36Oであり、m=1、n+p=6、e=12、q=1である化合物が挙げられる。該化合物は、NKエステル1206PE(新中村化学工業株式会社)、ファンクリルFA−023M(日立化成工業株式会社)の商品名で上市されている。
また、上記一般式で表される架橋性モノマーの具体例としては、上記一般式(2)において、RがCH2=CXCOO−(式中、XはHまたはCH3を表し)、AがC24O、BがC65C(CH3265であり、m=1、n+pが2〜30、e=1、q=1である化合物が挙げられる。該化合物は、BPE−100(n+p=2.6)、BPE−200(n+p=4)、BPE−300(n+p=6)、BPE−500(n+p=10)、BPE−900(n+p=17)、BPE−1300(n+p=30)(以上、新中村化学工業株式会社製)、BP−2EM(n+p=2.6)、BP−4EA(n+p=4)、BP−4PA(n+p=4)(以上、共栄社化学株式会社)、FA−324A(n+p=4)(以上日立化成工業株式会社)の商品名で上市されている。
【0103】
本発明に係る上記ポリマーにおける上記架橋性モノマーの割合は、該ポリマーに構成単位として含まれる全モノマーに対して0.01重量%〜15重量%であることが好ましく、0.1重量%〜10重量%であることが更に好ましい。架橋性モノマーの割合が0.01重量%未満では壁材が溶媒や界面活性剤等によって溶出または膨潤が起こり内包された芯物質が壁材から放出される恐れがあるなど化学的な安定が得にくく、また壁材の強度を十分に高めることができない恐れがある。逆に15重量%超では壁材の硬度は非常に高まるが塗膜が脆くなり強靭性に劣るようになり、また、成膜し難くなることが多いといった恐れがある。特に、カプセル化物にさらに良好な成膜性(塗膜形成能)を求める場合は、疎水性モノマーの割合と共に、上記の架橋性モノマーの割合を最適にすることが必要であり、好ましくは、0.01重量%〜5重量%、さらに充分な化学的な安定性を確保するには、0.1重量%〜5重量%の範囲が好ましい。
【0104】
[疎水性モノマー]
本発明に係る壁材を構成する上記ポリマーには、疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位を含有させることができる。
【0105】
疎水性モノマーは、カプセル化物の成膜性、壁材の強度、耐薬品性、耐水性、耐光性、耐侯性、光学特性、その他の物理特性及び化学特性の制御に有効であり、特に、カプセル化物をインクジェット記録用インクの色材として使用した場合に、色材の定着性、印字部の耐擦性、耐水性及び耐溶剤性等の要求特性を満たす上で有効である。
【0106】
本発明に用いられる疎水性モノマーとしては、その構造中に少なくとも疎水性基と重合性基とを有するもので、該疎水性基が、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の群から選択されたものを例示できる。該脂肪族炭化水素基としてはメチル基、エチル基、及びプロピル基等を、該脂環式炭化水素基としてはシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、及びイソボルニル基等を、該芳香族炭化水素基としてはベンジル基、フェニル基、及びナフチル基等を挙げることができる。
上記疎水性モノマーの重合性基は、上記[第1のイオン性重合性界面活性剤]の項で記載したものと同じものを用いることができる。
【0107】
疎水性モノマーの具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、t−ブチルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、イソプロピルアクリレート、アクリル酸n−ブチル、ブトキシエチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、フェノキシエチルアクリレート、アクリル酸シクロヘキシル、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びイソボルニルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、イソプロピルメタクリレート、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソデシル、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、及びイソボルニルメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、等の単官能メタクリル酸エステル類;アリルベンゼン、アリル−3−シクロヘキサンプロピオネート、1−アリル−3,4−ジメトキシベンゼン、アリルフェノキシアセテート、アリルフェニルアセテート、アリルシクロヘキサン、及び多価カルボン酸アリル等のアリル化合物;フマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸等の不飽和エステル類;N−置換マレイミド、環状オレフィンなどのラジカル重合性基を有するモノマー等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に係る上記ポリマーにおける上記疎水性モノマーの割合は、該ポリマーに構成単位として含まれる全モノマーに対して80重量%〜99重量%であることが好ましく、90重量%〜99重量%であることが更に好ましい。
【0108】
[重合開始剤]
本発明においては、重合開始剤として公知のものを用いることができ、水溶性重合開始剤でも良く、水に不溶又は難溶の油溶性重合開始剤でも良い。尚、一般に、水溶性重合開始剤を用いて芯物質のカプセル化を行うと、得られるカプセル化物の粒度分布が広がる傾向が見られるが、上記架橋性モノマーを重合成分として用いる、本発明に係るカプセル化物の製造方法では、水溶性重合開始剤を用いてもシャープな粒度分布を有するカプセル化物が得られる。
【0109】
本発明に用いられる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、及び4,4−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。また、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等と、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。本発明では、これらの水溶性重合開始剤の1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
本発明に用いられる油溶性重合開始剤としては、例えば、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、等の油溶性のアゾ化合物系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジサクシニックアシドパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル(パーオキシ−2−エチルヘキサノエート)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エタヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン等の過酸化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
[その他の壁材構成成分]
本発明のカプセル化物に係る壁材を構成するポリマーには、上述した各種成分以外のその他の成分として、本発明の効果を損ねない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、ワックス等を含有させることができる。
【0112】
[カプセル化物の粒子径等]
以下、本発明のカプセル化物の粒子径等について説明する。
本発明のカプセル化物の体積平均粒子径は、カプセル化物の用途によって適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、カプセル化物をインクジェット記録用インクの色材として用いる場合は、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下であり、さらに50nm〜120nmであることが好ましい。カプセル化物の体積平均粒子径の制御は、疎水性モノマーの添加量、反応混合液の攪拌状態等によって行うことができる。
【0113】
また、本発明のカプセル化物は、アスペクト比(長短度)が0.9〜1.3であり、且つ、Zingg指数が0.9〜1.3となり、真球に近い形状である。ここで、ある粒子の短径をb、長径をl、厚みをt(l≧b≧t>0)とした場合、アスペクト比(長短度)はl/b(≧1)、扁平度はb/t(≧1)であり、Zingg指数=長短度/扁平度=(l・t)/b2である。即ち、真球は、アスペクト比が1であり、かつ、Zingg指数が1となる。Zingg指数が1.3より大きくなると、カプセル化物がより扁平形状となって等方性が低くなる。
【0114】
したがって、本発明のカプセル化物は、水中に分散している場合には分散性及び分散安定性に優れる。また、本発明のカプセル化物の芯物質が顔料や染料等の色材である場合に、該カプセル化物を例えばインクに用いると、分散性や分散安定性に優れ、印刷濃度や発色を高効率で発現することができる。特にインクジェット記録用インクに用いると、安定性インクの流動特性がニュートニアンとなりやすく、吐出安定性に優れたものとなり、紙等の記録媒体に着弾するとカプセル化色材が記録媒体上に高密度で配置され、印刷濃度や発色を高効率で発現することができる。また、複写機やレーザープリンタ等の電子写真用トナーとして用いた場合には、エッジがシャープな高画質画像を得ることができ、高解像度画像に対応できる。
