説明

カラー画像の処理方法および画像処理装置

【課題】複数の色彩を有する対象物の色欠陥を、容易かつ精度良く検出する。
【解決手段】複数の色彩を有する対象物がカラーカメラ2により撮像され、この撮像により生成された各色成分の画像データが画像メモリ12,13,14に格納されると、CPU10は、これら3種類の画像データにより構成されるカラー画像と基準画像メモリ15,16,17に登録されている基準画像とを画素単位で対応づけし、対応関係にある画素の組毎に画素間の色差を求めると共に、色差が所定のしきい値を超えた画素の組み合わせを計数する。この計数値が所定の許容値を超えたとき、CPU10は、対象物に色彩欠陥があると判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、赤、緑、青の各色成分の濃度データから成るカラー画像を用いて複数の色彩を有する対象物における色彩欠陥を検出する画像処理方法および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から行われている代表的なカラー画像処理では、ユーザーに所定の色彩を指定させることによって、各色成分の濃度データの組み合わせによる3次元の画像データを、前記指定された色彩に対する色差という一次元のデータに変換し、その色差データの大きさを用いた処理を実行するようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
また、色彩の異常が生じた部分を欠陥として抽出する場合、あらかじめ正常な色彩を基準色として登録しておき、計測対象の画像を構成する画素毎に前記基準色との色差を求めることも提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−203476号公報
【特許文献2】特開平11−108759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、カラー画像上の各画素を1次元の色差データに置き換える処理の概要を、各色成分に対応する3軸による仮想空間(以下、「色空間」という。)における関係にして示したものである。ユーザーにより指定された色彩は、この色空間内の特定の点Qに対応するものとなる。ここで、この色空間における点Qからの距離により色差を表すと、前記点Qを中心とする球体の面上の点に対応する色彩は、すべて同じ値で表されることになる。図9では、点Qの値を255として、150,100,50の各濃度値に変換される範囲を、球体の断面の輪郭に模式化して示す。
【0006】
ユーザーに色彩を指定させる場合、ユーザーによって、また同じユーザーでも時によって、指定する色彩が変動する可能性がある。指定色が変動すると、上記点Qの位置も変わることになるから、各画素における色差の値も異なるものとなる。すなわち、特許文献1,2のように、画像上の所定位置の色彩を基準色とした場合、その基準色の選択によって、色差として変換された画像上の濃度分布が変動することになる。さらに、このような濃度分布の変動により、対象物の測定結果や欠陥の検出結果まで変わってしまうおそれがある。
【0007】
また、従来の方法は、特定の一色を基準色とするものであるから、複数の色彩による模様が表された対象物など、計測対象の色彩が複数種ある場合の対応が困難となる。
【0008】
この発明は上記各問題に着目してなされたもので、複数種の色彩を有する対象物における色彩欠陥の検出を容易にし、かつ精度の高い処理結果を得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、赤、緑、青の各色成分の濃度データから成るカラー画像を処理する方法に適用される。この発明にかかる画像処理方法では、複数の色彩を有する対象物のモデルのカラー画像を基準画像として登録し、当該対象物を撮像することにより生成されたカラー画像を処理対象画像として、この処理対象画像中の対象物を抽出し、この抽出結果に基づき処理対象画像と基準画像とを画素単位で対応づけて、対応関係にある画素の組毎に画素間の色差を求めると共に、前記色差が所定のしきい値を超えた画素の組み合わせを計数する。そして、色差がしきい値を超えた画素の組み合わせの数が所定の許容値を超えたとき、対象物に色彩結果があると判別する。
【0010】
上記の方法において、計測対象のカラー画像の各構成画素の色彩は、赤、緑、青の各濃度データの組み合わせにより表される。また、対応関係にある画素間の色差は、たとえば前記した色空間における距離として求めることができる。
【0011】
