説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】薄板部材とカバー板の間に羽根室を構成するに際し、カバー板により、薄板部材を地板に対して好適に密接させ得るようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】合成樹脂製の地板1には、羽根取付軸1iと、ストッパ軸1j,1kが立設されている。露光開口用の開口部2aを有する薄板部材2は、孔2bに羽根取付軸1iを嵌合させ、孔2cにはストッパ軸1kを嵌合させている。薄板部材2との間に羽根室を構成しているカバー板4は、薄板部材2を、折曲部4i,4j,4k,4m,4nによって地板1に押し付けるようにして、地板1に取り付けられており、孔4fに羽根取付軸1iの先端を嵌合させ、孔4gにはストッパ軸1kの先端を嵌合させている。シャッタ羽根3は、羽根室内で羽根取付軸1iに回転可能に取り付けられているが、上記の折曲部4jは、円弧状の逃げ孔3b内に存在していので、開閉作動の妨げにはならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置などを、単独もしくは複数でユニット化するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに採用されているレンズシャッタ装置(以下、シャッタ装置という),絞り装置,フィルタ装置は、各々羽根部材を有していて、それらをアクチュエータによって往復作動させるようにしている。そして、シャッタ装置の場合には、シャッタ羽根を2枚としたものが多いが、レンズ口径の小さなカメラの場合には、1枚としたものもある。また、レンズ口径の小さなカメラに採用される絞り装置の場合には、小さな円形の開口部を有した1枚の絞り羽根を備え、必要に応じて、その開口部を撮影光路に進退させるようにしたものが多くなっている。
【0003】
更に、フィルタ装置の場合には、上記の絞り羽根と類似の形状(但し、その開口部は、地板に形成された撮影光路規制用の開口部と略同じ大きさの場合もある)をした1枚の羽根部材に対して、その開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けたものをフィルタ羽根としたものが多いが、そのような開口部を有する羽根部材を2枚用意して、それらの間に、NDフィルタ板のみで製作した羽根部材を重合させ、3枚の羽根部材を同時に同方向へ同角度だけ往復回転させるようにした構成のものも考えられている。そして、これらのシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、各々単独でユニット化されることもあるが、それらの二つ以上の装置を一つのユニットとすることもある。また、最近では、それらのシャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根は、電磁アクチュエータを駆動源として往復回転させられるのが普通になっている。
【0004】
ところで、このような各種の羽根駆動装置のユニットは、一つの地板に多くの部材を直接又は間接に取り付けて構成されている。そして、その地板は、最近では、低コスト化,軽量化に有利であることから、殆どの場合、合成樹脂製となっている。ところが、地板には、上記のような各種の羽根やそれを駆動するための電磁アクチュエータのほか、場合によってはレンズも取り付ける必要があることから、合成樹脂製の場合は、金属製の場合よりも、厚くならざるを得ないという実情がある。他方、最近もカメラは、小型化だけではなく、薄型化も急速に進んできており、撮影レンズを出来るだけ羽根の作動面に近接させて配置したいという要求がある。特に、固体撮像素子を備えた小型のカメラの場合には、薄型化を図るために、羽根駆動装置の一方の面に近付けて固体撮像素子を配置し、他方の面に近付けて撮影レンズを配置しているのが普通である。しかしながら、地板が厚い場合には、どうしてもその厚さに制約を受けてしまうことになる。
【0005】
そこで、そのような制約をなくすために、地板の固体撮像素子側の面に、撮影光路用の開口部を形成した薄板部材を重ねて配置するようにし、地板には、それよりもはるかに大きな開口部を形成することによって、その地板の開口部に撮影レンズの一部を挿入できるようにした構成が、下記の特許文献1,2に記載されている。そして、その場合には、薄板部材の開口部を露光開口とするのが普通であることから、その薄板部材を、口径規制板と言うことが多い。本発明は、このような薄板部材を備えていて、上記の各種の装置として構成することの可能なカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−241725号公報
【特許文献2】特開2005−309276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような薄板部材を備える場合には、地板に対して密接状態にしなければならないことから、従来は、合成樹脂製の地板に対してねじや熱カシメによって取り付けていた。ところが、それらの取付け方法は、部品が増えたり、取付け作業が面倒だったりしてコスト高になってしまう。そこで、特許文献1,2に記載されているカメラ用羽根駆動装置の場合には、羽根室を構成するためのカバー板を地板に対して取り付けるとき、そのカバー板が、薄板部材の周辺部を地板の周辺部に対して圧接状態にさせるようにしている。