説明

カラーデバイスの色域検出装置と方法、及びこれを用いて色空間逆変換関数を求める方法

【課題】 カラーデバイスの色域検出装置と方法、及びこれを用いて色空間逆変換関数を求める方法を提供する。
【解決手段】 入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する色空間変換部と、第1の色信号の色域の境界面と一定の色相を有する平面との交点を検出する交点検出部と、検出された交点の原色値に対応する制御ベクトルを計算する制御ベクトル演算部と、を備えることを特徴とするカラーデバイスの色域検出装置。これにより、装置独立の色空間において一定の色相平面又は一定の明るさ平面との交点に基づき装置従属の色空間における制御ベクトルを求めることにより、正確な色域を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーデバイスの色域検出装置と方法、及びこれを用いて色空間逆変換関数を求める方法に係り、詳しくは、装置独立の色空間において、一定の色相を有する平面又は一定の明るさを有する平面との交点を用いて色域及び色空間逆変換関数を求めるカラーデバイスの色域検出装置と方法、及びこれを用いて色空間逆変換関数を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、モニター、スキャナー、プリンタなどのような色を再現するための装置は、それぞれの使用分野に応じて相異なる色空間(color space)、あるいはカラーモデルを使い分けている。例えば、カラー映像の印刷装置はCMY色空間を使用し、カラーCRTモニターやコンピュータグラフィック装置はRGB色空間を使用し、そして色相、彩度、明度を別々に扱うべき装置はHSI色空間を使用する。さらに、いかなる装置においても正確に再生できる、いわゆる装置独立のカラーを定義するためにCIE色空間が使われる場合もあるが、その代表例として、CIE−XYZ、CIE L*a*b、CIE L*u*v色空間などが挙げられる。
【0003】
色を再現する装置の間には、かかる色空間のほかにも、色域(color gamut)が相異なる場合もある。色空間が色を定義する方法、すなわち、ある色と他の色との関係を表わす方法を意味するのに対し、色域は、色相の再現範囲を意味する。従って、入力される色信号とこの入力色信号を再現する装置との間における色域が相異なる場合には、互いの色域がマッチング可能に、入力される色信号を適宜に変換して色再現力を高める色域マッピングが必要となる。
【0004】
一方、かような色を再現するための装置においては、3つの原色(primary color)を使用するのが普通であるが、近年、4以上の原色を使用することにより、色域を広げようとする試みがなされてきている。その代表的な例として、MPD(MultiPrimary Display)が挙げられる。MPDとは、既存の3原色を使用する3チャンネルのディスプレイシステムから色域を広げるために、4以上の原色を使用することにより、色再現の拡張を図ったディスプレイシステムを言う。
【0005】
相異なるカラー装置(color device)間の色域マッピングは、通常、入力色信号の色空間を変換した後、色相(hue)を変えていない状態で明るさと彩度に対する色域マッピングが行われる。具体的には、入力色信号をRGB、CMYKなどの装置従属の色空間(DDCS:Device Dependent Color Space)にからCIE−XYZ、CIE−LABなどの装置独立の色空間(DICS:Device Independent Color Space)に変換した後、装置独立の色空間をさらに色相、明るさ(lightness)、彩度(chroma)を示すLCH座標系に変換し、次いで、色相が一定の平面上において明るさと彩度に対する色域マッピングを行う。このとき、かかる色域マッピングを行うためには、装置独立の色空間又はLCHにおける装置の色域を知っている必要がある。
【0006】
装置の色域を知るための通常の方法には、特定の色相と明るさにおいて彩度の値を増減しながら、装置従属の色空間における制御ベクトル(control vector)のオーバーフローの有無を調べる反復法(iterative method)がある。しかしながら、かかる反復法は、装置の色域を調べるのに長時間がかかり、装置が4チャンネル以上の制御値を有する場合には、装置従属の色空間と装置独立の色空間との間の逆変換がうまく行えず、装置の色域を求めることが困難であるという不都合がある。
【0007】
装置の色域を調べる他の方法には、装置従属の色空間の表面をサンプリングにより抽出してその値を装置独立の色空間に変換することにより装置の色域を求める方法がある。かかる表面抽出法は、反復法よりも短い時間が要され、且つ、逆変換が不要になるという長所がある。しかしながら、装置従属の色空間において均一にサンプリングしたものが、色空間によって装置独立の色空間において不均一になることがあり、その結果、出力映像に空き空間が生じたり、ボケが生じたりするという不都合がある。
【0008】
さらに、反復法及び表面抽出法は、両方ともにサンプリング数に応じて色域の頂点などを正確に求めることが困難であるという不都合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、装置独立の色空間において一定の色相を有する平面又は一定の明るさを有する平面との交点を求めて色域の頂点を求めることにより、正確なカラーデバイスの色域を検出し、且つ、交点を用いて色空間逆変換関数を容易に求める色域検出装置と方法、及びこれを用いて色空間逆変換関数を求める方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るカラーデバイスの色域検出装置は、入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する色空間変換部と、第1の色信号の色域の境界面と、一定の色相を有する平面との交点を検出する交点検出部と、検出された交点の原色値に対応する制御ベクトルを計算する制御ベクトル演算部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、交点検出部は、第1の色信号の色域の境界面と、一定の明るさを有する平面との交点をさらに検出する。
【0012】
一方、本発明に係るカラーデバイスの色域検出方法は、入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する段階と、第1の色信号の色域の境界面と一定の色相を有する平面との交点を検出する段階と、検出された交点の原色値に対応する制御ベクトルを算出する段階と、を含むことを特徴とする。
【0013】
好ましくは、装置独立の色空間はWYV色空間であり、交点は、前記WYV色空間のWV平面と、WV平面に平行な且つ色相が一定の平面との交点である。
【0014】
そして、交点は下記式に基づき算出される。
【0015】
【数1】

