説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】バリヤ羽根等の駆動装置において、衝撃力等でバリヤ羽根が誤作動するのを防止する。
【解決手段】開口部10aを有する基板10、基板10に対して開口部10aに望む位置と開口部10aから外れた退避位置との間を移動自在に支持された一対のバリヤ羽根20、バリヤ羽根20を開口部10aから外れた退避位置に位置決めするべく基板に設けられたストッパ30、バリヤ羽根20を駆動する電磁駆動源40を備え、ストッパ30は磁石及び強磁性体の一方により形成され、一対のバリヤ羽根20は少なくともストッパ30と当接する端面領域において磁石及び強磁性体の他方により形成された吸着部21d,22dを有する。これにより、落下等による衝撃力を受けても、バリヤ羽根20が勝手に移動するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ等の開口部に配置されたバリヤ羽根、シャッタ羽根、あるいは絞り羽根等の羽根部材を駆動して位置決めするカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラ用羽根駆動装置としては、露光用の開口部を有する基板、基板に対して回動自在に支持され開口部に臨む位置(閉鎖位置)と開口部から外れた退避位置(開放位置)との間を移動する一対のシャッタ羽根、シャッタ羽根に形成された孔に挿入される駆動ピン及びロータを有しシャッタ羽根を駆動するモータ等を備え、一対のシャッタ羽根が退避位置に位置するとき、ロータをその角度位置において磁気的吸引力すなわちディテントトルクにより保持して、シャッタ羽根を退避位置に保持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、ロータのディテントトルクを用いる保持手法では、デジタルカメラ等を落下させて外部から衝撃力が加わったような場合に、ディテントトルクが比較的小さいため、シャッタ羽根が閉鎖位置に移動してしまう虞がある。
【0003】
また、従来のカメラ用羽根駆動装置としては、露光用の開口部を有する基板、基板に対して直線的に往復動可能に支持され開口部に臨む絞り位置と開口部から外れた退避位置との間を移動する一対の絞り羽根、絞り羽根に形成された孔に挿入される駆動ピン及びロータを有し絞り羽根を駆動するモータ、一対の絞り羽根の主面にそれぞれ貼付された強磁性体板、基板を覆う蓋に貼付され絞り羽根の強磁性体板と所定の間隙をおいて磁気的吸引力を及ぼす磁石等を備え、一対の絞り羽根を常時一方向に付勢するようにしてガタ寄せを行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この付勢手法では、絞り羽根を開口部に臨む位置あるいは退避位置に保持することはできず、又、絞り羽根に貼付された強磁性体板と蓋に貼付された磁石とは、絞り羽根の端面ではなく主面方向においてお互いに磁気的吸引力を及ぼすため、磁気的吸引力が及ぶ範囲は比較的広くなり、絞り羽根を駆動する際の駆動負荷が増加するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2001−75145号公報
【特許文献2】特開2000−314905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡略化、装置の小型化等を図りつつ、落下等により衝撃力が加わっても、羽根部材を開口部に臨む位置又は開口部から外れた退避位置に確実に保持することができるカメラ用羽根駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、開口部を有する基板と、基板に対して開口部に望む位置と開口部から外れた退避位置との間を移動自在に支持された羽根部材と、羽根部材を開口部に臨む位置又は退避位置に位置決めするべく基板に設けられたストッパと、羽根部材を駆動する電磁駆動源と、を備えたカメラ用羽根駆動装置であって、上記ストッパは、磁石及び強磁性体の一方により形成され、上記羽根部材は、少なくともストッパと当接する端面領域において磁石及び強磁性体の他方により形成された吸着部を有する、ことを特徴としている。
この構成によれば、電磁駆動源により羽根部材が駆動されて、開口部に臨む位置又は開口部から外れた退避位置にあるとき、羽根部材はその吸着部がストッパに当接して位置決めされると共に、羽根部材の端面領域において発生する磁気的吸引力により、羽根部材はストッパに吸着されて確実に開口部に臨む位置又は退避位置に保持される。したがって、この装置がデジタルカメラ等に搭載された状態で落下等による衝撃力を受けても、羽根部材は勝手に移動することなく所定位置に保持されて所期の状態(例えば、撮影待機の状態)を確保することができる。
【0007】