尚、酸析法や転相乳化法等の、本発明に係るカプセル化法以外のカプセル化法では、カプセル化物のアスペクト比及びZingg指数が上記範囲内になり難い。
【0115】
また、本発明のカプセル化物の成膜性、壁材の強度、耐薬品性、耐水性、耐光性、耐侯性、光学特性、その他の物理特性及び化学特性は、壁材の主成分であるポリマーの組成、構造等を適切に制御することによって、カプセル化物の用途に適したものとすることが可能である。
【0116】
特に、カプセル化物をインクジェット記録用インクの色材として使用した場合における色材の定着性、印字部の耐擦性及び光沢性は、壁材の主成分であるポリマー(共重合体)のガラス転移温度(Tg)によって制御可能である。
【0117】
一般に、高分子固体、特に無定形高分子固体において、温度を低温から高温へ上げていくと、わずかな変形に非常に大きな力の要る状態(ガラス状態)から小さな力で大きな変形が起こる状態へと急変する現象が起こるが、この現象の起こる温度をガラス転移温度(又はガラス転移点)という。一般には、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter)による昇温測定によって得られた示差熱曲線において、吸熱ピークの底部から吸熱の開始点に向かって接線を引いたときのベースラインとの交点の温度がガラス転移温度とされる(本明細書におけるTgは、この定義に従ったものである)。また、ガラス転移温度では弾性率、比熱、屈折率などの他の物性も急激に変化することが知られており、これらの物性を測定することによってもガラス転移温度が決定されることが知られている。さらに共重合体を合成する際に使用したモノマーの重量分率と当該モノマーを単独重合して得られるホモポリマーのガラス転移温度とから下記Foxの式によりガラス転移温度を計算することができる(本発明においては、Foxの式により得られるガラス転移温度を用いた。)。
【0118】
【数1】

即ち、カプセル化物の置かれた温度環境が、該カプセル化物の壁材を構成する共重合体のガラス転移温度よりも高い場合には、この共重合体は小さな力で大きな変形が起こる状態となり、さらに融点に達すると溶融する。このとき、近傍に他のカプセル化物が存在するとカプセル化物同士が融着して成膜する。また、融点まで環境温度が達しない場合であっても、カプセル化物同士が強い力によって接触するような場合は、各カプセル化物を被覆している共重合体分子同士が絡み合うことが可能となるような条件が整えば、カプセル化物を覆う共重合体(コポリマー)同士は融着することもある。
【0119】
カプセル化物を色材として使用したインクを用いて普通紙やインクジェット記録用専用紙等の記録媒体に印字した場合に、該カプセル化物が室温でより好ましく成膜し、色材定着性、印字部の耐擦性及び光沢性について良好な結果を得るためには、壁材の主成分である上記ポリマーのTgが、好ましくは30℃以下、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。従って、カプセル化物をインクジェット用インクに用いる場合には、壁材を構成するポリマー(共重合体)のガラス転移温度を30℃以下になるように設計することが好ましく、より好ましくは15℃以下、さらに好ましくは10℃以下に設計するのが好ましい。但し、ガラス転移温度を−20℃より低くした場合は、耐溶剤性が低下する傾向となるため注意を要する。
【0120】
[カプセル化物の製造方法]
以下に、上述した本発明のカプセル化物の製造方法について説明する。
【0121】
本発明のカプセル化物の製造方法は、(1)下記の工程1、工程2a、工程3a及び工程4aを有するか、又は(2)工程1、工程2b、工程3b及び工程4bの工程を有する。
工程1:上記芯物質を含む水性溶媒に、該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有するイオン性モノマーを添加・混合し、該芯物質の表面に第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーを吸着させる工程。
工程2a:上記工程1を経た混合液に疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーとを添加・混合する工程。
工程3a:上記工程2aを経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を添加・混合する工程。
工程4a:上記工程3aを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤とを重合して上記ポリマーを形成する工程。
工程2b:上記工程1を経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を、添加・混合する工程。
工程3b:上記工程2bを経た混合液に疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーを添加・混合する工程。
工程4b:上記工程3bを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤と疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーとを重合して上記ポリマーを形成する工程。
【0122】
また、本発明の製造方法においては、前記(1)及び/又は(2)の工程1において、該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有するイオン性モノマーを添加・混合した後、第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又はイオン性モノマーのイオン性基が、芯物質の表面にイオン的に吸着しやすくするために、超音波を照射しても良い。
【0123】
上記工程1においては、脱イオン水等の水を主成分とする水性溶媒の他に、必要に応じ各種助剤や有機溶剤等を含有させることができる。
上記の工程1において、第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーの添加量は、芯物質表面のイオン性基の総モル数(即ち、用いた芯物質1gの芯物質表面に存在するイオン性基量[mol/g])に対して、0.5倍モル〜2倍モルの範囲であることが好ましく、0.8倍モル〜1.2倍モルの範囲であることが更に好ましい。0.5倍モル〜2倍モルの範囲においては、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤」、及び/又は、「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマー」のイオン性基との間の静電相互作用が好適な状態となり、芯物質が「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤」及び/又は「上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマー」で好適に覆われることで疎水性となり、アドミセルの形成が容易となる。特に0.8倍モル〜1.2倍モルの範囲はより好適な状態が得られ、高収率でカプセル化物を得ることができる。
【0124】
上記工程3aあるいは工程2bにおいて、第2のイオン性重合性界面活性剤の添加量は、第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーの添加量に対して、0.1倍モル〜1.5倍モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.4倍モル〜1.0倍モルである。第2のイオン性重合性界面活性剤の添加量が0.1倍モル未満では凝集しやすくなり、水性媒体中への分散性が劣るおそれがある。逆に、1.5倍モルを超えるとカプセル化効率が低下して、芯物質を含まないポリマー粒子の生成が増す。0.4倍モル〜1.0倍モルの範囲は特に好適な状態が得られ、高収率でカプセル化物を得ることができる。
【0125】
また、本発明において、上述の本発明に使用する架橋性モノマーの添加量は全モノマーに対して、好ましくは0.1重量%〜15重量%、さらに好ましくは1重量%〜10重量%である。架橋性モノマーの添加量を斯かる範囲にすることによって、壁材の強度を充分に高めることができ、壁材の耐薬品性に優れ、芯物質の脱離が全く起こらない。また、成膜し難くなることが多いといった恐れがある。特に、カプセル化物にさらに良好な成膜性(塗膜形成能)を求める場合は、疎水性モノマーの割合と共に、上記の架橋性モノマーの割合を最適にすることが必要であり、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、さらに充分な化学的な安定性を確保するには、1重量%〜5重量%の範囲が好ましい。また、特に該カプセル化物をインクジェットインクの色材として使用する場合には吐出性および吐出安定性に優れる。
【0126】
上記工程4aあるいは工程4bでは、重合開始剤を添加・混合し、第1の重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマー、疎水性モノマー、本発明の構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマー、第2の重合性界面活性剤を重合反応させる。重合開始剤の添加は、重合開始剤が活性化される温度に加熱された前工程によって調製された混合液に、重合開始剤を一度に若しくは分割して添加してもよく、あるいは連続的に添加してもよい。また、前工程によって調製された混合液に重合開始剤を添加して重合開始剤の活性化される温度に混合液を加熱してもよい。水溶性重合開始剤の場合には、水溶性重合開始剤をイオン交換水に溶解して所定の滴下速度で滴下することによって重合反応を好適に実施することができる。油溶性重合開始剤を用いる場合は、反応容器内の水性分散液に直接添加するか、又は油溶性重合開始剤を疎水性モノマーに溶解させたものを溶媒に添加することにより、重合反応を好適に実施することができる。
【0127】
