説明

カメラシステムの拡張方法、カメラシステム、運転者支援システム、および対応する車両

【課題】車両の既存のカメラシステムのための統合コンセプトを維持して、車両用のステレオカメラシステムを提供すること。
【解決手段】車両用のカメラシステムの拡張方法であって、該カメラシステムは拡張前に、第1のカメラと評価ユニットを有し、該評価ユニットは、車両の運転者支援システムをサポートするように構成されており、前記第1のカメラは第1の通信接続によって、前記評価ユニット接続されている拡張方法において、前記第1のカメラと評価ユニットとが、1つの共通のハウジングに配置され、前記カメラシステムが、第2のカメラにより拡張され、該第2のカメラは、前記ハウジングの外部に、該ハウジングとは別に配置され、前記第2のカメラは、第2の通信接続を介して前記評価ユニットと接続されることを特徴とする拡張方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムの拡張方法、車両用のカメラシステム、本発明のカメラシステムが装備された運転者支援システム、および本発明のカメラシステムおよび/または本発明の運転者支援システムを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1乃至12にはカメラシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開公報第10204128号
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開公報第10302671号
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許公開公報第10200406998号
【特許文献4】米国特許公開公報第2006/0013438号
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許公開公報第102005050363号
【特許文献6】ドイツ連邦共和国特許公開公報第10253501号
【特許文献7】ドイツ連邦共和国実用新案公開公報第202004013984号
【特許文献8】ドイツ連邦共和国特許公開公報第102004045974号
【特許文献9】ドイツ連邦共和国実用新案公開公報第202004013984号
【特許文献10】ドイツ連邦共和国特許公開公報第10229336号
【特許文献11】米国特許公開公報第2009/0073258号
【特許文献12】ドイツ連邦共和国特許公開公報第4329983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両の既存のカメラシステムのための統合コンセプトを維持して、車両用のステレオカメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によればこの課題は、請求項1によるカメラシステムの拡張方法、請求項2によるカメラシステム、請求項10による運転者支援システム、および請求項11による車両によって解決される。従属請求項は、本発明の好ましく有利な実施形態を規定する。
【0006】
本発明の、車両用のカメラシステムの拡張方法に対する出発点は既存のカメラシステムであり、このカメラシステムは共通のハウジング内に第1のカメラと評価ユニットを含む。既存のカメラシステムでは、評価ユニットが車両の運転者支援システムをサポートし、第1のカメラが既存のカメラシステムで、第1の通信接続を介して評価ユニットと接続されている。既存のカメラシステムは本発明により、第2のカメラが拡張され、この第2のカメラはハウジングの外に、このハウジングから離れて配置されている。第2のカメラは、第2の通信接続を介して評価ユニットと接続されている。
【0007】
本発明によれば、既存のカメラシステムを拡張するために、第1のカメラおよび/または評価ユニットを装備することもできる。この場合有利には、既存のカメラシステムのための既存の統合コンセプトを、本発明のカメラシステムまたは拡張されたカメラシステムに対して使用することができる。これは例えば、第1のカメラと評価ユニットに対するハウジングの取り付け個所および運転者支援システムの適用制御装置のための接続を、拡張されたカメラシステムに対しても維持することにより行われる。したがって、第2のカメラと評価ユニットが無線接続されている場合、既存のカメラシステムに基づいて既存の統合コンセプトを、第2のカメラに対する取り付け個所だけ拡張すればよい。
【0008】
前記の刊行物のいずれにも、ただ1つのモノカメラだけを含む既存のモノカメラシステムを、ステレオカメラシステムにどのように拡張することができるかについては論じられていない。しかし本願発明ではこれによって、車両用のカメラシステムの観点で、既存の統合コンセプト、場合によりモノカメラシステムを、ステレオカメラシステムのために維持することができ、モノカメラシステムに対する投資が、ステレオカメラによる置換によって無駄になることはない。
