カラーレーション検出装置およびカラーレーション検出方法
【課題】 音響帰還系においてハウリングの予兆であるカラーレーションの発生を迅速に捉え、速やかにハウリングを抑圧する。
【解決手段】 累算スペクトル解析部110は、音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する。カラーレーション周波数推定部150は、入力信号の立ち下がり区間と立ち上がり区間の各々において、累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求める。そして、立ち下がり区間、立ち上がり区間の各々における周波数毎のピークの発生頻度を比較し、カラーレーション周波数を推定する。
【解決手段】 累算スペクトル解析部110は、音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する。カラーレーション周波数推定部150は、入力信号の立ち下がり区間と立ち上がり区間の各々において、累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求める。そして、立ち下がり区間、立ち上がり区間の各々における周波数毎のピークの発生頻度を比較し、カラーレーション周波数を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響帰還系において観測される音声波形からカラーレーションの発生を検出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール等の空間内にマイクとスピーカを配置し、マイクにより収音した音声をスピーカにより拡声するように構成した拡声システムにおいては、スピーカによって拡声された音が再びマイクによって収音される、いわゆる音響帰還系が構成され、ハウリングを生じることがある。音響帰還系におけるハウリングを抑圧する従来の手法として、マイクの出力信号を常時周波数分析して、振幅値が最大となる周波数(ピーク周波数)を検出し、検出されたピーク周波数のゲインを下げる方法があった。なお、この種の技術は例えば特許文献1および2に開示されている。
【特許文献1】特許第3134557号
【特許文献2】特開平8−223683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したような単純なピーク検出に基づくハウリング抑圧方法では、ハウリングによるピーク周波数の振幅が充分に成長しないと、音声自体のピークかハウリングによるピークかを明確に認識することができない。このため、速やかにハウリングを抑圧することができないという問題があった。
【0004】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、音響帰還系においてハウリングの予兆であるカラーレーションの発生している周波数を迅速に捉え、速やかにハウリングを抑圧することを可能にする技術的手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
音源から発生した音が音響帰還系に導入された場合において、この音が音響帰還系の伝達関数の極に相当する周波数のスペクトルを含んでいると、音響帰還系は、そのスペクトルに対して、いわば共振した状態となる。カラーレーションやハウリングは、このようにして発生する。本出願人は、音響帰還系においてハウリングが発生している場合にその周波数を求めるための手法に関して、特願2005−49868号を出願している。この出願に開示された手法では、音響帰還系において観測される音声信号について、所定の観測区間において新たな音声信号サンプルが観測される毎に観測区間全体の周波数特性を算出し、これらの周波数特性を周波数軸を合わせて累算する。ここで、新たな音声信号サンプルが観測される毎に算出される各周波数特性において、ハウリングを生じさせている周波数成分は同相で現れるのに対し、それ以外の周波数成分はばらばらの位相で現れる。従って、これらの各周波数特性を累算すると、ハウリングを生じさせている周波数成分が強調された周波数特性が得られる。従って、この累算された周波数特性からハウリングを生じさせている周波数成分を推定することができる。なお、以下では便宜上、このような複数の周波数特性を累算した内容を持つ情報を累算スペクトル情報と呼ぶ。
【0006】
音響帰還系において取得される信号からこのような累算スペクトル情報を求めれば、この累算スペクトル情報からハウリングの予兆であるカラーレーションの発生している周波数を求めることができると考えられる。しかし、音響帰還系に対して、音源から音が導入されるような状況では、カラーレーションを生じさせているスペクトルが音源からの音のスペクトルによりマスクされ、累算スペクトル情報がその影響を受けるため、累算スペクトル情報からカラーレーションの発生している周波数を求めるのは困難である。本願発明は、特願2005−49868号に開示された発明に対して、この点に関する改良を加えたものである。
【0007】
本願発明が提供するカラーレーション検出装置は、音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する累算スペクトル解析手段と、前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間における前記累算スペクトル情報を繰り返し取得して、各累算スペクトル情報から振幅スペクトルを各々算出し、各累算スペクトル情報から算出される振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するカラーレーション周波数推定手段とを有する。
【0008】
このカラーレーション検出装置では、音源からの音の影響が少なく、カラーレーションを生じさせているスペクトルの観測が容易な立ち下がり区間に着目し、立ち下がり区間において、累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するようにしている。従って、音源から音が発生する状況においても、カラーレーションの発生している周波数を迅速に捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1はこの発明の一実施形態であるカラーレーション検出装置100を備えたハウリング抑圧システムの構成を示すブロック図である。図1において、マイク10とスピーカ12は、ホール等の同一空間内に配置されている。マイク10は、楽器、歌唱者、話者等の拡声音源14から発生する音声を収音する。適応帯域フィルタ16は、周波数特性の制御が可能なフィルタである。マイク10の出力信号は、この適応帯域フィルタ16を通過した後、増幅器18により増幅され、スピーカ12により拡声される。このスピーカ12により拡声された音の一部は、マイク10に帰還されて再び収音される。
【0010】
マイク10、適応帯域フィルタ16、増幅器18およびスピーカ12からなる音響帰還系では、ハウリングが発生し得るが、このハウリングの予兆として、マイク10の出力信号において特定の周波数のスペクトルが際立つカラーレーションが発生する。カラーレーション検出装置100は、マイク10の出力信号の解析を行うことにより、このカラーレーションの発生している周波数(以下、「カラーレーション周波数」)を検出する装置である。表示装置22は、CRT、液晶ディスプレイ等の画像表示装置であり、カラーレーション検出装置100におけるマイク10の出力信号の解析結果の表示を行う。制御部24は、カラーレーション検出装置100からカラーレーション周波数に関する報告を受けた場合に、適応帯域フィルタ16におけるそのカラーレーション周波数での利得を低下させる制御を行い、カラーレーションからハウリングへの進行を未然に回避する。
【0011】
図2は本実施形態によるカラーレーション検出装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、カラーレーション検出装置100は、累算スペクトル解析部110と、カラーレーション周波数推定部150とを有している。
【0012】
累算スペクトル解析部110の構成に関しては、各種の態様がある。図3は、累算スペクトル解析部110の第1の態様である累算スペクトル解析部110Aの構成を示すブロック図である。この累算スペクトル解析部110Aは、上述の特願2005−49868号に開示されたものと同一の原理に従い、入力信号について累算スペクトル情報(特願2005−49868号では「フーリエ変換結果の累算値ARS[n、k]」)の算出を行うものである。図3に示すように、累算スペクトル解析部110Aは、A/D変換器111と、RAM等により構成されるフレームバッファ112と、フーリエ変換部113と、累算部114と、これらの制御を行う演算制御部115とを有している。
【0013】
演算制御部115は、一定周波数のサンプリングクロックをA/D変換器111に供給する。A/D変換器111は、マイク10から出力されるアナログ音声信号を、演算制御部115から供給されるサンプリングクロックによりサンプリングするとともにデジタル化し、デジタル音声信号のサンプルを出力する。
【0014】
フレームバッファ112は、A/D変換器111から順次出力されるサンプルを記憶するN個のエリアを有している。演算制御部115は、サンプリングクロックの周期のN倍を1フレームとし、このフレームに同期して、A/D変換器111から順次出力されるサンプルのフレームバッファ112の各エリアへの書き込み制御を行う。
【0015】
さらに詳述すると、演算制御部115は、サンプリングクロックをカウントすることにより、フレームの切り換わりを管理し、新たなフレームが開始されるときには、フレームバッファ112の初期化を行う。この初期化によりフレームバッファ112のN個のエリアには0が各々書き込まれる。そして、演算制御部115は、フレームにおいて最初のサンプルがA/D変換器111から出力されたときには同サンプルをフレームバッファ112内の最初のエリアに、2番目のサンプルが出力されたときは同サンプルを2番目のエリアへ、という具合に、フレーム内においてA/D変換器111から順次出力されるサンプルをフレームバッファ112内のN個のエリアの各々に順次書き込む。そして、A/D変換器111から合計N個のサンプルが出力され、それらがフレームバッファ112のN個のエリアに書き込まれ、フレームが終了して新たなフレームが開始されると、演算制御部115は、再びフレームバッファ112を初期化し、同じ動作を繰り返すのである。以下では、説明の便宜のため、第iフレームにおいて、フレームバッファ112のN個のエリアに格納されているサンプルをxi(n)(n=1〜N)と表記する。
