説明

カルボキシペプチダーゼB阻害剤の製造用中間体

強力なカルボキシペプチダーゼB阻害剤であるホスフィン酸誘導体を効率よく製造するための製造用中間体である一般式(1)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物。


[式中、
及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、各種血栓症、血管障害に起因する疾患、線溶低下に伴う臓器障害の治療および予防に有効な選択的カルボキシペプチターゼB阻害活性を有するホスフィン酸誘導体の中間体およびその製造法に関する。
【背景技術】
ホスフィン酸誘導体は、ホスフィン酸部分(−P(O)(OH)CH−)の幾何配置が酵素によるペプチド結合の加水分解反応の遷移状態を模倣していること、またリン酸基に類似していることから、プロテアーゼ阻害剤やリン酸基を認識する酵素の阻害剤の基本骨格として利用されている。これまでアミノペプチダーゼ(例えば、“Proceeding of National Academy of Science of the United State of America”,(米),1998,95,p.12028−12033;“Biochemistry”,(米),2000,39,p.1152−1155参照)、マトリックスメタロプロテアーゼ(例えば、“Bioorganic & Medicinal Chemistry Letter”,(英),1999,9,p.127−132参照)、D−Ala−D−Ala adding enzyme(例えば、“Journal of Chemical Society,Perkin Transactions 1”,(英),1998,p.131−142参照)、レニン(例えば、“Journal of Medicinal Chemistry”(米),1989,32,p.1652−1661参照)、D−Ala−D−Alaリガーゼ(例えば、“Journal of Medicinal Chemistry”(米),1988,31,p.1772−1778参照)、thermolysin(例えば、“Journal of American Chemical Society”(米),1991,113,p.297−307参照)、アンギオテンシン転換酵素(例えば、“Medicinal Research Reviews”(米),1985,5,p.483−531参照)、カルボキシペプチダーゼB(例えば、国際公開WO00/66550、WO01/19836参照)等の阻害剤が報告されている。
ホスフィン酸誘導体(−P(O)(OH)CHCHRCO−)を基本骨格とした化合物の合成法としては、次のような方法が代表例として挙げられる。例えば、“Bioorganic & Medicinal Chemistry Letter”,(英),1999,9,p.127−132;“Journal of Medicinal Chemistry”(米),1989,32,p.1652−1661等に記載されるようにアクリル酸エステル誘導体とホスフィン酸誘導体の共役付加反応を用いる方法、例えば、“Journal of Chemical Society,Perkin Transactions 1”,(英),1998,p.131−142;“Tetrahedron Letters”,(英),1984,25,p.4737−4740等に記載されるようにホスフィン酸誘導体とβ位に脱離基を有するカルボン酸誘導体の置換反応を用いる方法、例えば、“Journal of Medicinal Chemistry”(米),1988,31,p.1772−1778;“Tetrahedron Letters”,(英),1988,29,p.5201−5204等に記載されるようにホスフィン酸誘導体とトリメチル−2−ホスホノアクリレートを用いて塩基共存下共役付加反応させ、生じた付加体に対して処理することなくアルデヒド化合物を加え、Horner−Wadsworth−Emmons反応を行い、生じた炭素、炭素二重結合を不斉還元して目的物を得る方法である。
本発明者らは、国際公開WO01/19836に示されるカルボキシペプチターゼB阻害活性を有するホスフィン酸誘導体(16)を、下記工程図1に示す方法で製造した。すなわち5−アミノ−1−ペンタノール(10)を出発原料とし、ベンジルオキシカルボニル化、続く臭素化により(11)へと導き、塩基共存下マロン酸ジエチルとの反応で(12)を得た後、加水分解、マンニッヒ反応の二工程で(13)へと導き、(13)と(14)を共役付加反応させ、脱保護を経て(16)を得る方法である。

また、工程図1の化合物(16)を光学活性体(16’)として得るための改善法として下記工程図2に示す合成法を見出した。すなわち5−アミノ−1−ペンタノール(10)を出発原料とし、ベンジルオキシカルボニル化、臭素化を含む三工程で(11)へと導き、塩基共存下マロン酸ジエチルとの反応で(12)を得た後、加水分解、マンニッヒ反応、を含む三工程で(17)へと導き、オキサゾリジノン環を導入後、(20)と(19)を共役付加反応させ、ジアステレオマーを分離した後脱保護して(S)−7−アミノ−2−((((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイル)メチル)ヘプタン酸(16’)を得る方法である。

現在までに知られている血漿カルボキシペプチターゼBの阻害剤のうちホスフィン酸誘導体はその阻害活性値より血栓溶解増強作用に基づく新しい抗血栓剤として、各種血栓症の治療および予防剤としての使用が期待される。
【発明の開示】
工程図1に示した製造法には(13)から(15)を得るための共役付加反応が含まれる。この工程では立体を制御することができず、また生じたジアステレオマーを分離することは困難である。また工程図2に示した方法に関しては、ジアステレオマーの分離は比較的容易になったが(19)の合成に必要な(4S)−イソプロピル−2−オキサゾリジノン(18)は非常に高価であり、また(19)から(21)を得る工程において反応メカニズムから推測するとジアステレオ選択性を改善させるためには困難を要することが予想される。
よって、本発明は、高価な試薬を用いることなく、不斉点を発現することができ、高いジアステレオ選択性、又、より短工程でホスフィン誘導体へと導く製造法を提供することを目的としている。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、カルボキシペプチダーゼB阻害剤であるホスフィン酸誘導体を効率よく製造する製造法及び重要中間体を見出すことに成功した。
すなわち、本発明は、
(I)一般式(1)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物:

[式中、
及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表す。];
(II)一般式(2)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物:

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表し、
nは0〜7の整数を表す。];
(III)一般式(3)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物:

[式中、R及びRはそれぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表し、
二つのRは同じでも異なっていてもよい。];
(IV)一般式(4)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物:

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表す。];
(V)((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸、
7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(メトキシ−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィノイルメチル)ヘプト−2−エン酸メチル、
7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール、
(R)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヘプタノール、
(R)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシメチル)−1−ヘプタノール、又は
N−((R)−1−((S)−4−(5−ベンジルオキシカルボニルアミノペンチル)−2−オキソ−2λ−[1,2]オキサホスホラン−2−イル)−2−メチルプロピル)−3−フェニルプロピオナミド
である(I)〜(IV)いずれか1項記載の化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物、
(VI)一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体の製造法であって、

[式中、mは1〜8の整数を表す。]
一般式(3a)で表される化合物を、リパーゼ処理、又は触媒としてキラル化合物を用いる処理によりアシル化して一般式(3b)で表される化合物を選択的に合成し、必要であれば保護及び/又は脱保護する工程;
上記工程で得られた一般式(3b)で表される化合物を一般式(6)で表される化合物:

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表し、
は、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。]へと誘導する工程;
及び
上記工程で得られた一般式(6)で表される化合物を一般式(7)で表される化合物:

[式中、Rは、水素原子又は容易に除去できる保護基を表す。]
と反応させ、得られた一般式(1)で表される化合物:

を酸化し、必要に応じて保護された官能基を脱保護する工程
を含む方法;
(VII)一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体の製造法であって、

[式中、mは1〜8の整数を表す。]
一般式(3a)で表される化合物を、リパーゼ処理、又は触媒としてキラル化合物を用いる処理によりアシル化して一般式(3b)で表される化合物を選択的に合成し、必要であれば保護及び/又は脱保護する工程;
上記工程で得られた一般式(3b)で表される化合物を一般式(6)で表される化合物:

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表し、
は、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。]へと誘導する工程;
及び
上記工程で得られた一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物:

[式中、Rは、水素原子又は容易に除去できる保護基を表す。]
と反応させ、得られた一般式(4)で表される環状ホスフィン酸エステルを加水分解し、得られた一般式(1’)で表される化合物を、

酸化し、必要に応じて保護された官能基を脱保護する工程を含む製造方法;
(VIII)一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体の製造法であって、

[式中、mは1〜8の整数を表す。]
一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物:

[式中、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表す。]、及び
一般式(9)で表される化合物:

[式中、
及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
nは0〜7の整数を表し、
ただし、Rが水素原子の場合、(9)は(9’)と平衡状態になり得る。]、
を反応させることにより一般式(2)で表される化合物:

を製造し、炭素−炭素二重結合を不斉還元して、必要に応じて脱保護する工程を含む製造方法;並びに
(IX)一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体の製造法であって、

[式中、mは1〜8の整数を表す。]
一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物:

[式中、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表す。]、及び
一般式(9’)で表される化合物:

[式中、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
nは1〜7の整数を表す。]、
を反応させることにより一般式(2)で表される化合物:

を製造し、炭素−炭素二重結合を不斉還元し、必要に応じて脱保護する工程を含む製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、強力なカルボキシペプチダーゼB阻害剤であるホスフィン酸誘導体である一般式(5)で表される化合物の製造用中間体、及びその製造方法に関するものである。
及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子、又は、容易に除去できる保護基を表す。容易に除去できる保護基としては、例えば、メトキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メトキシベンジルオキシカルボニル基、ニトロベンジルオキシカルボニル基、アリルベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ベンゾイル基、トリチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、アリル基、又はホルミル基などが挙げられる。R及びRが互いに末端で結合して環を形成したフタルイミド基を表してもよい。好ましくは、t−ブチルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基などが挙げられ、さらに好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基などである。
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表す。容易に除去できる保護基としては、例えば、メチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、t−ブチルオキシメチル基、メチルチオメチル基、トリメチルシリルエチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、t−ブチル基、アリル基、メトキシフェニル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、ジメトキシベンジル基、ニトロベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、t−ブチルベンゾイル基、メトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ニトロベンジルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基を表す。好ましくは、アセチル基、t−ブチルベンゾイル基、プロピオニル基、又はベンゾイル基などが挙げられ、さらに好ましくは、アセチル基又はt−ブチルベンゾイル基などである。
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表す。容易に除去できる保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、t−ブチルオキシメチル基、メチルチオメチル基、トリメチルシリルエチル基、エトキシエチル基、t−ブチル基、アリル基、メトキシフェニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、ニトロベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、又はt−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、t−ブチル基、又はベンジル基などが挙げられ、さらに好ましくは、メチル基又はエチル基などである。
mは1〜8の整数を表す。好ましくは、4〜8である。さらに好ましくは5である。
は水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表す。好ましくは、水酸基、−ORなどである。
が表す容易に除去できる保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、テトラヒドロピラニル基、トリメチルシリルエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、トリクロロエチル基、トリメチルシリルエチル基、t−ブチル基、アリル基、ベンジル基、トリフェニルメチル基、ジフェニルメチル基、p−メトキシベンジル基、(+)−メンチル基、(−)−メンチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、又はt−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基又はエチル基などが挙げられ、さらに好ましくは、メチル基などである。
nは0〜7の整数を表し、好ましくは3〜7であり、さらに好ましくは4である。
はハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。好ましくは、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、又はp−トルエンスルホニルオキシ基などが挙げられ、さらに好ましくはヨウ素原子、臭素原子である。
以下、本発明の製造方法について説明する。

