説明

カメラ付きポータブル録音装置

【課題】高品質で録音する。
【解決手段】カメラモジュール64を収納したカメラハウジング14は、本体ケース3に回転自在に取り付けられている。カメラハウジング14の両側には、左右トランスデューサ室46,49が設けられている。左トランスデューサ室46内には左トランスデューサ47が収納され、右トランスデューサ室49内には右トランスデューサ50が収納されている。左右支持アーム55,56は、根元部がカメラハウジング14に保持され、左右トランスデューサ室46,49内に突出した支持部55a,55b,56a,56b及び支持爪55c,56cにより左右トランスデューサ47,50を支持する。カメラハウジング14内のカメラモジュール64と、左右支持アーム55,56に支持された左右トランスデューサ47,50とは一体化され、カメラハウジング14を回転したときに、一緒に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ付きポータブル録音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポータブル録音装置は、ステレオ録音機能を有し、高品質な録音が可能なところから、会議の録音、コンサート会場での演奏録音、野外環境音などの録音に利用されている。従来のポータブル録音装置としては、例えば特許文献1に示すように、録音部を収納した本体ケースの上端に、マイクロフォン本体の軸部が回転可能に取り付けられている。このマイクロフォン本体は、軸部の両側に左右マイクロフォンが設けられている。各マイクロフォンは、筒状をしたトランスデューサ室と、この中に収納されたトランスデューサとから構成されている。各トランスデューサは、傾斜した状態で収納されている。マイクロフォン本体を回転することで、各トランスデューサを音源の方向に向けることができる。
【0003】
ポータブル録音装置は、高品質な録音をするものであるから、マイクロフォンと録音部とからなる高性能な録音機構を備えているが、カメラ機構を備えていない。ところで、特許文献2に示すような携帯電話機や、動画撮影可能なデジタルカメラ、ビデオカメラなどでは、画像記録を主機能とするものであるが、カメラ機構の他に録音機構を備え、画像と音声の両方を記録している。
【0004】
例えば、特許文献2に記載された携帯電話機は、表示画面を有する第1の筐体に対して、操作ボタンを有する第2の筐体がスライド自在になっている。この第2の筐体の端部に、回転体が回転可能に取り付けられている。この回転体には、カメラ部とマイク部が内蔵されている。また、回転体の表面には、カメラ部の撮影窓とマイク部の集音口が同じ方向を向くように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−171355号公報
【特許文献2】特開2004−032444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2には、カメラ部とマイク部とを有する回転体が記載されているが、この回転体を特許文献1に記載されたポータブル録音装置に採用することは可能である。しかし、特許文献2では、カメラモジュールの左方にしかトランスデューサを含むマイク部が配されておらず、回転体には、カメラモジュールの左右それぞれにトランスデューサを配するスペースがない。このため、1個のトランスデューサによるモノラル録音となり、高品質な録音をすることができない。
【0007】
また、特許文献2では、カメラ部とマイク部とが同じ空間に配され、画像信号用の信号線と、音声信号用の信号線とが回転体の同じ位置から引き出されているため、画像信号と音声信号とが干渉し合ってノイズが発生することがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高品質な録音をすることができるカメラ付きポータブル録音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のカメラ付きポータブル録音装置は、録音部と録画部とを収納した本体ケースと、前記本体ケースの端部に回転可能に取り付けられたカメラハウジングと、前記カメラハウジング内に収納され、前記録画部で記録するためのシーンを撮影するカメラモジュールと、前記カメラハウジングの両側に位置し、円筒形をした左右トランスデューサ室と、前記カメラハウジングの両側に取り付けられ、前記左右トランスデューサ室内にそれぞれ突出した左右支持アームと、前記各支持アームに支持され、前記カメラモジュールと一緒に回転し、前記録音部で記録するためのシーンからの音声を音声信号に変換する左右トランスデューサと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記カメラハウジングの一方の側部から引き出されて前記録画部に接続され、前記カメラモジュールで撮影された画像信号を伝送する画像用フレキシブル配線シートと、前記カメラハウジングの他方の側部から引き出されて前記録音部に接続され、前記各トランスデューサで変換された音声信号を伝送する音声用フレキシブル配線シートとを備えることが好ましい。なお、前記各フレキシブル配線シートとしては、FPC(Flexible Printed Circuits)やFFC(Flexible Flat Cable)等が挙げられる。
