説明

カメラシステム

【課題】予備発光と本発光とで色温度が異なる場合でも、本発光量を適切に求めるカメラシステムを提供する。
【解決手段】撮影時に被写体を、第1の色温度を持つ光で照明する本発光と、撮影の前に被写体を、第1の色温度とは異なる第2の色温度をもつ光で照明する予備発光とを行う照明手段17と、被写体像を撮像し、撮像信号を出力する撮像素子16と、照明手段17が予備発光をした場合に撮像素子16から出力される撮像信号に基づいて、本発光時の発光量を演算する演算手段10と、本発光と予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する撮像素子9の感度差、および該色温度差に起因する被写体の反射率の差のうち少なくとも一方に基づいて、演算手段10で演算された発光量を補正する補正手段10と、補正手段10による補正後の発光量で本発光するように照明手段17を制御する照明制御手段10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
閃光装置を用いた撮影の際、撮影時の本発光に先立って予備発光を行い、予備発光時における被写体からの反射光量に基づいて本発光時の光量を決める技術が知られている(特許文献1参照)。また、閃光装置が発する照明光の色温度を外光の色温度に応じて制御する技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−173254号公報
【特許文献2】特開2003−15179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被写体の反射率や、被写体からの反射光量を検出するセンサの受光感度は、それぞれ光の波長によって異なる波長依存性を有する。このため、予備発光時の色温度が本発光時の色温度と異なる場合には、予備発光時における被写体からの反射光量に基づいて本発光時の光量を正しく求めることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1に記載の発明によるカメラシステムは、撮影時に被写体を第1の色温度を持つ光で照明する本発光と、撮影の前に被写体を第1の色温度とは異なる第2の色温度を持つ光で照明する予備発光とを行う照明手段と、被写体像を撮像し、撮像信号を出力する撮像素子と、照明手段が予備発光した場合に撮像素子から出力される撮像信号に基づいて、本発光時の発光量を演算する演算手段と、本発光と予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する撮像素子の感度差、および該色温度差に起因する被写体の反射率の差のうち少なくとも一方に基づいて、演算手段で演算された発光量を補正する補正手段と、補正手段による補正後の発光量で本発光するように照明手段を制御する照明制御手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項1に記載のカメラシステムにおいて、照明手段は色温度可変光源を含み、照明制御手段はさらに、本発光の色温度を外光の色温度と合わせるように照明手段を制御してもよい。この場合の補正手段は、外光と予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する撮像素子の感度差、該色温度差に起因する被写体の反射率の差、および該色温度差により照明手段の発光効率が異なることに起因する発光量の変化分のうち少なくとも一つに基づいて、演算手段で演算された発光量を補正することもできる。
(3)請求項2に記載のカメラシステムにおいて、照明制御手段は、照明手段が予備発光した場合に撮像素子から出力される撮像信号と、照明手段が発光しない場合に撮像素子から出力される撮像信号とに基づいて、外光の色温度を算出することもできる。
(4)請求項2または3に記載のカメラシステムにおいて、照明制御手段はさらに、予備発光の色温度を白色光の色温度と合わせるように照明手段を制御してもよい。この場合の補正手段は、外光と白色光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する撮像素子の感度差、該色温度差に起因する被写体の反射率の差、および該色温度差により照明手段の発光効率が異なることに起因する発光量の変化分のうち少なくとも一つに基づいて、演算手段で演算された発光量を補正することもできる。
(5)請求項2または3に記載のカメラシステムにおいて、照明手段は白色光を発する白色光源をさらに含み、照明制御手段はさらに、予備発光時には白色光源を発光させるように照明手段を制御してもよい。この場合の補正手段は、外光と白色光源による光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する撮像素子の感度差、該色温度差に起因する被写体の反射率の差、および該色温度差により照明手段の発光効率が異なることに起因する発光量の変化分のうち少なくとも一つに基づいて、演算手段で演算された発光量を補正することもできる。
