カメラ
【課題】 レンズ内の被駆動部材を精度良く駆動、停止することができるカメラを提供する。
【解決手段】 レンズ装着部に装着されたレンズ内の被駆動部材を駆動するための駆動部の作動特性値を検出する検出部を備える。制御部は、予め決められた所定のタイミングで、駆動部を作動させ、レンズ内の被駆動部材を所定量だけ予備駆動し、該予備駆動中に、駆動部の作動特性値を検出部に検出させる予備駆動制御部を含む。制御部は、検出された予備駆動中の駆動部の作動特性値に基づいて、駆動部の本番の駆動の制御を行う。
【解決手段】 レンズ装着部に装着されたレンズ内の被駆動部材を駆動するための駆動部の作動特性値を検出する検出部を備える。制御部は、予め決められた所定のタイミングで、駆動部を作動させ、レンズ内の被駆動部材を所定量だけ予備駆動し、該予備駆動中に、駆動部の作動特性値を検出部に検出させる予備駆動制御部を含む。制御部は、検出された予備駆動中の駆動部の作動特性値に基づいて、駆動部の本番の駆動の制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラからレンズの絞りを駆動するカメラシステムが提供されている。
【0003】例えば特開昭58−224336号公報には、モータを内蔵するカメラにおいて、チャージ動作によって絞り装置の復帰動作を行うことにより、復帰用の付勢手段を不要にする技術が開示されている。この公報には、カメラ側のモータで絞りを駆動し、マグネットメカで絞りを停止すること、ボディとレンズの間の接合部は、絞り駆動リングの片押し機構とすることが開示されている。
【0004】特開昭59−229531号公報には、交換レンズの絞り込みを、カメラに内蔵した専用モータで行うことにより、小型で小出力のモータを用い得るようにする技術が開示されている。この公報には、ボディとレンズの間の接合部は直進レバーとレンズ側絞りレバーとすること、停止位置出しは交換レンズ側であることが開示されている。
【0005】特開平8−95145号公報には、レンズ交換式カメラの絞り駆動機構とフォーカス駆動機構を、レンズマウント部の所定位置にある2組のカプラー(先端にキーをもつ軸)で結合する技術が開示されている。連結部での係合の際は、カプラーを少なくとも1回転させればよいので、交換レンズ側メカの位置合わせが不要で、ばね付勢のない絞り駆動系に適している。しかし、連結部を切り離した非係合状態を作るために退避機構などが必要となる。モータにより駆動/停止される駆動機構は、ブレーキをかけた時点から完全に停止する時点までに、必ずオーバランを生じる。その主な原因は、駆動源であるモータの停止特性、駆動機構の構成(例えばギヤ比、伝達特性)、被駆動部材の負荷あるいは慣性などである。
【0006】制御に関しては、制御系の遅れを考慮して早めに動作させる技術が知られている。
【0007】例えば特開昭57−29035号公報に、可動絞り部材の運動距離を算定し,この距離だけ絞り値位置より前の位置に絞り部材が達した時に絞り停止を開始させることにより,高精度の絞り量制御を行うことが開示されている。
【0008】また、特公平8−27475号公報(特願昭57−93401の分割出願)には、絞り口径を変える駆動機構を絞り連動部材を介して電動駆動し、絞り連動部材の変位量を検出し変位信号と速度信号を発生し、速度検出手段からの速度信号に基づいて、変位検出手段からの変位信号に補正を加え、絞り連動部材を所定位置で停止するように制御する技術が開示されている。
【0009】ブレーキ前の速度を検出してモータのブレーキオーバーラン量を予測する一般的方法としては、例えば特開平6−67269号公報に、フィルム給送の速度を減速する減速制御手段と、モータを逆駆動させることによりフィルム給送を停止させる逆駆動ブレーキ手段と、フィルム給送の速度を検知する速度検知手段と、速度検知手段の出力に基づいて減速制御手段と逆駆動ブレーキ制御手段とを制御するブレーキ制御手段とをもつフィルム給送装置が開示されている。しかし、ブレーキによる減速度合い(負の加速度)が条件によって変動すると誤差が生じる。
【0010】また、特開平6−18764号公報には、焦点検出手段の検出信号に基づいて、自動焦点調節が行われる撮影光学系をもつレンズ鏡筒において、自動焦点調節時に撮影光学系の駆動制御状態を変更するために、撮影光学系の負荷トルクに関する情報(負荷、慣性に関するデータ)を記憶する記憶手段を備えることが開示されている。しかし、データを持っていないレンズへの対応や、経時変化を含むレンズ個体差への対応が困難である。
【0011】特開平7−181573号公報には、回転量に対応した信号を出力するエンコーダに基づいてモータを制御するカメラにおけるモータ制御方法において、モータを停止する際に予め設定した動作位置と速度の関数で表されるブレーキ線に沿うようにモータ速度を変化させてフィルムを目標位置に停止させる技術が開示されている。しかし、制御が大変忙しく、制御装置への負担がかかり、他の制御を同時に行うことができない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】交換レンズ側にモータを内蔵しない安価なシステムで、必要時に必要なだけ絞りを駆動するため、カメラ本体側のモータで駆動すると、モータから被駆動部材が遠いのでメカ連動系が長くなる。長い連動系のメカ的ガタをガタ寄せして、絞り停止性能を安定させようとすると、絞り制御部材に対するばね付勢が必要となる。また、交換レンズ内にばね付勢機構がないと、ボディとレンズと境界部の交換レンズ側部材の位置が不定となるので、カメラ本体側の係合部材に退避機構などが必要になる。逆に交換レンズ内にばね付勢機構があれば、片押しメカが採用でき、ボディとレンズの境界のメカ連結部が簡素になる。
【0013】カメラ本体側のDCモータでばね付勢機構をもつ交換レンズ側メカを駆動すると、DCモータの通電時は正逆任意の方向に駆動できるが、DCモータヘの通電を断つとばね力に対抗して停止状態を維持するのが困難になる。これはDCモータの出力軸のもつ静止力が磁気的コキングと摩擦だけであるためで、この静止力のみでばね力に対抗して停止状態を維持するにはメカ伝達系の減速比を大きくする必要がでてくる。
【0014】絞り駆動時間を短縮するためにロータの慣性モーメントが小さい小型DCモータを採用するとコキングトルクも小さくなるので、なおさら高減速比が必要となる。
【0015】カメラ本体側にステップモータを採用すると、同じ磁極に通電し続けることでばね力に対抗して停止状態を維持することができるが、ステップモータの発生トルクは一般的に小さいので駆動トルクを稼ぐためにやはり減速比を大きくする必要が生じる。
【0016】モータのみでばね力に対抗して停止状態を維持できるくらい高減速比にすると、所定量絞り込むのに必要なモータ軸回転量が増えるので、絞り込み動作時間が長くなってしまうという問題が生じる。紋込み時間は、撮影者がシャッタ釦を押してから実際に露光するまでのタイムラグを左右する一要因であるので、短時間で済むことが望ましい。
【0017】また、交換レンズ内にモータを必要としない構成で、しかも絞りの連続駆動のためにカメラ本体側モータの正逆回転で絞り駆動しようとすると、動作時間と止まり位置精度の相反する問題が生じる。
【0018】つまり、動作時間が長くならないように考慮して、カメラ本体側モータからレンズ内の絞りまでの減速比をできる限り小さくすると、各種バラツキの影響が大きくなる。そこで各種バラツキの影響を補正してモータ停止制御を行うには、絞り駆動用モータメカ全体の加減速特性の把握が必要となる。
【0019】しかし、不特定多数の交換レンズを含む駆動メカの特性を事前予測するのは難しく、さらに、交換レンズの機種や個体差による負荷条件のバラツキや、モータ駆動用の電源条件バラツキも考慮しようとすると、ほとんど不可能である。
【0020】したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、レンズ内の被駆動部材を精度良く駆動、停止することができるカメラを提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段および作用・効果】本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のカメラを提供する。
【0022】カメラは、レンズが装着されるレンズ装着部と、該レンズ装着部に装着された上記レンズ内の被駆動部材を駆動するための駆動部と、該駆動部の制御を行う制御部とを備えたタイプのものである。カメラは、上記駆動部の作動特性値を検出する検出部を備える。上記制御部は、予備駆動制御部を含む。該予備駆動制御部は、予め決められた所定のタイミングで、上記駆動部を作動させ、上記レンズ内の上記被駆動部材を所定量だけ予備駆動し、該予備駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値を上記検出部に検出させる。上記制御部は、該検出された上記予備駆動中の上記駆動部の上記作動特性値に基づいて、上記駆動部の本番の駆動の制御を行う。
【0023】上記構成によれば、本番の駆動の前に、駆動部を予備的に駆動し(これを「予備駆動」ともいう)、予備駆動中に駆動部の特性値を検出することにより、レンズ側を含む駆動系の負荷条件のバラツキ(交換レンズの機種や個体差による負荷条件のバラツキも含む)や、電源条件のバラツキ等が駆動部の作動状態に与える影響を把握することができる。これにより、本番の駆動は、事前に検出した予備駆動中の特性値を考慮して、高精度な制御を行うことが可能となる。
