説明

カルシウム吸収促進剤

【課題】 カルシウムの吸収を促進する成分としては、従来ビタミンDや乳糖のほか、例えば、骨由来のペプチド、酪酸、ガラクトオリゴ糖、タラまたはオキアミ由来の蛋白質、水溶性キトサン、豆乳蛋白質高分子画分などがある。本発明は、安全性が高く、かつ、優れたカルシウム吸収効果を有するカルシウム吸収促進剤およびこれを用いた飲食品を提供することを課題とする。
【解決手段】 ブナハリタケ子実体からの抽出物からなる、カルシウム吸収促進剤。前記カルシウム吸収促進剤を含有することを特徴とするカルシウム吸収促進用飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム吸収促進剤およびこれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カルシウムの摂取不足が高血圧、癌などの様々な疾病の原因となりうることが指摘され、カルシウム製剤とともにカルシウムの吸収を促進する成分の研究が盛んになってきている。
カルシウムの吸収を促進する成分としては、従来ビタミンDや乳糖のほか、各種有効成分が提案されている。例えば、骨由来のペプチド(特許文献1)、酪酸(特許文献2)、ガラクトオリゴ糖(特許文献3)、タラまたはオキアミ由来の蛋白質(特許文献4)、水溶性キトサン(特許文献5)、豆乳蛋白質高分子画分(特許文献6)などが提案されている。
【0003】
一方、キノコ類(担子菌)は古くから様々な薬効があることが知られている。例えば、霊芝子実体では熱水抽出エキスが血圧降下作用を示す。また、ブナハリタケ(Mycoleptodonoides aitchisonii)からの抽出物が、糖尿病予防作用(特許文献7)等を有することも知られている。
【特許文献1】特開平4−16165号公報
【特許文献2】特開平4−108360号公報
【特許文献3】特開平4−134031号公報
【特許文献4】特開平7−194314号公報
【特許文献5】特開平7−194316号公報
【特許文献6】特開平7−75525号公報
【特許文献7】特開2002−187851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全性が高く、かつ、優れたカルシウム吸収促進作用を有するカルシウム吸収促進剤およびこれを含む飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ブナハリタケ子実体からの抽出物には、優れたカルシウム吸収促進作用があることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、ブナハリタケ子実体からの抽出物からなる、カルシウム吸収促進剤を提供するものである。
また本発明は、前記カルシウム吸収促進剤を含有することを特徴とするカルシウム吸収促進用飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性が高く、かつ、優れたカルシウム吸収促進作用を有するカルシウム吸収促進剤およびこれを含む飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に使用されるブナハリタケ子実体としては、自然界に自生する天然の子実体あるいは人工栽培された子実体のいずれでもよいが、成分含量等の品質が安定した人工栽培されたブナハリタケ子実体の方が好ましい。自然界に自生する天然のブナハリタケ子実体では成分含量等が生息地域や気候等により変動する上に、周年安定的に収穫することができないが、人工栽培されたブナハリタケ子実体では成分含量等が生息地域や気候等により影響されない上に、周年安定的に収穫することができる。また、人工栽培方法としては特に限定されないが、成分含量等の品質が安定したブナハリタケを安価かつ周年安定的に収穫することができる菌床栽培の方が原木栽培よりも好ましい。ここで、菌床栽培とは、原木を用いることなく、保水体と栄養源からなる素材に種菌を接種し、温度、湿度、照度などを制御した環境下で栽培する方法をいう。
【0009】