しかしながら、このような構成は、薄板部材の取り付けには好適であるが、カバー板が、かなり薄い部材であることから、薄板部材とカバー板との間の間隔を均一にするのが難しく、また、撮影光路用の開口部の近傍領域に荷重がかかると変形し易いので、製作段階での取り扱いが極めて面倒になるという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、カバー板と羽根の形状を工夫するだけで、地板に対して薄板部材を簡単に組み付けることができるほか、薄板部材とカバー板との間の間隔が均一に得られ且つ通常の荷重では変形することがないようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、光軸を中心にして形成された開口部を有している合成樹脂製の地板と、光軸を中心にして前記開口部よりも小さく形成された開口部を有していて前記地板に重合されている薄板部材と、光軸を中心にして形成されていて前記薄板部材の開口部との少なくとも一方によって露光開口を規制する開口部と該開口部の周辺近傍位置において前記薄板部材に向けて設けられた少なくとも一つの突状部とを有していて前記地板に取り付けられたとき該突状部を前記薄板部材に接触させるようにして前記薄板部材との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記突状部を貫通させた逃げ孔を有していて前記羽根室内において前記地板に対して回転可能に取り付けられており往復回転させられることによって前記露光開口に進退させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えているようにする。
【0010】
その場合、前記羽根室内においては、同一の駆動源によって同時に相反する方向へ回転させられる2枚の羽根が、夫々地板に対して回転可能に取り付けられており、前記逃げ孔は、それらの羽根のうちの両方に形成されていて、それらの逃げ孔には同じ前記突状部を貫通させているようにしてもよい。また、前記カバー板は、前記突状部を少なくとも二つ有しており、また、前記羽根室内においては、第1の駆動源によって往復回転させられる第1羽根と、第2の駆動源によって往復回転させられる第2羽根とが、各々、前記地板に対して回転可能に取り付けられており、それらの羽根には各々前記逃げ孔が形成されていて、該逃げ孔の各々には、異なる前記突状部を貫通させているようにしてもよい。
【0011】
また、前記薄板部材と前記カバー板との間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、一方の羽根室には前記第1羽根を配置し、他方の羽根室には前記第2羽根を配置しており、該中間板は、光軸を中心にして形成されていて前記薄板部材及び前記カバー板の各々の開口部との少なくとも一つによって露光開口を規制する開口部と、前記突状部を貫通させる少なくとも一つの孔とを有しているようにしてもよく、その場合にはさらに、前記カバー板には、前記中間板に向けて、前記突状部と略同じ形状をした少なくとも一つの突状部が設けられていて、該突状部は、前記カバー板が前記地板に取り付けられたとき、前記中間板を前記地板に押圧しているようにしてもよい。
【0012】
更に、前記突状部が、前記カバー板の板面からの折り曲げ形状をしているようにしてもよいし、前記カバー板の板面から突き出された形状をしているようにしてもよい。また、前記カバー板は、その周辺部に折り曲げ形状をしていて弾性を有する複数のフック部を有しており、また前記地板は、その周辺部に複数の係合部を有していて、前記カバー板は、該フック部を該係合部に掛け止めすることによって前記地板に取り付けられているようにすると、低コストで組立の容易な装置になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、厚い合成樹脂製の地板に対して薄板部材を密接させて、薄板部材とカバー板との間に羽根室を構成するようにしたカメラ用羽根駆動装置において、カバー板には、撮影光路用の開口部の周辺近傍位置に少なくとも一つの突状部を設け、また、羽根には、それらの突状部の一つを貫通させる逃げ孔を設けておくことによって、それらの突状部の先端で薄板部材を地板に密接させ得るようにしたため、地板に対する薄板部材の取り付けが簡単に行えるうえに、薄板部材とカバー板との間の間隔が突状部によって好適に得られ、しかも簡単にはカバー板が変形させられないという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した六つの実施例によって説明する。尚、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、デジタルカメラにもフィルムカメラにも採用することができるものであるが、各実施例は、情報端末機器に内蔵するカメラ用の羽根駆動装置として構成したものである。そのため、それらの作動は、デジタルカメラに採用された場合で説明する。尚、図面は、図1〜図3が実施例1を説明するためのものであり、図4〜図6が実施例2を説明するためのものである。また、図7〜図9は実施例3を説明するためのものであり、図10〜図12は実施例4を説明するためのものである。更に、図13〜図15は実施例5を説明するためのものであり、図16及び図17は実施例6を説明するためのものである。
【実施例1】
【0015】
図1〜図3を用いて実施例1を説明する。本実施例は、単体のシャッタ装置として構成したものである。そして、図1は、撮影待機状態を示した平面図であり、図2は、構成部材の重なり関係を説明するための断面図であり、図3は、撮影終了直後の状態を示した平面図である。そこで先ず、本実施例の構成を説明する。地板1は、合成樹脂製であり、多くの部材を取り付ける必要があるなどの理由により、図2に示されているように、比較的厚い部材である。また、本実施例の場合には、カメラに組み込まれたとき、図1においては地板1の背面側、即ち図2においては地板1の下方側に、図示していない撮影レンズが配置されることになる。そして、その撮影レンズを、後述するシャッタ羽根3の作動面に近接させて配置するようにするために、図2において、地板1の下面側には、光軸を中心にした円形の凹部1aが形成されて、そこに、撮影レンズが入り込むようになっている。
【0016】
更に、その凹部1aの奥には、光軸を中心にした円形の開口部1bが形成されている。一般に、このようにして地板1に形成されている開口部1bは、露光開口を規制するようにしているのが普通である。しかしながら、本実施例の場合には、カメラの組立上、撮影レンズが開口部1bの縁にぶつからないようにするために、開口部1bの直径が、露光開口の直径よりも大きく形成されていて、露光開口は、後述するように、薄板部材2に形成された開口部2aが規制するようにしている。従って、この開口部1bの形状は、本実施例のように、必ずしも円形である必要はない。尚、図1においては、この開口部1bが示されていないが、図2から推察できるように、後述するカバー板4の開口部4eと同じ直径をしている。
