説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】アクチュエータや羽根などの構成部材を、すべて地板の一方の面に対して取り付けるようにしたコスト上で有利なカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】先ず、地板1に設けられた軸に回転子5を回転可能に嵌合させると共に、コイル3を巻回したボビン4とヨーク2とからなる固定子を地板1の切欠部1bの対応位置に嵌め込む。その後、仕切り板6、シャッタ羽根7,8、カバー板9の順に地板1の軸に組み付けてゆき、最後に、二つのねじを、カバー板9の孔9n,9p、仕切り板6の孔6m,6nに挿入して、地板1にねじ込むなどすることによって、シャッタ装置がユニット化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置などを、単独もしくは複数でユニット化するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに内臓されている最近のレンズシャッタ装置(以下、シャッタ装置という),絞り装置,フィルタ装置は、各々羽根部材を有していて、それらを電磁駆動源(モータ,プランジャ等のアクチュエータ)によって往復作動させるようにしている。そして、シャッタ装置の場合には、シャッタ羽根を2枚として、相反する方向へ回転させるようにしたものが多いが、携帯電話用のカメラも含めてレンズ口径の極めて小さいカメラに内蔵するシャッタ装置の場合には、シャッタ羽根を1枚としたものもある。
【0003】
また、レンズ口径の比較的小さいカメラに内臓される絞り装置は、最近では、もっぱら光量制御の目的だけに用いられるようになってきており、その構成としては、複数枚の絞り羽根を同時に作動させて複数の絞り開口を規制できるようにしたものもあるが、円形をした絞り開口用の開口部を有する1枚の絞り羽根を備えていて、その絞り羽根を必要に応じて露光開口に進退させるようにしたものが多くなってきている。そして、そのような円形の開口部を有する絞り羽根を備えた絞り装置の場合には、開口部の直径の異なる複数枚の絞り羽根を備えることもある。
【0004】
更に、フィルタ装置の場合には、上記の円形の開口部を有した絞り羽根と類似の形状(但し、その開口部は、露光開口と略同じ大きさの場合もある)をした羽根部材に対し、その開口部の近傍位置にその開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けることによってフィルタ羽根としたものが多くなっているが、そのような円形の開口部を有する羽根部材を2枚用意し、それらの間に、NDフィルタ板のみで製作した羽根部材を重合させ、3枚の部材を、あたかも1枚の羽根のようにして、同時に同方向へ往復回転させるようにしたものもある。そして、そのようなフィルタ羽根を備えたフィルタ装置の場合には、開口部の直径が異なっていたりNDフィルタ板の濃度の異なっていたりする複数枚のフィルタ羽根を備えることもある。
【0005】
このように、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根を電磁駆動源で作動させるようにしたシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、各々単独でユニット化されることもあるが、それらの二つ以上の装置を一つのユニットとすることもある。そして、単独でユニット化する場合であっても、シャッタ装置の場合には、開き用のシャッタ羽根と閉じ用のシャッタ羽根とを別々の電磁駆動源で作動させることがある。また、絞り装置の場合には、上記のように開口部の直径の異なる複数枚の絞り羽根を各々の電磁駆動源で作動させるものがあるし、フィルタ装置の場合には、上記のように開口部の直径が異なっていたりNDフィルタ板の濃度の異なっていたりする複数枚のフィルタ羽根を各々の電磁駆動源で作動させるものもある。そして、別々の電磁駆動源で作動させられる2種類の羽根部材を備えたカメラ用羽根駆動装置の場合には、それらの2種類の羽根部材を、同じ羽根室内に配置させる場合もあるが、別々の羽根室内に配置させるようにする場合もある。
【0006】