上記構成において、羽根部材は、基板に設けられた支軸に対して揺動自在に支持され、羽根部材に形成された吸着部は、支軸から離れた自由端側寄りに配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、吸着部が羽根部材の揺動支点(支軸)から離れた自由端側寄りに配置されるため、吸着部とストッパとの間に作用する磁気的吸引力によるトルクが大きくなり、羽根部材をより強力な保持力で、開口部に臨む位置又は退避位置に保持することができる。
【0008】
上記構成において、羽根部材は、基板に設けられた支軸に対してそれぞれ揺動自在に支持された一対の羽根部材からなり、ストッパは、一対の羽根部材をそれぞれ当接して位置決めする一対のストッパからなり、一対の羽根部材には、それぞれ吸着部が形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、開口部に対して開閉等の作用を及ぼす一対の羽根部材を、それぞれに対応するストッパと各々の吸着部との間に生じる磁気的吸引力により、開口部に臨む位置又は退避位置に確実に保持することができる。
【0009】
上記構成において、羽根部材は、開口部を開閉するバリヤ羽根、開口部を開閉するシャッタ羽根、又は、開口部を所定の口径に絞る絞り羽根である、構成を採用することができる。
この構成によれば、羽根部材がバリヤ羽根あるいはシャッタ羽根の場合、撮影待機の状態で衝撃力等を受けた際に、バリヤ羽根あるいはシャッタ羽根が勝手に開口部を閉鎖するのを防止でき、又、羽根部材が絞り羽根の場合、撮影待機の状態で衝撃力等を受けた際に、絞り羽根が勝手に開口部を絞るのを防止できる。
【0010】
上記構成において、吸着部は、羽根部材に埋設して一体成型されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、吸着部が羽根部材に埋設して一体成型されるため、吸着部を後付けする場合に比べて、製造コスト及び部品の管理コストを低減でき、装置全体のコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成をなすカメラ用羽根駆動装置によれば、この装置がデジタルカメラ等に搭載された状態で落下等による衝撃力を受けても、羽根部材を開口部に臨む位置又は開口部から外れた退避位置に確実に保持することができる。すなわち、構造の簡略化、装置の小型化等を達成しつつ、落下等により受ける衝撃力等に対して誤作動を生じない高精度な動作が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図5は、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示すものであり、図1は装置の一部を省いた斜視図、図2は装置の分解斜視図、図3は羽根部材に埋設した吸着部を示す部分断面図、図4は羽根部材が開口部から外れた退避位置にある状態を示す平面図、図5は羽根部材が開口部に望む位置にある状態を示す平面図である。
【0013】
この装置は、図1及び図2に示すように、略矩形の開口部10aを有する基板10、基板10に対して揺動自在に支持され開口部10aに臨む位置と開口部10aから外れた退避位置との間を移動自在に支持された羽根部材としての第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22からなる一対のバリヤ羽根20、バリヤ羽根20を退避位置に位置決めするべく基板10に植設された一対のストッパ30、バリヤ羽根20を駆動するための回転駆動力を発生する電磁駆動源40、電磁駆動源40とバリヤ羽根20とを連結するリンク部材50、バリヤ羽根20を覆うカバー60等を備えている。
【0014】
基板10は、図1及び図2に示すように、輪郭が略矩形をなすように樹脂材料により形成されて、中央部に開けられた略矩形の開口部10a、一対のバリヤ羽根20を摺動させる平坦面10b、一対のバリヤ羽根20を揺動自在に支持する二つの支軸11、リンク部材50を回動自在に支持する支軸12、電磁駆動源40の後述する駆動ピン41を通す扇状の貫通孔13、ネジ穴14等を備えている。
【0015】
一対のストッパ30は、永久磁石により略円柱状に形成されており、図4に示すように、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22を開口部10aから外れた退避位置に停止させるように、基板10に植設されている。
すなわち、一対のストッパ30は、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22が開口部10aから外れた退避位置に移動したとき、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22の自由端側寄りの端面(後述する吸着部21d,22d)に当接して停止させ、それ以上の移動を規制すると共に磁気的吸引力により保持するようになっている。
【0016】
一対のバリヤ羽根20は、図1及び図2、図4及び図5に示すように、樹脂材料により形成された第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22により構成されている。