【0024】したがって、レンズ内の被駆動部材を精度良く駆動、停止することができるカメラを提供することができる。
【0025】好ましくは、上記制御部は、上記駆動部の本番の駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値の少なくとも一部を上記検出部に検出させ、該検出結果をも考慮して、その後の上記駆動部の制御を行う。
【0026】上記構成によれば、予備駆動後本番の駆動時までに、時間の経過や周囲温度の変化等により駆動系の負荷特性や電源条件等が変化し、駆動部の作動特性値が変動しても、本番の駆動中に駆動部の作動特性値の少なくとも一部(例えば、加速時の特性値)を検出するので、その検出結果を考慮し、より適切な駆動部の作動特性値(例えば、減速時の特性値)を想定して、その後の駆動部の制御を行うことができる。したがって、駆動精度をより高めることができる。
【0027】具体的には、以下のように構成する。
【0028】好ましくは、上記被駆動部材は、上記レンズ装着部に装着された上記レンズ内の絞り口径を変化させる機構の部材である。レンズの絞りは、止まり精度が要求されるので、本発明の適用は特に好適である。
【0029】好ましくは、上記予備駆動制御部が上記駆動部を作動させる上記所定のタイミングは、上記レンズ装着部に上記レンズが装着されたことを検知した時、又はカメラ本体に電源が供給された時、又はカメラ本体の電源スイッチがオンになった時である。この場合、カメラに既存の検出スイッチ等を用いることができ、特別な部材を必要としない。また、予備駆動をレンズのリセット動作に含めることができる。
【0030】好ましくは、上記検出部は、上記駆動部の作動量と作動時間とを検出する。上記作動特性値は、機構偏差量(メカ的なガタ・ずれ、メカのばね性など)を含む上記駆動部の加速特性および減速特性に関わる特性値である。例えば、作動量と作動時間とにより速度を求め、これをパラメータとする加速時および減速時の特性値を求めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態に係るカメラについて、図面を参照しながら説明する。
【0032】図1は、カメラ本体側の絞り機構の概略構成を示す。
【0033】カメラ本体10には、交換レンズを装着するためのマウント20と、装着された交換レンズの絞りをカメラ側から駆動するための絞り駆動レバー32を有する絞り駆動リング30が配置されている。絞り駆動リング30の内側には、信号端子22が設けられ、交換レンズ側の信号端子と電気的に接続するようになっている。また、マウント20の近傍には、交換レンズの着脱操作を検知するレンズ着脱操作検知スイッチ26が設けられている。
【0034】絞りリング30は、絞りモータ110により、絞り駆動機構100を介して回転駆動されるようになっている。絞り駆動機構100は、詳しくは後述するが、減速機構、摩擦ブレーキ機構、エンコーダを含む。絞り駆動リング30は、開放端Aと絞り込み端Cとの間を作動範囲Bとして回転するようになっている。絞り込み端C側には、絞り駆動リング30の回転を阻止するストッパ38が設けられている。開放端A側には、絞り駆動リング30が開放端Aに達したことを検知する開放検知スイッチ24が設けられている。絞りリング30は、付勢ばね108(図1では、概念的に示している)により開放端A側に付勢されるようになっている。
【0035】図2は、交換レンズ側の絞り機構の要部斜視図である。
【0036】カメラ本体10側の絞りリング30に設けられた絞り駆動レバー32は、交換レンズ200側の絞り駆動リング210に突設された絞り駆動レバー212に係合するようになっている。絞り駆動レバー212は、交換レンズ200内の付勢ばね202により、絞りを閉じる方向(以下、「絞り込み方向」という)に付勢され、カメラ本体10側の絞り駆動レバー32がこれに抗して、絞りを開く方向(以下、「絞り開放方向」という)に回転駆動するようになっている。
【0037】交換レンズ200側の絞り駆動リング210には、光軸方向に延在する連動ホーク214が設けられている。連動ホーク214の先端は、羽根駆動操作板220に突設さた連動ピン224と係合し、絞り駆動リング210と一体的に羽根駆動操作板220が回転するようになっている。羽根駆動操作板220の係合222に係合する羽根駆動ピン223は、不図示の絞り羽根支持板によりその支持軸232が回転自在に支持された絞り羽根230に係合し、羽根駆動操作板220の回転に連動して絞り羽根230が支持軸232を中心に回転して角度が変わり、複数の絞り羽根230(図2では、一つだけ図示している)によって形成される開孔すなわち絞りの大きさが変わるようになっている。
【0038】図3は、カメラ本体10側に配置される絞り駆動機構100の詳細構成図である。
【0039】絞りモータの回転110は、その出力軸に固定された出力歯車112、第1歯車120、第2歯車130、第3歯車160、伝達歯車170を介して、絞り駆動リング30に伝達される。
【0040】詳しくは、絞りモータ110に隣接し、固定部材150により回転自在に支持された回転軸140が配置され、その回転軸140に第2歯車130が回転自在に外嵌し、さらに、第2歯車130の上部に第1歯車120が回転自在に外嵌するようになっている。
【0041】固定部材150と回転軸140とは絞り込み方向摩擦ブレーキばね106が配置され、回転軸140と第2歯車130の間には開放方向摩擦ブレーキばね104が配置され、第2歯車130と第1歯車120との間には過負荷防止ばね102が配置されている。摩擦ブレーキばね104,106は、詳しくは後述するように、駆動方向によって摩擦ブレーキのブレーキトルクが異なるように設定されている。
【0042】第1歯車120は、出力歯車112に噛合する歯車部122を有し、過負荷防止ばね102を介して、第2歯車130と結合され、所定以下のトルクのときには、第1歯車120と第2歯車130とは一体的に回転するようになっている。
【0043】第2歯車130は、第3歯車160に噛合する歯車部132と、エンコーダスリット板134とを有する。エンコーダスリット板134には、複数のスリット136が放射状に形成されている。エンコーダスリット板134を挟むように、2相エンコーダ用のセンサであるフォト・インタラプタ180の受光部と発光部とが配置されている。フォト・インタラプタ180は、一つの発光部と、2つの受光部を有し、エンコーダスリット板134のスリット136を、位相をずらして検知でき、これにより、エンコーダスリット板134の回転方向の検知もできるようになっている。
【0044】第3歯車160は、第2歯車130の歯車部132と噛合する第1歯車部162と、伝達歯車170に噛合する第2歯車部164を有する。第3歯車160は、開放方向付勢ばね108(図1では、概念的に示している)により、開放方向に付勢されるようになっている。
【0045】伝達歯車170は、その一端に、第3歯車160の第2歯車部164と噛合する第1歯車部172を有し、他端には、絞り駆動リング30に形成された歯車部31に噛合する第2歯車部174を有する。
【0046】摩擦ブレーキばね104,106は、軸に巻きつくコイル部と、コイル部から径方向に延在する腕とを有し、軸に対して腕を、コイル部の巻き方向に動かすとコイル部が締まり、逆方向に動かすとコイル部が緩む、いわゆるばねクラッチである。
【0047】後述の開放方向の摩擦ブレーキの滑りトルク設定値TFO、絞り込み方向の摩擦ブレーキの滑りトルク設定値TFCは、ばねの緩みトルクで決まる値である。開放方向駆動時は、開放方向摩擦ブレーキばね104が緩み、絞り込み方向摩擦ブレーキばね106は締まるので、トルクはTFOとなる。このとき、回転軸140は回転せず、止まっている。絞り込み方向駆動時は、開放方向摩擦ブレーキばね104が締まり、絞り込み方向摩擦ブレーキばね106は緩むので、トルクはTFCとなる。このとき、回転軸140は第2歯車130と一体的に回転する。
【0048】図4は、絞り駆動機構の静的力量バランスの説明図である。
【0049】3本ラインの示すトルク値は、いずれも摩擦ブレーキ機構が設けられている回転軸140上に作用するトルクに換算した値である。TFOは、開放方向摩擦ブレーキの滑りトルク設定値である。TBは、カメラ本体10内の開放方向付勢ばね108によるトルクである。TLは、絞り込みに付勢するレンズ200側の付勢ばね202によるトルクである。絞りモータ110が非作動時に、静止可能な条件はTFO>TB−TLである。
【0050】絞りモータ110で開放方向に駆動するときには、トルク(TFO−TB+αLTL)を駆動することになる。ここで、αLは、回転軸140からレンズ200までの間の伝達効率により決まる値で、チャージ/レリーズの方向により力量にヒステリシスが生じることと関係している。なお、αL>1である。
【0051】逆に、絞りモータ110で絞り込み方向に駆動するときには、トルク(TFC+αBTB−TL)を駆動することになる。αBは、先と同じく、回転軸140から開放方向付勢ばね108を設けた第3歯車160までの間の伝達効率によって決まる値である。なお、αB>1である。
【0052】ここで、開放方向の負荷トルクは、静的力量バランスから自動的に決まる必要トルクであるが、絞り込み方向の場合、TFCには静的条件制約がないので、極端な場合には、TFC=0でもかまわない。
