説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】細長い地板の一端側に寄せて撮影光路用の開口部を設けるのに適したカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】地板31は、中央部よりも右寄りに被写体光路用の開口部31aを有している。絞り羽根は、3枚の羽根33,34,35からなっており、そのうち、真中に配置された羽根33は、開口部31aより大きな開口部33aを有していて、地板31の軸31cで回転可能であり、また、羽根34,35は、絞り開口の開口規制縁34a,35aを有していて、地板31の軸31b,31dで回転可能となっている。そして、それらの3枚の羽根33,34,35に形成されている長孔に、モータの回転子32aと一体の駆動ピン32bが嵌合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置に適用可能なカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、コンパクトカメラに備えられているシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置は、撮影レンズの近傍に配置されていて、それらの装置の羽根は、撮影レンズの光軸に対して垂直な面で往復作動するように構成されている。また、それらの装置に備えられている羽根は、通常、2枚であることが多く、それらを、相反する方向へ同時に往復作動させるようにしている。そして、それらの往復作動は、回転の場合もあるし、直進の場合もある。
【0003】
ところで、一般に、コンパクトカメラは、カメラ本体(カメラボディー)が、全体として薄い直方体(面積の大きな二つの面と、それらより面積の小さな細長い四つの面とからなる6面体)をしており、撮影をするときには、面積の大きな二つの面の一方を被写体に向けて構えるようにデザインされているのが標準的である。そして、撮影レンズは、一方の大きな面の略中央位置に配置されている。そのため、このような標準的デザインのカメラに組み付けられる各種の羽根駆動装置は、例えば下記の特許文献1に記載されているシャッタ装置のように、地板の形状は、羽根の形状との関係で、光路用開口部を中心にした円形又はそれに準じた形状となっている。
【0004】
ところが、そのような形状の地板を備えている羽根駆動装置は、かつての110判(フィルム)カメラがそうであったように、略6面体の偏平形状をしているカメラ本体の細長い面を被写体に向けて撮影するようにデザインされたカメラには、組み付けることが不可能である。また、最近では、デジタルカメラが普及して、カメラ本体の薄型化が極端に進んでいるが、それらの中には、下記の特許文献2に記載されているようなデザインのカメラもある。このカメラは、撮影をするとき、面積の大きな二つの面の一方を被写体に向けて構えるようにデザインされているにもかかわらず、屈折光学系を用いて、被写体光をカメラ本体内に導入しているため、撮影レンズは、カメラ本体内で、上記したカメラ本体の細長い面に向いている。従って、特許文献1に記載されているような形状の地板を備えた羽根駆動装置は、このようなデザインのカメラにも組み付けることが不可能である。
【0005】
そのため、羽根の形状,構成を変えて地板を細長い形状にしたことによって、上記の標準的なデザインをしたカメラのみならず、110判(フィルム)カメラのようなデザインのカメラにも、特許文献2に記載のようなデザインのカメラにも組み付けることを可能にしている絞り装置が、下記の特許文献3の図2に記載されている。そして、この絞り装置は、絞り羽根に絞り開口を規制するための切欠きを形成しているが、その切欠きを形成しないことによって、シャッタ装置にもバリア装置にも応用可能であるし、その切り欠きを覆うようにしてNDフィルタ板を取り付ければ、フィルタ装置にも応用可能なものである。本発明は、このように、細長い形状の地板を備えているカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【特許文献1】特開2002−196391号公報
【特許文献2】特開2002−290806号公報
【特許文献3】実用新案登録第2520247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような細長い地板を備えた羽根駆動装置の場合にも、カメラの小型化に寄与し得るようにするためや、カメラの設計の自由度を大きくするために、地板の長さを極力短くすることが要求されている。そのような観点から、特許文献3の図2に記載されている絞り装置を見てみると、2枚の絞り羽根は、地板の長手方向に沿って、相反する方向へ作動させられるようになっているため、地板には、光路用開口部(特許文献3では「受光開口」)の両側に、少なくともその光路用開口部よりも大きなスペースを設けざるを得ない構成になっている。
【0007】
それらのスペースのうち、一方のスペースは、駆動手段を取り付けたり、駆動手段と絞り羽根との連結機構を配置したりする必要があるため、地板の長手方向の寸法を短くするのは容易でない。それに対して、もう一方のスペースは、主に、絞り羽根の作動領域を確保するためのものであるため、絞り羽根の形状や構成を工夫すれば、そのスペースにおける地板の長手方向の寸法を小さくできる可能性がある。そして、それが可能となった場合には、カメラの小型化に有利となるだけでなく、光路用開口部をカメラ本体の端や隅の近傍に配置させるカメラにも採用することが可能になることから、デザインが多彩であるデジタルカメラに用いて一段と有利なものになる。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、細長い地板を備えたカメラ用羽根駆動装置において、従来のように、2枚の羽根を、光路用開口部を中心にして相反する方向へ作動させるようにすることなく、独特の構成を採用することによって、光路用開口部を間にした二つのスペースの一方を、地板の長手方向に短くできるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、光路用開口部を有していてその長手方向の端部の一方と該光路用開口部との間における羽根室側の面を羽根取付領域としている地板と、前記地板に取り付けられていて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記地板に取り付けられている駆動手段と、前記光路用開口部より大きい開口部を有していて前記羽根取付領域に往復作動可能に取り付けられており前記駆動手段によって前記光路用開口部に進退させられる1枚の羽根からなる第1羽根と、前記地板と前記第1羽根との間に配置されていて前記羽根取付領域に回転可能に取り付けられており前記駆動手段によって前記光路用開口部に進退させられる少なくとも1枚の羽根からなる第2羽根と、前記カバー板と前記第1羽根との間に配置されていて前記羽根取付領域に回転可能に取り付けられており前記駆動手段によって前記第2羽根とは相反する方向へ回転されて前記光路用開口部に進退させられる第3羽根と、を備えているようにする。