第1バリヤ羽根21は、支軸11を通す円孔21a、長孔21b、半球状に両面から突出した突起21c、自由端側の端面に露出するように埋設された吸着部21d等を備えている。
第2バリヤ羽根22は、支軸11を通す円孔22a、第1バリヤ羽根21の長孔21bに挿入されるピン22b、半球状に両面から突出した突起22c、自由端側の端面に露出するように埋設された吸着部22d、リンク部材50に連結されるピン22e等を備えている。
そして、第1バリヤ羽根21と第2バリヤ羽根22とは、図4及び図5に示すように、それぞれの円孔21a,22aに支軸11が通されて揺動自在に支持されると共に、ピン22bが長孔21bに挿入されて、一方のバリヤ羽根(ここでは、第2バリヤ羽根22)に駆動力を及ぼすことにより、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22が連動して開閉動作を行うようになっている。
【0017】
突起21c,22cは、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22上の支軸11(揺動支点)から離れた自由端側寄りに設けられており、それぞれ基板10の平坦面10b及びカバー60の後述する内壁面60bを摺動して、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22を、開口部10aに臨む位置と退避位置との間で、ガタツキを生じないように案内するものである。これにより、バリヤ羽根20(第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22)が往復動する際に生じる摩擦力が低減され、安定した動作が得られる。
【0018】
吸着部21d,22dは、支軸11から離れた第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22の自由端側寄り(略中間よりも先端寄り)で、かつ、ストッパ30と当接する端面領域に設けられている。
吸着部21d,22dは、鉄等の強磁性体からなる材料により形成され、図3(a)ないし図3(c)に示すように、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22に埋設して一体成型されると共にその一部が端面領域に露出するように又は全てが覆われるように形成されている。
図3(a)に示す形状の吸着部21d,22dは、端面領域の全域に露出した形状となっているため、ストッパ30との間で強い磁気的吸引力が得られ、図3(b)に示す形状の吸着部21d,22dは、端面領域の一部に露出した形状となっているため、ストッパ30との間で若干弱められた磁気的吸引力が得られる。
このように、端面における吸着部21d,22dの露出量を適宜選定することにより、ストッパ30との間で所望の磁気的吸引力を発生させることができる。
図3(c)に示す形状の吸着部21d,22dは、端面領域から距離Aだけ入り込んで全て埋設された(覆われた)形状となっているため、距離Aの値を適宜調整することにより、所望の吸引力を発生させることができ、又、比較的脆い永久磁石(ストッパ30)に対して硬い強磁性体(吸着部21d,22d)が直接当接しないため、永久磁石の破損等を防止できる。
【0019】
また、吸着部21d,22dが、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22の揺動支点(支軸11)から離れた自由端側寄りに配置されるため、吸着部21d,22dとストッパ30との間に作用する磁気的吸引力によるトルクが大きくなり、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22をより強力な保持力で退避位置に保持することができる。
さらに、吸着部21d,22dは、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22に埋設して一体成型されているため、別個に形成して後付けするような場合に比べて、接合強度が高められ、又、製造工程において管理を要する部品点数を削減でき、製造コストを低減することができる。
【0020】
電磁駆動源40は、ムービングマグネット型のモータであり、所定の角度範囲を回動するロータ(不図示)、ロータに一体的に形成された駆動ピン41、励磁用のコイル(不図示)、磁路を形成するヨーク(不図示)等を備えており、基板10に対してネジB等により固定されるようになっている。
【0021】
リンク部材50は、図1、図2、図4、図5に示すように、基板10の支軸12が通される円孔51、電磁駆動源40の駆動ピン41が通される長孔52、第2バリヤ羽根22のピン22eが挿入される切り欠き53等を備えている。
すなわち、駆動ピン41が貫通孔13を往復動すると、リンク部材50が支軸12を支点として揺動し、切り欠き53に連結されたピン22eを介して、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22が開閉動作を行うようになっている。