(6)請求項1に記載のカメラシステムにおいて、撮像素子は撮影用撮像素子および撮影用撮像素子と異なる測光用撮像素子を含んでもよい。この場合の補正手段は、本発光と予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する撮影用撮像素子の感度差、該色温度差に起因する測光用撮像素子の感度差、および該色温度差に起因する被写体の反射率の差のうち少なくとも一つに基づいて、演算手段で演算された発光量を補正することもできる。
(7)請求項6に記載のカメラシステムはさらに、撮影用撮像素子から出力される撮影用画像信号に対して、本発光の色温度に対応する色温度調整係数で色温度調整を行う色調整手段を備えてもよい。
(8)請求項1〜7のいずれか一項に記載のカメラシステムにおいて、補正手段は、照明手段が予備発光した場合に撮像素子から出力される撮像信号と、照明手段が発光しない場合に撮像素子から出力される撮像信号とに基づいて、被写体の反射率を算出することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予備発光の照明光と本発光の照明光とで色温度が異なる場合でも、本発光量を適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態による一眼レフカメラシステムを説明する図である。
【図2】色フィルタの構成を例示する図である。
【図3】カメラシステムの機能ブロック図である。
【図4】マイコンが行う撮影処理の流れを説明するフローチャートである。
【図5】色可変フィルタの色を電気的に制御する構成を例示する図である。
【図6】照明装置の他の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態による一眼レフカメラシステムの要部構成を説明する図である。図1において、カメラ本体1に対して着脱可能な照明装置17および交換レンズ2が装着されている。
【0009】
交換レンズ2に入射された被写体からの光は、レンズ群3および絞り(不図示)を介してカメラ本体1へ入射される。カメラ本体1に入射した被写体光は、レリーズ前は実線で示すように位置するクイックリターンミラー(以下メインミラーと呼ぶ)5で上方のファインダ部へ導かれて拡散スクリーン11に結像する。また、カメラ本体1に入射した被写体光の一部はサブミラー6で下方へ反射され、焦点検出ユニット7にも入射する。焦点検出ユニット7は、公知の位相差検出方式のAFセンサを備えており、交換レンズ2による焦点調節状態を検出する焦点検出時に用いられる。
【0010】
拡散スクリーン11に結像した被写体光はさらに、コンデンサレンズ12を介してペンタプリズム13へ入射する。ペンタプリズム13は、入射された被写体光を接眼レンズ14へ導く一方、その一部を再結像レンズ15へも導く。再結像レンズ15は、測光センサ16上に被写体像を結像する。測光センサ16は、被写体像の明るさに応じた測光処理用の画像信号を出力する。測光センサ16は、たとえばカラーフィルタを介して入射光を受光するCCDイメージセンサなどによって構成される。測光センサ16で得られた画像信号からは、輝度情報の他に色情報(環境光の色情報)を取得することも可能である。
【0011】
レリーズ後はメインミラー5が破線で示される位置へ回動し、被写体光はフォーカルプレーンシャッター8を介して撮像センサ9へ導かれて撮像面上に被写体像を結像する。撮像センサ9は、画素に対応する複数の光電変換素子を備えたCCDイメージセンサなどによって構成される。撮像センサ9は、撮像面上に結像されている被写体像を撮像し、被写体像の明るさに応じた撮影用の画像信号を出力する。この画像信号は、後述する画像生成部109(図2)で所定の画像処理を経た後、後述する記録部110(図2)によって記録媒体に記録される。
【0012】
マイクロコンピュータ(以下マイコンと呼ぶ)10は、測光センサ16からの画像信号を用いて所定の露出演算を行う。マイコン10は、レリーズ操作時に露出演算結果に基づいてフォーカルプレーンシャッター8および交換レンズ2内に設けられている絞り(不図示)を制御するとともに、撮像センサ9による撮像動作を制御する。マイコン10はさらに、照明装置17との間で通信を行う通信回路を内蔵する。マイコン10は、測光センサ16で取得された環境光の色情報に基づいて必要な照明光の色温度を決定し、決定した色温度の照明光を発するように照明装置17へ発光色制御信号を送信する。
【0013】