重合性開始剤の添加量は、重合成分(第1の重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマー、疎水性モノマー、本発明の構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマー、第2の重合性界面活性剤)の総添加重量に対して、好ましくは1重量%〜5重量%、更に好ましくは1重量%〜3重量%である。該添加量が1重量%未満では、重合反応が十分に進まないおそれがあり、該添加量が5重量%を超得ると、ゲル化や凝集等が起こるおそれがある。
【0128】
重合開始剤の活性化は、重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生する温度まで、反応系を昇温することによって好適に実施できる。添加された重合開始剤が開裂して開始剤ラジカルが発生し、該開始剤ラジカルが、イオン性モノマー及びイオン性重合性界面活性剤、並びに疎水性モノマー、場合によって非イオン性重合性界面活性剤及びその他の重合成分の重合性基を攻撃することによって重合反応が起こる。重合温度及び重合反応時間は、用いる重合開始剤の種類及び重合性モノマーの種類によって変わるが、当業者であれば適宜好ましい重合条件を設定することは容易である。一般に、重合温度は40℃〜90℃の範囲とするのが好ましく、重合時間は3時間〜12時間とするのが好ましい。
【0129】
尚、本発明で行われる重合反応は、イオン性重合性界面活性剤が使用されているため、改めて乳化剤を用いる必要はないが、必要に応じては公知のアニオン系、ノニオン系、及びカチオン系乳化剤からなる群から選ばれる1種以上を用いることもできる。
【0130】
重合終了後は、得られたカプセル化物の水性分散液のpHを7.0〜9.0の範囲に調整し、さらに濾過を行うことが好ましい。濾過は限外濾過が好ましい。
【0131】
本発明の工程を経て製造されたカプセル化物は水性溶媒に対して高い分散安定性を有するが、これは芯物質がポリマーを主成分とする壁材で完全に被覆されている(被覆されていない部分がない)ことと、壁材を構成するポリマーにおける親水性基が水性溶媒に向かって規則正しく配向しているためであると考えられる。
【0132】
尚、こうして得られたカプセル化物の水性分散液には、カプセル化物の他に使用したイオン性重合性界面活性剤、イオン性モノマー、架橋性モノマー、疎水性モノマーに由来する未反応モノマーや低分子量の反応生成物が含まれていることがあるため、遠心分離法や限外濾過法等によって精製処理し、未反応モノマーの濃度を低減することが好ましい。精製処理された本発明のカプセル化物の水性分散液をインクジェット記録用インクに用いると、普通紙に対して彩度及び印字濃度(印刷濃度)の高い、滲みの発生の少ない、高画質画像を出力することが可能となる。また、インクジェット記録用専用メディア、特にインクジェット用光沢メディアに良好な光沢性を持った画像を出力することができる。
【0133】
上記工程2a又は工程3bにおいては、さらに、炭素数6以上の高級アルコールを混合液に添加・混合することができる。炭素数6以上の高級アルコールは、混合液中に添加・混合されることよって、該高級アルコールがアドミセル内に可溶化されると共にアドミセル内への疎水性モノマーの可溶化を助けるため、芯物質を覆う壁材の厚みを厚くすることを可能にする。また、炭素数6以上の高級アルコールの添加は、カプセル化物の粒度分布の幅をシャープにすることにも有効である。また、炭素数6以上の高級アルコールは、カプセル化物において壁材を構成するポリマー中に存在し、該ポリマーに対して可塑剤的な働きをすることから、該高級アルコールの添加によって成膜性に優れたカプセル化物が得られるようになる。また、壁材を構成するポリマー中に存在する該高級アルコールは、カプセル化物の周囲に存在する水性媒体中に移行しにくいため、該カプセル化物は水性媒体中で長期にわたり安定な分散状態を維持することができる。
【0134】
このように、本発明においては炭素数6以上の高級アルコールを用いることによって、壁材(芯物質を被覆するポリマー被覆層)の厚膜化、カプセル化物の粒度分布の幅のシャープ化、並びにカプセル化物の成膜性及び水性媒体中における分散安定性の向上の点でより好ましい結果が得られるようになる。
【0135】
従って、炭素数6以上の高級アルコールを用いて得られた本発明のカプセル化物は、カプセル化物の水性媒体中での分散安定性や成膜性が要求される用途、例えばインクジェット記録用途において特に有効である。例えば、炭素数6以上の高級アルコールを用いて得られた本発明のカプセル化物を、インクジェット記録用インクの色材として用いた場合は、吐出安定性、印刷画像の耐擦性及び光沢性の点で良好な結果が得られる。
【0136】
本発明に用いられる炭素数6以上の高級アルコールとしては、イオン性重合性界面活性剤及び/又は非イオン性(ノニオン性)重合性界面活性剤と共に用いた場合に界面活性助剤として作用するものが好ましく、例えばイソステアリルアルコール、ヘキサノール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、キミルアルコール、コレステロール、シトステロール、パルミチルアルコール、セトステアリルアルコール、セラキルアルコール、デシルテトラデカノール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(別名:ラウリルアルコール,ドデカノール)、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール(別名:ミリスチルアルコール)、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール(別名:セチルアルコール)、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール(別名:ステアリルアルコール)、ドコサノール、エイコサノール、ヘキサコサノール、ノナデカノール、オクタコサノール、テトラコサノール、トリコサノール、等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0137】
上述した高級アルコールの添加量は、上記疎水性モノマーの混合液への添加重量に対して、0.5重量%〜25重量%の範囲であることが好ましく、1重量%〜10重量%の範囲であることが更に好ましい。高級アルコールの添加量が、疎水性モノマーに対して0.5重量%未満であると期待される効果が得られ難く、逆に疎水性モノマーに対して25重量%超であると、壁材を構成するポリマーの可塑性が高くなり過ぎるため、インクジェット記録用インクに用いた場合に吐出安定性や画質の低下が起こりやすいという懸念がある。
【0138】
[インク組成物]
以下、本発明のインク組成物について詳細に説明する。
【0139】
本発明のインク組成物は、上述した本発明のカプセル化物と、水とを少なくとも含有する。
本発明のインク組成物に含有されるカプセル化物を構成する芯物質としては、インク組成物の用途に応じて上述したものから適宜選択することができるが、特に色材が好ましく用いられる。該色材としては、所望の色を発色し得る無機顔料や有機顔料等の顔料、分散染料や油溶性染料等の水に不溶又は難溶の水不溶性染料を挙げることができる。
【0140】
カプセル化物の含有量は、インク組成物の全重量に対して1重量%〜20重量%であることが好ましく、3重量%〜15重量%であることがさらに好ましい。特に高い印刷濃度と高発色性を得るためには、前記含有量が5重量%〜15重量%であることが好ましい。
【0141】
また、インク組成物に保水性と湿潤性を付与するために、本発明のインク組成物には、高沸点水溶性有機溶媒からなる湿潤剤を添加することが好ましい。このような高沸点水溶性有機溶媒としては、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒が好ましい。
【0142】
本発明に用いることができる、沸点が180℃以上の水溶性有機溶媒の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2,000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、及びペンタエリスリトールを挙げることができる。本発明に用いる高沸点水溶性有機溶媒は、沸点が200℃以上であることがさらに好ましい。これらの1種又は2種以上を本発明のインク組成物に用いることができる。インク組成物に高沸点水溶性有機溶媒を添加することにより、開放状態(室温でインク組成物が空気に触れている状態)で放置しても、流動性と再分散性とを長時間維持できるインクジェット記録用インクを得ることができる。さらに、このようなインク組成物は、インクジェットプリンタを用いての印字中もしくは印字中断後の再起動時に、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難くなるため、インクジェットノズルからの高い吐出安定性を有するインク組成物が得られる。
【0143】
これらの高沸点水溶性有機溶媒を含めた水溶性有機溶媒の合計の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは10重量%〜50重量%程度であり、より好ましくは10重量%〜30重量%である。
【0144】
本発明のインク組成物には、さらに2−ピロリドン,N−メチルピロリドン,ε−カプロラクタム,ジメチルスルホキシド,スルホラン,モルホリン,N−エチルモルホリン,及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等からなる群から選ばれる一種以上の極性溶媒を添加することができる。極性溶媒を添加することにより、インク組成物中におけるカプセル化顔料粒子の分散性が向上するという効果が得られ、インクの吐出安定性を良好にすることができる。
【0145】
これらの極性溶媒の含有量は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.1重量%〜20重量%であり、より好ましくは1重量%〜10重量%である。