【0022】
カバー60は、基板10に取り付けられてバリヤ羽根20を覆うものであり、図2に示すように、基板10の開口部10aに対応する位置に設けられた略矩形形状の開口部60a、バリヤ羽根20の突起21c,22cが摺動する内壁面60b、ネジBを通す孔61、ストッパ30の先端を嵌合させる孔62、駆動ピン41の先端を通す長孔63、ピン22bを通す長孔64、その他複数の位置決め孔あるいは逃げ孔等を備えている。
【0023】
次に、この装置がデジタルカメラに搭載された場合の動作について、図4及び図5を参照しつつ説明する。
先ず、デジタルカメラが撮影されない収納状態では、図5に示すように、一対のバリヤ羽根20(第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22)は、開口部10aに臨む位置に位置付けられて、開口部10aを閉鎖し、内部のレンズ光学系を保護した状態にある。尚、電磁駆動源40は、非通電の状態で磁気的吸引力によるディテントトルクを発生して、駆動ピン41が移動しないように規制し、一対のバリヤ羽根40をこの位置に保持している。
【0024】
この状態から、操作者が撮影待機の状態にするためのスイッチを入れると、電磁駆動源40が起動して駆動ピン41が所定角度だけ回転し、リンク部材50を介して、一対のバリヤ羽根20(第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22)は、図4に示すように、開口部10aから外れた退避位置に移動する。
【0025】
そして、第1バリヤ羽根21の吸着部21dが一方のストッパ30に当接して磁気的吸引力により吸着されると共に、第2バリヤ羽根22の吸着部22dが他方のストッパ30に当接して磁気的吸引力により吸着される。これにより、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽22は、この退避位置に確実に保持される。したがって、この状態で仮に外部から衝撃力等を受けても、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22は、勝手に移動することなくそのまま退避位置に保持されて、撮影待機の状態が維持される。
【0026】
この実施形態においては、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22の両方に吸着部21d,22dを設けたが、磁気的吸引力で両方のバリヤ羽根21,22が保持される限り、一方にだけ設けてもよい。また、第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22の吸着部21d,22dを強磁性体で形成し、ストッパ30を永久磁石で形成したが、逆に吸着部を永久磁石で形成し、ストッパを強磁性体で形成してもよい。
【0027】
図6及び図7は、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置の他の実施形態を示すものであり、羽根部材として第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´からなる一対のシャッタ羽根20´を採用すると共に基板の一部を変更した以外、前述の実施形態と基本的に同一であるため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
この装置において、基板10´は、リンク部材50を覆うと共に一対のシャッタ羽根20´を摺動自在に案内するガイド10b´´をもつ仕切り板10´´が別体として形成された後に組み付けられるようになっている。
【0028】
一対のストッパ30´は、鉄等の強磁性体により略円柱状に形成されており、図6に示すように、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´を開口部10aから外れた退避位置に停止させるように、基板10´に植設されている。
すなわち、一対のストッパ30´は、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´が開口部10aから外れた退避位置に移動したとき、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´の自由端側寄りの端面(後述する吸着部21d´,22d´)に当接して停止させ、それ以上の移動を規制すると共に磁気的吸引力により保持するようになっている。
【0029】
一対のシャッタ羽根20´は、図6及び図7に示すように、樹脂材料により形成された第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´により構成されている。
第1シャッタ羽根21´は、円孔21a、長孔21b、自由端側の端面に露出するように埋設された吸着部21d´等を備えている。