<一般式(3a)で表される化合物の製造>
工程図1に示されるマロン酸ジエチルエステル体(12)からエステルを還元することにより、1,3ジオール体(3a)を製造することができる。
還元反応は、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化アルミニウム、トリエトキシシランで代表される金属水素化合物や、Birch還元やBouvault−Blanc還元で代表される溶解金属、ボランテトラヒドロフラン錯体、ボランジメチルスルフィド錯体、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンに代表されるボラン化合物等を用いることができる。
還元剤の特徴に応じ、反応に不活性な溶媒を単独又は混合して用い、必要に応じて添加剤を加えることができる。反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間であり、反応温度は−78℃〜150℃、好ましくは−78℃〜100℃である。この反応により一般式(3a)で表される1,3ジオール体を製造することができる
<一般式(3b)で表される化合物の製造>
一般式(3b)で表される化合物は、Tetrahedron Asymmetry,3009,(1995),Tetrahedron Asymmetry,4825,(2000),Tetrahedron,3769,(1996),Tetrahedron Asymmetry,4057,(1999)等に記載の方法に準じて製造することができる。
具体的には、アシル供与体としては、カルボン酸ビニルエステル又はカルボン酸フェニルエステル等、好ましくは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、酪酸フェニル、又は安息香酸フェニル、より好ましくは酢酸ビニルを用いることができる。
上記反応には、不活性な溶媒(テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン、ジエチルエーテル、アセトン、クロロホルム、ベンゼン、イソプロピルエーテル、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)を単独又は混合して用いるか、アシル供与体自体を溶媒として用い、必要に応じてモレキュラシーブ4Aなどを添加することができる。
リパーゼとしては、例えば、Pseudomonas fluorecens lipase、Candida cylindracea lipase、Pseudomonas sp.lipase、lipoprotein lipase、Porcine pancreatic lipase等の酵素を用いることができる。反応温度は−20℃〜60℃、好ましくは0℃〜40℃で、反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間である。この反応により、一般式(3a)で表される化合物を不斉アシル化して一般式(3b)で表される化合物を得ることができる。
また、一般式(3a)で表される化合物を通常の方法でジアシル化することにより得られる一般式(3)で表される化合物を加溶媒分解することによっても一般式(3b)で表される化合物を得ることができる。該加溶媒分解は、アルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等)とバッファー(リン酸バッファー、酢酸バッファー等)を単独又は混合して用い、上記酵素等を用いて行うことができる。
一般式(3b)で表される化合物はChemistry Letters,26,(2002)等に記載の方法でも得ることができる。
具体的には、一般式(3a)で表される化合物を原料とし、(S)−1−メチル−2−((ジヒドロイソインドール−2−イル)メチル)ピロリジン、(S)−1−メチル−2−(ベンジルメチルアミノメチル)ピロリジン等の光学活性ジアミン化合物の存在下、反応に不活性な溶媒(テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン、ジエチルエーテル、アセトン、クロロホルム、ベンゼン、イソプロピルエーテル、アセトニトリル、n−プロピオニトリル、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシド等)中、好ましくは塩化メチレン又はn−プロピオニトリル中で、アシル化剤としてカルボン酸塩化物、好ましくはクロロ安息香酸、クロロ−4−t−ブチル安息香酸を用いて反応を行うことができる。
反応温度は、−78℃〜150℃、好ましくは−78℃〜20℃であり、反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間である。この反応により、不斉アシル化を行って一般式(3b)で表される化合物を得ることができる。
<製造法Aによるホスフィン酸誘導体(5)の合成>
一般式(6)で表される化合物は、一般式(3b)で表される化合物の一級水酸基を通常の方法でハロゲン化、スルホン酸エステル化、好ましくはヨウ素化することにより得ることができる。
一般式(1’)の化合物は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,131(1998).Synlett,467,(2001).Tetrahedron Letters,4737,(1984)に記載の方法に準じて得ることができる。
一般式(7)は、J.Chem.Soc.Parkin Trans.1,2845(1984)記載の(R)−1−アミノ−2−メチルプロピルホスフィン酸を原料とし、WO01/19836号記載の方法を用い、必要に応じてRで修飾することにより得ることができる。
一般式(7)で表される化合物を必要に応じてシリル基等による活性化を行い、さらに必要に応じてヘキサメチルジシラザンリチウム塩、ヘキサメチルジシラザンナトリウム塩、ヘキサメチルジシラザンカリウム塩、リチウムジイソブチルアミド、水素化ナトリウム、又は水素化カリウム等の塩基を共存させ、一般式(6)で表される化合物を加えて反応を行うことができる。反応は、不活性な溶媒(テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)を単独又は混合して用いて行うことができ、反応温度は−78℃〜150℃、好ましくは−78℃〜20℃で、反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間である。この反応により、一般式(4)で表される化合物、又は一般式(1)で表される化合物を得ることができる。
一般式(4)で表される化合物が得られた場合には、通常の加水分解反応を行うことにより、また一般式(1)で表される化合物が得られた場合には、必要に応じてR及びRを脱保護することにより一般式(1’)を得ることができる。一般式(1’)の一級水酸基を通常の方法で酸化し、必要に応じて脱保護を経ることによって、一般式(5)で表されるCPB阻害剤であるホスフィン酸誘導体を得ることができる。


