説明

カラーフィルターの製造方法及びその製造装置

【課題】ブラックマトリックスに最適な撥インキ性を具備させる事により高品質なカラーフィルターをより効率的に製造する事が出来るカラーフィルタの製造方法及び装置を得る。
【解決手段】透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する第1の工程と、前記透明基板を室温の大気中で所定時間待機させ予備乾燥を行う第2の工程と、減圧乾燥作業を行なう第3の工程と、前記透明基板にブラックマトリックスのパターンを露光し現像し焼成する第4の工程と、前記ブラックマトリックスの開口部にインキジェット方式により所望の色のインキを吐出して着色層を形成する第5の工程によりカラーフィルターを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソ方法によりブラックマトリックスを形成するカラーフィルターの製造方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカラーフィルターの生産はフォトリソ方式を適用している事が一般的である。フォトリソ方式ではまず顔料等を含んだ感光性樹脂組成物の高分子溶液をガラス基板等の透明基板上に均一に塗工した後、減圧乾燥装置等の装置を使用し溶剤を除去する。次に必要とされるパターンで作られたマスク等を使用して紫外線等で露光作業を行い、必要な色素パターンを感光させている。更に現像液等を使用して現像工程を行い、その透明基板上から不要な感光性樹脂組成物を除去している。その後オーブン装置、ホットプレート装置等の焼成装置を使用し、高温(例えば230℃程度)焼成を行い前記感光性樹脂組成物中に残留した溶剤の完全除去及び前記感光性樹脂組成物中の高分子を高温で架橋させ色素パターンの硬化を行い、カラーフィルターに通常要求されている前記色素パターンのガラス基材への密着強度や耐久性、耐薬品性等の諸物性を得ることが出来、カラーフィルターに必要な色について先の工程を繰り返し、結果高品質なカラーフィルターを製造することが出来ていた。しかしながら、フォトリソ方式では各色毎に高価な塗布装置、露光機、現像装置が必要となり必要な透明基板サイズの大型化が進むに従ってその設備を導入するコストも膨大になるなどといった問題があった。
【0003】
そこで現在は前記フォトリソ方式に代わり、インキジェット方式がカラーフィルターの作成方法として注目されている。インキジェット方式ではカラーフィルターに必要な色数を同時に透明基板へ描画する事が出来その際フォトリソ方式では必要不可欠である露光工程及び現像工程が不要であるため、前記それぞれの製造ラインを削除することによる初期の設備投資の削減が期待される。更にフォトリソ方式では、現像工程で不要な感光性樹脂組成物を剥がし取る必要があり、その分材料にムダが生じていたが、インキジェット方式では製品に必要なインキのみを透明基板上に撃つためその分フォトリソ方式と比較して材料費の削減が出来る。またノズル数を増やしたりスキャン数を増やしたりする事でサイズの大型化に対応できるので、世の中の要望にも合致している。インキジェット方式でカラーフィルターを作成する場合には、ごく微量のインキを、微小な穴から定められた着色層領域内に正確に吐出する事が求められる。そのため、一般的には固形分濃度が低いインキを前記インキジェット用インキとして用いるが、そのインキを単独で透明基板上に吐出した場合、それが透明基板上で濡れ広がってしまうため、そのままでは必要なパターンを形成する事が出来ないので工夫が必要であった。
【0004】
そこで、特許文献1では、フッ酸系撥水・撥油剤等の撥インキ剤を含有させたブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物をグラビア印刷法、フォトリソ方式、熱転写法等の手法を用いてパターン形成させる事によって撥インキ性を具備するブラックマトリックスを設け、その開口部に所望の色インキをインキジェットで吐出する事によって、着色層領域内のみに前記色インキを定着させるといった手法が提案されていた。これらのブラックマトリックスを作成する手法の中でも、フォトリソ方式は他の手法と比較して、特に高精細なパターンを容易に作成する事が出来る代表的な手法である。通常のフォトリソ方式では、タクト短縮のため透明基板塗工直後に減圧乾燥装置等で急激に透明基板上の感光性樹脂組成物を乾燥させる事が一般的であり、この事により透明基板に塗工された感光性樹脂組成物中の溶剤が塗工直後に粗方除去される。フォトリソ方式を使用してカラーフィルターを作成する場合は透明基板に感光性樹脂組成物を塗工した直後、感光性樹脂組成物の内部の溶剤分を取り除くため1台又は複数台の減圧乾燥装置を乾燥工程用に利用する事が一般的である。また、特許文献2では、ブラックマトリックスをインキに対して親和性を有する層と非親和性を有する層を積み上げ、多層構造にする手法が提案されていた。