【0017】
本実施例の地板1は、図1に示されているように、その平面形状の外形が略四角形をしていて、その上辺周面と下辺周面に、夫々上方と下方に突き出た二つずつの係合部1c,1d,1e,1fが形成されており、左辺側の上方領域には、円弧状をした逃げ孔1gが形成されている。また、図1において、地板1の表面側には、羽根室の空間を設けるために、左辺側を開放した比較的浅い凹部1hが形成されていて、その底面に、羽根取付軸1iと、二つのストッパ軸1j,1kが立設されている。
【0018】
上記の凹部1h内には、金属製の薄板部材2が配置されている。この薄板部材2の平面形状は、凹部1hの平面形状よりも若干小さいが、類似の形状をしており、光軸を中心にして形成されている開口部2aの直径は、地板1の開口部1bよりも小さい。また、薄板部材2は、二つの孔2b,2cと、円弧状をした逃げ孔2dとを有している。それらのうち、孔2bは円形をしていて、上記の羽根取付軸1iに嵌合している。また、孔2cはD字形をしていて、上記のストッパ軸1kに嵌合している。更に、逃げ孔2dは上記の逃げ孔1gと全く同じ形状をしていて、両者は重ね合わされている。
【0019】
本実施例のシャッタ装置は、1枚のシャッタ羽根3を備えている。このシャッタ羽根3は、図1においては、上記の薄板部材2よりも手前側に配置されていて、上記の羽根取付軸1iに回転可能に取り付けられている。そして、このシャッタ羽根3は、羽根取付軸1iに近いところに小さな長孔3aを有しており、長さ方向の中央近辺には、羽根取付軸1iを中心にした円弧状の逃げ孔3bが形成されている。
【0020】
本実施例のカバー板4は、金属製であって略四角形をしており、図1における上辺と下辺に二つずつ形成された折り曲げ状のフック部4a,4b,4c,4dを、上記の係合部1c,1d,1e,1fに掛け止めし、地板1に取り付けられており、薄板部材2との間に羽根室を構成している。このカバー板4も、光軸を中心にして形成された開口部4eを有しているが、上記したように、この開口部4eの直径は地板1の開口部1bと同じである。そのため、本実施例の場合は、薄板部材2の開口部2aが露光開口を規制していることになるので、薄板部材2は、いわゆる口径規制板ということになる。しかしながら、カバー板4の開口部4eの直径を一番小さくして露光開口を規制するようにしても構わない。
【0021】
このカバー板4は、二つの孔4f,4gと、円弧状をした逃げ孔4hとを有している。また、開口部4eの近傍位置には、光軸を中心にした所定の角度間隔で三つの折曲部4i,4j,4kが形成されており、左辺の上下位置にも二つの折曲部4m,4nが形成されている。それらのうち、孔4fは、上記の孔2bと同じ大きさの円形をしていて、その孔2bに対向するように形成されており、そこに、上記の羽根取付軸1iの先端が挿入されている。また、孔4gは、円形をしていて、上記のD字形の孔2cに対向するように形成されており、そこに、上記のストッパ軸1kの先端が挿入されている。また、円弧状をした逃げ孔4hは、上記の逃げ孔1g,2dと同じ形状をしていて、逃げ孔2dに対向するように形成されている。更に、五つの折曲部4i,4j,4k,4m,4nは、カバー板4が地板1に取り付けられたことによって、いずれも、薄板部材2を地板1に密接させている。それらのうち、折曲部4i,4j,4kが、本発明の突状部であり、折曲部4jだけは、シャッタ羽根3の逃げ孔3bを貫通している。
【0022】
図1における地板1の背面側、即ち図2における地板1の下側には、電磁アクチュエータが取り付けられている。本実施例の電磁アクチュエータは、例えば、特開2006−284801号公報に記載されている周知のアクチュエータであるが、その構成自体は本発明とは直接関係がないので、図1及び図2bにおいては、十分理解できるようには図示されていない。しかしながら、以下、簡単に説明をしておく。先ず、永久磁石製の回転子5は、地板1に立設した回転子取付軸1mに回転可能に取り付けられている。この回転子5は、円筒形をしていて径方向へ2極に着磁された本体部5aと、本体部5aから径方向へ張り出した腕部5bと、腕部5bの先端に形成された出力ピン5cとからなっていて、その出力ピン5cは、上記の逃げ孔1g,2dを貫通し、羽根室内でシャッタ羽根3の長孔3aに嵌合し、その先端を上記の逃げ孔4hに挿入している。
【0023】
他方、図2においてだけ図示されている固定子は、固定子枠6と、コイル7と、ヨーク8とで構成されている。先ず、合成樹脂製の固定子枠6は、中空のボビン部6aを一体成形していて、そのボビン部6aにはコイル7が巻回されている。また、ヨーク8は、明示されていないが略U字形をしており、一方の脚部をボビン部6aの中空部に貫通させ、二つの脚部の先端部を磁極部として、回転子5の本体部5aの周面に対向させている。そして、固定子枠6は、適宜な手段で地板1に取り付けられていて、回転子5の抜け止めの役目もしている。
【0024】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は撮影待機状態を示したものである。このとき、カメラの電源スイッチはオンになっているが、コイル7には通電されていない。しかしながら、このときには、周知のように、回転子5には、ヨーク8の磁極部との間に作用している磁気的吸引力によって、図1において時計方向へ回転する力が与えられているが、シャッタ羽根3がストッパ軸1jに接触していることによって、この状態が確実に維持されている。そのため、固体撮像素子は被写体光にさらされており、被写体像をモニターで観察可能となっている。
【0025】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積開始によって撮影が開始する。その後、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、コイル7に正方向の電流が供給される。それによって、回転子5は反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根3を反時計方向へ回転させる。このとき、カバー板4の折曲部4jは、シャッタ羽根3の逃げ孔3b内に存在しているので、シャッタ羽根3の作動を妨げることはない。そして、シャッタ羽根3は、開口部2aを閉鎖すると、その直後に、ストッパ軸1kに当接して停止する。シャッタ羽根3の作動が停止すると、その状態で撮像情報が記憶装置に転送される。図3は、そのようにして行われた撮影終了直後の状態を示したものである。
