説明

カメラシステム、ボイスコイルモータの駆動装置、およびボイスコイルモータの駆動方法

【課題】ボイスコイルモータなどのアクチュエータの共振振動を、簡単な構成でしかも短時間に低減することができ、これによりこのようなアクチュエータを用いたAF制御の高速化およびその構成の小型化を実現することができるカメラシステムを得る。
【構成】カメラシステムにおいて、画像信号からレンズの目標位置を算出するレンズ位置算出部6と、レンズ目標位置を示す信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路7と、そのフィルタ出力Asに基づいてレンズ1を駆動するレンズ駆動部120とを備え、フィルタ回路7は、目標位置信号Lpから得られるレンズ移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部72と、該波形生成部72で生成された信号波形を、その振幅レベルがクロックベースで該出発位置に加算されるよう積分する積分処理部73とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステム、ボイスコイルモータの駆動装置、およびボイスコイルモータの駆動方法に関し、特に、オートフォーカス装置を有するカメラシステム、オートフォーカス装置などに使用されるボイスコイルモータの駆動装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のカメラシステムには、自動制御により被写体に焦点を合わせるオートフォーカス(以下、AFと称する)機能が搭載されている。AF機能は、フォーカスレンズを光軸方向へ移動させて、焦点距離を調整し、焦点を合わせる機能である。
【0003】
一般にカメラシステムのフォーカスレンズを光軸方向に移動させるアクチュエータとして、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)等が使用されている。ステッピングモータは、パルス電力を与えるごとに一定の角度だけ回転し、回転子の回転角を正確に制御することができる(例えば、特許文献1参照)。一方、VCMは、ボイスコイル(可動巻き線)と永久磁石とで構成され、ボイスコイルに電流を流すと、永久磁石の磁界中でボイスコイルが直線運動するもので、モータ負荷の高精度の位置決めが可能なものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−153592号公報
【特許文献2】特開2007−17706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクチュエータとして、ステッピングモータを用いる場合、パルス周波数が高すぎると同期外れで制御が乱れることがあるため、変化量が大きくなるに従い、駆動時間が長くなり、高速化が図れない。また、ステッピングモータは大きさが大きく、ノイズが大きいという問題点がある。
【0005】
一方、VCMを用いる場合、小型で、ノイズが小さいという特徴があるが、VCMを高速に動かした場合、図11に示すように、アクチュエータのバネ要素による共振振動が発生するため、実質上は振動が許容レベル以下まで減衰するのに時間がかかり、高速動作することができない。
【0006】
そこで、従来のカメラシステムでは、VCMの制御に用いる制御信号を、上記共振周波数と同じ中心周波数のノッチフィルタにより処理して、上記制御信号に含まれる共振周波数の利得を低減することで、アクチュエータの制御を安定させるようにしている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかし、ノッチフィルタは、1つあたり1つの中心周波数に対応するため、共振周波数が複数ある場合、各共振周波数を中心周波数とする複数のノッチフィルタを直列に接続して、制御信号に対して順次ノッチフィルタ処理をかけることになる。そのため、共振周波数の数に比例して、処理時間がかかることになる。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、ボイスコイルモータなどのアクチュエータの共振振動を、簡単な構成でしかも短時間に低減することができ、これによりこのようなアクチュエータを用いたAF制御などの高速化およびその構成の小型化を実現することができるカメラシステム、ボイスコイルモータの駆動装置およびその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカメラシステムは、被写体の撮像により画像信号を出力する撮像素子と、入射光を該撮像素子に集光するレンズと、該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備えたカメラシステムであって、該画像信号に基づいて該レンズの目標位置を示す目標位置信号を算出するレンズ位置算出部と、該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、該フィルタ回路からのフィルタ出力に基づいて、該レンズがその出発位置からその目標位置に移動するよう該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備え、該フィルタ回路は、該目標位置信号から得られる、該レンズの出発位置からその目標位置までのレンズ移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、該積分処理部の出力信号を該フィルタ出力として出力するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0010】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形として三角波を生成することが好ましい。
【0011】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記三角波の傾斜辺の傾きにより、該レンズがその出発位置からその目標位置まで移動するのに要する収束時間が設定されることが好ましい。
【0012】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記積分処理部で前記三角波が積分される際に、該三角波の中間位置で、該三角波の振幅レベルを補正することが好ましい。
【0013】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記積分処理部で前記三角波を積分する際に、該三角波の中間位置以外の位置にて該三角波の振幅レベルを補正することが好ましい。
【0014】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形として三角波以外の信号波形を生成することが好ましい。
