説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】衝撃力が光軸に沿った方向へ働き、電磁アクチュエータのコイル枠の取付部に大きな負荷が集中しても、装置が破壊されないようにした、薄型化に適しているカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】コイル枠5は、両端に被押さえ部5a,5bを有し、コイル6を巻回したボビン部5cを略中央に有していて、ボビン部5cにはヨーク9を取り付けている。地板1は、押さえ部1h,1iを有していて、カバー板2との間に羽根室を構成している。コイル枠5は、回転子取付軸5hに永久磁石回転子8を取り付け、駆動ピン8cで回転させるシャッタ羽根10〜12を、羽根取付軸5j,回転子取付軸5h,羽根取付軸5iに取り付けておき、シャッタ羽根10〜12を先頭にして、押さえ部1h,1iの間から光軸と直交する方向へ移動させ、被押さえ部5a,5bを押さえ部1h,1iに挿入した状態にして、ねじ7で地板1に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根や絞り羽根などの羽根を電磁アクチュエータで駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンパクトカメラに採用されていたり、携帯電話を含む情報端末機器内蔵のカメラなどに採用されている羽根駆動装置としては、レンズシャッタ装置(以下、シャッタ装置という),絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置がある。そして、最近におけるそれらの装置は、各々1枚又は複数枚の羽根を備えていて、それらを電磁アクチュエータによって往復作動させるようにしている。また、周知のように、それらの装置は、それぞれを独立したユニットとして構成することもあるが、それらのうちの二つ又は三つを一つのユニットとして構成することもある。
【0003】
そして、シャッタ装置としては、2枚のシャッタ羽根を相反する方向へ同時に往復回転させるようにしたものが比較的多いが、中には1枚のシャッタ羽根を往復回転させるようにしたものもある。また、相反する方向へ同時に往復回転させるようにした2枚のシャッタ羽根のうち、少なくとも一方を2枚の分割羽根で構成するようにし、全開時にはそれらの分割羽根を十分に重ね合わせるようにすることによって収容スペースが小さくて済むようにし、装置の小型化を図るようにすることが知られている。そして、それらの構成のシャッタ装置は、羽根を撮影レンズの前面に配置することによって、レンズバリア装置とすることができることも知られている。
【0004】
また、絞り装置としては、従来は、絞りリングを用い、複数枚の絞り羽根を同時に同じ方向へ往復回転させるようにしたものが多かったが、情報端末機器内蔵用のカメラを含む最近のデジタルカメラの場合には、露光開口よりも小さな開口部を有している1枚の絞り羽根を往復回転させるようにしたものが多くなっている。また、最近のフィルタ装置としては、フィルタ羽根を、NDフィルタ板だけで製作することも知られているが、実際には、所定の大きさの開口部を有する羽根に、その開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けてフィルタ羽根としたものが多い。
【0005】
更に、電磁アクチュエータとしては、ステップモータを用いることもあるが、装置が小型の場合には、電流制御式の電磁アクチュエータを用いるのが一般的となっている。この電磁アクチュエータは、永久磁石製の回転子が、固定子コイルに対する電流の供給方向に対応した方向へ回転させられ、その駆動ピンによって羽根を往復作動させるようにしたものであるが、現在実施されているものとしては、固定子の構成の差異により、大きく分けて二つのタイプのものが知られている。その第1のタイプのものは、固定子コイルが、回転子を収容している固定子枠の外側に、回転子の二つの軸受け部を囲むようにして巻回されているものであり、第2のタイプのものは、固定子コイルが、略U字形をしたヨークの一方の脚部に巻回されているものである。
【0006】
ところで、最近のカメラはデザインが非常に多様化してきている。また、携帯電話などの情報端末機器に内蔵されるカメラの割合が非常に大きくなってきている。そのため、上記のような各種の羽根駆動装置については、全体の平面形状の小型化を図るのはもちろんとして、全体の薄型化を要求されるケースが多くなっている。そして、そのような薄型化の要求に応えるためには、上記のような第2のタイプの電磁アクチュエータを採用するのが有利である。
【0007】