【0010】
その場合、前記第1羽根が、前記羽根取付領域にスライド可能に取り付けられているようにしてもよいし、回転可能に取り付けられているようにしてもよい。また、前記第1羽根,前記第2羽根,前記第3羽根が、いずれも長孔を有しており、前記駆動手段が往復回転可能なモータであって、該モータは、それらの長孔の全てに挿通させた駆動ピンを有していて、該駆動ピンを往復作動させることによって、それらの全ての羽根を同時に作動させるようにするのが好ましい。
【0011】
また、前記第2羽根を構成している1枚の羽根と、前記第3羽根を構成している1枚の羽根には、開口規制縁が形成されていて、前記駆動手段によって前記光路用開口部に進入させられたとき、それらの両方の開口規制縁によって、前記光路用開口部よりも小さな開口を形成するようにすると、絞り装置を得ることが可能になり、さらに、前記開口規制縁を形成している2枚の羽根の一方が、前記地板又は前記カバー板に隣接して配置された羽根であり、該羽根には、隣接する前記地板又は前記カバー板側の面に、前記小さな開口形成時に該開口を覆い得るようにして、NDフィルタ板が取り付けられており、該羽根に隣接する前記地板又は前記カバー板には、該羽根の作動時に、該NDフィルタ板と接触しないように逃げ部が形成されているようにすると、フィルタ装置を得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、細長い地板を備えたカメラ用羽根駆動装置において、全ての羽根を、光路用開口部を間にした二つのスペースの一方に取り付けて、他方のスペースにおける地板の長手方向の長さを短くすることができるようにしたものであるから、小型化が可能になり、カメラのデザイン設計の自由度が大きくなり、光路用開口部がカメラ本体の端の方に配置されているようなカメラにも組み付けることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図示した五つの実施例によって説明する。尚、図1〜図6は、実施例1のシャッタ装置を説明するためのものであり、図7及び図8は、実施例2のシャッタ装置を説明するためのものである。また、図9及び図10は、実施例3の絞り装置を説明するためのものであり、図11及び図12は、実施例4の絞り装置を説明するためのものである。更に、図13及び図14は、実施例5のフィルタ装置を説明するためのものである。
【実施例1】
【0014】
図1〜図6を用いて、実施例1のシャッタ装置を説明するが、図1は、そのシャッタ装置の分解斜視図である。また、図2〜図6は、夫々、図1に示されているシャッタ装置からカバー板を取り除いてシャッタ羽根の作動状態を示した平面図であって、図2はシャッタ羽根の全開状態を、図3はシャッタ羽根の閉じ作動の開始直後の状態を、図4はシャッタ羽根の閉じ行程の略中間の状態を、図5はシャッタ羽根の閉じ作動の終了直前の状態を、図6はシャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【0015】
そこで、先ず、主に、図1を用いて、本実施例の構成を説明する。地板1は、合成樹脂製であり、細長くて比較的厚い平板状をしている。また、カバー板2は、薄い金属製の板材で製作されていて、地板1と略同じ外形をしている。そして、このカバー板2は、図示していない手段によって、地板1に所定の間隔を設けて取り付けられており、地板1との間に羽根室を構成している。地板1には、中央部よりも左寄りに被写体光路用の開口部1aが形成されている。そのため、地板1の長手方向でみてみた場合、開口部1aと左端との間の領域が、開口部1aと右端との間の領域よりも小さい。そして、本実施例は、開口部1aと右端との間の羽根室側の面だけが羽根取付領域となっている。
【0016】
また、カバー板2にも、開口部1aと対向するところに被写体光路用の開口部2aが形成されている。この開口部2aは、開口部1aと類似の形状をしているが、開口部1aよりは若干大きい。そのため、本実施例の場合は、開口部1aが撮影光路を規制するようになっている。しかしながら、開口部2aの方を小さくし、撮影光路を規制するようにしても構わない。また、本実施例のように、開口部1aによって撮影光路を規制するようにした場合は、カバー板2の役目は、単に、後述の各羽根が地板1との間で安定して作動できるようにするためだけのものになるから、そのような機能が損なわれることがなく、且つ被写体光路に影響を与えないのであれば、開口部2aはどのような形状にしてもよいし、場合によっては、孔形状にしなくてもよいことになる。
【0017】
また、地板1には、その羽根取付領域に、六つの軸1b,1c,1d,1e,1f,1gが立設されているほか、柱状の四つのストッパ1h,1i,1j,1kが立設されている。そして、それらの軸1b,1c,1d,1e,1f,1gの先端は、それぞれカバー板2に形成された孔2b,2c,2d,2e,2f,2gに挿入され、ストッパ1h,1i,1j,1kの先端は、それぞれカバー板2に形成された孔2h,2i,2j,2k,に挿入されている。更に、地板1の羽根取付領域には、地板1を貫通している円弧状の長孔1mが形成されている。この長孔1mは、図1が斜視図であるため分かりにくいが、実際には円弧状をしている。また、カバー板2にも、長孔1mと対向するところに、長孔1mと同じ形状の長孔2mが形成されている。尚、図3〜図6においては、長孔1mの図示が省略されている。
【0018】
地板1の羽根取付領域の反対側の面、即ち羽根室外の面には、シャッタ羽根の駆動手段として、モータ3が取り付けられている。本実施例の場合、このモータ3は、特開2004−214847号公報にも記載されているような周知の構成をした電流制御式のムービングマグネット型モータである。そして、このモータ3は、永久磁石を有していて所定の角度範囲内で往復回転する回転子を備えており、その回転子と一体的に回転する駆動ピン3aは、地板1の長孔1mを貫通し、その先端を、カバー板2の長孔2mに挿入している。
【0019】
地板1とカバー板2の間に構成された羽根室内には、モータ3の駆動ピン3aによって駆動されるシャッタ羽根が配置されている。本実施例のシャッタ羽根は、5枚の羽根からなっているが、作動態様によって、それらの5枚の羽根を三つに分類することができる。先ず第1の分類に属するのは、5枚の羽根の真中に配置されている羽根4であって、この羽根4は、地板1の開口部1aよりも大きな開口部4aと、三つの長孔4b,4c,4dを有している。そして、長孔4bを軸1cに嵌合させ、長孔4cを二つの軸1d,1eに嵌合させ、長孔4dを駆動ピン3aに嵌合させている。そのため、この羽根4は、駆動ピン3aが往復作動すると、長孔4b,4cの長さ方向に直線的にスライドするようになっている。
【0020】