【0015】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形として、円あるいは楕円の上半部周縁の形状を有する信号波形を生成することが好ましい。
【0016】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形として、その振幅レベルがその単調増加部分では増加率が徐々に増大し、その単調減少部分では減少率が徐々に減少する信号波形を生成することが好ましい。
【0017】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形として、その振幅レベルが一定ステップを単位として基準クロックのタイミングで変化する信号波形を生成することが好ましい。
【0018】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記信号波形は、その振幅レベルのピーク位置が該信号波形の中間位置に位置していることが好ましい。
【0019】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記信号波形は、その振幅レベルのピーク位置が該信号波形の中間位置以外の位置に位置していることが好ましい。
【0020】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形のピーク位置での振幅レベルを前記レンズ移動量に基づいて補正することが好ましい。
【0021】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記信号波形のピーク位置以外での振幅レベルを前記レンズ移動量に基づいて補正することが好ましい。
【0022】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記フィルタ回路は、そのフィルタ出力である前記積分処理部の出力が更新される更新時間を、前記基本クロックの周期を単位として設定する更新時間設定部を有することが好ましい。
【0023】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記フィルタ出力が、前記基本クロックの1周期単位で更新されるよう、前記更新時間設定部で設定された更新時間に基づいて前記信号波形を生成することが好ましい。
【0024】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記波形生成部は、前記フィルタ出力が、前記基本クロックの2周期以上の単位で更新されるよう、前記更新時間設定部で設定された更新時間に基づいて前記信号波形を生成することが好ましい。
【0025】
本発明は、上記カメラシステムにおいて、前記レンズ駆動部は、前記レンズを移動させるボイスコイルモータと、該ボイスコイルモータを前記フィルタ回路の出力に基づいて駆動するモータ駆動部とを有することが好ましい。
【0026】
本発明に係るボイスコイルモータの駆動装置は、負荷を直線移動させるボイスコイルモータを駆動する駆動装置であって、該負荷の目標位置を示す目標位置信号を、該負荷の駆動状態に基づいて算出する目標位置算出部と、該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、該フィルタ回路からのフィルタ出力に基づいて、該負荷がその出発位置からその目標位置に移動するよう該ボイスコイルモータを駆動するモータ駆動部とを備え、該フィルタ回路は、該目標位置信号から得られる、該負荷の出発位置からその目標位置までの負荷移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、該積分処理部の出力信号を該フィルタ出力として出力するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0027】
本発明に係るボイスコイルモータの駆動方法は、負荷を直線移動させるボイスコイルモータを駆動する駆動方法であって、該負荷の目標位置を示す目標位置信号を、該負荷の駆動状態に基づいて算出する目標位置算出ステップと、該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタステップと、該フィルタ処理が施された目標位置信号に基づいて、該負荷がその出発位置からその目標位置に移動するよう該ボイスコイルモータを駆動する駆動ステップとを含み、該フィルタステップは、該目標位置信号から得られる、該負荷の出発位置からその目標位置までの負荷移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成ステップと、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分ステップとを含み、該積分ステップで得られた該信号波形の積分値を、該フィルタ処理が施された目標位置信号とするものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0028】
以下、本発明の作用について説明する。
【0029】
本発明においては、被写体の撮像により画像信号を出力する撮像素子と、入射光を該撮像素子に集光するレンズと、該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備えたカメラシステムにおいて、画像信号からレンズの目標位置を算出するレンズ位置算出部と、レンズ目標位置を示す信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、そのフィルタ出力に基づいてレンズを駆動するレンズ駆動部とを備え、フィルタ回路は、目標位置信号から得られるレンズ移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、積分処理部の出力信号をフィルタ出力として出力するので、レンズが緩やかに始動し、緩やかに停止する波形を生成し、その波形に従って、ボイスコイルモータなどのアクチュエータを制御することで、アクチュエータの共振振動を、簡単な構成によりしかも短時間で低減することができる。
【0030】
また、前記波形生成部は、前記積分処理部で信号波形が積分される際に、該信号波形の振幅レベルを補正するので、レンズの移動量に応じたフィルタ処理を行うことができる。
【0031】
また、積分処理に用いる信号波形の波形は、種々の波形を設定可能であるので、レンズの重量やレンズ駆動系の特性に応じたレンズの駆動制御が可能となる。
【0032】
