説明

カルボキシル基含有ウレタン樹脂、該ウレタン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物および接着剤組成物

【課題】接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性等に優れており、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として、好適に使用されるカルボキシル基含有ウレタン樹脂を提供することを目的とする。
【解決手段】イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と、
エポキシ基含有化合物(b−1)と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)とを反応させて得られる水酸基含有樹脂(B)中の水酸基とを、反応させて水酸基含有樹脂(C)を生成し、
得られた水酸基含有樹脂(C)中の水酸基と、酸無水物基含有化合物(D)中の酸無水物基とを、反応させてなるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤として有用なカルボキシル基含有ウレタン樹脂および該ウレタン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の製造方法に関する。さらに詳細には、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として特に有用な、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性等に優れた硬化物を与える、カルボキシル基含有ウレタン樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、これらの性能に対する要求がますます高度なものとなっている。このような要求に対応するため、プリント配線板をはじめとする電子材料の薄型化、多層化、高精細化の検討が盛んに行われており、これらに使用される接着剤・コーティング剤には、従来のガラスエポキシ等に代表される肉厚のリジッド基板では求められなかった、高度な可撓性、屈曲性、接着性、さらには、狭スペース化に伴う高い電気絶縁性、密着性、熱安定性等が求められている。
【0003】
このような電子材料周辺に用いられる接着剤・コーティング剤としては、具体的には次の(1)〜(5)が挙げられる。
【0004】
(1)層間接着剤;回路基板同士を張り合わせるために用いられるもので、直接銅回路に接する。多層基板の層間に使用され、液状やシート状のものがある。
【0005】
(2)カバーレイフィルム用接着剤;カバーレイ(回路の最表面を保護する目的で用いられるポリイミドフィルム層)と下地の回路基板とを張り合わせるために用いられ、あらかじめポリイミドフィルムと接着層とが一体化されているものが多い。
【0006】
(3)銅張フィルム(CCL)用接着剤;ポリイミドフィルムと銅箔とを張り合わせるために用いられる。銅回路形成時にエッチング等の加工が施される。
【0007】
(4)カバーレイ;回路の最表面を保護する目的で用いられ、回路上に塗布または張り合わせ後、硬化させることで形成される。感光性や熱硬化性のものがある。
【0008】
(5)補強板用接着剤;配線板の機械的強度を補完する目的で、配線板の一部を、金属、ガラスエポキシ、ポリイミド等の補強板に固定するために用いられる。
【0009】
これら接着剤・コーティング剤の形態としては、液状やシート状(あらかじめフィルム化されたもの)等があり、用途に応じて適宜形態が選択される。
【0010】
こういった電子材料周辺部材への高い要求に応えるため、様々な検討が行われているが、全ての特性を充分に満足させるものは得られていない。例えば、酸価含有ポリエステル・ポリウレタン、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤組成物が開示されている(特許文献1)。この接着剤組成物は、ウレタン結合由来の良好な接着性を示すものの、架橋点間距離が離れていることから充分な架橋構造を形成しにくいために耐熱性に乏しく、これを補完するためにエポキシ樹脂量を増やした場合には、基材への濡れ性が低下し、接着力が低下するという問題があった。
【0011】
また、ウレタン変性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を含む接着剤組成物が開示されている(特許文献2)。この接着剤組成物は、ウレタン結合由来の良好な接着性を示すものの、耐熱性に乏しく、また、分子量が低いため、プレス等で熱硬化する際にはみ出しが多く発生するという加工性の悪さが問題であった。
【0012】
また、ポリイミドシロキサン、両末端エポキシシロキサンおよび硬化剤を含む樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。シロキサン系樹脂は一般的に優れた耐熱性を有するものの、揮発性の高い低分子シロキサン成分が乾燥や熱硬化工程において揮発することで、加工ラインや機材表面を汚染し、後加工で封止樹脂等の接着不良といった不具合を引き起こすという問題があった。また、シロキサン骨格自体基材への密着性に劣るため、充分な接着力が得られないという問題があった。
【0013】
また、エポキシ樹脂、イオン性不純物が可及的に少ないNBRゴム、および窒素含有フェノールノボラック樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。この接着剤組成物は、プレス等で熱硬化する際にNBRゴム由来のはみ出しが多く、加工性が悪いという欠点があり、また、これを補うためにエポキシ樹脂やフェノール類を多く添加すると接着力が低下するという問題があった。さらに、イオン性不純物が可及的に少ないNBRゴムは、高価であり、工業的に使用することが困難である場合があった。
【0014】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂用硬化促進剤、およびエラストマーを含む樹脂組成物が開示されている(特許文献5)。この場合も同様に、エラストマー由来の加工性悪化とエポキシ・フェノール硬化系由来の接着力の低下とを同時に改善することは難しいという問題があった。
【特許文献1】特開平11−116930号公報
【特許文献2】特開2007−51212号公報
【特許文献3】特開2004−91648号公報
【特許文献4】特開2003−165898号公報