【0053】実際には、機構上の制約で、簡単な構成で一方向回転のみに摩擦をかけるのは困難なので、滑りトルクの異なる2つのばねクラッチ104,106を用いて、TFO≫TFCとなるようにしている。これによって、絞り込み時間を長くすることなく、モータ駆動できる
【0054】図5は、制御系のシステム構成を示すブロック図である。
【0055】カメラ全体の制御を統括する制御回路50には、プログラムやデータを記憶する記憶回路51と、測光のための測光回路52と、シャッタを駆動するためのシャッタ駆動回路53と、絞り値を設定するための絞り設定入力装置54と、絞りモータ110を駆動するための絞りモータ駆動回路55とが接続されている。また、制御回路50には、シャッタ釦の半押し(途中までの押し込み)等でオンになる起動スイッチS1と、シャッタ釦の全押し(完全な押し込み)等でオンになるレリーズスイッチS2と、図1の開放検知スイッチ24に対応する絞り開放検知スイッチSAと、メインスイッチS0と、プレビュー釦の操作によりオンになるプレビュースイッチSPと、図1のレンズ着脱操作検知スイッチに対応するレンズ着脱操作検知スイッチSLと、絞り駆動機構100の回転を検出する2相エンコーダ180とが接続されている。制御回路50は、CPU、タイマー、カウンタ等を含む。
【0056】さらに、カメラ本体に交換レンズが装着されると、制御回路50は、交換レンズ内のレンズ側回路250と接続される。また、本体側絞り駆動リング30の絞り駆動レバー32は、レンズ側絞り駆動リング210の絞り駆動レバー212に係合する。
【0057】図6は、一駒撮影時のカメラの動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0058】起動スイッチS1がオンになるのを待ち(#10)、オンになると(#10でYES)、測光を行い(#12)、その結果に基づいて露光条件を決定する(#14)。これと並行して、測距を行い(#16)、合焦動作を行う(#18)。
【0059】そして、レリーズスイッチS2がオンになるのを待つ(#20)。
【0060】レリーズスイッチS2がオンになると(#20でYES)、露光前のメカ・レリーズ動作を行う。すなわち、シャッタのマグネット吸着を行い(#22)、シャッタの係止を抜くとともにミラーアップを行い(#24)、ミラーの振動がおさまるまで所定時間待つ(#26)。これと並行して、絞り込み量PAを決定し(#28)、詳しくは後述する絞り込み制御を行う(#30)。
【0061】次に、フィルムへの露光動作を行う。すなわち、シャッタのマグネットを離反し(吸着を解除し)、シャッタを走行させる(#32)。
【0062】次に、露光後のメカ復帰動作を行う。すなわち、ミラーおよびシャッタのチャージを行い、フィルムを1駒巻き上げる(#34)。これと並行して、絞りモータ110を逆方向に回転させ(#36)、絞り復帰終了を検知したら(#38)、絞りモータ11を停止する(#40)。#38において、絞り開放検知スイッチSAがオンしてから所定時間T2待って、復帰終了と検知する。
【0063】図10は、ブレーキオーバーラン量予測の原理の説明図である。
【0064】図において、縦軸は絞りモータ110の回転速度n、横軸はモータの回転量(2相エンコーダ180で検知したパルス数)Pであり、絞りモータ110に通電して加速した後、逆通電ブレーキをかけて停止するまでの経過を示している。×印は、逆通電ブレーキの開始点である。絞り駆動の加速、減速特性は、電源の状態や、カメラに装着するレンズの種類により異なるが、これを係数k、rにより表すことができる。
【0065】すなわち、通電による加速中の回転量Pacは、通電開始からの経過時間tと、係数kとの関数f(k,t)により、Pac=f(k,t) (1)
と近似することができる。
【0066】また、逆通電ブレーキ中の回転量Pbkは、逆通電ブレーキ開始時のモータ回転速度nと、係数rとの関数g(r,n)として、Pbk=g(r,n) (2)
と近似することができる。
【0067】係数k,rは、図10の曲線を特定するパラメータであり、駆動部の加速特性および減速特性に関わる特性値である。これを求めるfの逆関数をi、gの逆関数をjとすると、k=i(Pac,t) (3)
r=j(Pbk,n) (4)
【0068】そこで、時間tとモータ回転量Pとをモニターすれば、(3)式により係数kを求めることができる。また、逆通電ブレーキ開始時のモータの回転速度nとモータ回転量とから、(4)式により係数rを求めることができる。
【0069】(1)式〜(4)式は具体的には、多項式により表現することが可能である。(1)式を例にとると次のように表現される。
Pac=k・(a0+a1・t+a2・t2+ … +an.tn)
ここで、a0〜anは予め設定された定数である。
【0070】絞りを所定量だけ予め駆動して求めた係数をk0、r0とし、本番では、逆通電ブレーキ開始前の点線で示したモニター位置で、パルス数とタイマー値、すなわち駆動部の作動量と作動時間とを検出し、(3)式により係数kを求める。そして、本番の逆通電ブレーキ中の係数rは、ブレーキに逆通電ブレーキを使うことを前提にしているので、加速および減速の強さが相関する、すなわち、r/k=r0/k0 (5)
と仮定し、rを次式により求める。
r=(r0/k0)×k (6)
【0071】この係数rを用いて、本番の逆通電ブレーキオーバーラン量を予測する。
【0072】図7は、絞りリセットの動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0073】メインスイッチS0がオン状態で新たに交換レンズの装着操作が行われたとき(#50でYES、かつ#52でYES)、又は、交換レンズが装着された状態でメインスイッチS0がオフからオンにされたとき(#50でNO、かつ#54でYES、かつ#56でYES)、予備駆動して特性を事前にモニターする。
【0074】すなわち、絞りモータ110を正転させ、絞りを所定量、すなわち2相エンコーダ180で検知するパルス数がP0に達するまで絞り込み(#58)、パルス数がP0に達するまでに要した絞り込み所要時間tF0と、パルス数がP0に達する直前のパルス幅時間tW0とを検知する(#60)。次に、2相エンコーダ180で2相パルスの反転を検知するまで、絞りモータ110に逆位相の電圧(逆転させる電圧)を通電してブレーキをかけ(#62、#64)、2相パルスの反転を検知後(#64でYES)、逆通電中のパルス数P1を検出し(#66)、絞りモータ110の端子間を所定時間T1短絡する短絡ブレーキをかけ(#68)、短絡中のパルス数P2(符号付パルス数)を検出する(#70)。
【0075】特性のモニターが終了すると、絞りを初期位置(開放端)に復帰させる。
【0076】すなわち、絞りモータ110を逆転し(#72)、絞り復帰終了を検知したら(#74)、絞りモータ110を停止する(#76)。#74において、絞り開放検知スイッチSAがオンしてから所定時間T2待って、復帰終了と検知する。
【0077】図8および図9は、絞り込み駆動直前の演算シーケンスを示すフローチャートである。
【0078】まず、設定値P0、PAと、モニター値tF0、tW0、P1、P2を読み出し(#80)、モニター値tF0、tW0、P1、P2に異常がないか、すなわち所定範囲内の値であるか否かを判定する(#82)。
【0079】モニター値tF0、tW0、P1、P2が所定範囲内であり、異常がなければ(#82でYES)、速度n0を計算し(#84)、特性値k0、r0を計算する(#86)。モニター値tF0、tW0、P1、P2に異常があれば(#82でNO)、k0、r0、P2については、デフォルト値を用いる(#88)。
【0080】次に、絞り駆動量PFを補正し(#90)、モニター位置Pmを設定する(#92)。そして、アップ/ダウン・パルスカウンタpと、タイマーtをリセットし、スタートする。
【0081】次に、絞り込み駆動を行う。すなわち絞りモータ110を正転して絞り込みを開始し(#102)、パルスカウンタpがPmに達するのを待つ(#104)。
【0082】パルスカウンタpがPmに達すれば(#104でYES)、本制御時の特性をモニターする。すなわち、加速特性をモニターするため、タイマー値より、通電開始からPmパルス到達までの所要時間をtF、Pmパルス到達直前のパルス幅時間tWのデータ取りを行い(#106)、回転速度nの計算と(#108)、加減速特性値k,rの計算を行い(#110)、予想オーバーランパルスPBを計算し(#112)、補正目標位置PFより予測オーバーランパルスPBの分だけ手前まで、絞り込みを継続する(#114)。
【0083】絞り込み駆動の次に、ブレーキ制御を行う。すなわち、補正目標位置PFより予測オーバーランパルスPBの分だけ手前まで絞り込むと(#114でYES)、逆通電ブレーキを開始し(#116)、2相パルスの反転を待つ(#118)。2相パルスの反転を検知したら(#118でYES)、タイマーtのみを“0”にリセットする(#120)。これは、後述する2相反転検知後の所定時間T4待ちのためである。
【0084】パルスカウンタpが、PFに対して許容範囲±δ内であるか否かを判定し(#122)、許容範囲内でなければ(#122でNO)、補正のための追加駆動を行う(#124)。δは、止まり位置ずれの許容幅の半値であり、PA±δが目標停止位置である。
【0085】次に、絞りが安定するのを待つ。すなわち、短絡ブレーキを開始し(#126)、タイマーtが所定時間(絞り安定待ち時間)T4を経過するのを待ち(#128)、タイマーtが所定時間T4を経過すれば(#128でYES)、カウンタとタイマーを停止する(#130)。
