説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】一つの羽根室内に2枚のシャッタ羽根と、光量制御用開口部を有する光量制御羽根と、光量制御羽根の補助羽根を配置しているが、光量制御羽根と補助羽根を略同じ大きさにして、装置の小型化を可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】地板1と補助地板2の間に構成されている羽根室内に、地板1側から順にシャッタ羽根3,シャッタ羽根4,補助羽根5,絞り羽根6が配置されていて、夫々羽根軸1d,1e,1f,1gに回転可能に取り付けられており、シャッタ羽根3,4は駆動ピン7によって同時に相反する方向へ往復回転させられ、補助羽根5と絞り羽根6は駆動ピン8によって同時に同じ方向へ異なる速度で往復回転させられるようになっている。そのため、補助羽根5と絞り羽根6を略同じ大きさにしても、各羽根の作動中における傾きや停止時のバウンドによって、羽根同士の端縁が衝突するようなことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根と光量制御羽根(絞り羽根,フィルタ羽根)とを一つの羽根室内に配置したカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用羽根駆動装置の中には、シャッタ装置と光量制御装置(絞り装置,フィルタ装置)とを一つのユニットとして構成したものがあるが、その場合には、シャッタ羽根と光量制御羽根(絞り羽根,フィルタ羽根)とが作動中に衝突しないようにする必要がある。そのため、従来は、二つの羽根室を構成し、一方の羽根室にはシャッタ羽根を、他方の羽根室には光量制御羽根を配置するのが一般的であった。ところが、そのように構成した場合には、羽根室を二つに仕切るための中間板が必要になるし、その取付構成にも配慮する必要があるため、コスト面からは好ましいとは言えず、また、装置の薄型化(光軸に沿う方向の厚さを薄くすること)の観点からも好ましいとは言えなかった。
【0003】
また、この種のカメラ用羽根駆動装置に用いられるシャッタ羽根としては、最近では、駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられる2枚構成のシャッタ羽根が普通になっている。また、絞り羽根としては、円形の開口部を有していて駆動手段によって往復回転させられる1枚の絞り羽根を用いることが多く、フィルタ羽根としては、そのような絞り羽根の開口部をフィルタシートで覆うようにしたものが多くなっている。ところが、シャッタ羽根は2枚構成であるためよいとしても、絞り羽根とフィルタ羽根の場合は、いずれも1枚構成であることから、露光用開口部から退いているときに収容可能とするためには、地板の径方向の寸法を大きくしなければならず、装置の小型化という観点からは問題であった。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、上記のような中間板を備えることなく低コスト化,薄型化を可能にするために、シャッタ羽根と光量制御羽根とを一つの羽根室内に配置するようにした上に、地板を小さくして装置の小型化を可能にするために、上記のような絞り羽根(絞り部材11)の外形を小さくし、絞り羽根だけでは露光用開口部を覆いきれなくなった領域を補助羽根(遮光部材12)で覆うようにしたカメラ用羽根駆動装置が提案されている。本発明は、このように、低コスト化と装置の薄型化を図るために、一つの羽根室内にシャッタ羽根と光量制御羽根を配置すると共に、装置の小型化を図るために、光量制御羽根を小さくし且つ補助羽根を備えるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−005251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の第2実施例(図6〜図8)に記載されている羽根駆動装置(以下、従来例という)は、一つの羽根室内に、2枚のシャッタ羽根(シャッタ羽根7,8),絞り羽根(絞り部材11),補助羽根(遮光部材12)の順に重ねて配置しているため、絞り羽根は、その作動時にはシャッタ羽根にも補助羽根にも摺接するようになっている。ところで、このように絞り羽根のほかに補助羽根を設けている理由は、上記のように、このタイプの絞り羽根を出来るだけ小さくして装置の小型化を図るためである。そのため、本来であれば、2枚のシャッタ羽根と同様に、絞り羽根と補助羽根の大きさを略同じにするのが理想であるが、従来例の構成では、そのようにすることができず、絞り羽根の方が、補助羽根よりもかなり大きくなっている。
【0007】