【0026】
このようにして撮影が終了すると、コイル7に対して逆方向に電流が供給される。そのため、回転子5は、図3において時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根3を時計方向へ回転させる。その後、シャッタ羽根3は、開口部2aを全開にすると、その直後にストッパ軸1jに当接して停止する。そして、コイル7に対する通電が断たれると、図1に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0027】
尚、上記の作動は、本実施例のシャッタ装置が、デジタルカメラに採用された場合で説明したが、周知のように、フィルムカメラに採用された場合には、図3に示された状態が、撮影待機状態であって、シャッタ羽根3の往復回転の終了した時点が撮影終了時になる。また、本実施例は、1枚のシャッタ羽根3を備えたシャッタ装置であるが、シャッタ羽根3に開口部2bよりも小さな開口部を形成すれば絞り羽根になるので、そのように構成した場合は絞り装置になる。また、そのようにした絞り羽根にNDフィルタ板を取り付け、その小さな開口部を覆うようにすればフィルタ羽根になるので、そのように構成した場合には、フィルタ装置になる。そして、フィルタ装置の場合には、フィルタ羽根に、開口部2bよりも大きい開口部を形成してもよいし、下記の実施例5におけるフィルタ羽根を採用しても構わない。従って、それらのように構成した絞り装置やフィルタ装置も、本発明のカメラ用羽駆動装置である。
【実施例2】
【0028】
次に、図4〜図6を用いて実施例2を説明する。本実施例の羽根駆動装置は、上記の実施例1と同様に、シャッタ装置として構成したものであって、図4は、撮影待機状態を示した平面図であり、図5は、構成部材の重なり関係を説明するための断面図であり、図6は、撮影終了直後の状態を示した平面図である。本実施例のシャッタ装置の構成は、実施例1のシャッタ装置の場合と殆ど同じである。そのため、図4〜図6においては、実施例1の場合と実質的に同じ部材,部位に同じ符号を付けておき、実施例1とは異なる構成だけを説明する。
【0029】
本実施例の構成は、実施例1の構成において、シャッタ羽根3の一部の形状と、カバー板4の一部の形状が異なるだけである。先ず、本実施例のシャッタ羽根3は、円弧状の逃げ孔3bの幅が、実施例1の場合よりも大きくなっている。他方、実施例1においては、カバー板4の開口部4eの近傍位置に所定の角度間隔で形成されていた三つの折曲部4i,4j,4kが本発明の突状部であったが、本実施例の場合には、本発明の突状部を、薄板部材2に向けて球面形状に突き出された突出し部4p,4q,4rとして形成している。
【0030】
尚、本実施例の作動は、実施例1の場合と全く同じであるから、撮影終了直後の状態を図6に示しておき、説明を省略する。また、本実施例の場合にも、実施例1の説明の中で述べたように、シャッタ羽根3を、絞り羽根やフィルタ羽根に代えることによって、絞り装置やフィルタ装置とすることが可能である。更に本実施例の場合には、本発明の突状部として、突出し部4p,4q,4rを形成しているが、以下の各実施例において、本発明の突状部として形成されている折曲部を、このような形状にしても構わない。
【実施例3】
【0031】
次に、図7〜図9を用いて実施例3を説明するが、図7は、撮影待機状態を示した平面図であり、図8は、構成部材の重なり関係を説明するための断面図であり、図9は、撮影終了直後の状態を示した平面図である。本実施例の羽根駆動装置は、シャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものであるが、シャッタ装置としての構成は、上記の実施例1の場合と実質的に同じである。そのため、図7〜図9においては、実施例1の場合と実質的に同じ部材,部位に同じ符号を付けておき、実施例1とは異なる構成だけを説明する。
【0032】
本実施例の地板1は、実施例1の場合より一回り大きくなっている。そして、この地板1には、実施例1の場合と同じ羽根取付軸1iのほか、図7の右下方領域に、もう一つの羽根取付軸1nが立設されている。また、実施例1の場合と同じ円弧状の逃げ孔1gのほか、羽根取付軸1nの近傍領域に、円弧状の逃げ孔1pを形成している。また、ストッパ軸は、実施例1におけるストッパ軸1kが立設されておらず、実施例1の場合と同じストッパ軸1jのほか、三つのストッパ軸1q,1r,1sが立設されている。本実施例の薄板部材2は、実施例1の場合と同じ孔2b,逃げ孔2dのほか、羽根取付軸1nを嵌合させている孔2eと、逃げ孔1pに重ね合わせるようにして形成された円弧状の逃げ孔2fを有している。更に、本実施例の薄板部材2には、実施例1における孔2cを設けておらず、その代わりに、D字形の孔2gが形成されていて、そこに上記のストッパ軸1sを嵌合させている。そして、薄板部材2の外形形状は、ストッパ軸1q,1rを逃げるように形成されている。
【0033】
本実施例のシャッタ羽根3は、若干形状が異なるものの、実施例1の場合と実質的に同じ形状をしている。そして、本実施例の場合には、同じ羽根室内において、シャッタ羽根3よりもカバー板4側になるようにして、絞り羽根9が配置されている。この絞り羽根9は、長孔9aと、開口部2aよりも直径の小さな開口部9bと、円弧状の逃げ孔9cを有していて、上記の羽根取付軸1nに回転可能に取り付けられている。
【0034】
本実施例のカバー板4は、実施例1の場合と同じ孔4f,逃げ孔4hのほか、羽根取付軸1nを嵌合させている孔4sと、逃げ孔2fに対向するようにして同じ形状に形成された円弧状の逃げ孔4tとを有している。また、本実施例のカバー板4は、実施例1における孔4gを設けておらず、その代わりに、孔4u,4vを設けていて、そこに上記のストッパ軸1r,1sを嵌合させている。更に、本実施例のカバー板4は、実施例1における折曲部4kを設けておらず、本発明の突状部としては、実施例1の場合と同じ折曲部4i,4jのほかに、折曲部4w,4xを設けていて、折曲部4wを絞り羽根9の逃げ孔9cに貫通させている。