しかしながら、第2のタイプの電磁アクチュエータであっても、具体的には多くの構成例が知られており、それらのうち、固定子コイルを巻回しているボビン部と回転子取付軸とを有しているコイル枠が、そのボビン部にヨークを取り付け、回転子取付軸に永久磁石回転子を取り付けた状態で、地板に対してねじで取り付けられているようにしたものが、下記の特許文献1に記載されている。また、固定子コイルを巻回しているボビン部にヨークを取り付けたコイル枠が、一般には熱カシメといわれている加工方法で、地板に取り付けられているようにしたものが、下記の特許文献2に記載されている。本発明は、それらのようなボビン部を有しているコイル枠を地板に対して取り付けるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2005−156616号公報
【特許文献2】特開2006−284800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近のように、カメラが小型化されてくると、必然的にその携帯方法や置き方などについて注意を怠りがちになるため、カメラを落下させてしまったり、何かにぶつけてしまったり、大きな振動を与えてしまったりする機会が多くなってきた。特に、携帯電話や、PDAなどの情報端末機器に内蔵されているカメラの場合には、精密光学機器としてのカメラに対する取り扱い感覚が失われてしまうため、そのような機会が一層多くなっている。
【0010】
一方、特許文献1に記載されている羽根駆動装置の構成は、薄型化に適しているものの、地板とコイル枠(特許文献1においてはボビン部材)とを、ねじで強く締め付けると、それらが小さくて薄い合成樹脂製部品であることから、変形させてしまうおそれがあるので、必然的に軽くねじ込まざるを得なくなり、十分な取付け強度を得ることができない。そのため、上記のような落下や振動などによる衝撃力が光軸に沿った方向へ働き、ねじの頭部に対して大きな負荷が集中すると、ねじが緩んだり外れたりして、装置が破壊されてしまうおそれがある。
【0011】
また、特許文献2に記載されている羽根駆動装置の構成では、上記のような落下や振動などによって衝撃力が光軸に沿った方向に働くと、コイル枠(特許文献2においては固定子枠)を取り付けるために、地板に立設されている軸の先端に形成された鍔部に対して負荷が集中し、鍔部が破壊されてしまうおそれがある。そのため、鍔部の厚さを厚くして破壊されないようにすればよいことになるが、周知のように、これまでのこの種の装置の熱カシメ加工技術では、鍔部を厚く形成することが難しい。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カメラの落下や振動などによる衝撃の力が光軸に沿った方向へ働き、コイル枠の取付部に大きな負荷が集中したとしても、これまでのように簡単には装置が破壊されてしまわないようにした、特に薄型化に適しているカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、光軸を中心にした撮影光路用の開口部を有しており該開口部の側方位置には両者が相互に略平行であって各々の断面形状が相手側に折り曲げられた鉤状をしている一対の押さえ部を有している地板と、前記開口部との少なくとも一方によって露光開口を規制する撮影光路用の開口部を有しており前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、回転子取付軸と少なくとも一つの羽根取付軸とを光軸と平行になるようにして立設しており略中央部にはコイルを巻回した筒状のボビン部を有し両端には前記一対の押さえ部に挿入する被押さえ部を有しているコイル枠と、駆動ピンを有していて前記回転子取付軸に回転可能に取り付けられている永久磁石回転子と、前記羽根取付軸に回転可能に取り付けられていて前記駆動ピンによって前記露光開口に進退させられる少なくとも1枚の羽根と、二つの脚部を有していて略U字形をしており一方の脚部を前記ボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として前記永久磁石回転子の周面に対向させているヨークと、を備えており、前記コイル枠は、前記永久磁石回転子と前記羽根とを取り付けた状態にしておき、前記羽根を光軸とは直交する方向から前記一対の押さえ部の間を前記露光開口側へ向けて移動させた後、前記二つの被押さえ部を前記一対の押さえ部に挿入した状態にして前記地板にねじで取り付けられているようにする。
【0014】