<一般式(2)で表される化合物の合成>
一般式(8)で表される化合物は、Synthesis,333(1992)、Tetrahedron Letters,6397(1997)、J.Org.Chem,1537(1986)等の文献を参考に合成することができる。また、Rがメトキシ基の化合物は市販品として入手可能である。
一般式(9)で表される化合物は、アミノアルコールのアミノ基をR、Rで保護し、通常の方法で酸化することにより得ることができる。一般式(9)で表される化合物はRが水素原子のとき一般式(9’)で表される化合物と一般的な溶媒中で平衡状態をとり得る。
一般式(2)で表される化合物は、Tetrahedron Letters,5201,(1988)に記載の方法に準じて合成することができる。
具体的には、一般式(7)で表される化合物を必要に応じシリル基等により活性化した後、必要に応じヘキサメチルジシラザンリチウム塩、ヘキサメチルジシラザンナトリウム塩、ヘキサメチルジシラザンカリウム塩、リチウムジイソブチルアミド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、又はナトリウムエトキシド等の塩基を共存させ、一般式(8)で表される化合物を加えることにより反応を行うことができる。
溶媒としては、反応に不活性な溶媒(テトラヒドロフラン、酢酸エチル、塩化メチレン、ジエチルエーテル、クロロホルム、ベンゼン、メタノール、エタノール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソプロピルエーテル、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)を単独又は混合して用いることができ、反応温度は−78℃〜150℃、好ましくは−78℃〜50℃である。反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間である。
上記反応終了後、後処理することなく一般式(9)又は(9’)で表される化合物を加えて反応を行うことにより、一般式(2)で表される化合物を得ることができる。反応温度は−78℃〜150℃、好ましくは−78℃〜50℃であり、反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間である。
<製造法BによるCPB阻害剤、ホスフィン酸誘導体(5)の合成>
一般式(2)で表される化合物を必要に応じて脱保護した後、α、β−二重結合部分の不斉還元工程を経て、必要に応じてさらに脱保護工程を経ることにより一般式(5)で表されるCPB阻害剤であるホスフィン酸誘導体を得ることができる。
不斉還元反応は、Synthesis,85,(1981),Tetrahedron,1255,(1984),Tetrahedron,3851,(1986),Tetrahedron Letters,5783,(1992).,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,1180,(1988),Synthesis,743,(1989)に記載の方法に準じて行うことができる。
具体的には、一般式(2)で表される化合物、又は必要に応じて一般式(2)で表される化合物を脱保護した化合物を以下の触媒系にて処理することにより反応を行うことができる。触媒系としては、例えば、1,5−シクロオクタジエンロジウム(I)クロリドダイマー、ロジウム(II)アセテートダイマー、ロジウム(III)クロリド等のロジウム触媒と、(+)−1−(t−ブトキシカルボニル)−4−ジフェニルホスフィノ−2−((ジフェニルホスフィノ)メチル)ピロリジン(BPPM)、(+)−2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(DIOP)、(+)−4,5−ビス(ビス(4’−メトキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン(MOD−DIOP)、(+)−O−アニシル−シクロヘキシルメチルホスフィン(ACMP)、(+)−1,2−ビス(2−メトキシフェニルフェニルホスフィノ)エタン(DIPAMP)、(+)−ジフェニルネオメンチルホスフィン(NMDPP)、(+)−1,2,2−トリメチル−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノメチル)シクロペンタン(CAMPHOS)、これらの光学異性体等の光学活性ホスフィンリガンドからなるロジウムホスフィン錯体、又は[RuH((S)−binap)]PF若しくはそのR体、RuH((S)−binap)若しくはそのR体等のルテニウムホスフィン錯体を挙げることができる。
水素源としては、水素ガス、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、又はギ酸とトリエチルアミンやフェネチルアミン等のアミン類の塩を用いることができる。反応には、不活性な溶媒(テトラヒドロフラン、イソブチルアルコール、n−ブタノール、酢酸エチル、塩化メチレン、ジエチルエーテル、アセトン、メタノール、クロロホルム、エタノール、t−ブタノール、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ジオキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)を単独又は混合して用いる。反応温度は−78℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応時間は0.5時間〜72時間、好ましくは2時間〜24時間である。水素ガスを用いた反応においては1atm〜10atm好ましくは1atm〜5atmの内圧下で行うことができる。得られた一般式(23)で表される化合物を、必要に応じて脱保護の工程を経て、最終物質(5)へと導くことができる。
本発明における一般式(1)〜(4)で表される化合物は、置換基の種類に応じて1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があり、1個又は2個以上の不斉炭素に基づく光学活性体、2個以上の不斉炭素に基づくジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。また、一般式(2)で表される化合物は、炭素、炭素二重結合に基づくE又はZ体の幾何学異性体が存在する場合がある。これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。
また、本発明における一般式(1)〜(4)で表される化合物は、塩として存在することもある。塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、又は亜鉛塩などを挙げることができ、さらに、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、などの無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、又はメタンスルホン酸塩などの有機酸塩などを挙げることができる。
さらに、本発明における一般式(1)〜(4)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合がある。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、又はテトラヒドロフラン等のエーテル類等を挙げることができる。本発明における一般式(1)〜(4)で表される化合物の塩、水和物、又は溶媒和物は、本発明の範囲に包含される。
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、これらは単なる実施例であって本発明を限定するものではない。さらに本発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の変形及び修正が可能であることは言うまでもない。
実施例1:製造法A
(a)WO01/19836号記載の方法で合成した2−(5−ベンジルオキシカルボニルアミノペンンチル)マロン酸ジエチル(2.88g)をテトラヒドロフラン(28.8ml)に溶解し、室温下水素化ホウ素リチウム(945mg)を撹拌しながらゆっくり加え、そのまま2時間撹拌した。反応系を氷冷し、ゆっくり水を加え、続いて1N塩酸をゆっくり加えそのまま30分撹拌した。酢酸エチルを加え有機物を抽出し有機層を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(140g、ヘキサン:アセトン=1:1)により精製し、7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール(2.02g、94%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ 1.11−1.20(2H、m)、1.20−1.31(4H、m)、1.36−1.47(2H、m)、1.63(1H、m)、2.97−3.20(2H、brs)、3.09(2H、q)、3.54(2H、dd)、3.68(2H、dd)、4.90(1H、brs)、5.01(2H、s)、7.20−7.30(5H、m)
