説明

カメラスタビライザ

【課題】ズーム操作時に一定の駆動速度を維持する際の操作を容易とする。
【解決手段】カメラを回転させるジンバル機構12と、カメラのズーム状態を検出し、ズーム検出値を出力するズーム検出手段21と、ズーム指示値変換手段22と、入力操作手段14と、入力操作手段14より入力される入力値に、ズーム指示値に反比例する利得を掛算して駆動速度を求め、その駆動速度によってジンバル機構12を駆動制御する駆動制御手段23とを備える。ズーム指示値変換手段22は、一定ズームイン操作時に最小値から最大値に向って変化するズーム検出値の最小値・最大値間を線形補間して得たズーム指示値を、各時間におけるズーム検出値と対応付けた変換テーブルを有し、その変換テーブルを参照してズーム検出値をズーム指示値に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は例えばヘリコプタ等に搭載されて空中撮影を行うカメラを回転駆動するカメラスタビライザに関する。
【背景技術】
【0002】
図3はこの種のカメラスタビライザの従来例として、特許文献1に記載されている構成を示したものである。カメラスタビライザはカメラ11を支持し、回転させるジンバル機構12と、そのジンバル機構12を駆動制御する駆動制御手段13と、カメラ11を回転させるべく、入力操作を行う入力操作手段14を有している。入力操作手段14にはこの例ではジョイスティックが用いられている。ジンバル機構12はカメラ11を回転させるための機構部、モータ及び回転を検出するレートジャイロ等を具備している。カメラ11のズームレンズ11aのズーム倍率はカメラ制御手段15によって制御され、この例ではズーム倍率を検出するズーム倍率検出手段16を備えたものとなっている。
【0003】
入力操作手段14の操作により入力された入力値は駆動制御手段13に入力され、駆動制御手段13はその入力値から駆動速度を求め、その駆動速度によりジンバル機構12を駆動制御する。これによりカメラ11が回転し、つまりカメラ11の視軸方向が回転制御される。
【0004】
カメラ11を回転させるジンバル機構12の駆動速度がズームレンズ11aのズーム倍率に応じて変わらず、一定であると、例えば入力操作手段14の操作を一定に維持している状態(ジョイスティックを一定角、傾けている状態)でズーム倍率を上げた場合、画角が狭くなり、カメラ11で撮影した映像画面が流れていく速さがズーム倍率にほぼ比例して速くなってしまうため、撮影の目標物を捕捉しておくことが困難となる。特許文献1ではこの点に対処すべく、駆動制御手段13はズーム倍率検出手段16によって検出されたズーム倍率と、入力操作手段14より入力される入力値とを用いて駆動速度を求めるものとなっている。
【0005】
駆動制御手段13において行う演算は、入力操作手段14の入力値をJin、ズーム倍率をZ、駆動速度をωoutとした時、
ωout=G1×Jin/Z (1)
但し、G1:任意ゲイン
で表され、ズーム倍率に反比例したゲイン(利得)を入力値に掛けて駆動速度を求めるものとなっていた。
【0006】
なお、特許文献1では、駆動制御手段13に、
ωout=G2×Jin/Z (2)
但し、G2:任意ゲイン
というような式も備え、選択スイッチ17によって式(1),(2)のいずれかを操作する者が任意に選択できるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−221571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来においては入力操作手段14からの入力値に、ズーム倍率に反比例したゲインを掛算して求めた駆動速度によってジンバル機構12を駆動するものとなっていた。
【0009】
しかるに、例えば一定のズームイン操作を行った場合(操作者がズーム倍率を上げるべく、例えばズームスイッチを一定の動作状態で保持した場合)、ズーム倍率は線形増加(直線的に増加)せず、一般にテレ端(望遠端)付近で急激に増加する特性を有する。図4はこの様子の一例を示したものであり、横軸は一定ズームイン操作の経過時間を表し、縦軸はズーム倍率を表す。
【0010】
図4に示したようにズーム倍率は指数的に変化し、テレ端付近では急激に大きくなる。このため、テレ端に近づくと、ジンバル機構12の駆動速度は急激に遅くなってしまう。従って、例えば飛行するヘリコプタから定点観察する場合やホバリング状態で移動体を観察する場合などにおいて、ズーム操作を行いながら、一定の駆動速度を維持したい場合、操作者は入力操作手段14を操作する必要があるものの、上述したような駆動速度の指数的な(急激な)変化に対して、それを打ち消し、一定の駆動速度とする操作は極めて困難となっていた。
【0011】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、ズーム操作を行いながら、一定の駆動速度を維持したい場合に、入力操作手段の操作を従来より容易とし、よって目標にカメラ映像を合わせることを容易に行えるようにしたカメラスタビライザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明によるカメラスタビライザは、カメラを回転させるジンバル機構と、カメラのズーム状態を検出し、ズーム検出値を出力するズーム検出手段と、ズーム検出値をズーム指示値に変換して出力するズーム指示値変換手段と、入力操作手段と、入力操作手段の操作により入力される入力値に、ズーム指示値に反比例する利得を掛算して駆動速度を求め、その駆動速度によってジンバル機構を駆動制御する駆動制御手段とを備え、ズーム指示値変換手段は、一定ズームイン操作時に時間経過に伴い最小値から最大値に向って変化するズーム検出値の前記最小値・最大値間を線形補間して得たズーム指示値を、各時間におけるズーム検出値と対応付けた変換テーブルを有し、その変換テーブルを参照してズーム検出値をズーム指示値に変換するものとされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ズーム操作時に一定の駆動速度を維持したい場合、入力操作手段の操作を従来より容易に行うことができる。よって、相対的に移動する目標にカメラ映像を合わせることを容易に行うことができ、操作性に優れたカメラスタビライザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明によるカメラスタビライザの一実施例の機能構成を示すブロック図。