【0011】
さらに、前記各フレキシブル配線シートは、前記カメラハウジングの外側に引き出されて円弧状に巻かれた後に、前記録画部及び録音部に接続されていることが好ましい。
【0012】
また、前記各支持アームの先端には、前記各トランスデューサを支持する複数の爪が形成され、前記トランスデューサは、周囲にスペースを保って前記各トランスデューサ室に収納されていることが好ましい。
【0013】
さらに、前記カメラハウジングの両側に取り付けられ、前記各支持アームを挿通する切欠きがそれぞれ形成された左右軸板を備え、前記本体ケースは、前記各軸板を回転自在に支持することが好ましい。
【0014】
また、前記各軸板の一方を所定の回転位置に位置決めする固定手段を備えることが好ましい。
【0015】
さらに、前記固定手段は、クリックストップ機構であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、本体ケースの端部に両側から突出するように、円筒状の左右トランスデュー室を形成し、この左右トランスデュー室の間に位置するように、カメラモジュールを収納したカメラハウジングの両側を各トランスデューサ室に回転可能に取り付けている。そして、カメラハウジングに取り付けられた左右支持アームを左右トランスデュー室に突出させ、この左右支持アームで音声を音声信号に変換する左右トランスデューサを保持するようにしたから、録画とステレオ録音の両方ができるとともに、シーンに向けてカメラとマイクロフォンとを一緒に回転させることができる。
【0017】
また、画像信号を伝送するフレキシブル配線シートと、音声信号を伝送するフレキシブル配線シートとをカメラハウジングの両側から引き出すことで、両者を離したから、信号の干渉によるノイズの発生を防止することができる。
【0018】
さらに、各支持アームの先端に形成した複数の爪により各トランスデューサを支持することで、円筒状をしたトランスデューサ室内に、トランスデューサを回転可能に配置し、トランスデューサの周囲に空間を確保したから、マイクロフォンの指向性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】カメラ付きポータブル録音装置を示す正面斜視図である。
【図2】カメラ付きポータブル録音装置を示す背面斜視図である。
【図3】後カバーを取り外した状態のカメラ付きポータブル録音装置の上部を示す斜視図である。
【図4】左右マイクロフォンとカメラとを示す断面図である。
【図5】左右軸板を外したカメラの分解斜視図である。
【図6】カメラハウジングを分解したカメラの分解斜視図である。
【図7】カメラモジュールと中継基板と左右トランスデューサと左右支持アームとを示す分解斜視図である。
【図8】左トランスデューサと左支持アームとを示す分解斜視図である。
【図9】カメラハウジングを示す分解斜視図である。
【図10】カメラモジュールとFPCと中継基板とモジュールホルダとを示す分解斜視図である。
【図11】カメラの断面図である。
【図12】クリックストップ機構により左軸板を固定した状態の前カバーと後カバーと左軸板とを示す断面図である。
【図13】クリックストップ機構による左軸板の固定を解除した状態の前カバーと後カバーと左軸板とを示す断面図である。
【図14】カメラ付きポータブル録音装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1及び図2に示すように、カメラ付きポータブル録音装置2は、本体ケース3と、左マイクロフォン4と、右マイクロフォン5と、カメラ6とを備えている。各マイクロフォン4,5は、シーン内の音を集音し、集音した音を電気信号に変換する。本体ケース3は、前カバー11と本体部12と後カバー13とから構成されている。カメラ6は、カメラハウジング14と、このカメラハウジング14内に固定されたカメラモジュール64(図6参照)とからなり、本体ケース3に回転自在に取り付けられている。
【0021】