【0016】
フーリエ変換部113は、フレームバッファ112に格納されているN個のサンプルxi(n)(n=1〜N)のフーリエ変換を実行する装置である。演算制御部115は、1個のサンプルがフレームバッファ112に書き込まれる度に、フーリエ変換部113に対してフーリエ変換の実行指示を与える。累算部114は、フーリエ変換部113からフーリエ変換結果が出力される度に、フーリエ変換結果の実数部および虚数部毎に周波数軸を合わせて累算を行い、フレームが終了した段階におけるフーリエ変換結果の累算値を累算スペクトル情報として出力する装置である。
【0017】
図4には、1フレーム内において累算スペクトル解析部110Aにおいて行われる処理の内容が示されている。この図4において、Xre(n、k)(n=1〜N)はフーリエ変換結果の実数部、Xim(n、k)(n=1〜N)はフーリエ変換結果の虚数部、jは虚数単位である。
【0018】
まず、フレームの開始点では、フレームバッファ112が初期化される。このとき、累算部114は、フーリエ変換結果の実数部の累算値および虚数部の累算値を各々0に初期化する。そして、フレームバッファ112の最初のエリアにフレームの最初のサンプルxi(1)が格納されると、フーリエ変換部113により第1回目のフーリエ変換が行われ、フーリエ変換結果Xre(1、k)+jXim(1、k)が得られる。このとき、累算部114は、フーリエ変換結果の実数部の累算値をXre(1、k)とし、虚数部の累算値をXim(1、k)とする。
【0019】
次にフレームバッファ112内の最初のサンプルxi(1)の後に2番目のサンプルxi(2)が追加され、フーリエ変換部113により第2回目のフーリエ変換が行われると、フーリエ変換結果Xre(2、k)+jXim(2、k)が得られる。その際、累算部114は、フーリエ変換結果の実数部の累算値にXre(2、k)を加え、虚数部の累算値にXim(2、k)を加える。
【0020】
以下同様であり、累算スペクトル解析部110Aでは、新たなサンプルxi(n)がフレームバッファ112内に追加される度に、その時点におけるフレームバッファ112内のN個のサンプル(初期化により書き込まれた値が0のサンプルも含む)のフーリエ変換が行われ、フーリエ変換結果の実数部の累算および虚数部の累算が行われるのである。そして、累算スペクトル解析部110は、フレームが終了した段階におけるフーリエ変換結果の累算値を累算スペクトル情報として出力する。この累算スペクトル情報は、N回に亙るフーリエ変換結果の実数部の累算値Xre(1、k)+……+Xre(N、k)を実数部とし、虚数部の累算値Xim(1、k)+……+Xim(N、k)を虚数部とする複素数である。
【0021】
累算スペクトル解析部110Aは、フレーム毎に、以上の処理を実行して累算スペクトル情報を算出し、算出した累算スペクトル情報と、そのフレーム内において発生したマイク10の出力信号のサンプルxi(n)(n=1〜N)をカラーレーション周波数推定部150に供給する。
【0022】
図5は累算スペクトル解析部110の第2の態様である累算スペクトル解析部110Bの構成を示すブロック図である。この累算スペクトル解析部110Bは、所定長の観測区間について、古いサンプルに相対的に大きい重みを付与し、新しいサンプルに相対的に小さい重みを付与して、観測区間全体のスペクトル情報を算出し、この算出したスペクトル情報を累算スペクトル情報として出力するものである。この例において、累算スペクトル解析部110Bは、サンプル列に対する重み付けのための手段として三角窓関数を用いる。図5に示すように、累算スペクトル解析部110Bは、A/D変換器116と、シフトレジスタ117と、窓掛け部118と、フーリエ変換部119と、これらを制御する演算制御部120とを有している。
【0023】
第1の態様と同様、演算制御部120は、サンプリングクロックをA/D変換器116に供給する。A/D変換器116は、このサンプリングクロックによりマイク10の出力信号をサンプリングするとともにデジタル化し、デジタル信号であるサンプルを出力する。シフトレジスタ117は、N段のシフトレジスタであり、A/D変換器116から出力されるマイク10の出力信号のサンプルを取り込んで順次シフトする。窓掛け部118は、演算制御部120から窓掛け処理の指示が与えられたとき、1からNまで順次1ずつ増加するN個の三角窓関数値をシフトレジスタ117内の最も新しいサンプルから最も古いサンプルまでのN個のサンプルに各々乗算する。フーリエ変換部119は、演算制御部120からフーリエ変換の指示が与えられたとき、窓掛け部118による窓関数値の乗算を経たN個のサンプルについてフーリエ変換を行い、その結果を累算スペクトル情報として出力する。
【0024】
この第2の態様において、窓掛け部118による窓関数値の乗算処理を経たN個のサンプルからなるサンプル列は、上記第1の態様において、N回のフーリエ変換の各々の対象となったN個のサンプル列を時間軸を合わせて加算した内容となる。すなわち、第1の態様では、N個のサンプル列のフーリエ変換を各々行い、各フーリエ変換結果を加算して累算スペクトル情報を算出しているのに対し、第2の態様では、同じN個のサンプル列を時間軸を合わせて加算し、その結果得られるサンプル列のフーリエ変換を行って、累算スペクトル情報を算出する。フーリエ変換は線形変換であるから、処理対象である1フレーム分のサンプル列が同じであれば、第1の態様においても第2の態様においても、同じ累算スペクトル情報が得られる。
【0025】
第2の態様において、演算制御部120は、所定個数の新たなサンプルがシフトレジスタ117に入力される毎に、窓掛け処理の指示およびフーリエ変換の指示を窓掛け部118およびフーリエ変換部119に与える。第2の態様では、この窓掛け処理の指示およびフーリエ変換の指示の発生する周期がフレームとなる。従って、第2の態様では、フレームの長さを、フーリエ変換に用いるサンプル列(シフトレジスタ117に格納されるサンプル列)の時間長よりも短くし、累算スペクトル情報を短い時間間隔で出力することが可能である。
以上が本実施形態における累算スペクトル解析部110の詳細である。
【0026】
累算スペクトル解析部110により得られる累積スペクトル情報は、マイク10の出力信号がカラーレーションを生じさせているスペクトルを含んでいる場合にそのスペクトルを強調した内容となる。従って、単なるフーリエ変換結果に比べれば、累算スペクトル情報はカラーレーションが発生している場合にカラーレーション周波数を見つけるのに役立つ。
【0027】
しかしながら、図1に示すように、音響帰還系において拡声音源14からの音がマイク10により収音される状況では、音響帰還系を循環しているカラーレーションのスペクトルがマイク10により収音される拡声音源14からの音のスペクトルによりマスクされる。従って、このような状況では、マイク10の出力信号について累算スペクトル情報が得られたとしても、この累算スペクトル情報に基づいてカラーレーションが発生している周波数を正確に判定するのは困難である。
【0028】
そこで、本実施形態によるカラーレーション検出装置100では、この問題を解決するための手段として、図1に示すカラーレーション周波数推定部150が設けられている。このカラーレーション周波数推定部150は、立ち下がり区間解析部151と、立ち上がり区間解析部152と、総合判定部153とを有している。ここで、立ち下がり区間解析部151は、マイク10の出力信号のエネルギーが減衰する区間である立ち下がり区間において累算スペクトル解析部110から得られる累算スペクトル情報を解析し、カラーレーション周波数を推定するための判断資料となる情報を作成する。ここで、立ち下がり区間を対象として累算スペクトル情報を解析するのは次の理由によるものである。
【0029】
まず、カラーレーション周波数は、音響帰還系の伝達関数、すなわち、音響帰還系のインパルス応答により決定される。そして、マイク10の出力信号には、音響帰還系のインパルス応答が畳み込まれている。ここで、マイク10の出力信号をエネルギーが増大する立ち上がり区間とエネルギーが減衰する立ち下がり区間に分けた場合、立ち上がり区間では、最近発生した音の成分が過去のインパルス応答成分をマスクしている。このため、立ち上がり区間では、インパルス応答全体の影響を把握するのが困難である。一方、立ち下がり区間では、過去のインパルス応答成分がマスクされにくい。そこで、立ち下がり区間解析部151は、立ち下がり区間において累算スペクトル解析部110から得られる累算スペクトル情報を対象とし、この累積スペクトル情報から、カラーレーション周波数の推定のための判断資料となる情報を作成するのである。
【0030】
立ち下がり区間を捉えるため、立ち下がり区間解析部151は、フレーム毎に、累算スペクトル解析部110内のA/D変換器111から出力されたN個のサンプルxi(n)(n=1〜N)のエネルギーを算出する。そして、エネルギーのフレームの推移に対する勾配を判定し、勾配が負である区間を立ち下がり区間と判定する。
【0031】
そして、立ち下がり区間解析部151は、このようにして立ち下がり区間であると判定した区間において、複数回に亙って累算スペクトル解析部110から累算スペクトル情報を繰り返し取得する。そして、累算スペクトル情報毎に、振幅スペクトルが他に比べて優勢なピークとなる上位所定個数の周波数を求める。そして、立ち下がり区間解析部151は、周波数毎に、優勢なピークの発生頻度を求め、ヒストグラム情報として出力するのである。このヒストグラム情報が示すヒストグラムにおいて、優勢なピークの発生頻度の高い周波数はカラーレーション周波数である可能性が高い。従って、本実施形態では、このヒストグラム情報がカラーレーション周波数の推定のための判断資料として利用される。
【0032】
立ち上がり区間解析部152は、立ち下がり区間解析部151とは異なり、立ち上がり区間において累算スペクトル解析部110から得られる累算スペクトル情報を解析することにより周波数毎に優勢なピークの発生頻度を表すヒストグラム情報を作成する。累算スペクトル情報からヒストグラム情報を作成するための方法は、立ち下がり区間解析部151におけるヒストグラム情報の作成方法と同様である。
【0033】