【図2】一定ズーム操作時のズーム指示値の変化を示すグラフ。
【図3】従来のカメラスタビライザの構成概要を示す図。
【図4】一定ズーム操作時のズーム倍率の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0016】
図1はこの発明によるカメラスタビライザの一実施例の機能構成をブロック図で示したものであり、図3に示した従来構成と対応する部分には同一符号を付してある。
【0017】
カメラスタビライザはこの例ではカメラ(図示せず)を回転させるジンバル機構12と、カメラのズームレンズ11aのズーム状態を検出し、ズーム検出値を出力するズーム検出手段21と、ズーム指示値変換手段22と、入力操作手段14と、ジンバル機構12を駆動制御する駆動制御手段23とを有する。
【0018】
ズーム検出手段21が検出して出力するズーム検出値はズーム倍率であってもよく、またズーム状態を示すアナログ出力(電圧)やデジタル出力であってもよい。ここではズーム検出値をズーム倍率として説明する。
【0019】
ズーム検出手段21が検出したズーム検出値(ズーム倍率)はズーム指示値変換手段22に入力される。ズーム指示値変換手段22は変換テーブル22aを備えており、この変換テーブル22aには一定ズームイン操作時に時間経過に伴い最小値(最小ズーム倍率)から最大値(最大ズーム倍率)に向って変化するズーム倍率の最小値・最大値間を線形補間して得たズーム指示値を、各時間におけるズーム倍率と対応付けたテーブルが予め構築されて格納されている。
【0020】
図2は上記のようにして求めるズーム指示値を示したものであり、破線はズーム倍率を示す。一定ズームイン操作を行った場合、ズーム倍率は指数的に増加するが、ズーム指示値は線形増加し、ズーム倍率のようにテレ端付近で急激に大きくなることはない。
【0021】
ズーム指示値変換手段22はズーム検出手段21から入力されたズーム倍率を、変換テーブル22aを参照してズーム指示値に変換し、そのズーム指示値を駆動制御手段23に出力する。
【0022】
駆動制御手段23は入力操作手段14の操作により入力される入力値と、ズーム指示値とを用いてジンバル機構12を駆動制御する駆動速度を計算する。駆動速度ωoutは、
ωout=G1×Jin/Z’ (3)
但し、Jin:入力操作手段14の入力値
Z’:ズーム指示値
G1:任意ゲイン
で計算される。
【0023】
上述したように、この例では入力操作手段14からの入力値に、ズーム指示値に反比例するゲインを掛算することによって駆動速度を求め、その駆動速度によってジンバル機構12を駆動制御するものとなっている。ズーム指示値は一定ズーム操作時には線形変化(直線的に変化)するため、例えばテレ端に近づいたとしても、駆動速度が従来のように急激に遅くなるといったことは発生しない。
【0024】
従って、ズーム操作を行いながら、一定の駆動速度を維持したい場合、入力操作手段の操作は従来より容易となり、例えばテレ端に近づいたとしても入力操作手段14の操作量(操作状態)を急激に変える必要はなく、テレ端付近で目標にカメラ映像を合わせることも従来に比し、格段に容易となる。よって、極めて操作性に優れたカメラスタビライザを得ることができる。
【0025】
なお、上述した例ではズーム指示値変換手段22はズーム指示値をズーム倍率と対応付けた変換テーブル22aを有するものとなっているが、一定ズームイン操作時に時間経過と共に変化するズーム倍率の最小値・最大値間を線形補間することによって得られるズーム指示値を数式で表わし、その数式を変換テーブル22aが備えるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
11 カメラ 11a ズームレンズ
12 ジンバル機構 13 駆動制御手段
14 入力操作手段 15 カメラ制御手段
16 ズーム倍率検出手段 17 選択スイッチ
21 ズーム検出手段 22 ズーム指示値変換手段
22a 変換テーブル 23 駆動制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを回転させるジンバル機構と、
前記カメラのズーム状態を検出し、ズーム検出値を出力するズーム検出手段と、
前記ズーム検出値をズーム指示値に変換して出力するズーム指示値変換手段と、
入力操作手段と、
前記入力操作手段の操作により入力される入力値に、前記ズーム指示値に反比例する利得を掛算して駆動速度を求め、その駆動速度によって前記ジンバル機構を駆動制御する駆動制御手段とを備え、
前記ズーム指示値変換手段は、一定ズームイン操作時に時間経過に伴い最小値から最大値に向って変化する前記ズーム検出値の前記最小値・最大値間を線形補間して得た前記ズーム指示値を、各時間における前記ズーム検出値と対応付けた変換テーブルを有し、その変換テーブルを参照して前記ズーム検出値を前記ズーム指示値に変換することを特徴とするカメラスタビライザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168305(P2012−168305A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28238(P2011−28238)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】