前カバー11には、LCD21、撮影・録音ボタン22、再生ボタン23、停止ボタン24が設けられている。また、前カバー11には、メニューボタン25、モード切替ボタン26、ディスプレイボタン27、撮影時及び再生時に画像の拡大及び縮小を行うズームボタン28、エンターボタン(決定ボタン)の周囲に上下及び左右のセレクトボタンが配されたセレクト・エンターキー29が設けられている。
【0022】
モード切替ボタン26を押圧すると、動画撮影及び録音を行う動画撮影モードと、録音を行わずに静止画撮影のみを行う静止画撮影モードと、撮影を行わずに録音のみ行う録音モードと、画像や音声の再生をする再生モードとの1つを選択することができる。
【0023】
LCD21の下方には、各種機能を実行させるための第1ファンクションボタン31、第2ファンクションボタン32、第3ファンクションボタン33が設けられている。
【0024】
後カバー13には、スピーカ36(図14参照)から出力された音声を外部に発するスピーカ孔13aが複数形成されている。
【0025】
動画撮影モードで撮影・録音ボタン22を押圧すると、動画撮影及び録音が開始される。静止画撮影モードで撮影・録音ボタン22を押圧すると、静止画撮影が開始される。録音モードで撮影・録音ボタン22を押圧すると、録音が開始される。
【0026】
再生モードで再生ボタン23を押圧すると、記録された動画、静止画、音声のうち、選択されたデータ(ファイル)の再生が行われる。動画及び静止画は、LCD21に表示され、音声は、スピーカ36から出力される。
【0027】
メニューボタン25を押圧すると、LCD21に、各種設定を行うための設定画面が表示される。設定画面中の「PLAYLIST」を選択すると、再生するデータを選択する選択画面が表示される。選択画面または設定画面中に、セレクト・エンターキー29を操作すると、設定及び選択が行われる。
【0028】
第1ファンクションボタン31を長押し操作すると、電源のオン/オフが行われ、第3ファンクションボタン33を操作すると、撮影・録音経過時間や残量時間等を表示するホーム画面が表示される。
【0029】
本体ケース3の側面には、音量を調整するボリュームノブ40、音声出力用の出力端子41、画像出力用の出力端子42が設けられている。
【0030】
左マイクロフォン4は、前カバー11、本体部12、後カバー13及び左マイク用下カバー43(図3参照)によりほぼ円筒状に形成された左トランスデューサ室46と、この左トランスデューサ室46内に収納された左トランスデューサ47(図3参照)とから構成されている。右マイクロフォン5は、前カバー11、本体部12、後カバー13及び右マイク用下カバー44(図3参照)によりほぼ円筒状に形成された右トランスデューサ室49と、この右トランスデューサ室49内に収納された右トランスデューサ50(図3参照)とから構成されている。
【0031】
右トランスデューサ室49の周面には、周囲の音を右トランスデューサ50に到達させるために、約90°の範囲にわたって形成した集音開口49aが6個(前側3個、背面側3個)形成されている。右トランスデューサ室49の側面には、マイクロフォンキャップ48が取り付けられている。このマイクロフォンキャップ48には、右側の音を右トランスデューサ室49に入れるための集音孔48aが形成されている。同様に、左トランスデューサ室46は集音開口46aが形成され、側面にはマイクロフォンキャップ48が取り付けられている。
【0032】
図3に示すように、本体部12には、左トランスデューサ室46の下面を形成するための左マイク用下カバー43と、右トランスデューサ室49の下面を形成するための右マイク用下カバー44とが設けられている。
【0033】
図4〜図8において、左トランスデューサ47は、左支持アーム55により支持され、右トランスデューサ50は、右支持アーム56により支持されている。左支持アーム55と右支持アーム56とは、左右対称形をしている。左支持アーム55は、根元部がカメラハウジング14に保持されている。左支持アーム55の先端には、根元部から2方向に突出し、左トランスデューサ47の前後面における外周部の一部、及び側面の一部に当接して左トランスデューサ47を支持するように、2個のツノ状の支持部55a,55bが形成されている。なお、図4は、下方から見た断面図である。
【0034】