【0146】
本発明のインク組成物は、水性溶媒が記録媒体に浸透することを促進する目的で、浸透剤をさらに含有することが好ましい。水性溶媒が記録媒体に素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない記録物を得ることができる。このような浸透剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテル類ともいう)及び/又は1,2−アルキルジオールが好ましく用いられる。多価アルコールのアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等が挙げられる。1,2−アルキルジオールとしては、例えば1,2−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの他に、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオール等の直鎖炭化水素のジオール類を挙げることができ、これらから適宜選択して本発明のインク組成物に用いることができる。
【0147】
特に、本発明の実施形態においては、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ペンタンジオール、及び1,2−ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種を浸透剤として用いることが好ましい。
【0148】
これらの浸透剤の含有量は、インク組成物の全重量に対して、総量で、好ましくは1重量%〜20重量%、さらに好ましくは1重量%〜10重量%である。浸透剤の含有量を1重量%以上にすることによって、インク組成物の記録媒体への浸透性を向上する効果が得られ、さらに20重量%以下にすることにより、このインク組成物を用いて印刷した画像に滲みが発生することを防止でき、またインク組成物の粘度があまり高くならないようにすることができる。また、特に、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の1,2−アルキルジオールをインク組成物に用いた場合、印刷後のインク組成物の乾燥性が良好になり、かつ、画像の滲みを少なくすることができる。
【0149】
また、本発明のインク組成物にグリセリンを含有させることにより、そのインク組成物をインクジェット記録に用いた場合のインクジェットノズルの目詰まりが発生しにくくなり、さらにインク組成物自身の保存安定性を高めることもできる。
【0150】
また、本発明のインク組成物にグリコールエーテル類を用いる場合には、グリコールエーテル類とあわせて、後述するアセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0151】
また、本発明のインク組成物は、界面活性剤、特にアニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸、アシルメチルタウリン酸、ジアルキルスルホ琥珀酸、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、及びアルキルザルコシン塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、シュガーアルキルエステル、多価アルコールアルキルエーテル、アルカノールアミン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0152】
より具体的には、アニオン性界面活性剤としてはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、及びポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩などが挙げられ、ノニオン性界面活性剤の具体例としてはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系化合物、並びにポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、及びポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系化合物等を挙げることができる。
【0153】
特に、本発明のインク組成物は、界面活性剤としてアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤を含むことが望ましい。これにより、インク組成物に含まれる水性溶媒が記録媒体へ浸透しやすくなるため、種々の記録媒体に対して滲みの少ない画像を印刷できる。アセチレングリコール系界面活性剤として市販されている市販品を利用することも可能であり、具体例としては、サーフィノール104、82、465、485、104PG50及びTG(いずれも商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)、並びにオルフィンSTG及びオルフィンE1010(以上商品名、日信化学社製)が挙げられる。また、アセチレンアルコール系界面活性剤としては、サーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.より入手可能)等が挙げられる。
【0154】
これらのアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はアセチレンアルコール系界面活性剤は、インク組成物の全重量に対して、好ましくは0.01重量%〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲になるように用いることが好ましい。
【0155】
また、本発明のインク組成物には、記録媒体に対するカプセル化物の定着性や記録画像の耐擦性及び耐水性を高めるために、ポリマー微粒子を含有させることができる。該ポリマー微粒子としては、その表面に、該ポリマー微粒子と併用されるカプセル化物の表面の電荷(イオン性基)と同種の電荷(イオン性基)を有し、ガラス転移温度が30℃以下で、体積平均粒子径が10nm〜100nmであるものが好ましい。このようなポリマー微粒子は、成膜性を有するものであって、当該ポリマー微粒子を含んだインク組成物で、普通紙やインクジェット記録用専用メディア等の記録媒体に印刷すると、インク組成物中の溶媒成分(水を含む)が記録媒体中に浸透し、ポリマー微粒子とカプセル化物とが近接し、ポリマー微粒子がカプセル化物を包み込んでポリマーの皮膜を形成する。このポリマーの皮膜によって、カプセル化物はより強固に記録媒体表面に固着することができることから、非常に優れた耐擦性及び耐水性を有する画像を形成することができる。
【0156】
上記ポリマー微粒子が良好な成膜性を有するには、そのポリマーのガラス転移温度は上述したように30℃以下であることが好ましく、さらには15℃以下であることが好ましく、10℃以下であると特に好ましい。ポリマーのガラス転移温度は、使用するモノマーの種類や組成比を適宜選択することによって調節することができる。本発明において、ポリマーのガラス転移温度としては、熱走査型熱量計(Differential scanning calorimeter:DSC)による昇温測定によって得られたガラス転移温度を用いた。
【0157】
また、上記ポリマー微粒子は、本発明のカプセル化物とインク組成物中に共存しても凝集することなく、安定な分散状態が得られる。
【0158】
さらに、上記ポリマー微粒子の粒子径が体積平均粒子径で10nm〜100nmの範囲であると、画像の光沢性や写像性が良好になる。
【0159】
上記ポリマー微粒子は、公知の乳化重合法によって製造することができる。たとえば、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルモノマー)を重合開始剤、及び乳化剤を存在させた水中において乳化重合することによってポリマー微粒子を得ることができる。不飽和ビニル単量体は、前述の疎水性モノマーと同様のものを使用することができる。また、イオン性基を有する不飽和ビニル単量体は、前述のイオン性モノマーと同様のものが使用できる。また、ポリマー微粒子を製造する際に用いる重合開始剤、乳化剤、界面活性剤、分子量調整剤、及び中和剤等は公知の方法に準じて用いる。特に、乳化剤として前述したアニオン性重合性界面活性剤を用いると、アニオン性重合性界面活性剤がモノマーと共重合することから、液中の乳化剤量が微量となり、それに伴って液の泡立ちが抑えられて、インク組成物の吐出安定性がさらに高まる。また、ポリマー微粒子と併用される本発明のカプセル化物に使用したアニオン性重合性界面活性剤と同じものを使用した場合には、分散安定性及び保存安定性が特に優れたものとなる。
【0160】
上記ポリマー微粒子は微粒子粉末として用いることもできるが、好ましくは、水媒体にポリマー微粒子が分散されたポリマーエマルジョンの形態で、インク組成物に含有される他の成分と混合することが好ましい。インク組成物中に含まれるポリマー微粒子の量は、インク組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%程度が好ましく、0.01重量%〜5重量%程度であることがさらに好ましい。
【0161】
また、本発明のインク組成物は、pH調整剤を含有することができる。カプセル化物の芯物質や上記ポリマー微粒子が表面にアニオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを7〜11、より好ましくは8〜9に調整することが好ましく、pH調整剤としては塩基性化合物を用いることが好ましい。また、カプセル化物の芯物質や上記ポリマー微粒子が表面にカチオン性基を有する場合には、インク組成物のpHを5〜7、より好ましくは6〜7に調整することが好ましく、pH調整剤としては酸性化合物を用いることが好ましい。pH調整剤として好ましい塩基性化合物は、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸リチウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、フタル酸水素カリウム、及び酒石酸水素カリウムなどのアルカリ金属塩類;アンモニア;並びに、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン、モルホリン、及びプロパノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。