【0016】
ここで、θは色相のサイズ、
【数2】

は第1の色信号の色域の頂点であって、交点が頂点を結ぶ直線上に存在する頂点である。
【0017】
このとき、交点は、第1の色信号の色域の境界面と、一定の明るさを有する平面との交点である。
【0018】
さらに、交点の制御ベクトルは、第1の色信号の色域の頂点のうち両頂点を直線に結んだときに直線上に交点が存在する両頂点間の距離と、交点と両頂点のうちどちらか一方の頂点との距離の比に基づいて算出する。
【0019】
好ましくは、交点の制御ベクトルは、下記式に基づいて算出される。
【0020】
【数3】

【0021】
ここで、
【数4】

は第1の色信号の色域の両頂点、
【数5】

は交点、qは両頂点間の距離、rは交点と両頂点のうち小さい方の値を有する頂点との距離、Rは交点の原色値に該当する制御ベクトルである。
【0022】
一方、カラーデバイスの色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法は、入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する段階と、第1の色信号の色域の境界面と、一定の色相を有する平面との交点を検出する段階と、検出された交点の原色値に対応する制御ベクトルを算出する段階と、一定の色相を有する平面上において交点を結んだ空間内に存在する任意の点の制御ベクトルを算出する段階と、を含むことを特徴とする。
【0023】
このとき、任意の点の制御ベクトルは、任意の点に隣り合う交点の制御ベクトル、及び下記式に基づいて算出される。
【0024】
【数6】

【0025】
ここで、Zはグレイ軸上の任意の点、
【数7】

は任意の点のベクトル、
【数8】

はZ点のベクトル、
【数9】

はi番目の交点の制御ベクトル、
【数10】

はそれぞれi番目の交点における明るさ及び彩度、
【数11】

は任意の定数、
【数12】

はそれぞれZにおける明るさ及び彩度である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、装置独立の色空間において一定の色相平面又は一定の明るさ平面との交点を用いて装置従属の色空間における制御ベクトルを求めることにより、正確な色域を得ることができる。
【0027】
さらに、本発明は、4以上のチャンネルを有するカラーデバイスのXYZ座標における色値である制御ベクトルを求めて逆変換を得ることにより、制御ベクトルのオーバーフローの有無を調べる方法や、装置従属の色空間の表面をサンプリングする方法よりも簡便である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付した図面に基づいて本発明の好適な実施形態を詳述する。
【0029】
さらに、5チャンネルのカラーデバイスの色域を検出する場合を例挙げながら説明する。
【0030】
図1A及び図1Bは、複数のチャンネルを有するカラーデバイスのノードを示す図である。
図1Aは、nチャンネルのカラーデバイスのノードを示す図であって、n次元の空間が幾何学的に配列されている。n個の原色を有するカラーデバイスは、
【数13】