支持部55a,55bの先端部には、左トランスデューサ47を支持する支持爪55cが上下に形成されている。左トランスデューサ47は、前後面における外周部の一部及び側面の一部が支持部55a,55b及び支持爪55cにより支持され、周囲(上方、下方、前方及び後方)に隙間が空いた状態で、左トランスデューサ室46に収納されている。左トランスデューサ室46に加わる振動は支持部55a,55bによって吸収され、左トランスデューサ47への伝達が軽減される。同様に、右トランスデューサ50は、右支持アーム56の支持部56a,56b及び支持爪56cにより支持されている。左右トランスデューサ47,50は、カメラ6の向きに対して、例えば45°傾いた状態で、左右支持アーム55,56により支持されている。
【0035】
図9において、カメラハウジング14は、カメラ前カバー61とカメラ後カバー62とから構成され、略円筒状をしている。カメラ前カバー61には、透明な撮影窓63が設けられている。撮影窓63の後方には、カメラモジュール64が配され、このカメラモジュール64は、中継基板65と重なるように取り付けられている。カメラモジュール64は、撮影レンズが組み込まれたレンズ部64aと、ベース部64bとを備え、このベース部64bには、撮像素子、例えばCMOS(イメージセンサ)66(図14参照)が取り付けられている。ベース部64bの後面には、FPC70の一端が固定され、このFPC70には、CMOS66が接続されている。図10に示すように、カメラモジュール64は、カメラモジュールホルダ(以下、モジュールホルダ)67に保持され、中継基板65に取り付けられている。なお、CMOS66の代わりにCCDを用いてもよい。
【0036】
カメラ前カバー61には、モジュールホルダ67を受ける受けボス61aが2本形成され、この受けボス61aには、ビス締め孔61bが形成されている。各カメラカバー61,62には、カメラ6を回転するときの指先の引っ掛けとなる引掛用凹み68が形成されている。
【0037】
モジュールホルダ67には、位置決め突起67aとビス挿通孔67bとがそれぞれ2個ずつ形成されている。モジュールホルダ67には、上方が開口した箱状の受け部67cが形成され、この中にカメラモジュール64が収納される。また、モジュールホルダ67には、カメラモジュール64の上端を押える押え片67dと、中継基板65に係合するフック67eとが形成されている。フック67eは、左右に1個ずつ計2個形成されている。なお、図10では、一方のフック67eのみが描かれている。
【0038】
中継基板65には、位置決め突起67aが挿入される位置決め孔65aと、ビス挿通孔65bとがそれぞれ2個ずつ形成されている。また、中継基板65には、カメラモジュール64を接続するためのコネクタ71が取り付けられている。このコネクタ71は、上面に接続用開口71aが形成されている。カメラモジュール64に一端が接続されたFPC70は、例えば180°折り返した状態で他端が接続用開口71aに挿入されている。FPC70の弾性力により、カメラモジュール64は、前方向(中継基板65から離間する方向)に付勢されてモジュールホルダ67の押え片67dに押し付けられ、ガタつきが防止される。
【0039】
図7に示すように、中継基板65には、左トランスデューサ47を接続するための2本の接続ワイヤ81の一端が接続されている。同様に、2本の接続ワイヤ82により、右トランスデューサ50は、中継基板65に接続されている。
【0040】
中継基板65の右端には、音声用FFC83の一端が接続され、中継基板65の左端には、画像用FPC84の一端が接続されている。また、中継基板65には、撮影中を示すLED88が設けられている。LED88からの光は、モジュールホルダ67に取り付けられた透明なライトガイド89に入射される。このライトガイド89の先端は、カメラ前カバー61に形成されたガイド孔61cに挿入され、LED88からの光は、ライトガイド89を通って外部に照射され、撮影中であることを表示する。
【0041】
ビス90は、中継基板65のビス挿通孔65b、モジュールホルダ67のビス挿通孔67bを介して、カメラ前カバー61のビス締め孔61bに螺合している。このビス90により、モジュールホルダ67及び中継基板65は、カメラ前カバー61に固定されている。
【0042】
図6に示すように、カメラ前カバー61は、左側面に半円柱状の左前凸部91が形成され、そして、右側面に半円柱状の右前凸部92(図9参照)が形成されている。カメラ後カバー62は、左側面に半円柱状の左後凸部93が形成され、右側面に半円柱状の右後凸部94が形成されている。
【0043】
カメラ前カバー61の左前凸部91には、画像用FPC84を挿通してカメラモジュール14の左側部から引き出すためのFPC用切欠き95が形成されている。同様に、カメラ後カバー62の左後凸部93には、FPC用切欠き96が形成されている。FPC用切欠き95,96の壁面は、画像用FPC84を上方及び側方に突出させるように傾斜している。
【0044】