その理由は、この従来例において、絞り羽根をもっと小さくし、その分だけ補助羽根の方を大きくしようとすると、絞り羽根とシャッタ羽根が、それらの作動上において、互いに衝突してしまうからである。即ち、従来例の構成からも分かるように、絞り羽根が露光用開口部に進出する場合には、絞り羽根と補助羽根とは同時に同じ方向へ回転させられるが、絞り羽根の方が補助羽根よりも早く回転させられる。そのため、露光用開口部に進出して停止した状態においては、補助羽根の方が全開位置にあるシャッタ羽根に近い位置となり、絞り羽根は遠い位置になる。
【0008】
そのため、絞り羽根を従来例より小さくすると、絞り羽根が進入位置でストッパに当接したとき、変形されてバウンドし、少なくとも一方のシャッタ羽根(主にシャッタ羽根8)に衝突してしまうようになる。また、絞り羽根が露光用開口部に進出して停止した状態において、シャッタ羽根が閉じ作動を行うとき、絞り羽根とシャッタ羽根の姿勢に傾きがあると、少なくとも一方のシャッタ羽根(主にシャッタ羽根8)が絞り羽根に衝突してしまうようになる。更に、そのような絞り羽根が露光用開口部に進出して停止している状態において、シャッタ羽根が開き作動を行うと、シャッタ羽根が全開位置でストッパに当接したとき、変形されてバウンドし、絞り羽根に衝突してしまうようになる。そして、このような事態は、絞り羽根が、同じ光量制御羽根である上記のようなフィルタ羽根の場合にも生じ得る。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一つの羽根室内に、2枚構成のシャッタ羽根と光量制御羽根のほかに、光量制御羽根の補助羽根を配置したカメラ用羽根駆動装置において、光量制御羽根を補助羽根の大きさに近い大きさにしても、作動中に、シャッタ羽根と光量制御羽根が互いに衝突しないようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、円形の露光用開口部を有していて両者間に一つの羽根室を構成している二つの地板と、前記羽根室内に配置されていて第1駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられることにより前記露光用開口部の開閉作動を行う2枚のシャッタ羽根と、光量制御用開口部を有していて前記羽根室内に配置されており第2駆動手段によって往復回転させられ前記露光用開口部に進退作動を行う光量制御羽根と、その一部が前記2枚のシャッタ羽根と前記光量制御羽根の間において常にそれらに重なっているようにして前記羽根室内に配置されており第2駆動手段によって前記光量制御羽根と同時に同一方向へ前記光量制御羽根よりも遅く往復回転させられ前記光量制御羽根が前記露光用開口部に進入した状態においては前記光量制御羽根によって覆われていない部分を覆うようにした補助羽根と、を備えているようにする。
【0011】
その場合、前記光量制御羽根が、絞り羽根であって、前記光量制御用開口部が、前記露光用開口部よりも小さい開口部であるようにしてもよいし、前記光量制御羽根が、フィルタ羽根であって、前記光量制御用開口部が、NDフィルタシートで覆われているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、同時に相反する方向へ往復回転させられる2枚のシャッタ羽根と、光量制御用開口部を有していて往復回転させられる光量制御羽根と、光量制御羽根と同時に同じ方向へ光量制御羽根よりも遅く往復回転させられる補助羽根とを、一つの羽根室内に配置しているカメラ用羽根駆動装置において、それらの羽根を、2枚のシャッタ羽根,補助羽根,光量制御羽根の順に配置すると共に、それらの隣接する羽根同士はその一部が常に重なっているようにしたため、光量制御羽根を小さくして補助羽根に近い大きさにしても、作動中に、シャッタ羽根と互いに衝突することがない。そのため、カメラ用羽根駆動装置の小型化が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。本発明は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置にも、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置にも適用することができるものである。また、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラを含むデジタルカメラにも採用することができるものである。しかしながら、実施例では、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置をデジタルカメラに採用した場合で説明することにする。尚、図1〜図4は、いずれも実施例を示したものである。そして、図1は、撮影待機状態を示す平面図であり、図2は、図1の状態からシャッタ羽根の閉じ終わった状態を示す平面図である。また、図3は、図1の状態から絞り羽根が露光開口に進入した状態を示す平面図であり、図4は、図3の状態からシャッタ羽根の閉じ終わった状態を示す平面図である。