かかる菌床栽培の好ましい態様としては、保水体と、乾燥おから及びビール粕のうち少なくとも一方を含む栄養源を含有する栽培用培養源と、水とを混合した培地を滅菌する滅菌工程と、滅菌した培地にブナハリタケの種菌を接種する接種工程と、ブナハリタケの種菌が接種された培地を培養し、培地に菌糸が生育した菌床を得る前培養工程と、該菌床を培養し、子実体に成長しうる物理的空間に曝されていないブナハリタケ原基を得る中培養工程と、該子実体に成長しうる物理的空間に曝されていないブナハリタケ原基の中から選ばれた原基を、ブナハリタケ原基が子実体に成長しうる物理的空間に曝される条件下で培養し、ブナハリタケ子実体を得る後培養工程からなる人工栽培を具体的に例示することができる。ここで、子実体に成長しうる物理的空間とは、培養基から外に向かって子実体が成長する空間を意味し、例えば培養基をプラスチック製の袋等により密封した場合には密封容器の外部の空間を意味する。
【0010】
本発明において用いられるブナハリタケ菌株としては、市販菌株や自然界から得られる菌株をも含めどのような菌株でもよい。例えば、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにFERM BP−6697として寄託されている菌株が挙げられる。
【0011】
ブナハリタケの菌床栽培において、培地に使用する保水体としては、スギ、ヒノキ、マツ等の針葉樹由来のオガクズや、ブナ、ナラ、クヌギ等の広葉樹由来のオガクズや、また、近年キノコ栽培においてオガクズ代用品として使用されるコーンコブ(トウモロコシ軸粉砕物)の他、市販されている菌床材料等を例示することができ、これらのものは単独で使用してもよいし、2種以上混合して用いることもできる。
【0012】
また、ブナハリタケの菌床栽培において、培地に使用する栽培用栄養源としては、ビール粕又は乾燥オカラのいずれかの必須栄養源と、この選ばれた必須栄養源以外の他の栄養源とが組み合わされて用いられる。他の栄養源としては、通常キノコの栽培に用いられる米糠、一般フスマ、専管フスマ、コーンブラン等を例示することができる。ビール粕及び乾燥オカラを共に含まない栽培用栄養源を培地に使用すると、菌糸の成長が遅いばかりでなく、大きさや形に優れた子実体を得ることが困難となる。
【0013】
上記保水体と栽培用栄養源との混合割合は、生重量比で10:0.7〜10:4の範囲が好ましく、10:2〜3の範囲が特に好ましい。また、水分含量は最終培地あたり60〜70%に調整すればよいが、65%程度にするのがより好ましい。さらに、培地成分として、通常キノコ栽培で用いられている大豆皮、乾燥酵母やpH調整剤等を培地成分として添加することもできる。
【0014】
ブナハリタケの菌床栽培は、前述したように、前培養工程と中培養工程と後培養工程からなり、培地中にブナハリタケの菌糸を特定の培養条件下で充分に生育させ、子実体形成のための菌床を得る前培養工程と、該菌床に特定の培養条件下で培養し、ブナハリタケ原基を形成させる中培養工程と、形成したブナハリタケ原基を特定の培養条件下で培養し、子実体まで成長させる後培養工程の3つの培養工程を採用しており、これにより含量成分等の品質が安定したブナハリタケの子実体を得ることができる。
【0015】
前培養工程は、保水体と栽培用栄養源と水とを含有する培地を加圧滅菌後、ブナハリタケの種菌を接種し、温度15〜35℃、好ましくは21〜27℃で、湿度40〜80%、好ましくは60〜70%付近で、暗条件下で培養し、培地中に菌糸を蔓延させ、子実体が発生するための栄養源を菌糸に蓄積させる工程である。培養熟成日数、すなわち培地全体に菌糸が蔓延するのに要する日数と栄養源を菌糸に蓄積させるのに必要な日数は、1.2kg用袋を用いた場合、25〜90日間が好ましく、通常25日間未満では子実体は発生しないか、後の中培養工程で著しく日数を要する。この際、用いる培養容器の大きさや種菌接種量により前培養工程に要する日数が変化することはいうまでもない。
【0016】
中培養工程は、前記のように、前培養工程終了後の菌床にブナハリタケ原基を形成させるために行う工程であり、前培養工程で得られた菌床を、温度8〜22℃、好ましくは12〜16℃、湿度80〜100%、好ましくは85〜95%、照度50ルックス以上、好ましくは50〜500ルックスで25〜60日間培養を続けると、例えば、菌床と容器内面との間等の子実体に成長しうる物理的空間に曝されていないブナハリタケ原基が形成する。
【0017】