FABMS(m/Z):296(M+1)
(b)上記(a)で得られた7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール(1.74g)を酢酸ビニル(69.6ml)に溶解し、25℃に保ちながらlipase PS(Pseudomonas fluorecens lipase)(2.12g)を加え、そのまま2.5時間撹拌した。反応混合物を吸引濾過し、ろ液を濃縮し粗(R)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヘプタノール(64%ee、キラルHPLCのエリア比より算出)を得た。残渣を次の反応にそのまま用いた。
H−NMR(CDCl):δ 1.14−1.34(6H、m)、1.37−1.49(2H、m)、1.65−1.75(1H、m)、1.99(3H、s)、2.15(1H、brs)、3.11(2H、q)、3.39−3.55(2H、brm)、3.99(1H、dd)、4.11(1H、dd)、4.77(1H、brs)、5.02(2H、s)、7.20−7.31(5H、m)
FABMS(m/Z):338(M+1)
(c)上記(a)で得られた7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール(620mg)を酢酸ビニル(24.8ml)に溶解し、25℃に保ちながらlipase(TypeII from Porcine Pancreas)(744mg)を加え、そのまま2時間撹拌した。反応混合物を吸引濾過し、ろ液を濃縮し(R)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヘプタノール(80%ee、収率77%、キラルHPLCのエリア比より算出)を得た。H−NMRスペクトルが上記(b)と同じであることを確認した。
(d)上記(a)で得られた7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール(88.6mg)を塩化メチレン:n−プロピオニトリル=3:7の混合溶媒(2.37ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下反応系を−78℃に冷却した。Tetrahedron,7277,(1996).記載の方法を参考にN−t−ブトキシカルボニル−(S)−プロリンとイソインドリンから合成される((S)−1−メチル−2−((ジヒドロイソインドール−2−イル)メチル)ピロリジン(0.65mg)、ジイソプロピルエチルアミン(78.4μl)4−t−ブチルベンゾイルクロリド(88.4μl)を順次加え、そのまま7時間撹拌した。反応系にリン酸バッファー(pH7.5)を加え酢酸エチルで有機物を抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)にて精製し、(R)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシメチル)−1−ヘプタノール(5.2mg、4%、22%ee(キラルHPLCのエリア比より算出))を得た。
H−NMR(CDCl):δ 1.28−1.46(6H、m)、1.34(9H、s)、1.46−1.57(2H、m)、1.91(1H、m)、3.20(2H、q)、3.57(1H、dd)、3.65(1H、dd)、4.32(1H、dd)、4.45(1H、dd)、4.75(1H、brs)、5.11(2H、s)、7.28−7.38(5H、m)、7.46(2H、d)、7.96(2H、d)
FABMS(m/Z):456(M+1)
(e)上記(a)の工程の精製前の7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール(2.12g)を塩化メチレン:ピリジン=3:1の混合溶(21.2ml)に溶解し、無水酢酸(10.2ml)、続いてジメチルアミノピリジン(175.2mg)を加え、室温下18時間撹拌した。反応系に20%塩化アンモニウム水溶液、クロロホルムを加え有機物を抽出し有機層を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(64g、ヘキサン:アセトン=2:1)により精製し、7−アセトキシ−6−アセトキシメチル−1−ベンジルオキシカルボニルアミノヘプタン(2.35g、2工程収率62%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ 1.25−1.37(6H、m)、1.42−1.53(2H、m)、1.91−1.98(1H、m)、2.03(6H、s)、3.16(2H、q)、3.99(2H、dd)、4.05(2H、dd)、4.73(1H、brs)、5.07(2H、s)、7.26−7.36(5H、m)
TSPMS(m/Z):380(M+1)
(f)上記(e)で得られた7−アセトキシ−6−アセトキシメチル−1−ベンジルオキシカルボニルアミノヘプタン(101mg)をテトラヒドロフラン:0.05Nリン酸バッファー(pH7.5)=1:1の混合溶媒(1.01ml)に溶解し、室温下lipase PS(Pseudomonas fluorecens lipase)(101.7mg)を加え、そのまま22時間撹拌した。反応混合物を吸引濾過し、ろ液に酢酸エチルを加え有機物を抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン=1:1)にて精製し、(R)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヘプタノール(11.4mg、収率13%、32%ee(キラルHPLCのエリア比より算出))を得た。H−NMR、及びマススペクトルは上記(b)と同様のスペクトルを得た。
(g)上記(b)で得られた粗(R)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヘプタノール(940mg)をベンゼン(9.4ml)に溶解し、イミダゾール(228mg)、トリフェニルホスフィン(877mg)、ヨウ素(849mg)を順次加え、室温下4時間撹拌した。反応系に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、酢酸エチルを加え、有機物を抽出し有機層を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(47g、ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により精製し(S)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヨードヘプタン(949mg、2工程収率80%)を得た。
H−NMR(CDCl):δ 1.23−1.37(6H、m)、1.42−1.59(3H、m)、2.04(3H、s)、3.17(2H、q)、3.22(1H、dd)、3.29(1H、dd)、3.87(1H、dd)、4.07(1H、dd)、4.74(1H、brs)、5.07(2H、s)、7.26−7.36(5H、m)
EIMS(m/Z):447(M
(h)J.Chem.Soc.Parkin Trans.1,2845(1984).記載の(R)−1−アミノ−2−メチルプロピルホスフィン酸を原料とし、WO01/19836号記載の方法で合成した(R)−(2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ホスフィン酸(1.01g)を塩化メチレン10mlに溶解しエタノール(2.19ml)加え、反応系内の脱気、アルゴン置換を3回繰り返した。ジメチルアミノピリジン(91.6mg)、ウォーターソルブルカルボジイミド塩酸塩(863mg)を順次加え、再び反応系内の脱気、アルゴン置換を3回繰り返し室温下2.5時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え酢酸エチルで有機物を抽出した。有機層を減圧濃縮し粗((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ホスフィン酸エチル(998mg、90%、1:1のジアステレオマー混合物)を得た。この工程ではこれ以上の精製を行わず濃縮残渣をそのまま次の工程に用いた。
H−NMR(CDCl):δ 0.84(3H、t)、0.92(3H、dd)、1.22(3/2H、t)、1.28(3/2H、t)、2.10(1H、m)、2.53(2H、t)、2.91(2H、t)、3.87−4.19(3H、m)、5.90(1/2H、brs)、6.14(1/2H、d)、6.33(1/2H、brs)、7.09−7.24(5H、m)、7.51(1/2H、d)
FABMS(m/Z):298(M+1)