【実施例】
【0014】
先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって、その略中央部に、円形の露光用開口部1aを有しているほか、二つの大きな長孔1b,1cを有している。また、この地板1は、補助地板2との間に羽根室を構成し、その羽根室側の面に、四つの羽根軸1d,1e,1f,1gと、五つのストッパ軸1h,1i,1j,1k,1mと、二つの取付軸1n,1pを立設しているほか、一つのフック部1qを形成している。補助地板2は、地板1と略同じ外形をしているが、各図においては、羽根室内の構成を分かり易くするために、その一部だけが示されている。この補助地板2は、その略中央部に、上記の露光用開口部1aと重なるようにして円形の露光用開口部2aを有しているが、上記の露光用開口部1aの方が直径が小さいため、露光開口は露光用開口部1aによって規制されている。そして、地板1は、上記のフック部1qを補助地板2の外縁に掛けていて、上記の取付軸1n,1pを補助地板2の孔2b,2cに貫通させた後、その先端を熱溶解させてフランジ状に変形させることにより、補助地板2を取り付けている。
【0015】
羽根室内には、2枚のシャッタ羽根3,4と、補助羽根5と、絞り羽根6が配置されている。それらのうち、一番地板1側に配置されているシャッタ羽根3は、長孔3aを有していて、上記の羽根軸1dに回転可能に取り付けられている。また、地板1側から二番目に配置されていて、その一部が常にシャッタ羽根3と重なっているようにされているシャッタ羽根4は、長孔4aを有していて、上記の羽根軸1eに回転可能に取り付けられている。また、地板1側から三番目に配置されていて、その一部が常にシャッタ羽根4と重なっているようにされている補助羽根5は、ヘ字状をした長孔5aを有していて、上記の羽根軸1fに回転可能に取り付けられている。そして、一番補助地板2側に配置されていて、その一部が常に補助羽根5と重なっているようにされている絞り羽根6は、上記の露光用開口部1aよりも直径の小さな光量制御用開口部6aと長孔6aを有していて、上記の羽根軸1gに回転可能に取り付けられている。
【0016】
地板1の羽根室外の面には、図示していない二つの電磁アクチュエータが取り付けられている。それらの電磁アクチュエータは、特許文献1にも記載されているように、特開2001−117135号公報などに記載されているタイプの電磁アクチュエータでもよいし、特開2005−189717号公報などに記載されているタイプの電磁アクチュエータでも構わない。要するに、それらの電磁アクチュエータは、永久磁石製の回転子が、固定子コイルに対して供給される電流の通電方向に対応する方向へ回転させられ、その回転子と一体の駆動ピンによって羽根を駆動するように構成されたものである。そして、本実施例の場合には、第1の電磁アクチュエータに設けられた駆動ピン7は、上記の長孔1bから羽根室内に挿入され、2枚のシャッタ羽根3,4の長孔3a,4aに嵌合している。また、第2の電磁アクチュエータに設けられた駆動ピン8は、上記の長孔1cから羽根室内に挿入されていて、補助羽根5と絞り羽根6の長孔5a,6aに嵌合している。
【0017】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根3,4は、露光開口を規制している地板1の露光用開口部1aを全開にしており、取付軸1d,1eに取り付けられている近傍の領域は相互に重なって接触状態になっている。また、補助羽根5は、露光用開口部1aに進入しておらず退避状態になっており、隣接しているシャッタ羽根4とはかなりの領域で重なって接触状態になっている。更に、絞り羽根6も露光用開口部1aに進入しておらず退避状態になっていて、隣接している補助羽根5とはかなりの領域で重なって接触状態になっている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。尚、この図1からも分かるように、本実施例の場合には、絞り羽根6が補助羽根5と略同じ大きさをしており、しかも、シャッタ羽根3,4とも略同じ大きさをしている、そのため、従来例の構成の場合よりも、絞り羽根6が小さくなっていて、絞り羽根6を収容するための地板1の径方向の寸法が小さくなっている。