その場合、前記地板と前記カバー板とが合成樹脂による一体成形で製作されているようにすることが可能である。また、前記地板には、前記一対の押さえ部の間に、それらと略平行になるようにして、前記回転子取付軸,前記羽根取付軸,前記駆動ピンの先端の移動を可能にするための長溝が形成されているようにすると、実用的な構成になる。更に、前記羽根は、前記露光開口を開閉するシャッタ羽根と、前記露光開口より小さい開口部を有する絞り羽根と、NDフィルタを有するNDフィルタ羽根のいずれであってもよい。
【0015】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記コイル枠と同じ構成をした第2のコイル枠と、駆動ピンを有していて前記第2のコイル枠の回転子取付軸に回転可能に取り付けられている第2の永久磁石回転子と、前記第2のコイル枠の羽根取付軸に回転可能に取り付けられていて前記第2の永久磁石回転子の駆動ピンによって前記露光開口に進退させられる少なくとも1枚の第2の羽根と、二つの脚部を有していて略U字形をしており一方の脚部を前記第2のコイル枠のボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として前記第2の永久磁石回転子の周面に対向させているヨークと、を備えており、前記地板には、前記一対の押さえ部を設けた領域とは異なる領域に、前記一対の押さえ部と同じ構成をした第2の一対の押さえ部が設けられており、前記第2のコイル枠は、前記第2の永久磁石回転子と前記第2の羽根とを取り付けた状態にしておき、前記第2の羽根を光軸とは直交する方向から前記第2の一対の押さえ部の間を前記露光開口側へ向けて移動させた後、前記第2のコイル枠の二つの被押さえ部を前記第2の一対の押さえ部に挿入した状態にして前記地板にねじで取り付けられているようにすることも可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、略中央にボビン部を有し両端に被押さえ部を有しているコイル枠を、ヨーク,永久磁石回転子,羽根を取り付けた状態にしておいて、羽根の先端から、地板に設けられた一対の押さえ部の間を、露光開口側へ向けて光軸とは直交する方向へ移動させ、その後、二つの被押さえ部を一対の押さえ部に挿入した状態にして地板にねじで取り付けるようにしているため、落下等の衝撃によって、光軸に沿った方向へ大きな力が働いても、その力はねじの頭部だけに集中せず、一対の押さえ部にも分散されるようになっている。そのため、従来のように、コイル枠を、ねじだけで取り付けていたものや、熱カシメによって取り付けていたものに比べて、装置が破壊してしまうおそれがないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態を、図示した二つの実施例によって説明する。それらの二つの実施例は、デジタルカメラにも銀塩フィルムカメラにも採用することができるシャッタ装置として構成したものである。また、携帯電話やPDAなどの内蔵カメラにも採用することができるように、極めて小さい製品として製作することもできる構成にしてある。しかしながら、本発明の羽根駆動装置は、上記したように、シャッタ装置に限定されるものではない。従って、実施例を説明するに際しては、デジタルカメラに採用されたシャッタ装置の場合で説明するものの、その他のことについても、適宜、説明を加えることにする。尚、図1〜図4は実施例1を説明するためのものであり、図5は、実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0018】
図1〜図4を用いて実施例1を説明するが、図1は、撮影前におけるシャッタ羽根の全開状態を示した平面図であり、図2は、図1に示された電磁アクチュエータとシャッタ羽根とを、シャッタ羽根の閉鎖状態にして示した平面図である。また、図3と図4は、本実施例の組立工程を説明するための断面図であって、図3(a)はコイルを巻回したコイル枠を示したものであり、図3(b)はコイル枠にヨークを組み付けた状態を示したものであり、図3(c)はコイル枠に永久磁石回転子を組み付けた状態を示したものであり、図4(a)はコイル枠にシャッタ羽根を組み付けた図2の状態を示したものであり、図4(b)は図4(a)示された構成体を地板に取り付け且つ地板に対してカバー板を取り付けた最終組立状態を示したものである。尚、図3及び図4の断面図は、主として図1の下方から上方を見て要部を断面で示したものであるが、電磁アクチュエータの構成部材以外の、シャッタ羽根,地板,カバー板については、分かり易くするために、展開状態にして示してある。
【0019】