【特許文献5】特開2007−161811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性等に優れており、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として、好適に使用されるカルボキシル基含有ウレタン樹脂及び該ウレタン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物、さらにはカルボキシル基含有ウレタン樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは前記の課題を解決するため、鋭意検討の結果、特定のカルボキシル基含有ウレタン樹脂が前記問題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、第一の発明は、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と、
エポキシ基含有化合物(b−1)と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)とを反応させて得られる水酸基含有樹脂(B)中の水酸基とを、反応させて水酸基含有樹脂(C)を生成し、
得られた水酸基含有樹脂(C)中の水酸基と、酸無水物基含有化合物(D)中の酸無水物基とを、反応させてなるカルボキシル基含有ウレタン樹脂に関する。
【0018】
また、第二の発明は、酸価が、1〜150 mgKOH/gである第1の発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂に関する。
【0019】
また、第三の発明は、重量平均分子量が、10000〜1000000である第1または第2の発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂に関する。
【0020】
また、第四の発明は、第1〜3いずれかの発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂と、多官能エポキシ化合物(E)と、を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0021】
また、第五の発明は、さらに、熱硬化助剤(F)を含む、第4の発明の熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0022】
また、第六の発明は、第4または第5の発明の熱硬化性樹脂組成物を含む接着剤組成物に関する。
【0023】
また、第七の発明は、エポキシ基含有化合物(b−1)中のエポキシ基と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)中のフェノール性水酸基と、を反応させて水酸基含有樹脂(B)を得る第一の工程、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と水酸基含有樹脂(B)中の水酸基と、を反応させて水酸基含有樹脂(C)を得る第二の工程、
および、水酸基含有樹脂(C)中の水酸基と酸無水物基含有化合物(D)中の酸無水物基と、を反応させてカルボキシル基含有ウレタン樹脂を得る第三の工程、を含むことを特徴とするカルボキシル基含有ウレタン樹脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、接着性、耐熱性、可撓性、屈曲性、密着性、電気絶縁性、耐湿熱性等に優れたカルボキシル基含有ウレタン樹脂を提供できた。本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物は、プリント配線板をはじめとする電子材料周辺に用いられる接着剤およびコーティング剤として好適に使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂は、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)[以下、ウレタンプレポリマー(A)と表記する場合がある。]と、水酸基含有樹脂(B)とを反応させることにより、(A)ユニットと(B)ユニットとが結合したブロック構造を有する水酸基含有樹脂(C)を得ることができ、さらに、水酸基含有樹脂(C)に酸無水物基含有化合物(D)を反応させることにより、水酸基含有樹脂(C)中の水酸基含有樹脂(B)ユニット部にのみ、選択的にカルボキシル基を導入することができる。この選択的官能基導入効果により、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を、多官能エポキシ化合物(E)を用いて熱硬化させた場合、架橋基が存在する水酸基含有樹脂(B)ユニット部周辺において、特に架橋密度が高くなり、硬化後の膜が擬似的な海島の構造をとることが推測できる。
【0026】
この現象を利用することで、硬化後の塗膜の粘弾性的特性を制御することができる。例えば、ウレタンプレポリマー(A)ユニット部と、水酸基含有樹脂(B)ユニット部とで、ガラス転移点(Tg)に差をつけることで、多官能エポキシ化合物(E)を用いて熱硬化させた場合、硬化後の膜のTgを二峰性にすることができる。この場合、ウレタンプレポリマー(A)ユニット部のTgを水酸基含有樹脂(B)ユニット部のTgより低くする方が好ましい。また、それぞれのTgを適宜設定することにより、二峰性のまま全体のTgを調整することができる。
【0027】
こういった粘弾性的特性の制御は、塗膜の物性制御において非常に重要であり、コーティング、粘着、接着などの分野において、単一のTgを有する塗膜では得られない、優れた効果を発揮する。例えば、通常、単一のTgを有する塗膜は、高い接着力を出すためには室温以下にTgを設定する必要があり(ケース1)、逆に高い耐熱性を出すためには、できるだけ高いTgを設定する必要がある(ケース2)。ケース1では、高い耐熱性は得られないし、また、ケース2では、高い接着力は得られない。一方、本発明で実現できるTgの二峰化は、接着剤として設計する場合、例えば低い側のTgを室温付近に設定すると同時に、高い側のTgを100℃付近に設定することができるため、優れた接着性と、優れた耐熱性とを両立させることができる。
【0028】
以下、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂と該ウレタン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物、およびカルボキシル基含有ウレタン樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0029】