上記の方法は、模様などによる複数種の色彩を有する対象物を対象とした色彩欠陥の検出に使用することができる。処理対象画像中の対象物を抽出する処理では、たとえば、処理対象画像をモノクロ画像に変換して、対象物のエッジを抽出する。また、基準画像に対する処理対象画像の回転ずれなどを補正しておくのが望ましい。
【0012】
上記の方法によれば、ユーザーは、色彩の分布が適切なモデルのカラー画像を基準画像として登録することによって、色彩欠陥を安定して検出することができる。
【0013】
上記の方法を実施するための画像処理装置は、赤、緑、青の各色成分の濃度データから成るカラー画像を入力する画像入力手段と、複数の色彩を有する対象物のモデルのカラー画像を基準画像として登録するためのメモリと、前記画像入力手段が複数の色彩を有する対象物を撮像することにより生成されたカラー画像を処理対象画像として入力したことに応じて、この処理対象画像中の対象物を抽出する抽出手段と、抽出手段による抽出結果に基づき、前記対象物につき前記メモリに登録された基準画像と処理対象画像とを画素単位で対応づけて、対応関係にある画素の組毎に画素間の色差を求めると共に、この色差が所定のしきい値を超えた画素の組み合わせを計数する演算手段と、前記色差がしきい値を超える画素の組み合わせが所定の許容値を超えたとき、対象物に色彩欠陥があると判別する判別手段とを具備する。
【0014】
上記構成の装置において、画像入力手段は、カラー画像生成用の撮像手段に対するインターフェース回路とすることができる。また撮像手段がアナログカメラである場合、画像入力手段には、各色成分の濃度データをディジタル変換するA/D変換回路を含めることができる。
また、画像入力手段は、外部の装置からあらかじめ生成されたカラー画像を入力するための通信用のインターフェース回路や、所定の記憶媒体に格納されたカラー画像を読み出すドライブ装置として構成することもできる。
【0015】
画像入力手段やメモリ以外の各手段は、プログラムが設定されたコンピュータにより構成するのが望ましい。ただし、必ずしもすべての手段をコンピュータにより構成する必要はなく、一部の手段をASIC(特定用途向けIC)により構成することもできる。
【0016】
さらに上記の画像処理装置には、色彩欠陥の検出結果や良/不良の判別結果などを表示したり、外部に出力するための手段を設けることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、複数の色彩を有する対象物の色欠陥を検出する場合に、色彩分布が良好な対象物のモデルのカラー画像を基準画像として登録することによって、容易に対応することができる。また、画像中に含まれる色彩の数や種類に左右されることなく、色彩欠陥を検出する処理を、高い精度で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明にかかる画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】欠陥検査1の手順を示すフローチャートである。
【図3】計測対象領域の分割例を示す図である。
【図4】欠陥検査2の手順を示すフローチャートである。
【図5】位置計測処理のための計測対象領域およびウィンドウの設定例を示す図である。
【図6】位置計測処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図6のST207〜211の処理の具体例を示す図である。
【図8】個数検査の手順を示すフローチャートである。
【図9】色差に基づく変換処理において同じ値が設定される範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、この発明が適用された画像処理装置の基本構成を示す。この画像処理装置は、カラー画像生成用のカメラ2と本体部1とから成るもので、カメラ2により生成されたカラー画像を本体部1に取り込んで、色彩異常部位の有無を判別したり、画像中に含まれる対象物を抽出するなどの処理を実行する。本体部1は、CPU10、プログラム等が格納されたメモリ11、処理結果を出力するための出力部18などを有するもので、たとえばパーソナルコンピュータにより構成することができる。
【0020】
さらに、この実施例の本体部1には、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色成分毎に画像メモリ12,13,14が設けられる。カメラ2から出力された各色成分の画像データは、それぞれ対応する画像メモリ12,13,14に格納される。なお、この図には記載していないが、各画像メモリ12,13,14への入力経路には、インターフェース回路やA/D変換回路などが設けられる。また、出力部18には、外部の装置に処理結果を送信するための通信インターフェース回路や、図示しないモニタに処理結果を表示させるための表示用インターフェース回路などが含められる。