後培養工程は、上記のように、中培養工程終了後の子実体に成長しうる物理的空間に曝されていないブナハリタケ原基を子実体へ成長させるために行う工程であり、中培養工程で得られた子実体に成長しうる物理的空間に曝されていないブナハリタケ原基が形成されている、例えば、容器の周辺箇所を取り除き、温度8〜22℃、好ましくは12〜16℃、湿度80〜100%、好ましくは85〜95%、照度50ルックス以上、好ましくは50〜500ルックスで、かつブナハリタケ原基が子実体に成長しうる物理的空間に曝される条件下で5〜20日間培養を続けるとブナハリタケ原基が子実体へと成長する。
【0018】
ブナハリタケの栽培には、培地の滅菌の簡易さ等から、栽培容器が通常用いられ、また栽培容器には栽培袋等も含まれる。
【0019】
本発明のブナハリタケ子実体からの抽出物は、ブナハリタケ子実体を常温水、熱水、アルコール含有水性溶媒等で抽出、好ましくは熱水抽出することによって得ることができる。子実体は生のまま抽出しても、乾燥させて保存可能としたものを抽出してもよいが、乾燥物が抽出効率、取り扱い安さ等の点で好ましい。また子実体は株状のまま抽出しても、予め粉砕して細かくしたものを抽出してもよい。抽出時の温度は、20〜135℃の範囲が好ましく、抽出時間は5〜240分が好ましい。そして、熱水抽出等の抽出処理後、不溶性の残渣を取り除いた抽出液を濃縮・乾燥すること等により、本発明における抽出物を得ることができる。なお、本発明のカルシウム吸収促進剤を飲料として製造する場合など、不溶性の残渣を取り除いた後、精製処理を施すことが好ましい。また、上記抽出液の濃縮は公知の濃縮方法であれば特に制限されるものではないが、加熱濃縮法、減圧加熱濃縮法、エタノール沈殿による濃縮方法、活性炭やイオン交換樹脂による濃縮法などを具体的に例示することができる。また、濃縮後の乾燥についても、公知の方法であればどのような方法でもよく、風乾法、加熱乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法などを具体的に例示することができる。
【0020】
本発明のカルシウム吸収促進剤は、通常、乾燥子実体換算で100mg〜20g/kg体重・日摂取することによりその効果をもたらすが、症状、性別、年齢等に応じて、摂取量は適宜調整することができる。また、本発明のカルシウム吸収促進剤は、例えば製薬上一般的に用いられている賦形剤と混合して通常経口投与薬として用いることができる。
【0021】
本発明のカルシウム吸収促進剤を含有する飲食品は、該低下剤を飲食品原料の一部として用いたり、あるいは製造工程又は製造後に添加・配合することにより得ることができる。かかる飲食品としては、例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類(アルコール性飲料)、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、クッキー、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、プリン、ゼリー、アイスクリーム類などの冷菓、チューインガム、キャンディ等の菓子類や、クラッカー、チップス等のスナック類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ、スープ、シチュー等の各種総菜などを具体的に例示することができる。
【0022】
以下、本発明におけるブナハリタケ子実体からの抽出方法を具体的に説明する。当該抽出方法は、ブナハリタケ子実体を60℃以上の熱水、好ましくは90℃以上の熱水で30分間以上、好ましくは60分間程度抽出する方法が挙げられる。またかかる熱水抽出を、加圧下100℃以上の温度下で行うこともできるが、常圧下100℃近辺で行うこともできる。抽出に際しての抽出液量は特に制限されるものではないが、コスト面、抽出効率面等からして乾燥キノコ重量に対して10〜20倍量の熱水を用いることが好ましい。抽出液として、エタノールなどの溶媒を適宜添加することもできるが、コスト面や製造現場での扱いやすさの点で、水のみで抽出したほうが望ましい。また、抽出時に回収率を向上させるためにセルラーゼやペプチダーゼの酵素類を使用することもできる。
【0023】
子実体は生のまま抽出してもよいが、乾燥させて保存可能とした子実体から抽出した方が、品質の優れた抽出エキスが得られる点で好ましい。乾燥方法としては熱風乾燥方法、凍結乾燥方法等公知の乾燥方法であれば特に制限されるものではないが、熱風乾燥機を用いる乾燥方法が経済的には優れている。かかる熱風乾燥方法における乾燥温度としては60〜70℃程度が好ましい。また引き続いて遠心分離、濾過等の固液分離操作を単独又は複数組み合わせて固液分離し、その後必要に応じて濃縮することにより、抽出エキスを調製することができる。また、上記抽出操作を複数回実施し、抽出効率の向上を図ることもできる。