総合判定部153は、立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報と立ち上がり区間解析部152から出力されるヒストグラム情報とを比較することにより、カラーレーション周波数の推定を行う装置である。立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報が示すヒストグラムにおいて、優勢なピークの発生頻度の高い周波数はカラーレーション周波数である可能性が高いが、拡声音源14から出力された音の成分の周波数である場合もあり得る。総合判定部153は、立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報に基づいてカラーレーション周波数を推定するが、その際に、拡声音源14から出力された音の成分の周波数を誤ってカラーレーション周波数と推定するのを回避するため、立ち上がり区間解析部152から出力されるヒストグラム情報を参酌する。なお、この総合判定部153が行う判断については本実施形態の動作説明において具体例を挙げて説明する。
【0034】
次に本実施形態の動作例を説明する。なお、以下説明する動作例では、カラーレーション検出装置100における累算スペクトル解析部110として、第2の態様である累算スペクトル解析部110Bが用いられている。
【0035】
図1において、マイク10の出力信号は適応帯域フィルタ16に入力される一方、カラーレーション検出装置100に入力される。カラーレーション検出装置100における累算スペクトル解析部110Bでは、フレーム毎に、過去蓄積したマイク10の出力信号のサンプル列から累算スペクトル情報を生成するための処理が行われる。累算スペクトル解析部110Bでは、順次算出される累算スペクトル情報から振幅スペクトルが求められ、表示装置22によりその表示が行われる。
【0036】
図6(a)(b)は、この累算スペクトル解析部110Bの動作例を示すものである。この例では、図1に示す構成において、拡声音源14から雑音を短時間発生し、この雑音をマイク10に収音させ、カラーレーション検出装置100を動作させている。図6(a)はその際のマイク10の出力信号波形を示している。図6(b)は、図6(a)に示すマイク10の出力信号をカラーレーション検出装置100の累算スペクトル解析部110Bに与えた場合において、累算スペクトル解析部110Bが順次出力する累算スペクトル情報の絶対値である振幅スペクトルを求め、その振幅スペクトルを記録したものである。
【0037】
図6(b)において、横軸は拡声音源14による雑音発生からの経過時間、縦軸は周波数となっており、これらの横軸および縦軸からなる座標系において白くなっている箇所は、累算スペクトル情報から得られた振幅スペクトルを示している。この図6(a)において横軸と平行に長く延びている白線部分は、高い頻度で繰り返し現れる同一周波数の振幅スペクトルの存在を表わしている。このような振幅スペクトルは、カラーレーションを生じさせている振幅スペクトルであると考えてよい。雑音発生開始から間もない区間では、この振幅スペクトル以外にも、広い帯域に亙って振幅スペクトルが観測される。これらの広い帯域に亙って分布している振幅スペクトルは、拡声音源14から出力された雑音の成分である。雑音発生開始から間もない区間は、このような拡声音源14から出力された成分が観測されるため、カラーレーション周波数の推定には不向きである。しかし、拡声音源14による雑音の発生が止み、マイク10の出力信号のレベルが減衰すると、カラーレーションを生じさせているスペクトル以外のスペクトルが減少する。従って、マイク10の出力信号のレベルが減衰する区間は、カラーレーション周波数の推定に適しているといえる。
【0038】
カラーレーション周波数推定部150における立ち下がり区間解析部151は、フレーム毎に、立ち下がり区間の累算スペクトル情報からヒストグラム情報を作成するためのルーチンを実行する。図7はこのルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【0039】
まず、第iフレームが終了した場合、立ち下がり区間解析部151は、第iフレームにおいて累算スペクトル情報を算出するための処理対象となったサンプルxi(n)(n=1〜N)を累算スペクトル解析部110Bから取得し(ステップSA1)、それらのサンプル値の2乗を加算することにより第iフレームにおけるマイク10の出力信号のエネルギーを求める(ステップSA2)。次に立ち下がり区間解析部151は、第iフレームまでの所定数フレームについて求めたエネルギーのフレーム番号に対する回帰直線を求め、この回帰直線の勾配が負であるか否かにより、第iフレームが立ち下がり区間に属するか否かを判断する(ステップSA3)。この判断結果が「NO」である場合、カウンタNNの値を0とし(ステップSA9)、フレーム番号iを1だけインクリメントし(ステップSA10)、このルーチンを終了する。
【0040】
第iフレームが立ち下がり区間に属し、ステップSA3の判断結果が「YES」となる場合には、立ち下がり区間解析部151の処理はステップSA4に進む。このステップSA4において、立ち下がり区間解析部151は、第iフレームにおける累算スペクトル情報の絶対値である振幅スペクトルを周波数毎に算出し、周波数軸上における振幅スペクトルの分布を求める。そして、この振幅スペクトルの分布において、他のピークよりも優勢なピークの数が所定値Kより少ないか否か(言い換えれば、その振幅スペクトルの分布がK個よりも少ない数の優勢なピークを含んでいるか否か)を判断する。
【0041】
このステップSA4の判断結果が「NO」である場合には、上述したステップSA9、ステップSA10を実行してこのルーチンを終了する。一方、ステップSA4の判断結果が「YES」である場合には、第iフレームの累算スペクトル情報から得られた振幅スペクトルの分布において、優勢な第1番目から最大K−1番目までのピークの周波数(ピーク周波数)をピーク周波数レジスタPk(i)(k=1〜K−1)に格納し、カウンタNNの値を1だけインクリメントする(ステップSA5)。ここで、優勢なピークとは、全てのピークをそれらの中の最大値により正規化した場合において、正規化されたピーク値が所定の閾値以上となるものを意味する。次にカウンタNNの値が所定値Iに到達したか否かを判断し(ステップSA6)、この判断結果が「NO」である場合にはフレーム番号iを1だけインクリメントし(ステップSA10)、このルーチンを終了する。
【0042】
その後の各フレームにおいて、ステップSA3の判断結果が「YES」、ステップSA4の判断結果が「YES」となる場合には、そのフレームにおける累算スペクトル情報から得られる優勢なピークのピーク周波数がレジスタPk(i)(k=1〜最大K−1)に格納され、カウンタNNの値がインクリメントされる(ステップSA5)。そして、カウンタNNの値が所定値Iに到達し、ステップSA6の判断結果が「YES」になると、立ち下がり区間解析部151の処理はステップSA7に進む。
【0043】
ここで、例えば第iaフレームから第ib(=ia+I−2)フレームまで、I−1フレーム連続してステップSA3およびSA4の判断結果が「YES」となり、第ibフレームにおいてステップSA6の判断結果が「YES」になったとする。この場合、ステップSA6を介してステップSA7に進んだ時点では、それまでの連続したI−1フレームにおいて得られたピーク周波数がレジスタPk(i)(k=1〜最大K−1、i=ia〜ib)に格納されている。そこで、立ち下がり区間解析部151は、レジスタPk(i)(k=1〜最大K−1、i=ia〜ib)に格納されたピーク周波数を調べ、各フレームにおける各ピーク周波数をフレーム間で対応させ、各フレームにおける各ピーク周波数がフレーム間で同一であるとみなせるか否か、より具体的にはフレーム間でのピーク周波数のずれが許容範囲BW内に収まっているか否かを判断する。
【0044】
このステップSA7の判断結果が「NO」である場合、立ち下がり区間解析部151は、ステップSA9およびSA10を実行し、このルーチンを終了する。一方、ステップSA7の判断結果が「YES」である場合は、立ち下がり区間解析部151の処理はステップSA8に進む。
【0045】
このステップSA8では、ステップSA7までの処理結果に基づいて、ヒストグラム情報を更新する。さらに詳述すると、立ち下がり区間解析部151は、周波数毎のピークの発生頻度を示すヒストグラム情報を記憶している。なお、初期状態において、このヒストグラム情報における周波数毎のピークの発生頻度は0になっている。そして、ステップSA8では、この周波数毎のピークの発生頻度を示すヒストグラム情報において、ステップSA7においてフレーム間の周波数ずれが許容範囲内であることが確認された各ピーク周波数に対応したピークの発生頻度を増加させる操作を行うのである。このステップSA8の処理を終えると、立ち下がり区間解析部151は、ステップSA10を実行し、このルーチンを終了する。
【0046】
立ち上がり区間解析部152は、フレーム毎に、立ち上がり区間の累算スペクトル情報からヒストグラム情報を作成するためのルーチンを実行する。図8はこのルーチンの処理内容を示すフローチャートである。図8において、ステップSB1〜SB10は、基本的には図7におけるステップSA1〜SA10と対応している。
【0047】
この立ち上がり区間解析部152の処理内容(図8)と立ち下がり区間解析部151の処理内容(図7)との実質的な相違点は次の点のみである。すなわち、立ち下がり区間解析部151は、ステップSA3においてフレームが立ち下がり区間に属するか否かを判断し、フレームが立ち下がり区間に属する場合にステップSA4以降の処理を実行したが、立ち上がり区間解析部152は、ステップSB3においてフレームが立ち上がり区間に属し、かつ、そのフレームにおけるサンプル列のエネルギーが閾値ECよりも大きい場合にステップSB4以降の処理を実行する。立ち上がり区間解析部152の処理において、サンプル列のエネルギーが閾値ECより大きいことがステップSB4以降の処理の実行のための条件となっているのは、暗騒音等の影響を回避して、ヒストグラム情報を作成するためである。
以上が、各フレームにおいて、立ち下がり区間解析部151および立ち上がり区間解析部152により実行される各処理の内容である。
【0048】