【0035】
本実施例には、実施例1で備えられていた電磁アクチュエータのほかに、絞り羽根9を駆動するためのもう一つの電磁アクチュエータが備えられている。その電磁アクチュエータの構成は、シャッタ羽根3を駆動するための電磁アクチュエータと同じ構成をしているので、図8を用いて簡単に説明する。永久磁石製の回転子10は、円筒形の本体部10aと、腕部10bと、出力ピン10cとからなっていて、地板1に立設した回転子取付軸1tに回転可能に取り付けられている。そして、出力ピン10cは、上記の逃げ孔1p,2fを貫通し、羽根室内で絞り羽根9の長孔9aに嵌合し、その先端を上記の逃げ孔4tに挿入している。他方、固定子は、固定子枠11と、コイル12と、ヨーク13とからなっていて、固定子枠11のボビン部11aにはコイル12が巻回されている。また、略U字形をしたヨーク13は、一方の脚部をボビン部11aの中空部に貫通させ、二つの脚部の先端部を磁極部として、回転子10の本体部10aの周面に対向させている。そして、適宜な手段で地板1に取り付けられている固定子枠11は、回転子10の抜け止めの役目もしている。
【0036】
次に、本実施例の作動を説明する。図7は撮影待機状態を示したものである。このとき、カメラの電源スイッチはオンになっているが、コイル7,12には通電されていない。しかしながら、このときには、実施例1で説明したようにして、回転子5,10には、図7において、時計方向へ回転する力が与えられているが、シャッタ羽根3がストッパ軸1jに接触しており、絞り羽根9がストッパ軸1qに接触していることによって、この状態が確実に維持されている。そのため、固体撮像素子は被写体光にさらされており、被写体像をモニターで観察可能となっている。
【0037】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、測光回路の測定結果によって、撮影光量を減じて撮影するか、減じないで撮影するかが決定される。そして、撮影光量を減じて撮影すべきであると判断されたときには、先ず、コイル12に正方向の電流が供給される。それによって、回転子10は反時計方向へ回転させられる。そのため、絞り羽根9は、出力ピン10cによって時計方向へ回転させられる。このとき、カバー板4の折曲部4wは、絞り羽根9の逃げ孔9c内に存在しているので、絞り羽根9の作動を妨げることはない。そして、絞り羽根9は、開口部9bの中心が光軸位置に達すると、ストッパ軸1sに当接して停止させられる。
【0038】
絞り羽根9の作動が停止すると、その直後には、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積開始によって撮影が開始する。その後、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によってコイル7に正方向の電流が供給されるので、回転子5は反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根3を反時計方向へ回転させる。このとき、カバー板4の折曲部4jは、シャッタ羽根3の逃げ孔3b内に存在しているので、シャッタ羽根3の作動を妨げることはない。そして、シャッタ羽根3は、開口部2aを閉鎖すると、その直後に、ストッパ軸1rに当接して停止する。シャッタ羽根3の作動が停止すると、その状態で撮像情報が記憶装置に転送される。図9は、そのようにして行われた撮影終了直後の状態を示したものである。
【0039】
このようにして撮影が終了すると、コイル7,12に対して逆方向に電流が供給される。そのため、図9において、回転子5は、時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根3を時計方向へ回転させ、回転子10は、時計方向へ回転させられ、出力ピン10cによって絞り羽根9を反時計方向へ回転させる。その後、シャッタ羽根3は、開口部2aを全開にすると、その直後にストッパ軸1jに当接して停止し、絞り羽根9は、開口部2aから退くと、その直後にストッパ軸1qに当接して停止する。そして、コイル7,12に対する通電が断たれると、図7に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0040】
他方、撮影に際してレリーズボタンを押したとき、測光回路の測定結果によって、撮影光量を減じないで撮影すべきであると判断されたときには、上記の作動説明において、シャッタ羽根3が作動させられるだけである。即ち、実施例1の作動説明と同じことになる。従って、そのときの作動説明は省略する。尚、本実施例のカメラ用羽根駆動装置がフィルムカメラに採用された場合には、周知のように、シャッタ羽根3が、図9に示された状態にあり、絞り羽根9が図7に示された状態にあるようにしたときが撮影待機状態であって、撮影に際しては、先ず、絞り羽根9が図7の状態にさせられ、次に、シャッタ羽根3が図7に示された状態を経て図9に示された状態に復帰した後、絞り羽根9が図7に示された状態に復帰させられることになる。
【0041】
このように、本実施例は、1枚のシャッタ羽根3と1枚の絞り羽根9とを備えたカメラ用羽根駆動装置であるが、絞り羽根9を、その開口部9bをNDフィルタ板で覆うようにしたフィルタ羽根にすれば、1枚のシャッタ羽根3と1枚のフィルタ羽根とを備えたカメラ用羽根駆動装置になる。そして、そのような装置にする場合には、フィルタ羽根に、開口部2bよりも大きい開口部を形成するようにしてもよい。従って、それらのように構成した装置も、本発明のカメラ用羽駆動装置であって、このことは、下記の実施例4の場合にも言えることである。
【実施例4】
【0042】