【0009】
第2のカメラを、評価ユニットおよび第1のカメラから離して配置することによって、第1のカメラと評価ユニットに対するハウジングが配置された、制限のある構造空間(例えば車両の室内ミラーの領域)が、有利なことにはそれ以上(第2のカメラのために)要求されることはない。
【0010】
本発明の枠内で、車両用のカメラシステムが提供される。ここでカメラシステムは、第1のカメラ、第2のカメラおよび評価ユニットを含み、評価ユニットは運転者支援システムを支援するようにサポートするように構成されている。このことは例えば、特定の特徴を、カメラにより検出された画像から抽出し、および/または対象物をこの画像中に特定することにより行われる。第1のカメラは、第1の通信接続を介して評価ユニットと接続されている。第1のカメラと評価ユニットは同じハウジングに配置されているが、第2のカメラはこのハウジングの外にあり、このハウジングから離れて配置されている。第2のカメラの構造は第1のカメラと同じにすることができ、第2の通信接続を介して評価ユニットと接続されている。
【0011】
本発明のカメラシステムは、第1のカメラと評価ユニットだけを含む既存のカメラシステムを第2のカメラにより拡張するために使用することができる。これにより有利には、第1のカメラがモノカメラである既存のカメラシステムを、第2のカメラにより拡張することができ、拡張された本発明カメラシステムはステレオカメラシステムとなる。このステレオカメラシステムにより、環境が3次元画像形成され、モノカメラシステムと比較してより改善された環境情報を得ることができる(例えば対象物とカメラシステムとの距離の正確な検出)。
【0012】
このいわゆるツー・ボックスデザイン(すなわち1つのボックスまたはハウジングが第1のカメラと評価ユニットに対してあり、第2のハウジングが第2のカメラに対してある)により、すでに車両に存在するモノカメラシステムに対する既存の統合コンセプトを引き継ぐことができる。なぜなら第2のカメラに対する位置だけを見つければよいからである。この第2のカメラは、いわゆる衛星カメラである。
【0013】
運転者支援システムは、車両の運転者に、とりわけ非常の状況を警告または通知することができる。運転者支援システムは、車両の縦方向または横方向の案内にアクティブに介入操作することができる。
【0014】
第1の通信接続も第2の通信接続も、それぞれ線路接続または無線接続とすることができる。第1のカメラは評価ユニットとともにハウジング内で存在するから、第1の通信接続は通例、線路接続である。これに対して好ましくは第2の通信接続は無線接続である。なぜならこの場合、車両にすでに存在する第1のカメラと評価ユニットを含むハウジングのための構造空間はそのままにして、第2のカメラに対する構造空間だけを車両内に見つければよいからであり、第2のカメラと評価ユニットとの間に通信線路を設置する必要がないからである。
【0015】
本発明のカメラシステムには、とりわけフィードバックチャネルが装備されている。したがって評価ユニットはこのフィードバックチャネルを介して第1のカメラも第2のカメラも制御することができる。これにより評価ユニットは、例えば第1のカメラと第2のカメラの両方の露光を調整することができる。
【0016】
第1のカメラと評価ユニットを含むハウジングは有利には、車両の室内ミラーの周囲に配置される。この室内ミラー自体は、車両内部の車両のフロントガラスの上方縁部であって、フロントガラスの中央に取り付けられる。ハウジングと室内ミラーとの間隔はとりわけ20cmより少なく、好ましくは10cmより少ない。
【0017】
第2のカメラは、車両の以下の個所の1つに取り付けることができる。
・車両の右または左サイドミラー内、
・車両のルーフレールの右または左前方部分内、
・車両の右または左ヘッドライト内、
・車両のラジエータグリルの右または左前方部分内、
・車両のフロントガラスの右または左縁部であって、車両のワイパーにより拭き取られる領域内。これにより降雨時であっても、この降雨に邪魔されない視界をカメラが有することが保証される。この領域は、運転者または同乗者の視界が(カメラの場所に応じて)カメラによってできるだけ遮蔽されないように選択すべきである。
【0018】
前に使用した概念「右」と「左」は、車両の走行方向を基準にしたものであり、車両の同乗者側または運転者側に相当する。
【0019】
択一的に、第1のカメラと評価ユニットに対する、第2のカメラの取り付け個所または取り付け位置も考えられる。
【0020】
有利には第1のカメラと第2のカメラは同じ高さ(カメラのレンズと車両が走行する地面との間隔)に配置される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、評価ユニットが、本発明のカメラシステムがその構成部分である運転者支援システムの機能の少なくとも一部を実現するように構成される。