図9および図10は以上説明した立ち下がり区間解析部151および立ち上がり区間解析部152の各処理において処理対象となる各種の信号の波形を例示するものである。図9および図10において、左側の欄にある上下4個の波形図は、連続した4個のフレームの各々において累算スペクトル解析部110Bの処理対象となったサンプル列の波形を各々示している。また、図9および図10において、中央の欄にある上下4個の波形図は、同じ4個のフレームの各々において累算スペクトル解析部110Bの処理対象となったサンプル列のサンプル値の2乗値の波形およびサンプル値の2乗値から求めたエネルギーの時間推移に対する回帰直線を各々示している。また、図9および図10において、右側の欄にある上下4個の波形図は、同じ4個のフレームの各々において累算スペクトル情報から求められた振幅スペクトルの周波数軸上における分布を各々示している。
【0049】
図9に示す例では、4個の連続したフレームは立ち下がり区間に属しており、サンプル列のエネルギーの回帰直線の勾配は負となっている。従って、これらのフレームにおいて得られる累積スペクトル情報(図9の右側欄の振幅スペクトルを参照)は、立ち下がり区間解析部151が実行するステップSA4以降の処理の対象となる。また、図10に示す例では、4個の連続したフレームは立ち上がり区間に属しており、サンプル列のエネルギーの回帰直線の勾配は正となっている。従って、これらのフレームにおいて得られる累積スペクトル情報(図10の右側欄の振幅スペクトルを参照)は、立ち上がり区間解析部152が実行するステップSB4以降の処理の対象となる。
【0050】
さて、立ち下がり区間の各フレームにおいて、入力サンプル列から累算スペクトル情報を算出し、この累積スペクトル情報から周波数軸上における振幅スペクトルの分布を求めると、同一周波数において高い頻度で孤立したピークが発生する場合がある。図9の例では、2.3kHz付近にこのような孤立したピークが発生している。一方、立ち上がり区間になると、図10に示すように、立ち下がり区間において観測された2.3kHz付近のピークはなくなっている。このように立ち下がり区間において、高い頻度で現れる同一周波数を持った振幅スペクトルのピークは、カラーレーションによるものである可能性が高い。そこで、総合判定部153は、以上説明した立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報と立ち上がり区間解析部152から出力されるヒストグラム情報とを比較することにより、カラーレーション周波数を推定する。
【0051】
ここで、図11を参照し、総合判定部153が行うカラーレーション周波数の推定方法について説明する。図11において、左側の欄にある上下2個のヒストグラムは、立ち下がり区間解析部151により求められたヒストグラムの例を示すものであり、右側の欄にある上下2個のヒストグラムは、立ち上がり区間解析部152により求められたヒストグラムの例を示すものである。また、図11において、上段の2個のヒストグラムは、図1に示す構成において、スピーカ12を非動作状態とし、帰還をなくした状態において得られたものであり、下段の2個のヒストグラムは、スピーカ12を動作状態とし、帰還が働く状態において得られたものである。
【0052】
音響帰還系において帰還が働かない状態では、図11の上段の2つのヒストグラムを比較すると分かるように、カラーレーション検出装置100への入力信号が立ち下がり区間のものであろうと立ち上がり区間のものであろうと、累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークのヒストグラムには顕著な差は現れない。しかし、音響帰還系において帰還が働いている状態では、カラーレーションが発生しているときに、図11の下段に示すように、立ち下がり区間において得られるヒストグラムと立ち上がり区間において得られるヒストグラムとの間に顕著な差が生じる。図11に示す例で説明すると、左下のヒストグラム(立ち下がり区間)では、2.3kHz付近にピークの発生頻度が高くなっている周波数がある。これは前掲図9に例示したようなカラーレーション時に高い頻度で発生する孤立したピークの周波数である。しかし、右下のヒストグラム(立ち上がり区間)にはこの2.3kHz付近におけるピークの発生頻度の高まりがない。そこで、総合判定部153は、立ち下がり区間解析部151および立ち上がり区間解析部152により求められた各ヒストグラムを比較し、立ち下がり区間のみにおいて高い頻度を記録しているピークの周波数をカラーレーション周波数と推定するのである。
【0053】
図1における制御部24は、このようにして推定されたカラーレーション周波数に関する報告をカラーレーション検出装置100から受け取り、そのカラーレーション周波数におけるゲインを低下させるよう適応帯域フィルタ16の周波数特性の制御を行う。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、音響帰還系において取得される入力信号のうちカラーレーションの成分の観測が容易な立ち下がり区間の信号に着目し、この立ち下がり区間の入力信号の累積スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するようにしているので、カラーレーション周波数を迅速かつ容易に求めることができる。また、本実施形態によれば、立ち下がり区間において累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求めることに加えて、入力信号のレベルが増加する立ち上がり区間において累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、立ち下がり区間における周波数毎のピークの発生頻度と立ち上がり区間における周波数毎のピークの発生頻度とを比較し、立ち下がり区間において顕著な発生頻度を生じさせているピークの周波数をカラーレーション周波数として推定するようにしている。従って、カラーレーション周波数を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態によるカラーレーション検出装置を含むハウリング抑圧システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同カラーレーション検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同カラーレーション検出装置における累算スペクトル解析部の第1の態様の構成を示すブロック図である。
【図4】同累算スペクトル解析部の処理内容を示す図である。
【図5】同カラーレーション検出装置における累算スペクトル解析部の第2の態様の構成を示すブロック図である。
【図6】同累算スペクトル解析部の動作例を示す図である。
【図7】同カラーレーション検出装置における立ち下がり区間解析部の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】同カラーレーション検出装置における立ち上がり区間解析部の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】同立ち下がり区間解析部の処理対象である各種の信号波形を例示する図である。
【図10】同立ち上がり区間解析部の処理対象である各種の信号波形を例示する図である。
【図11】同カラーレーション検出装置の総合判定部におけるカラーレーション周波数の推定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
100……カラーレーション検出装置、110,110A,110B……累算スペクトル解析部、150……カラーレーション周波数推定部、151……立ち下がり区間解析部、152……立ち上がり区間解析部、111,116……A/D変換器、115,120……演算制御部、112……フレームバッファ、113,119……フーリエ変換部、114……累算部、117……シフトレジスタ、118……窓掛け部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響帰還系において観測される音声波形からカラーレーションの発生を検出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール等の空間内にマイクとスピーカを配置し、マイクにより収音した音声をスピーカにより拡声するように構成した拡声システムにおいては、スピーカによって拡声された音が再びマイクによって収音される、いわゆる音響帰還系が構成され、ハウリングを生じることがある。音響帰還系におけるハウリングを抑圧する従来の手法として、マイクの出力信号を常時周波数分析して、振幅値が最大となる周波数(ピーク周波数)を検出し、検出されたピーク周波数のゲインを下げる方法があった。なお、この種の技術は例えば特許文献1および2に開示されている。
【特許文献1】特許第3134557号
【特許文献2】特開平8−223683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述したような単純なピーク検出に基づくハウリング抑圧方法では、ハウリングによるピーク周波数の振幅が充分に成長しないと、音声自体のピークかハウリングによるピークかを明確に認識することができない。このため、速やかにハウリングを抑圧することができないという問題があった。
【0004】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、音響帰還系においてハウリングの予兆であるカラーレーションの発生している周波数を迅速に捉え、速やかにハウリングを抑圧することを可能にする技術的手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
音源から発生した音が音響帰還系に導入された場合において、この音が音響帰還系の伝達関数の極に相当する周波数のスペクトルを含んでいると、音響帰還系は、そのスペクトルに対して、いわば共振した状態となる。カラーレーションやハウリングは、このようにして発生する。本出願人は、音響帰還系においてハウリングが発生している場合にその周波数を求めるための手法に関して、特願2005−49868号を出願している。この出願に開示された手法では、音響帰還系において観測される音声信号について、所定の観測区間において新たな音声信号サンプルが観測される毎に観測区間全体の周波数特性を算出し、これらの周波数特性を周波数軸を合わせて累算する。ここで、新たな音声信号サンプルが観測される毎に算出される各周波数特性において、ハウリングを生じさせている周波数成分は同相で現れるのに対し、それ以外の周波数成分はばらばらの位相で現れる。従って、これらの各周波数特性を累算すると、ハウリングを生じさせている周波数成分が強調された周波数特性が得られる。従って、この累算された周波数特性からハウリングを生じさせている周波数成分を推定することができる。なお、以下では便宜上、このような複数の周波数特性を累算した内容を持つ情報を累算スペクトル情報と呼ぶ。