第2シャッタ羽根22´は、円孔22a、ピン22b、円弧状に突出した突状部22c´、自由端側の端面に露出するように埋設された吸着部22d´、ピン22e等を備えている。
【0030】
吸着部21d´,22d´は、永久磁石により形成され、支軸11(揺動支点)から離れた第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´の自由端側寄り(略中間よりも先端寄り)で、かつ、ストッパ30´と当接する端面領域において、図3(a)又は図3(b)に示すように、埋設して一体成型されている。
【0031】
この装置がデジタルカメラに搭載された場合、前述の実施形態と同様に、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´が開口部10aから外れた退避位置にあるとき、吸着部21d´,22d´がそれぞれ対応するストッパ30´に当接して磁気的吸引力により吸着されるため、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽22´は、この退避位置に確実に保持される。したがって、この状態で仮に外部から衝撃力等を受けても、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´は、勝手に移動することなくそのまま退避位置に保持されて、撮影待機の状態が維持される。
【0032】
この実施形態においては、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´の両方に吸着部21d´,22d´を設けたが、磁気的吸引力で両方のシャッタ羽根21´,22´が保持される限り、一方にだけ設けてもよい。また、第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´の吸着部21d´,22d´を永久磁石で形成し、ストッパ30´を強磁性体で形成したが、逆に吸着部を強磁性体で形成し、ストッパを永久磁石で形成してもよい。
【0033】
図8及び図9は、本発明に係るカメラ用羽根駆動装置のさらに他の実施形態を示すものであり、羽根部材として一枚の絞り羽根20´´を採用すると共に基板の一部等を変更した以外、前述の実施形態と基本的に同一であるため、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
この装置において、基板10´´´は、円形の開口部10a´´´、支軸11、貫通孔13、その他の位置決め孔及び逃げ孔等を備えている。
【0034】
一対のストッパ30´´は、永久磁石により形成され、絞り羽根20´´を、図8に示すように開口部10a´´´から外れた退避位置と、図9に示すように開口部10a´´´に臨む位置とに、それぞれ停止させるように基板10´´´に一体成型されている。
【0035】
絞り羽根20´´は、樹脂材料により形成され、図8及び図9に示すように、支軸11が通される円孔20a´´、駆動ピン41が通される長孔20b´´、半球状に両面から突出した突起20c´´、自由端側の端面に露出するように埋設された2つの吸着部20d´´、所定の口径をなす絞り開口20e´´等を備えている。
吸着部20d´´は、鉄等の強磁性体からなる材料により形成され、支軸11(揺動支点)から離れた絞り羽根20´´の自由端側寄り(略中間よりも先端寄り)で、かつ、それぞれのストッパ30´´と当接する端面領域において、図3(a)又は図3(b)に示すように、埋設して一体成型されている。
【0036】
この装置がデジタルカメラに搭載された場合、図8に示すように、絞り羽根20´´が開口部10a´´´から外れた退避位置(非絞り状態)にあるとき、一方の吸着部20d´´が対応する一方のストッパ30´´に当接して磁気的吸引力により吸着され、一方、図9に示すように、絞り羽根20´´が開口部10a´´´に臨む位置(絞り状態)にあるとき、他方の吸着部20d´´が対応する他方のストッパ30´´に当接して磁気的吸引力により吸着される。したがって、これら非絞り状態あるいは絞り状態で、仮に外部から衝撃力等を受けても、絞り羽根20´´は、勝手に移動することなくそのまま、開口部10a´´´から外れた退避位置又は開口部10a´´´に臨む位置に、それぞれ確実に保持されて、非絞り状態又は絞り状態が維持される。
【0037】
この実施形態においては、絞り羽根20´´の吸着部20d´´を強磁性体で形成し、ストッパ30´´を永久磁石で形成したが、逆に吸着部を永久磁石で形成し、ストッパを強磁性体で形成してもよい。
【0038】
上記実施形態においては、羽根部材として、一対のバリヤ羽根20(第1バリヤ羽根21及び第2バリヤ羽根22)、一対のシャッタ羽根20´(第1シャッタ羽根21´及び第2シャッタ羽根22´)、一枚の絞り羽根20´´を示したが、これに限定されるものではなく、一枚のバリヤ羽根、一枚のシャッタ羽根、一対又は複数枚の絞り羽根、さらには、NDフィルタ羽根、赤外光カットフィルタ羽根等を備える構成において、本発明を採用してもよい。