カメラ前カバー61の右前凸部92には、音声用FFC83を挿通してカメラモジュール14の右側部から引き出すためのFFC用切欠き97が形成されている。同様に、カメラ後カバー62の右後凸部94には、FFC用切欠き98が形成されている。FFC用切欠き97,98の壁面は、音声用FFC83を下方及び側方に突出させるように傾斜している。
【0045】
左前凸部91には、左支持アーム55を位置決めする位置決め突起91aが2個形成され、同様に、右前凸部92には、位置決め突起92aが2個形成されている。また、左後凸部93には、左支持アーム55が挿通される切欠き93aが形成され、同様に、右後凸部94には、切欠き94aが形成されている。
【0046】
左前凸部91の内部には、左支持アーム55を保持するための左保持凹部91bが形成され、同様に、左後凸部93の内部には、左保持凹部93bが形成されている。また、右前凸部92の内部には、右支持アーム56を保持するための右保持凹部92bが形成され、同様に、右後凸部94の内部には右保持凹部94bが形成されている。
【0047】
左支持アーム55は、位置決め片55dと保持片55eとが形成されている。位置決め片55dが2個の位置決め突起91aの間に挿入され、保持片55eの一端が左保持凹部91bに挿入されている。この状態で、カメラ後カバー62はカメラ前カバー61に取り付けられ、左保持凹部93bに保持片55eの他端が挿入されているから、左支持アーム55はカメラ前カバー61及びカメラ後カバー62からなるカメラハウジング14で保持される。同様に、右支持アーム56の位置決め片56dが2個の位置決め突起92aの間に挿入され、保持片56eが右保持凹部92b,94bに挿入されているから、右支持アーム56はカメラハウジング14に保持される。これにより、カメラハウジング14内に配されたカメラモジュール64と、左右支持アーム55,56に支持された左右トランスデューサ47,50とが一体化される。
【0048】
左前凸部91及び左後凸部93には、それぞれビス締め孔101と位置決め孔102とが形成されている。また、右前凸部92及び右後凸部94には、それぞれビス締め孔103と位置決め孔104とが形成されている。
【0049】
図5に示すように、左前凸部91及び左後凸部93には、略C字状の左軸板107が取り付けられ、右前凸部92及び右後凸部94には、略C字状の右軸板108が取り付けられている。
【0050】
左軸板107には、ビス挿通孔111と位置決め突起112とがそれぞれ2個形成され、右軸板108には、ビス挿通孔113と位置決め突起114とがそれぞれ2個形成されている。位置決め突起112を位置決め孔102に挿入して位置決めした状態で、ビス116が、ビス挿通孔111を介してビス締め孔101に螺合され、左軸板107がカメラハウジング14に固定されている。同様に、右軸板108は、ビス116によりカメラハウジング14に固定されている。
【0051】
左トランスデューサ室46の内部には、左軸板107を回転自在に支持する左軸受け部118が設けられ、右トランスデューサ室49の内部には、右軸板108を回転自在に支持する右軸受け部119が設けられている(図4参照)。左右軸板107,108が左右軸受け部118,119に回転自在に支持されているから、左右軸板107,108が固定されたカメラ6が回転自在となる。本実施形態では、カメラ6は、前方を向いた状態(図2参照)と後方を向いた状態との180°の範囲内で回転可能に設けられ、その回転範囲内であれば、上方を向いた状態等、自由に位置決めすることができる。
【0052】
図12及び図13に示すように、左トランスデューサ室46の内部には、左軸板107の回転位置を規制するため、クリックストップ機構121が設けられている。このクリックストップ機構121は、左軸板107の側面に形成されたクリック凹部122と、前カバー11に形成されたクリック爪123とから構成されている。クリック爪123は、前カバー11に形成された弾性変形可能なクリック片124の先端に形成されている。クリック爪123がクリック凹部122に嵌入すると、左軸板107の位置が固定され、カメラ6も、その位置で固定される。クリック凹部122は、90°ピッチで3個形成されている。なお、クリック凹部122を形成するピッチは、適宜変更可能である。
【0053】
右トランスデューサ室49の内部には、カメラ6が上方を向いたことを検知する検知スイッチ125(図14参照)が配されている。右軸板108には、カメラ6が図2に示す前方を向く位置から上方を向く位置に回転されたときに、検知スイッチ125を押圧してオンするスイッチ用突起108a(図5参照)が形成されている。このスイッチ用突起108aは、カメラ6が後方を向く位置から上方を向く位置に回転されたときに、検知スイッチ125をオフする。検知スイッチ125は、オンされると検知信号を出力する。