まず、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂について詳細に説明する。本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂は、まず、第一の工程として、エポキシ基含有化合物(b−1)と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)とを反応させて水酸基含有樹脂(B)を作製する。次に、第二の工程として、第一の工程で得られた水酸基含有樹脂(B)とイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)とを反応させて水酸基含有樹脂(C)を作製する。さらに、第三の工程として、第二の工程で得られた水酸基含有樹脂(C)と酸無水物基含有化合物(D)とを反応させて本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を得ることができる。
【0030】
第一の工程では、エポキシ基含有化合物(b−1)中のエポキシ基と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)中のフェノール性水酸基とを、エポキシ基/フェノール性水酸基=1/1〜1/2.5のモル比で反応させて水酸基含有樹脂(B)を作製することが好ましい。上記モル比の範囲よりフェノール性水酸基が少ないと、残存する余剰のエポキシ基が後の合成工程で反応してゲル化する場合があり、上記モル比の範囲よりフェノール性水酸基が多いと、余剰の2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)が物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0031】
また、第二の工程では、ウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と水酸基含有樹脂(B)中の水酸基とを、イソシアネート基/水酸基=1/2〜1/20のモル比で、より好ましくは、1/2〜1/13のモル比で反応させて水酸基含有樹脂(C)を作製する。上記モル比の範囲より水酸基が多いと、密着性に寄与するウレタンユニットの量が少なくなることで、所望の接着力が得られない。また、上記モル比の範囲より水酸基が少ないと、得られる水酸基含有樹脂(C)中の水酸基が少なくなり、その結果、最終的に得られる本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂において、導入できるカルボキシル基が少なくなるため、所望の耐熱性が得られない。
【0032】
ここで、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、水酸基含有樹脂(B)とを反応させる割合は、上記モル比とともにウレタンプレポリマー(A)と水酸基含有樹脂(B)との重量比を考慮して反応させるのが好ましい。すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)100重量部に対して水酸基含有樹脂(B)を2〜150重量部、より好ましくは5〜120重量部反応させることが好ましい。2〜50重量部の範囲で反応させる場合は特に、最終的に得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂の柔軟性が向上し、密着性が増すことで、強い接着力が得られる傾向にあり、100〜150重量部の範囲で反応させる場合は特に、水酸基含有樹脂(B)由来の耐熱性がより良好に得られる傾向にある。このように、本発明において、これらの反応割合は、目的に応じて適宜変更することができる。ここで、2重量部より少ない場合は、最終的に得られる本発明のカルボキシル基含有樹脂において、導入できるカルボキシル基が少なくなるため、所望の耐熱性が得られない場合があり、150重量部より多い場合は、密着性に寄与するウレタンユニットの量が少なくなることで、所望の接着力が得られない場合がある。
【0033】
また、第三の工程では、水酸基含有樹脂(C)中の水酸基と酸無水物基含有化合物(D)中の酸無水物基とを、水酸基/酸無水物基=1/0.1〜1/1のモル比で、より好ましくは1/0.2〜1/0.8のモル比で反応させて本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を得ることができる。上記モル比の範囲より酸無水物基が少ないと、得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂中で架橋点として機能するカルボキシル基濃度が少なくなり、所望の耐熱性が得られない。
【0034】
なお、前記のモル比は、実際に官能基同士が反応するモル比であり、各出発材料は、前記モル比での反応を可能にする量を使用する。従って、例えば、前記の「水酸基含有樹脂(C)」と、前記の「酸無水物基含有化合物(D)」との反応において各出発材料を仕込む際、「水酸基含有樹脂(C)」中の水酸基1.0モルに対して「酸無水物基含有化合物(D)」中の酸無水物基が1.0モルを超える量で仕込んで(好ましく1.2モルを上限として仕込んで)反応させることがある。また、本願における反応モル比に関する記載は、前記と同様の意味である。
【0035】
次に、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)について説明する。本発明のウレタンプレポリマー(A)は、ポリマーポリオール(a−1)と、ジイソシアネート化合物(a−2)とを必須成分として反応させることで製造される。さらに、所望成分として分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物(a−3)、水酸基含有化合物(a−4)[ただし、前記「ポリマーポリオール(a−1)」および分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物(a−3)を除く]、分子中にイソシアネート基を1個または3個以上有するイソシアネート化合物(a−5)、およびアミン化合物(a−6)を適宜使用することができる。
【0036】