【0086】図11は、正常時のリセット動作シーケンスのタイミングチャートである。電源オン、レンズ装着時に、絞り走行特性のモニターを兼ねて、絞りリセット動作を行う。測定されたモニター値は、絞り制御に用いる。初期状態では、開放検知スイッチがオンである。初期状態で開放検知スイッチがオフとなる異常時には、上記シーケンスに先立って、開放復帰動作を行う。絞りモータについて、“F”は正転、“R”は逆転、“B”はショートブレーキ、“RB”は逆通電ブレーキを、それぞれ示す。
【0087】図12は、一駒撮影の絞り駆動シーケンスを示すタイミングチャートである。図中、T2は、開放端へのメカ当たりを確実にするための通電持続時間であり、T4は、絞りバウンド安定待ち時間であり、ミラーレリーズ安定時間と比較して遅い方を採用する。絞りモータについて、“F”は正転、“R”は逆転、“B”はショートブレーキ、“RB”は逆通電ブレーキを、それぞれ示す。
【0088】図13は、プレビュー動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0089】プレビュースイッチがオン状態のとき(#200でNO、かつ#208でYES)、カメラ側の絞り設定入力装置54で設定した絞り値をパルス値PTに変換し(#210)、そのパルス値PTが、絞りの現在位置のパルス値PSと一致するか否かを判定し、一致すればスタートに戻る(#212でNO)。
【0090】パルス値PTがパルス値PSと一致しないとき(#212でYES)、パルス値PTがパルス値PSより小さい場合には(#214でNO)、カメラ側で設定した絞りよりも開放方向に絞りを一旦設定し、そこから絞り込み方向に駆動し、カメラ側で設定した絞りとなるようにする。すなわち、絞りモータ110を逆転し、開放方向にPS−PT+PRパルス駆動した後(#216)、2相パルスが反転するまで逆通電ブレーキをかけ(#218、#220)、2相パルスの反転を検知したら(#220でYES)、絞り位置パルス(2相パルス反転検知時の絞り位置相当パルス値)PVを検出し(#222)、PT−PVを駆動量PAとして設定し(#224)、図8および図9と同様の絞り込み制御を行い(#226)、スタートに戻る。ここで、PRは、開放方向駆動時のオーバーラン設定パルス値である。PAは、絞り込み制御駆動量相当パルス値である。
【0091】パルス値PTがパルス値PSと一致しないとき(#212でYES)、パルス値PTがパルス値PSより大きい場合には(#214でYES)、PT−PSを駆動量PAとして設定し(#228)、図8および図9と同様の絞り込み制御を行い(#230)、スタートに戻る。
【0092】プレビュースイッチがオンからオフになると(#200でYES)、絞りモータ110を逆転し、絞りを開放に復帰させ(#202)、絞りの復帰終了を検知したら(#204)、絞りモータ110を停止する(#206)。
【0093】以上説明したように、一方向にばね付勢された絞り羽根駆動機構をもつ交換式レンズを用いるカメラで、カメラ本体に、このレンズ側機構と係合しその機構の付勢力と対抗する付勢ばねと摩擦ブレーキ機構を備えたメカ連動系をもち、これらを正逆両方向にモータ駆動することによってレンズの絞り駆動を行っている。これにより絞り込み動作ごとに毎回リセット動作をすることなく連続動作可能で、安価な絞り駆動機構を実現している。
【0094】交換レンズ内にばね付勢された絞り羽根駆動機構をもつので、交換レンズ単体の絞り機構は決まった初期位置を保持できる。そのためカメラ本体との機構接続部に位置合わせ機構や誤結合防止のための緩衝機構などが不要で片押し機構など簡素なものが使用できる。カメラ本体に、交換レンズ側のばね付勢機構と対抗する付勢ばねを持っているので、モータ駆動の正逆回転(絞り込み/開放復帰)での負荷トルクの差を小さくすることができる。そのため負荷トルクが大きい方向の駆動条件制約によって、これとは逆方向の駆動が極端に遅くなってしまうことがなくなる。絞り駆動系にばね付勢機構をもっため、絞り停止後にその位置を保っための静止力が必要となるが、静止力発生手段として摩擦ブレーキを用いるので、係止メカのように係止のかけ外しをせずに、モータ駆動によって正逆方向の任意の位置まで駆動できる。このため連続駆動できるというモータ駆動機構のメリットを絞り駆動機構にも適用できる。
【0095】また、「ばね走行するカメラ本体内の絞り込み駆動部材に係止部材を飛び込ませて停止させるシステム」に対応した交換レンズに対して、カメラ側の簡単な機構の変更によって絞りの連続駆動という仕様を絞り基本性能を損なうことなく実現できる。
【0096】また、以上説明したように、交換式レンズ内の絞りを、連動メカを介してカメラ本体側からモータ駆動するカメラにおいて、レンズ装着又は電源ONを検知してレンズ内絞りを初期位置にリセットすると同時に、実際に所定量駆動させて駆動および制動に関するモニターをする。実際の絞り込み制御では、目標停止位置より手前の予め決められた所定位置までモータ通電駆動しながらその加速特性をモニターした後、その加速特性とリセット時のモニター特性値を用いてブレーキ開始点を決定し、目標位置に停止させる。
【0097】これにより、止まり精度が要求される実際の絞り込み動作に先駆け、リセット動作時に予め交換レンズを含む駆動メカの特性をデータ取りするので、交換レンズ側を含む負荷条件のバラツキや、さらにモータ駆動用の電源条件バラツキの影響を把握することができる。実際の絞り込み動作では、目標停止位置より手前の予め決められた所定位置までモータ通電駆動しながらその加速特性をモニターするので、リセット時との電源条件の違いを加味した上で使用している交換レンズ条件に応じてブレーキ開始点を補正することができ、絞り停止位置バラツキを抑えることができる。
【0098】この制御方法を用いることで、負荷の影響が無視できるくらいに絞り駆動メカ系の減速比を高減速比にする必要がなくなるので、所定量絞り込むのに必要なモータ軸回転量が減り、紋込み動作時間を短くすることができる。すなわち、モータ駆動では動作時間が長くなるという欠点を解消し、連続駆動できることなどの利点を享受することができる。
【0099】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0100】例えば、交換レンズ内の絞り駆動に限らず、例えば、交換レンズ内のフォーカスレンズの駆動や、カメラ内のフィルム給送に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のカメラ本体の概略構成図である。
【図2】 交換レンズの要部斜視図である。
【図3】 図1の絞り駆動機構の詳細構成図である。
【図4】 絞り駆動機構の静的力量バランスの説明図である。
【図5】 制御系のブロック図である。
【図6】 一駒撮影のフローチャートである。
【図7】 絞りリセットのフローチャートである。
【図8】 絞り込み駆動直前のフローチャートである。
【図9】 絞り込み駆動(図8の続き)のフローチャートである。
【図10】 ブレーキオーバーランの説明図である。
【図11】 リセット動作のタイミングチャートである。
【図12】 一駒撮影のタイミングチャートである。
【図13】 プレビュー動作のフローチャートである。
【符号の説明】
10 カメラ本体
20 マウント(レンズ装着部)
50 制御回路(制御部、予備駆動制御部、検出部)
100 絞り駆動機構(駆動部)
180 2相エンコーダ(検出部)
200 交換レンズ(レンズ)
212 レンズ側絞り駆動レバー(被駆動部材)
S0 メインスイッチ(電源スイッチ)
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラからレンズの絞りを駆動するカメラシステムが提供されている。
【0003】例えば特開昭58−224336号公報には、モータを内蔵するカメラにおいて、チャージ動作によって絞り装置の復帰動作を行うことにより、復帰用の付勢手段を不要にする技術が開示されている。この公報には、カメラ側のモータで絞りを駆動し、マグネットメカで絞りを停止すること、ボディとレンズの間の接合部は、絞り駆動リングの片押し機構とすることが開示されている。
【0004】特開昭59−229531号公報には、交換レンズの絞り込みを、カメラに内蔵した専用モータで行うことにより、小型で小出力のモータを用い得るようにする技術が開示されている。この公報には、ボディとレンズの間の接合部は直進レバーとレンズ側絞りレバーとすること、停止位置出しは交換レンズ側であることが開示されている。
【0005】特開平8−95145号公報には、レンズ交換式カメラの絞り駆動機構とフォーカス駆動機構を、レンズマウント部の所定位置にある2組のカプラー(先端にキーをもつ軸)で結合する技術が開示されている。連結部での係合の際は、カプラーを少なくとも1回転させればよいので、交換レンズ側メカの位置合わせが不要で、ばね付勢のない絞り駆動系に適している。しかし、連結部を切り離した非係合状態を作るために退避機構などが必要となる。モータにより駆動/停止される駆動機構は、ブレーキをかけた時点から完全に停止する時点までに、必ずオーバランを生じる。その主な原因は、駆動源であるモータの停止特性、駆動機構の構成(例えばギヤ比、伝達特性)、被駆動部材の負荷あるいは慣性などである。
【0006】制御に関しては、制御系の遅れを考慮して早めに動作させる技術が知られている。
【0007】例えば特開昭57−29035号公報に、可動絞り部材の運動距離を算定し,この距離だけ絞り値位置より前の位置に絞り部材が達した時に絞り停止を開始させることにより,高精度の絞り量制御を行うことが開示されている。