また、前記フィルタ回路は、そのフィルタ出力である前記積分処理部の出力を更新する更新時間を、基本クロックの周期を単位として設定する更新時間設定部を有するので、レンズ駆動制御を応答性の早いものから遅いものまで実現できる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、被写体の撮像により画像信号を出力する撮像素子と、入射光を該撮像素子に集光するレンズと、該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備えたカメラシステムにおいて、該画像信号に基づいて該レンズの目標位置を示す目標位置信号を算出するレンズ位置算出部と、該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、該フィルタ回路からのフィルタ出力に基づいて、該レンズがその出発位置からその目標位置に移動するよう該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備え、該フィルタ回路は、該目標位置信号から得られる、該レンズの出発位置からその目標位置までのレンズ移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、該積分処理部の出力信号を該フィルタ出力として出力するので、ボイスコイルモータなどのアクチュエータの共振振動を、簡単な構成でしかも短時間に低減することができ、これによりこのようなアクチュエータを用いたAF制御の高速化およびその構成の小型化を実現することができる効果がある。
【0034】
本発明によれば、負荷を直線移動させるボイスコイルモータを駆動する駆動装置において、該負荷の目標位置を示す目標位置信号を、該負荷の駆動状態に基づいて算出する目標位置算出部と、該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、該フィルタ回路からのフィルタ出力に基づいて、該負荷がその出発位置からその目標位置に移動するよう該ボイスコイルモータを駆動するモータ駆動部とを備え、該フィルタ回路は、該目標位置信号から得られる、該負荷の出発位置からその目標位置までの負荷移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、該積分処理部の出力信号を該フィルタ出力として出力するので、ボイスコイルモータの共振振動を低減することができ、これによりこのようなボイスコイルモータを用いたAF制御などの高速化およびその構成の小型化を実現することができる効果がある。
【0035】
本発明によれば、負荷を直線移動させるボイスコイルモータを駆動する駆動方法において、該負荷の目標位置を示す目標位置信号を、該負荷の駆動状態に基づいて算出する目標位置算出ステップと、該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタステップと、該フィルタ処理が施された目標位置信号に基づいて、該負荷がその出発位置からその目標位置に移動するよう該ボイスコイルモータを駆動する駆動ステップとを含み、該フィルタステップは、該目標位置信号から得られる、該負荷の出発位置からその目標位置までの負荷移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成ステップと、該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分ステップとを含み、該積分ステップで得られた該信号波形の積分値を、該フィルタ処理が施された目標位置信号とするので、ボイスコイルモータの共振振動を低減することができ、これによりこのようなボイスコイルモータを用いたAF制御などの高速化およびその構成の小型化を実現することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1によるカメラシステムを説明する図であり、図1(a)はその全体構成を示し、図1(b)は、該カメラシステムを構成するフィルタ回路の構成を示している。
【0038】
この実施形態1のカメラシステム100は、被写体の撮像により画像信号Idを出力する撮像素子2と、入射光Lを該撮像素子2に集光するレンズ1と、レンズ1を駆動するレンズ駆動部120と、撮像素子2から出力される画像信号Idに基づいて、YUVなどの映像信号を出力するとともに、レンズ駆動部120の制御信号Asを生成する信号処理部110とを有している。ここで、この撮像素子2は、CCD型イメージセンサあるいはCMOS型イメージセンサで構成されている固体撮像素子である。
【0039】
信号処理部110は、撮像素子2からの画像信号Idのデジタル信号処理を行って輝度信号を含む映像信号Vsを出力するとともに、各システムの制御を行うデジタル信号処理部4と、該映像信号Vsに含まれる、例えば輝度信号に基づいて、オートフォーカス制御のためのデータ(AF用データ)を積算するAF積算部5とを有している。また、信号処理部110は、該AF積算部5のAF用データ積算値出力Daに基づいて、つまり、どの程度ピントが合っているかに応じて、レンズ1を移動させるべき目標位置を計算して、目標レンズ位置を示す目標位置信号Lpを出力するレンズ位置計算部6と、該目標位置信号Lpに対してその変化が緩和されるよう、共振振動を低減させるためのフィルタ処理を施すフィルタ回路7と、該フィルタ回路7からのフィルタ出力FLpをD/A変換して、レンズ駆動部120の制御信号Asとして出力するD/A変換器8とを有している。また、上記レンズ駆動部120は、該制御信号Asに基づいて、レンズ1がその出発位置からその目標位置まで移動するようレンズ1を駆動するものであり、このレンズ駆動部120は、レンズ1を移動させるアクチュエータ10と、該アクチュエータ10を上記制御信号Asに基づいて駆動するアクチュエータ駆動部9とを有しており、このアクチュエータ10にはボイスコイルモータが用いられている。
【0040】
ここで、フィルタ回路7は、前回のレンズの駆動により決まる現在の停止位置をその出発位置X1として保持しているラッチ回路75と、該ラッチ回路75から取得した出発位置X1から、上記目標位置信号Lpが示す目標位置X2までのレンズ移動量DX(|X2−X1|)を計算する移動量計算部71と、該レンズ移動量DXに応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部72とを有している。なお、ラッチ回路75は、積分処理部73の出力が一定時間の間変化しないときに、この積分処理部73の出力をラッチする構成としている。
【0041】
ここで、この波形生成部72は、外部からの設定信号により、基準クロックの1周期を単位として、三角波(delta)の振幅レベルを順次出力するように設定されている。
【0042】