そこで先ず、本実施例の構成を、主に図1及び図4(b)を用いて説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって、光軸を中心にして円形をした撮影光路用の開口部1aが形成されている。この地板1は、図1に示されているように、羽根室側となる面に、二つのカバー板取付軸1b,1cと、四つのストッパピン1d,1e,1f,1gを立設しているほか、図1における下方領域には、一対の押さえ部1h,1iと、三つの長溝1j,1k,1mを形成し、押さえ部1hの近傍には孔1nを形成している。
【0020】
そして、それらのうち、カバー板取付軸1b,1cには、先端面から軸方向に孔が形成されている。また、一対の押さえ部1h,1iは、図1から分かるように略平行となるように形成されていて、それらを図1の下方から見た場合の形状、言い換えればそれらの断面形状は、図4(b)から分かるように、各々が相手側に折り曲げられた鉤状に形成されている。更に、三つの長溝1j,1k,1mは、図1から分かるように、夫々長さが異なるものの、上記の押さえ部1h,1iと略平行になるように形成されており、且つ図4(b)に示されている長溝1kの場合からも分かるように、地板1の背面側までは貫通していない。しかしながら、貫通しているように形成しても一向に差し支えなく、そのようにすれば、地板1を、さらに薄くすることも可能になる。また、三つの長溝1j,1k,1mのうち、長溝1mだけは、単純な直線状ではなく特別な形状をしていて、図1に示されているように、途中に枝溝1m−1が形成されているが、この点を断面で示すのが難しいため、図4(b)では、直線状の長溝1mと枝溝1m−1が各々別の長溝であるかのようにして示されている。
【0021】
カバー板2は、極めて薄い板状に形成されていて、地板1との間に羽根室を構成している。このカバー板2は、地板1の開口部1aと重なる位置に、円形をした撮影光路用の開口部2aを有していて、二つのねじ3,4を上記のカバー板取付軸1b,1cの孔にねじ込むことによって地板1に取り付けられている。また、本実施例の場合には、開口部1aと開口部2aとは直径が同じであり、いずれによっても露光開口を規制するようにしているが、周知のように、通常はどちらかの開口部の直径を小さくして、その開口部で露光開口を規制するようにしていることが多い。そして、このカバー板2には、上記のストッパピン1gの先端を嵌合させる孔2bが形成されているほか、周辺部には、上記のストッパピン1d,1e,1fの先端を逃げる切欠き部が形成されている。
【0022】
コイル枠5は、合成樹脂製であって複雑な形状をしており、長さ方向の両端に被押さえ部5a,5bを有しているとともに、略中央には筒状のボビン部5cを形成していて、そこにコイル6を巻回している。また、ボビン部5cの長さ方向の両端位置には、コイル6の両端を取り付ける端子ピン5d,5eを立設していて、被押さえ部5aの近傍には孔5fを形成している。更に、コイル枠5の地板1側の面には、球面を有する突起部5gを形成しているほか、回転子取付軸5hと、二つの羽根取付軸5i,5jを立設している。しかしながら、図4(b)には、断面の都合で羽根取付軸5iが示されていない。
【0023】
また、図4(b)から分かるように、本実施例の回転子取付軸5hは、直径の異なる二つの軸部からなっており、根元側の直径の大きな軸部が実際の回転子取付軸であって、先端側の直径の小さい軸部は羽根取付軸の役目をしているが、便宜上、それらを総称して回転子取付軸5hと呼ぶことにする。しかしながら、それらを別々の取付軸として立設することも可能であるため、本発明でいう回転子取付軸は、本実施例のような回転子取付軸5hに限定されるものではない。そして、このコイル枠5は、被押さえ部5a,5bを上記の押さえ部1h,1iに挿入し、孔5fを上記の孔1nに合わせておき、ねじ7によって地板1に取り付けられている。
【0024】
コイル枠5の上記回転子取付軸5hには、直径の大きな軸部に永久磁石回転子8が回転可能に取り付けられている。この永久磁石回転子8は、磁性体材料と合成樹脂材料とを混合して成形加工したものであって、円筒形の本体部8aは周知のように径方向に2極に着磁されており、そこから径方向へ張り出した腕部8bの先端には駆動ピン8cが形成されている。尚、本実施例の永久磁石回転子8は、このような構成をしているが、例えば、特許文献2に記載されている永久磁石回転子のように、本体部8aだけを永久磁石製とし、腕部8bと駆動ピン8cとを合成樹脂で一体的に成形したものも知られている。従って、本発明の永久磁石製回転子には、そのように構成されたものも含まれる。
【0025】