【0008】また、特公平8−27475号公報(特願昭57−93401の分割出願)には、絞り口径を変える駆動機構を絞り連動部材を介して電動駆動し、絞り連動部材の変位量を検出し変位信号と速度信号を発生し、速度検出手段からの速度信号に基づいて、変位検出手段からの変位信号に補正を加え、絞り連動部材を所定位置で停止するように制御する技術が開示されている。
【0009】ブレーキ前の速度を検出してモータのブレーキオーバーラン量を予測する一般的方法としては、例えば特開平6−67269号公報に、フィルム給送の速度を減速する減速制御手段と、モータを逆駆動させることによりフィルム給送を停止させる逆駆動ブレーキ手段と、フィルム給送の速度を検知する速度検知手段と、速度検知手段の出力に基づいて減速制御手段と逆駆動ブレーキ制御手段とを制御するブレーキ制御手段とをもつフィルム給送装置が開示されている。しかし、ブレーキによる減速度合い(負の加速度)が条件によって変動すると誤差が生じる。
【0010】また、特開平6−18764号公報には、焦点検出手段の検出信号に基づいて、自動焦点調節が行われる撮影光学系をもつレンズ鏡筒において、自動焦点調節時に撮影光学系の駆動制御状態を変更するために、撮影光学系の負荷トルクに関する情報(負荷、慣性に関するデータ)を記憶する記憶手段を備えることが開示されている。しかし、データを持っていないレンズへの対応や、経時変化を含むレンズ個体差への対応が困難である。
【0011】特開平7−181573号公報には、回転量に対応した信号を出力するエンコーダに基づいてモータを制御するカメラにおけるモータ制御方法において、モータを停止する際に予め設定した動作位置と速度の関数で表されるブレーキ線に沿うようにモータ速度を変化させてフィルムを目標位置に停止させる技術が開示されている。しかし、制御が大変忙しく、制御装置への負担がかかり、他の制御を同時に行うことができない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】交換レンズ側にモータを内蔵しない安価なシステムで、必要時に必要なだけ絞りを駆動するため、カメラ本体側のモータで駆動すると、モータから被駆動部材が遠いのでメカ連動系が長くなる。長い連動系のメカ的ガタをガタ寄せして、絞り停止性能を安定させようとすると、絞り制御部材に対するばね付勢が必要となる。また、交換レンズ内にばね付勢機構がないと、ボディとレンズと境界部の交換レンズ側部材の位置が不定となるので、カメラ本体側の係合部材に退避機構などが必要になる。逆に交換レンズ内にばね付勢機構があれば、片押しメカが採用でき、ボディとレンズの境界のメカ連結部が簡素になる。
【0013】カメラ本体側のDCモータでばね付勢機構をもつ交換レンズ側メカを駆動すると、DCモータの通電時は正逆任意の方向に駆動できるが、DCモータヘの通電を断つとばね力に対抗して停止状態を維持するのが困難になる。これはDCモータの出力軸のもつ静止力が磁気的コキングと摩擦だけであるためで、この静止力のみでばね力に対抗して停止状態を維持するにはメカ伝達系の減速比を大きくする必要がでてくる。
【0014】絞り駆動時間を短縮するためにロータの慣性モーメントが小さい小型DCモータを採用するとコキングトルクも小さくなるので、なおさら高減速比が必要となる。
【0015】カメラ本体側にステップモータを採用すると、同じ磁極に通電し続けることでばね力に対抗して停止状態を維持することができるが、ステップモータの発生トルクは一般的に小さいので駆動トルクを稼ぐためにやはり減速比を大きくする必要が生じる。
【0016】モータのみでばね力に対抗して停止状態を維持できるくらい高減速比にすると、所定量絞り込むのに必要なモータ軸回転量が増えるので、絞り込み動作時間が長くなってしまうという問題が生じる。紋込み時間は、撮影者がシャッタ釦を押してから実際に露光するまでのタイムラグを左右する一要因であるので、短時間で済むことが望ましい。
【0017】また、交換レンズ内にモータを必要としない構成で、しかも絞りの連続駆動のためにカメラ本体側モータの正逆回転で絞り駆動しようとすると、動作時間と止まり位置精度の相反する問題が生じる。
【0018】つまり、動作時間が長くならないように考慮して、カメラ本体側モータからレンズ内の絞りまでの減速比をできる限り小さくすると、各種バラツキの影響が大きくなる。そこで各種バラツキの影響を補正してモータ停止制御を行うには、絞り駆動用モータメカ全体の加減速特性の把握が必要となる。
【0019】しかし、不特定多数の交換レンズを含む駆動メカの特性を事前予測するのは難しく、さらに、交換レンズの機種や個体差による負荷条件のバラツキや、モータ駆動用の電源条件バラツキも考慮しようとすると、ほとんど不可能である。
【0020】したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、レンズ内の被駆動部材を精度良く駆動、停止することができるカメラを提供することである。
【0021】
【課題を解決するための手段および作用・効果】本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のカメラを提供する。
【0022】カメラは、レンズが装着されるレンズ装着部と、該レンズ装着部に装着された上記レンズ内の被駆動部材を駆動するための駆動部と、該駆動部の制御を行う制御部とを備えたタイプのものである。カメラは、上記駆動部の作動特性値を検出する検出部を備える。上記制御部は、予備駆動制御部を含む。該予備駆動制御部は、予め決められた所定のタイミングで、上記駆動部を作動させ、上記レンズ内の上記被駆動部材を所定量だけ予備駆動し、該予備駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値を上記検出部に検出させる。上記制御部は、該検出された上記予備駆動中の上記駆動部の上記作動特性値に基づいて、上記駆動部の本番の駆動の制御を行う。
【0023】上記構成によれば、本番の駆動の前に、駆動部を予備的に駆動し(これを「予備駆動」ともいう)、予備駆動中に駆動部の特性値を検出することにより、レンズ側を含む駆動系の負荷条件のバラツキ(交換レンズの機種や個体差による負荷条件のバラツキも含む)や、電源条件のバラツキ等が駆動部の作動状態に与える影響を把握することができる。これにより、本番の駆動は、事前に検出した予備駆動中の特性値を考慮して、高精度な制御を行うことが可能となる。
【0024】したがって、レンズ内の被駆動部材を精度良く駆動、停止することができるカメラを提供することができる。
【0025】好ましくは、上記制御部は、上記駆動部の本番の駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値の少なくとも一部を上記検出部に検出させ、該検出結果をも考慮して、その後の上記駆動部の制御を行う。
【0026】上記構成によれば、予備駆動後本番の駆動時までに、時間の経過や周囲温度の変化等により駆動系の負荷特性や電源条件等が変化し、駆動部の作動特性値が変動しても、本番の駆動中に駆動部の作動特性値の少なくとも一部(例えば、加速時の特性値)を検出するので、その検出結果を考慮し、より適切な駆動部の作動特性値(例えば、減速時の特性値)を想定して、その後の駆動部の制御を行うことができる。したがって、駆動精度をより高めることができる。
【0027】具体的には、以下のように構成する。
【0028】好ましくは、上記被駆動部材は、上記レンズ装着部に装着された上記レンズ内の絞り口径を変化させる機構の部材である。レンズの絞りは、止まり精度が要求されるので、本発明の適用は特に好適である。
【0029】好ましくは、上記予備駆動制御部が上記駆動部を作動させる上記所定のタイミングは、上記レンズ装着部に上記レンズが装着されたことを検知した時、又はカメラ本体に電源が供給された時、又はカメラ本体の電源スイッチがオンになった時である。この場合、カメラに既存の検出スイッチ等を用いることができ、特別な部材を必要としない。また、予備駆動をレンズのリセット動作に含めることができる。
【0030】好ましくは、上記検出部は、上記駆動部の作動量と作動時間とを検出する。上記作動特性値は、機構偏差量(メカ的なガタ・ずれ、メカのばね性など)を含む上記駆動部の加速特性および減速特性に関わる特性値である。例えば、作動量と作動時間とにより速度を求め、これをパラメータとする加速時および減速時の特性値を求めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態に係るカメラについて、図面を参照しながら説明する。
【0032】図1は、カメラ本体側の絞り機構の概略構成を示す。
【0033】カメラ本体10には、交換レンズを装着するためのマウント20と、装着された交換レンズの絞りをカメラ側から駆動するための絞り駆動レバー32を有する絞り駆動リング30が配置されている。絞り駆動リング30の内側には、信号端子22が設けられ、交換レンズ側の信号端子と電気的に接続するようになっている。また、マウント20の近傍には、交換レンズの着脱操作を検知するレンズ着脱操作検知スイッチ26が設けられている。