【0022】
第1のカメラと第2のカメラは通例、走行方向に配列されており、それぞれ異なる視角から実質的に同じシーンを監視する。通例、第1のカメラと第2のカメラは、互いに機械的に剛性に接続されていない。このことにより、第1のカメラは第2のカメラに対して(またはその反対)、車両のボディーの熱に起因する膨張または収縮のために、カメラの視角および/または位置を基準にして互いにずれることができる。したがって本発明のカメラシステムは有利には、第1のカメラと第2のカメラを較正するように構成することができ、第1のカメラと第2のカメラの視角および位置を、車両の走行中でも自動的に互いに適合することができる。これにより両方のカメラの較正が可能になる。
【0023】
本発明の枠内で、車両用の運転者支援システムも提供される。この本発明の運転者支援システムは、前に説明した本発明のカメラシステムを有する。
【0024】
最後に本発明の枠内で、前に説明した本発明のカメラシステムおよび/または前に説明した本発明の運転者支援システムを有する車両も提供される。
【0025】
本発明はとりわけ、すでにモノカメラシステムを得得する車両を、第2のカメラだけ拡張するのに適し、得られるカメラシステムには立体能力がある。もちろん本発明は、この好ましい適用領域に限定されるものではない。例えば本発明は、船舶、航空機または軌道車両にも使用することができる。
【0026】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のカメラシステムを備える本発明の運転者支援システムの概略図である。
【図2】第1のカメラと第2のカメラに対する可能な取り付け個所が示された本発明の車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本発明の運転者支援システムが概略的に示されている。この運転者支援システムは、車両の特定の運転者をサポートする手段を制御する複数の適用制御装置8の他に、本発明のカメラシステム20を有する。双方向通信接続によって適用制御装置8と接続されたカメラシステム20は、第1のハウジング4と、これとは別の第2のハウジング5を有する。第1のハウジング4には、第1のカメラ1と評価ユニット3からなるモノカメラシステムが存在する。第1のカメラと評価ユニット3との間の双方向接続は、ここでは電気線路17によって実現されている。この電気線路17の上りチャネルを介して、第1のカメラ1は、自分が撮影した画像情報を評価ユニット3に送信し、下りチャネル7を介してこの第1のカメラ1の特定の機能、例えば露光調整が制御される。
【0029】
第1のハウジング4とは別個の第2のハウジング5には、第2のカメラ2が配置されており、この第2のカメラは、双方向無線接続6を介して評価ユニット3と接続されている。第1のカメラ1と同様に第2のカメラも、双方向無線接続6の上りチャネルを介して画像情報を評価ユニット3に送信し、下りチャネル7を介して第2のカメラ2の特定機能が、評価ユニット3によって制御される。第2のカメラ2だけ拡張することによって、これにより生じる本発明のカメラシステム20はステレオカメラシステムとなる。評価ユニット3が、両方のカメラ1、2からの画像情報を相応に処理し、両方のカメラ1、2を相応に制御できるようにするため、通常はソフトウエアアップデートが行われる。例えば評価ユニット3は、第2のカメラ2の拡張後にはオンライン較正方法を実施できるようにすべきである。これにより両方のカメラ1、2を走行中も較正し、それらの視角と位置を互いに適合できるようになる。
【0030】
図1には図示されていないが、運転者支援システム9に対するいくつかの適用が、同様に第1のハウジング4に組み込まれたハードウエアにより実行されることも可能である。
【0031】
図2には本発明の車両10が示されている。この車両は、本発明のカメラシステム20(図1参照)を備える本発明の運転者支援システム9を有する。ここで図2には、第1のハウジング4に対する取り付け個所と、第2のカメラ2に対する別の取り付け個所とが示されている。評価ユニット3と組み込まれた第1のカメラ1を有する第1のハウジング4は、車両10の室内ミラー11の領域に存在する。衛星カメラ2とも称される第2のカメラは、車両のルールレール12、フロントガラス13の上方右縁部、サイドミラー14、ヘッドライト15またはラジエータグリル16の右縁部に配置することができる。図2に、第2のカメラに対する取り付け個所として示された取り付け個所が、車両の他方の側、すなわち図2の左側でもよいことを述べておく。
【0032】