(i)上記(h)で合成した粗((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ホスフィン酸エチル(282mg)をテトラヒドロフラン(847μl)に溶解し、アルゴン雰囲気下、反応系を−78℃に冷却した。0.5Nヘキサメチルジシラザンカリウム塩トルエン溶液(1.90ml)、続いて上記(g)で得られた(S)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヨードヘプタンのテトラヒドロフラン(564μl)溶液を加え−78℃で30分、0℃で3.5時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで有機物を抽出した。有機層を減圧濃縮することにより粗N−((R)−1−((S)−4−(5−ベンジルオキシカルボニルアミノペンチル)−2−オキソ−2λ−[1,2]オキサホスホラン−2−イル)−2−メチルプロピル)−3−フェニルプロピオナミドを得た。この化合物はこれ以上の精製を行わず分子量を確認した後次の反応に用いた。
TSPMS(m/Z):551(M+Na)
(j)上記(i)で得られた粗N−((R)−1−((S)−4−(5−ベンジルオキシカルボニルアミノペンチル)−2−オキソ−2λ−[1,2]オキサホスホラン−2−イル)−2−メチルプロピル)−3−フェニルプロピオナミドをメタノール:水=2:1の混合溶媒(7ml)に溶解し炭酸カリウム(394mg)を加え室温下6.5時間撹拌した。反応液からメタノールを減圧留去し残液をヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒で洗浄し、pHが2になるまで水層に5N塩酸を加え酢酸エチルで有機物を抽出した。有機層を減圧濃縮し粗((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸(321mg、62%、5:1のジアステレオマー混合物)を得た。この化合物はこれ以上の精製を行わず次の反応に用いた。
H−NMR(CDCl):δ 0.77−0.87(6H、dd)、1.10−1.30(6H、m)、1.32−1.43(2H、m)、1.45−1.72(2H、m)、1.86−2.01(1H、brm)、2.10−2.26(1H、m)、2.54(2H、t)、2.89(2H、t)、3.07(2H、t)、3.22(1/6H、dd)、3.29(5/6H、dd)、3.60(1H、d)、4.15(1H、dt)、4.95(1H、brs)、5.00(2H、s)、6.32−6.65(1H、brm)、7.06−7.28(10H、m)
FABMS(m/Z):547(M+1)
(k)上記(j)で得られた((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸(22.8mg)を塩化メチレン(456μl)に溶解し、Dess−Martinペルヨージナン(17.7mg)を加え、室温下2.5時間撹拌した。反応系に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで有機物を抽出し有機層を減圧濃縮し、残渣を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=3:1:0.04)にて精製し((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ホルミルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸を得た。この化合物は分子量のみ確認後次の反応に用いた。
FABMS(m/Z):545(M+1)
(l)上記(j)で得られた((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸(16.6mg)をアセトン(332μl)に溶解し、1N Jones試薬を加え室温下6時間撹拌した。反応系に水を加え酢酸エチルで有機物を抽出し有機層を減圧濃縮し、残渣を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:酢酸=3:1:0.04)にて精製し(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸(2.3mg、14%)を得た。
H−NMR(CDOD):δ 0.78−0.88(6H、m)、1.17−1.32(4H、m)、1.35−1.66(6H、m)、1.86−2.00(1H、m)、1.27−2.24(1H、m)、2.51−2.60(2H、m)、2.81−2.90(2H、m)、2.98−3.06(2H、m)、3.95−4.07(1H、m)、4.98(2H、s)、7.04−7.29(10H、m)
FABMS(m/Z):561(M+1)
(m)上記(j)で得られた((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸(30.5mg)を四塩化炭素:アセトニトリル:水=2:2:3の混合溶媒(610μl)に溶解し、反応系を氷冷した。過ヨウ素酸ナトリウム(47.7mg)、続いて塩化ルテニウム(III)(1.2mg)を加え2.5時間撹拌した。反応系にイソプロパノールを加え15分撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで洗浄後、5N塩酸で水層をpH2に調節した。酢酸エチルで有機物を抽出し有機層を減圧濃縮し、((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ホルミルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸と(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸の混合物を得た。この化合物はこれ以上の精製は行わず、次の反応に用いた。
(n)上記(m)で得られた((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ホルミルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸と(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸の混合物を2−メチル−2−プロパノール:水=4:1の混合溶媒(909μl)に溶解し2−メチル−2−ブテン、リン酸二水素ナトリウム二水和物(8.7mg)、亜塩素酸ナトリウム(17.2mg)を順次加え、室温下2.5時間撹拌した。反応系に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、さらに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで混合液を洗浄した。水層を5N塩酸でpH2に調節し酢酸エチルで有機物を抽出し有機層を減圧濃縮する事により粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸(31.3mg)を得た。この化合物はこれ以上精製せず分子量が上記(l)と同じであることを確認後次の反応に用いた。
(o)上記(n)における((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ホルミルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸と(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸の混合物の代わりに、上記(k)で得られた((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ホルミルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸を用い、上記(n)の方法に準じ反応を行うことにより粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸(31.3mg)を得た。この化合物はこれ以上精製せず分子量が上記(l)と同じであることを確認後次の反応に用いた。
(p)上記(n)で得られた粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸(31.3mg)をジオキサン:水=3:1の混合溶媒(626μl)に溶解しアルゴン置換をした後20%水酸化パラジウム/カーボン(6.3mg)を加え、脱気、アルゴン置換を5回繰り返した後、脱気水素置換を5回繰り返し、室温下で1時間撹拌した。再び反応系をアルゴン置換し、セライト濾過した後、濾液を減圧濃縮した。残渣をダイアイオン製HP20(水〜50%メタノール水溶液)で精製し、(S)−7−アミノ−2−((((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイル)メチル)ヘプタン酸(13mg、3工程収率55%、R:S=1:4のジアステレオマー混合物)を得た。