【0034】絞りリング30は、絞りモータ110により、絞り駆動機構100を介して回転駆動されるようになっている。絞り駆動機構100は、詳しくは後述するが、減速機構、摩擦ブレーキ機構、エンコーダを含む。絞り駆動リング30は、開放端Aと絞り込み端Cとの間を作動範囲Bとして回転するようになっている。絞り込み端C側には、絞り駆動リング30の回転を阻止するストッパ38が設けられている。開放端A側には、絞り駆動リング30が開放端Aに達したことを検知する開放検知スイッチ24が設けられている。絞りリング30は、付勢ばね108(図1では、概念的に示している)により開放端A側に付勢されるようになっている。
【0035】図2は、交換レンズ側の絞り機構の要部斜視図である。
【0036】カメラ本体10側の絞りリング30に設けられた絞り駆動レバー32は、交換レンズ200側の絞り駆動リング210に突設された絞り駆動レバー212に係合するようになっている。絞り駆動レバー212は、交換レンズ200内の付勢ばね202により、絞りを閉じる方向(以下、「絞り込み方向」という)に付勢され、カメラ本体10側の絞り駆動レバー32がこれに抗して、絞りを開く方向(以下、「絞り開放方向」という)に回転駆動するようになっている。
【0037】交換レンズ200側の絞り駆動リング210には、光軸方向に延在する連動ホーク214が設けられている。連動ホーク214の先端は、羽根駆動操作板220に突設さた連動ピン224と係合し、絞り駆動リング210と一体的に羽根駆動操作板220が回転するようになっている。羽根駆動操作板220の係合222に係合する羽根駆動ピン223は、不図示の絞り羽根支持板によりその支持軸232が回転自在に支持された絞り羽根230に係合し、羽根駆動操作板220の回転に連動して絞り羽根230が支持軸232を中心に回転して角度が変わり、複数の絞り羽根230(図2では、一つだけ図示している)によって形成される開孔すなわち絞りの大きさが変わるようになっている。
【0038】図3は、カメラ本体10側に配置される絞り駆動機構100の詳細構成図である。
【0039】絞りモータの回転110は、その出力軸に固定された出力歯車112、第1歯車120、第2歯車130、第3歯車160、伝達歯車170を介して、絞り駆動リング30に伝達される。
【0040】詳しくは、絞りモータ110に隣接し、固定部材150により回転自在に支持された回転軸140が配置され、その回転軸140に第2歯車130が回転自在に外嵌し、さらに、第2歯車130の上部に第1歯車120が回転自在に外嵌するようになっている。
【0041】固定部材150と回転軸140とは絞り込み方向摩擦ブレーキばね106が配置され、回転軸140と第2歯車130の間には開放方向摩擦ブレーキばね104が配置され、第2歯車130と第1歯車120との間には過負荷防止ばね102が配置されている。摩擦ブレーキばね104,106は、詳しくは後述するように、駆動方向によって摩擦ブレーキのブレーキトルクが異なるように設定されている。
【0042】第1歯車120は、出力歯車112に噛合する歯車部122を有し、過負荷防止ばね102を介して、第2歯車130と結合され、所定以下のトルクのときには、第1歯車120と第2歯車130とは一体的に回転するようになっている。
【0043】第2歯車130は、第3歯車160に噛合する歯車部132と、エンコーダスリット板134とを有する。エンコーダスリット板134には、複数のスリット136が放射状に形成されている。エンコーダスリット板134を挟むように、2相エンコーダ用のセンサであるフォト・インタラプタ180の受光部と発光部とが配置されている。フォト・インタラプタ180は、一つの発光部と、2つの受光部を有し、エンコーダスリット板134のスリット136を、位相をずらして検知でき、これにより、エンコーダスリット板134の回転方向の検知もできるようになっている。
【0044】第3歯車160は、第2歯車130の歯車部132と噛合する第1歯車部162と、伝達歯車170に噛合する第2歯車部164を有する。第3歯車160は、開放方向付勢ばね108(図1では、概念的に示している)により、開放方向に付勢されるようになっている。
【0045】伝達歯車170は、その一端に、第3歯車160の第2歯車部164と噛合する第1歯車部172を有し、他端には、絞り駆動リング30に形成された歯車部31に噛合する第2歯車部174を有する。
【0046】摩擦ブレーキばね104,106は、軸に巻きつくコイル部と、コイル部から径方向に延在する腕とを有し、軸に対して腕を、コイル部の巻き方向に動かすとコイル部が締まり、逆方向に動かすとコイル部が緩む、いわゆるばねクラッチである。
【0047】後述の開放方向の摩擦ブレーキの滑りトルク設定値TFO、絞り込み方向の摩擦ブレーキの滑りトルク設定値TFCは、ばねの緩みトルクで決まる値である。開放方向駆動時は、開放方向摩擦ブレーキばね104が緩み、絞り込み方向摩擦ブレーキばね106は締まるので、トルクはTFOとなる。このとき、回転軸140は回転せず、止まっている。絞り込み方向駆動時は、開放方向摩擦ブレーキばね104が締まり、絞り込み方向摩擦ブレーキばね106は緩むので、トルクはTFCとなる。このとき、回転軸140は第2歯車130と一体的に回転する。
【0048】図4は、絞り駆動機構の静的力量バランスの説明図である。
【0049】3本ラインの示すトルク値は、いずれも摩擦ブレーキ機構が設けられている回転軸140上に作用するトルクに換算した値である。TFOは、開放方向摩擦ブレーキの滑りトルク設定値である。TBは、カメラ本体10内の開放方向付勢ばね108によるトルクである。TLは、絞り込みに付勢するレンズ200側の付勢ばね202によるトルクである。絞りモータ110が非作動時に、静止可能な条件はTFO>TB−TLである。
【0050】絞りモータ110で開放方向に駆動するときには、トルク(TFO−TB+αLTL)を駆動することになる。ここで、αLは、回転軸140からレンズ200までの間の伝達効率により決まる値で、チャージ/レリーズの方向により力量にヒステリシスが生じることと関係している。なお、αL>1である。
【0051】逆に、絞りモータ110で絞り込み方向に駆動するときには、トルク(TFC+αBTB−TL)を駆動することになる。αBは、先と同じく、回転軸140から開放方向付勢ばね108を設けた第3歯車160までの間の伝達効率によって決まる値である。なお、αB>1である。
【0052】ここで、開放方向の負荷トルクは、静的力量バランスから自動的に決まる必要トルクであるが、絞り込み方向の場合、TFCには静的条件制約がないので、極端な場合には、TFC=0でもかまわない。
【0053】実際には、機構上の制約で、簡単な構成で一方向回転のみに摩擦をかけるのは困難なので、滑りトルクの異なる2つのばねクラッチ104,106を用いて、TFO≫TFCとなるようにしている。これによって、絞り込み時間を長くすることなく、モータ駆動できる
【0054】図5は、制御系のシステム構成を示すブロック図である。
【0055】カメラ全体の制御を統括する制御回路50には、プログラムやデータを記憶する記憶回路51と、測光のための測光回路52と、シャッタを駆動するためのシャッタ駆動回路53と、絞り値を設定するための絞り設定入力装置54と、絞りモータ110を駆動するための絞りモータ駆動回路55とが接続されている。また、制御回路50には、シャッタ釦の半押し(途中までの押し込み)等でオンになる起動スイッチS1と、シャッタ釦の全押し(完全な押し込み)等でオンになるレリーズスイッチS2と、図1の開放検知スイッチ24に対応する絞り開放検知スイッチSAと、メインスイッチS0と、プレビュー釦の操作によりオンになるプレビュースイッチSPと、図1のレンズ着脱操作検知スイッチに対応するレンズ着脱操作検知スイッチSLと、絞り駆動機構100の回転を検出する2相エンコーダ180とが接続されている。制御回路50は、CPU、タイマー、カウンタ等を含む。
【0056】さらに、カメラ本体に交換レンズが装着されると、制御回路50は、交換レンズ内のレンズ側回路250と接続される。また、本体側絞り駆動リング30の絞り駆動レバー32は、レンズ側絞り駆動リング210の絞り駆動レバー212に係合する。
【0057】図6は、一駒撮影時のカメラの動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0058】起動スイッチS1がオンになるのを待ち(#10)、オンになると(#10でYES)、測光を行い(#12)、その結果に基づいて露光条件を決定する(#14)。これと並行して、測距を行い(#16)、合焦動作を行う(#18)。
【0059】そして、レリーズスイッチS2がオンになるのを待つ(#20)。
【0060】レリーズスイッチS2がオンになると(#20でYES)、露光前のメカ・レリーズ動作を行う。すなわち、シャッタのマグネット吸着を行い(#22)、シャッタの係止を抜くとともにミラーアップを行い(#24)、ミラーの振動がおさまるまで所定時間待つ(#26)。これと並行して、絞り込み量PAを決定し(#28)、詳しくは後述する絞り込み制御を行う(#30)。
【0061】次に、フィルムへの露光動作を行う。すなわち、シャッタのマグネットを離反し(吸着を解除し)、シャッタを走行させる(#32)。
【0062】次に、露光後のメカ復帰動作を行う。すなわち、ミラーおよびシャッタのチャージを行い、フィルムを1駒巻き上げる(#34)。これと並行して、絞りモータ110を逆方向に回転させ(#36)、絞り復帰終了を検知したら(#38)、絞りモータ11を停止する(#40)。#38において、絞り開放検知スイッチSAがオンしてから所定時間T2待って、復帰終了と検知する。
【0063】図10は、ブレーキオーバーラン量予測の原理の説明図である。