次に、図10〜図12を用いて実施例4を説明するが、図10は、撮影待機状態を示した平面図であり、図11は、構成部材の重なり関係を説明するための断面図であり、図12は、撮影終了直後の状態を示した平面図である。本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、上記の実施例3と同様に、シャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものであるが、本実施例の場合には、薄板部材2とカバー板4の間を中間板14で仕切ることによって、薄板部材2と中間板14の間にシャッタ羽根3の羽根室を構成し、中間板14とカバー板4の間に絞り羽根9の羽根室を構成するようにしたものである。そのため、図10〜図12においては、実施例3の場合と実質的に同じ部材,部位に同じ符号を付けておき、実施例3とは異なる構成だけを説明する。
【0043】
本実施例の地板1には、中間板14を配置する関係で、実施例3の場合よりも深い凹部1hが形成されている。そして、その凹部1h内には、中間板14を受けて、薄板部材2との間に羽根室の空間が得られるようにするために、三つの受け部1u,1v,1wが設けられている。それらのうち、受け部1uは、カバー板4の折曲部4mに対応するところに、略長方形に形成されている。また、受け部1vは、カバー板4の折曲部4iに対応するところに、略D字形に形成されている。更に、受け部1wは、カバー板4の折曲部4wに対応するところに、円形に形成されている。そして、本実施例の薄板部材2は、受け部1wを嵌合させる孔2hを有しており、外形形状は、受け部1u,1vを逃げるように形成されているので、地板1に密接し得るようになっている。
【0044】
本実施例のシャッタ羽根3は、実施例3の場合と全く同じ形状である。また、上記の受け部1u,1v,1wに接触して、地板1との間隔を規制されている中間板14は、薄板部材2と類似の形状をしており、光軸を中心にして形成された開口部14aの直径は、薄板部材2の開口部2aの直径と同じである。そのため、本実施例の場合には、開口部2a,14aの両方が露光開口を規制していることになるが、いずれか一方だけで規制するようにしても差し支えない。この中間板14には、薄板部材2の孔2b,2e,2gと逃げ孔2d,2fに対向するところに、夫々同じ形状をした孔14b,14c,14dと逃げ孔14e,14fが形成されており、且つカバー板4の折曲部4jを貫通させるための孔14gが形成されている。そして、この中間板14の外形形状は、地板1のストッパ軸1j,1q,1rと、カバー板4の折曲部4n,4xを逃げるように形成されている。
【0045】
本実施例の絞り羽根9は、実施例3の場合と全く同じ形状である。また、本実施例のカバー板4も、平面形状は実施例3の場合と同じであるが、折曲部4j,4n,4xの方が、折曲部4i,4m,4wよりも長く形成されていて、折曲部4j,4n,4xは、実施例3のように、薄板部材2を地板1に密接するようにに押し付け、折曲部4i,4m,4wは、中間板14を地板1の受け部1v,1u,1wだけに押し付けて、二つの羽根室の間隔を維持するようにしている。本実施例のその他の構成は、実施例3の場合と全く同じである。尚、本実施例の作動は、実施例3の場合と全く同様にして行われるので、その説明を省略する。
【実施例5】
【0046】
次に、図13〜図15を用いて実施例5を説明するが、図13は、撮影待機状態を示した平面図であり、図14は、構成部材の重なり関係を説明するための断面図であり、図15は、撮影終了直後の状態を示した平面図である。本実施例の羽根駆動装置は、シャッタ装置とフィルタ装置とを一つのユニットとして構成したものであるが、実施例3の構成との相違点は、主に、実施例3における絞り羽根9がフィルタ羽根15に置き換えられた点にあるため、図13〜図15においては、実施例3の場合と同じ部材,部位には同じ符号を付けておき、実施例3とは異なる構成だけを説明する。
【0047】
本実施例の地板1には、実施例3におけるストッパ軸1sが立設されておらず、代わりにストッパ軸1xが立設されている。そのため、薄板部材2とカバー板4には孔2g,4vが形成されていない。その代わりに、カバー板4には、ストッパ軸1xの先端を挿入する孔4yが形成されており、薄板部材2の方は、ストッパ軸1xを逃げる外形形状になっている。本実施例のフィルタ羽根15は、図14から分かるように、3枚の板部材を重ねて構成されている。このように構成されたフィルタ羽根15は、周知であって、真中に挟まれている板部材15aはNDフィルタ板である。また、両側の板部材15b,15cは金属製の板部材であって、本実施例の場合には、開口部2aよりも直径の大きな開口部15b−1,15c−1が形成されているが、開口部2aよりも直径を小さくしても構わない。また、このフィルタ羽根15は、実施例3の絞り羽根9と同じように、長孔15Aと、円弧状をした逃げ孔15Bを有していて、羽根取付軸1nに回転可能に取り付けられている。そして、長孔15Aには回転子10の出力ピン10cが嵌合していて、逃げ孔15Bには、カバー板4の折曲部4wが貫通している。尚、本実施例の作動は、実施例3の場合と全く同じであるから、撮影終了直後の状態を図15に示しておき、説明を省略する。
【実施例6】
【0048】
最後に、図16及び図17を用いて実施例6を説明するが、図16は、撮影待機状態を示した平面図であり、図17は、撮影終了直後の状態を示した平面図である。上記の実施例1の羽根駆動装置が、1枚のシャッタ羽根3を備えたシャッタ装置であったのに対し、本実施例の羽根駆動装置は、2枚のシャッタ羽根23,24を備えたシャッタ装置である。そのため、本実施例の構成は、シャッタ羽根の枚数が異なるだけであって、基本的には、実施例1に準じた構成をしている。しかしながら、各部材の配置位置や形状などに差異があるため、実施例1の場合とは符号を変えて説明することにする。但し、電磁アクチュエータの構成自体は、実施例1の場合と全く同じであるため、本実施例の説明には断面図を用いることなく、図16及び図17に示されている回転子5と回転子取付軸1mには、図1及び図2の場合と同じ符号を付けている。
【0049】