つまり、フィルタ回路7は、基本クロックCLを生成するクロック生成部70eと、フィルタ回路外部からの指示により、該信号波形の振幅レベルの変化の単位を基準ステップ幅の何倍にするかを設定し(DSTEP)、その設定値を示すステップ幅設定信号Scを波形生成部72に出力するステップ設定部70cと、上記波形生成部72にて信号波形の振幅レベルを出力するタイミングを、フィルタ外部からの指示により設定し、設定したタイミングを示すタイミング情報Utを該波形生成部72に出力する更新タイミング設定部70fとを有している。フィルタ回路7は、フィルタ回路外部からの指示により、上記波形生成部72で生成した信号波形の振幅レベルを補正する位置を指定し、この補正位置を示す補正位置指示信号Pdを上記波形生成部72に出力する補正位置指定部70aを有している。
【0043】
さらに、フィルタ回路7は、波形生成部72で生成した信号波形Wfを、その振幅レベルが上記レンズ1の出発位置X1に加算されるよう、クロックベースで、つまり、クロック生成部70eで生成した基本クロックCLに従って積分する積分処理部73を有している。
【0044】
例えば、ステップ設定部70cでは振幅レベルを変化させる幅(ステップ幅)は基準ステップ幅の1倍(DSTEP=1)としており、さらに、更新タイミング設定部70fでは、該波形生成部72で信号波形の振幅レベルを更新する更新間隔を1基準クロック期間としている。また、補正位置指定部70aにて、信号波形の振幅を補正すべき補正位置が信号波形の中間位置、つまり出発位置と目標位置との間の中間点(この場合2クロック目)に設定されている。
【0045】
この場合、レンズの移動量(|X2−X1|)が4であるとすると、波形生成部72では、図6(a)に示すような、1クロック毎にステップ幅(DSTEP=1)だけ変化する面積が4である実質的な三角波W4が、3クロック期間にわたって形成される。このとき、積分処理部73では、図6(b)に示すように、1クロック目で、1ステップ幅が出発位置X1に加算され、2クロック目で、2ステップ幅がさらに加算され、3クロック目で、1ステップ幅がさらに加算され、この加算処理(波形W4の積分処理)により、目標位置信号の信号レベル(WDOUT)は出発位置X1から目標位置X2に相当するレベルに達し、レンズの移動量は4ステップ幅に相当する距離となる。
【0046】
また、上記の場合で、レンズの移動量(|X2−X1|)が5であるとすると、波形生成部72では、図7(a)に示すような、面積が5である実質的な三角波W5が、3クロック期間にわたって形成される。この三角波W5は、1クロック毎にステップ幅(DSTEP=1)だけ変化する上記三角波W4の中間位置でその振幅値を1ステップ幅だけ増加させる補正を行って得られたものである。このとき、積分処理部73では、図7(b)に示すように、1クロック目で、1ステップ幅が出発位置X1に加算され、2クロック目で、3ステップ幅がさらに加算され、3クロック目で、1ステップ幅がさらに加算され、この加算処理(波形W5の積分処理)により、目標位置信号の信号レベル(WDOUT)は出発位置X1から目標位置X2に相当するレベルに達し、レンズの移動量は5ステップ幅に相当する距離となる。
【0047】
次に動作について説明する。
【0048】
このようなカメラシステム1では、被写体からの光Lがレンズ1を介して撮像素子2に入射すると、撮像素子2では入射光Lの光電変換により画像信号Idを生成して、信号処理部110に出力する。
【0049】
信号処理部110では、デジタル信号処理部4は、撮像素子2からの画像信号Idのデジタル信号処理を行って輝度信号を含む映像信号Vsを出力するとともに、各システムの制御を行う。また、AF積算部5は、該映像信号Vsに含まれる、例えば輝度信号に基づいて、オートフォーカス制御のためのデータ(AF用データ)の積算を行う。さらに、信号処理部110では、レンズ位置計算部6は、該AF積算部5のAF用データ積算値出力Daに基づいて、つまり、どの程度ピントが合っているかに応じて、レンズ1を移動させるべき目標位置を計算して、目標レンズ位置を示す目標位置信号Lpをフィルタ回路7に出力する。フィルタ回路7は、この目標位置信号Lpに対してその変化が緩和されるよう、共振振動を低減させるためのフィルタ処理を施す。これにより上記フィルタ回路7に入力された目標位置信号Lpは、図2に示すように、フィルタ回路でのフィルタ処理により変化の緩やかな信号(出力)FLpとなる。
【0050】
このフィルタ回路7からのフィルタ出力FLpがD/A変換器8に入力されると、D/A変換器8は、フィルタ出力FLpをD/A変換してレンズ駆動部120にその制御信号Asとして出力する。レンズ駆動部120は、この制御信号Asに基づいて、レンズ1がその出発位置X1からその目標位置X2まで移動するようレンズ1を駆動する。つまり、レンズ駆動部120では、アクチュエータ駆動部9がアクチュエータ10を駆動し、これによりアクチュエータ10であるボイスコイルモータがレンズ1を移動させる。
【0051】
以下では、上記フィルタ回路での処理について図3〜図5を用いて具体的に説明する。
【0052】
つまり、フィルタ回路7では、ラッチ回路75は、前回のレンズの駆動により決まる現在の停止位置をその出発位置X1として保持している。移動量計算部71は、該ラッチ回路75から取得した出発位置X1から、上記目標位置信号Lpが示す目標位置X2までのレンズ移動量DX(|X2−X1|)を計算し、波形生成部72は、該移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形として三角波(delta)を生成する(図3(b))。次に、生成されたdelta波形に対して、積分処理を行うことで波形(WDOUT)を生成する(図3(a))。レンズ駆動部120では、アクチュエータ駆動部9が、この生成されたWDOUT波形を用いて、VCM(アクチュエータ)10を制御することで、共振振動を低減させ、AF制御の高速化を図ることができる。
【0053】
ここで、delta、WDOUTは、以下の式1、式2aおよび式2bによって求められる。ステップ幅(DSTEP)、つまり信号波形を変化させる幅は、外部からステップ設定部70cにより任意に制御可能であるが、ここでは、ステップ幅は基準ステップ幅(DSTETP=1)の1倍としている。
【0054】
なお、図3中、Twは現在の積分位置、WCはその積分位置Twでのフィルタ出力値である。また、Tcは三角波(deltaC)の中間位置、Wthは中間位置Tcでのフィルタ出力値である。
【0055】
具体的には、フィルタ出力(WDOUT)は、図4に示すフローに従って生成される。
【0056】
まず、移動量(|X2−X1|)が算出されると(ステップS1)、図5(a)に示すように、三角波の振幅レベル(delta)が式2aに従って、1クロック目で1ステップ幅だけ増大する(ステップS2)。その後、この1ステップ幅が、式1に従って、出発位置X1に加算される(ステップS3)。
【0057】
WDOUT = WDOUT + delta ・・・式1