【0021】
また、前記本体部1には、対象物のモデルのカラー画像から抽出された基準画像を登録するために、色成分毎の画像メモリ15,16,17(以下、「基準画像メモリ15,16,17」という。)が設けられる。
なお、前記メモリ11は、ROM,RAMのほか、ハードディスクなどの補助記憶装置を含むものとなる。また、基準画像メモリ15,16,17および前記画像メモリ12,13,14は、物理的には同一の記憶装置(前記ハードディスクなど)内に設定することができる。
【0022】
以下、上記の画像処理装置で実施できる処理を4例あげ、各例の詳細な処理内容を説明する。なお、以下でいうところの「画像」は、いずれもR,G,Bの各画像データを組み合わせたものである。
【0023】
(1)欠陥検査1
この検査は、無地の対象物の表面に、汚れやシミなどの欠陥により、本来とは異なる色彩が生じていないかどうかを検査するものである。図2は、この検査の手順を示す。
【0024】
この手順は、カメラ2からの画像データが各画像メモリ12,13,14に格納された時点からスタートする。まず、最初のステップ1(以下、ステップを「ST」と略す。)では、画像上の対象物に対して計測対象領域を設定する。なお、図2には詳細に記載していないが、計測領域を設定する際には、たとえば、入力された各色成分の画像データからモノクロ画像を作成し、そのモノクロ画像のエッジを抽出するなどして、対象物の画像を抽出する。そして、その抽出結果に基づき、元のカラー画像において、対象物の検査対象部位を含み、かつ背景部分など他の色彩を有する部位を含まないような計測対象領域を設定する。ただし、対象物が大きく位置ずれしない場合には、計測対象領域の設定位置をあらかじめ登録しておいてもよい。
【0025】
つぎのST2では、前記計測対象領域を複数の小領域に分割する。この小領域の大きさは、抽出すべき欠陥の大きさに応じてあらかじめ設定される。図3はその具体例を示すもので、x,yの各軸毎に計測対象領域20を均等に分割することにより、複数個(図示例では12個)の小領域が設定されている。
【0026】
つぎのST3では、各小領域につき、それぞれその小領域内の各画素における濃度データをR,G,Bの各色成分別に平均化する。この平均化により得られたRの平均値、Gの平均値、Bの平均値により表される色彩が平均色である。
【0027】
つぎにST4において、カウンタnを1に、色差の最大値Dmaxを0に、それぞれ初期設定する。そしてn番目の小領域に着目し、この小領域に上下左右のいずれかの方向で隣接する小領域に対する色差Dnを算出する(ST5,6)。この色差Dnは、色空間におけるユークリッド距離として求めることができる。すなわち、着目中の小領域における平均色を(R0,G0,B0)とし、隣接する小領域の平均色を(R1,G1,B1)とした場合、色差Dnは、つぎの(1)式により算出することができる。
【0028】
【数1】

【0029】
ST7では、上記(1)式により求めた色差Dnを最大値Dmaxと比較する。前記ST4によりDmaxの初期値を0に設定しているため、1回目のST7の判定は必ず「YES」となる。この場合にはST8に進み、前記Dnの値をもって最大値Dmaxを書き換える。
【0030】
以下、着目中の小領域に隣接するすべての小領域に対してST6〜8を実行した後、さらにnの値を更新することにより着目対象を変更し、上記の処理を実行する(ST5〜11)。この結果、隣接する小領域の組毎に色差Dnが求められ、その中の最大値がDmaxとして抽出される。ST12では、この最大値Dmaxを所定のしきい値Dthと比較する。なお、このしきい値Dthは、検査に先立ち、欠陥のない対象物の画像から求めた色差(最大の色差とするのが望ましい。)に基づき設定することができる。
【0031】
前記ST12でDmaxがしきい値Dthより大きいと判別された場合には、ST13に進み、不良判定(対象物に欠陥があることを意味する。)を行う。一方、Dmaxがしきい値Dth以下であれば、ST14に進み、良判定(対象物に欠陥がないことを意味する。)を行う。そして、ST15では、ST13またはST14の判定結果を出力部18より出力し、処理を終了する。
【0032】
上記の処理によれば、無地の対象物について、その対象物の色彩を登録する必要なしに欠陥検査を行うことができる。また、検査の途中で対象物の色彩が変わった場合でも、同じアルゴリズムにより速やかに検査を進めることができる。