なお、本実施形態では、発光色制御信号をカメラ本体1側から照明装置17側へ送信するようにしているが、カメラ本体1側から環境光の色温度情報を受け取った照明装置17内の照明制御回路18が照明光の色温度を決定するようにしてもよい。
【0014】
マイコン10はさらに、焦点検出ユニット7で検出された焦点調節状態に応じてレンズ駆動モータ4へ制御信号を送り、レンズ群3に含まれるフォーカス調節レンズを光軸方向に進退移動させる。駆動モータ4の回転方向および回転量(フォーカス調節レンズの移動方向および移動量)は、焦点検出ユニット7からの検出信号に基づいて決定する。これにより、主要被写体に対するフォーカス調節が自動で行われる(AF処理)。
【0015】
照明装置17の発光体19は、たとえば、キセノン管によって構成される。照明制御回路18は充電回路を含み、不図示のコンデンサに充電を行う。照明制御回路18は、カメラ本体1から送信される発光指示および発光制御信号に応じて充電電荷を放電させて、キセノン管19を放電発光させる。発光制御信号は、キセノン管19の発光量を指示する信号を含む。キセノン管19が発する光は、色フィルタ21を介して図の左方向へ射出される。
【0016】
図2は、色フィルタ21の詳細を例示する図である。図2において、色フィルタ21は、複数の異なる透過波長域を有する色フィルタ21a〜21cをロール状に一体成形したものである。フィルムカメラのフィルム巻き取りスプールと同様の構造(巻上げ、巻戻しの2つのスプール構造)により、キセノン管19の前に配置される色フィルタを選択的に切換えるように構成されている。
【0017】
駆動機構22は、照明制御回路18からの指示に応じて上記スプールの巻上げおよび巻戻し駆動を行う。照明制御回路18は、カメラ本体1から送信される上記発光制御信号に応じて駆動機構22の駆動量を制御することにより、キセノン管19の前方に所定色の色フィルタ21を配置させる。なお、発光制御信号は、色フィルタ21を介して射出すべき光の色温度を指示する信号を含む。
【0018】
図3は、上述したカメラシステムの機能ブロック図である。図3において、第2撮像センサ102は測光センサ16(図1)に対応する。第1撮像センサ108は撮像センサ9(図1)に対応する。照明ユニット105は照明装置17(図1)に対応する。第2撮像センサ制御部101、色温度演算部103、照明制御部104、露出演算部106、撮像制御部107、および画像生成部109は、それぞれマイコン10(図1)が対応する。なお、記録部110は図1において不図示である。
【0019】
本実施形態によるカメラシステムは、撮影補助光として照明装置17に本発光させる前に予備発光を行う撮影に特徴を有するので、この撮影処理を中心に説明する。予備発光は、撮影時に必要な照明光量(本発光量)を決めるため、撮影前に照明装置17を小光量で発光させるものである。カメラシステムは、予備発光時における被写体からの反射光量に基づいて、撮影時に必要な本発光量を決める。
【0020】
<撮影処理>
マイコン10が行う撮影処理の流れについて、図4のフローチャートを参照して説明する。マイコン10は、不図示のレリーズボタンが半押し操作されたことを示す半押し操作信号が入力されると、図4による処理を行うプログラムを起動する。なお、不図示ではあるが、このプログラム起動時に焦点検出ユニット7で検出した出力に基づいてAF処理が行われる。
【0021】
図4のステップS201において、マイコン10(第2撮像センサ制御部101)は、第2撮像センサ102に被写界の画像データを取得(撮像)させてステップS202へ進む。ステップS202において、マイコン10(露出演算部106)は、ステップS201で取得した画像データに基づいて、撮影時に必要な第1撮像センサ108の露光量を演算してステップS203へ進む。具体的には、画像データを用いて被写界の輝度情報を算出し、この輝度情報に基づいて適正露出が得られるようにシャッター秒時、絞り値およびISO感度を決める。
【0022】
ステップS203において、マイコン10はレリーズ操作(すなわちレリーズボタンの全押し操作)されたか否かを判定する。マイコン10は、不図示のレリーズボタンが全押し操作されたことを示す全押し操作信号が入力されると、ステップS203を肯定判定してステップS204へ進む。全押し操作は、レリーズボタンが半押し操作時より深く押し下げされる操作態様をいう。一方、マイコン10は、上記全押し操作信号が入力されない場合にはステップS203を否定判定し、ステップS201へ戻る。ステップS201へ戻る場合はステップS201−S203の処理を繰り返す。
【0023】