このようにしてユニット化される各種のカメラ用羽根駆動装置は、デジタルスチルカメラ,デジタルビデオカメラ,監視カメラ,情報通信端末装置用カメラなどの固体撮像素子を備えたデジタルカメラのほかに、従来からの銀塩フィルムカメラやビデオカメラにも採用することが可能になっているが、それらのうち、電磁駆動源が光軸方向に占める寸法を小さくすることによってユニット全体の薄型化を可能にした極めて好適な構成のシャッタ装置が、特許文献1及び2に記載されている。
【特許文献1】特開2003−186079号公報
【特許文献2】特開2004−32873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1に記載されている構成のシャッタ装置や特許文献2に記載されている構成のシャッタ装置の場合はもとより、上記したような構成をした各種のカメラ用羽根駆動装置は、地板の一方の面に、モータなどの電磁駆動源を取り付け、他方の面に、羽根などを取り付けるようにしているのが普通である。そのため、作業者が組立作業を行うに際し、地板を手に持って行う場合には、地板も含めた構成部材のハンドリングが極めて面倒となり、また、地板を載置台(組立治具ともいう)の上に置いて行う場合には、地板を裏返す必要があることから、少なくとも2種類の専用の載置台が必要になり、製造コストの面からは決して好ましい構成とはいえなかった。
【0008】
また、特許文献1に記載されている電磁駆動源の構成や、特許文献2に記載されている電磁駆動源の構成の場合は、例えば、特開2002−139765号公報や、特開2003−5251号公報などに記載されている電磁駆動源と比較して、機能上は同じ種類の電磁駆動源であるにもかかわらず、光軸方向の寸法を小さくすることができ、装置全体の薄型化にとって好適な構成をしている。しかしながら、このような特許文献1,2に記載されているタイプの電磁駆動源の場合であっても、地板の一方の面との間に回転子を配置するために板部材を必要としていて、しかも、運搬等の取扱い時における保護を目的として、その板部材を比較的厚い部材にせざるを得ない構成であることから、極めて薄型のカメラに内臓するためには、一層の工夫が必要とされている。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電磁駆動源の構成部材や羽根などを、従来のように、地板の両面に振り分けて取り付けることなく、一方の面に対して取り付けることによって、組立作業が容易に行え、構成部材数も少なくすることを可能にした、低コストのカメラ用羽根駆動装置を提供することである。また、特許文献1,2に記載されているようなタイプの電磁駆動源を採用する場合には、従来よりも装置全体を一層薄型化することを可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用の開口部を有している地板と、撮影光路用の開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記羽根室内において前記地板に回転可能に取り付けられている少なくとも1枚の羽根と、前記羽根を駆動する少なくとも一つの電磁駆動源と、を備えていて、前記電磁駆動源は、外周面に所定角度ごとの複数の磁極を有するように着磁されていると共にその回転によって前記羽根を駆動するための駆動ピンを有している回転子と、前記回転子の外周面と対向する複数の磁極部を有しているヨークと、前記ヨークに巻回されたコイルと、からなっており、少なくとも前記回転子と前記ヨークとが、前記地板と前記カバー板との間に配置されていて、該回転子は、少なくとも前記地板に回転可能に取り付けられているようにする。その場合、前記回転子が、その回転中心部に貫通孔を有していて、該貫通孔を、前記地板に設けられた軸に回転可能に嵌合させているようにすると、地板への回転子の組み付けが容易になる。
【0011】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用の開口部を有している仕切り板が、前記地板と前記カバー板の間に配置されていて、前記地板との間に前記電磁駆動源を配置し、前記カバー板との間に前記羽根室を構成しているようにすると、装置全体の平面形状を小さくすることが可能になる。また、前記ヨークが、前記コイルと共に、前記地板と前記カバー板とによって又は前記地板と前記仕切り板とによって、挟持されているようにすると、固定子の取付部材が不要となり、低コスト化が可能になる。
【0012】