第2の分類に属するのは、地板1と羽根4の間に配置されている2枚の羽根5,6である。そのうち、地板1側に配置されている羽根5は、円形の孔5aと長孔5bを有していて、孔5aを軸1cに嵌合させている。また、長孔5bは、羽根6に隠れていて形状が分かりにくいが、羽根4の長孔4dと類似の形状をしていて、駆動ピン3aに嵌合している。そのため、軸1cには、羽根4の長孔4bと、羽根5の孔5aの両方が嵌合していることになる。また、羽根4側に配置されているもう一方の羽根6は、円形の孔6aと長孔6bを有していて、孔6aを軸1bに嵌合させ、長孔6bを駆動ピン3aに嵌合させている。そして、これらの羽根5,6は、駆動ピン3aが往復作動すると、軸1b,1cを中心にして、同じ方向へ同時に往復回転させられるが、駆動ピン3aの作動軌跡からは軸1cの方が軸1bよりも近くに立設されているので、羽根5の方が羽根6よりも大きく(速く)回転するようになっている。
【0021】
第3の分類に属するのは、カバー板2と羽根4の間に配置されている2枚の羽根7,8である。そのうち、カバー板2側に配置されている羽根7は、円形の孔7aと長孔7bを有していて、孔7aを軸1fに嵌合させ、長孔7bを駆動ピン3aに嵌合させている。また、羽根4側に配置されているもう一方の羽根8は、円形の孔8aと長孔8bを有していて、孔8aを軸1gに嵌合させ、長孔8bを駆動ピン3aに嵌合させている。そして、それらの羽根7,8は、駆動ピン3aが往復作動すると、軸1f,1gを中心にして、同じ方向へ同時に往復回転させられるが、上記した駆動ピン3aに対する軸1c,1bの関係と同じ理由によって、羽根7の方が羽根8よりも大きく(速く)回転するようになっている。更に、このとき、羽根7,8は、上記の羽根5,6と同時に作動させられることになるが、羽根5,6とはその回転方向が逆になる。
【0022】
次に、図2〜図6を用いて本実施例の作動を説明するが、これらの図面は、図1で説明したカバー板2を取り外して示したものである。また、これらの図面においては、図1で説明した、駆動ピン3aに嵌合している各羽根4〜8の長孔4d,5b,6b,7b,8bに対し、符号付けを省略している。尚、本実施例のシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラにも、デジタルカメラにも採用することの可能なものである。そして、周知のように、この種のシャッタ装置の場合には、銀塩フィルムカメラに採用された場合と、デジタルカメラに採用された場合とで、シャッタ羽根を作動させる順序が異なるのが普通である。しかしながら、ここでは、それらの両方を説明する必要もないと考えるので、デジタルカメラに採用された場合のごく一般的な作動方法を説明することにする。
【0023】
図2は、デジタルカメラに採用されたときの初期状態(撮影待機状態)を示したものであり、カメラの電源スイッチはオン状態になっている。そのため、撮影レンズに入射した被写体光は、開口部1aを通過して固体撮像素子に当たっており、撮影者は、被写体像をモニターで観察することが可能になっている。また、このとき、モータ3の固定子コイルには通電されていないが、周知のように(上記の特開2004−214847号公報にも記載されている)、回転子の永久磁石の磁極と固定子の磁性体部材との配置関係によって、回転子には一方方向へ回転する力が付与されている。そのため、図2においては、回転子の時計方向への回転に伴って駆動ピン3aも回転し、右方向へ移動する力が与えられているが、羽根5,6がストッパ1hに接触し、羽根7がストッパ1jに接触しているため、この状態が維持されている。
【0024】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積開始によって撮影が開始する。その後、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、モータ3の固定子コイルに通電され、回転子が反時計方向へ回転させられる。そのため、駆動ピン3aも円弧を描きながら左方向へ移動し、5枚の羽根4〜8の長孔(符号を省略してある)の縁を押していく。それによって、真中の羽根4は、軸1c,1d,1eに案内されて、左下方向へ直線的にスライドしていく。また、羽根5,6は、各々軸1c,1bで反時計方向へ回転し、羽根7,8は、各々軸1g,1fで時計方向へ回転していく。図3は、そのようにして、羽根4が直線的に作動を開始し、羽根5,6と羽根7,8とが相反する方向へ回転を開始して、開口部1aを閉じ始めたときの状態を示したものである。
【0025】
図4は、その後、5枚の羽根4〜8が、閉じ作動行程の略中間位置に達した状態を示したものである。ところで、本実施例の場合には、各羽根4〜8は、全体として細長い形状をしており、全てそれらの一端を、開口部1aの右方向の領域で、地板1に取り付けられている。カメラ用の羽根駆動装置においては、このような細長い羽根は、作動中に複雑な動きをし、撓まされてしまう場合のあることが知られている。そして、そのように撓まされた場合には、開口部4aを形成した羽根4が存在していないと、この図4の状態の直後の作動行程において、羽根5,6の先端部と羽根7,8の先端部とが衝突して噛み合ってしまうことになる。しかし、本実施例の場合には、それらの間に、開口部4aを有した形状の羽根4を配置しているので、そのような先端部同士は接触すらしないようになっている。そのため、その後、各羽根は、そのような事態を発生することなく、図5に示された状態になる。
【0026】
その後、開口部1aが完全に閉じられると、その直後に羽根4がストッパ1kに当接する。そのとき、羽根4が若干撓むことがあったり、各羽根の嵌合部における公差の影響があったりして、他の羽根5〜8が若干回転をし続けることがある。ところが、そのような回転は、羽根5がストッパ1jに当接し、羽根7,8がストッパ1hに当接することによって阻止され、最終的には、図6に示された状態で静止する。そして、この図6から分かるように、このとき、羽根4は、他の4枚の羽根5〜8では覆いきれない開口部1aの左上方部を覆っている。羽根4は、その役目が上記のような作動中の噛み合いを防止するためだけであるならば、周知の中間板のようにして、地板1とカバー板2との間に固定配置するだけでよいことになるが、本実施例の場合には、それだけではないため、このように羽根として構成されている。
【0027】
このようにして開口部1aが閉鎖すると、その状態において固体撮像素子に電荷として蓄積された撮像情報が、記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、モータ3の固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向の通電が行われる。そのため、回転子も逆方向へ回転して、図6において、駆動ピン3aを円弧状に右方向へ作動させる。そのため、5枚の羽根4〜8は、上記とは逆の作動をし、開口部1aを開放していく。そして、開口部1aが全開になると、その直後に、羽根5,6がストッパ1hに当接し、羽根7がストッパ1jに当接する。そして、このとき、当接した羽根5,6,7が撓んだとしても、羽根4がストッパ1iに当接するので、最終的には、図2に示された状態で静止する。そして、モータ3の固定子コイルに対する通電を断つと、初期状態に復帰したことになる。