【0006】
音響帰還系において取得される信号からこのような累算スペクトル情報を求めれば、この累算スペクトル情報からハウリングの予兆であるカラーレーションの発生している周波数を求めることができると考えられる。しかし、音響帰還系に対して、音源から音が導入されるような状況では、カラーレーションを生じさせているスペクトルが音源からの音のスペクトルによりマスクされ、累算スペクトル情報がその影響を受けるため、累算スペクトル情報からカラーレーションの発生している周波数を求めるのは困難である。本願発明は、特願2005−49868号に開示された発明に対して、この点に関する改良を加えたものである。
【0007】
本願発明が提供するカラーレーション検出装置は、音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する累算スペクトル解析手段と、前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間における前記累算スペクトル情報を繰り返し取得して、各累算スペクトル情報から振幅スペクトルを各々算出し、各累算スペクトル情報から算出される振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するカラーレーション周波数推定手段とを有する。
【0008】
このカラーレーション検出装置では、音源からの音の影響が少なく、カラーレーションを生じさせているスペクトルの観測が容易な立ち下がり区間に着目し、立ち下がり区間において、累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するようにしている。従って、音源から音が発生する状況においても、カラーレーションの発生している周波数を迅速に捉えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1はこの発明の一実施形態であるカラーレーション検出装置100を備えたハウリング抑圧システムの構成を示すブロック図である。図1において、マイク10とスピーカ12は、ホール等の同一空間内に配置されている。マイク10は、楽器、歌唱者、話者等の拡声音源14から発生する音声を収音する。適応帯域フィルタ16は、周波数特性の制御が可能なフィルタである。マイク10の出力信号は、この適応帯域フィルタ16を通過した後、増幅器18により増幅され、スピーカ12により拡声される。このスピーカ12により拡声された音の一部は、マイク10に帰還されて再び収音される。
【0010】
マイク10、適応帯域フィルタ16、増幅器18およびスピーカ12からなる音響帰還系では、ハウリングが発生し得るが、このハウリングの予兆として、マイク10の出力信号において特定の周波数のスペクトルが際立つカラーレーションが発生する。カラーレーション検出装置100は、マイク10の出力信号の解析を行うことにより、このカラーレーションの発生している周波数(以下、「カラーレーション周波数」)を検出する装置である。表示装置22は、CRT、液晶ディスプレイ等の画像表示装置であり、カラーレーション検出装置100におけるマイク10の出力信号の解析結果の表示を行う。制御部24は、カラーレーション検出装置100からカラーレーション周波数に関する報告を受けた場合に、適応帯域フィルタ16におけるそのカラーレーション周波数での利得を低下させる制御を行い、カラーレーションからハウリングへの進行を未然に回避する。
【0011】
図2は本実施形態によるカラーレーション検出装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、カラーレーション検出装置100は、累算スペクトル解析部110と、カラーレーション周波数推定部150とを有している。
【0012】
累算スペクトル解析部110の構成に関しては、各種の態様がある。図3は、累算スペクトル解析部110の第1の態様である累算スペクトル解析部110Aの構成を示すブロック図である。この累算スペクトル解析部110Aは、上述の特願2005−49868号に開示されたものと同一の原理に従い、入力信号について累算スペクトル情報(特願2005−49868号では「フーリエ変換結果の累算値ARS[n、k]」)の算出を行うものである。図3に示すように、累算スペクトル解析部110Aは、A/D変換器111と、RAM等により構成されるフレームバッファ112と、フーリエ変換部113と、累算部114と、これらの制御を行う演算制御部115とを有している。
【0013】
演算制御部115は、一定周波数のサンプリングクロックをA/D変換器111に供給する。A/D変換器111は、マイク10から出力されるアナログ音声信号を、演算制御部115から供給されるサンプリングクロックによりサンプリングするとともにデジタル化し、デジタル音声信号のサンプルを出力する。
【0014】
フレームバッファ112は、A/D変換器111から順次出力されるサンプルを記憶するN個のエリアを有している。演算制御部115は、サンプリングクロックの周期のN倍を1フレームとし、このフレームに同期して、A/D変換器111から順次出力されるサンプルのフレームバッファ112の各エリアへの書き込み制御を行う。
【0015】
さらに詳述すると、演算制御部115は、サンプリングクロックをカウントすることにより、フレームの切り換わりを管理し、新たなフレームが開始されるときには、フレームバッファ112の初期化を行う。この初期化によりフレームバッファ112のN個のエリアには0が各々書き込まれる。そして、演算制御部115は、フレームにおいて最初のサンプルがA/D変換器111から出力されたときには同サンプルをフレームバッファ112内の最初のエリアに、2番目のサンプルが出力されたときは同サンプルを2番目のエリアへ、という具合に、フレーム内においてA/D変換器111から順次出力されるサンプルをフレームバッファ112内のN個のエリアの各々に順次書き込む。そして、A/D変換器111から合計N個のサンプルが出力され、それらがフレームバッファ112のN個のエリアに書き込まれ、フレームが終了して新たなフレームが開始されると、演算制御部115は、再びフレームバッファ112を初期化し、同じ動作を繰り返すのである。以下では、説明の便宜のため、第iフレームにおいて、フレームバッファ112のN個のエリアに格納されているサンプルをxi(n)(n=1〜N)と表記する。
【0016】
フーリエ変換部113は、フレームバッファ112に格納されているN個のサンプルxi(n)(n=1〜N)のフーリエ変換を実行する装置である。演算制御部115は、1個のサンプルがフレームバッファ112に書き込まれる度に、フーリエ変換部113に対してフーリエ変換の実行指示を与える。累算部114は、フーリエ変換部113からフーリエ変換結果が出力される度に、フーリエ変換結果の実数部および虚数部毎に周波数軸を合わせて累算を行い、フレームが終了した段階におけるフーリエ変換結果の累算値を累算スペクトル情報として出力する装置である。
【0017】
図4には、1フレーム内において累算スペクトル解析部110Aにおいて行われる処理の内容が示されている。この図4において、Xre(n、k)(n=1〜N)はフーリエ変換結果の実数部、Xim(n、k)(n=1〜N)はフーリエ変換結果の虚数部、jは虚数単位である。
【0018】
まず、フレームの開始点では、フレームバッファ112が初期化される。このとき、累算部114は、フーリエ変換結果の実数部の累算値および虚数部の累算値を各々0に初期化する。そして、フレームバッファ112の最初のエリアにフレームの最初のサンプルxi(1)が格納されると、フーリエ変換部113により第1回目のフーリエ変換が行われ、フーリエ変換結果Xre(1、k)+jXim(1、k)が得られる。このとき、累算部114は、フーリエ変換結果の実数部の累算値をXre(1、k)とし、虚数部の累算値をXim(1、k)とする。
【0019】
次にフレームバッファ112内の最初のサンプルxi(1)の後に2番目のサンプルxi(2)が追加され、フーリエ変換部113により第2回目のフーリエ変換が行われると、フーリエ変換結果Xre(2、k)+jXim(2、k)が得られる。その際、累算部114は、フーリエ変換結果の実数部の累算値にXre(2、k)を加え、虚数部の累算値にXim(2、k)を加える。
【0020】
以下同様であり、累算スペクトル解析部110Aでは、新たなサンプルxi(n)がフレームバッファ112内に追加される度に、その時点におけるフレームバッファ112内のN個のサンプル(初期化により書き込まれた値が0のサンプルも含む)のフーリエ変換が行われ、フーリエ変換結果の実数部の累算および虚数部の累算が行われるのである。そして、累算スペクトル解析部110は、フレームが終了した段階におけるフーリエ変換結果の累算値を累算スペクトル情報として出力する。この累算スペクトル情報は、N回に亙るフーリエ変換結果の実数部の累算値Xre(1、k)+……+Xre(N、k)を実数部とし、虚数部の累算値Xim(1、k)+……+Xim(N、k)を虚数部とする複素数である。
【0021】
累算スペクトル解析部110Aは、フレーム毎に、以上の処理を実行して累算スペクトル情報を算出し、算出した累算スペクトル情報と、そのフレーム内において発生したマイク10の出力信号のサンプルxi(n)(n=1〜N)をカラーレーション周波数推定部150に供給する。
【0022】
図5は累算スペクトル解析部110の第2の態様である累算スペクトル解析部110Bの構成を示すブロック図である。この累算スペクトル解析部110Bは、所定長の観測区間について、古いサンプルに相対的に大きい重みを付与し、新しいサンプルに相対的に小さい重みを付与して、観測区間全体のスペクトル情報を算出し、この算出したスペクトル情報を累算スペクトル情報として出力するものである。この例において、累算スペクトル解析部110Bは、サンプル列に対する重み付けのための手段として三角窓関数を用いる。図5に示すように、累算スペクトル解析部110Bは、A/D変換器116と、シフトレジスタ117と、窓掛け部118と、フーリエ変換部119と、これらを制御する演算制御部120とを有している。