【0033】
なお、図2の手順では、計測対象領域における色差の最大値Dmaxを求め、そのDmaxの値の大きさによって欠陥の有無を判断しているが、これに代えて、色差Diを求める都度、その値を前記しきい値Dthと比較し、色差Diがしきい値Dthを超えた時点で不良判定を行うようにしてもよい。
【0034】
また、しきい値Dthを超える色差が抽出された場合、その色差を得たときの小領域の組について、他の小領域との色差をチェックすることにより、欠陥の位置を特定することもできる。たとえば、前記図2の手順において、最終的に得た最大値Dmaxがしきい値Dthを超えた場合、Dmaxを得たときの2つの小領域について、他の小領域に対する色差をチェックし、隣接するすべての小領域に対し、しきい値Dthを超える色差またはDthに近い値の色差が抽出されている方の小領域を欠陥部位として特定する。
【0035】
(2)欠陥検査2
この検査は、無地ではなく、文字、図柄、模様などが複数種の色彩により表された物体を対象として、本来あるべきでない色彩が含まれていないかどうかを検査するものである。この検査を行う際には、まず、色彩の分布が良好な対象物のモデルを撮像し、得られたカラー画像から対象物を含む所定領域内の画像を抽出し、これを前記基準画像メモリ15,16,17に登録する。そして、検査対象の画像と基準画像との間で対応する画素毎に色差を求め、その色差が所定のしきい値dn1を超えるものを欠陥画素として抽出する。
【0036】
図4は、上記検査の詳細な手順を示す。この手順の最初のステップであるST101では、処理対象のカラー画像をモノクロ画像に変換するなどして対象物のエッジを抽出し、その抽出結果に基づき、前記処理対象のカラー画像に前記基準画像と同じ大きさの計測対象領域を設定する。なお、以下では、設定された計測対象領域に基準画像を重ね合わせたとき、モデルと対象物とが正確に位置合わせされるものとして説明するが、実際には、モデルに対する対象物の位置ずれや微妙な大きさの違いなどを考慮して、しきい値dn1に若干の誤差を含めておくのが望ましい。
【0037】
計測対象領域が設定されると、ST102では、カウンタiを1に、欠陥画素数dnを0に、それぞれ初期設定する。つぎのST103では、i番目の画素について、基準画像側の対応画素に対する色差Diを算出する。ここで色差Diが所定のしきい値D1を上回る場合には、ST104が「YES」となってST105に進み、前記欠陥画素数dnを1つ大きな値に更新する。
なお、ST103で求める色差Diは、計測対象領域内の一画素と基準画像上の対応画素とについて、色空間における色彩のユークリッド距離として表されるものであり、前記(1)式と同じ方法で求めることができる。
【0038】
以下、同様に、iの値を更新することにより、計測対象領域内の各画素に順に着目しつつ、その着目画素につき、基準画像上の対応画素との色差Diを算出し、その色差Diがしきい値D1を上回った画素の数を欠陥画素数dnとして計数する(ST103〜107)。すべての画素に対する処理が終了すると、ST108に進み、欠陥画素数dnを所定のしきい値dn1と比較する。ここで欠陥画素数dnが前記しきい値dn1を超える場合には、ST109に進んで不良判定を行う。他方、欠陥画素数dnがしきい値dn1以下であれば、ST110に進んで良判定を行う。最後にST111において、判定結果を出力し、処理を終了する。
【0039】
上記の欠陥検査によれば、複数種の色彩が混在する対象物について、色彩毎に個別の検査を行わなくとも、簡単に欠陥を抽出することができる。しかも、その抽出は画素単位で行われるから、微小な欠陥まで抽出することができる。
ただし、欠陥画素(前記色差dnがしきい値dn1を超える画素)が所定数以上集まった集合体のみを欠陥として抽出してもよい。また、欠陥画素の座標や集合体の大きさに基づき、欠陥の位置や大きさを抽出して出力するようにしてもよい。
【0040】
(3)位置計測
この計測処理は、背景、対象物とも無地である場合に、背景と対象物との境界(すなわち対象物の輪郭線の位置)を検出するために行われるものである。また、この計測処理は、前記した欠陥検査1において、計測対象領域の設定のために対象物を抽出する際に使用することもできる。
【0041】