これらの中でも、水酸化アルカリ化合物又はアミンアルコールをインク組成物に添加すると、アニオン性基を有する顔料粒子のインク中での分散安定性を向上させることができる。
【0162】
また、防カビ、防腐、又は防錆の目的で、安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベンチアゾリン−3−オン〔製品名:プロキセルXL(アビシア社製)〕、及び3,4−イソチアゾリン−3−オン、4,4−ジメチルオキサゾリジン等から選ばれる一種以上の化合物を本発明のインク組成物に添加することができる。
【0163】
また、インクジェット記録ヘッドのノズルが乾燥することを防止する目的で、尿素、チオ尿素、及びエチレン尿素等なる群から選ばれる少なくとも一種を本発明のインク組成物に添加することもできる。
【0164】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0165】
上記「表面に電荷を有する芯物質」の水性分散液として、下記のシアン顔料分散液SP1−D2及びシアン顔料分散液PS1−D1をそれぞれ製造した。
【0166】
(シアン顔料分散液SP1−D2の製造)
フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)20gをキノリン500gと混合し、分散機アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)を使用してビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散し、得られた分散液をエバポレータに移し、30mmHg以下に減圧しながら120℃に加熱し、系内に含まれる水分を除去した後、160℃に昇温して、スルホン化ピリジン錯体20gを加え、同温度で8時間反応させた。反応終了後に得られた生成物を過剰なキノリンで数回洗浄し、これにイオン交換水を注ぎ、さらに濾過を行って、顔料濃度が15重量%の、スルホン酸基を表面に有するシアン顔料粒子SP1の水性顔料分散液(シアン顔料分散液SP1−D1)を得た。尚、シアン顔料粒子SP1をフラスコ燃焼法で処理し、これによって発生したガスを0.3%過酸化水素水に吸収させ、イオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製2000i)を用いて硫酸イオンを定量した。この定量値をスルホン酸基に換算して、顔料1g当たりのモル量(mol/g)を求めた。その結果、シアン顔料粒子SP1のスルホン酸基量は4×10-5mol/gであった。
【0167】
次に、200gの上記シアン顔料分散液SP1−D1に、15gのアニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)を加えて混合し、これを分散機アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)を使用してビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で2時間分散した。分散後、これを分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して顔料濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、シアン顔料分散液SP1−D2を得た。シアン顔料分散液SP1−D2について、フラスコ燃焼法によって求めたスルホン酸基量は1.5×10-4mol/gであった。係るスルホン酸基量をシアン顔料粒子SP1の表面に存在しているスルホン酸基量とした。得られたシアン顔料分散液SP1−D2をイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は50nmであった。
【0168】
(シアン顔料分散液PS1−D1の製造)
アニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10(第一工業製薬(株)製)50gをイオン交換水850gに溶解し、これに100gのフタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)を加えて混合した。この混合液を分散機アイガーモーターミルM250型(アイガージャパン社製)でビーズ充填率70%及び回転数5000rpmの条件下で5時間分散処理した。次いで、アルティマイザー25005(スギノマシン社製)を用いて噴射圧力150MPaで分散処理(10パス)後、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して顔料濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、シアン顔料分散液PS1−D1を得た。シアン顔料分散液PS1−D1をエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR6000 TG/DTAで、30℃〜500℃まで昇温速度15℃/分にて熱重量測定を行いアニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10の量を求めたところ、24/100(アニオン性重合性界面活性剤/顔料)であった。これより求めたスルホン酸基量は2.5×10-4mol/gであった。フラスコ燃焼法によって求めたスルホン酸基量もまた同じであった。係るスルホン酸基量をシアン顔料(フタロシアニン顔料:C.I.ピグメントブルー15:4)粒子表面に存在しているスルホン酸基量とした。得られたシアン顔料分散液SP1−D2をイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は60nmであった。
【0169】
〔実施例1〕
(カプセル化物A1の製造)
200gの上記シアン顔料分散液SP1−D2を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.93g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、13.5gのベンジルメタクリレート、9.0gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、22.5gのラウリルメタクリレートと1.35gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の日立化成工業株式会社製ファンクリルFA−023Mを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)2.63gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.69gの過硫酸カリウムを50gのイオン交換水に溶解した過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合した。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、固形分濃度が15重量%に濃縮し、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A1の分散液A1−Dを得た。得られたカプセル化物A1の分散液A1−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は75nmであった。
【0170】
〔実施例2〕
(カプセル化物A2の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.26gのベンジルメタクリレート、5.70gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、12.96gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と0.85gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A2の分散液A2−Dを得た。得られたカプセル化物A2の分散液A2−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は100nmであった。
【0171】
〔実施例3〕
(カプセル化物A3の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.3gのベンジルメタクリレート、5.7gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.0gのラウリルメタクリレート、1.4gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と1.4gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C65C(CH3265e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒10、e=1)の新中村化学工業株式会社製BPE−500を混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A3の分散液A3−Dを得た。得られたカプセル化物A3の分散液A3−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は100nmであった。