更に、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記地板と前記カバー板との間又は前記仕切り板と前記カバー板との間に撮影光路用の開口部を有している中間板が配置されていて該中間板を境にして二つの羽根室が構成されており、前記地板と該中間板の間又は前記仕切り板と該中間板の間には前記電磁駆動源が二つ配置され、該二つの羽根室にはそれらの電磁駆動源によって別々に駆動される羽根が少なくとも1枚ずつ配置されているように構成してもよく、そのようにした場合には、羽根の作動が極めて安定したものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、モータ等の電磁駆動源によって駆動されるシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置を、各々単独のユニットとして、又は複数の装置を一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置において、地板の一方の面に対して、全ての構成部材を取り付けるようにしたものであるから、組立作業が容易に行え、製造コストが低減するという利点を有している。また、全ての構成部材を、地板の一方の面に対して順に組み付けていく構成であることから、前に組み付けた部材を後から組み付けた部材が地板側に押し付けるようにすることにより、従来の構成に比較して、全体の固定部材(手段)の数を少なくすることが可能となり、その点でもコスト面で有利になる。更に、電磁駆動源として、特許文献1や特許文献2に記載されているようなタイプのものを採用する場合は、光軸方向の寸法を一段と小さくすることができ、装置全体を一層薄型化することも可能になるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。本発明は、小型のカメラであれば、各種のデジタルカメラにも、銀塩フィルムカメラにも採用することが可能なものであり、また、上記のように、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置を、各々単独のユニットとして構成しても、それらの複数を一つのユニットとして構成してもよいものであるが、実施例は、情報通信端末装置のカメラにも採用することを可能にした、極めて小型のデジタルカメラ用シャッタ装置として構成したものである。そして、図1は、シャッタ羽根の全開状態を示した実施例の平面図であり、図2は、実施例の分解斜視図である。また、図3は、実施例の組立過程を説明するために、図1の略左方から見て展開して示した断面図であって、図3(a)は組立完了状態を示したものであり、図3(b)は各部材の組み付け順を説明するためのものである。更に、図4は、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した実施例の平面図である。
【実施例】
【0015】
先ず、本実施例の構成を説明する。図1は、本実施例のシャッタ装置を被写体側から見た平面図である。そのため、カメラに組み付けられた状態においては、図1の背面側には固体撮像素子が配置されることになる。地板1は、合成樹脂製であって、後述する全ての構成部材を取り付けるため、比較的厚い部材として製作されており、略中央には円形をした撮影光路用の開口部1aを有していて、周辺の一部には切欠部1bを有している。そして、開口部1aの被写体側は、段階的に直径が大きくなるような凹部に形成されており、その凹部の中に撮影レンズの少なくとも一部を配置することによって、カメラの薄型化が図れるようになっている。また、地板1の固体撮像素子側の面には、地板側の太い軸部と先端側の細い軸部とからなる2段軸1c(図3参照)と、軸1dとが設けられており、そのほかにも、軸状をした四つのストッパ1e,1f,1g,1hと、三つの取付軸1i,1j,1kと、二つのねじ穴1m,1nとが設けられている。
【0016】
地板1の固体撮像素子側の面には、先ず、電磁駆動源が組み付けられている。本実施例の電磁駆動源は、特許文献1,2に記載されている電磁駆動源と同様に、通常、ムービングマグネット型モータなどと言われている電流制御式のアクチュエータであって、永久磁石を有する回転子は、固定子のコイルに対する通電方向に対応した方向へ、所定の回転角度範囲内でだけ回転することの可能なアクチュエータである。そして、本実施例の電磁駆動源の構成は、特許文献2に記載されている電磁駆動源よりも特許文献1に記載されている電磁駆動源に近い構成をしているが、本実施例の電磁駆動源の場合には、特許文献1,2に記載されている電磁駆動源のように、地板1に取り付けるための専用の固定手段(ねじなど)を必要としないのが特徴となっている。