この計測処理では、対象物の輪郭線の位置がある程度判明していることを前提とするもので、輪郭線に対応する可能性がある範囲に計測対象領域を設定する。図5は、計測対象領域の設定例を示すもので、計測対象の画像30において、対象物31の輪郭線を横切る方向(この例ではx軸方向)に長い矩形状の計測対象領域32を設定している。この実施例では、この計測対象領域32の一端(図示例では左端)に、所定幅wを持つウィンドウ33(y軸方向におけるウィンドウ33の長さは計測対象領域32と同一である。)を設定する。そして、このウィンドウ33を右方向に移動させながら、その幅wに対応する距離だけ移動する毎にウィンドウ33内の平均色を求める。さらに、各位置で求めた平均色を分析することにより、対象物31の輪郭線のx座標を求めるようにしている。
なお、この図5の例は、y軸方向に沿う輪郭線を抽出する場合のものであり、x軸方向に沿う輪郭線を抽出する場合には、その輪郭線に対応する可能性がある範囲に、y軸方向に長い計測対象領域を設定し、輪郭線のy座標を求める。
【0042】
図6は、この計測処理の詳細な手順を示す。なお、この例では、前記図5の例に基づき、対象物のy軸方向に沿う輪郭線の位置を抽出するものとして説明する。
最初のステップであるST201では、前記図5の要領で、前記計測対象領域32を設定する。つぎのST202では、設定した計測対象領域32の左端に前記ウィンドウ33を設定し、ST203において、ウィンドウ33内の平均色を求める。さらに、このウィンドウ33を右に移動させながら、前記幅wに対応する画素数だけ移動する毎に、ウィンドウ33内の平均色を求める(ST203〜205)。なお、平均色の算出は、ウィンドウ33が1画素移動する毎に行っても良い。
【0043】
前記ウィンドウ33の走査により取得した平均色は、取得した順序を示す数字を含むラベル(たとえばP1,P2,P3・・・)に対応づけされて、メモリ11に保存される。また、各平均色を得たときのウィンドウ33の位置は、ウィンドウ33の代表点(左端点など)のx座標として表されるが、このx座標も、平均色と同様の数字を含むラベル(たとえばx1,x2,x3・・・)に対応づけられて、メモリ11に保存される。
【0044】
計測対象領域32の右端までウィンドウ33が移動すると、ST206では、各位置で求めた平均色を2つずつ組み合わせ、組み合わせ毎に色空間における距離を算出する。
【0045】
つぎのST207では、前記の距離の算出結果に基づき、色空間に最大の距離を隔てて位置する2つの色彩を抽出し、これらの色彩を端点とする線分Lを設定する。
【0046】
つぎのST208では、カウンタjを1に初期設定する。このjは、前記ウィンドウの走査により取得した平均色のラベルに対応するものである。初期設定時のj=1は、ウィンドウ33の初期設定位置で取得した平均色に対応する。
【0047】
ST209では、前記色空間において、j番目に得た平均色に対応する点から前記線分Lへの垂線を設定する。ST210では、前記垂線と線分Lとの交点を抽出する。ST211では、前記交点が直線Lの中点を越えたか否かをチェックする。ここで、中点を越えていないと判断したときは、jをインクリメントすることによって、つぎに取得した平均色に着目し、同様にST209〜211を実行する。
【0048】
上記の処理において、いずれかの平均色について、その平均色に対応する点からの垂線と線分Lとの交点が線分Lの中点を越えたとき、前記ST209〜212のループを終了してST213に進み、その平均色を得た位置(前記ウィンドウの設定位置のうち、jの値に対応するラベルに対応するもの)を輪郭線の位置であると判別する。そして、ST214で、判別結果として、前記境界線の位置を示す座標を出力し、処理を終了する。
【0049】
図7は、色空間における各平均色の分布例を示す。この例では、前記ウィンドウ33が5箇所に設定されたものとして、各平均色に対応する点を抽出の順にP1,P2,P3,P4,P5として示す。また図中のOは前記線分Lの中点である。
【0050】
前記計測対象領域32が対象物の輪郭線を横切るように設定されている場合、最も距離が大きくなる2色の一方は、ウィンドウ33が背景部分に設定されているときの平均色であり、他方はウィンドウ33が対象物上に設定されているときの平均色になると考えることができる。また、ウィンドウ33が背景と対象物との境界を通過する間は、ウィンドウ32に含まれる両者の割合が徐々に変化すると考えられる。このようなことから、図7に示すように、最初の設定位置で取得した平均色P1と最後の設定位置で取得した平均色P5とが前記線分Lの端点になると考えることができる。
【0051】