【0172】
〔実施例4〕
(カプセル化物A4の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.49gのベンジルメタクリレート、5.88gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.37gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と0.03gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100,000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A4の分散液A4−Dを得た。得られたカプセル化物A4の分散液A4−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は110nmであった。
【0173】
〔実施例5〕
(カプセル化物A5の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.42gのベンジルメタクリレート、5.83gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.24gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と0.28gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A5の分散液A5−Dを得た。得られたカプセル化物A5の分散液A5−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は105nmであった。
【0174】
〔実施例6〕
(カプセル化物A6の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、6.31gのベンジルメタクリレート、4.96gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、11.27gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と4.23gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A6の分散液A6−Dを得た。得られたカプセル化物A6の分散液A6−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は90nmであった。
【0175】
〔実施例7〕
(カプセル化物A7の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、6.71gのベンジルメタクリレート、5.27gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、11.97gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と2.82gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A7の分散液A7−Dを得た。得られたカプセル化物A7の分散液A7−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は95nmであった。
【0176】
〔実施例8〕
(カプセル化物A8の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.10gのベンジルメタクリレート、5.58gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、12.68gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と1.41gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物A8の分散液A8−Dを得た。得られたカプセル化物A8の分散液A8−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は97nmであった。
【0177】
〔比較例1〕
(カプセル化物B1の製造)
200gの上記シアン顔料分散液SP1−D2を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.93g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、13.5gのベンジルメタクリレート、9.0gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、22.5gのラウリルメタクリレートを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)2.63gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.69gの過硫酸カリウムを50gのイオン交換水に溶解した過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合した。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、固形分濃度が15重量%に濃縮し、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物B1の分散液B1−Dを得た。得られたカプセル化物A1の分散液B1−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は80nmであった。
【0178】
〔比較例2〕
(カプセル化物B2の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.49gのベンジルメタクリレート、5.89gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.38gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)を混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物B2の分散液B2−Dを得た。得られたカプセル化物B2の分散液B2−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は115nmであった。
【0179】
〔比較例3〕
(カプセル化物B3の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.49gのベンジルメタクリレート、5.89gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.38gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と1.41gの架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−OOC(CH3)C=CH2(n≒9)(新中村化学工業株式会社製NKエステル9G(水溶性))を混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物B3の分散液B3−Dを得た。得られたカプセル化物B3の分散液B3−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は75nmであった。
【0180】
〔比較例4〕
(カプセル化物B4の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.49gのベンジルメタクリレート、5.89gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.38gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と1.41gの架橋性モノマーネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製NKエステルNPG(疎水性))を混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物B4の分散液B4−Dを得た。得られたカプセル化物B4の分散液B4−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は97nmであった。
【0181】
〔参考例1〕
(カプセル化物C1の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、7.49gのベンジルメタクリレート、5.89gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、13.38gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と0.014gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物C1の分散液C1−Dを得た。得られたカプセル化物C1の分散液C1−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は112nmであった。
【0182】
〔参考例2〕
(カプセル化物C2の製造)