個の平面及び
【数14】

個の制御点を有する。ここで、各平面よりなる多面体は、色域に該当する。
【0031】
図1Bは、5チャンネルのカラーデバイスのノードを示す図である。すなわち、RGBにY(イエロー)とC(シアン)を追加してなるRYGCBの5チャンネルのカラーデバイスを示すノードダイアグラムである。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態によるカラーデバイスの色域検出装置を示すブロック図である。
【0033】
図2に示すように、本発明に係るカラーデバイスの色域検出装置は、色空間変換部201と、交点検出部203、及び制御ベクトル演算部205を備える。
【0034】
まず、色空間変換部201は、入力色信号を装置独立の色空間であるWYV色空間に変換する。これは、本発明がWYV色空間のWV平面と、一定の色相を有する平面又は一定の明るさを有する平面との交点を求めることにより、色域の頂点を求めて色域を検出するためである。
【0035】
交点検出部203は、WYV色空間に変換された色信号に対し、W軸からθだけ離れているWV平面に垂直な平面と色域境界面との交点、及びW軸からθだけ離れているWV平面に平行な明るさ平面と色域境界面との交点を検出する。このとき、検出は、WYV色空間に存在する多数の平面の頂点、すなわち、WYV色空間における色域の頂点を用いて行われる。このように、WV平面に垂直な平面と色域境界面との交点は、LCH色空間上における色域の頂点となるため、交点間を結ぶことによりLCH色空間上における色域を検出することができる。また、WV平面に平行な且つ一定の明るさを有する平面と色域境界面との交点は、WYV色空間上における色域の頂点となるため、これらの交点を結ぶことによりWYV色空間上において色域を検出することもできる。
【0036】
さらに、制御ベクトル演算部205は、交点検出部203により求められた交点の制御ベクトルを求める。ここで、制御ベクトルはR、G、B、Y、Cなどの原色値を言う。すなわち、制御ベクトル演算部205において、交点に対する原色値を求める。このとき、各交点の制御ベクトルは、WYV色空間に存在する平面の頂点と交点間の距離に対する関数に基づいて求めることができる。そして、これらの交点における制御ベクトルに基づき、同じ色相を有する平面又は同じ明るさを有する平面上に存在する任意の点に対しても制御ベクトルを求めることにより、信号を装置独立の色空間から装置従属の色空間に逆変換可能な逆変換関数を得ることができる。
【0037】
図3及び図4は、図2の色空間変換部201の動作を詳述するための図である。
【0038】
図3は、XYZの線形変換により得られたWYV上に色域を表示したものであって、図1Bのノードダイアグラムに示す制御ベクトルよりなる平面をWYV上における平面として示す図である。図4は、図3のWV平面への透写図である。
【0039】
図3及び図4に示すように、色空間変換部201は、入力色信号を装置独立のWYV色空間に変換する。というのは、色域マッピングは、通常、装置独立の色空間において一定の色相を有する平面、すなわち、明るさ−彩度平面において行われるからである。
【0040】
WYV色空間は、XYZ上のYを明るさ軸とし、WVをブルー−イエロー(B−Y)、レッド−グリーン(R−G)の色度としたとき、RGBシステムにおける原色R、G、Bがそれぞれ120、240、0度となり、各原色における彩度が0.5となる色座標であって、R、G、B、C、M、Yの色相が均一な間隔にて現れる。sRGBシステムのXYZ色空間からWYV色空間への変換式は、下記の通りである。
【0041】
【数15】

【0042】
前式(1)中、各係数はカラーデバイスによって異なる。
【0043】
そして、通常、色相が一定の明るさ−彩度平面において色域マッピングが行われるため、色空間変換部201は、WYVからLCH空間へと色空間を変換する。WYV色空間からLCH色空間への変換式は、下記のように表わせる。
【0044】
【数16】