【0005】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平11−271753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、インキジェット用のブラックマトリックスを作成する際にこの従来の方法をそのまま使用した場合、「混色」と呼ばれる欠陥が発生してしまう事があり、問題となっていた。「混色」とはブラックマトリックス用感光性樹脂組成物中の撥インキ剤量が少ない、撥インキ剤が十分ブラックマトリックスの表面に出て来ていない、又はその両方等の理由でブラックマトリックスにおいて撥インキ性を十分得る事が出来ない場合に発生してしまう欠陥の一つであって、ブラックマトリックスの開口部中にインキジェット方式で吐出された所望の色インキが、撥インキ性が不十分なブラックマトリックスでは止められず濡れ広がってしまい、結果隣り合った画素の別の色と混ざり合ってしまう事により発生するものである。溶剤分が少なくなったブラックマトリックス用感光性樹脂組成物中では撥インキ剤は自由に動き難くなるため、感光性樹脂組成物中で拡散され難くなりブラックマトリックス表面に十分には移行出来なくなってしまい、その事によってブラックマトリックスの撥インキ性発現低下が引き起こされ、前記「混色」欠陥が発生してしまっていた。そのため、透明基板に塗工された撥インキ剤を含有するブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を緩やかに乾燥させる方法を検討する必要があった。
【0007】
前記「混色」欠陥の発生を防止するためには、前記ブラックマトリックスに最適な撥インキ性を具備させる事が挙げられ、前記のブラックマトリックス用感光性樹脂組成物を緩やかに乾燥させる方法以外として、含有される撥インキ剤量そのものを増やし、前記ブラックマトリックス表面に撥インキ剤をより多く移行させるといった材料的なアプローチが考えられる。しかし、一般的に撥インキ剤は高価なフッ素等を使用しているため撥インキ剤量の増加は、材料費のコストアップにつながってしまうので、カラーフィルターの生産手法の中で低コストがメリットであるインキジェット手法としては問題となっていた。また、前記「混色」欠陥を排除するため撥インキ剤量を増やしすぎてしまった場合は、撥インキ性が過度に高くなってしまうため、今度はブラックマトリックスの開口部中に吐出された前記色インキが必要以上にはじかれる事によって、色インキが部分的に画素から抜けてしまう「白抜け」呼ばれる欠陥が生じてしまう事があり、問題となっていた。前記ブラックマトリックスの撥インキ性は製品として必要なブラックマトリックスの膜厚や線幅及び色インキの固形分量等様々な外乱要因の影響を受けやすいので、上記「混色」「白抜け」等の欠陥が生じないよう感光性樹脂組成物中の撥インキ剤量を決める事は難しく、多品種の生産を想定した場合、材料的なアプローチのみで目的の撥インキ性を実現する事は困難である。
【0008】
また、特許文献2では、前記の「混色」欠陥が防止されるが、この手法では、ブラックマトリックスを多層化する必要があり、そのためフォトリソ工程を複数回行なう必要があり、結果プロセスの複雑化とコストアップを招いてしまうといった問題があった。
【0009】
そのため、本発明が解決しようとする課題は、ブラックマトリックスに最適な撥インキ性を具備させ、容易に高品質なカラーフィルターを効率的に製造する事が出来る製造方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この課題を解決するために、透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する第1の工程と、前記透明基板を室温の大気中で所定時間待機させ予備乾燥を行う第2の工程と、減圧乾燥作業を行なう第3の工程と、前記透明基板にブラックマトリックスのパターンを露光し現像し焼成する第4の工程と、ブラックマトリックスの開口部にインキジェット方式により所望の色のインキを吐出して着色層を形成する第5の工程とから成ることを特徴とするカラーフィルターの製造方法である。
【0011】
また、本発明は、上記第2の工程における上記所定時間が30秒以上3分以内で有る事を特徴とする上記のカラーフィルターの製造方法である。
【0012】
また、本発明は、上記第2の工程が、上記透明基板上の上記感光性樹脂組成物に風を当てて予備乾燥を行う事を特徴とする上記のカラーフィルターの製造方法である。
【0013】
また、本発明は、上記風を当てる手段にエアーナイフを使用する事を特徴とする上記のカラーフィルターの製造方法である。
【0014】