100gの上記シアン顔料分散液PS1−D1を反応容器に入れ、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩を0.97g添加し混合後、反応容器を超音波洗浄機VS−100IIIの洗浄槽に入れ、発振周波数45kHzで30分間超音波を照射した。次いで、6.15gのベンジルメタクリレート、4.84gのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、10.99gのラウリルメタクリレート、1.41gのオクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂株式会社製ブレンマー50POEP−800B)と4.79gの上記架橋性モノマーCH2=C(CH3)COO−(C24O)n−(C36O)e−(C24O)p−OOC(CH3)C=CH2(n+p≒6、e≒12)の新中村化学工業株式会社製NKエステル1206PEを混合溶解後に反応容器に入れて混合した。これに、100gのイオン交換水に溶解したアニオン性重合性界面活性剤アデカリアソープSR−10(株式会社アデカ製)1.77gを加えて混合し、さらに300gのイオン交換水を加えて1時間混合した。次いで、この反応容器に攪拌装置、還流冷却器、温度調節器、窒素導入管及び滴下漏斗をセットし、窒素気流下で、内容物を攪拌しながら内容物の温度が80℃になるまで昇温した。そして、80℃を保持した状態で、窒素気流下、0.67gの過硫酸カリウムを100gのイオン交換水に溶解させた過硫酸カリウム水溶液を一定速度で滴下し、滴下終了後、5時間重合させた。重合終了後、1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整した後、孔径1μlのメンブレンフィルターで濾過し粗大粒子を除去した。さらに、分画分子量100000のフィルターを用いて限外濾過を行い、原液の約100倍の透過液量となるまでイオン交換水で洗浄し、濃縮して固形分濃度を15重量%に調整し、さらに1mol/l水酸化カリウム水溶液でpH8に調整して、目的のカプセル化物C2の分散液C2−Dを得た。得られたカプセル化物C2の分散液C2−Dをイオン交換水で1000倍に希釈し、マルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒子径を測定した。z−平均粒子径は87nmであった。
【0183】
(ポリマー転化率の評価)
上記実施例、比較例および参考例のカプセル化物の製造において、モノマー成分のポリマーへの転化率を次のようにして求めた。カプセル化物の分散液(試料)に対して限外濾過を行って未反応物を除去した後、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR6000 TG/DTAにて、30℃〜500℃まで昇温速度15℃/分にて熱重量測定を行い得られたポリマー重量%と顔料重量%と仕込みモノマー重量%とからポリマー転化率を求めた。
ポリマー転化率(%)=[{(ポリマー重量%)/(ポリマー重量%+顔料重量%)}/{(モノマー重量%)/(モノマー重量%+顔料重量%)}]×100
【0184】
上記ポリマー転化率の評価結果を以下に示した。
【0185】
【表1】

本発明の上記の架橋性モノマーを使用した実施例1〜実施例8及び参考例1及び2はポリマー転化率が86%以上であったのに対し、上記架橋性モノマーを使用しなかった比較例1は80%、比較例2は83%と低い値であった。また、架橋性モノマーに水溶性のものを使用した場合や疎水性のものを使用した場合にもポリマー転化率は低い値を示した。このことから、本発明の架橋性モノマーの使用は、第1のイオン性重合性界面活性剤、第1のイオン性モノマー、第2のイオン性重合性界面活性剤、疎水性モノマー等の重合成分のポリマーへの転化を促し、目的のカプセル化物の収率を高める効果があることがわかる。
【0186】
(カプセル化物の粒子径の評価)
上記実施例及び比較例並びに参考例について、得られたカプセル化物の分散液をイオン交換水で1000倍に希釈してマルバーン社製ゼータ電位・粒子径測定装置ゼータサイザーナノで動的光散乱法によって粒度分布を測定しz−平均粒子径を求めた。
【0187】
【表2】

架橋性モノマーが水溶性である場合(比較例3)は、本発明の上記の架橋性モノマーを使用した場合(実施例8)に比較して粒子径が小さかった。また、架橋性モノマーが疎水性である場合(比較例4)もまた粒子径が小さかった。このことから、本発明の架橋性モノマーの使用は、第1のイオン性重合性界面活性剤、第1のイオン性モノマー、第2のイオン性重合性界面活性剤、疎水性モノマー等の重合成分の配置形態が極めて高度に制御された最外殻に水相に向かってイオン性基が配向した状態でのポリマーへの転化が促進される効果があることがわかる。
【0188】
(カプセル化物の機械特性)
上記実施例及び比較例並びに参考例をシャーレに入れて70℃で24時間の条件で水分を除去し、得られた乾燥物の状態を観察した。
A:柔軟で膜強度がある。
B:硬く膜強度がある。
C:柔軟であるが、Aに比較して膜強度がない。
D:柔軟であるが膜強度はない。
E:成膜しない。あるいは、硬くて脆さがある。
【0189】
【表3】

本発明の上記の架橋性モノマーを使用した実施例2、実施例4〜8及び参考例1及び2の乾燥物は、本発明の上記架橋性モノマーを使用していない比較例2の乾燥物が柔軟ではあるが膜強度がない状態なのに対して、上記架橋性モノマーの使用量(添加量)に応じて機械特性が変わることがわかる。上記架橋性モノマーの添加量が0.1重量%より少ない参考例1(添加量:0.05重量%)の乾燥物は比較例2と機械特性は変わらず、上記架橋性モノマーの添加量が15重量%を超える参考例2(添加量:17重量%)の乾燥物は成膜せず、脆かった。上記架橋性モノマーの添加量が0.1重量%(実施例4)の乾燥物は柔軟ではあるが膜強度は添加量が1重量%(実施例5)の乾燥物に比べて弱かった。上記架橋性モノマーの添加量が10重量%(実施例6)、15重量%(実施例7)の乾燥物は膜強度のある硬い膜状物であった。上記架橋性モノマーの添加量が1重量%(実施例5)、3重量%(実施例2)、5重量%(実施例8)の乾燥物は、柔軟で膜強度のある膜状物であった。
【0190】
(カプセル化物の耐溶剤性の評価I)
上記実施例及び比較例並びに参考例をシャーレに入れて70℃で24時間の条件で水分を除去し、トリクロロエチレンを加えて状態の変化を目視で確認した。
A:変化なし。乾燥したカプセル化物に膨潤や溶解等が観察されない。
B:乾燥したカプセル化物が僅かに膨潤している。
C:乾燥したカプセル化物が膨潤している。
D:乾燥したカプセル化物の膨潤が激しいか、溶解状態にある。
【0191】
【表4】

【0192】
(カプセル化物の耐溶剤性の評価II)
上記実施例及び比較例並びに参考例をシャーレに入れて70℃で24時間の条件で水分を除去し、イオン交換水に界面活性剤オルフィンE1010を5重量%溶解した評価液を加えて状態の変化を目視で確認した。
A:変化なし。乾燥したカプセル化物に膨潤や溶解、液の着色等が観察されない。
B:乾燥したカプセル化物が僅かに膨潤しているが液の着色は認められない。
C:乾燥したカプセル化物が膨潤し、液の着色が認められる。
D:乾燥したカプセル化物の膨潤が激しいか、溶解状態にあり、液の着色が認められる。
【0193】
【表5】

【0194】
〔インク組成物〕
(インク組成物A1の製造)
グリセリン15g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3g、1,2−ヘキサンジオール2g、トリメチロールプロパン5g、2−ピロリドン1g、オルフィンE1010 1g、プロキセルXL−2(アビシア社製)0.05g、及びイオン交換水49.95gを混合し、さらにトリエタノールアミン3gを加えて混合し、液状混合物を得た。この液状混合物を、20gの上記カプセル化物A1の分散液A1−Dに添加し、攪拌装置を用いてカプセル化物を分散させて、目的のインク組成物A1を得た。
【0195】
(インク組成物A2の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A2の分散液A2−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A2を得た。
【0196】
(インク組成物A3の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A3の分散液A3−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A3を得た。
【0197】
(インク組成物A4の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A4の分散液A4−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A4を得た。
【0198】
(インク組成物A5の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A5の分散液A5−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A5を得た。
【0199】
(インク組成物A6の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A6の分散液A6−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A6を得た。
【0200】
(インク組成物A7の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A7の分散液A7−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A7を得た。
【0201】
(インク組成物A8の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物A8の分散液A8−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物A8を得た。
【0202】
(インク組成物B1の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物B1の分散液B1−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物B1を得た。