【0064】図において、縦軸は絞りモータ110の回転速度n、横軸はモータの回転量(2相エンコーダ180で検知したパルス数)Pであり、絞りモータ110に通電して加速した後、逆通電ブレーキをかけて停止するまでの経過を示している。×印は、逆通電ブレーキの開始点である。絞り駆動の加速、減速特性は、電源の状態や、カメラに装着するレンズの種類により異なるが、これを係数k、rにより表すことができる。
【0065】すなわち、通電による加速中の回転量Pacは、通電開始からの経過時間tと、係数kとの関数f(k,t)により、Pac=f(k,t) (1)
と近似することができる。
【0066】また、逆通電ブレーキ中の回転量Pbkは、逆通電ブレーキ開始時のモータ回転速度nと、係数rとの関数g(r,n)として、Pbk=g(r,n) (2)
と近似することができる。
【0067】係数k,rは、図10の曲線を特定するパラメータであり、駆動部の加速特性および減速特性に関わる特性値である。これを求めるfの逆関数をi、gの逆関数をjとすると、k=i(Pac,t) (3)
r=j(Pbk,n) (4)
【0068】そこで、時間tとモータ回転量Pとをモニターすれば、(3)式により係数kを求めることができる。また、逆通電ブレーキ開始時のモータの回転速度nとモータ回転量とから、(4)式により係数rを求めることができる。
【0069】(1)式〜(4)式は具体的には、多項式により表現することが可能である。(1)式を例にとると次のように表現される。
Pac=k・(a0+a1・t+a2・t2+ … +an.tn)
ここで、a0〜anは予め設定された定数である。
【0070】絞りを所定量だけ予め駆動して求めた係数をk0、r0とし、本番では、逆通電ブレーキ開始前の点線で示したモニター位置で、パルス数とタイマー値、すなわち駆動部の作動量と作動時間とを検出し、(3)式により係数kを求める。そして、本番の逆通電ブレーキ中の係数rは、ブレーキに逆通電ブレーキを使うことを前提にしているので、加速および減速の強さが相関する、すなわち、r/k=r0/k0 (5)
と仮定し、rを次式により求める。
r=(r0/k0)×k (6)
【0071】この係数rを用いて、本番の逆通電ブレーキオーバーラン量を予測する。
【0072】図7は、絞りリセットの動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0073】メインスイッチS0がオン状態で新たに交換レンズの装着操作が行われたとき(#50でYES、かつ#52でYES)、又は、交換レンズが装着された状態でメインスイッチS0がオフからオンにされたとき(#50でNO、かつ#54でYES、かつ#56でYES)、予備駆動して特性を事前にモニターする。
【0074】すなわち、絞りモータ110を正転させ、絞りを所定量、すなわち2相エンコーダ180で検知するパルス数がP0に達するまで絞り込み(#58)、パルス数がP0に達するまでに要した絞り込み所要時間tF0と、パルス数がP0に達する直前のパルス幅時間tW0とを検知する(#60)。次に、2相エンコーダ180で2相パルスの反転を検知するまで、絞りモータ110に逆位相の電圧(逆転させる電圧)を通電してブレーキをかけ(#62、#64)、2相パルスの反転を検知後(#64でYES)、逆通電中のパルス数P1を検出し(#66)、絞りモータ110の端子間を所定時間T1短絡する短絡ブレーキをかけ(#68)、短絡中のパルス数P2(符号付パルス数)を検出する(#70)。
【0075】特性のモニターが終了すると、絞りを初期位置(開放端)に復帰させる。
【0076】すなわち、絞りモータ110を逆転し(#72)、絞り復帰終了を検知したら(#74)、絞りモータ110を停止する(#76)。#74において、絞り開放検知スイッチSAがオンしてから所定時間T2待って、復帰終了と検知する。
【0077】図8および図9は、絞り込み駆動直前の演算シーケンスを示すフローチャートである。
【0078】まず、設定値P0、PAと、モニター値tF0、tW0、P1、P2を読み出し(#80)、モニター値tF0、tW0、P1、P2に異常がないか、すなわち所定範囲内の値であるか否かを判定する(#82)。
【0079】モニター値tF0、tW0、P1、P2が所定範囲内であり、異常がなければ(#82でYES)、速度n0を計算し(#84)、特性値k0、r0を計算する(#86)。モニター値tF0、tW0、P1、P2に異常があれば(#82でNO)、k0、r0、P2については、デフォルト値を用いる(#88)。
【0080】次に、絞り駆動量PFを補正し(#90)、モニター位置Pmを設定する(#92)。そして、アップ/ダウン・パルスカウンタpと、タイマーtをリセットし、スタートする。
【0081】次に、絞り込み駆動を行う。すなわち絞りモータ110を正転して絞り込みを開始し(#102)、パルスカウンタpがPmに達するのを待つ(#104)。
【0082】パルスカウンタpがPmに達すれば(#104でYES)、本制御時の特性をモニターする。すなわち、加速特性をモニターするため、タイマー値より、通電開始からPmパルス到達までの所要時間をtF、Pmパルス到達直前のパルス幅時間tWのデータ取りを行い(#106)、回転速度nの計算と(#108)、加減速特性値k,rの計算を行い(#110)、予想オーバーランパルスPBを計算し(#112)、補正目標位置PFより予測オーバーランパルスPBの分だけ手前まで、絞り込みを継続する(#114)。
【0083】絞り込み駆動の次に、ブレーキ制御を行う。すなわち、補正目標位置PFより予測オーバーランパルスPBの分だけ手前まで絞り込むと(#114でYES)、逆通電ブレーキを開始し(#116)、2相パルスの反転を待つ(#118)。2相パルスの反転を検知したら(#118でYES)、タイマーtのみを“0”にリセットする(#120)。これは、後述する2相反転検知後の所定時間T4待ちのためである。
【0084】パルスカウンタpが、PFに対して許容範囲±δ内であるか否かを判定し(#122)、許容範囲内でなければ(#122でNO)、補正のための追加駆動を行う(#124)。δは、止まり位置ずれの許容幅の半値であり、PA±δが目標停止位置である。
【0085】次に、絞りが安定するのを待つ。すなわち、短絡ブレーキを開始し(#126)、タイマーtが所定時間(絞り安定待ち時間)T4を経過するのを待ち(#128)、タイマーtが所定時間T4を経過すれば(#128でYES)、カウンタとタイマーを停止する(#130)。
【0086】図11は、正常時のリセット動作シーケンスのタイミングチャートである。電源オン、レンズ装着時に、絞り走行特性のモニターを兼ねて、絞りリセット動作を行う。測定されたモニター値は、絞り制御に用いる。初期状態では、開放検知スイッチがオンである。初期状態で開放検知スイッチがオフとなる異常時には、上記シーケンスに先立って、開放復帰動作を行う。絞りモータについて、“F”は正転、“R”は逆転、“B”はショートブレーキ、“RB”は逆通電ブレーキを、それぞれ示す。
【0087】図12は、一駒撮影の絞り駆動シーケンスを示すタイミングチャートである。図中、T2は、開放端へのメカ当たりを確実にするための通電持続時間であり、T4は、絞りバウンド安定待ち時間であり、ミラーレリーズ安定時間と比較して遅い方を採用する。絞りモータについて、“F”は正転、“R”は逆転、“B”はショートブレーキ、“RB”は逆通電ブレーキを、それぞれ示す。
【0088】図13は、プレビュー動作シーケンスを示すフローチャートである。
【0089】プレビュースイッチがオン状態のとき(#200でNO、かつ#208でYES)、カメラ側の絞り設定入力装置54で設定した絞り値をパルス値PTに変換し(#210)、そのパルス値PTが、絞りの現在位置のパルス値PSと一致するか否かを判定し、一致すればスタートに戻る(#212でNO)。
【0090】パルス値PTがパルス値PSと一致しないとき(#212でYES)、パルス値PTがパルス値PSより小さい場合には(#214でNO)、カメラ側で設定した絞りよりも開放方向に絞りを一旦設定し、そこから絞り込み方向に駆動し、カメラ側で設定した絞りとなるようにする。すなわち、絞りモータ110を逆転し、開放方向にPS−PT+PRパルス駆動した後(#216)、2相パルスが反転するまで逆通電ブレーキをかけ(#218、#220)、2相パルスの反転を検知したら(#220でYES)、絞り位置パルス(2相パルス反転検知時の絞り位置相当パルス値)PVを検出し(#222)、PT−PVを駆動量PAとして設定し(#224)、図8および図9と同様の絞り込み制御を行い(#226)、スタートに戻る。ここで、PRは、開放方向駆動時のオーバーラン設定パルス値である。PAは、絞り込み制御駆動量相当パルス値である。
【0091】パルス値PTがパルス値PSと一致しないとき(#212でYES)、パルス値PTがパルス値PSより大きい場合には(#214でYES)、PT−PSを駆動量PAとして設定し(#228)、図8および図9と同様の絞り込み制御を行い(#230)、スタートに戻る。
【0092】プレビュースイッチがオンからオフになると(#200でYES)、絞りモータ110を逆転し、絞りを開放に復帰させ(#202)、絞りの復帰終了を検知したら(#204)、絞りモータ110を停止する(#206)。
【0093】以上説明したように、一方向にばね付勢された絞り羽根駆動機構をもつ交換式レンズを用いるカメラで、カメラ本体に、このレンズ側機構と係合しその機構の付勢力と対抗する付勢ばねと摩擦ブレーキ機構を備えたメカ連動系をもち、これらを正逆両方向にモータ駆動することによってレンズの絞り駆動を行っている。これにより絞り込み動作ごとに毎回リセット動作をすることなく連続動作可能で、安価な絞り駆動機構を実現している。