また、本発明は、上記風を当てる手段に回転羽を使用する事を特徴とする上記のカラーフィルターの製造方法である。
【0015】
また、本発明は、透明基板を設置する定盤と、前記定盤上で前記透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する塗工ノズルと、前記透明基板を搬送する搬送用ローラーと、前記透明基板を前記搬送用ローラー上で30秒以上3分以内待機させることで前記透明基板上の前記感光性樹脂組成物を予備乾燥させる搬送制御装置と、前記透明基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置から成る、ブラックマトリックス層形成装置である。
【0016】
また、本発明は、透明基板を設置する定盤と、前記定盤上で前記透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する塗工ノズルと、前記透明基板を搬送する搬送用ローラーと、前記搬送ローラー上の前記透明基板に風を当て前記感光性樹脂組成物を予備乾燥するエアーナイフと、前記透明基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置から成る、ブラックマトリックス層形成装置である。
【0017】
また、本発明は、透明基板を設置する定盤と、前記定盤上で前記透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する塗工ノズルと、前記定盤上の前記透明基板に風を当て前記感光性樹脂組成物を予備乾燥する回転羽と、前記透明基板を搬送する搬送用ローラーと、前記透明基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置から成る、ブラックマトリックス層形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、カラーフィルタの製造方法において、ブラックマトリックス層を形成する際に、ブラックマトリックス層形成装置を用い、待機工程を導入することで、感光性樹脂組成物中の撥インキ剤の拡散とブラックマトリックス表面への移行を十分に行なえ、最適な撥インキ性を具備したブラックマトリックを透明基板上に作成することができ、それにより、インキジェット方式により着色層を形成する場合に「混色」「白抜け」といった欠陥の無い高品質なカラーフィルターを効率的に製造できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態における、ブラックマトリックス層形成装置を用いて、ブラックマトリックス層を減圧乾燥するまでの製造工程を示す図である。
(1)塗工工程
まず、平行な定盤3上に置かれた所定の透明基板2に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工ノズル1にて均一に塗工する。図1は塗工ノズル1が移動する形であるが、均一に塗工が出来るのであれば逆に塗工ノズル1が固定で定盤3が移動する形でも良い。
【0020】
前記撥インキ剤は、前述の通り、インキジェット方式でブラックマトリックス開口部に吐出された所望の色インキがブラックマトリックスを境として隣接する画素へ侵入してしまう事を防止するためにブラックマトリックス用感光性樹脂組成物に添加する物だが、その目的を達する事が出来るものであればその材質としては特に制限は無い。代表的な物としてはシリコーン系、フッ素系のものがあり、具体的な例としては、シロキサン成分を含むシリコーン樹脂やシリコーンゴム、この他にはフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化エチレン等や、これらの共重合体等のフッ素樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
塗工ノズル1には、例えばスプレーパターン断面が点状、充円形状、円環形状、四角形状、扁平状更にはノズルボディに複数の直線状スプレーオリフィスを備えたノズル、スリットのオリフィスから膜状に感光性樹脂組成物を噴射するスリットノズル、ノズルのボディに複数のコーン状スプレーオリフィスを設けたノズル、2重又は3重の渦巻状のスプレーパターンを持つノズル等様々なものが有るが、特にその制限は無く目的にあった物を適時選択すれば良い。また材質についても黄銅、ステンレス鋼、プラスチック等があるが特にその制限は無く、目的にあった物を適時選択すれば良い。更にその圧力・流量・スプレー角度・スプレー幅についても特に制限は無く、目的にあった物を適時選択すれば良い。更に構成についても1台のみでも複数の同様又は異なったノズルを連続で使用しても良い。
【0022】
(2)待機工程(予備乾燥工程)