【0023】
第1の態様と同様、演算制御部120は、サンプリングクロックをA/D変換器116に供給する。A/D変換器116は、このサンプリングクロックによりマイク10の出力信号をサンプリングするとともにデジタル化し、デジタル信号であるサンプルを出力する。シフトレジスタ117は、N段のシフトレジスタであり、A/D変換器116から出力されるマイク10の出力信号のサンプルを取り込んで順次シフトする。窓掛け部118は、演算制御部120から窓掛け処理の指示が与えられたとき、1からNまで順次1ずつ増加するN個の三角窓関数値をシフトレジスタ117内の最も新しいサンプルから最も古いサンプルまでのN個のサンプルに各々乗算する。フーリエ変換部119は、演算制御部120からフーリエ変換の指示が与えられたとき、窓掛け部118による窓関数値の乗算を経たN個のサンプルについてフーリエ変換を行い、その結果を累算スペクトル情報として出力する。
【0024】
この第2の態様において、窓掛け部118による窓関数値の乗算処理を経たN個のサンプルからなるサンプル列は、上記第1の態様において、N回のフーリエ変換の各々の対象となったN個のサンプル列を時間軸を合わせて加算した内容となる。すなわち、第1の態様では、N個のサンプル列のフーリエ変換を各々行い、各フーリエ変換結果を加算して累算スペクトル情報を算出しているのに対し、第2の態様では、同じN個のサンプル列を時間軸を合わせて加算し、その結果得られるサンプル列のフーリエ変換を行って、累算スペクトル情報を算出する。フーリエ変換は線形変換であるから、処理対象である1フレーム分のサンプル列が同じであれば、第1の態様においても第2の態様においても、同じ累算スペクトル情報が得られる。
【0025】
第2の態様において、演算制御部120は、所定個数の新たなサンプルがシフトレジスタ117に入力される毎に、窓掛け処理の指示およびフーリエ変換の指示を窓掛け部118およびフーリエ変換部119に与える。第2の態様では、この窓掛け処理の指示およびフーリエ変換の指示の発生する周期がフレームとなる。従って、第2の態様では、フレームの長さを、フーリエ変換に用いるサンプル列(シフトレジスタ117に格納されるサンプル列)の時間長よりも短くし、累算スペクトル情報を短い時間間隔で出力することが可能である。
以上が本実施形態における累算スペクトル解析部110の詳細である。
【0026】
累算スペクトル解析部110により得られる累積スペクトル情報は、マイク10の出力信号がカラーレーションを生じさせているスペクトルを含んでいる場合にそのスペクトルを強調した内容となる。従って、単なるフーリエ変換結果に比べれば、累算スペクトル情報はカラーレーションが発生している場合にカラーレーション周波数を見つけるのに役立つ。
【0027】
しかしながら、図1に示すように、音響帰還系において拡声音源14からの音がマイク10により収音される状況では、音響帰還系を循環しているカラーレーションのスペクトルがマイク10により収音される拡声音源14からの音のスペクトルによりマスクされる。従って、このような状況では、マイク10の出力信号について累算スペクトル情報が得られたとしても、この累算スペクトル情報に基づいてカラーレーションが発生している周波数を正確に判定するのは困難である。
【0028】
そこで、本実施形態によるカラーレーション検出装置100では、この問題を解決するための手段として、図1に示すカラーレーション周波数推定部150が設けられている。このカラーレーション周波数推定部150は、立ち下がり区間解析部151と、立ち上がり区間解析部152と、総合判定部153とを有している。ここで、立ち下がり区間解析部151は、マイク10の出力信号のエネルギーが減衰する区間である立ち下がり区間において累算スペクトル解析部110から得られる累算スペクトル情報を解析し、カラーレーション周波数を推定するための判断資料となる情報を作成する。ここで、立ち下がり区間を対象として累算スペクトル情報を解析するのは次の理由によるものである。
【0029】
まず、カラーレーション周波数は、音響帰還系の伝達関数、すなわち、音響帰還系のインパルス応答により決定される。そして、マイク10の出力信号には、音響帰還系のインパルス応答が畳み込まれている。ここで、マイク10の出力信号をエネルギーが増大する立ち上がり区間とエネルギーが減衰する立ち下がり区間に分けた場合、立ち上がり区間では、最近発生した音の成分が過去のインパルス応答成分をマスクしている。このため、立ち上がり区間では、インパルス応答全体の影響を把握するのが困難である。一方、立ち下がり区間では、過去のインパルス応答成分がマスクされにくい。そこで、立ち下がり区間解析部151は、立ち下がり区間において累算スペクトル解析部110から得られる累算スペクトル情報を対象とし、この累積スペクトル情報から、カラーレーション周波数の推定のための判断資料となる情報を作成するのである。
【0030】
立ち下がり区間を捉えるため、立ち下がり区間解析部151は、フレーム毎に、累算スペクトル解析部110内のA/D変換器111から出力されたN個のサンプルxi(n)(n=1〜N)のエネルギーを算出する。そして、エネルギーのフレームの推移に対する勾配を判定し、勾配が負である区間を立ち下がり区間と判定する。
【0031】
そして、立ち下がり区間解析部151は、このようにして立ち下がり区間であると判定した区間において、複数回に亙って累算スペクトル解析部110から累算スペクトル情報を繰り返し取得する。そして、累算スペクトル情報毎に、振幅スペクトルが他に比べて優勢なピークとなる上位所定個数の周波数を求める。そして、立ち下がり区間解析部151は、周波数毎に、優勢なピークの発生頻度を求め、ヒストグラム情報として出力するのである。このヒストグラム情報が示すヒストグラムにおいて、優勢なピークの発生頻度の高い周波数はカラーレーション周波数である可能性が高い。従って、本実施形態では、このヒストグラム情報がカラーレーション周波数の推定のための判断資料として利用される。
【0032】
立ち上がり区間解析部152は、立ち下がり区間解析部151とは異なり、立ち上がり区間において累算スペクトル解析部110から得られる累算スペクトル情報を解析することにより周波数毎に優勢なピークの発生頻度を表すヒストグラム情報を作成する。累算スペクトル情報からヒストグラム情報を作成するための方法は、立ち下がり区間解析部151におけるヒストグラム情報の作成方法と同様である。
【0033】
総合判定部153は、立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報と立ち上がり区間解析部152から出力されるヒストグラム情報とを比較することにより、カラーレーション周波数の推定を行う装置である。立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報が示すヒストグラムにおいて、優勢なピークの発生頻度の高い周波数はカラーレーション周波数である可能性が高いが、拡声音源14から出力された音の成分の周波数である場合もあり得る。総合判定部153は、立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報に基づいてカラーレーション周波数を推定するが、その際に、拡声音源14から出力された音の成分の周波数を誤ってカラーレーション周波数と推定するのを回避するため、立ち上がり区間解析部152から出力されるヒストグラム情報を参酌する。なお、この総合判定部153が行う判断については本実施形態の動作説明において具体例を挙げて説明する。
【0034】
次に本実施形態の動作例を説明する。なお、以下説明する動作例では、カラーレーション検出装置100における累算スペクトル解析部110として、第2の態様である累算スペクトル解析部110Bが用いられている。
【0035】
図1において、マイク10の出力信号は適応帯域フィルタ16に入力される一方、カラーレーション検出装置100に入力される。カラーレーション検出装置100における累算スペクトル解析部110Bでは、フレーム毎に、過去蓄積したマイク10の出力信号のサンプル列から累算スペクトル情報を生成するための処理が行われる。累算スペクトル解析部110Bでは、順次算出される累算スペクトル情報から振幅スペクトルが求められ、表示装置22によりその表示が行われる。
【0036】
図6(a)(b)は、この累算スペクトル解析部110Bの動作例を示すものである。この例では、図1に示す構成において、拡声音源14から雑音を短時間発生し、この雑音をマイク10に収音させ、カラーレーション検出装置100を動作させている。図6(a)はその際のマイク10の出力信号波形を示している。図6(b)は、図6(a)に示すマイク10の出力信号をカラーレーション検出装置100の累算スペクトル解析部110Bに与えた場合において、累算スペクトル解析部110Bが順次出力する累算スペクトル情報の絶対値である振幅スペクトルを求め、その振幅スペクトルを記録したものである。
【0037】
図6(b)において、横軸は拡声音源14による雑音発生からの経過時間、縦軸は周波数となっており、これらの横軸および縦軸からなる座標系において白くなっている箇所は、累算スペクトル情報から得られた振幅スペクトルを示している。この図6(a)において横軸と平行に長く延びている白線部分は、高い頻度で繰り返し現れる同一周波数の振幅スペクトルの存在を表わしている。このような振幅スペクトルは、カラーレーションを生じさせている振幅スペクトルであると考えてよい。雑音発生開始から間もない区間では、この振幅スペクトル以外にも、広い帯域に亙って振幅スペクトルが観測される。これらの広い帯域に亙って分布している振幅スペクトルは、拡声音源14から出力された雑音の成分である。雑音発生開始から間もない区間は、このような拡声音源14から出力された成分が観測されるため、カラーレーション周波数の推定には不向きである。しかし、拡声音源14による雑音の発生が止み、マイク10の出力信号のレベルが減衰すると、カラーレーションを生じさせているスペクトル以外のスペクトルが減少する。従って、マイク10の出力信号のレベルが減衰する区間は、カラーレーション周波数の推定に適しているといえる。
【0038】
カラーレーション周波数推定部150における立ち下がり区間解析部151は、フレーム毎に、立ち下がり区間の累算スペクトル情報からヒストグラム情報を作成するためのルーチンを実行する。図7はこのルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【0039】