【0017】
本実施例の電磁駆動源(以下、アクチュエータという)は、固定子が、ヨーク2と、コイル3と、ボビン4とからなっている。それらのうち、ヨーク2は、略U字形をしていて、二つの端部を磁極部2a,2bとしている。また、コイル3を巻回しているボビン4には、端子ピン4a,4bが形成されていて、明示されていないが、それらにコイル3の両端が巻き付けられている。他方、回転子5は、円形の外周面を有している筒状の永久磁石5aと、その永久磁石5aに一体化されて径方向へ張り出された合成樹脂製の張出部5bと、その張出部5bの先端に設けられた駆動ピン5cとからなっている。また、それらのうち、永久磁石5aは、その外周面が180度ごとに2極に着磁されているが、90度ごとに4極に着磁されたものにする場合もある。尚、この種のアクチュエータの回転子には、このような張出部5bや駆動ピン5cを含めて永久磁石で製作することも知られているし、駆動ピン5cが、永久磁石5aの外周面より内側に設けられたものも知られているが、本発明は、それらの構成をした回転子にも適用される。
【0018】
このようなアクチュエータの構成部材を地板1に組み付ける場合は、地板1の固体撮像素子側の面を上向きにしておき(図3(b)における天地を逆にしておき)、順に落とし込むようにする。即ち、回転子5は、駆動ピン5cを上側にして、地板1の2段軸1cの太い軸部に、永久磁石5aの貫通孔を回転可能に嵌合させる。また、固定子は、ヨーク2の磁極部2aを、ボビン4の中空部に貫通させておき、端子ピン4a,4bを地板1側にして切欠部1bに向けて挿入する。それによって、ヨーク2は、地板1に形成されている段部1p,1qに載置されて、磁極部2a,2bが永久磁石5aの外周面に対向させられる。そして、ヨーク2は、段部1p,1qに載置された状態(図3(a)の状態)では、段部1p,1qの平面形状によって軸1cの軸方向と直交する方向への移動を阻止されるようになっている。また、図3(a)において、ボビン4は、U字形状をしたヨーク2の根元まで嵌め込まれているので左側へ移動することはなく、右側への移動は、切欠部1bの縁で阻止されている。従って、その組み付け状態においては、ボビン4の端子ピン4a,4bだけが、地板1の被写体側の面から突き出ていて、そのほかは全て略地板1の厚さの範囲内に収まっていることになる。
【0019】
次に、本実施例の場合には、地板1に、薄い金属製の仕切り板6を組み付けている。この仕切り板6は、略中央に円形をした撮影光路用の開口部6aを有しているが、その開口部6aの直径は、地板1の開口部1aよりも小さくて、本実施例におけるシャッタ装置ユニットとしての露光開口を規制するようになっている。そして、この仕切り板6を組み付けるに際しては、孔6bを上記の2段軸1cの細い軸部に嵌合させ、孔6cを上記の軸1dに嵌合させ、孔6d,6e,6fを上記のストッパ1e,1g,1hに嵌合させ、円弧状の長孔6kに上記の駆動ピン5cを挿入させる。また、この仕切り板6には、上記のストッパ1fを逃げるための切欠部6gと、上記の取付軸1i,1j,1kを逃げるための切欠部6h,6i,6jと、後述のねじを挿入させるための孔6m,6nも形成されている。
【0020】
仕切り板6の次には、シャッタ羽根7,8を組み付けている。これらのシャッタ羽根7,8は、孔7a,8aと長孔7b,8bとを有していて、その組み付けに際しては、先ず、地板1側に配置されているシャッタ羽根7の孔7aを上記の軸1dに回転可能に嵌合させ、長孔7bに上記の駆動ピン5cを挿入させ、次に、シャッタ羽根8の孔8aを上記の2段軸1cの細い軸部に嵌合させ、長孔8bに上記の駆動ピン5cを挿入させている。
【0021】
最後に、仕切り板6との間に羽根室を構成しているカバー板9が組み付けられている。このカバー板9は、合成樹脂製であって、略中央に円形をした撮影光路用の開口部9aを有しているが、その開口部9aの直径は、地板1の開口部1aよりも小さいが、仕切り板6の開口部6aよりは大きい。また、仕切り板6側の面には、上記のシャッタ羽根7,8を作動可能に配置するための窪み部9bが形成されている。そして、このカバー板9を組み付けるに際しては、孔9cを上記の2段軸1cの細い軸部に嵌合させ、孔9dを上記の軸1dに嵌合させ、孔9e,9f,9gを上記のストッパ1e,1g,1hに嵌合させ、円弧状の長孔9mに上記の駆動ピン5cを挿入させる。また、このカバー板9には、上記のストッパ1fを逃げるための切欠部9hと、上記の取付軸1i,1j,1kを逃げるための切欠部9i,9j,9kと、後述のねじを挿入させるための孔9n,9pも形成されている。