透明基板2に塗工後に、30秒以上3分以下の待機時間で待機または養生させることで予備乾燥させる。待機の方法に特に制限はなく、ストッカ−等で待機または養生されていても良い。更に、透明基板2の塗布面にムラ等が生じるなどといったレベルの振動が与えられないのであれば、この間、次工程の減圧乾燥装置6へ透明基板2が搬送されていても何ら問題は無い。
【0023】
この待機時間を敢えて設ける事により、感光性樹脂組成物中から溶剤を緩やかに除去させる事が出来るため、感光性樹脂組成物中の溶剤リッチな状態を長く保持する事が出来る。その分撥インキ剤が十分に樹脂組成物内で拡散出来、ブラックマトリックス表面に移行し易くなり、そこでの撥インキ剤の発現性を十分高める事が出来るため、結果ブラックマトリックスを境に色インキを十分はじく事が出来「混色」欠陥の発生を防止する事が出来る。更にインキジェット用のブラックマトリックスは前述の通り、隣り合った色インキ同士が濡れ広がり混色しないようその境になる必要があるので、通常のブラックマトリックス及び各色全てをフォトリソ方式で作成する場合と比較して、塗布量も多い事が一般的である。因って、ブラックマトリックス用感光性樹脂組成物中に含有される溶剤の絶対量も多くなってしまうため、通常のフォトリソの工程では必要の無い前記待機時間が、この多量の溶剤を緩やかに乾燥させるか急激に乾燥させるかを左右し、結果インキジェット方式用のブラックマトリックスを作成する際の撥インキ剤の発現性に対して大きく影響を及ぼすことが本発明者の実験により明らかになった。加えて、この待機時間の長短を30秒以上3分以内で制御する事で、撥インキ剤が感光性樹脂組成物の表面に移行しすぎて過度に撥インキ性が高くなってしまう事を防止出来、「白抜け」欠陥の発生を防ぐ事が出来る。
【0024】
(3)減圧乾燥工程
待機工程終了後、減圧乾燥装置6にて減圧乾燥作業を行なうことで、透明基板2上にブラックマトリックス層を形成する。減圧乾燥方法及び装置に制限は無く、目的にあった方法及び装置を適時選択すれば良く、台数も1台でも複数の装置を連続で使用しても良い。但し、製品の最終的な乾燥不足を防止するためには1台目の減圧到達圧条件は1500Pa以下である事が望ましい。
【0025】
減圧乾燥工程後は、フォトリソ方式でブラックマトリックス層にブラックマトリックスのパターンを露光する露光工程、次に現像工程、焼成工程等を行ない、フォトリソ方法でブラックマトリックスを形成する。但し、現像工程後,焼成工程前に塗工面全体に紫外線の照射を行なう事は「白抜け」の欠陥発生を防止する上で有効な工程である。
【0026】
以上の製造方法で製造したブラックマトリックスの開口部に所望の色インキをインキジェットで吐出し色インキを定着させる。こうしてブラックマトリックスの開口部に着色層を形成することでカラーフィルタを製造する。
【0027】
<第2の実施形態>
図2は本発明の第2の実施形態における、ブラックマトリックス層形成装置を用いて、ブラックマトリックス層を減圧乾燥するまでの製造工程を示す図である。第2の実施形態では、第1の実施形態の待機工程が、エアーナイフ4により透明基板上の塗工面に風を当てて予備乾燥する。(1)塗工工程、(3)減圧乾燥工程、及びその後の工程は、前述の図1と同様である。
【0028】
(2)待機工程(予備乾燥工程)
感光性樹脂組成物を塗工された透明基板2を搬送ローラー5で減圧乾燥装置6に送る。この時エアーナイフ4よりエアーを出し、前記塗工面に対し均一に風を当て予備乾燥を行なう。図2ではエアーナイフ4が固定で、透明基板がその下を流れるようになっているが、逆にエアーナイフ4が、固定された透明基板2上を移動する形であっても良い。また、図2では透明基板2の搬送方法として搬送ローラー5を採用しているが、エアーを前記塗工面に均一に当てる事が出来れば、その方法に特に制限はない。
【0029】
エアーナイフ4には例えばスプレーパターン断面が点状、充円形状、円環形状、四角形状、扁平状、更にはノズルボディに複数の直線状スプレーオリフィスを備えたノズルから成るエアーナイフ4、スリットのオリフィスから膜状にエアーを噴射するスリットノズルから成るエアーナイフ4、ノズルのボディに複数のコーン状スプレーオリフィスを設けたエアーナイフ4、2重又は3重の渦巻状のスプレーパターンを持つエアーナイフ4等様々なものが有るが特にその制限は無く、目的にあった物を適時選択すれば良い。また材質についても黄銅、ステンレス鋼、プラスチック等があるが特にその制限は無く、目的にあった物を適時選択すれば良い。更にその圧力・流量・スプレー角度・スプレー幅についても特に制限は無く、目的にあった物を適時選択すれば良い。更に構成についても1台のみでも複数の同様又は異なったノズルを連続で使用して良い。
【0030】