【0045】
図5は、図2の交点検出部203及び交点の制御ベクトルを検出するための制御ベクトル演算部205の動作を詳述するための図である。
【0046】
図5は、図4のW軸からθだけ離れているWV平面に垂直な平面と色域境界面との交点、交線、及びW軸からθだけ離れているWV平面に平行なL平面(明るさ平面)と色域境界面との交点、交線を示す図である。すなわち、図4のa−b軸からWV平面を見た図である。
【0047】
図5に示すように、V1、V2、V3はWV平面に平行な平面と色域境界面との交点であって、明るさが一定である。C1、C2、C3はWV平面に垂直な平面と色域境界面との交点であって、色相がHue=θと一定である。
【0048】
まず、図5に基づき、交点検出部203の動作を説明する。
【0049】
任意の色相に対する色域を検出するためには、図4におけるW軸からθだけ離れているWV平面に垂直な平面と3次元の色域境界面との交点を計算することにより、LCH色空間上における色域の頂点を求める。ここで、各交点は、色相がθ(hue=θ)である平面と色域平面との交点である。すなわち、交点は図5に示すC1、C2、C3に該当するものであって、各交点は同じ色相を有する。これらの交点の計算は、図1A及び図1Bに示す如き平面を順次に検索しながら行われる。すなわち、図4に示すようなWYV色空間上の平面、すなわち、色域を順次に検索しながら行われる。
【0050】
制御ベクトル演算部205は、交点検出部203において検出された交点の原色値であるR、G、B、C、Yの値を求めることにより、交点の制御ベクトルを得る。このようにして得られた交点の色値に基づき、任意の色域内のポイントの色値である制御ベクトルを得ることができる。よって、得られた色域内の任意のポイントに対する色値を計算することにより、信号を装置独立の色空間から装置従属の色空間に逆変換可能な逆変換関数を得ることができる。
【0051】
図6は、本発明の一実施形態によるカラーデバイスの色域検出方法を示すフロー図である。まず、色空間がXYZ色空間の線形変換の場合を例を挙げながら説明する。
【0052】
図6を参照すれば、入力色信号を装置独立の色空間に色空間変換を行う(S601)。本発明の実施形態においては、色空間変換部201が入力色信号をWYV色空間に変換することと想定している。
【0053】
次いで、交点検出部203において、WYV色空間上の平面と、WV平面に垂直な且つ色相が一定の平面との交点、及びWYV色空間上の平面と、WV平面に平行な且つ明るさが一定の平面との交点をそれぞれ求める(S603)。これらの交点はそれぞれLCH色空間における色域の頂点、WYV色空間における色域の頂点となる。よって、これらの交点とブラック、ホワイトを結んだ領域が色域となる。WYV色空間上の色域とWV平面に垂直な且つ色相が一定の平面との交点は、LCH色空間上の色域の頂点となる。そして、WYV色空間上の色域とWV平面に平行な且つ明るさが一定の平面との交点はWYV色空間上の色域の頂点となる。
【0054】
すなわち、図5において、WYV色空間上の平面とWV平面に垂直な且つ色相が一定の平面との交点となるC1、C2、C3などがLCH色空間上の色域の頂点となり、これらの交点を結ぶことにより、図7Aの如き色域が得られる。そして、図5において、WYV色空間上の平面とWV平面に平行な且つ明るさが一定の平面との交点となるV1、V2、V3などがWYV色空間上の色域の頂点となり、これらの交点を結ぶことにより、図7Bの如き色域が得られる。
【0055】
図5に基づき、交点検出部203における交点の検出方法を説明すれば、下記の通りである。
【0056】
図4におけるW軸からθだけ離れているWV平面に垂直な平面と3次元色域境界面との交点を計算することにより、LCH色空間上における色域の頂点を求める場合を例を挙げながら説明する。図4において、各交点は、色相がθ(hue=θ)である平面と色域平面との交点であって、交点C1、C2、C3は同じ色相を有する。WYV色空間上においてWV平面とWV平面に垂直な平面との交点の計算は、図1A及び図1Bに示す如き平面を順次に検索しながら行われる。
【0057】
交点を検出する動作については、図5に示すように、
【数17】