【0039】
上記実施形態においては、羽根部材が揺動あるいは回動する場合について本発明を適用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、直線的に往復動する羽根部材においても適用することができる。
【0040】
上記実施形態においては、この装置がデジタルカメラに搭載された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、銀塩フィルム式のカメラ、その他のカメラ等においても、本発明を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上述べたように、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、構造の簡略化、装置の小型化等を達成しつつ、羽根部材を開口部に臨む位置又は開口部から外れた退避位置に確実に保持することができるため、小型で携帯用のデジタルカメラ等に搭載されるのは勿論のこと、外部から衝撃力等を受けて羽根部材の誤作動の虞があるカメラであれば、携帯型に限らず、固定型のカメラにも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示すものであり、部品の一部を省いた斜視図である。
【図2】図1に示す装置の分解斜視図である。
【図3】(a),(b),(c)は、装置の一部をなす羽根部材の吸着部を示す部分断面図である。
【図4】一対のバリヤ羽根が開口部から外れた退避位置にある状態を示す平面図である。
【図5】一対のバリヤ羽根が開口部に臨む位置にある状態を示す平面図である。
【図6】本発明のカメラ用羽根駆動装置の他の実施形態を示すものであり、部品の一部を省いた斜視図である。
【図7】図6に示す装置の分解斜視図である。
【図8】本発明のカメラ用羽根駆動装置のさらに他の実施形態を示すものであり、絞り羽根が開口部から外れた退避位置にある状態を示す平面図である。
【図9】図8に示す装置において、絞り羽根が開口部に臨む位置にある状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
10,10´,10´´´ 基板
10´´ 仕切り板(基板)
10a,10a´´´ 開口部
10b 平坦面
11,12 支軸
13 貫通孔
20 一対のバリヤ羽根(羽根部材)
21 第1バリヤ羽根
22 第2バリヤ羽根
21c,22c 突起
21d,22d 吸着部
20´ 一対のシャッタ羽根(羽根部材)
21´ 第1シャッタ羽根
22´ 第2シャッタ羽根
21d´,22d´ 吸着部
20´´ 絞り羽根(羽根部材)
20c´´ 突起
20d´´ 吸着部
30,30´,30´´ 一対のストッパ
40 電磁駆動源
41 駆動ピン
50 リンク部材
60 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する基板と、前記基板に対して前記開口部に望む位置と前記開口部から外れた退避位置との間を移動自在に支持された羽根部材と、前記羽根部材を前記開口部に望む位置又は退避位置に位置決めするべく前記基板に設けられたストッパと、前記羽根部材を駆動する電磁駆動源と、を備えたカメラ用羽根駆動装置であって、
前記ストッパは、磁石及び強磁性体の一方により形成され、
前記羽根部材は、少なくとも前記ストッパと当接する端面領域において、磁石及び強磁性体の他方により形成された吸着部を有する、
ことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記羽根部材は、前記基板に設けられた支軸に対して揺動自在に支持され、
前記羽根部材に形成された吸着部は、前記支軸から離れた自由端側寄りに配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記羽根部材は、前記基板に設けられた支軸に対してそれぞれ揺動自在に支持された一対の羽根部材からなり、
前記ストッパは、前記一対の羽根部材をそれぞれ当接して位置決めする一対のストッパからなり、
前記一対の羽根部材には、それぞれ前記吸着部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記羽根部材は、前記開口部を開閉するバリヤ羽根、前記開口部を開閉するシャッタ羽根、又は、前記開口部を所定の口径に絞る絞り羽根である、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記吸着部は、前記羽根部材に埋設して一体成型されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−284641(P2006−284641A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100788(P2005−100788)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】