コイル枠5の上記ボビン部5cには、ヨーク9が取り付けられている。このヨーク9は、二つの脚部を有していて略U字形をしており、一方の脚部をボビン部5cに嵌合させ、両方の脚部の先端を磁極部とし、永久磁石回転子8の本体部8aを挟むようにして、その円周面に対向させている。そして、このヨーク9には、孔9aが形成されていて、そこに上記の突起部5gを嵌合させ、コイル枠5に対して位置決めされている。また、図4(b)からも分かるように、本実施例の場合には、ヨーク9の磁極部が、永久磁石回転子8の本体部8aに対して、上下方向の真中よりも上の方で対向している。そのため、永久磁石回転子8は、ヨーク9の磁極部との間に作用する磁気吸引力によって上方へ吊り上げられており、回転子取付軸5hの直径の小さな軸部の方へ移動してしまうことはない。
【0026】
コイル枠5の羽根取付軸5i,5jと回転子取付軸5hには、3枚のシャッタ羽根10,11,12が回転可能に取り付けられている。先ず、一番カバー板2側に配置されているシャッタ羽根10は、羽根取付軸5jに回転可能に取り付けられていて、周知のように、その長孔には上記の駆動ピン8cを嵌合させている。また、真中に配置されているシャッタ羽根11は、回転子取付軸5hの直径の小さい軸部に回転可能に取り付けられていて、その長孔には上記の駆動ピン8cを嵌合させている。また、一番地板1側に配置されているシャッタ羽根12は、羽根取付軸5iに回転可能に取り付けられていて、その長孔に上記の駆動ピン8cを嵌合させている。
【0027】
ここで、このような構成をしたシャッタ装置の組み立て方を説明する。図3(a)には、既にボビン部5cにコイル6を巻回したコイル枠5が示されている。このような状態のコイル枠に、先ず、ヨーク9を組み付ける。その場合には、ヨーク9の一方の脚部を、ボビン部5cに形成された中空部に、図3(a)の左側から挿入していくが、そのときにはコイル枠5を若干撓ませるようにして挿入してゆき、ヨーク9の孔9aにコイル枠5の突起部5gを嵌合させる。それによって、ヨーク9は、コイル枠5に対して位置決めされ、且つボビン部5cから抜けないように取り付けられたことになる。その状態が図3(b)に示されている。尚、図3及び図4におけるヨーク9は、ボビン部5cの中空部に挿入している方の脚部の先端を省略して示されている。
【0028】
次に、図3(c)に示されているように、永久磁石回転子8を、回転子取付軸5hの直径の大きな軸部に組み付ける。その後、シャッタ羽根10,11,12を順に組み付けるが、先ず最初に、シャッタ羽根10を、羽根取付軸5jに組み付け、次にシャッタ羽根11を、回転子取付軸5hの直径の小さな軸部に組み付ける。このとき、シャッタ羽根11に形成されている孔の直径は、回転子取付軸5hの直径の大きな軸部の直径よりも小さいため、シャッタ羽根11は、回転子取付軸5hの直径の小さな軸部に対して回転可能となっているが、回転子取付軸5hの直径の大きな軸部の方にまでは移動することがない。そして最後に、シャッタ羽根12を、羽根軸5iに組み付けた状態が、図4(a)に示された状態である。
【0029】
図2は、上記の図4(a)の組み付け状態を平面図で示したものである。しかもこのとき、3枚のシャッタ羽根10,11,12を、図1に示されているように、開口部2aを全開にした状態で示しておらず、閉鎖状態にして示してある。そして、この図2から分かるように、このとき3枚のシャッタ羽根10,11,12が、図2の左右方向に占める範囲は、いずれも、コイル枠5の長さ(図2における左右方向の長さ)の範囲内に収まっていて、被押さえ部5a,5bよりも左方及び右方に出ている部位はない。そこで次に、図4(a)まで組み付けた構成体を、図2に示したシャッタ羽根10,11,12の閉鎖状態にしておき、シャッタ羽根10,11,12の先端を先頭にして、図1の下方から開口部2aに向けて、押さえ部1h,1iの間で光軸とは直交するように移動させていく。
【0030】
その過程において、先ず、羽根取付軸5jと駆動ピン8cの先端が、相次いで長溝1mに入っていく。また、その次には、回転子取付軸5hの先端が、長溝1kに入っていき、最後に、羽根取付軸5iの先端が長溝1jに入っていく。そして、3枚のシャッタ羽根10,11,12が開口部2aを閉鎖する状態になったときには、コイル枠5の被押さえ部5a,5bが押さえ部1h,1iに挿入された状態になり、駆動ピン8cの先端は枝溝1m−1内へも移動し得る状態になっている。そこで、地板1の孔1nにコイル枠5の孔5fを合わせておき、ねじ7を孔5fに挿入し、孔1nにねじ込むことによって、コイル枠5を地板1に取り付けている。図4(b)は、このようにした組み付け完了状態を示したものである。
【0031】