【0028】
尚、本実施例は、シャッタ装置であるが、上記の羽根4〜8を、撮影レンズの前面(被写体側)で開閉作動させるように配置した場合には、レンズバリア装置としてカメラに採用することが可能になる。このことは、以下に説明する実施例2の場合も同じである。
【実施例2】
【0029】
次に、図7及び図8を用いて実施例2を説明する。本実施例もシャッタ装置であって、図7は、上記の図2と同様に、カバー板を取り除いてシャッタ羽根の全開状態を示したものであり、図8は、同様にして、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。そこで、先ず、構成から説明する。本実施例の地板11も合成樹脂製であり、図示していないカバー板との間に羽根室を構成しているが、そのカバー板の図示は省略されている。地板11には、中央部よりも右寄りに被写体光路用の開口部11aが形成されており、地板11の左端と開口部11aとの間の羽根室側の面が羽根取付領域となっている。また、図示していないカバー板にも、開口部11aと対向する位置に被写体光路用の開口部が形成されているが、本実施例の場合にも、開口部11aが撮影光路を規制するようになっている。
【0030】
地板11には、羽根室側の面に、三つの軸11b,11c,11dと、三つのストッパ11e,11f,11gが立設されている。そして、それらのうち、三つの軸11b,11c,11dとストッパ11fは、羽根取付領域に設けられている。また、地板11の羽根取付領域には、円弧状の長孔11hが形成されている。地板11の羽根取付領域の背面、即ち羽根室外の面には、モータ12が取り付けられている。本実施例のモータ12は、実施例1のモータ3と全く同じ構成のモータであって、永久磁石を有していて所定の角度範囲内でだけ往復回転する回転子12aを備えており、その回転子12aと一体的に回転する駆動ピン12bは、上記の長孔11hを貫通し、羽根室内に延伸されている。
【0031】
羽根室内に配置されている本実施例のシャッタ羽根は、3枚の羽根13,14,15からなっている。そのうち、真中に配置されている羽根13は、地板11の開口部11aよりも大きな開口部13aと、円形の孔と、長孔とを有していて、円形の孔を軸11cに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン12bに嵌合させている。そのため、この羽根13の場合は、実施例1の羽根4とは異なり、駆動ピン12bが往復作動すると、軸11cで回転するようになっている。また、その羽根13と地板11との間に配置されている羽根14は、円形の孔と、長孔とを有していて、円形の孔を軸11bに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン12bに嵌合させている。更に、羽根13とカバー板との間に配置されている羽根15は、円形の孔と、長孔とを有していて、円形の孔を軸11dに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン12bに嵌合させている。そして、これらの羽根13,14,15は、駆動ピン12bの作動軌跡から各回転軸11c,11b,11dまでの距離が短い順に大きく(速く)回転するようになっている。
【0032】
次に、本実施例の作動を簡単に説明するが、本実施例の場合にもデジタルカメラに採用された場合で説明する。図7は、本実施例の初期状態(撮影待機状態)を示したものであり、このとき、カメラの電源スイッチはオン状態になっている。そのため、この初期状態においては、撮影者は、被写体像をモニターで観察することが可能になっている。また、このとき、モータ12の固定子コイルには通電されていないが、回転子12aの永久磁石の磁極と固定子の磁性体部材との配置関係によって、回転子12aには反時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、駆動ピン12bによって、羽根13,14には反時計方向へ回転する力が与えられ、羽根15には時計方向へ回転する力が与えられているが、羽根13,14がストッパ11f,11eに接触しているため、この状態が維持されている。
【0033】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積開始によって撮影が開始する。その後、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、モータ3の固定子コイルに通電され、回転子12aが時計方向へ回転させられる。そのため、駆動ピン12bによって、開口部13aを有している羽根13と羽根14とは時計方向へ、羽根15は反時計方向へ回転させられて、開口部11aを閉じていく。このとき、羽根13が存在していないと、羽根14と羽根15は、相反する方向へ回転するため、作動中に撓まされて、それらの先端が噛み合ってしまうおそれがあるが、本実施例の場合には、それらの羽根14,15の間に羽根13が存在しているため、そのような事態は生じない。
【0034】
そして、開口部11aが完全に閉じられると、その直後に羽根13がストッパ11gに当接し、回転子12aと3枚の羽根13,14,15の回転が停止する。図8は、その停止状態を示したものである。図8から分かるように、このとき、羽根13は、他の2枚の羽根14,15だけでは覆うことの不可能な開口部11aの上方領域を覆っている。従って、開口部13aを有している羽根13は、このような役目と、上記のような閉じ作動中に羽根14,15が噛み合わないようにする役目とを、兼ね備えているものである。
【0035】
このようにして開口部11aが閉鎖すると、その状態において固体撮像素子に電荷として蓄積された撮像情報が、記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、モータ12の固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向の通電が行われる。それによって、回転子12aは反時計方向へ回転し、羽根13,14を反時計方向へ回転させ、羽根15を時計方向へ回転させることによって、開口部11aを開放させていく。その後、開口部11aが全開になると、その直後に、羽根13がストッパ11fに当接し、羽根14がストッパ11eに当接することによって、回転子12と3枚の羽根13,14,15の回転が停止する。そして、モータ12の固定子コイルに対する通電を断つと、図7に示された初期状態に復帰したことになる。
【0036】
尚、本実施例の場合には、羽根13の両側の羽根14,15が、各々1枚構成となっているが、上記の実施例1のように、各々2枚ずつで構成しても構わないし、いずれか一方だけを2枚で構成しても構わない。従って、このことから、実施例1の場合には、2枚構成の羽根5,6と羽根7,8のいずれか一方を1枚構成にしても構わないし、両方とも1枚構成にしても構わない。