【0022】
そして、このカバー板9は、固定手段によって5箇所で地板1に取り付けられている。即ち、固体撮像素子側から、図示していない二つのねじが、カバー板9の孔9n,9p、仕切り板6の孔6m,6nに順に挿入され、地板1のねじ穴1m,1nにねじ込まれている。また、地板1に設けられている三つの取付軸1i,1j,1kは、カバー板9の固体撮像素子側で、それらの先端を熱溶融させて鍔状にし、各々切欠部9i,9j.9kの縁に引っ掛かるようにしている。そのため、図3(a)からも分かるように、そのような取付状態においては、仕切り板6がカバー板9によって地板1に押し付けられていて、アクチュエータの構成部材が、適切な配置位置から図3(a)の下方へ移動しないようにしている。従って、本実施例の場合には、アクチュエータを地板1に取り付けるに際して、専用の固定手段を用いていないことになる。尚、本実施例の場合には、カバー板9を5箇所で地板1に取り付けているが、複数箇所で取り付けていれば、5箇所である必要はないし、それらの取付方法も、ねじや熱溶融のいずれか一方だけで行ってもよいし、他の手段を用いても構わない。
【0023】
このように、本実施例のシャッタ装置の場合には、仕切り板6を備えているが、本発明は、このような仕切り板6を備えることを必須とはしない。即ち、本実施例で仕切り板6を備えている主な理由は、カメラの薄型化を図る目的で、撮影レンズを、シャッタ羽根7,8の作動面に出来るだけ近接させるためには、地板1に形成されている開口部1aの直径を必要以上に大きくせざるを得ないことから、それに代わって、仕切り板6の開口部6aを露光開口規制用の開口部にするためである。更に、本実施例の場合には、シャッタ装置の小型化を図る目的で、地板1の平面面積を小さくするために、図1から分かるように、アクチュエータの構成部材がシャッタ羽根7,8の作動領域と重なる配置となっていることから、シャッタ羽根7,8が作動中にそれらの構成部材と干渉しないようにするためである。
【0024】
従って、それらのことを考慮する必要のない場合には、仕切り板6を備えなくてもよいことになる。即ち、撮影レンズを上記のように配置しなくてもよい場合は、地板1の開口部1aを露光開口規制用の開口部にすればよいし、場合によっては、カバー板9の開口部9aを露光開口規制用の開口部にしてもよい。このことは、地板1の平面面積を小さくするためにだけ仕切り板6を備えるようにする場合にも同じことがいえる。また、地板1の平面面積を小さくする必要のない場合は、アクチュエータの構成部材とシャッタ羽根7,8の作動領域とを重ねて配置する必要がないから、仕切り板6は不要となる。そして、仕切り板6を備えない場合には、それに代わって、カバー板9が、アクチュエータの構成部材の適正配置状態を維持するようにすればよい。
【0025】
そして、そのようにして、仕切り板6を備えない場合には、特許文献1,2に記載されているシャッタ装置の構成に比較して、構成部材が少なくなることから、装置全体を薄くすることが可能になる。尚、本実施例は、2枚のシャッタ羽根7,8を備えているが、本発明は、1枚であっても構わない。そのため、本実施例において、シャッタ羽根8だけを備えたものにし、そのシャッタ羽根8の大きさと形状を若干変えれば、シャッタ羽根8の作動上からだけは問題がなくなるので、わざわざ地板1を大きくしなくても、仕切り板6を不要にすることが可能になることは、当業者自明である。
【0026】
更に、撮影レンズは上記のようにして配置したいが、地板1の平面面積を小さくする必要のない場合がある。そのような場合には、仕切り板6を備える必要はあっても、本実施例のように、アクチュエータの下面まで覆うようにする必要はなくなる。従って、そのようにアクチュエータの下面まで覆うようない場合には、上記と同様にして、仕切り板6に代わって、カバー板9が、アクチュエータの構成部材の適正配置状態を維持するようにすることになる。そして、仕切り板6をそのような配置構成にして備えた場合であっても、本実施例のような配置構成にして備えた場合でも、それらの場合の仕切り板6は、地板1の羽根室側に配置されているため、特許文献1,2に記載されている板部材とは異なり、装置の取り扱い時における保護を考慮する必要がなく、その分だけ薄くすることが可能である。従って、装置全体を薄型化することが可能である。