【0024】
本発明のカルシウム吸収促進剤を飲料として製造する場合は、該抽出液をそのまま飲料に添加することもできるが、保存中におけるフロック、褐変等の発生を有効に抑制するための精製処理を行うことが特に好ましい。かかる精製処理としては、保存中におけるフロック、褐変等の発生など容器入り飲料の品質を維持しうる抽出後の処理であれば特に制限されるものではなく、ベントナイト処理、アルコール処理、活性炭処理等を具体的に例示することができる。
【0025】
上記ベントナイト処理としては、前記抽出液に対し、0.1〜5重量%程度、好ましくは1重量%程度のベントナイトを添加して、10分間程度撹拌した後、1〜数時間静置し、次いで濾過、遠心分離等の固液分離手段によって不溶成分を除去した後に殺菌する処理を挙げることができ、固液分離に際しては、濾過助剤としてセライト等を1〜5重量%程度用いることができる。また、殺菌方法としては、例えば95℃で60分間程度の加熱殺菌や、あるいは汚染微生物の透過を阻止しうる例えば孔径0.45μmのメンブレンフィルターを用いる濾過滅菌等を挙げることができる。
【0026】
上記アルコール処理としては、前記抽出液に対し、例えば25〜200容量%程度のエタノールを添加・撹拌後、室温に1時間以上放置し、エタノールに対して溶解度の低い高分子化合物などの不溶成分を析出・沈殿させ、次いでベントナイト処理同様、セライトろ過などの固液分離処理を行った後、減圧濃縮してエタノールを除去し、その後、遠心分離を行い、殺菌する処理を挙げることができる。
【0027】
上記活性炭処理としては、公知の活性炭処理により得られる活性炭処理液を殺菌する処理であれば特に制限されるものではなく、かかる活性炭処理に粒状あるいは粉状の活性炭を用いてもよいが、板状に加工した活性炭を用いることもできる。板状に加工した活性炭を用いて濾過する場合は、その後の固液分離操作の必要がない。
【0028】
また、これら精製処理は、上記ベントナイト処理、アルコール処理、活性炭処理等を適宜組み合わせて実施してもよく、例えば、エタノールを添加した抽出液に対して、ベントナイト、活性炭を添加してもよいし、またベントナイト、活性炭を添加した抽出液に対して、エタノールを添加してもよい。このようにして得られた精製処理後の抽出液は濃縮して使用することもできるが、コストの面からはそのままの濃度で飲料原料として使用することが好ましい。また、その際、防腐等の観点からエタノールを添加することもできる。
【0029】
上記方法で得られた抽出液を原料として各種飲料を調製する際の抽出液の配合量は、優れた香味になるように適宜決定することができるが、カルシウム吸収促進作用を充分に期待するということからして、容器入り飲料当たり乾燥重量で0.1g〜2g程度のブナハリタケからの抽出エキスを含有せしめるように設定することが好ましい。各種飲料の調製に際しては、通常の各種飲料の処方設計に用いられる糖類、香料、食品添加物類などどのようなものでも使用することができ、その他、オタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ユーカリエキス、杜仲茶エキスなど他の機能性素材と併用してもい。また、各種飲料の製造法等については、既存の参考書、例えば「改訂新版、ソフトドリンクス」(株式会社光琳)等を参考にすることができる。
【0030】
ブナハリタケ抽出液は、緑茶、半発酵茶(ウーロン茶)、発酵茶(紅茶)などいずれのお茶についても香味的に合いやすく、中でも中国茶、特に黄金桂やジャスミン茶の茶葉を用いると、キノコ特有の香味がマスキングされる。また、上記茶葉は単独で使用してもよく、また、杜仲茶、柿の葉、熊笹茶、ギャバロン茶、コーン茶、ハブ茶、菊花茶などの健康増進効果の期待できる茶葉などと併用してもよい。茶葉抽出液の製法としては特に制限されるものではないが、キノコ特有の香味をマスキングするには0.6重量%以上の茶葉を用いることが望ましい。そして、キノコの抽出工程と茶葉の抽出工程は、別工程とすることが好ましく、例えば、茶葉抽出液に別途調製したブナハリタケ抽出液を添加・配合することが好ましい。