delta = delta + ステップ幅(DSTEP) (WDOUTが出発値から中間値Wthまで) ・・・式2a
その後、式3aに従って、三角波の振幅レベル(delta)を1ステップ幅だけ増大したときに、フィルタ出力が中間値を越えるか否かが判定される(ステップS4)。
【0058】
|X2−X1|−|現在値−X1|×2<0・・・式3a
ここで、ステップS4での判定の結果、フィルタ出力が中間値を越えない場合は、フィルタ出力が中間値を越えると判定されるまで、ステップS2〜S4の処理が繰り返し行われる。この間に図5(a)に示すように、三角波の振幅レベル(delta)は1ステップ幅づつ増大していき、フィルタ出力(WDOUT)は、徐々に増加率を高めて増加していく。
【0059】
また、ステップS4で、フィルタ出力が中間値を越えると判定された場合は、さらに、三角波の振幅レベルの補正が必要か否か判定される(ステップS5)。補正が必要でない場合は、ステップS7の処理が行われ、補正が必要である場合は、式3bに従って補正値が計算される(ステップS6)。
【0060】
つまり、開始値(出発位置)をX1とし、目標値(目標位置)をX2とした場合、三角波(delta)の面積は|X2−X1|となる必要あるが、一致しない場合があるため、フィルタ出力がX1とX2の中間値に達するときに、三角波の振幅レベルに補正値(delta_sp)を加算する。補正値(delta_sp)は、式3bにより求められる。
【0061】
delta_sp=|X2−X1|−|現在値−X1|×2・・・式3b
なお、ここで、現在値はフィルタ出力の現時点での値である。
【0062】
上記補正により、deltaの三角系面積と移動距離を一致させることができる。
【0063】
図7には上述したように、その補正の一例が示されている。
【0064】
図6では、上述したように、移動量(|X2−X1|)が4で、ステップ幅(DSTEP)=1の場合、delta補正を行うことなく、フィルタ処理が実施されている。
【0065】
一方、図7では、移動量が5で、ステップ幅=1の場合では、補正を行わず、1ステップずつ信号波形(三角波)の振幅レベルを変化させると、移動距離が5であるのに対して、面積が4になってしまうため、一致しない。そこで、式3bを用いて補正することで、中間地点で三角波の振幅レベル(delta)=3とすることで、三角波の面積=移動距離の関係が保たれる。
【0066】
その後、ステップS7では、式2bに従って、三角波の振幅レベルを1クロック毎に1ステップ幅だけ減少させる。このとき、クロック毎に、式1に従って、三角波の振幅が1クロック前のフィルタ出力に加算される(ステップS8)。
【0067】
delta = delta − ステップ幅(DSTEP )(WDOUTが中間値Wthから目標値まで) ・・・式2b
その後、三角波の振幅レベル(delta)が0になったか否かの判定が行われ(ステップS9)、三角波の振幅レベル(delta)が0であれば、今回の移動におけるフィルタ処理は終了し、三角波の振幅レベル(delta)が0でなければ、三角波の振幅レベル(delta)が0になるまで、ステップS7〜S9が繰り返し行われる。この間に図5(a)に示すように、三角波の振幅レベル(delta)は1ステップ幅づつ減少していき、フィルタ出力(WDOUT)は、徐々に増加率を小さくして、目標位置X2まで増加していく。
【0068】
このように本実施形態では、カメラシステムにおいて、画像信号からレンズの目標位置を算出するレンズ位置算出部6と、レンズ目標位置を示す信号Lpに対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路7と、そのフィルタ出力Asに基づいてレンズ1を駆動するレンズ駆動部120とを備え、フィルタ回路7は、目標位置信号Lpから得られるレンズ移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部72と、該波形生成部72で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部73とを有し、積分処理部73の出力信号WDOUTをフィルタ出力Asとして出力するので、ボイスコイルモータなどのアクチュエータの共振振動を、簡単な構成で低減することができ、しかもフィルタ処理時間を短くしてこのようなアクチュエータを用いたAF制御の高速化およびその構成の小型化を実現することができるカメラシステムを得る。
【0069】
つまり従来は、VCMの駆動制御において、急激な移動制御が行われる場合、共振振動が発生し(図11参照)、収束するまでに時間がかかってしまうという問題があったが、本発明のカメラシステムでは、目標とするレンズの移動位置に対して、急激に変化させるのではなく、緩やかに始動し、緩やかに停止するようにすることで、共振振動を抑圧し、AFの制御時間の短縮を図ることができる。
【0070】
このように、レンズ移動量の急激な変化を緩やかな変化に変換することで、VCMアクチュエータの固有振動(ばね要素起因)を抑圧でき、高速にAF制御可能なカメラシステムを提供することができる。
【0071】
また、波形生成部72は、積分処理部73で三角波が積分される際に、該三角波の中間位置で、該三角波の振幅レベルを補正するので、レンズの移動量に応じたフィルタ処理を行うことができる。
【0072】
また、積分処理に用いる信号波形(三角波の波形)は、ステップ設定部により、三角波の振幅レベルを変化させる単位であるステップ幅(DSTEP)を変更することにより変更可能であるので、レンズの重量やレンズ駆動系の特性に応じたレンズの駆動制御が可能となる。
【0073】
また、フィルタ回路7は、波形生成部72で信号波形の振幅レベルを更新する更新時間を、基本クロックの周期を単位として設定する更新時間設定部70dを有するので、レンズ駆動制御を応答性の早いものから遅いものまで実現できる。
【0074】
この更新間隔は外部から指定することが可能であり、図8(b)に示すように、更新期間Dud2(=2CLK間隔)で更新を行うことで、更新期間Dud1(=1CLK)時(図8(a))と比較して、信号波形である三角波の波形をより緩やかにすることができ、これによりフィルタ出力の変化をより緩やかにすることが可能である。また、これと同様のことを、ステップ設定部70fにてステップ幅(DSTEP)を変更することにより行うことが可能である。ここで、上記フィルタ出力の変化をより緩やかにするための更新期間は、更新期間Dud2(=2CLK間隔)に限らず、2クロック周期以上の期間であってもよい。
【0075】
なお、上記実施形態1では、delta幅補正(三角波の振幅レベルの補正)は、レンズの出発位置と目標位置との中間位置にて行っているが、上記波形生成部での信号波形の補正は、その他の位置でも可能である。