を求める場合を例を挙げながら説明する。図5において、qはノード5 N5とノード10 N10との間の距離であり、rはノード5 N5と交点C1との間の距離である。
【0058】
色相平面は下記式により求められる。
【0059】
【数18】

【0060】
平面8 P8の
【数19】


【数20】

の直線は、下記の通りである。
【0061】
【数21】

【0062】
ここで、w、y、vは
【数22】


【数23】

の直線上の任意の点である。
【0063】
前式(3)及び(4)から
【数24】

を求めるために、前式(4)をw、vに対して書き直すと、下記の如き式が得られる。
【0064】
【数25】

【0065】
前式(3)及び(5)をそれぞれ
【数26】

に対して解くと、下記のように
【数27】

を求めることができる。
【0066】
【数28】

【0067】
そして、前式(6)及び(4)から
【数29】

を求めることができ、
【数30】

は下記の通りに表わすことができる。
【0068】
【数31】

【0069】
上記交点C1を求めた方式と同様にして他の交点である
【数32】

を求めることができる。従って、このようにして得られた交点C1、C2、C3及びブラック、ホワイトを結ぶことにより、色域を求めることができる。
【0070】
したがって、任意の色相において、色域境界の明るさによる彩度を計算することができる。各頂点におけるL、C値は、前式(2)に基づいて計算することができる。そして、色域境界上の任意のLにおけるCは、下記のように計算される。
【0071】
【数33】

【0072】
ここで、
【数34】

はそれぞれi番目の頂点における彩度と明るさ値である。そして、C、Lは任意の彩度と明るさであって、それぞれi番目の頂点における明るさよりも大きく、且つ、i+1番目の頂点における明るさよりも小さな値を有する。
【0073】
上記交点C1を求める方法と同様にして他の交点も求めることができる。
【0074】
そして、制御ベクトル演算部205において、交点検出部203から検出された各交点の色値である制御ベクトルを求める(S605)。さらに、制御ベクトル演算部203において、各交点の制御ベクトルに基づき任意の点に対する制御ベクトルをも求める(S607)。各交点の制御ベクトルは、WYV色空間に存在する色域の頂点と、交点検出部203において検出された交点との距離に対する関数に基づいて得ることができる。このようにして得られた交点の制御ベクトルに基づき、任意の点に対する制御ベクトルを求めることができる。このとき、任意の点に対する制御ベクトルは、LCHの色相が一定の平面において求めてもよく、WYVの明るさが一定の平面において交点の制御ベクトルに基づき求めても良い。
【0075】
まず、交点検出部203において検出された交点に基づき、制御ベクトル演算部205において交点の制御ベクトルを計算する方式について説明する。
【0076】
C1における制御ベクトルは、図5におけるN5とC1間の距離(N5−C1)、C1とN10(C1−N10)間の距離関数に基づいて得ることができる。WYVはXYZの線形変換であり、XYZもカラーデバイスの5つの制御ベクトルR、Y、G、C、Bの線形変換であるため、N5、N10、C1から、C1における制御ベクトルをN5−C1、C1−N10の距離関数に基づいて求めることができる。ここで、N5−N10、C1−N10の距離をそれぞれq、rとしたとき、それぞれの距離は下記の通りに表わすことができる。
【0077】
【数35】