【0203】
(インク組成物B2の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物B1の分散液B2−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物B2を得た。
【0204】
(インク組成物B3の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物B3の分散液B3−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物B3を得た。
【0205】
(インク組成物B4の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物A1の分散液A1−Dに代えて20gの上記カプセル化物B4の分散液B4−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物B4を得た。
【0206】
(インク組成物C1の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物C1の分散液C1−Dに代えて20gの上記カプセル化物C1の分散液C1−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物C1を得た。
【0207】
(インク組成物C2の製造)
上記(インク組成物A1の製造)において、20gのカプセル化物C2の分散液C2−Dに代えて20gの上記カプセル化物C2の分散液C2−Dを用いた以外は上記(インク組成物A1の製造)と同様の方法により、目的のインク組成物C2を得た。
【0208】
(インク組成物の保存安定性の評価)
上記のインク組成物をガラス瓶に入れ密栓後、60℃で2週間放置して、放置前後におけるインク組成物の物性値(粘度、表面張力)の変動程度を評価し、放置前後の物性値に変化がみられないものをA(保存安定性良好)、放置前後の物性値に変化がみられるものをBとした。この結果を下記表6に示す。
【0209】
(インク組成物の目詰まり防止性の評価)
上記のインク組成物を、インクジェットプリンタPX−V630(セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに充填し、さらにクリーニング動作を繰り返すことで該プリンタの記録ヘッドに充填し、記録ヘッドのノズルからインク組成物が吐出していることを印字によって確認後、ノズルにキャップをしない状態で該プリンタを40℃の環境に1ヶ月間放置した。放置後、プリンタの電源を入れ、全ノズルの吐出が可能となる(回復する)までに要したクリーニング動作の回数をカウントし、該回数が4回以内で回復するものをA(目詰まり防止性良好)、該回数が5〜6回で回復するものをB、該回数が7〜10回で回復するものをCとした。この結果を下記表6に示す。
【0210】
(インク組成物の定着性の評価)
インクジェットプリンタPX−V630(セイコーエプソン社製)用インクカートリッジに上記のインク組成物を充填して該プリンタに装填した。100%dutyで普通紙(Xerox P:Xerox社)上に10mm×10mmの領域をベタ印刷し、25℃で1時間放置後、イエロー水性蛍光ペンZEBRA(登録商標) PEN2(商品名、ゼブラ社製)のペン先に1kgの荷重がかかるようにして速度10mm/秒で上記の印刷領域から非印刷域に向かって擦り、インクによる汚れが発生するかどうかを観察した。得られた結果を以下の評価基準を用いて評価した。得られた結果を下記表6に示す。
〔評価基準〕
A:3回以上擦っても印刷領域に全く汚れが生じない。
B:2回擦っても印刷領域に全く汚れが生じない。
C:1回の擦りでは印刷領域に汚れが生じないが、2回目の擦りで汚れが発生する。
D:1回の擦りで印刷領域に汚れが発生する。
【0211】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】表面にアニオン性界面活性剤2が吸着した芯物質(表面に電荷を有する芯物質)が水性溶媒に分散した状態に、芯物質に吸着したアニオン性界面活性剤2と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、芯物質に吸着したアニオン性界面活性剤2と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマー3と構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマー7と疎水性モノマー5と第2のイオン性重合性界面活性剤4とを共存させてアドミセルを形成する様子を示す模式図。
【符号の説明】
【0213】
1…芯物質、2…アニオン性界面活性剤、3…カチオン性モノマー(第1のイオン性重合性モノマー)及び/又はカチオン性重合性界面活性剤(第1のイオン性重合性界面活性剤)、4…アニオン性重合性界面活性剤(第2のイオン性重合性界面活性剤)、7…構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマー、5…疎水性モノマー、21,41…アニオン性基、31…カチオン性基。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電荷を有する芯物質がポリマーを主成分とする壁材によって被覆され、該ポリマーが下記(I)〜(IV)を有することを特徴とするカプセル化物。
(I)上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(II)疎水性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(III)構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーから誘導された繰り返し構造単位。
(IV)上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤から誘導された繰り返し構造単位。
【請求項2】
前記架橋性モノマーが、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のカプセル化物。
【化1】

【請求項3】
前記架橋性モノマーが、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のカプセル化物。
【化2】

【請求項4】
前記架橋性モノマーが、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のカプセル化物。
【化3】

【請求項5】
前記芯物質が色材であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のカプセル化物。
【請求項6】
表面に電荷を有する芯物質が、ポリマーを主成分とする壁材によって被覆されたカプセル化物の製造方法であって、(1)下記工程1、工程2a、工程3a及び工程4aを有するか、又は(2)下記工程1、工程2b、工程3b及び工程4bを有することを特徴とするカプセル化物の製造方法。
工程1:上記芯物質を含む水性溶媒に、該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーを添加・混合し、該芯物質の表面に第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーを吸着させる工程。
工程2a:上記工程1を経た混合液に疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーとを添加・混合する工程。
工程3a:上記工程2aを経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を添加・混合する工程。
工程4a:上記工程3aを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤とを重合して上記ポリマーを形成する工程。
工程2b:上記工程1を経た混合液に、上記芯物質の表面の電荷と同種又は反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第2のイオン性重合性界面活性剤を、添加・混合する工程。
工程3b:上記工程2bを経た混合液に疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーを添加・混合する工程。
工程4b:上記工程3bを経た混合液に重合開始剤を添加・混合し、上記第1のイオン性重合性界面活性剤及び/又は第1のイオン性モノマーと上記第2のイオン性重合性界面活性剤と疎水性モノマーと構造中に重合性基と疎水性基と親水性基とを有する架橋性モノマーとを重合して上記ポリマーを形成する工程。
【請求項7】
前記(1)及び/又は(2)の工程1において、上記水性分散液に該芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と疎水性基と重合性基とを有する第1のイオン性重合性界面活性剤、及び/又は、上記芯物質の表面の電荷と反対の電荷を有するイオン性基と重合性基とを有する第1のイオン性モノマーを添加・混合した後、該水性分散液に超音波を照射することを特徴とする請求項6に記載のカプセル化物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のカプセル化物を含有することを特徴とするインク組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−219968(P2009−219968A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65305(P2008−65305)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】