【0018】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、測光回路によって被写体光を測定し、その結果によって、被写体光を制限して撮影すると判断された場合には、最初に絞り羽根6を露光用開口部1aに進入させておいてから実際の撮影が開始されることになるが、先ずは、被写体光を制限しないで撮影すると判断された場合を説明することにする。その場合には、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たに電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、第1の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して順方向の電流が供給されるため、回転子は初期位置から図1において時計方向へ回転させられ、駆動ピン7を略下方へ移動させていく。
【0019】
そのため、シャッタ羽根3,4は同時に相反する方向へ回転させられ、露光用開口部1aの閉じ作動を開始するが、そのとき、シャッタ羽根4は、シャッタ羽根3と補助羽根5に対して、その一部を常に接触させた状態で作動するため、カメラの姿勢によって仮にそれらのいずれかが、基準の作動面から傾いた状態になっていたとしても、シャッタ羽根3,4は好適に閉じ作動を続けていく。そして、露光用開口部1aを閉鎖した直後には、先ず、シャッタ羽根3がストッパ軸1kに当接し、その直後には、慣性だけによってシャッタ羽根4がストッパ軸1jに当接し、最終的には、シャッタ羽根3がストッパ1kに接触し、シャッタ羽根4がストッパ1jから離れた状態で停止する。このように、本実施例の場合には、シャッタ羽根3,4を、タイミングをずらせてストッパ軸1k,1jに当接させているため、周知のように、シャッタ羽根3,4はバウンドしにくく且つ早期に停止する構成になっているが、仮にバウンドしたとしても、シャッタ羽根4の閉じ作動方向の反対側の端縁が、隣接している補助羽根5の端縁に衝突するようなことはない。このようにして、シャッタ羽根3,4の静止した状態が、図2に示されている。
【0020】
このようにして、図2に示した状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、その終了信号によって、第1の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して上記とは異なり逆方向の電流が供給されるため、回転子は、図2において反時計方向へ回転させられ、駆動ピン7を略上方へ移動させていく。そのため、シャッタ羽根3,4は同時に相反する方向へ回転させられ、露光用開口部1aの開き作動を開始するが、このときにも、閉じ作動のときと同じに、シャッタ羽根4は、シャッタ羽根3と補助羽根5に対して、その一部を常に接触させた状態で作動するため、シャッタ羽根3,4は好適に開き作動を続けていく。そして、露光用開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根3,4がストッパ軸1i,1hに当接して停止する。その後、第1の電磁アクチュエータの固定子コイルへの通電を断つと、図1の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0021】
次に、レリーズ時における測光回路の測定結果によって、被写体光を制限して撮影すると判断された場合について説明する。その場合には、先ず最初に、第2の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して順方向の電流が供給されため、回転子は、図1において時計方向へ回転され、駆動力ピン8を右上方向へ移動させていく。それによって、補助羽根5と絞り羽根6は同時に時計方向へ回転させられるが、羽根軸1f,1gから駆動ピン8までの距離が異なるため、絞り羽根6の方が補助羽根5よりも早く回転させられる。そのため、絞り羽根6は、補助羽根5よりも先に露光用開口部1aに進入していく。このとき、補助羽根5は、シャッタ羽根4と絞り羽根6に対して、その一部を常に接触させた状態で作動するし、絞り羽根6は補助羽根5に対して、その一部を常に接触させた状態で作動するため、仮にそれらのいずれかが、基準の作動面から傾いた状態になっていたとしても、両者は好適に作動を続けていく。
【0022】
そして、絞り羽根6の光量制御用開口部6aの中心が、露光用開口部1aの中心位置までくると、絞り羽根6はストッパ軸1mに当接するが、補助羽根5にはストッパ軸が設けられていない。そのため、絞り羽根6はストッパ軸1mに当接してバウンドし、反時計方向へ回転しようとするが、補助羽根5には慣性で時計方向へ回転する力が作用しているので、バウンドが抑制されて停止し、図3に示された状態になる。また、このとき、本実施例の場合には、絞り羽根6がバウンドしても、絞り羽根6とシャッタ羽根3,4との間には補助羽根5が存在するので、シャッタ羽根3,4には衝突しない。しかしながら、特許文献1に記載されている従来例のように、絞り羽根6を、シャッタ羽根4と補助羽根5の間に配置した場合には、本実施例の絞り羽根6が従来例の場合よりも小さいので、ストッパ軸1mへの当接時に一時的に変形してバウンドし、シャッタ羽根3,4のいずれかに衝突してしまうことがある。