H−NMR(DO):δ 0.53−0.66(6H、m)、1.05−1.60(10H、m)、1.90−2.04(1H、m)、2.35−2.46(1H、m)、2.48−2.60(2H、m)、2.71−2.88(4H、m)、3.59(1H、dd)、7.05−7.22(5H、m)
TSPMS(m/Z):427(M+1)
実施例2:製造法B
(a)実施例1の(h)においてエタノールの代わりにメタノールを用い、以下実施例1の(h)の方法に準じ、粗((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ホスフィン酸メチル(1:1のジアステレオマー混合物)を得た。この工程ではこれ以上の精製を行わず濃縮残渣をそのまま次の工程に用いた。
H−NMR(CDCl):δ 0.82−1.00(6H、m)、2.03−2.19(1H、m)、2.55−2.65(2H、m)、2.92−3.00(2H、m)、3.46(6/4H、s)、3.66(3/4H、d)、3.77(3/4H、d)、4.00−4.23(1H、m)、6.13(1/2H、d)、6.40(1/2H、brs)、6.72(1/2H、brs)、7.14−7.28(5H、m)、7.54(1/2H、d)
FABMS(m/Z):284(M+1)
(b)2N二塩化オキザリル塩化メチレン溶液(2.47ml)と塩化メチレン(15ml)を混合し、アルゴン雰囲気下、混合液を−78℃に冷却した。反応系にジメチルスルホキシド(700ml)を10分かけて加え、WO01/19836号記載の中間体5−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ペンタノール(1.06g)の塩化メチレン(5ml)溶液を加え、そのまま3.5時間撹拌した。トリエチルアミン(3.12ml)を加え、反応系を室温まで自然昇温させ、反応系に水を加え、クロロホルムで有機物を抽出した。有機層を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50g、ヘキサン:酢酸エチル=3:2)により精製し1−ベンジルオキシカルボニル−2−ヒドロキシピペリジン(931mg、88%、1:1のラセミ混合物)を得た。
H−NMR(CDCl):δ 1.54−1.72(2H、brm)、1.74−1.86(2H、m)、1.99−2.05(2H、m)、3.57−3.69(2H、m)、4.84(1/2H、m)、4.95(1/2H、m)、5.16(2H、s)、6.77(1/2H、d)6.86(1/2H、d)、7.26−7.39(5H、m)
EIMS(m/Z):235(M
(c)上記(a)で得られた粗((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ホスフィン酸メチル(69.3mg)をメタノール(600μl)に溶解し、アルゴン雰囲気下、反応系を氷冷した。2Nナトリウムメトキシドメタノール溶液(135μl)を加え、5分撹拌後2−(トリメチルホスフィノ)アクリレート(60ml)を加え、そのまま1時間撹拌した。上記(b)で得られた1−ベンジルオキシカルボニル−2−ヒドロキシピペリジン(115mg)のメタノール(93μl)溶液を加え室温まで昇温し、4.5時間撹拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで有機物を抽出し、有機層を減圧濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:アセトン=1:1)にて精製する事により7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(メトキシ−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィノイルメチル)ヘプト−2−エン酸メチル(91.7mg、64%)を得た。この化合物は分子量のみ確認後次の反応に用いた。
ESMS(m/Z):587(M+1)
(d)上記(c)で得られた7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(メトキシ−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィノイルメチル)ヘプト−2−エン酸メチル(164mg)をジオキサン(3.3ml)に溶解し、1N塩酸(3.3ml)を加え室温で21時間撹拌した。1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、反応液をpH10に調整し、ヘキサン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒を加え不純物を除去し、5N塩酸で水層をpH3に調整した。酢酸エチルを加え有機物を抽出し硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過し有機層を減圧濃縮し、粗7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプト−2−エン酸メチル(134.6mg、84%)を得た。この化合物はこれ以上の精製を行わず次の反応に用いた。
H−NMR(CDCl):δ 0.76−0.89(6H、m)、1.35−1.54(4H、brm)、2.07−2.24(1H、m)、2.07−2.24(7/5H、m)、2.35−2.45(3/5H、m)、2.45−2.90(2H、m)、2.53−2.61(2H、m)、2.88−2.96(2H、m)、3.06−3.17(2H、brm)、3.64(9/10H、s)、3.65(21/10H、s)、4.20−4.35(1H、m)、5.02(2H、s)、5.92−6.00(3/10H、q)、6.61(1H、brs)、6.80−6.87(7/10H、q)、7.04−7.30(10H、m)
TSPMS(m/Z):573(M+1)
(e)上記(d)で得られた粗7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプト−2−エン酸メチル(29.2mg)をメタノール:ベンゼン=6:1の混合溶媒(584μl)に溶解し、反応系の脱気、アルゴン置換を5回繰り返し、1,5−シクロオクタジエンロジウム(I)クロリドダイマー(4.4mg)、(+)−2,3−O−イソプロピリデン−2,3−ジヒドロキシ−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(11.7mg)を準じ加え、再び反応系の脱気、アルゴン置換を5回繰り返した後、脱気、水素置換を5回繰り返し、1気圧水素雰囲気下、室温で19時間撹拌した。反応系をアルゴン置換し、反応液をそのまま薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:酢酸=5:1:0.1)にて粗精製する事により粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸メチル(18.9mg)を得た。この化合物はこれ以上の精製を行わず分子量のみ確認後次の反応に用いた。
TSPMS(m/Z):575(M+1)
(f)上記(e)で得られた粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸メチル(18.9mg)をテトラヒドロフラン:水=3:1の混合溶媒(378μl)に溶解し、反応系を氷冷した。水酸化リチウム(3.2mg)を加え室温で22時間撹拌した。反応系に水を加え酢酸エチルで不純物を除去し、5N塩酸で水層をpH3に調製後、酢酸エチルで有機物を抽出した。有機層を減圧濃縮し粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸を得た。この化合物はこれ以上精製せずそのまま次の反応に用いた。
(g)上記(f)で得られた粗(S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイルメチル)ヘプタン酸を用い、実施例1の(p)の方法に準じ反応を行い、(S)−7−アミノ−2−((((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロパノイルアミノ)プロピル)ヒドロキシホスフィノイル)メチル)ヘプタン酸(6.6mg、2工程収率35%、R:S=4:6のジアステレオマー混合物)を得た。この化合物の、NMR、マススペクトルは実施例1の(p)と同様の結果を与えた。
【産業上の利用可能性】
本発明により、強力なカルボキシペプチダーゼB阻害剤であるホスフィン酸誘導体を効率よく製造するための製造用中間体が提供される。この製造用中間体を用いることにより、高価な試薬を使用せずに不斉点を発現することができ、また製造法Bにおいては既存の合成法と比較して、より短工程で目的のホスフィン酸誘導体へと導くことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物。