【0078】
N5、N10、C1における制御ベクトルをそれぞれ
【数36】

としたとき、
【数37】

はq、rの比に基づき下記のように求めることができる。
【0079】
【数38】

【0080】
制御ベクトルの残りの元素Y、G、C、Bに対しても、上述した方法と同様にして求めることができる。従って、他の交点における制御ベクトルも上術した方法により求めれば良い。
【0081】
図7A及び図7Bは、本発明の一実施形態による色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法を説明するための図である。
【0082】
色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法は、色域を検出するために得られた交点に基づき求められたLCH色空間上の色域内の任意の点に対する制御ベクトルを計算することにより行われる。又は、WYV色空間上の色域内の任意の点に対する制御ベクトルを計算することにより行われる。図7Aは、LCH色空間における逆変換関数を求める場合であり、図7Bは、WYV色空間における逆変換関数を求める場合である。
【0083】
図7A及び図7Bに基づき、LCH色空間上の色域内の任意の点に対する制御ベクトルを求める方法を説明すれば、下記の通りである。
【0084】
図7A及び図7Bは、図5における色域に出会う同じ色相平面と同じ明るさ平面をそれぞれ示す図である。図7A及び図7Bに示すように、Q、Q’はそれぞれ同じ色相平面と同じ明るさ平面における任意の点である。そして、Z、Z’はグレイ軸上の基準点を言う。
【0085】
まず、図5におけるWYV色空間の平面に出会う同じ色相を有する平面を示す図7Aに基づき、LC平面、すなわち、同じ色相平面上の任意の点における制御ベクトルを求める方法について説明する。
【0086】
図5に基づいて上述したように、LCH色空間上における色域の頂点の制御ベクトルを知っているため、図7Aに示すように、LC平面の任意の点Qに対する制御ベクトルを求めることができる。点QがLC平面上の領域
【数39】

に属するとしたとき、点Qは、下記式の如きベクトル形式で表わされる。
【0087】
【数40】

【0088】
ここで、
【数41】

は任意の点Qが属する平面であって、図5に示す交点(C1、C2、C3など)のうちQに隣り合う両交点とZがなす平面である。
【0089】
前式(11)をL、Cに対する方程式に書き直すと、下記の通りである。
【0090】
【数42】

【0091】
前式(12)の方程式を解くと、
【数43】

を求めることができる。従って、点Qにおける制御ベクトル
【数44】

は、下記の通りに表わすことができる。
【0092】
【数45】

【0093】
このように、XYZにおける制御ベクトルは、上術した如き方法により求めることができる。次数が4以上であるカラーデバイスにおいては、逆行列が存在しないため、XYZから制御ベクトルを求め難い場合にも上術した如き方法により制御ベクトルを求めることができる。次数が4以上である場合には、多数の解が存在するが、これは、点Zの位置によって異なる。例えば、Zがブラックであれば、最大の明るさを有する解であり、Zがホワイトであれば、最小の明るさを有する解であり、Zの明るさが0.5(L=0.5)であれば、中間ほどの明るさを有する解である。
【0094】
図7Bは、WYV色空間上における平面と同じ明るさを有する平面との交点をWV平面に示す図である。すなわち、図7Bは、図5のV1、V2、 V3などの交点を結ぶWV平面を表す図である。
【0095】
図7Bには、図7Aに基づき上述した場合とは異なる方法、すなわち、同じ色相平面上において制御ベクトルを求めるのではなく、明るさが一定のWV平面を用いて制御ベクトルを求める方法が示してある。明るさが一定の平面を用いて制御ベクトルを求める方法は、上述したように、同じ色相を有する平面を用いる方法と同じである。すなわち、図5に基づき上述したように、各頂点の制御ベクトルを知っているため、図7Bに示すように、WV平面の任意の点Q’に対する制御ベクトルを求めることができる。
【0096】
点Q’がWV平面上の領域
【数46】