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2によるカメラシステムを説明する図であり、図9(a)はレンズ駆動部の制御信号をフィルタ処理するフィルタ回路の構成を示し、フィルタ回路の波形生成部での信号波形(図9(b))、補正した信号波形(図9(c))、およびフィルタ出力(図9(d))を示している。
【0076】
この実施形態2のカメラシステムは、実施形態1のカメラシステムにおけるフィルタ回路の波形生成部72に代えて、信号波形の振幅レベルを補正する位置を補正位置指定部70aからの指定により任意に設定可能な波形生成部72aを備えたものである。
【0077】
つまり、この実施形態2のフィルタ7aは、上記波形生成部72a以外の構成は実施形態1のフィルタ7と同一であり、この波形生成部72aは、移動量計算部71からのレンズ移動量DX、補正位置指定部70aからの補正位置指示信号Pd、およびステップ設定部70cからのステップ幅設定信号Scに基づいて、信号波形に対する補正位置と補正期間とを算出する演算部721と、該演算部721で算出された補正位置と補正期間とに基づいて、補正した信号波形の振幅レベルをクロックベースで出力する出力部722とを有している。
【0078】
このような構成の実施形態2では、波形生成部72aの演算部721では、移動量計算部71からのレンズ移動量DX、補正位置指定部70aからの補正位置指示信号Pd、およびステップ設定部70cからのステップ幅設定信号Scに基づいて、信号波形に対する補正位置と補正期間とを算出するので、補正位置指定部70aが、レンズの出発位置と目標位置で補正することを指定している場合は、演算部721は、ステップ設定部70cから指定されるステップ幅に基づいて、振幅レベルをクロックベースで積算して得られる積算値が、レンズ移動量DXを超えないような信号波形(三角波)を予め演算し、この演算により得られた信号波形の面積(振幅レベルの積算値)とレンズ移動量との差分から、レンズの出発位置と目標位置にてステップ幅(DSTEP=1)を追加すべき期間を決定する。ここでは、信号波形の補正位置はレンズの出発位置と目標位置とであるので、補正量(追加するステップ幅)は最小幅(DSTEP=1)としている。
【0079】
そして、出力部722は、クロックベースで信号波形の振幅を出力するとき、演算部で得られた、ステップ幅(DSTEP=1)を追加すべき期間にて、振幅レベルとしてステップ幅(DSTEP=1)を出力する。
【0080】
例えば、図9(d)に示すように、開始値(出発位置)と目標値(目標位置)との差が11で、ステップ幅=1の場合、ステップ設定部70cから指定されるステップ幅に基づいて、振幅レベルをクロックベースで積算して得られる積算値が、レンズ移動量DXを超えないような信号波形(三角波)W9を予め演算し、この演算により得られた信号波形の面積(振幅レベルの積算値)とレンズ移動量との差分から、レンズの出発位置と目標位置にてステップ幅(DSTEP=1)を追加すべきクロック期間を求める。
【0081】
この場合は、予め演算で求めた信号波形(三角波)W9(図9(b))の、時間軸上での前端側と後端側に振幅レベルとしてステップ幅(DSTEP=1)が付加された三角形の波形W11(図9(c))が、波形生成部72aからクロックベースで出力される。
【0082】
この場合、レンズの移動量(|X2−X1|)が11であるとすると、波形生成部72aでは、図9(c)に示すような、面積が11である実質的な三角波W11が、7クロック期間にわたって形成される。この三角波W11は、上記予め設定した三角波W9の両端位置でそれぞれ、1クロック期間を追加して、この追加部分で三角波形W11の振幅値を1ステップ幅とする補正を行って得られたものである。このとき、積分処理部73では、図9(d)に示すように、1クロック目で、1ステップ幅が出発位置X1に加算され、2クロック目で、1ステップ幅がさらに加算され、3クロック目で、2ステップ幅がさらに加算され、4クロック目で、3ステップ幅がさらに加算され、5クロック目で、2ステップ幅がさらに加算され、6クロック目で、1ステップ幅がさらに加算され、7クロック目で、1ステップ幅がさらに加算される。この加算処理(波形W11の積分処理)により、目標位置信号の信号レベル(WDOUT)は出発位置X1から目標位置X2に達し、レンズの移動量は11ステップ幅に相当する距離となる。
【0083】
このように本実施形態2では、波形生成部72aを、移動量計算部71からのレンズ移動量DX、補正位置指定部70aからの補正位置指示信号Pd、およびステップ設定部70cからのステップ幅設定信号Scに基づいて、信号波形に対する補正位置と補正期間とを算出する演算部721と、該演算部721で算出された補正位置と補正期間とに基づいて、補正した信号波形の振幅レベルをクロックベースで出力する出力部722とを有するものとしたので、上記実施形態1の効果に加えて、信号波形の振幅レベルを補正する位置を補正位置指定部からの指定により任意の位置に、つまり、信号波形の時間軸上での前端にも設定できるという効果がある。
【0084】
また、上記実施形態1および2では、波形生成部では三角波を生成する場合について示したが、波形生成部で生成する波形は三角波に限るものではなく、上記フィルタでは、三角波以外の波形を用いてフィルタ処理を行うことも可能である。
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3によるカメラシステムを説明する図であり、レンズ駆動部の制御信号をフィルタ処理するフィルタ回路の構成(図10(a))、フィルタ回路の波形生成部で生成する信号波形(図10(b))、およびフィルタ回路の波形生成部で生成するその他の信号波形(図10(c))を示している。
【0085】
この実施形態3のカメラシステムは、実施形態1のカメラシステムにおけるフィルタ回路7に代えて、フィルタ処理に用いる信号波形の形状を外部から指定可能な構成としたフィルタ回路7bを備えたものである。
【0086】
つまり、この実施形態3のフィルタ7bは、実施形態1のフィルタ7の構成に加えて、フィルタ外部からの指示により、波形生成部72で生成する信号波形を定義し、この定義した信号波形を示す波形指示信号Wcを出力する波形指定部70bを備え、ステップ設定部70cを、該波形指示信号Wcに基づいて、波形生成部72で生成される信号波形が、指定信号Wcが示す波形となるよう、ステップ幅を更新タイミング設定部70fからのタイミングに従って変化させるように構成したものである。なお、この実施形態3のその他の構成は、実施形態1のものと同一である。
【0087】
このような構成の実施形態3では、波形指定部70bで、図10(b)のような凸状半円型の波形、あるいは図10(c)のような凸型裾広がりの波形が指定された場合、ステップ設定部70cは、該波形指定部70bからの波形指示信号Wcに基づいて、波形生成部72で生成される信号波形が、指定信号Wcが示す波形となるよう、ステップ幅を更新タイミング設定部70fからのタイミングに従って変化させる。