【0094】交換レンズ内にばね付勢された絞り羽根駆動機構をもつので、交換レンズ単体の絞り機構は決まった初期位置を保持できる。そのためカメラ本体との機構接続部に位置合わせ機構や誤結合防止のための緩衝機構などが不要で片押し機構など簡素なものが使用できる。カメラ本体に、交換レンズ側のばね付勢機構と対抗する付勢ばねを持っているので、モータ駆動の正逆回転(絞り込み/開放復帰)での負荷トルクの差を小さくすることができる。そのため負荷トルクが大きい方向の駆動条件制約によって、これとは逆方向の駆動が極端に遅くなってしまうことがなくなる。絞り駆動系にばね付勢機構をもっため、絞り停止後にその位置を保っための静止力が必要となるが、静止力発生手段として摩擦ブレーキを用いるので、係止メカのように係止のかけ外しをせずに、モータ駆動によって正逆方向の任意の位置まで駆動できる。このため連続駆動できるというモータ駆動機構のメリットを絞り駆動機構にも適用できる。
【0095】また、「ばね走行するカメラ本体内の絞り込み駆動部材に係止部材を飛び込ませて停止させるシステム」に対応した交換レンズに対して、カメラ側の簡単な機構の変更によって絞りの連続駆動という仕様を絞り基本性能を損なうことなく実現できる。
【0096】また、以上説明したように、交換式レンズ内の絞りを、連動メカを介してカメラ本体側からモータ駆動するカメラにおいて、レンズ装着又は電源ONを検知してレンズ内絞りを初期位置にリセットすると同時に、実際に所定量駆動させて駆動および制動に関するモニターをする。実際の絞り込み制御では、目標停止位置より手前の予め決められた所定位置までモータ通電駆動しながらその加速特性をモニターした後、その加速特性とリセット時のモニター特性値を用いてブレーキ開始点を決定し、目標位置に停止させる。
【0097】これにより、止まり精度が要求される実際の絞り込み動作に先駆け、リセット動作時に予め交換レンズを含む駆動メカの特性をデータ取りするので、交換レンズ側を含む負荷条件のバラツキや、さらにモータ駆動用の電源条件バラツキの影響を把握することができる。実際の絞り込み動作では、目標停止位置より手前の予め決められた所定位置までモータ通電駆動しながらその加速特性をモニターするので、リセット時との電源条件の違いを加味した上で使用している交換レンズ条件に応じてブレーキ開始点を補正することができ、絞り停止位置バラツキを抑えることができる。
【0098】この制御方法を用いることで、負荷の影響が無視できるくらいに絞り駆動メカ系の減速比を高減速比にする必要がなくなるので、所定量絞り込むのに必要なモータ軸回転量が減り、紋込み動作時間を短くすることができる。すなわち、モータ駆動では動作時間が長くなるという欠点を解消し、連続駆動できることなどの利点を享受することができる。
【0099】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0100】例えば、交換レンズ内の絞り駆動に限らず、例えば、交換レンズ内のフォーカスレンズの駆動や、カメラ内のフィルム給送に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のカメラ本体の概略構成図である。
【図2】 交換レンズの要部斜視図である。
【図3】 図1の絞り駆動機構の詳細構成図である。
【図4】 絞り駆動機構の静的力量バランスの説明図である。
【図5】 制御系のブロック図である。
【図6】 一駒撮影のフローチャートである。
【図7】 絞りリセットのフローチャートである。
【図8】 絞り込み駆動直前のフローチャートである。
【図9】 絞り込み駆動(図8の続き)のフローチャートである。
【図10】 ブレーキオーバーランの説明図である。
【図11】 リセット動作のタイミングチャートである。
【図12】 一駒撮影のタイミングチャートである。
【図13】 プレビュー動作のフローチャートである。
【符号の説明】
10 カメラ本体
20 マウント(レンズ装着部)
50 制御回路(制御部、予備駆動制御部、検出部)
100 絞り駆動機構(駆動部)
180 2相エンコーダ(検出部)
200 交換レンズ(レンズ)
212 レンズ側絞り駆動レバー(被駆動部材)
S0 メインスイッチ(電源スイッチ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レンズが装着されるレンズ装着部と、該レンズ装着部に装着された上記レンズ内の被駆動部材を駆動するための駆動部と、該駆動部の制御を行う制御部とを備えたカメラにおいて、上記駆動部の作動特性値を検出する検出部を備え、上記制御部は、予め決められた所定のタイミングで、上記駆動部を作動させ、上記レンズ内の上記被駆動部材を所定量だけ予備駆動し、該予備駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値を上記検出部に検出させる予備駆動制御部を含み、該検出された上記予備駆動中の上記駆動部の上記作動特性値に基づいて、上記駆動部本番の駆動の制御を行うことを特徴とする、カメラ。
【請求項2】 上記制御部は、上記駆動部の本番の駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値の少なくとも一部を上記検出部に検出させ、該検出結果をも考慮して、その後の上記駆動部の制御を行うことを特徴とする、請求項1記載のカメラ。
【請求項3】 上記被駆動部材は、上記レンズ装着部に装着された上記レンズ内の絞り口径を変化させる機構の部材であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカメラ。
【請求項4】 上記予備駆動制御部が上記駆動部を作動させる上記所定のタイミングは、上記レンズ装着部に上記レンズが装着されたことを検知した時、又はカメラ本体に電源が供給された時、又はカメラ本体の電源スイッチがオンになった時であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカメラ。
【請求項5】 上記検出部は、上記駆動部の作動量と作動時間とを検出し、上記作動特性値は、機構偏差量を含む上記駆動部の加速特性および減速特性に関わる特性値であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカメラ。
【請求項1】 レンズが装着されるレンズ装着部と、該レンズ装着部に装着された上記レンズ内の被駆動部材を駆動するための駆動部と、該駆動部の制御を行う制御部とを備えたカメラにおいて、上記駆動部の作動特性値を検出する検出部を備え、上記制御部は、予め決められた所定のタイミングで、上記駆動部を作動させ、上記レンズ内の上記被駆動部材を所定量だけ予備駆動し、該予備駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値を上記検出部に検出させる予備駆動制御部を含み、該検出された上記予備駆動中の上記駆動部の上記作動特性値に基づいて、上記駆動部本番の駆動の制御を行うことを特徴とする、カメラ。
【請求項2】 上記制御部は、上記駆動部の本番の駆動中に、上記駆動部の上記作動特性値の少なくとも一部を上記検出部に検出させ、該検出結果をも考慮して、その後の上記駆動部の制御を行うことを特徴とする、請求項1記載のカメラ。
【請求項3】 上記被駆動部材は、上記レンズ装着部に装着された上記レンズ内の絞り口径を変化させる機構の部材であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカメラ。
【請求項4】 上記予備駆動制御部が上記駆動部を作動させる上記所定のタイミングは、上記レンズ装着部に上記レンズが装着されたことを検知した時、又はカメラ本体に電源が供給された時、又はカメラ本体の電源スイッチがオンになった時であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカメラ。
【請求項5】 上記検出部は、上記駆動部の作動量と作動時間とを検出し、上記作動特性値は、機構偏差量を含む上記駆動部の加速特性および減速特性に関わる特性値であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカメラ。
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図3】
【図5】
【図10】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図3】
【図5】
【図10】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2002−72327(P2002−72327A)
【公開日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−252347(P2000−252347)
【出願日】平成12年8月23日(2000.8.23)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年8月23日(2000.8.23)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
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