【0023】
このようにして図3に示された状態になると、上記のようにして、実際の撮影が開始される。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、第1の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して順方向の電流が供給され、シャッタ羽根3,4は同時に相反する方向へ回転させられ、露光用開口部1aの閉じ作動を開始する。そのとき、本実施例の場合には、図3から分かるように、シャッタ羽根3,4は、それらの一部が補助羽根5と重なった状態から作動を開始するので、それらが仮に傾いて作動を開始したとしても、好適に閉じ作動を続けていく。そして、露光用開口部1aを閉鎖した直後には、シャッタ羽根3,4は、既に説明したように、ストッパ軸1k,1jに当接して停止する。図4は、その停止状態を示したものである。
【0024】
ところで、本実施例の場合には、このようにシャッタ羽根3,4の閉じ作動が好適に行われるが、特許文献1に記載された従来例のように、本実施例の絞り羽根6を、シャッタ羽根4と補助羽根5の間に配置した場合には問題がある。即ち、本実施例の絞り羽根6は従来例の絞り羽根よりも小さいので、図3の状態においては、少なくともシャッタ羽根3とは重なっているようにすることができない。なぜなら、もし、一部でもシャッタ羽根3と重なっている形状にすると、図1の状態において絞り羽根6の一部が地板1から径方向へはみだしてしまうからである。また、補助羽根5と絞り羽根6を第2の電磁アクチュエータごと、光軸を中心にして時計方向へ回転させた配置構成にして、絞り羽根6の一部がシャッタ羽根3と重なるようにしようとすると、補助羽根5が図3の状態から図1の状態に戻るとき、羽根軸1eと干渉してしまうからである。そのため、補助羽根5と絞り羽根6の配置を反対にして従来例のようにした場合には、シャッタ羽根3,4が傾いて閉じ作動を行うと、少なくともシャッタ羽根3が絞り羽根6に衝突する可能性があるが、本実施例の配置構成では、そのようなおそれが全くないようになっている。
【0025】
このようにして図4に示された状態になると、既に説明したように、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、各羽根を図1の状態に復帰させることになる。そのとき、二つの電磁アクチュエータの固定子コイルに同時に通電するようにしてもよいが、回路設計上の問題もあって、先ず、第1の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して通電し、次に、第2の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して通電するようにすることがある。そこで先ず、そのようにして第1の電磁アクチュエータの固定子コイルに対してだけ通電すると、既に説明したように、閉じ作動のときとは逆方向に電流を供給するため、駆動ピン7は、図4において略上方へ移動して、シャッタ羽根3,4に開き作動を行わせる。そして、露光用開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根3,4がストッパ軸1i,1hに当接して停止すると、第1の電磁アクチュエータの固定子コイルに対する通電を断つ。その停止状態は、図3に示された状態と同等である。
【0026】
ところで、シャッタ羽根3,4は、このようにしてストッパ軸1i,1hに当接したときにもバウンドするが、そのバウンドは、補助羽根5に重なった状態のままで行われるので、補助羽根5や絞り羽根6の端縁に衝突するようなことはない。しかしながら、特許文献1に記載された従来例のように、本実施例の絞り羽根6を、シャッタ羽根4と補助羽根5の間に配置した場合には問題が生じる。即ち、シャッタ羽根3,4がバウンドするときには、補助羽根5と絞り羽根6は未だ図4に示された状態にあるため、シャッタ羽根3,4がストッパ軸1i,1hへの当接によって変形されてバウンドすると、絞り羽根6の端縁に当接してしまうことがあるからである。
【0027】