本実施例は、このような薄型化に適した構成をしているが、カメラを落下させたときなどの衝撃力によって、光軸に沿った方向へ大きな力が作用しても、破壊されにくい構成になっている。即ち、地板1に、本実施例のような押さえ部1h,1iを設けていない場合には、ねじ7の頭部が、コイル枠5から軸方向へ作用する力を全て受けることになるが、本実施例の場合には、そのような光軸に沿った方向への力を、ねじ7の頭部でだけではなく、押さえ部1h,1iでも受けることになるため、そのような力が分散され、破壊されにくくなっている。そして、このことは、下記の実施例2の場合も同じである。また、落下などの衝撃力によって、光軸に沿った方向へ大きな力が作用したときには、その力は、ねじ3,4の頭部にも作用するが、本実施例のカバー板2やシャッタ羽根10,11,12は薄くて、ねじ3,4の頭部で受ける負荷は小さいため、特別な手段は講じられていない。しかしながら、諸々の条件から、その点に心配がある場合には、下記する実施例2のように構成すればよいことになる。
【0032】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影前の初期状態(撮影待機状態)を示したものである。このとき、シャッタ羽根10,11,12は、露光開口(開口部1a,2a)を全開状態にし、図示していない固体撮像素子を被写体光にさらしている。そのため、この初期状態においては、既に電源がオンになっているため、撮影者は、被写体像をモニターで観察することが可能になっている。また、このとき、コイル6には通電されていないが、周知のように、永久磁石回転子8の本体部8aの二つの磁極とヨーク9の二つの磁極部との間には磁気的吸引力が作用していて、永久磁石回転子8には反時計方向へ回転する力が付与されている。従って、駆動ピン8cによって、シャッタ羽根10には、時計方向へ回転する力が与えられ、シャッタ羽根11,12には、反時計方向へ回転する力が与えられているが、シャッタ羽根10はストッパピン1dに接触し、シャッタ羽根11はストッパピン1eに接触し、シャッタ羽根12はストッパピン1fに接触していることによって、この全開状態が確実に維持されている。
【0033】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、露光制御回路からの信号によって固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影のための露光が開始する。そして、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号により、コイル6に対して正方向に電流が供給される。それによって、永久磁石回転子8は、時計方向へ回転させられ、駆動ピン8cによって、シャッタ羽根10を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根11,12を時計方向へ回転させて、露光開口を閉じていくが、このとき、駆動ピン8cから回転子取付軸5hまでの距離が、駆動ピン8cから羽根取付軸5iまでの距離よりも短いから、シャッタ羽根11は、シャッタ羽根12よりも早く回転していくことになる。そして、シャッタ羽根10,11,12が露光開口を閉鎖すると、その直後に、シャッタ羽根11がストッパピン1gに当接することによって、永久磁石回転子8とシャッタ羽根10,11,12の回転が停止する。このとき、シャッタ羽根10,11,12の重なり状態は、図2に示されている状態になり、シャッタ羽根11,12の重なり量は最小になっている。
【0034】
このようにして、露光開口が閉鎖すると、その状態において撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その転送が終了すると、コイル6に対して、上記とは反対に、逆方向に電流が供給される。それによって、永久磁石回転子8は反時計方向へ回転させられ、駆動ピン8cによって、シャッタ羽根10を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根11,12を反時計方向へ回転させて、露光開口を開いていくが、その過程において、シャッタ羽根11,12の重なり量は大きくなっていく。そして、露光開口を全開にした直後に、シャッタ羽根10がストッパピン1dに当接し、シャッタ羽根11がストッパピン1eに当接し、シャッタ羽根12がストッパピン1fに当接することによって、永久磁石回転子8とシャッタ羽根10,11,12の回転が停止させられる。その後、コイル6に対する通電が断たれると、図1に示された初期位置(撮影待機状態)に復帰したことになる。
【0035】