まず、第iフレームが終了した場合、立ち下がり区間解析部151は、第iフレームにおいて累算スペクトル情報を算出するための処理対象となったサンプルxi(n)(n=1〜N)を累算スペクトル解析部110Bから取得し(ステップSA1)、それらのサンプル値の2乗を加算することにより第iフレームにおけるマイク10の出力信号のエネルギーを求める(ステップSA2)。次に立ち下がり区間解析部151は、第iフレームまでの所定数フレームについて求めたエネルギーのフレーム番号に対する回帰直線を求め、この回帰直線の勾配が負であるか否かにより、第iフレームが立ち下がり区間に属するか否かを判断する(ステップSA3)。この判断結果が「NO」である場合、カウンタNNの値を0とし(ステップSA9)、フレーム番号iを1だけインクリメントし(ステップSA10)、このルーチンを終了する。
【0040】
第iフレームが立ち下がり区間に属し、ステップSA3の判断結果が「YES」となる場合には、立ち下がり区間解析部151の処理はステップSA4に進む。このステップSA4において、立ち下がり区間解析部151は、第iフレームにおける累算スペクトル情報の絶対値である振幅スペクトルを周波数毎に算出し、周波数軸上における振幅スペクトルの分布を求める。そして、この振幅スペクトルの分布において、他のピークよりも優勢なピークの数が所定値Kより少ないか否か(言い換えれば、その振幅スペクトルの分布がK個よりも少ない数の優勢なピークを含んでいるか否か)を判断する。
【0041】
このステップSA4の判断結果が「NO」である場合には、上述したステップSA9、ステップSA10を実行してこのルーチンを終了する。一方、ステップSA4の判断結果が「YES」である場合には、第iフレームの累算スペクトル情報から得られた振幅スペクトルの分布において、優勢な第1番目から最大K−1番目までのピークの周波数(ピーク周波数)をピーク周波数レジスタPk(i)(k=1〜K−1)に格納し、カウンタNNの値を1だけインクリメントする(ステップSA5)。ここで、優勢なピークとは、全てのピークをそれらの中の最大値により正規化した場合において、正規化されたピーク値が所定の閾値以上となるものを意味する。次にカウンタNNの値が所定値Iに到達したか否かを判断し(ステップSA6)、この判断結果が「NO」である場合にはフレーム番号iを1だけインクリメントし(ステップSA10)、このルーチンを終了する。
【0042】
その後の各フレームにおいて、ステップSA3の判断結果が「YES」、ステップSA4の判断結果が「YES」となる場合には、そのフレームにおける累算スペクトル情報から得られる優勢なピークのピーク周波数がレジスタPk(i)(k=1〜最大K−1)に格納され、カウンタNNの値がインクリメントされる(ステップSA5)。そして、カウンタNNの値が所定値Iに到達し、ステップSA6の判断結果が「YES」になると、立ち下がり区間解析部151の処理はステップSA7に進む。
【0043】
ここで、例えば第iaフレームから第ib(=ia+I−2)フレームまで、I−1フレーム連続してステップSA3およびSA4の判断結果が「YES」となり、第ibフレームにおいてステップSA6の判断結果が「YES」になったとする。この場合、ステップSA6を介してステップSA7に進んだ時点では、それまでの連続したI−1フレームにおいて得られたピーク周波数がレジスタPk(i)(k=1〜最大K−1、i=ia〜ib)に格納されている。そこで、立ち下がり区間解析部151は、レジスタPk(i)(k=1〜最大K−1、i=ia〜ib)に格納されたピーク周波数を調べ、各フレームにおける各ピーク周波数をフレーム間で対応させ、各フレームにおける各ピーク周波数がフレーム間で同一であるとみなせるか否か、より具体的にはフレーム間でのピーク周波数のずれが許容範囲BW内に収まっているか否かを判断する。
【0044】
このステップSA7の判断結果が「NO」である場合、立ち下がり区間解析部151は、ステップSA9およびSA10を実行し、このルーチンを終了する。一方、ステップSA7の判断結果が「YES」である場合は、立ち下がり区間解析部151の処理はステップSA8に進む。
【0045】
このステップSA8では、ステップSA7までの処理結果に基づいて、ヒストグラム情報を更新する。さらに詳述すると、立ち下がり区間解析部151は、周波数毎のピークの発生頻度を示すヒストグラム情報を記憶している。なお、初期状態において、このヒストグラム情報における周波数毎のピークの発生頻度は0になっている。そして、ステップSA8では、この周波数毎のピークの発生頻度を示すヒストグラム情報において、ステップSA7においてフレーム間の周波数ずれが許容範囲内であることが確認された各ピーク周波数に対応したピークの発生頻度を増加させる操作を行うのである。このステップSA8の処理を終えると、立ち下がり区間解析部151は、ステップSA10を実行し、このルーチンを終了する。
【0046】
立ち上がり区間解析部152は、フレーム毎に、立ち上がり区間の累算スペクトル情報からヒストグラム情報を作成するためのルーチンを実行する。図8はこのルーチンの処理内容を示すフローチャートである。図8において、ステップSB1〜SB10は、基本的には図7におけるステップSA1〜SA10と対応している。
【0047】
この立ち上がり区間解析部152の処理内容(図8)と立ち下がり区間解析部151の処理内容(図7)との実質的な相違点は次の点のみである。すなわち、立ち下がり区間解析部151は、ステップSA3においてフレームが立ち下がり区間に属するか否かを判断し、フレームが立ち下がり区間に属する場合にステップSA4以降の処理を実行したが、立ち上がり区間解析部152は、ステップSB3においてフレームが立ち上がり区間に属し、かつ、そのフレームにおけるサンプル列のエネルギーが閾値ECよりも大きい場合にステップSB4以降の処理を実行する。立ち上がり区間解析部152の処理において、サンプル列のエネルギーが閾値ECより大きいことがステップSB4以降の処理の実行のための条件となっているのは、暗騒音等の影響を回避して、ヒストグラム情報を作成するためである。
以上が、各フレームにおいて、立ち下がり区間解析部151および立ち上がり区間解析部152により実行される各処理の内容である。
【0048】
図9および図10は以上説明した立ち下がり区間解析部151および立ち上がり区間解析部152の各処理において処理対象となる各種の信号の波形を例示するものである。図9および図10において、左側の欄にある上下4個の波形図は、連続した4個のフレームの各々において累算スペクトル解析部110Bの処理対象となったサンプル列の波形を各々示している。また、図9および図10において、中央の欄にある上下4個の波形図は、同じ4個のフレームの各々において累算スペクトル解析部110Bの処理対象となったサンプル列のサンプル値の2乗値の波形およびサンプル値の2乗値から求めたエネルギーの時間推移に対する回帰直線を各々示している。また、図9および図10において、右側の欄にある上下4個の波形図は、同じ4個のフレームの各々において累算スペクトル情報から求められた振幅スペクトルの周波数軸上における分布を各々示している。
【0049】
図9に示す例では、4個の連続したフレームは立ち下がり区間に属しており、サンプル列のエネルギーの回帰直線の勾配は負となっている。従って、これらのフレームにおいて得られる累積スペクトル情報(図9の右側欄の振幅スペクトルを参照)は、立ち下がり区間解析部151が実行するステップSA4以降の処理の対象となる。また、図10に示す例では、4個の連続したフレームは立ち上がり区間に属しており、サンプル列のエネルギーの回帰直線の勾配は正となっている。従って、これらのフレームにおいて得られる累積スペクトル情報(図10の右側欄の振幅スペクトルを参照)は、立ち上がり区間解析部152が実行するステップSB4以降の処理の対象となる。
【0050】
さて、立ち下がり区間の各フレームにおいて、入力サンプル列から累算スペクトル情報を算出し、この累積スペクトル情報から周波数軸上における振幅スペクトルの分布を求めると、同一周波数において高い頻度で孤立したピークが発生する場合がある。図9の例では、2.3kHz付近にこのような孤立したピークが発生している。一方、立ち上がり区間になると、図10に示すように、立ち下がり区間において観測された2.3kHz付近のピークはなくなっている。このように立ち下がり区間において、高い頻度で現れる同一周波数を持った振幅スペクトルのピークは、カラーレーションによるものである可能性が高い。そこで、総合判定部153は、以上説明した立ち下がり区間解析部151から出力されるヒストグラム情報と立ち上がり区間解析部152から出力されるヒストグラム情報とを比較することにより、カラーレーション周波数を推定する。
【0051】
ここで、図11を参照し、総合判定部153が行うカラーレーション周波数の推定方法について説明する。図11において、左側の欄にある上下2個のヒストグラムは、立ち下がり区間解析部151により求められたヒストグラムの例を示すものであり、右側の欄にある上下2個のヒストグラムは、立ち上がり区間解析部152により求められたヒストグラムの例を示すものである。また、図11において、上段の2個のヒストグラムは、図1に示す構成において、スピーカ12を非動作状態とし、帰還をなくした状態において得られたものであり、下段の2個のヒストグラムは、スピーカ12を動作状態とし、帰還が働く状態において得られたものである。
【0052】
音響帰還系において帰還が働かない状態では、図11の上段の2つのヒストグラムを比較すると分かるように、カラーレーション検出装置100への入力信号が立ち下がり区間のものであろうと立ち上がり区間のものであろうと、累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークのヒストグラムには顕著な差は現れない。しかし、音響帰還系において帰還が働いている状態では、カラーレーションが発生しているときに、図11の下段に示すように、立ち下がり区間において得られるヒストグラムと立ち上がり区間において得られるヒストグラムとの間に顕著な差が生じる。図11に示す例で説明すると、左下のヒストグラム(立ち下がり区間)では、2.3kHz付近にピークの発生頻度が高くなっている周波数がある。これは前掲図9に例示したようなカラーレーション時に高い頻度で発生する孤立したピークの周波数である。しかし、右下のヒストグラム(立ち上がり区間)にはこの2.3kHz付近におけるピークの発生頻度の高まりがない。そこで、総合判定部153は、立ち下がり区間解析部151および立ち上がり区間解析部152により求められた各ヒストグラムを比較し、立ち下がり区間のみにおいて高い頻度を記録しているピークの周波数をカラーレーション周波数と推定するのである。