【0054】
各カメラカバー61,62のFFC用切欠き97,98を挿通され、カメラハウジング14の右側部から引き出された音声用FFC83は、例えば1回転(360°)円巻きされ、カメラハウジング14と右軸板108との間に配される。また、各カメラカバー61,62のFPC用切欠き95,96を挿通され、カメラハウジング14の左側部から引き出された画像用FPC84は、例えば1.5回転(540°)円巻きされ、カメラハウジング14と左軸板107との間に配される。なお、音声用FFC83及び画像用FPC84の巻き数(角度)は、カメラハウジング14の回転角度(180°)以上の角度であれば、カメラハウジング14の径の大きさや音声用FFC83及び画像用FPC84の材質に応じて、適宜変更可能であるが、カメラハウジング14を回転したときの音声用FFC83及び画像用FPC84の巻径の変化量(撓みの大きさ)を考慮すると、カメラハウジング14の回転角度の2倍以上、すなわち360°(1巻き)以上であることが好ましい。
【0055】
音声用FFC83の円巻きされた部分と、各カメラカバー61,62の各凸部92,94との間には、隙間があり、カメラハウジング14が回転されて音声用FFC83が引っ張られたり弛んだりするときにも、この隙間内で音声用FFC83が変形する。カメラハウジング14の回転により音声用FFC83が引っ張られたときには、音声用FFC83の円巻き径が小さくなるように変形し、カメラハウジング14の回転により音声用FFC83が弛んだときには、音声用FFC83の円巻き径が大きくなるように変形する。同様に、カメラハウジング14が回転されて画像用FPC84が引っ張られたり弛んだりするときにも、画像用FPC84と各凸部91,93との隙間内で画像用FPC84が変形する。
【0056】
音声用FFC83及び画像用FPC84の一端は、カメラハウジング14内の中継基板65に接続され、他端は本体ケース3に収納された制御基板128に接続されている(図3参照)。
【0057】
図14において、中継基板65には、CMOS用AFE(Analog Front End)132が設けられている。CMOS用AFE132は、CMOS66から入力されたアナログの画像信号に対してノイズ成分除去、増幅処理、デジタル処理を施してデジタル信号に変換する。また、中継基板65には、撮影状態を表示するLED88が設けられている。
【0058】
制御基板128には、カメラ付きポータブル録音装置2の駆動を制御する記録/再生制御部141が設けられている。静止画撮影モードでは、カメラ6からの画像信号は、記録/再生制御部141により、静止画データとして本体ケース3の内部に着脱可能に収納されるSDカード142に記録される。動画撮影モードでは、左右マイクロフォン4,5からの音声信号、及びカメラ6からの画像信号は、記録/再生制御部141により、画像データ及び音声データを含む動画フィルとしてSDカード142に記録される。録音モードでは、左右マイクロフォン4,5からの音声信号は、記録/再生制御部141により、音声データとしてSDカード142に記録される。
【0059】
また、制御基板128には、左右トランスデューサ47,50から中継基板65、音声用FFC83を介して入力されたアナログの音声信号をデジタル音声信号に変換する音声A/D変換器144と、中継基板65から入力されるデジタル信号に各種の信号処理を施す画像DSP(Digital Signal Processor)145及び音声DSP146と、LCD21の表示を制御するための表示制御部147とが設けられている。
【0060】
ここで、カメラ機構は、CMOS66、CMOS用AFE132、画像DSP145、記録/再生制御部141で構成され、録画部は、画像DSP145、記録/再生制御部141で構成されている。また、ステレオ録音機構は、左右トランスデューサ47,50、音声A/D変換器144、音声DSP146、記録/再生制御部141で構成され、録音部は、音声DSP146、記録/再生制御部141で構成されている。
【0061】
次に、上記実施形態の作用について説明する。カメラ付きポータブル録音装置2で動画撮影を行うときには、モード切替ボタン26を操作して動画撮影モードにセットする。カメラ6が、撮影すべきシーンに向くように、カメラハウジング14を回転する。カメラハウジング14が回転されると、クリック片124は弾性変形し、クリック爪123がクリック凹部122から抜け出して固定が解除される(図13参照)。クリック爪123がクリック凹部122に対向する位置までカメラ6を回転させると、クリック片124は元の形状に戻り(弾性変形)、クリック爪123がクリック凹部122に嵌入される。カメラハウジング14の固定を解除するためには、比較的に大きな力が必要であり、通常の使用状態では、振動が加わってもカメラハウジング14の固定が解除されることはない。