第1のハウジング4が室内ミラー11の領域に存在する場合に対しては、第2のカメラ2の好ましい取り付け個所は、フロントガラス13の右または左縁部である。なぜならこの場合には、両方のカメラ1と2を同じ高さに取り付けることができるからである。この領域13は通例、ワイパー(図示せず)により拭き取られるフロントガラスの領域に選択される。
【符号の説明】
【0033】
1 カメラ
2 カメラ
3 評価ユニット
4 ハウジング
5 ハウジング
6 無線接続
7 下りチャネル
8 制御装置
9 運転者支援システム
10 車両
11 室内ミラー
12 ルールレール
13 フロントガラスの縁部
14 サイドミラー
15 ヘッドライト
16 ラジエータグリルの縁部
17 電気線路
20 カメラシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のカメラシステムの拡張方法であって、
該カメラシステムは拡張前に、第1のカメラ(1)と評価ユニット(3)を有し、
該評価ユニット(3)は、車両(10)の運転者支援システムをサポートするように構成されており、
前記第1のカメラ(1)は第1の通信接続(17)によって、前記評価ユニット(3)と接続されている拡張方法において、
前記第1のカメラ(1)と評価ユニット(3)とが、1つの共通のハウジング(4)に配置され、
前記カメラシステム(20)が、第2のカメラ(2)により拡張され、
該第2のカメラ(2)は、前記ハウジング(4)の外部に、該ハウジング(4)とは別に配置され、
前記第2のカメラ(2)は、第2の通信接続(6)を介して前記評価ユニット(3)と接続されることを特徴とする拡張方法。
【請求項2】
第1のカメラ(1)と評価ユニット(3)を有する、車両用のカメラシステムであって、
該評価ユニット(3)は、車両(10)の運転者支援システムをサポートするように構成されており、
前記第1のカメラ(1)は第1の通信接続(17)によって、前記評価ユニット(3)と接続されているカメラシステムにおいて、
前記第1のカメラ(1)と評価ユニット(3)とが、1つの共通のハウジング(4)に配置されており、
該第2のカメラ(2)は、前記ハウジング(4)の外部に、該ハウジング(4)とは別に配置されており、
前記第2のカメラ(2)は、第2の通信接続(6)を介して前記評価ユニット(3)と接続されていることを特徴とするカメラシステム。
【請求項3】
前記カメラシステム(20)には下りチャネル(7)が設けられており、前記評価ユニット(4)は該下りチャネル(7)によって第1のカメラ(1)と第2のカメラ(2)の両方を制御することを特徴とする請求項2記載のカメラシステム。
【請求項4】
前記第2の通信接続は、無線接続(6)または線路接続であることを特徴とする請求項2または3記載のカメラシステム。
【請求項5】
前記ハウジング(4)は、車両(10)の室内ミラー(11)の領域に配置されており、
該室内ミラー(11)は、車両(10)のフロントガラスの上方縁部であって、フロントガラスの中央に配置されていることを特徴とする請求項2から4までのいずれか一項記載のカメラシステム。
【請求項6】
前記第2のカメラ(2)は以下の個所の1つに配置されている:
・車両(10)のサイドミラー(14)内、
・車両(10)のルールレール(12)の前方部分内、
・車両(10)の前方ヘッドライト(15)内、
・車両(10)のラジエータグリル(16)の前方部分内、または
・車両(10)のフロントガラス(13)の縁部であって、車両(10)のワイパーにより拭き取られる領域、
ことを特徴とする請求項2から5までのいずれか一項記載のカメラシステム。
【請求項7】
前記第1のカメラ(1)と第2のカメラ(2)とは、同じ高さに配置されていることを特徴とする請求項2から6までのいずれか一項記載のカメラシステム。
【請求項8】
前記評価ユニット(3)は、運転者支援システム(9)の機能の少なくとも一部を実行するように構成されていることを特徴とする請求項2から7までのいずれか一項記載のカメラシステム。
【請求項9】
カメラシステム(20)は、第1のカメラ(1)と第2のカメラ(2)とを較正するように構成されており、これにより両カメラ(1、2)の視角と位置が互いに適合されることを特徴とする請求項2から8までのいずれか一項記載のカメラシステム。
【請求項10】
請求項2から9までのいずれか一項記載のカメラシステム(20)を有する、車両用の運転者支援システム。
【請求項11】
請求項2から9までのいずれか一項記載のカメラシステム(20)および/または請求項10記載の運転者支援システムを備える車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−14146(P2011−14146A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151365(P2010−151365)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】