【0053】
図1における制御部24は、このようにして推定されたカラーレーション周波数に関する報告をカラーレーション検出装置100から受け取り、そのカラーレーション周波数におけるゲインを低下させるよう適応帯域フィルタ16の周波数特性の制御を行う。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、音響帰還系において取得される入力信号のうちカラーレーションの成分の観測が容易な立ち下がり区間の信号に着目し、この立ち下がり区間の入力信号の累積スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するようにしているので、カラーレーション周波数を迅速かつ容易に求めることができる。また、本実施形態によれば、立ち下がり区間において累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求めることに加えて、入力信号のレベルが増加する立ち上がり区間において累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、立ち下がり区間における周波数毎のピークの発生頻度と立ち上がり区間における周波数毎のピークの発生頻度とを比較し、立ち下がり区間において顕著な発生頻度を生じさせているピークの周波数をカラーレーション周波数として推定するようにしている。従って、カラーレーション周波数を正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態によるカラーレーション検出装置を含むハウリング抑圧システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同カラーレーション検出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同カラーレーション検出装置における累算スペクトル解析部の第1の態様の構成を示すブロック図である。
【図4】同累算スペクトル解析部の処理内容を示す図である。
【図5】同カラーレーション検出装置における累算スペクトル解析部の第2の態様の構成を示すブロック図である。
【図6】同累算スペクトル解析部の動作例を示す図である。
【図7】同カラーレーション検出装置における立ち下がり区間解析部の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】同カラーレーション検出装置における立ち上がり区間解析部の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】同立ち下がり区間解析部の処理対象である各種の信号波形を例示する図である。
【図10】同立ち上がり区間解析部の処理対象である各種の信号波形を例示する図である。
【図11】同カラーレーション検出装置の総合判定部におけるカラーレーション周波数の推定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
100……カラーレーション検出装置、110,110A,110B……累算スペクトル解析部、150……カラーレーション周波数推定部、151……立ち下がり区間解析部、152……立ち上がり区間解析部、111,116……A/D変換器、115,120……演算制御部、112……フレームバッファ、113,119……フーリエ変換部、114……累算部、117……シフトレジスタ、118……窓掛け部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する累算スペクトル解析手段と、
前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間における前記累算スペクトル情報を繰り返し取得して、各累算スペクトル情報から振幅スペクトルを各々算出し、各累算スペクトル情報から算出される振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するカラーレーション周波数推定手段と
を具備することを特徴とするカラーレーション検出装置。
【請求項2】
前記カラーレーション周波数推定手段は、前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間において、前記累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求めることに加えて、前記入力信号のレベルが増加する立ち上がり区間において、前記累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、立ち下がり区間における周波数毎のピークの発生頻度と立ち上がり区間における周波数毎のピークの発生頻度とを比較し、立ち下がり区間において顕著な発生頻度を生じさせているピークの周波数をカラーレーション周波数として推定することを特徴とする請求項1に記載のカラーレーション検出装置。
【請求項3】
前記累算スペクトル解析手段は、所定長の観測区間において1または複数の新たな入力信号のサンプルが観測される毎に観測区間全体のスペクトル情報を算出し、算出したスペクトル情報を周波数軸を合わせて累算することにより累算スペクトル情報を生成することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーレーション検出装置。
【請求項4】
前記累算スペクトル解析手段は、所定長の観測区間について、三角窓関数により、古いサンプルに相対的に大きい重みを付与し、新しいサンプルに相対的に小さい重みを付与して、観測区間全体のスペクトル情報を算出し、この算出したスペクトル情報を累算スペクトル情報として出力することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーレーション検出装置。
【請求項5】
音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する累算スペクトル解析過程と、
前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間における前記累算スペクトル情報を繰り返し取得して、各累算スペクトル情報から振幅スペクトルを各々算出し、各累算スペクトル情報から算出される振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するカラーレーション周波数推定過程と
を具備することを特徴とするカラーレーション検出方法。
【請求項1】
音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する累算スペクトル解析手段と、
前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間における前記累算スペクトル情報を繰り返し取得して、各累算スペクトル情報から振幅スペクトルを各々算出し、各累算スペクトル情報から算出される振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するカラーレーション周波数推定手段と
を具備することを特徴とするカラーレーション検出装置。
【請求項2】
前記カラーレーション周波数推定手段は、前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間において、前記累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求めることに加えて、前記入力信号のレベルが増加する立ち上がり区間において、前記累算スペクトル情報から得られる振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、立ち下がり区間における周波数毎のピークの発生頻度と立ち上がり区間における周波数毎のピークの発生頻度とを比較し、立ち下がり区間において顕著な発生頻度を生じさせているピークの周波数をカラーレーション周波数として推定することを特徴とする請求項1に記載のカラーレーション検出装置。
【請求項3】
前記累算スペクトル解析手段は、所定長の観測区間において1または複数の新たな入力信号のサンプルが観測される毎に観測区間全体のスペクトル情報を算出し、算出したスペクトル情報を周波数軸を合わせて累算することにより累算スペクトル情報を生成することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーレーション検出装置。
【請求項4】
前記累算スペクトル解析手段は、所定長の観測区間について、三角窓関数により、古いサンプルに相対的に大きい重みを付与し、新しいサンプルに相対的に小さい重みを付与して、観測区間全体のスペクトル情報を算出し、この算出したスペクトル情報を累算スペクトル情報として出力することを特徴とする請求項1または2に記載のカラーレーション検出装置。
【請求項5】
音響帰還系において取得される入力信号のサンプルから累算スペクトル情報を算出する累算スペクトル解析過程と、
前記入力信号のレベルが減衰する立ち下がり区間における前記累算スペクトル情報を繰り返し取得して、各累算スペクトル情報から振幅スペクトルを各々算出し、各累算スペクトル情報から算出される振幅スペクトルのピークの発生頻度を周波数毎に求め、ピークの発生頻度の高い周波数の中からカラーレーション周波数を推定するカラーレーション周波数推定過程と
を具備することを特徴とするカラーレーション検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−214622(P2007−214622A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29256(P2006−29256)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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