【0062】
また、カメラハウジング14の回転中に、中継基板65も回転する。この回転に応じて、カメラハウジング14の左右に配した音声用FFC83及び画像用FPC84のループが、巻き弛み、または巻き締めされるから、これらが引っ掛かることなく、カメラハウジング14がスムーズに回転する。
【0063】
カメラハウジング14の回転により、カメラハウジング14内のカメラモジュール64と、左支持アーム55及び右支持アーム56とが一体的に回転する。この回転によって、撮影窓63がシーンに合わせられ、また左右支持アーム55,56に支持された左右トランスデューサ47,50は、シーンに対して45°傾いた状態に合わせられる。
【0064】
カメラ6が、前方を向く位置から上方を向く位置に回転されると、右軸板108のスイッチ用突起108aにより検知スイッチ125がオンされ、検知スイッチ125から記録/再生制御部141に検知信号が入力される。記録/再生制御部141は、検知信号が入力されると、CMOS66で撮影した状態から画像を180°回転させて上下を反転させる。また、カメラ6が、後方を向く位置から上方に向く位置に回転されると、スイッチ用突起108aにより検知スイッチ125がオフされ、検知信号の入力が停止される。記録/再生制御部141は、検知信号の入力が停止されると、画像の反転を停止する。
【0065】
動画撮影モードでは、カメラモジュール64が作動しているので、CMOS66は、シーンを撮影して画像信号を出力する。この画像信号は、FPC70を介して中継基板65のCMOS用AFE132に入力される。この入力された画像信号は、CMOS用AFE132で増幅、サンプリング、A/D変換された後、デジタル信号として画像用FPC84を介して制御基板128に送られる。
【0066】
また、シーンからの音は、集音開口46a,49a、集音孔48aを通って左右トランスデュー室46,49に入る。これらの音は、左右トランスデューサ47,50で音声信号に変換されて、接続ワイヤ81,82、中継基板65、音声用FFC83を介して制御基板128の音声A/D変換器144に入力される。音声A/D変換器144は、音声用FFC83を介して入力される音声信号を、デジタル信号に変換する。この音声用FFC83は、画像用FPC84と離れているから、音声信号と画像信号とが干渉し合うことによるノイズ発生が防止される。また、左右トランスデューサ47,50の周囲、特に後方には、スペースが確保されているから、後方からの反響を受けることがなく、高品質の音声信号を得ることができる。
【0067】
制御基板128の画像DSP145は、デジタル画像信号に簡単な画像処理を施してから表示制御部147を介してLCD21に送る。このLCD21には、モニタ用のスルー画が表示される。
【0068】
LCD21でシーンを確認してから、撮影・録音ボタン22を押圧して動画撮影を開始する。この動画撮影中は、画像DSP145は、デジタル画像信号に高精度な画像処理を施し、また、音声DSP146は、デジタル音声信号に各種の信号処理を施す。記録/再生制御部141は、信号処理が施されたデジタル信号から、画像データ及び音声データを含む動画フィルを生成し、SDカード142に記録する。この動画撮影中も、撮影済みの画像がLCD21に表示される。
【0069】
静止画撮影モードでは、カメラ機構だけが作動され、録音機構は作動しない。静止画撮影モードで撮影・録音ボタン22を押圧すると、記録/再生制御部141は、画像DSP145で画像処理が施されたデジタル画像信号を静止画データとしてSDカード142に記録する。なお、静止画撮影モードでも、LCD21には、モニタ用のスルー画が表示される。
【0070】
録音モードでは、録音機構だけが作動され、カメラ機構は作動しない。撮影・録音ボタン22を押圧すると、記録/再生制御部141は、音声DSP146で信号処理が施されたデジタル音声信号を音声データとしてSDカード142に記録する。
【0071】
再生モードでは、再生するデータあるいはファイルを選択する選択画面として、動画及び静止画のサムネイル画像と、音声データのタイトルとがLCD21に表示される。セレクト・エンターキー29を操作して、再生する1つを選択し、再生ボタン23を押圧する。再生ボタン23が押圧されると、記録/再生制御部141は、SDカード142内の静止画データ、音声データ、動画ファイルの中から選択された1つを読み出し、画像をLCD21に表示し、音声をスピーカ36から出力する。