【0027】
次に、本実施例の作動を説明する。図1に示された状態は、カメラの電源はオンになっているが、アクチュエータのコイル3には通電されていない状態である。ところが、周知のように、このとき、回転子5には、その永久磁石5aの外周面とヨークの磁極部2a,2bとの対向位置関係によって、反時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、駆動ピン5cによって、シャッタ羽根7は時計方向へ回転する力が付与され、シャッタ羽根8は反時計方向へ回転する力が付与されているが、それらのシャッタ羽根7,8が、各々ストッパ1e,1gに接触して、この状態が維持されている。そのため、この状態においては、仕切り板6の開口部6aによって規制されている露光開口は全開となっていて、液晶表示装置によって被写体像を観察できるようになっている。
【0028】
このような初期状態においてレリーズボタン(スイッチ)を押すと、制御回路からの電気信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出される。それによって、撮影のための露光が開始され、新たな電荷の蓄積が行われていく。そして、露光時間制御回路によって制御された所定の時間が経過すると、その終了信号によって、コイル3に対し、正方向に電流が供給される。そのため、回転子5は、時計方向へ回転させられ、駆動ピン5cによってシャッタ羽根7を反時計方向へ、シャッタ羽根8を時計方向へ回転させる。そして、シャッタ羽根7,8は、露光開口を閉鎖すると、その直後に、ストッパ1h,1fに当接して停止させられる。図4は、その停止状態を示したものである。
【0029】
図4に示された状態になると、固体撮像素子に蓄積された撮像情報が記憶装置に転送され、それが終了すると、コイル3に対して、今度は逆方向の電流が供給される。そのため、回転子5は、反時計方向へ回転させられ、駆動ピン5cによって、シャッタ羽根7を時計方向へ、シャッタ羽根8を反時計方向へ回転させる。そして、シャッタ羽根7,8は、露光開口を全開にすると、その直後に、ストッパ1e,1gに当接して停止させられる。その後、コイル3に対する通電が断たれると、図1に示した初期状態になり、次の撮影に備えることになる。
【0030】
尚、本実施例は、2枚のシャッタ羽根7,8を備えているシャッタ装置として構成したものであるが、上記したように、シャッタ羽根を1枚とすることも可能である。また、そのようにした1枚の羽根に、開口部6aよりも直径の小さな開口部を形成すれば、本実施例を絞り装置とすることが可能になる。更に、その1枚の羽根に所定の大きさの開口部を形成し、その開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付ければ、本実施例をフィルタ装置とすることも可能になる。そして、それらの装置は、いずれも本発明の実施態様である。
【0031】
また、本発明は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの複数を一つのユニットとして構成することも可能である。例えば、特開2003−5251号公報には、一つの羽根室内に、シャッタ羽根と絞り羽根とを配置した構成と、シャッタ羽根とフィルタ羽根とを配置した構成が記載されているが、本発明は、そのような態様に構成しても構わないし、絞り羽根とフィルタ羽根を一つの羽根室に配置した態様に構成しても差し支えない。また、特開2002−139765号公報には、中間板を境にして二つの羽根室を構成し、一方の羽根室にシャッタ羽根を配置し、他方の羽根室に絞り羽根を配置した構成と、一方の羽根室にシャッタ羽根を配置し、他方の羽根室にフィルタ羽根を配置した構成が記載されているが、本発明は、そのような態様に構成しても構わないし、一方の羽根室に絞り羽根を配置し、他方の羽根室にフィルタ羽根を配置した態様に構成しても差し支えない。
【0032】