そこで先ず、本実施例の構成を説明するが、上記したように、基本的には、実施例1の構成と酷似しているので、実施例1の説明から十分理解できると思われる点については、説明を簡単にすることにする。地板21は、合成樹脂製であり、カメラに組み込まれたときには、図16及び図17の背面側に、撮影レンズが配置されることになる。そのため、地板21の背面側には、大きな凹部21aが円形に形成されおり、さらに、光軸を中心にして、後述のカバー板25の開口部25eと同じ直径の開口部21bも形成されている。また、本実施例の地板21の平面形状は、実施例1の地板1の形状とは異なるが、その上方の周面と下方の周面に、夫々二つずつの係合部21c,21d,21e,21fが形成されており、左上方領域には、円弧状をした逃げ孔21gが形成されている。また、図1において、地板1の表面側の殆どの領域には、凹部21hが形成されていて、その底面に、二つの羽根取付軸21i,21jと、四つのストッパ軸21k,21m,21n,21pが立設されている。
【0050】
凹部21h内に配置されている金属製の薄板部材22には、光軸を中心にして開口部22aが形成されおり、その直径は、地板21の開口部21bよりも小さく、露光開口を規制するようになっている。この薄板部材22は、四つの孔22b,22c,22d,22eと、円弧状をした逃げ孔22fとを有している。それらのうち、孔22b,22cは,上記の羽根取付軸21i,21jに嵌合している。また、孔22d,22eは、上記のストッパ軸21n,21pに嵌合している。更に、逃げ孔22fは上記の逃げ孔1gと全く同じ形状をしていて、両者は重ね合わされている。そして、この薄板部材22の外形形状は、ストッパ軸21k,21mを逃げるように形成されている。
【0051】
本実施例のシャッタ装置は、薄板部材22とカバー板25の間に、2枚のシャッタ羽根23,24を備えている。それらのうち、薄板部材22側に配置されているシャッタ羽根23は、上記の羽根取付軸21iに回転可能に取り付けられている。他方、カバー板25側に配置されているシャッタ羽根24は、上記の羽根取付軸21jに回転可能に取り付けられている。そして、それらのシャッタ羽根23,24は、長孔23a,24aと、円弧状の逃げ孔23b,24bを有しており、長孔23a,24aの両方に、回転子5の出力ピン5cが嵌合している。
【0052】
本実施例のカバー板25は、折り曲げ状をした四つのフック部25a,25b,25c,25dを、上記の係合部21c,21d,21e,21fに掛けて、地板21に取り付けられており、薄板部材22との間に羽根室を構成している。このカバー板25には、光軸を中心にして形成された開口部25eが形成されているが、その直径は、薄板部材22の開口部22aよりも小さい。
【0053】
また、このカバー板25は、四つの孔25f,26g,25h,25iと、円弧状をした逃げ孔25jとを有しているほか、開口部25eの近傍位置には、光軸を中心にした所定の角度間隔で二つの折曲部25k,25mが形成されており、上方位置と左方位置にも折曲部25n,25pが形成されている。そして、それらのうち、孔25f,25gは、上記の孔22b,22cに対向して形成されており、それらに上記の羽根取付軸21i,21jの先端が挿入されている。また、孔25h,25iは、上記の孔22d,22eに対向して形成されており、それらに上記のストッパ軸21n,21pの先端が挿入されている。また、逃げ孔25jは、上記の逃げ孔22fに対向して形成されており、そこに、回転子5の出力ピン5cの先端が挿入されている。更に、四つの折曲部25k,25m,25n,25pは、いずれも、薄板部材22を地板21に密接させている。
【0054】
次に、本実施例の作動を説明する。図16は撮影待機状態を示したものである。このとき、カメラの電源スイッチはオンになっているが、コイル7には通電されていない。しかしながら、回転子5には、反時計方向へ回転する力が与えられており、シャッタ羽根23,24がストッパ軸21k,21mに押し付けられていることによって、この状態が確実に維持されている。撮影に際してレリーズボタンを押すと、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積開始によって撮影が開始する。その後、所定の時間が経過すると、コイル7に逆方向の電流が供給されるので、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根23を時計方向へ、シャッタ羽根24を反時計方向へ回転させる。このとき、カバー板25の折曲部25kは、シャッタ羽根23,24の逃げ孔23b,24の中に存在しているので、シャッタ羽根23,24の作動を妨げることはない。
【0055】
そして、シャッタ羽根23,24は、開口部22aを閉鎖すると、その直後に、ストッパ軸21n,21pに当接して停止する。シャッタ羽根23,24の作動が停止すると、その状態で撮像情報が記憶装置に転送される。図17は、そのようにして行われた撮影終了直後の状態を示したものである。このようにして撮影が終了すると、コイル7に対して正方向に電流が供給される。そのため、回転子5は、図17において反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根23を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根24を時計方向へ回転させる。その後、シャッタ羽根23,24は、開口部2aを全開にすると、その直後にストッパ軸21k,21mに当接して停止する。そして、コイル7に対する通電が断たれると、図16に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0056】
尚、上記の作動は、本実施例のシャッタ装置が、デジタルカメラに採用された場合で説明したが、フィルムカメラに採用された場合には、周知のように、図17に示された状態が、撮影待機状態になる。また、上記の実施例3〜5においては、シャッタ装置を、本実施例のシャッタ装置に置き換えることも可能である。そのため、そのように構成したものも、本発明のカメラ用羽根駆動装置である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】撮影待機状態を示した実施例1の平面図である。
【図2】構成部材の重なり関係を説明するための実施例1の断面図である。
【図3】撮影終了直後の状態を示した実施例1の平面図である。