【0072】
なお、上記実施形態では、トランスデューサをトランスデューサ室内部に傾いた状態で配置しているが、トランスデューサをトランスデューサ室内部に平行に配置してもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、カメラハウジングの右側部から音声用FFCを引き出し、カメラハウジングの左側部から画像用FPCを引き出しているが、それぞれ逆側から引き出してもよい。
【0074】
さらに、上記実施形態では、支持アームは、トランスデューサの前後面及び側面の一部を支持しているが、少なくともトランスデューサの前面を開放した状態で支持すればよく、トランスデューサの後面及び側面の全面を支持してもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、左軸板を所定の回転位置に位置決めしているが、右軸板を位置決めしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
2 カメラ付きポータブル録音装置
3 本体ケース
6 カメラ
14 カメラハウジング
46 左トランスデューサ室
47 左トランスデューサ
49 右トランスデューサ室
50 右トランスデューサ
55 左支持アーム
56 右支持アーム
55a,55b,56a,56b 支持部
55c,56c 支持爪
64 カメラモジュール
65 中継基板
83 音声用FFC(音声用フレキシブル配線シート)
84 画像用FPC(画像用フレキシブル配線シート)
121 クリックストップ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
録音部と録画部とを収納した本体ケースと、
前記本体ケースの端部に回転可能に取り付けられたカメラハウジングと、
前記カメラハウジング内に収納され、前記録画部で記録するためのシーンを撮影するカメラモジュールと、
前記カメラハウジングの両側に位置し、円筒形をした左右トランスデューサ室と、
前記カメラハウジングの両側に取り付けられ、前記左右トランスデューサ室内にそれぞれ突出した左右支持アームと、
前記各支持アームに支持され、前記カメラモジュールと一緒に回転し、前記録音部で記録するためのシーンからの音声を音声信号に変換する左右トランスデューサと、
を備えることを特徴とするカメラ付きポータブル録音装置。
【請求項2】
前記カメラハウジングの一方の側部から引き出されて前記録画部に接続され、前記カメラモジュールで撮影された画像信号を伝送する画像用フレキシブル配線シートと、
前記カメラハウジングの他方の側部から引き出されて前記録音部に接続され、前記各トランスデューサで変換された音声信号を伝送する音声用フレキシブル配線シートとを備えることを特徴とする請求項1記載のカメラ付きポータブル録音装置。
【請求項3】
前記各フレキシブル配線シートは、前記カメラハウジングの外側に引き出されて円弧状に巻かれた後に、前記録画部及び録音部に接続されていることを特徴とする請求項2記載のカメラ付きポータブル録音装置。
【請求項4】
前記各支持アームの先端には、前記各トランスデューサを支持する複数の爪が形成され、
前記トランスデューサは、周囲にスペースを保って前記各トランスデューサ室に収納されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載のカメラ付きポータブル録音装置。
【請求項5】
前記カメラハウジングの両側に取り付けられ、前記各支持アームを挿通する切欠きがそれぞれ形成された左右軸板を備え、
前記本体ケースは、前記各軸板を回転自在に支持することを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つ記載のカメラ付きポータブル録音装置。
【請求項6】
前記各軸板の一方を所定の回転位置に位置決めする固定手段を備えることを特徴とする請求項5記載のカメラ付きポータブル録音装置。
【請求項7】
前記固定手段は、クリックストップ機構であることを特徴とする請求項6記載のカメラ付きポータブル録音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−75062(P2012−75062A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220268(P2010−220268)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】