この予備乾燥が有る場合は減圧乾燥を塗布直後に行う場合と比較して、緩やかに感光性樹脂組成物から溶剤を除去させる事が出来るため、その分感光性樹脂組成物中の撥インキ剤が感光性樹脂組成物の表面に移行し易い状態を長く保持する事が出来、結果撥インキ剤の発現性を高める事が出来る。更にエアーナイフ4から出るエアー流量・圧の強弱等、搬送ローラー5の搬送速度、エアーナイフ4の角度等を調整する事で、撥インキ剤が感光性樹脂組成物の表面に移行しすぎて過度に撥インキ性が高くなってしまう事を防止出来、最
適な撥インキ性をブラックマトリックスに与える事が出来る。
【0031】
<第3の実施形態>
図3は本発明の第3の実施形態における、ブラックマトリックス層形成装置を用いて、ブラックマトリックス層を減圧乾燥するまでの製造工程を示す図である。第3の実施形態の待機工程(2)では、塗工面上部に回転羽7を設置し回転させて送風することで透明基板上の塗工面に風を当てて予備乾する。
(1)塗工工程、(3)減圧乾燥工程は、第1の実施形態と同様である。
【0032】
(2)待機工程(予備乾燥工程)
前記透明基板2に感光性樹脂組成物を塗工した後、塗工ノズル1を一旦退避させ、定盤3上方に設置してある回転羽7を前記塗工面に近づける。それを回転させる事で前記塗工面を均一に乾燥させる。その時の羽の高さ、回転速度、回転数等で最適な撥インキ性を簡単に実現する事が出来る事は図2と同様である。また回転羽7を回転させずに、透明基板2を動かないよう真空吸着等で固定した定盤3のみを回転又は回転羽7と定盤3両方を回転させても良い。しかし、定盤3を高速で回転した場合は透明基板2上の塗布された感光性樹脂組成物が遠心力で円周方向に広がってしまう可能性があるので膜厚の管理に注意が必要である。
【実施例1】
【0033】
図1の製造手順において、黒色の顔料と撥インキ剤を含有した感光性樹脂組成物をガラスの透明基板2上にスリットコーターを使用して均一に2.3μmの厚みで塗工した。次に待機工程(2)で、搬送用ローラー5を搬送制御装置が制御し、透明基板2を搬送用ローラー5の上で30秒間待機させる。次に、到達圧133Paの条件下で減圧乾燥を加え、90℃の条件下でホットプレートにてプレベークをした。更に投影露光機にて60mJ/cm2の露光量でブラックマトリックスのパターンを露光し、無機アルカリ系の現像液を使用して現像を行い、線幅22.3μmの線幅を持つブラックマトリックスを得た。次に、紫外線を塗布面全面均一に当て、クリーンオーブンを使用して焼成作業を行った。その透明基板2の所定の箇所にインキジェット方式を用いてブラックマトリックスの開口部にレッド、グリーン、ブルー各色の色インキを適量吐出した。この時、適切な撥インキ性がブラックマトリックスで得られていたため、「混色」「白抜け」等の欠陥は見られず、結果高品質なカラーフィルターを得る事が出来た。
【実施例2】
【0034】
図1の待機工程(2)で、3分間の待機時間を設ける。それ以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターを製作したところ、適切な撥インキ性がブラックマトリックスで得る事が出来、「混色」等の欠陥は見られず、結果高品質なカラーフィルターを得る事が出来た。
【実施例3】
【0035】
図2の製造手順において、待機工程(2)で、エアーナイフ4による微風を透明基板2上の感光性樹脂組成物に当てることで感光性樹脂組成物を予備乾燥する。それ以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターを製作したところ、適切な撥インキ性がブラックマトリックスで得る事が出来、「混色」等の欠陥は見られず、結果高品質なカラーフィルターを得る事が出来た。
【実施例4】
【0036】
図3の製造手順において、待機工程(2)で、回転羽7を使用して微風による予備乾燥工程を行なう。それ以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターを製作したところ、適切な撥インキ性がブラックマトリックスで得る事が出来、「混色」等の欠陥は見られず、
結果高品質なカラーフィルターを得る事が出来た。
【0037】
<比較例1>
図1の製造手順において、前記感光性樹脂組成物をガラスの透明基板2上に均一に塗工した後、待機工程(2)無しで、10秒以内に減圧乾燥を行なう。それ以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターを製作した所、ブラックマトリックスの撥インキ性の発現が不足してしまい「混色」の欠陥が発生し、結果高品質なカラーフィルターを得る事は出来なかった。
【0038】
<比較例2>
図2の製造手順において、前記感光性樹脂組成物をガラスの透明基板2上に均一に塗工した直後、エアーナイフ4による乾燥のみを行ない、減圧乾燥を実施しない。それ以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターを製作した所、乾燥不足によるムラが発生してしまい、結果高品質なカラーフィルターを得る事は出来なかった。