[式中、
及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表す。]
【請求項2】
一般式(2)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物。

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表し、
nは0〜7の整数を表す。]
【請求項3】
一般式(3)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物。

[式中、R及びRはそれぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表し、
二つのRは同じでも異なっていてもよい。]
【請求項4】
一般式(4)で表される化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物。

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表す。]
【請求項5】
((S)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチルヘプチル)−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィン酸、
7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(メトキシ−((R)−2−メチル−1−(3−フェニルプロピオニルアミノ)プロピル)ホスフィノイルメチル)ヘプト−2−エン酸メチル、
7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−ヒドロキシメチル−1−ヘプタノール、
(R)−2−アセトキシメチル−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−1−ヘプタノール、
(R)−7−ベンジルオキシカルボニルアミノ−2−(4−t−ブチルベンゾイルオキシメチル)−1−ヘプタノール、又は
N−((R)−1−((S)−4−(5−ベンジルオキシカルボニルアミノペンチル)−2−オキソ−2λ−[1,2]オキサホスホラン−2−イル)−2−メチルプロピル)−3−フェニルプロピオナミド
である請求の範囲第1項ないし第4項のいずれか1項記載の化合物若しくはその塩、又はその水和物若しくはその溶媒和物。
【請求項6】
一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体:

[式中、mは1〜8の整数を表す。]の製造法であって、
一般式(3a)で表される化合物を、リパーゼ処理、又は触媒としてキラル化合物を用いる処理によりアシル化して一般式(3b)で表される化合物を選択的に合成し、必要であれば保護及び/又は脱保護する工程;
上記工程で得られた一般式(3b)で表される化合物を一般式(6)で表される化合物:

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表し、
は、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。]へと誘導する工程;
及び
上記工程で得られた一般式(6)で表される化合物を一般式(7)で表される化合物:

[式中、Rは、水素原子又は容易に除去できる保護基を表す。]
と反応させ、得られた一般式(1)で表される化合物:

を酸化し、必要に応じて保護された官能基を脱保護する工程
を含む方法。
【請求項7】
一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体:

[式中、mは1〜8の整数を表す。]の製造法であって、
一般式(3a)で表される化合物を、リパーゼ処理、又は触媒としてキラル化合物を用いる処理によりアシル化して一般式(3b)で表される化合物を選択的に合成し、必要であれば保護及び/又は脱保護する工程;
上記工程で得られた一般式(3b)で表される化合物を一般式(6)で表される化合物:

[式中、R及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
mは1〜8の整数を表し、
は、ハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。]へと誘導する工程;
及び
上記工程で得られた一般式(6)で表される化合物と一般式(7)で表される化合物:

[式中、Rは、水素原子又は容易に除去できる保護基を表す。]
とを反応させ、得られた一般式(4)で表される環状ホスフィン酸エステルを加水分解し、得られた一般式(1’)で表される化合物を酸化し、

必要に応じて保護された官能基を脱保護する工程を含む製造方法。
【請求項8】
一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体:

[式中、mは1〜8の整数を表す。]の製造法であって、
一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物:

[式中、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表す。]、及び
一般式(9)で表される化合物:

[式中、
及びRは、それぞれ独立して同一又は異なっていてもよく、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
nは0〜7の整数を表し、
ただし、Rが水素原子の場合、(9)は(9’)と平衡状態になり得る。]
を反応させることにより一般式(2)で表される化合物:

を製造し、一般式(2)で表される化合物の炭素−炭素二重結合を不斉還元して、さらに必要に応じて脱保護する工程を含む製造方法。
【請求項9】
一般式(5)で表されるホスフィン酸誘導体:

[式中、mは1〜8の整数を表す。]の製造法であって、
一般式(7)で表される化合物、一般式(8)で表される化合物:

[式中、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
は、水酸基、−OR(Rは、容易に除去できる保護基を表す)、4−イソプロピル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基、又は4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル基を表す。]、及び
一般式(9’)で表される化合物:

[式中、
は、水素原子又は容易に除去できる保護基を表し、
nは1〜7の整数を表す。]、
を反応させることにより一般式(2)で表される化合物:

を製造し、一般式(2)で表される化合物の炭素−炭素二重結合を不斉還元し、必要に応じて脱保護する工程を含む製造方法。

【国際公開番号】WO2004/035594
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544914(P2004−544914)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012501
【国際出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】