説明

カメラの測光装置

【課題】 ピント板の交換が可能なカメラにおいて、装着されたピント板の特性に応じて測光値を補正できる測光装置を提供する。
【解決手段】 ピント板交換式のSLRカメラにおいて、装着されているピント板の識別を測光系を用いて行う。識別されたピント板の種類により測光補正値を切り替える。ピント板識別モードを備え、二つの所定の絞り値における測光センサー出力の比率から装着されているピント板の拡散特性を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピント板の交換が可能なカメラの測光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に一眼レフカメラは、撮影レンズで形成された被写体像を撮像面と等価位置に配設されたピント板に結像させて、ピント板上の被写体像を、ペンタプリズム、アイピースレンズを介して正立実像として拡大観察するファインダー装置を備えている。一般にピント板にはアイピースレンズ側に拡散面を備え、撮影レンズ側にはフレネルレンズが形成されている。被写体の明るさに応じた露光量を決定するためにペンタプリズムの射出部、アイピースレンズ近傍に測光センサーと測光センサーを配置し、ピント板上の被写体像を測光センサーの受光面に再結像させて、その被写体像に応じた測光センサーの出力に基づいて被写体輝度を測定している。
【0003】
ピント板は装着される撮影レンズの開放Fnoと射出瞳距離に応じて拡散特性の異なるものが種々開発されている。Fnoの明るいレンズがカメラに装着された場合には拡散特性の大きいすなわち配光角の大きなピント板を装着することにより合焦状態の確認が容易となるし、比較的Fnoの暗いレンズがカメラに装着された場合には拡散特性の小さなピント板を装着することにより被写体像をより明るく観察ことができる。
【0004】
例えば、特許文献1参照。
【特許文献1】特開平11−237657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような多種のピント板の中から任意のピント板を交換し装着が可能なカメラでは、装着されたピント板の拡散特性によって、ピント板を透過する被写体光束の状態、透過光量などが相違する。そのため、ピント板が異なると測光センサーに入射する被写体光束の状態、光量なども変化してしまい、正確な測光ができない場合がある。
【0006】
本発明は、ピント板の交換が可能なカメラにおいて、装着されたピント板の特性に応じて測光値を補正できる測光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成する請求項1記載の発明は、ピント板を透過した被写体光束を受光して被写体輝度を測定する測光手段と、前記ピント板を着脱可能に保持するピント板保持手段とを備えたカメラであって、ピント板の種類を識別動作を行うピント板識別動作モードを有し、このピント板識別モードではレンズの絞りを変化させながら連続して複数回の測光動作を行い測光値の変化からピント板の拡散特性、フレネルレンズパワーを識別しピント板の種類を特定する。識別したピント板に対応した補正値を選択使用する制御手段を有し、また種類の特定できない未知のピント板に対しても絞りを変化させながらの測光動作により必要な補正値の算出を可能とした特徴を有するカメラの測光装置である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明では既存の測光装置を用いて装着されたピント板の特性を判別することができその判別結果に基づき拡散特性に応じた測光補正値を用いることにより正確な測光動作が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づいて本発明を説明する。図1は、本発明を適用した一眼レフカメラの測光装置周辺の構成を示す断面略図である。図示しない撮影レンズから入射した被写体光束は、メインミラー6で反射し、撮像面7と等価な位置に配置されたピント板1、ペンタダハプリズム2に入射する。ペンタダハプリズム2内で反射され、射出した被写体光束の光軸中心付近の光束はアイピースレンズ群3を透過して、撮影者の眼に入る。
【0010】
アイピースレンズの上側には測光系を構成する測光レンズ4と分割測光センサー5が配置されている。ペンタダハプリズムから射出した光束を測光レンズ4により分割測光センサー5上にピント板の像として結像する。
【0011】
分割測光センサー5は、図2に示すように、5×3に分割された光電素子からなりピント板上の領域を対応する形で分割して測光することができる。測光センサー5の分割された各部位の出力値に応じて被写体の明るさを測定し、必要な露光量を決定する。同じFnoのレンズが装着されてもピント板の配光特性の違いにより測光センサーの出力値は異なる。ピント板の判別には51で示す画面中心に対応するセンサーの出力を用いる。画面中心のセンサーを用いることにより、撮影レンズの瞳位置による出力変化は発生しないため後でのべるピント板判別動作が安定して可能となる。
【0012】
図3には、このカメラの制御回路の要部を示している。図示実施の形態では、制御手段として、カメラ全体の動作を統括的に制御CPU101と撮影レンズ側に設置されレンズの制御を行うLPU102を備えている。レンズ側にあるLPUは絞り装置103が接続されその制御を行うとともに、レンズ固有情報を記憶したEEPROM104の情報をカメラ側CPU101に伝達する。
【0013】