に属するとしたとき、点Q’は、下記式の如きベクトル形式で表わされる。
【0097】
【数47】

【0098】
前式(14)をW、Vに対する方程式に書き直すと、下記の通りに表わすことができる。
【0099】
【数48】

【0100】
前式(15)の方程式を解くと、
【数49】

を求めることができる。従って、点Q’における制御ベクトル
【数50】

は、下記の通りである。
【0101】
【数51】

【0102】
上述したように、交点を結んだ色域内に存在する任意の点に対する制御ベクトルを求めることにより、信号を装置独立の色空間から装置従属の色空間へと変換可能な逆変換関数を求めることができる。
【0103】
一方、以上では、色域の色空間がWYVなどのXYZの線形変換である場合に対して説明したが、色空間がCIE L*a*b、CIE L*u*b、DIN99などのXYZの非線形変換である場合には、下記の如き方法により色域を検出することができる。
【0104】
以上では、色空間がXYZの線形変換である場合を説明したが、色空間がXYZの非線形変換である場合には、下記の如き方法により求めることができる。非線形変換である場合に色域を検出する方法には、所定の色空間をサンプリングして所定の色相平面に出会う平面における交点を求め、各交点を結んで色域を検出する方法と、非線形色空間を線形色空間に変換した後、線形変換であるときの色域を検出する上術した如き方式を用いて変換された線形色空間を逆変換し、次いで、反復法、すなわち、制御ベクトルのオーバーフローの有無を調べることにより色域を検出する方法と、がある。
【0105】
まず、前者の方法は、図1Bに示すノードダイアグラムにおいて、ノードとノード間をサンプリングして各平面を多数に分けることにより細かいノードダイアグラムを作成する。そして、図5に示すように、3次元空間上において色相平面に出会う平面を探して交点を求め、各交点を結んで色域を求める。すなわち、この方法は、ノードダイアグラムにおいてノードとノードとの間をサンプリングして細かいノードダイアグラムを作成した後、線形変換である場合と同じ方法により色域を検出する。このとき、サンプリングの度合いによって色域の正確度及び複雑度は異なってくる。
【0106】
後者の方法は、非線形色空間から線形色空間に変換した後、これを逆変換して制御ベクトルのオーバーフローの有無を調べることにより色域を検出する。
【0107】
以上では、5チャンネルのカラーデバイスの色域を求める場合を例を挙げながら説明したが、上術した方法と同様にしてnチャンネルのカラーデバイスの色域を求めることができる。さらに、色域と色域における制御ベクトルをルックアップテーブルに格納してハードウェアに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1A】複数のチャンネルを有するカラーデバイスのノードを示す図である。
【図1B】複数のチャンネルを有するカラーデバイスのノードを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態によるカラーデバイスの色域検出装置を示すブロック図である。
【図3】図2の色空間変換部の動作を説明するための図である。
【図4】図2の色空間変換部の動作を説明するための図である。
【図5】図2の交点検出部及び交点の制御ベクトルを検出するための制御ベクトル演算部の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態によるカラーデバイスの色域検出方法を示すフロー図である。
【図7A】本発明の一実施形態による色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法を説明するための図である。
【図7B】本発明の一実施形態による色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0109】
201:色空間変換部
203:交点検出部
205:制御ベクトル演算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する色空間変換部と、
前記第1の色信号の色域の境界面と、一定の色相を有する平面との交点を検出する交点検出部と、
前記検出された交点の原色値に対応する制御ベクトルを計算する制御ベクトル演算部と、を備えることを特徴とするカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項2】
前記交点検出部は、前記第1の色信号の色域の境界面と、一定の明るさを有する平面との交点をさらに検出することを特徴とする請求項1に記載のカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項3】
前記色空間変換部は、前記入力色信号が非線形色信号の場合には、前記入力色信号を線形色信号に変換した後、前記装置独立の色空間に変換して前記第1の色信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項4】
前記装置独立の色空間は、WYV色空間を含み、Yは明るさ、WはB−Y(ブルー−イエロー)色度、VはR−G(レッド−グリーン)色度を表わすことを特徴とする請求項1に記載のカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項5】
前記交点検出部は、色相が一定の平面又は明るさが一定の平面上の任意の点に対して少なくとも一つの制御ベクトルを検出することを特徴とする請求項1に記載のカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項6】
前記装置独立の色空間はWYV色空間であり、前記交点検出部は、W軸から所定の角度に位置するWV平面に平行な明るさ平面と、第1の色信号の色域境界との間の交線を用いて少なくとも一つの交点を検出することを特徴とする請求項1に記載のカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項7】
前記制御ベクトル演算部は、少なくとも一つの制御ベクトルに基づいて前記装置独立の色空間を装置従属の色空間に変換する逆変換関数を生成することを特徴とする請求項1に記載のカラーデバイスの色域検出装置。
【請求項8】
入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する段階と、
前記第1の色信号の色域の境界面と、一定の色相を有する平面との交点を少なくとも一つ検出する段階と、
前記検出された少なくとも一つの交点の原色値に対応する少なくとも一つの制御ベクトルを算出する段階と、を含むことを特徴とするカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項9】
前記装置独立の色空間はWYV色空間であり、前記少なくとも一つの交点は、前記WYV色空間のWV平面と、前記WV平面に平行な且つ色相が一定の平面との交点であることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項10】
前記少なくとも一つの交点は、下記式(1)に基づき算出されることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【数1】