【実施例3】
【0037】
次に、図9及び図10を用いて実施例3を説明する。本実施例は絞り装置であって、図9は、カバー板を取り除いて、羽根室内における絞り羽根の撮影待機状態を示したものであり、図10は、同様にして、絞り羽根の絞込み状態を示したものである。そして、本実施例の絞り羽根は、実施例1におけるシャッタ羽根と同様に、5枚の羽根で構成されていて、その作動も、実施例1のシャッタ羽根の場合と似ている。そこで、先ず、本実施例の構成を説明する。地板21は、合成樹脂製であり、その中央よりも右寄りに被写体光路用の開口部21aが形成されている。そして、左端と開口部21aとの間に存在する羽根室側の領域を羽根取付領域としている。また、図示していないカバー板が、地板21に取り付けられていて、地板21との間に羽根室を構成している。そして、そのカバー板には、開口部21aと対向するところに、開口部21aよりも若干大きな被写体光路用の開口部が形成されている。従って、本実施例の場合にも、地板21に形成された開口部21aが撮影光路を規制するようになっている。
【0038】
地板21には、その羽根取付領域に、六つの軸21b,21c,21d,21e,21f,21gが立設されているほか、柱状の二つのストッパ21h,21iが立設されている。そして、それらの軸とストッパの先端は、それぞれ図示していないカバー板に形成された各々の孔に挿入されている。また、地板21の羽根取付領域には、実施例1における地板1の長孔1mと同様に、円弧状の長孔が形成されているが、図9,図10においては、その図示が省略されている。また、図示していないカバー板にも、その長孔と対向するところに、同じ形状の長孔が形成されている。更に、地板21は、羽根取付領域の反対側の面に、実施例1,2のモータ3,12と同じ構成のモータを、絞り羽根の駆動手段として取り付けているが、図9及び図10では、その回転子22と駆動ピン23を示してある。そして、その駆動ピン23は、地板21の上記した図示していない長孔を貫通し、その先端を、図示していないカバー板の長孔に挿入している。
【0039】
羽根室内には、モータの駆動ピン23によって駆動される絞り羽根が配置されている。本実施例の絞り羽根は、上記のように5枚の羽根からなっている。それらの羽根の真中に配置されている羽根24は、地板21の開口部21aよりも大きな開口部24aと、三つの長孔を有している。そして、第1の長孔24bを軸21cに嵌合させ、第2の長孔24cを二つの軸21d,21eに嵌合させ、符合を付けていない第3の長孔を駆動ピン23に嵌合させている。そのため、この羽根24は、駆動ピン23が往復作動すると、長孔24b,24cの長さ方向に直線的にスライドするようになっている。
【0040】
また、地板21と羽根24の間に配置されている2枚の羽根25,26のうち、地板21側に配置されている羽根25は、円形の孔25aと符号を付けていない長孔を有していて、その孔25aを軸21bに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン23に嵌合させている。また、羽根24側に配置されているもう一方の羽根26は、円形の孔26aと、符号を付けていない長孔と、開口規制縁26bとを有していて、孔26aを軸21cに嵌合させ、長孔を駆動ピン23に嵌合させている。そして、これらの羽根25,26は、駆動ピン23が往復作動すると、軸21b,21cを中心にして、同じ方向へ同時に往復回転させられるが、前記のように、羽根26の方が羽根25よりも大きく(速く)回転するようになっている。
【0041】
更に、図示していないカバー板と羽根24の間に配置されている2枚の羽根27,28のうち、カバー板側に配置されている羽根27は、円形の孔27aと符号を付けていない長孔を有していて、孔27aを軸21gに嵌合させ、長孔を駆動ピン23に嵌合させている。また、羽根24側に配置されているもう一方の羽根28は、円形の孔28aと、符号を付けていない長孔と、開口規制縁28bを有していて、孔28aを軸21fに嵌合させ、長孔を駆動ピン23に嵌合させている。そして、それらの羽根27,28は、駆動ピン23が往復作動すると、軸21g,21fを中心にして、同じ方向へ同時に往復回転させられるが、前記のように、羽根28の方が羽根27よりも大きく(速く)回転するようになっている。また、このとき、羽根27,28は、上記の羽根25,26と同時に作動させられることになるが、羽根25,26とはその回転方向が相反する方向となる。
【0042】
次に、本実施例の作動を説明する。尚、本実施例の絞り装置は、銀塩フィルムカメラにも、デジタルカメラにも採用することの可能なものである。そして、周知のように、この種の絞り装置の場合には、銀塩フィルムカメラに採用された場合でも、デジタルカメラに採用された場合でも、撮影が行われる前には、開口部21aを全開にしているのが普通である。そのため、本実施例の作動説明も、そのような場合で説明する。図9は、本実施例の初期状態(撮影待機状態)を示したものであり、カメラの電源スイッチはオン状態になっている。このとき、モータの固定子コイルには通電されていないが、上記の各実施例の場合と同様に、回転子22には反時計方向へ回転する力が付与されているが、羽根24がストッパ21hに接触しているため、この状態が維持されている。
【0043】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、測光装置による測光結果によって、被写体光を減光して撮影するか、減光しないで撮影するかが判断される。そして、減光しないで撮影すべきと判断された場合には、図9に示された状態のまま撮影が行われ、絞り装置は全く作動しない。それに対して、減光して撮影すべきと判断された場合には、モータの固定子コイルに通電され、回転子22が時計方向へ回転させられる。そのため、駆動ピン23も円弧状に移動し、5枚の羽根24〜28の長孔(符号を省略してある)の縁を押していく。それによって、真中の羽根24は、軸21c,21d,21eに案内されて、右下方向へ直線的にスライドしていく。また、羽根25,26は、各々軸21b,21cで時計方向へ回転し、羽根27,28は、各々軸21g,21fで反時計方向へ回転していく。即ち、羽根24は直線的に作動するが、羽根25,26と羽根27,28とは相反する方向へ回転をし、開口部21aを覆っていくことになる。
【0044】