【0088】
このように本実施形態3では、実施形態1のフィルタ7において、フィルタ外部からの指示により、波形生成部72で生成する信号波形を定義し、この定義した信号波形を示す波形指示信号Wcを出力する波形指定部70bを備え、ステップ設定部70cを、該波形指示信号Wcに基づいて、波形生成部72で生成される信号波形が、指定信号Wcが示す波形となるよう、ステップ幅を更新タイミング設定部70fからのタイミングに従って変化させるように構成したので、上記実施形態1の効果に加えて、図10(a)のように、レンズ位置を示す信号のフィルタ処理に用いる信号波形として、凸状半円型の波形(図10(b))や凸型裾広がりの波形(図10(c))を用いることができる。
【0089】
例えば、図10(b)に示す信号波形を用いた場合は、レンズの移動開始と移動終了時点でレンズ移動速度に急激な変化を付加することが可能である。また、図10(c)に示す凸型裾広がりの波形を用いた場合、レンズ出発位置と目標位置との中間付近で、レンズ移動速度に急激な変化を付加することが可能である。
【0090】
なお、波形指定部70bでフィルタ回路外部からの指示により定義する信号波形は、上述した三角波形、図10(b)に示すような円の上半部周縁の形状を有する信号波形、あるいは図10(c)に示すような、振幅レベルがその単調増加部分では増加率が徐々に増大し、その単調減少部分では減少率が徐々に減少する信号波形に限定されるものではない。
【0091】
例えば、波形指定部70bでフィルタ回路外部からの指示により定義する信号波形は、図10(b)に示す円の上半部周縁の形状に代わる、楕円の上半部周縁の形状を有する波形であってもよい。
【0092】
また、前記信号波形は、図6(a)、図7(a)、図8(a)、図8(b)、図9(b)、図9(c)、図10(b)および図10(c)に示すように、その振幅レベルのピーク位置が該信号波形の中間位置に位置しているものに限定されず、前記信号波形は、その振幅レベルのピーク位置が該信号波形の中間位置以外の位置に位置していてもよい。
【0093】
また、上記波形生成部は、図7(実施形態1)で説明したように、信号波形のピーク位置での振幅レベルをレンズ移動量に基づいて補正するもの、さらに、図9(実施形態2)で説明したように、前記信号波形の時間軸上での始端および終端位置で振幅レベルの補正を行うものに限らず、前記信号波形のこれらの位置以外の振幅レベルを前記レンズ移動量に基づいて補正するものであってもよい。
【0094】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、カメラシステム、ボイスコイルモータの駆動装置、およびボイスコイルモータの駆動方法の分野において、レンズの移動量に対して三角波などの信号波形を作成し、この信号波形をその振幅レベルがレンズ出発位置に加算されるよう積分することで、レンズの目標位置を示す信号の波形を、レンズが緩やかに始動し、緩やかに収束する波形とし、その波形に従ってVCM(ボイスコイルモータ)を制御することで、ボイスコイルモータなどのアクチュエータの共振振動を低減することができ、これによりこのようなアクチュエータを用いたAF制御の高速化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の実施形態1によるカメラシステムを説明する図であり、図1(a)はその全体構成を示し、図1(b)は、該カメラシステムを構成するフィルタ回路の構成を示している。
【図2】図2は、本実施形態1のカメラシステムを構成するフィルタ回路の機能を説明する図であり、その入力波形と出力波形とを対比させて示している。
【図3】図3は、本実施形態1のカメラシステムを構成するフィルタ回路の制御動作を説明する図であり、積分の対象となる三角波(図3(b))およびこの三角波の積分により得られるフィルタ出力の波形(図3(a))を示している。
【図4】図4は、本実施形態1カメラシステムの動作をフローチャートで示す図である。
【図5】図5は、本実施形態1のカメラシステムを構成するフィルタ回路でのdelta幅補正処理を説明する図であり、積分の対象となる三角波(図5(a))およびこの三角波の積分により得られるフィルタ出力の波形(図5(b))を示している。
【図6】図6は、本実施形態1のカメラシステムを構成するフィルタ回路の動作の一例を説明する図であり、図6(a)は三角波W4の形成処理、図6(b)は、該三角波W4の積分処理を示している。
【図7】図7は、本発明の実施形態1によるカメラシステムを構成するフィルタ回路の動作の一例を説明する図であり、図7(a)は三角波W4を補正して三角波W5を形成する処理、図7(b)は、該三角波W5の積分処理を示している。
【図8】図8は、本実施形態1のカメラシステムを構成するフィルタ回路における更新間隔制御方法を説明する図であり、前記フィルタ出力を基本クロックの1周期単位で更新するもの(図8(a))、前記フィルタ出力を基本クロックの2周期単位で更新するもの(図8(b))を示している。
【図9】図9は、本発明の実施形態2によるカメラシステムを説明する図であり、レンズ駆動部の制御信号をフィルタ処理するフィルタ回路の構成(図9(a))、フィルタ回路の波形生成部での信号波形(図9(b))、補正した信号波形(図9(c))、およびフィルタ出力(図9(d))を示している。
【図10】図10は、本発明の実施形態3によるカメラシステムを説明する図であり、レンズ駆動部の制御信号をフィルタ処理するフィルタ回路の構成(図10(a))、フィルタ回路の波形生成部で生成する信号波形(図10(b))、およびフィルタ回路の波形生成部で生成するその他の信号波形(図10(c))を示している。
【図11】図11は、VCMアクチュエータの固有振動を説明する図であり、VCMアクチュエータによるレンズの位置制御の際にレンズが目標位置まで移動するまでのレンズの位置変動を示している。
【符号の説明】
【0097】
1 レンズ
2 撮像素子
4 デジタル信号処理部
5 AF積算部
6 レンズ位置計算部
7、7a、7b フィルタ回路
8 D/A変換部
9 アクチュエータ駆動部
10 アクチュエータ
70a 補正位置指定部
70b 波形指定部
70c ステップ設定部
70e クロック発生部
70f 更新タイミング設定部
71 移動量計算部
72、72a 波形生成部
73 積算処理部
75 ラッチ回路
110 信号処理部
120 レンズ駆動部
721 演算部
722 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の撮像により画像信号を出力する撮像素子と、入射光を該撮像素子に集光するレンズと、該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備えたカメラシステムであって、