一方、CPU101には、ピント板の種類に応じた測光モード、露出補正値などに関するデータが書き込まれた記憶手段としてEEPROM105が接続され、スイッチ手段として、電源のオン/オフを制御するメインスイッチ106、レリーズスイッチ107などが接続され、また絞り値やシャッタ速度などを変更するための操作スイッチ108、109、測光センサー5が接続されている。またCPU101には、カメラの主要機能であるシャッタ装置110、絞り値やシャッタ速度などの撮影情報を表示する表示装置111に接続されている。またモード切り替えスイッチ112がCPU101に接続されモード切り替えスイッチ112の操作によりピント板識別動作モードとすることができる。ピント板識別モードで識別されたピント板の種類はEEP−ROM105に記憶され、測光動作時には識別されたピント板固有の測光補正情報を用いて測光動作を行う。ピント板識別動作を図4のフローチャートを用いて説明する。カメラ操作者はカメラのピント板交換後、もしくは任意の時点でモード切り替え装置を操作してピント板判別モードにする(ステップ201)、カメラは表示装置111にピント板判別モードであることを表示する(ステップ202)、カメラはレンズが装着されていることを確認し、絞りを第1の所定値として第1の測光動作を行い第1の測光値を記憶する(ステップ203)。このときレンズ判別動作可能なレンズが装着されていない場合と所定の測光値以上の明るさが得られない場合はステップ202に戻り判別モードにあることを操作者に確認する。ステップ203において所定以上の出力が得られた場合、ただちに絞りを第2の所定値として第2の測光動作を行い第2の測光値を記憶する(ステップ204)。第1の測光値と第2の測光値を比較し装着されているピント板の判別を行う。判別されたピント板の種類をEEP−ROM105に記憶する。
【0014】
次に判別の原理について説明する。図1の測光光学系光軸9はファインダー光軸8に対して所定の角度を持って設置されている。ピント板に対するファインダー光軸と測光光学系の光軸を模式的に示した図が図5である。1はピント板、8はファインダー光軸、9は測光光学系の光軸でファインダー光軸8に対してαの角度をなしている。10はピント板1に入射角度0で入射する光線を示している。光線10はピント板1の拡散特性により最大12で示す矢印の方向に拡散しファインダー光軸8とβの角度をなす状態をしめす。一方、ピント板1の拡散特性が大きな場合には最大13で示す矢印の方向に拡散しファインダー光軸8とβ´の角度まで拡散する。α<β´であるからレンズのFnoが小さくどんなに細い光線がピント板中央に入射しても画面中心に対応するセンサー出力値を得ることが出来る。α>βではFnoが小さく細い光線が入射する場合測光系への入射光束は無く出力が得られないことになる。実際の撮影レンズではピント板に入射する光線は入射角度0だけでなくレンズのFnoに対応する光線が入射する。図中の13をレンズの周辺光束としてファインダー光軸となす角をγとすれば、ピント板の拡散特性によりピント板から射出する角度はγ+βとなりβは拡散特性により異なる。γ+βが測光光学系のファインダー光軸8となす角αより小さくなると測光系へ入射する光束がなくなり測光センサーの出力は極端に小さくなる。従ってレンズの絞り機構を用いてFnoすなわちγを変化させ測光センサーの出力が小さくなるγを探すことによりβの値を判定することが可能となる(ここでαは既知であるとする)。ピント板の特性による測光出力のγ特性を図6に示す。角度をα=8°、β=5°もしくはβ=10°とする。β=5°の場合γが5°程度までは緩やかに出力が低下するが、5°を境としてそれよりもγを小さくすると急激に出力が低下しγ=3°程度で出力がほぼ0となる。一方、β=10°の場合γの低下に伴いセンサー出力値は緩やかに低下する。γ=5°の時の測光センサー出力とγ=2°の測光センサー出力値を比較することにより装着されているピント板の拡散角が5°であるか10°であるか判別できる。γ=5°としたときの測光センサー出力をE1、γ=2°としたときの測光センサー出力をE2としたときE2/E1≒0であればβ=5°のピント板が装着されていると判別でき、E2/E1≒0.2であった場合はβ=10°のピント板が装着されていると判別できる。
【0015】
図6でしめす曲線はピント板の特性によって異なり、あらかじめγすなわちFnoに応じたセンサー出力を測定しE2/E1の値を記憶しておけば複数の特性のピント板を判別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例の構成を表す図。
【図2】本発明を構成する測光センサーを表す図。
【図3】本発明の構成する制御回路要部を示す図。
【図4】ピント板判別のフローチャート。
【図5】測光光学系の光軸とピント板拡散特性の関係を示す図。
【図6】絞り値に応じた測光出力とピント板拡散特性の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0017】
1 ピント板
2 ペンタプリズム
3 接眼レンズ
4 測光レンズ
5 測光センサー
6 主ミラー
7 撮像面
8 ファインダー光軸
9 測光光学系光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピント板を透過した被写体光束を受光して被写体輝度を測定する測光手段と、ピント板を着脱可能とする保持部材を備え、装着されたピント板の特性を測光手段により検出し、測光補正パラメータを前記測光手段のピント板特性検出結果に基づき決定するパラメータ決定手段とを有する事を特徴とするカメラの測光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−139188(P2006−139188A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330480(P2004−330480)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】