この作動行程において、羽根24を備えていないと、4枚の羽根25,26,27,28の先端が撓み易く、羽根25,26の先端部と羽根27,28の先端部とが衝突して噛み合ってしまうことがあるが、本実施例の場合には、開口部24aを有する羽根24が羽根25,26と羽根27,28の間に配置されているので、そのような事態は発生しない。このようにして行われる作動は、羽根24,25がストッパ21iに当接することによって停止する。図10は、その停止状態を示したものであるが、このとき、羽根26の開口規制縁26bと、羽根28の開口規制縁28bとによって、絞り開口が規制されている。従って、この状態は絞込み状態ということができる。また、このとき、羽根24は、他の4枚の羽根25〜28では覆いきれていない開口部21aの右上方部を覆っている。そのため、本実施例の場合にも、羽根24は、そのような役目と、上記のような作動中の噛み合いを防止する役目を、兼ね備えていることになる。
【0045】
このようにして図10に示された状態になると、シャッタ装置等によって撮影が行われる。そして、撮影が終了すると、モータの固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向の通電が行われる。そのため、回転子22は反時計方向へ回転し、駆動ピン23によって、5枚の羽根24〜28を、上記とは逆方向へ作動させる。そして、開口部21aが全開になると、その直後に、羽根24がストッパ21hに当接し、回転子22と5枚の羽根24〜28の作動が停止する。そして、モータの固定子コイルに対する通電を断つと、図9に示された初期状態に復帰したことになる。
【実施例4】
【0046】
次に、図11及び図12を用いて実施例4を説明する。本実施例も絞り装置であって、図11は、カバー板を取り除いて、羽根室内における絞り羽根の撮影待機状態を示したものであり、図12は、同様にして、絞り羽根の絞込み状態を示したものである。そして、本実施例の絞り羽根は、実施例2におけるシャッタ羽根と同様に、3枚の羽根で構成されていて、その作動も、実施例2のシャッタ羽根の場合と類似している。そこで、先ず、本実施例の構成を説明する。地板31は、合成樹脂製であり、図示していないカバー板との間に羽根室を構成しているが、そのカバー板の図示は省略されている。地板31には、中央部よりも右寄りに被写体光路用の開口部31aが形成されており、地板31の左端と開口部31aとの間の羽根室側の面が羽根取付領域となっている。また、図示していないカバー板にも、開口部31aと対向する位置に被写体光路用の開口部が形成されているが、本実施例の場合にも、開口部31aが撮影光路を規制するようになっている。
【0047】
地板31には、羽根室側の面に、三つの軸31b,31c,31dと、三つのストッパ31e,31f,31gが立設されている。また、地板31の羽根取付領域には、円弧状の長孔31hが形成されている。地板31の羽根取付領域の背面には、モータ32が取り付けられている。本実施例のモータ32は、上記の各実施例のモータと全く同じ構成のモータであって、永久磁石を有していて所定の角度範囲内でだけ往復回転する回転子32aを備えており、その回転子32aと一体的に回転する駆動ピン32bは、上記の長孔31hを貫通し、羽根室内に延伸されている。
【0048】
羽根室内に配置されている本実施例の絞り羽根は、3枚の羽根33,34,35からなっており、そのうち、真中に配置されている羽根33は、地板31の開口部31aよりも大きな開口部33aと、円形の孔と、長孔とを有していて、円形の孔を軸31cに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン32bに嵌合させている。そのため、この羽根33の場合は、実施例3の羽根24とは異なり、駆動ピン32bが往復作動すると、軸31cで回転するようになっている。また、羽根33と地板31との間に配置されている羽根34は、円形の孔と、長孔と、開口規制縁34aとを有していて、円形の孔を軸31bに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン32bに嵌合させている。更に、羽根33とカバー板との間に配置されている羽根35は、円形の孔と、長孔と、開口規制縁35aとを有していて、円形の孔を軸31dに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン32bに嵌合させている。また、これらの羽根33,34,35の回転量は、実施例2の場合と同様に、羽根ごとに異なるようになっている。
【0049】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する.図11は、本実施例の初期状態(撮影待機状態)を示したものであり、カメラの電源スイッチはオン状態になっている。このとき、モータ32の固定子コイルには通電されていない。しかしながら、上記の各実施例の場合と同様に、回転子32aには反時計方向へ回転する力が付与されているが、羽根33,34がストッパ31f,31eに接触しているため、この状態が維持されている。
【0050】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、測光装置による測光結果によって、被写体光を減光して撮影するか、減光しないで撮影するかが判断される。そして、減光しないで撮影すべきと判断された場合には、図11に示された状態のまま撮影が行われ、絞り装置は全く作動しない。それに対して、減光して撮影すべきと判断された場合には、モータ32の固定子コイルに通電され、回転子32aが時計方向へ回転させられる。そのため、駆動ピン32bによって、開口部33aを有している羽根33と羽根34とは時計方向へ、羽根35は反時計方向へ回転させられて、開口部31aを覆っていく。このとき、羽根33が存在していないと、羽根34と羽根35は、相反する方向へ回転するため、作動中に撓まされて、それらの先端部が噛み合ってしまうおそれがあるが、本実施例の場合には、それらの羽根34,35の間に羽根33が存在しているため、そのような事態は生じない。
【0051】
このようにして行われる作動は、羽根33がストッパ31gに当接することによって停止する。図12は、その停止状態を示したものであるが、このとき、羽根34の開口規制縁34aと、羽根35の開口規制縁35aとによって、絞り開口が規制されている。従って、この状態が絞込み状態である。また、このとき、羽根33は、他の2枚の羽根34,35だけでは覆うことの不可能な開口部31aの上方領域を覆っている。従って、本実施例の絞り装置の場合にも、開口部33aを有している羽根33は、このような役目と、上記のように作動中に羽根34,35が噛み合わないようにする役目とを兼ね備えている。
【0052】
このようにして図12に示された状態になると、シャッタ装置等によって撮影が行われる。そして、撮影が終了すると、モータ32の固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向の通電が行われる。そのため、回転子32aは反時計方向へ回転し、駆動ピン32bによって、3枚の羽根33〜35を、上記とは逆方向へ回転させる。そして、開口部31aが全開になると、その直後に、羽根33がストッパ31fに当接し、羽根34がストッパ31eに当接することによって、回転子32aと3枚の羽根33〜35の回転が停止する。そして、モータ32の固定子コイルに対する通電を断つと、図11に示された初期状態に復帰したことになる。