該画像信号に基づいて該レンズの目標位置を示す目標位置信号を算出するレンズ位置算出部と、
該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、
該フィルタ回路からのフィルタ出力に基づいて、該レンズがその出発位置からその目標位置に移動するよう該レンズを駆動するレンズ駆動部とを備え、
該フィルタ回路は、
該目標位置信号から得られる、該レンズの出発位置からその目標位置までのレンズ移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、
該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、
該積分処理部の出力信号を該フィルタ出力として出力するカメラシステム。
【請求項2】
前記波形生成部は、前記信号波形として三角波を生成する請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項3】
前記三角波の傾斜辺の傾きにより、該レンズがその出発位置からその目標位置まで移動するのに要する収束時間が設定される請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記波形生成部は、前記積分処理部で前記三角波が積分される際に、該三角波の中間位置で、該三角波の振幅レベルを補正する請求項2に記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記波形生成部は、前記積分処理部で前記三角波を積分する際に、該三角波の中間位置以外の位置にて該三角波の振幅レベルを補正する請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記波形生成部は、前記信号波形として三角波以外の信号波形を生成する請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記波形生成部は、前記信号波形として、円あるいは楕円の上半部周縁の形状を有する信号波形を生成する請求項6に記載のカメラシステム。
【請求項8】
前記波形生成部は、前記信号波形として、その振幅レベルがその単調増加部分では増加率が徐々に増大し、その単調減少部分では減少率が徐々に減少する信号波形を生成する請求項6に記載のカメラシステム。
【請求項9】
前記波形生成部は、前記信号波形として、その振幅レベルが一定ステップを単位として基準クロックのタイミングで変化する信号波形を生成する請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項10】
前記信号波形は、その振幅レベルのピーク位置が該信号波形の中間位置に位置している請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項11】
前記信号波形は、その振幅レベルのピーク位置が該信号波形の中間位置以外の位置に位置している請求項1に記載のカメラシステム。
【請求項12】
前記波形生成部は、前記信号波形のピーク位置での振幅レベルを前記レンズ移動量に基づいて補正する請求項10または11に記載のカメラシステム。
【請求項13】
前記波形生成部は、前記信号波形のピーク位置以外での振幅レベルを前記レンズ移動量に基づいて補正する請求項10または11に記載のカメラシステム。
【請求項14】
前記フィルタ回路は、そのフィルタ出力である前記積分処理部の出力が更新される更新時間を、前記基本クロックの周期を単位として設定する更新時間設定部を有する請求項9に記載のカメラシステム。
【請求項15】
前記波形生成部は、前記フィルタ出力が、前記基本クロックの1周期単位で更新されるよう、前記更新時間設定部で設定された更新時間に基づいて前記信号波形を生成する請求項14に記載のカメラシステム。
【請求項16】
前記波形生成部は、前記フィルタ出力が、前記基本クロックの2周期以上の単位で更新されるよう、前記更新時間設定部で設定された更新時間に基づいて前記信号波形を生成する請求項14に記載のカメラシステム。
【請求項17】
前記レンズ駆動部は、前記レンズを移動させるボイスコイルモータと、該ボイスコイルモータを前記フィルタ回路の出力に基づいて駆動するモータ駆動部とを有する請求項1ないし16のいずれかに記載のカメラシステム。
【請求項18】
負荷を直線移動させるボイスコイルモータを駆動する駆動装置であって、
該負荷の目標位置を示す目標位置信号を、該負荷の駆動状態に基づいて算出する目標位置算出部と、
該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタ回路と、
該フィルタ回路からのフィルタ出力に基づいて、該負荷がその出発位置からその目標位置に移動するよう該ボイスコイルモータを駆動するモータ駆動部とを備え、
該フィルタ回路は、
該目標位置信号から得られる、該負荷の出発位置からその目標位置までの負荷移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成部と、
該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分処理部とを有し、
該積分処理部の出力信号を該フィルタ出力として出力するボイスコイルモータの駆動装置。
【請求項19】
負荷を直線移動させるボイスコイルモータを駆動する駆動方法であって、
該負荷の目標位置を示す目標位置信号を、該負荷の駆動状態に基づいて算出する目標位置算出ステップと、
該目標位置信号に対してその変化が緩和されるようフィルタ処理を施すフィルタステップと、
該フィルタ処理が施された目標位置信号に基づいて、該負荷がその出発位置からその目標位置に移動するよう該ボイスコイルモータを駆動する駆動ステップとを含み、
該フィルタステップは、
該目標位置信号から得られる、該負荷の出発位置からその目標位置までの負荷移動量に応じて、単調増加した後に単調減少する信号波形をクロックベースで生成する波形生成ステップと、
該波形生成部で生成された信号波形を、その振幅レベルが該出発位置にクロックベースで加算されるよう積分する積分ステップとを含み、
該積分ステップで得られた該信号波形の積分値を、該フィルタ処理が施された目標位置信号とするボイスコイルモータの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−229602(P2009−229602A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72481(P2008−72481)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】