ところで、上記の作動説明からも分かるように、シャッタ羽根11,12は、同時に同じ方向に回転し、作動中に重なり量を変化させるようになっている。そこで、図2の状態にあるシャッタ羽根11,12を1枚のシャッタ羽根とした場合で考えてみると、露光開口を全開にしたときには、そのシャッタ羽根の開き作動方向の一部が、羽根室から図1の左方向へ出てしまうことになる。このことからも分かるように、本実施例の場合には、シャッタ羽根を3枚とすることによって、地板1の面積を小さくすることができ、シャッタ装置全体の小型化を図っていることになる。しかしながら、本発明のシャッタ羽根は、このように3枚で構成したものに限定されず、本実施例のシャッタ羽根11,12を1枚にすることによってシャッタ羽根10との2枚構成にしたり、例えばシャッタ羽根11,12を備えず、シャッタ羽根10を若干大きくして、1枚構成にしても差し支えない。
【0036】
また、上記の作動説明は、本実施例のシャッタ装置を、デジタルカメラに採用した場合で説明したが、銀塩フィルムカメラに採用した場合には、図2に示された状態が初期状態(撮影待機状態)となり、撮影に際しては、シャッタ羽根10,11,12を、図1に示された全開状態にさせてから図2に示された状態に復帰させるようにすることは言うまでもない。また、本実施例のシャッタ羽根は3枚構成となっているが、本発明は、上記したように、1枚構成であっても、2枚構成であっても差し支えない。そして、そのように構成したシャッタ装置は、そのまま、撮影レンズの前面に配置することによってレンズバリア装置としても採用することが可能である。更に、シャッタ羽根を1枚構成にし、そこに、露光開口よりも小さな開口部を形成すれば、絞り装置として採用することができるし、その小さな開口部にNDフィルタ板を取り付ければ、フィルタ装置として採用することも可能になる。そのため、本発明は、上記の全ての装置に適用されるものであり、このことは下記の実施例2の場合も同じである。
【0037】
また、本実施例の羽根駆動装置は、シャッタ装置であるが、本発明は、図2に示されている本実施例のブロック体のほかに、特許文献1にも記載されているように、もう一つの電磁アクチュエータと絞り羽根とで構成したブロック体を地板1に組み付け、シャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成した羽根駆動装置とすることが可能である。そして、そのように構成する場合には、地板1を若干大きくすると共に、地板1には、もう一対の押さえ部を形成することになる。更に、同様にして、本発明は、シャッタ装置とフィルタ装置を一つのユニットとして構成してもよいし、絞り装置とフィルタ装置を一つのユニットとして構成してもよい。また、絞り開口の異なる二つの絞り装置を一つのユニットとして構成してもよいし、NDフィルタ板の濃度の異なる二つのフィルタ装置を一つのユニットとして構成してもよい。
【実施例2】
【0038】
次に、図5を用いて実施例2を説明する。尚、図5は、実施例1の説明で用いた図4(b)と同じようにして示した本実施例の断面図である。上記したように、実施例1においては、カバー板2を、二つのねじ3,4によって地板1に取り付けていたが、本実施例は、そのような構成では衝撃に耐えられないおそれがあるときに採用できる構成にしたものである。従って、本実施例の構成には、実施例1におけるカバー板2と、ねじ3,4を用いていない。その代わりに、本実施例の地板1には、実施例1のカバー板2に相当するカバー部1pが一体成形で形成されており、そのカバー部1pには、実施例1の開口部2aに相当する開口部1qが形成されている。その他の構成は実施例1の場合と実質的に同じであるため、同じ部材,部位には同じ符号を付け、それらの説明を省略する。また、本実施例の作動は、実施例1の場合と同じであるため、その説明も省略する。尚、本実施例は、平面図が示されていないのでカバー部1pの全体形状が分かりにくいが、シャッタ羽根10,11,12を、光軸と直交する方向へ移動させて、羽根室内に挿入するところだけが開口されているが、他の部位は、羽根室を封鎖するように形成されている。しかしながら、その封鎖部位の一部に窓のように隙間を形成してあっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】撮影前におけるシャッタ羽根の全開状態を示した実施例1の平面図である。
【図2】図1に示された電磁アクチュエータとシャッタ羽根とを、シャッタ羽根の閉鎖状態にして示した平面図である。
【図3】実施例1の組立工程を説明するための断面図であって、図3(a)はコイルを巻回したコイル枠を示したものであり、図3(b)はコイル枠にヨークを組み付けた状態を示したものであり、図3(c)はコイル枠に永久磁石回転子を組み付けた状態を示したものである。
【図4】図3(c)のあとの組立工程を説明するための断面図であって、図4(a)はコイル枠にシャッタ羽根を組み付けた図2の状態を示したものであり、図4(b)は図4(a)に示された構成体を地板に取り付け且つ地板に対してカバー板を取り付けた状態を示したものである。