【実施例5】
【0053】
次に、図13及び図14を用いて実施例5を説明する。本実施例はフィルタ装置であって、図13は、フィルタ羽根の撮影待機状態を示したものであり、図14は、フィルタ羽根のセット状態を示したものである。そして、本実施例のフィルタ羽根は、実施例3における絞り羽根と同様に、5枚の羽根で構成されていて、その作動は、実施例3の絞り羽根の場合と実質的に同じである。そこで、先ず、本実施例の構成を説明する。地板41は、合成樹脂製であり、その中央よりも右寄りに被写体光路用の開口部41aが形成されている。そして、地板41の左端と開口部41aとの間に存在する羽根室側の領域を羽根取付領域としている。
【0054】
また、本実施例の場合には、カバー板42が、その左方の一部を省略して示されている。このカバー板42は、地板41に取り付けられていて、地板41との間に羽根室を構成している。そして、そのカバー板42には、開口部41aと対向するところに、開口部41aよりも若干大きな被写体光路用の開口部42aが形成されており、その開口部42aには、その左下方向の領域を切除して形成した逃げ部42bが連設されている。従って、本実施例の場合にも、地板41に形成された開口部41aが撮影光路を規制するようになっている。
【0055】
地板41には、その羽根取付領域に、六つの軸41b,41c,41d,41e,41f,41gが立設されているほか、柱状の二つのストッパ41h,41iが立設されている。そして、それらの軸とストッパの先端は、それぞれカバー板42に形成されている図示を省略した各々の孔に挿入されている。また、地板41の羽根取付領域には、実施例1における地板1の長孔1mと同様に、円弧状の長孔が形成されているが、図13,図14においては、その図示が省略されている。また、カバー板42にも、その長孔と対向するところに、図示していない同じ形状の長孔が形成されている。更に、地板41は、羽根取付領域の反対側の面に、上記の各実施例の場合と同じ構成のモータを、フィルタ羽根の駆動手段として取り付けているが、図13と図14には、その回転子43と駆動ピン44を示してある。そして、その駆動ピン44は、地板41の上記した図示していない長孔を貫通し、その先端を、カバー板42の図示していない長孔に挿入している。
【0056】
羽根室内には、モータの駆動ピン44によって駆動されるフィルタ羽根が配置されている。本実施例のフィルタ羽根は、5枚の羽根45〜49からなっている。そして、それらの羽根の真中に配置されている羽根45は、地板41の開口部41aよりも大きな開口部45aと、三つの長孔を有している。そして、第1の長孔45bを軸41cに嵌合させ、第2の長孔45cを二つの軸41d,41eに嵌合させ、符合を付けていない第3の長孔を駆動ピン44に嵌合させている。そのため、この羽根45は、駆動ピン44が往復作動すると、長孔45b,45cの長さ方向に直線的にスライドするようになっている。
【0057】
また、地板41と羽根45の間に配置されている2枚の羽根46,47のうち、地板41側に配置されている羽根46は、円形の孔46aと符号を付けていない長孔を有していて、その孔46aを軸41bに回転可能に嵌合させ、長孔を駆動ピン44に嵌合させている。また、羽根45側に配置されているもう一方の羽根47は、円形の孔47aと、符号を付けていない長孔と、開口規制縁47bとを有していて、孔47aを軸41cに嵌合させ、長孔を駆動ピン44に嵌合させている。そして、これらの羽根46,47は、駆動ピン44が往復作動すると、軸41b,41cを中心にして、同じ方向へ同時に往復回転させられるが、前記のように、羽根47の方が羽根46よりも大きく(速く)回転するようになっている。
【0058】
更に、カバー板42と羽根45の間に配置されている2枚の羽根48,49のうち、カバー板42側に配置されている羽根48は、円形の孔48aと、符号を付けていない長孔と、開口規制縁48bとを有していて、孔48aを軸41fに嵌合させ、長孔を駆動ピン44に嵌合させている。そして、この羽根48には、NDフィルタ板50の一部が、接着剤等で取り付けられており、開口規制縁48bと上記の羽根47の開口規制縁47bとによって形成される開口部を覆い得るようになっている。他方、羽根45側に配置されているもう一方の羽根49は、円形の孔49aと、符号を付けていない長孔を有していて、孔49aを軸41gに嵌合させ、長孔を駆動ピン44に嵌合させている。そして、それらの羽根48,49は、駆動ピン44が往復作動すると、軸41f,41gを中心にして、同じ方向へ同時に往復回転させられるが、前記のように、羽根48の方が羽根49よりも大きく(速く)回転するようになっている。
【0059】
次に、本実施例の作動を説明する。尚、本実施例のフィルタ装置は、実施例3,4の絞り装置と同様に、銀塩フィルムカメラにも、デジタルカメラにも採用することの可能なものである。そして、構成が酷似していることから、その作動は、実施例3の場合と同様にして行われる。そのため、本実施例の作動は簡単に説明することにする。図13は、本実施例の初期状態(撮影待機状態)を示したものであり、カメラの電源スイッチはオン状態になっている。このとき、モータの固定子コイルには通電されていないが、上記の各実施例の場合と同様に、回転子43には反時計方向へ回転する力が付与されているが、羽根45がストッパ41hに接触しているため、この状態が維持されている。
【0060】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、測光装置による測光結果によって、被写体光を減光して撮影するか、減光しないで撮影するかが判断される。そして、減光しないで撮影すべきと判断された場合には、図13に示された状態のまま撮影が行われ、フィルタ装置は全く作動しない。それに対して、減光して撮影すべきと判断された場合には、モータの固定子コイルに通電され、回転子43が時計方向へ回転させられる。そのため、駆動ピン44によって、真中の羽根45は右下方向へ直線的にスライドし、羽根46,47は時計方向へ回転し、羽根48,49は反時計方向へ回転していく。
【0061】
この作動行程において、羽根45を備えていないと、羽根46,47の先端部と羽根48,49の先端部とが衝突して噛み合ってしまうことがあるが、本実施例の場合は、羽根45を備えているので、そのような事態は発生しない。そして、この作動は、羽根45,46がストッパ41iに当接することによって停止する。図14は、その停止状態を示したものであるが、このとき、羽根47の開口規制縁47bと、羽根48の開口規制縁48bとによって、開口部41aよりもかなり小さな開口部が形成されているが、その開口部は、羽根48に取り付けたNDフィルタ板50によって覆われている。従って、この状態は、フィルタ装置にとってのセット状態ということができる。また、このとき、羽根45は、他の4枚の羽根46〜49では覆いきれていない開口部41aの右上方部を覆っている。そのため、本実施例の場合にも、羽根45は、そのような役目と、上記のような作動中の噛み合いを防止する役目を、兼ね備えていることになる。