このようにして、シャッタ羽根3,4の開き作動が停止すると、今度は、第2の電磁アクチュエータの固定子コイルに対して逆方向の電流が供給される。そのため、図4において駆動ピン8は左下方向へ移動し、補助羽根5と絞り羽根6とは同時に且つ異なる速度で反時計方向へ回転させられる。このとき、特許文献1に記載された従来例のように、補助羽根5と絞り羽根6の配置が反対であると、シャッタ羽根3,4と絞り羽根6との傾き関係によっては、絞り羽根6の端縁がシャッタ羽根3,4のいずれかの端縁に衝突するという事態を発生させることがあるが、本実施例の場合には、補助羽根5が、シャッタ羽根3,4と重なっている状態から回転を開始するので、そのような事態を発生させることがない。そして、補助羽根5と絞り羽根6とは、露光用開口部1aから完全に退いた後、絞り羽根6がストッパ軸1iに当接して停止する。その後、第2の電磁アクチュエータの固定子コイルに対する通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。
【0028】
尚、本実施例は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置として説明したが、本実施例の絞り羽根6に、その光量制御用開口部6aを覆うようにしてNDフィルタシートを取り付ければ、絞り羽根6がフィルタ羽根になり、本実施例の羽根駆動装置は、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置になる。その場合、光量制御用開口部6aは、本実施例のように、露光用開口部1aより小さくてもよいが、同じか大きくしても構わない。また、その場合には、フィルタ羽根が一番補助地板2側になるので、NDフィルタシートを補助地板2側の面に取り付け、補助地板2には、フィルタ羽根の作動中にNDフィルタシートが接触しないような逃げ部を形成することによって、NDフィルタシートを傷付けない構成が容易に得られることになる。更に、本実施例は、デジタルカメラに採用される羽根駆動装置として説明したが、銀塩フィルムを使用するカメラに採用された場合には、図2に示された状態を撮影待機状態として、シャッタ羽根3,4に往復作動を行わせ、補助羽根5と絞り羽根6とを本実施例と同様にして作動させることになる。そして、それらの態様は、全て本発明の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】撮影待機状態を示す実施例の平面図である。
【図2】図1の状態からシャッタ羽根の閉じ終わった状態を示す平面図である。
【図3】図1の状態から絞り羽根が露光開口に進入した状態を示す平面図である。
【図4】図4は、図3の状態からシャッタ羽根の閉じ終わった状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 地板
1a,2a 露光用開口部
1b,1c,3a,4a,5a,6a 長孔
1d,1e,1f,1g 羽根軸
1h,1i,1j,1k,1m ストッパ軸
1n,1p 取付軸
1q フック部
2 補助地板
2b,2c 孔
3,4 シャッタ羽根
5 補助羽根
6 絞り羽根
6a 光量制御用開口部
7,8 駆動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の露光用開口部を有していて両者間に一つの羽根室を構成している二つの地板と、前記羽根室内に配置されていて第1駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられることにより前記露光用開口部の開閉作動を行う2枚のシャッタ羽根と、光量制御用開口部を有していて前記羽根室内に配置されており第2駆動手段によって往復回転させられ前記露光用開口部に進退作動を行う光量制御羽根と、その一部が前記2枚のシャッタ羽根と前記光量制御羽根の間において常にそれらに重なっているようにして前記羽根室内に配置されており第2駆動手段によって前記光量制御羽根と同時に同一方向へ前記光量制御羽根よりも遅く往復回転させられ前記光量制御羽根が前記露光用開口部に進入した状態においては前記光量制御羽根によって覆われていない部分を覆うようにした補助羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記光量制御羽根が、絞り羽根であって、前記光量制御用開口部が、前記露光用開口部よりも小さい開口部であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記光量制御羽根が、フィルタ羽根であって、前記光量制御用開口部が、NDフィルタシートで覆われていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−316478(P2007−316478A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147951(P2006−147951)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】