更に、特開2001−188275号公報には、中間板を境にして二つの羽根室を構成し、一方の羽根室にシャッタ羽根を配置し、他方の羽根室に絞り羽根とフィルタ羽根を配置した構成が記載されているが、本発明は、そのような態様に構成しても差し支えない。また、本実施例に記載のアクチュエータの構成は、特許文献1に記載の構成に似た構成をしているが、本発明は、そのような構成のアクチュエータに限定されない。例えば、特許文献2に記載のアクチュエータを採用することも可能である。但し、その場合には、地板1が本実施例のような形状をしていると、コイルを巻回することが困難になるので、地板1を、予め分割した二つの部材として製作しておき、少なくともその一方にコイルを巻回しておいてから両者を一体化するように構成すれば可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】シャッタ羽根の全開状態を示した実施例の平面図である。
【図2】実施例の分解斜視図である。
【図3】実施例の組立過程を説明するために、図1の略左方から見て展開して示した断面図であって、図3(a)は組立完了状態を示したものであり、図3(b)は各部材の組み付け順を説明するためのものである。
【図4】シャッタ羽根の閉鎖状態を示した実施例の平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 地板
1a,6a,9a 開口部
1b,6g〜6j,9h〜9k 切欠部
1c 2段軸
1d 軸
1e,1f,1g,1h ストッパ
1i,1j,1k 取付軸
1m,1n ねじ穴
1p,1q 段部
2 ヨーク
2a,2b 磁極部
3 コイル
4 ボビン
4a,4b 端子ピン
5 回転子
5a 永久磁石
5b 張出部
5c 駆動ピン
6 仕切り板
6b〜6f,6m,6n,7a,8a,9c〜9g,9n,9p 孔
6k,7b,8b,9m 長孔
7,8 シャッタ羽根
9 カバー板
9b 窪み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路用の開口部を有している地板と、撮影光路用の開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記羽根室内において前記地板に回転可能に取り付けられている少なくとも1枚の羽根と、前記羽根を駆動する少なくとも一つの電磁駆動源と、を備えていて、前記電磁駆動源は、外周面に所定角度ごとの複数の磁極を有するように着磁されていると共にその回転によって前記羽根を駆動するための駆動ピンを有している回転子と、前記回転子の外周面と対向する複数の磁極部を有しているヨークと、前記ヨークに巻回されたコイルと、からなっており、少なくとも前記回転子と前記ヨークとが、前記地板と前記カバー板との間に配置されていて、該回転子は、少なくとも前記地板に回転可能に取り付けられていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記回転子が、その回転中心部に貫通孔を有していて、該貫通孔を、前記地板に設けられた軸に回転可能に嵌合させていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
撮影光路用の開口部を有している仕切り板が、前記地板と前記カバー板の間に配置されていて、前記地板との間に前記電磁駆動源を配置し、前記カバー板との間に前記羽根室を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記ヨークが、前記コイルと共に、前記地板と前記カバー板とによって又は前記地板と前記仕切り板とによって、挟持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記地板と前記カバー板との間又は前記仕切り板と前記カバー板との間に撮影光路用の開口部を有している中間板が配置されていて該中間板を境にして二つの羽根室が構成されており、前記地板と該中間板の間又は前記地板と前記仕切り板との間には前記電磁駆動源が二つ配置され、該二つの羽根室にはそれらの電磁駆動源によって別々に駆動される羽根が少なくとも1枚ずつ配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−11293(P2006−11293A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191908(P2004−191908)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】