【0039】
<比較例3>
図1の製造手順において、前記感光性樹脂組成物をガラスの透明基板2上に均一に塗工した後、待機工程(2)として、5分間の待機時間を設け、その後に減圧乾燥を実施する。それ以外は実施例1と同様にしてカラーフィルターを製作した所、ブラックマトリックスの撥インキ性の発現が高すぎたため、「白抜け」欠陥が発生してしまい、結果高品質なカラーフィルターを得る事は出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態のブラックマトリックス層形成装置、および、ブラックマトリックス層の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態のブラックマトリックス層形成装置、および、ブラックマトリックス層の製造工程を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態のブラックマトリックス層形成装置、および、ブラックマトリックス層の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・塗工ノズル
2・・・透明基板
3・・・定盤
4・・・エアーナイフ
5・・・搬送ローラー
6・・・減圧乾燥装置
7・・・回転羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する第1の工程と、前記透明基板を室温の大気中で所定時間待機させ予備乾燥を行う第2の工程と、減圧乾燥作業を行なう第3の工程と、前記透明基板にブラックマトリックスのパターンを露光し現像し焼成する第4の工程と、前記ブラックマトリックスの開口部にインキジェット方式により所望の色のインキを吐出して着色層を形成する第5の工程とから成ることを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程における前記所定時間が30秒以上3分以内で有る事を特徴とする請求項1記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程が、前記透明基板上の前記感光性樹脂組成物に風を当てて予備乾燥を行う事を特徴とする請求項1記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記風を当てる手段にエアーナイフを使用する事を特徴とする請求項3記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項5】
前記風を当てる手段に回転羽を使用する事を特徴とする請求項3記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項6】
透明基板を設置する定盤と、前記定盤上で前記透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する塗工ノズルと、前記透明基板を搬送する搬送用ローラーと、前記透明基板を前記搬送用ローラー上で30秒以上3分以内待機させることで前記透明基板上の前記感光性樹脂組成物を予備乾燥させる搬送制御装置と、前記透明基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置から成る、ブラックマトリックス層形成装置。
【請求項7】
透明基板を設置する定盤と、前記定盤上で前記透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する塗工ノズルと、前記透明基板を搬送する搬送用ローラーと、前記搬送ローラー上の前記透明基板に風を当て前記感光性樹脂組成物を予備乾燥するエアーナイフと、前記透明基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置から成る、ブラックマトリックス層形成装置。
【請求項8】
透明基板を設置する定盤と、前記定盤上で前記透明基板上に撥インキ性を付与できる撥インキ剤が含有されているブラックマトリックス用の感光性樹脂組成物を塗工する塗工ノズルと、前記定盤上の前記透明基板に風を当て前記感光性樹脂組成物を予備乾燥する回転羽と、前記透明基板を搬送する搬送用ローラーと、前記透明基板を減圧乾燥する減圧乾燥装置から成る、ブラックマトリックス層形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−107542(P2008−107542A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289797(P2006−289797)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】