ステップS204において、マイコン10(露出演算部106)は、照明ユニット105の発光要否を判定する。マイコン10(露出演算部106)は、照明ユニット105の発光が許可されており、かつステップS202で算出した輝度情報が所定輝度以下であることから発光が必要と判断した場合にステップS204を肯定判定してステップS206へ進む。マイコン10(露出演算部106)は、照明ユニット105の発光が禁止されている場合、あるいは照明ユニット105の発光が許可されているもののステップS202で算出した輝度情報が所定値を超えることから発光不要と判断した場合には、ステップS204を否定判定してステップS205へ進む。なお、ここで判定対象とするのは、本発光についての発光要否である。
【0024】
ステップS206において、マイコン10(照明制御部104)は、本発光パラメータ演算サブルーチンによる処理を行ってステップS207へ進む。本発光パラメータ演算サブルーチンの詳細については後述する。ステップS207において、マイコン10(撮像制御部107)はメインミラー5の回動指示を行い、第1撮像センサ108に被写界の画像データの取得(撮像)を開始させてステップS208へ進む。この場合の撮像制御部107は、ステップS202で算出した露光量となるように第1撮像センサ108による撮像を制御する。
【0025】
ステップS208において、マイコン10(照明制御部104)は、ステップS206で演算されている本発光パラメータに基づく発光条件で撮影補助光を発するように照明ユニット105を制御してステップS209へ進む。これにより、照明ユニット105が第1撮像センサ108による撮像中に所定光量、所定色温度で発光する。
【0026】
ステップS209において、マイコン10(画像生成部109)は、ステップS206で演算されている色温度情報に基づいて、第1撮像センサ108が取得した画像データに対してホワイトバランス調整処理を行ってステップS210へ進む。ステップS210において、マイコン10は記録部110(図3)に指示を送り、ホワイトバランス調整処理後の画像データを記録媒体に記録させて図4による処理を終了する。
【0027】
上述したS204を否定判定して進むステップS205において、マイコン10(露出演算部106)は、メインミラー5の回動指示を行い、第1撮像センサ108に被写界の画像データを取得(撮像)させてステップS209へ進む。撮像制御部107は、レリーズ操作直前のステップS202で算出した露光量となるように第1撮像センサ108による撮像を制御する。この場合は、照明ユニット105を発光させないで撮像を行う。
【0028】
<本発光パラメータ演算サブルーチン>
マイコン10が行う本発光パラメータ演算処理の流れについて、図5のフローチャートを参照して説明する。本サブルーチンでは、撮影補助光の発光条件、すなわち本発光量、およびその色温度を演算する。図5のステップS301において、マイコン10(第2撮像センサ制御部101)は、第2撮像センサ102に被写界の画像データの取得(撮像)を開始させてステップS302へ進む。
【0029】
ステップS302において、マイコン10(照明制御部104)は、たとえば、白色光に対応する色温度(K1とする)で予備発光するように照明ユニット105を制御してステップS303へ進む。具体的には、色温度K1の光を色フィルタを通して射出するように、照明制御回路18へ上記スプールの巻上げまたは巻戻し駆動を指示する。これにより、照明ユニット105が白色光であって本発光時より小さい光量で予備発光する。
【0030】
ステップS303において、マイコン10(露出演算部106)は本発光量GN(K1)を演算してステップS304へ進む。具体的には、上記予備発光した場合の画像データに基づいて被写界の輝度情報を算出し、この輝度情報からレリーズ操作直前のステップS202において算出した非予備発光時の輝度情報を差し引いて、予備発光した光が被写体で反射される反射光量データ(後述する反射データRf1)を求める。そして、予備発光時の反射光量データに基づいて、撮影時に必要な照明ユニット105の本発光量を算出する。
【0031】
予備発光時の画像データと非予備発光時の画像データとの差分が大きい領域は、カメラシステムの近傍に存在して照明ユニット105からの光を反射する被写体領域(前景領域)に対応する。マイコン10(露出演算部106)は、この領域で適正露出が得られるように本発光量を算出する。
【0032】
ステップS304において、マイコン10(色温度演算部103)は、本発光の色温度を演算してステップS305へ進む。具体的には、上記予備発光した場合の輝度情報から上記非予備発光時の輝度情報を差し引いて、照明ユニット105からの光を反射しない領域(遠景領域)を抽出する。
【0033】