【0031】
また、オレンジ、りんご、ぶどう、もも、いちご、バナナ、レモンなどの果汁や、トマト、ニンジン、キャベツ、セロリなどの野菜汁の中から1種ないし2種以上選択した上で、ブナハリタケ抽出液を添加・配合し、ジュースとすることができる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
実施例1
ブナオガクズ380g、乾燥ビール粕37.5g、乾燥おから37.5g、水道水545gを混合した計1000gを、1.2kg用PP(ポリプロピレン)製袋に詰めて培地を作製した。さらにこの袋にフィルターをはさんだポリプロピレン製キャップをして121℃、50分加圧滅菌し、滅菌後の培地を冷却した後、ブナハリタケの種菌を接種し、暗所にて温度23〜25℃、湿度60〜80%の条件で40日間前培養を行い、次に中培養工程へ移行した。中培養工程では、温度13〜15℃、湿度80〜95%、照度200ルックスの条件下で、30日培養するとブナハリタケ原基が形成された。袋内に直径約3cm程度の原基が認められる部分の袋部の1箇所を切り取り、次いで後培養工程へ移行した。後培養工程では、温度13〜15℃、湿度80〜95%、照度200ルックスの条件下で、17日培養すると1株のブナハリタケ子実体へと成長した。得られたブナハリタケ子実体は232.5gで、栽培に要した総日数は87日であった。
【0034】
得られたブナハリタケ子実体の凍結乾燥粉砕物60gをガラス容器に入れ、蒸留水1.5Lを加え、100℃で60分間加熱抽出し、ブナハリタケ残渣を取り除くことで褐色のブナハリタケ抽出液を得た。抽出液を凍結乾燥することで茶褐色のブナハリタケ抽出物(試験試料)17.4gを得た。
【0035】
9週齢のSD計雄性ラット6匹を1群とし、セルロースを10重量%含む対照食を対照群、このセルロースの10重量%の一部を前記ブナハリタケ抽出物に置き換えたものを実施例1群とした。なお、実施例1群において、前記ブナハリタケ抽出物は、摂取量として1日平均100mg/kgとなるように、実験飼料中のブナハリタケ抽出物の濃度を調整した。
【0036】
【表1】

【0037】
水と対照食あるいは実施例1の飼料を5日間自由に摂取させ、給餌開始後3日目より2日間出納実験を行った。飼料摂取量は給餌した飼料の重量から残された飼料の重量を差し引くことにより求めた。出納実験終了後、糞を採取し、110℃の恒温器内で3時間乾燥させた。この糞を粉砕機で砕き、さらに乳鉢で細かくすり潰した後、3Nの塩酸に溶解し、カルシウムの含有量を市販のカルシウム測定キットを用いて測定し、糞中のカルシウム含有率を求めた。各実験飼料中のカルシウム含有率は0.536%であり、下式によりカルシウム(Ca)の見かけの吸収率を算出した。
【0038】
【数1】

【0039】
その結果、カルシウム吸収率は対照群が48.50±2.55(%)であったのに対し、実施例1群が62.22±4.12(%)であり、危険率1%で有意差が示された。
【0040】
実施例2
以下の処方にてジュースを調製した。
冷凍濃縮オレンジ果汁 5.0質量部
果糖ブドウ糖液糖 1.0質量部
クエン酸 0.10質量部
L−アスコルビン酸 0.09質量部
実施例1のブナハリタケ抽出物 0.05質量部
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のカルシウム吸収促進剤は、経口的に摂取したカルシウムを効率よく腸管から体内に吸収させる機能を有すると推測される。したがって、本発明のカルシウム吸収促進剤は、医薬、食品、飼料、ペットフードの形態として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブナハリタケ子実体からの抽出物からなる、カルシウム吸収促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のカルシウム吸収促進剤を含有することを特徴とするカルシウム吸収促進用飲食品。

【公開番号】特開2009−114109(P2009−114109A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288025(P2007−288025)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】