但し、θは色相のサイズ、
【数2】

は前記第1の色信号の色域の頂点であって、前記交点が前記頂点を結ぶ直線上に存在する頂点である。
【請求項11】
前記少なくとも一つの交点は、前記第1の色信号の色域の境界面と、一定の明るさを有する平面との間のものであることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項12】
前記交点の制御ベクトルは、前記第1の色信号の色域の頂点のうち両頂点を直線に結んだときに直線上に前記交点が存在する両頂点間の距離と、前記交点と前記両頂点のうちどちらか一方の頂点との間の距離の比に基づき算出されることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項13】
前記交点の制御ベクトルは、下記式(2)に基づき算出されることを特徴とする請求項12に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【数3】

但し、
【数4】

は前記第1の色信号の色域の両頂点、
【数5】

は前記交点、qは前記両頂点間の距離、rは前記交点と前記両頂点のうち小さい方の値を有する頂点との距離、Rは前記交点の原色値である。
【請求項14】
前記入力色信号が非線形色信号の場合には、前記入力色信号を線形色信号に変換した後、前記装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力することを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項15】
前記少なくとも一つの交点の検出は、前記装置独立の色空間において多数の平面の頂点を用いて行われることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項16】
前記少なくとも一つの交点は、LCH色空間の色域の頂点であることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項17】
前記装置独立の色空間はWYV色空間を含み、少なくとも一つの交点の検出は、W軸の所定の角度に位置するWV平面に垂直な平面と、前記第1の色信号の色域境界との交線を用いて行われることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項18】
前記装置独立の色空間はWYV色空間を含み、少なくとも一つの交点の検出は、W軸の所定の角度に位置するWV平面に平行な明るさ平面と、前記第1の色信号の色域境界との交線を用いて行われることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項19】
前記少なくとも一つの制御ベクトルの計算は、前記装置独立の色空間の頂点の関数及び少なくとも一つの交点間の距離に基づいて行われることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項20】
前記少なくとも一つの制御ベクトルの計算は、色相が一定の平面又は明るさが一定の平面上の任意の点に対して行われることを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項21】
前記少なくとも一つの制御ベクトルに基づき、前記装置独立の色空間を装置従属の色空間に変換する逆変換関数を生成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のカラーデバイスの色域検出方法。
【請求項22】
入力色信号を装置独立の色空間に変換して第1の色信号を出力する段階と、
前記第1の色信号の色域の境界面と、一定の色相を有する平面との交点を少なくとも一つ検出する段階と、
前記検出された交点の原色値に対応する制御ベクトルを少なくとも一つ算出する段階と、
前記一定の色相を有する平面上において前記交点を結んだ空間内に存在する少なくとも一つの任意の点の制御ベクトルを算出する段階と、を含むことを特徴とするカラーデバイスの色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法。
【請求項23】
前記少なくとも一つの任意の点の制御ベクトルは、前記少なくとも一つの任意の点に隣り合う前記少なくとも一つの交点の制御ベクトルに基づいて算出されることを特徴とする請求項22に記載のカラーデバイスの色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法。
【請求項24】
前記任意の点の制御ベクトルは、下記式(3)に基づき算出されることを特徴とする請求項23に記載のカラーデバイスの色域検出方法を用いて色空間逆変換関数を求める方法。
【数6】

但し、Zはグレイ軸上の任意の点、
【数7】

は前記任意の点のベクトル、
【数8】

はZ点のベクトル、
【数9】

はi番目の前記交点の制御ベクトル、
【数10】

はそれぞれi番目の前記交点における明るさ及び彩度、
【数11】

は任意の定数、
【数12】

はそれぞれZにおける明るさ及び彩度である。
【請求項25】
前記少なくとも一つの制御ベクトルと前記少なくとも一つの任意の点の制御ベクトルに基づいて色空間逆変換関数を計算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載のカラーデバイスの色域検出方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2006−50565(P2006−50565A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172803(P2005−172803)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】