上述した前景領域と異なる領域は、カメラシステムから遠方に存在して照明ユニット105からの光をほとんど反射しない(照明ユニット105からの光が届かない)遠景領域に対応する。マイコン10(色温度演算部103)は、この領域の画像データを構成するRGB各色データについて各色ごとに平均値Rm、Gm、Bmを算出し、これらRm、Gm、Bmの比率に基づいて環境光(外光)の色温度(K2とする)を算出する。ここで、Rm、Gm、Bmの比率と色温度との関係を示す情報は、あらかじめテーブルデータとしてマイコン10内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されている。マイコン10(照明制御部104)は、色温度K2の光を色フィルタを通して射出するように、照明制御回路18へ上記スプールの巻上げまたは巻戻し駆動を指示する。
【0034】
マイコン10(色温度演算部103)はさらに、ホワイトバランス調整処理に使用する調整係数を決定する。具体的には、色温度K2の環境光下に適した調整係数を設定する。
【0035】
ステップS305において、マイコン10(露出演算部106)は、上記色温度情報に応じてステップS303で演算した本発光量GN(K1)を補正する。マイコン10(照明制御部104)は、補正後の本発光量GN(K2)を照明制御回路18へ指示して図5による処理を終了する。
【0036】
ステップS306で行う補正内容を以下に説明する。
[1]照明ユニット105の発光効率に応じた補正
マイコン10(露出演算部106)は、色温度K1および色温度K2間で照明ユニット105から射出される光の強さが異なる場合には、次式(1)による補正量H1を用いて補正する。
H1=Log2{I(K1)/I(K2)} (1)
ただし、I(K2)は色温度K2における発光強度であり、I(K1)は色温度K1における発光強度である。ここで、発光強度と色温度との関係を示す情報は、あらかじめテーブルデータとして照明制御回路18内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されている。この情報は、照明制御回路18からマイコン10(露出演算部106)へ送られる。
【0037】
[2]第1撮像センサ108の感度特性に応じた補正
マイコン10(露出演算部106)は、色温度K1および色温度K2間で第1撮像センサ108の受光感度(光電変換効率)が異なる場合には、次式(2)による補正量H2を用いて補正する。
H2=Log2{S1(K1)/S1(K2)} (2)
ただし、S1(K2)は色温度K2における第1撮像センサ108の受光感度であり、S1(K1)は色温度K1における第1撮像センサ108の受光感度である。ここで、第1撮像センサ108の受光感度と色温度との関係を示す情報は、あらかじめテーブルデータとしてマイコン10内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されている。
【0038】
[3]第2撮像センサ102の感度特性に応じた補正
マイコン10(露出演算部106)は、色温度K1および色温度K2間で第2撮像センサ102の受光感度(光電変換効率)が異なる場合には、次式(3)による補正量H3を用いて補正する。
H3=−Log2{S2(K1)/S2(K2)} (3)
ただし、S2(K2)は色温度K2における第2撮像センサ102の受光感度であり、S2(K1)は色温度K1における第2撮像センサ102の受光感度である。ここで、第2撮像センサ102の受光感度と色温度との関係を示す情報は、あらかじめテーブルデータとしてマイコン10内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されている。
【0039】
[4]被写体反射率に応じた補正
マイコン10(露出演算部106)は、色温度K1と色温度K2との間において被写体で反射される光の強さが異なる場合には、次式(4)による補正量H4を用いて補正する。
H4=Log2(Rf1/Rf2) (4)
ただし、Rf2は、照明ユニット105を本発光時の色温度K2で、かつ予備発光時と同じ発光量で発光した場合に想定される前景による反射データである。Rf1はステップS304で算出した反射データであり、色温度K1で予備発光した場合の前景による反射データである。反射データRf2は、次式(5)で表される。
【0040】
Rf2=PF(K2)×OC (5)
ただし、PF(K2)は本発光時の色温度K2に設定された照明ユニット105が射出する光の分光分布データである。照明ユニット105による分光分布データは、あらかじめテーブルデータとしてマイコン10内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されている。このうち、色温度K2の場合のデータが照明制御回路18からマイコン10(露出演算部106)へ送られる。
【0041】
また、OCは被写体の反射率の分光分布データであり、次式(6)により算出される。
OC=Rf1/(PF(K1)) (6)