【図4】撮影待機状態を示した実施例2の平面図である。
【図5】構成部材の重なり関係を説明するための実施例2の断面図である。
【図6】撮影終了直後の状態を示した実施例2の平面図である。
【図7】撮影待機状態を示した実施例3の平面図である。
【図8】構成部材の重なり関係を説明するための実施例3の断面図である。
【図9】撮影終了直後の状態を示した実施例3の平面図である。
【図10】撮影待機状態を示した実施例4の平面図である。
【図11】構成部材の重なり関係を説明するための実施例4の断面図である。
【図12】撮影終了直後の状態を示した実施例4の平面図である。
【図13】撮影待機状態を示した実施例5の平面図である。
【図14】構成部材の重なり関係を説明するための実施例5の断面図である。
【図15】撮影終了直後の状態を示した実施例5の平面図である。
【図16】撮影待機状態を示した実施例6の平面図である。
【図17】撮影終了直後の状態を示した実施例6の平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,21 地板
1a,1h,21a,21h 凹部
1b,2a,4e,9b,14a,15b−1,15c−1,21b,22a,25e 開口部
1c〜1f,21c〜21f 係合部
1g,1p,2d,2f,3b,4h,4t,9c,14e,14f,15B,21g,22f,23b,24b,25j 逃げ孔
1i,1n,21i,21j 羽根取付軸
1j,1k,1q〜1s,1x,21k,21m,21n,21p ストッパ軸
1m,1t 回転子取付軸
1u〜1w 受け部
2,22 薄板部材
2b,2c,2e,2g,2h,4f,4g,4s,4u,4v,4y,14b〜14d,14g,22b〜22e,25f〜25i 孔
3,23,24 シャッタ羽根
3a,9a,15A23a,24a 長孔
4,25 カバー板
4a〜4d フック部
4i〜4k,4m,4n,4w,4x,25k,25m,25n,25p 折曲部
9,10 回転子
5a,19a 本体部
5b,10b 腕部
5c,10c 出力ピン
6,11 固定子枠
6a,11a ボビン部
7,12 コイル
8,13 ヨーク
9 絞り羽根
14 中間板
15 フィルタ羽根
15a,15b,15c 板部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を中心にして形成された開口部を有している合成樹脂製の地板と、光軸を中心にして前記開口部よりも小さく形成された開口部を有していて前記地板に重合されている薄板部材と、光軸を中心にして形成されていて前記薄板部材の開口部との少なくとも一方によって露光開口を規制する開口部と該開口部の周辺近傍位置において前記薄板部材に向けて設けられた少なくとも一つの突状部とを有していて前記地板に取り付けられたとき該突状部を前記薄板部材に接触させるようにして前記薄板部材との間に羽根室を構成しているカバー板と、前記突状部を貫通させた逃げ孔を有していて前記羽根室内において前記地板に対して回転可能に取り付けられており往復回転させられることによって前記露光開口に進退させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記羽根室内においては、同一の駆動源によって同時に相反する方向へ回転させられる2枚の羽根が、夫々地板に対して回転可能に取り付けられており、前記逃げ孔は、それらの羽根のうちの両方に形成されていて、それらの逃げ孔には同じ前記突状部を貫通させていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記カバー板は、前記突状部を少なくとも二つ有しており、また、前記羽根室内においては、第1の駆動源によって往復回転させられる第1羽根と、第2の駆動源によって往復回転させられる第2羽根とが、各々、前記地板に対して回転可能に取り付けられており、それらの羽根には各々前記逃げ孔が形成されていて、該逃げ孔の各々には、異なる前記突状部を貫通させていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記薄板部材と前記カバー板との間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、一方の羽根室には前記第1羽根を配置し、他方の羽根室には前記第2羽根を配置しており、該中間板は、光軸を中心にして形成されていて前記薄板部材及び前記カバー板の各々の開口部との少なくとも一つによって露光開口を規制する開口部と、前記突状部を貫通させる少なくとも一つの孔とを有していることを特徴とする請求項3に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記カバー板には、前記中間板に向けて、前記突状部と略同じ形状をした少なくとも一つの突状部が設けられていて、該突状部は、前記カバー板が前記地板に取り付けられたとき、前記中間板を前記地板に押圧していることを特徴とする請求項4に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記突状部が、前記カバー板の板面からの折り曲げ形状をしていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項7】
前記突状部が、前記カバー板の板面から突き出された形状をしていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項8】
前記カバー板は、その周辺部に折り曲げ形状をしていて弾性を有する複数のフック部を有しており、また前記地板は、その周辺部に複数の係合部を有していて、前記カバー板は、該フック部を該係合部に掛け止めすることによって前記地板に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−86419(P2009−86419A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257382(P2007−257382)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】