図7の例において、前記ST207〜212の処理を行う場合、各平均色に対応する点P1,P2,P3,P4,P5に順に着目し、着目中の点から線分Lへの垂線の交点を追跡することになる。ここで、最初の点P1にかかる交点はP1自身となり、以下の交点は、線分Lの他方の端点P5に向かって移動するようになる。図7の例では、点P1から見て最初に中点Oを超えるのは点P4であるから、この点P4に対応する平均色を得た位置を輪郭線の位置として判別することになる。なお、色彩が変化したと判別する点は中点Oに限らず、点P1から任意の距離だけ離れた点としてもよい(ただし、色彩が変化したとみなすのに十分な距離だけ離れた点とする必要がある。)。
【0052】
なお、上記の説明は、計測対象領域32が対象物の輪郭線を横切るように設定されていることを前提としているが、計測対象領域32内に対象物の画像が含まれていない場合の誤判別を防止するために、前記線分Lが所定のしきい値より小さい場合には、処理を中止するようにしてもよい。
【0053】
(4)個数検査
この検査は、複数種の色彩が含まれている対象物(たとえばマーク)が複数配列された物体の画像を処理して、前記対象物が定められた数だけ抽出されるかどうかを判別するものである。この判別処理のために、この実施例では、あらかじめ、色彩分布が良好な対象物のモデルを有する物体を撮像し、得られたカラー画像から前記モデルを1個だけ含む画像を切り出し、これを基準画像として登録する。
【0054】
また、この実施例では、前記基準画像について平均色を求めた後、基準画像上の各画素の色彩をそれぞれ色空間中の1点Miとして、前記平均色を示す点Mμから点Miまでの距離、および点Mμから点Miに向かう方向を求める。この距離および方向は、点Mμを始点とし、点Miを終点とするベクトルの長さおよび向きに相当する。また、方向は、基準の平面(たとえばRの軸とGの軸とによる平面)に対する前記ベクトルの角度として表すことができる。
【0055】
画素毎に求められた距離および方向は、メモリ11に登録される。検査の際には、検査対象の画像上に前記基準画像と同じ大きさの計測対象領域を走査し、1画素移動する毎に前記メモリ11の登録データを用いて基準画像に対する類似度を求める。そして、類似度が所定のしきい値C1を超えた回数を計数することにより、対象物の数を計測し、その数の適否を判別するようにしている。
【0056】
図8は、検査の詳細な手順を示す。この手順において、(x,y)は、処理対象の画像の各画素の座標であり、axはx軸方向における画素の数を、ayはy軸方向における画素の数を、それぞれ示す。また、Enは、前記対象物の抽出数である。
【0057】
最初のステップであるST301では、前記抽出数Enおよびyを初期値の0にセットし、つぎのST302では、xを0にセットする。さらにST303では、前記(x,y)の位置を始点にして計測対象領域を設定する。すなわち、座標(0,0)の位置が左上頂点となるように計測対象領域を設定することになる。
【0058】
つぎのST304では、前記計測対象領域内の平均色を算出する。この平均色も、R,G,Bの色成分毎の平均値により表されるもので、色空間中の1点Pμとして示すことができる。
【0059】
つぎのST305は、計測対象領域内の画素毎に実行されるものである。ここでは、処理対象の画素の色彩を色空間中の1点Piと考えて、前記平均色を示す点Pμからの距離、および点Pμから点Piに向かう方向を求める。なおこの距離および方向は、前記基準画像について求めたものと同様に、点Pμを始点とし、点Piを終点とするベクトルの長さおよび方向に相当するものである。
【0060】
ST306では、前記ST305で求めた距離および方向と、メモリ11に登録されている基準画像の距離および方向とを用いて、下記の(2)式に基づき、類似度C(x,y)を求める。なお(2)式において、nは計測対象領域内の全画素数である。またd(Pi,Pμ)は、前記点Piと点Pμとの距離であり、d(Mi,Mμ)は、基準画像側の点MiとMμとの距離である。また、θiは、点Pμ,Piによるベクトルと、点Mμ,Miによるベクトルとのなす角度であり、0度から180度の範囲の数値となる。
【0061】
【数2】

【0062】
このようにして類似度C(x,y)を求めると、ST307では、その類似度C(x,y)を所定のしきい値C1と比較する。ここで類似度C(x,y)がしきい値C1を上回ると判断すると、ST308に進み、前記抽出数Enを1つ大きな値に更新する。
【0063】
以下、x,yの値をそれぞれ1〜ax、1〜ayの範囲で動かすことにより、計測対象領域を1画素ずつ走査しながら、上記と同様の処理により走査毎に相関値C(x,y)を求め、その相関値C(x,y)がしきい値C1を上回った回数を抽出数Enとして計数する(ST302〜312)。走査が完了すると、ST313に進み、前記抽出数Enがあらかじめ登録された基準の数E0と一致するかどうかをチェックする。ここで、En=E0であれば、ST314に進み、検査対象の物体が良品である旨の判定を行う。一方、En≠E0の場合には、ST315に進み、検査対象の物体が不良品である旨の判定を行う。この後は、ST316に進み、前記の判定結果を出力して処理を終了する。