ただし、Rf1はステップS304で算出した反射データである。PF(K1)は、色温度K1に設定された照明ユニット105が射出する光の分光分布データである。上記マイコン10内の不揮発性メモリ(不図示)に格納されているテーブルデータのうち、色温度K1の場合のデータが照明制御回路18からマイコン10(露出演算部106)へ送られる。
【0042】
マイコン10(露出演算部106)は、補正前の本発光量GN(K1)を補正量H1〜H4を用いて次式(7)のように補正し、補正後の本発光量GN(K2)を得る。
GN(K2)=GN(K1)×{(√2)^(H1+H2+H3+H4)} (7)
【0043】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)照明装置17からの照明光を外光(環境光)に対する補助光として使用する、いわゆる補助光撮影において、撮影時に必要な本発光量を決めるための予備発光と本発光との色温度差に起因する測光センサ16(第2撮像センサ102)の受光感度(光電変換効率)の差を補正量H3として補正するようにした。これにより、適正な本発光量を求めることができるので、撮影された画像に光量オーバーや光量アンダーが生じるおそれを低減できる。
【0044】
(2)上記(1)に加えて、予備発光と本発光との色温度差に起因する撮像センサ9(第1撮像センサ108)の受光感度(光電変換効率)の差を補正量H2として補正するようにした。これにより、適正な本発光量を求めることができる。
【0045】
(3)さらに、予備発光と本発光との色温度差に起因する被写体による反射率の差を補正量H4として補正するようにした。これにより、適正な本発光量を求めることができる。
【0046】
(4)さらにまた、予備発光時の色温度と本発光時の色温度との間の照明装置17の発光効率の差を補正量H1として補正するようにした。これにより、適正な本発光量を求めることができる。
【0047】
(5)予備発光の色温度を白色光の色温度に合わせるようにした。たとえば、外光が不足する暗い環境下において遠景領域から色温度情報を正しく取得できない場合は、前景領域の被写体からの反射光に基づいて色温度情報を取得する必要がある。予備発光を白色光の色温度に合わせることで、赤みがかった色温度や青みがかった色温度の光で照明する場合に比べて、被写体の様々な色情報を正しく取得することができる。
【0048】
(6)予備発光時の画像データと非予備発光時の画像データとの差分に基づいて被写体領域(前景領域)と遠景領域とを判別したので、測距情報を用いなくても判別できる。
【0049】
(7)本発光の色温度を外光の色温度に合わせるようにした。これにより、外光と異なる色温度の光で照明する場合に比べて、撮影者が撮影画像から感じる違和感を抑えることができる。
【0050】
(8)本発光の色温度に対応させてホワイトバランス調整係数を設定するようにしたので、本発光と異なる色温度に対応させてホワイトバランス調整(色温度調整)する場合に比べて、撮影者が撮影画像から感じる違和感を抑えることができる。
【0051】
(変形例1)
照明装置17で予備発光および本発光を行う例を説明したが、予備発光をLED光源で行い、本発光を照明装置17で行うようにしてもよい。この場合のLED光源は、白色光を発するもので構成する。また、LED光源は予備発光専用のものでも、AF補助光源もしくはセルフタイマー作動表示灯を兼用するもので構成してもよい。
【0052】
(変形例2)
以上の説明では、便宜上、色温度をK1およびK2で説明したが、実際の照明光は単色でなく、色温度に幅を有する。このため、上述した各式においては、色温度に対して積分してもよいし、色温度幅に含まれる値を代表値として用いてもよい。
【0053】
(変形例3)
上述した説明では、補正量H1、H2、H3、およびH4の全てを補正項に加えるようにしたが、補正項のうち少なくとも1つを用いて補正するようにしてもよい。
【0054】
(変形例4)
以上の説明では、カメラ本体1のアクセサリシュー等に装着するタイプの照明装置17を例に説明したが、照明ユニットをカメラ内に内蔵するタイプとして構成しても(すなわち、カメラ内蔵の照明装置に適用しても)構わない。
【0055】
(変形例5)
カメラ本体1として、第1撮像センサ108(撮像センサ9)で撮像を行う電子カメラを例に説明した。この代わりに、フィルムなどの感光部材で撮像を行う銀塩カメラにも本発明を適用してよい。銀塩カメラの場合には、ステップS207において感光部材への露光を開始する。この場合のステップS209−S210の処理は不要である。
【0056】
(変形例6)