【0062】
このようにして図14に示された状態になると、シャッタ装置等によって撮影が行われる。そして、撮影が終了すると、モータの固定子コイルに対して、上記の場合とは逆方向の通電が行われる。そのため、回転子43は反時計方向へ回転し、駆動ピン44によって、5枚の羽根45〜49を、上記とは逆方向へ作動させる。そして、開口部41aが全開になると、その直後に、羽根45がストッパ41hに当接し、回転子43と5枚の羽根45〜49の作動が停止する。そして、モータの固定子コイルに対する通電を断つと、図13に示された初期状態に復帰したことになる。
【0063】
尚、上記の各実施例においては、アクチュエータとして、ムービングマグネット型モータなどと称されている電流制御式のモータを用いているが、本発明の駆動手段は、そのようなモータに限定されず、ステップモータや電磁プランジャなどの他の電磁駆動手段としても差し支えない。また、それらの電磁駆動手段には、レバー等の仲介部材が含まれていて、その仲介部材に駆動ピンを設けるようにしても差し支えない。従って、本発明の駆動手段は、上記の各実施例のように、必ずしも、羽根室外で地板に取り付ける必要はなく、地板とカバー板の間に形成したスペースに取り付けていて、そのような仲介部材を介して各羽根を作動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1のシャッタ装置の分解斜視図である。
【図2】図1のシャッタ装置からカバー板を取り除いてシャッタ羽根の全開状態を示した平面図である。
【図3】シャッタ羽根の閉じ作動の開始直後の状態を、図2と同様にして示した平面図である。
【図4】シャッタ羽根の閉じ行程の略中間の状態を、図2と同様にして示した平面図である。
【図5】シャッタ羽根の閉じ作動の終了直前の状態を、図2と同様にして示した平面図である。
【図6】シャッタ羽根の閉鎖状態を、図2と同様にして示した平面図である。
【図7】実施例2のシャッタ装置の全開状態を、カバー板を取り除いて示した平面図である。
【図8】図7と同様にして、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した実施例2の平面図である。
【図9】実施例3の絞り装置の待機状態を、カバー板を取り除いて示した平面図である。
【図10】図9と同様にして、絞り羽根の絞込み状態を示した実施例3の平面図である。
【図11】実施例4の絞り装置の待機状態を、カバー板を取り除いて示した平面図である。
【図12】図11と同様にして、絞り羽根の絞込み状態を示した実施例4の平面図である。
【図13】実施例5のフィルタ装置の待機状態を示した平面図である。
【図14】フィルタ羽根のセット状態を示した実施例5の平面図である。
【符号の説明】
【0065】
1,11,21,31,41 地板
1a,2a,4a,11a,13a,21a,24a,31a,33a,41a,42a,45a 開口部
1b〜1g,11b〜11d,21b〜21g,31b〜31d,41b〜41g 軸
1h〜1k,11e〜11g,21h,21i,31e〜31g,41h,41i ストッパ
1m,2m,4b〜4d,5b,6b,7b,8b,11h,24b,24c,31h,45b,45c 長孔
2,42 カバー板
2b〜2k,5a,6a,7a,8a,25a,26a,27a,28a,46a,47a,48a,49a 孔
3,12,32 モータ
3a,12b,23,32b,44 駆動ピン
4〜8,13〜15,24〜28,33〜35,45〜49 羽根
12a,22,32a,43 回転子
26b,28b,34a,35a,47b,48b 開口規制縁
42b 逃げ部
50 NDフィルタ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路用開口部を有していてその長手方向の端部の一方と該光路用開口部との間における羽根室側の面を羽根取付領域としている地板と、前記地板に取り付けられていて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記地板に取り付けられている駆動手段と、前記光路用開口部より大きい開口部を有していて前記羽根取付領域に往復作動可能に取り付けられており前記駆動手段によって前記光路用開口部に進退させられる1枚の羽根からなる第1羽根と、前記地板と前記第1羽根との間に配置されていて前記羽根取付領域に回転可能に取り付けられており前記駆動手段によって前記光路用開口部に進退させられる少なくとも1枚の羽根からなる第2羽根と、前記カバー板と前記第1羽根との間に配置されていて前記羽根取付領域に回転可能に取り付けられており前記駆動手段によって前記第2羽根とは相反する方向へ回転されて前記光路用開口部に進退させられる第3羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第1羽根が、前記羽根取付領域にスライド可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第1羽根が、前記羽根取付領域に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第1羽根,前記第2羽根,前記第3羽根が、いずれも長孔を有しており、前記駆動手段が往復回転可能なモータであって、該モータは、それらの長孔の全てに挿通させた駆動ピンを有していて、該駆動ピンを往復作動させることによって、それらの全ての羽根を同時に作動させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第2羽根を構成している1枚の羽根と、前記第3羽根を構成している1枚の羽根には、開口規制縁が形成されていて、前記駆動手段によって前記光路用開口部に進入させられたとき、それらの両方の開口規制縁によって、前記光路用開口部よりも小さな開口を形成するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記開口規制縁を形成している2枚の羽根の一方が、前記地板又は前記カバー板に隣接して配置された羽根であり、該羽根には、隣接する前記地板又は前記カバー板側の面に、前記小さな開口形成時に該開口を覆い得るようにして、NDフィルタ板が取り付けられており、該羽根に隣接する前記地板又は前記カバー板には、該羽根の作動時に、該NDフィルタ板と接触しないように逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−178366(P2006−178366A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374274(P2004−374274)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】