【図5】実施例2を、図4(b)のようにして示した断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 地板
1a,1q,2a 開口部
1b,1c カバー板取付軸
1d,1e,1f,1g ストッパピン
1h,1i 押さえ部
1j,1k,1m 長溝
1m−1 枝溝
1n,2b,5f,9a 孔
1p カバー部
2 カバー板
3,4,7 ねじ
5 コイル枠
5a,5b 被押さえ部
5c ボビン部
5d,5e 端子ピン
5g 突起部
5h 回転子取付軸
5i,5j 羽根取付軸
6 コイル
8 永久磁石回転子
8a 本体部
8b 腕部
8c 駆動ピン
9 ヨーク
10,11,12 シャッタ羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を中心にした撮影光路用の開口部を有しており該開口部の側方位置には両者が相互に略平行であって各々の断面形状が相手側に折り曲げられた鉤状をしている一対の押さえ部を有している地板と、前記開口部との少なくとも一方によって露光開口を規制する撮影光路用の開口部を有しており前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、回転子取付軸と少なくとも一つの羽根取付軸とを光軸と平行になるようにして立設しており略中央部にはコイルを巻回した筒状のボビン部を有し両端には前記一対の押さえ部に挿入する被押さえ部を有しているコイル枠と、駆動ピンを有していて前記回転子取付軸に回転可能に取り付けられている永久磁石回転子と、前記羽根取付軸に回転可能に取り付けられていて前記駆動ピンによって前記露光開口に進退させられる少なくとも1枚の羽根と、二つの脚部を有していて略U字形をしており一方の脚部を前記ボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として前記永久磁石回転子の周面に対向させているヨークと、を備えており、前記コイル枠は、前記永久磁石回転子と前記羽根とを取り付けた状態にしておき、前記羽根を光軸とは直交する方向から前記一対の押さえ部の間を前記露光開口側へ向けて移動させた後、前記二つの被押さえ部を前記一対の押さえ部に挿入した状態にして前記地板にねじで取り付けられていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記地板と前記カバー板とが合成樹脂による一体成形で製作されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記地板には、前記一対の押さえ部の間に、それらと略平行になるようにして、前記回転子取付軸,前記羽根取付軸,前記駆動ピンの先端の移動を可能にするための長溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記羽根は、前記露光開口を開閉するシャッタ羽根と、前記露光開口より小さい開口部を有する絞り羽根と、NDフィルタを有するNDフィルタ羽根のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記コイル枠と同じ構成をした第2のコイル枠と、駆動ピンを有していて前記第2のコイル枠の回転子取付軸に回転可能に取り付けられている第2の永久磁石回転子と、前記第2のコイル枠の羽根取付軸に回転可能に取り付けられていて前記第2の永久磁石回転子の駆動ピンによって前記露光開口に進退させられる少なくとも1枚の第2の羽根と、二つの脚部を有していて略U字形をしており一方の脚部を前記第2のコイル枠のボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として前記第2の永久磁石回転子の周面に対向させているヨークと、を備えており、前記地板には、前記一対の押さえ部を設けた領域とは異なる領域に、前記一対の押さえ部と同じ構成をした第2の一対の押さえ部が設けられており、前記第2のコイル枠は、前記第2の永久磁石回転子と前記第2の羽根とを取り付けた状態にしておき、前記第2の羽根を光軸とは直交する方向から前記第2の一対の押さえ部の間を前記露光開口側へ向けて移動させた後、前記第2のコイル枠の二つの被押さえ部を前記第2の一対の押さえ部に挿入した状態にして前記地板にねじで取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−209770(P2008−209770A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47687(P2007−47687)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】