本発明は、一眼レフタイプでない電子カメラに適用しても、あるいは撮影レンズが交換不能なカメラ(レンズ一体型カメラ)に適用しても構わない。この場合には、撮影用の撮像センサ9を測光用センサとしても用いる。すなわち、撮像センサ9によって取得した画像データに基づいて、被写界の輝度情報や色温度情報を算出する(ステップS202、S206)。特に、撮像センサ9で撮像した画像を、カメラ本体1の背面(図1のカメラ本体1の右側)に設けられた不図示の表示部(LCD等)にリアルタイムで表示するライブビューモードにカメラが設定されているときには、ライブビュー中に撮像センサ9で撮像した信号に基づいて、色温度情報を算出するのが望ましい。このようにした場合には、色温度を得るためのセンサと実際の撮像に用いるセンサとが同じであるため、センサ間の受光感度の相違の影響を考慮する必要がなくなるという利点がある。
【0057】
(変形例7)
照明装置17の色フィルタ21の構成例として、ロール状に成形したものをスプール構造により巻き取る方式を説明した。この代わりに、図6に例示するように、液晶パネルなどで構成した電気的に色可変のフィルタ25をキセノン管19の前に設け、この色可変フィルタ25の色を電気的に制御する構成にしてもよい。
【0058】
(変形例8)
上記実施形態では、照明装置17の発光体としてキセノン管を用いるようにしたが、他の光源を使うようにしてもよい。たとえば、発光体を赤色LED19a、緑色LED19b、および青色LED19cによって構成する。この場合の照明制御回路18は、カメラ本体1から送信される発光指示および発光制御信号に応じてLED19a、19b、19cへそれぞれ電流を供給し、各LEDを発光させる。発光制御信号は、LED19a、19b、19cの発光強度比(すなわち照明装置17による照明光の色温度)を指示する発光色制御信号、およびLED19a、19b、19cによる発光量を指示する発光量制御信号を含む。LED19a、19b、19cの発光量は、それぞれのLEDへ供給する電流を増減することによって変更する。LED19a、19b、19cの発光強度比は、各LEDへ供給する電流比を変えることによって変更する。
【0059】
(変形例9)
予備発光の色温度自体も任意の色温度に可変できるようにしてもよい。たとえば、撮影シーンの色温度(外光の色温度)に基づいて、予備発光時の色温度を可変にするようにしてもよい。具体例を挙げると、基本的に予備発光の色温度は白色に設定しておくが、たとえば撮影シーンが赤色の外光の影響によって赤みがかった撮影シーン(たとえば夕暮れのシーン)である場合には、予備発光の色温度を少し赤みを帯びた白色に設定した上で、予備発光を行うようにする。
【0060】
このような制御を行うにあたって、外光の色温度については、上記実施形態でも述べたように、測光センサ16を用いて取得するようにすればよい。なお、この撮影シーンの場合における本発光の色温度は、その赤色の外光の色温度に合わせるように設定される。このように予備発光と本発光の色温度を個別に制御可能であり、その制御によって本発光と予備発光の色温度が異なってしまったとしても、上述したごとき本発光量の補正演算を行うことにより、適切な本発光量を算出することができる。
【0061】
なお、上記変形例では白色をベースとし、その白色に外光の色温度成分を加味することによって、予備発光の色温度を設定するものとして説明した。しかし予備発光の色温度を、外光の色温度に合わせるように制御するものであってもよい。そしてたとえば、予備発光の色温度は、前述のごとく照明装置の発光の無い状況下での外光の測光結果(測光センサ16の出力)に基づいて設定され、本発光の色温度は、その予備発光の最中に得られた撮影シーンの色温度に基づいて設定されるシステムであった場合に、予備発光と本発光とで設定される色温度が異なる可能性がある。本発明は、このような場合においても、上述したごとき本発光量の補正演算を行うことにより、適切な本発光量を算出することができる。
【0062】
以上の説明はあくまで一例であり、上記の実施形態の構成に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0063】
1…カメラ本体
9…撮像センサ
10…マイコン
16…測光センサ
17…照明装置
18…照明制御回路
19…キセノン管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影時に被写体を第1の色温度を持つ光で照明する本発光と、前記撮影の前に前記被写体を前記第1の色温度とは異なる第2の色温度を持つ光で照明する予備発光とを行う照明手段と、
被写体像を撮像し、撮像信号を出力する撮像素子と、
前記照明手段が前記予備発光した場合に前記撮像素子から出力される撮像信号に基づいて、前記本発光時の発光量を演算する演算手段と、
前記本発光と前記予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する前記撮像素子の感度差、および該色温度差に起因する前記被写体の反射率の差のうち少なくとも一方に基づいて、前記演算手段で演算された発光量を補正する補正手段と、