【0064】
上記(2)式によれば、d(Pi,Pμ)とd(Mi,Mμ)との差が小さくなり、かつθiが0に近づくほど、類似度C(x,y)の値は高くなる。したがって、前記しきい値C1の値を十分に高く設定することにより、基準画像の色彩の分布状態に近い画像領域を対象物として抽出することが可能となる。
【0065】
ただし、(2)式では、平均色に対する相対的な色彩変化が同様であれば、類似度C(x,y)も高くなるので、基準画像とは色合いが異なる領域も対象物として抽出されることになる。基準画像と同様の色合いの領域のみを抽出する必要がある場合には、つぎの(3)式により前記類似度C(x,y)を補正するとよい。
【0066】
【数3】

【0067】
(3)式において、dmaxは、色空間において得ることのできる最大の距離である。たとえば、各色成分の濃度値を8ビットで表す場合には、dmax=(255×3)となる。d(Pμ,Mμ)は、計測対象領域から求めた平均色Pμと基準画像から求めた平均色Mμとの距離である。この(3)式による補正後の類似度C´(x,y)によれば、計測対象領域内の各色彩Piの平均色Pμに対する関係が基準画像における関係に類似していても、平均色Pμが基準の平均色Mμから離れるほど、類似度の値は小さくなる。
【0068】
なお、図8の手順では、類似度C(x,y)がしきい値C1を超えた回数をもって、対象物の数を求めているが、これに代えて、類似度C(x,y)がしきい値C1を超えたときの(x,y)の値を、対象物の位置として出力してもよい。また、類似度C(x,y)の値によって、対象物の色彩分布の適否を判別することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 本体部
2 カメラ
10 CPU
11 メモリ
12,13,14 画像メモリ
14,15,17 基準画像メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤、緑、青の各色成分の濃度データから成るカラー画像を処理する方法において、
複数の色彩を有する対象物のモデルのカラー画像を基準画像として登録し、
前記複数の色彩を有する対象物を撮像することにより生成されたカラー画像を処理対象画像として、この処理対象画像中の対象物を抽出し、この抽出結果に基づき前記処理対象画像と基準画像とを画素単位で対応づけて、対応関係にある画素の組毎に画素間の色差を求めると共に、前記色差が所定のしきい値を超えた画素の組み合わせを計数し、
前記色差がしきい値を超えた画素の組み合わせの数が所定の許容値を超えたとき、前記対象物に色彩欠陥があると判別する、
ことを特徴とするカラー画像の処理方法。
【請求項2】
赤、緑、青の各色成分の濃度データから成るカラー画像を処理対象画像として入力する画像入力手段と、
複数の色彩を有する対象物のモデルのカラー画像を基準画像として登録するためのメモリと、
前記画像入力手段が前記複数の色彩を有する対象物を撮像することにより生成されたカラー画像を処理対象画像として入力したことに応じて、この処理対象画像中の対象物を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段による抽出結果に基づき、前記対象物につき前記メモリに登録された基準画像と処理対象画像とを画素単位で対応づけて、対応関係にある画素の組毎に画素間の色差を求めると共に、この色差が所定のしきい値を超えた画素の組み合わせを計数する演算手段と、
前記色差がしきい値を超えた画素の組み合わせが所定の許容値を超えたとき、前記対象物に色彩欠陥があると判別する判別手段とを具備する画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−182330(P2010−182330A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86754(P2010−86754)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2004−127912(P2004−127912)の分割
【原出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】