前記補正手段による補正後の発光量で前記本発光するように前記照明手段を制御する照明制御手段とを備えることを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラシステムにおいて、
前記照明手段は色温度可変光源を含み、
前記照明制御手段はさらに、前記本発光の色温度を外光の色温度と合わせるように前記照明手段を制御し、
前記補正手段は、前記外光と前記予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する前記撮像素子の感度差、該色温度差に起因する前記被写体の反射率の差、および該色温度差により前記照明手段の発光効率が異なることに起因する発光量の変化分のうち少なくとも一つに基づいて、前記演算手段で演算された発光量を補正することを特徴とするカメラシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のカメラシステムにおいて、
前記照明制御手段は、前記照明手段が前記予備発光した場合に前記撮像素子から出力される撮像信号と、前記照明手段が発光しない場合に前記撮像素子から出力される撮像信号とに基づいて、前記外光の色温度を算出することを特徴とするカメラシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のカメラシステムにおいて、
前記照明制御手段はさらに、前記予備発光の色温度を白色光の色温度と合わせるように前記照明手段を制御し、
前記補正手段は、前記外光と前記白色光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する前記撮像素子の感度差、該色温度差に起因する前記被写体の反射率の差、および該色温度差により前記照明手段の発光効率が異なることに起因する発光量の変化分のうち少なくとも一つに基づいて、前記演算手段で演算された発光量を補正することを特徴とするカメラシステム。
【請求項5】
請求項2または3に記載のカメラシステムにおいて、
前記照明手段は白色光を発する白色光源をさらに含み、
前記照明制御手段はさらに、前記予備発光時には前記白色光源を発光させるように前記照明手段を制御し、
前記補正手段は、前記外光と前記白色光源による光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する前記撮像素子の感度差、該色温度差に起因する前記被写体の反射率の差、および該色温度差により前記照明手段の発光効率が異なることに起因する発光量の変化分のうち少なくとも一つに基づいて、前記演算手段で演算された発光量を補正することを特徴とするカメラシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のカメラシステムにおいて、
前記撮像素子は撮影用撮像素子および前記撮影用撮像素子と異なる測光用撮像素子を含み、
前記補正手段は、前記本発光と前記予備発光との間の色温度差に基づいて、該色温度差に起因する前記撮影用撮像素子の感度差、該色温度差に起因する前記測光用撮像素子の感度差、および該色温度差に起因する前記被写体の反射率の差のうち少なくとも一つに基づいて、前記演算手段で演算された発光量を補正することを特徴とするカメラシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラシステムにおいて、
前記撮影用撮像素子から出力される撮影用画像信号に対して、前記本発光の色温度に対応する色温度調整係数で色温度調整を行う色調整手段をさらに備えることを特徴とするカメラシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のカメラシステムにおいて、
前記補正手段は、前記照明手段が前記予備発光した場合に前記撮像素子から出力される撮像信号と、前記照明手段が発光しない場合に前記撮像素子から出力される撮像信号とに基づいて、前記被写体の反射率を算出することを特徴とするカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101362(P2013−101362A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−274623(P2012−274623)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2009−550(P2009−550)の分割
【原出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】