本発明において、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)を合成する際に、その出発材料を反応させる割合は、ポリマーポリオール(a−1)と、場合により添加する分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物(a−3)、水酸基含有化合物(a−4)、およびアミン化合物(a−6)とに含まれる水酸基とアミノ基の合計を1モルとした場合に、ジイソシアネート化合物(a−2)と、場合により添加する分子中にイソシアネート基を1個又は3個以上有するイソシアネート化合物(a−5)とに含まれるイソシアネート基の合計が、1.01モル〜2.00モルの割合で反応させることが好ましく、1.05モル〜1.90モルの割合で反応させることがより好ましい。イソシアネート基が1.01モル未満の場合、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中の末端イソシアネート基の量が少なくなり、後に反応させる水酸基含有樹脂(B)との結合点を充分確保することができないという問題がある。また、イソシアネート基が2.00モルより多い場合、余剰のイソシアネート基が系内に残存し、その後の反応工程で副生成物が発生したり、反応中にゲル化を招いたりするという問題を生じやすい。
【0037】
また、この時、最終的に得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)の酸価が、5〜200mgKOH/g(より好ましくは10〜180mgKOH/g)となるように、分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物(a−3)を使用するのが好ましい。
【0038】
本発明で用いるポリマーポリオール(a−1)は、水酸基を2個以上含有する化合物であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)測定による重量平均分子量が、好ましくは500〜50000の化合物である。なお、本願において、特に断らない限り、重量平均分子量は、GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。本発明においては、ポリマーポリオール(a−1)としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック共重合体またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのブロック共重合体またはランダム共重合体等のポリエーテルポリオール類;
多価アルコールまたはポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール類;
グリコールまたはビスフェノールと炭酸エステルとの反応、あるいは、グリコールまたはビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られるポリカーボネートポリオール類;
カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール、シリコーン系ポリオール等のポリオールが挙げられる。本発明において、これらのポリマーポリオール(a−1)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0039】
中でも、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのブロック共重合体またはランダム共重合体等のポリエーテルポリオール類は、骨格の柔軟性、耐加水分解性、親水性に優れるため、本発明に用いる場合、塗膜の可撓性、耐薬品性、現像性等に優れ、特に好ましい。
【0040】
本発明で用いるジイソシアネート化合物(a−2)としては、例えば、炭素数4〜50の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0041】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0043】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0044】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0045】
本発明において、耐熱性を向上する場合には芳香族ジイソシアネートや芳香脂肪族ジイソシアネートを用いることが好ましく、柔軟性を向上する場合には脂肪族ジイソシアネートや脂環族ジイソシアネートを用いることが好ましい。本発明において、これらのジイソシアネート化合物(a−2)は、目的や用途に応じて適宜選択して用いることができ、また、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0046】
本発明で用いる分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物(a−3)は、分子中に2個の水酸基と1個以上(好ましくは1〜3個)のカルボキシル基とを有する化合物であり、式量もしくは重量平均分子量が好ましくは90〜1000の化合物であって、例えば、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、およびこれらの誘導体(カプロラクトン付加物、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物など)、3−ヒドロキシサリチル酸、4−ヒドロキシサリチル酸、5−ヒドロキシサリチル酸、2−カルボキシ−1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0047】
中でも、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸は、樹脂中のカルボキシル基濃度を増加させることができるという点において、本発明では好ましい。また、カプロラクトン付加物、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などは、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂中のウレタン結合の量を低減することができるため、塗膜の柔軟性を向上する目的で使用することができる。さらに、ヒドロキシサリチル酸等の芳香族化合物は、塗膜の耐熱性を向上する目的で使用することができる。このように、本発明において、これらのカルボン酸化合物(a−3)は、目的や用途に応じて適宜選択して使用することができ、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0048】
本発明で用いる水酸基含有化合物(a−4)は、水酸基を1個以上有する化合物であるが、前記ポリマーポリオール(a−1)に属する化合物および前記分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物(a−3)に属する化合物を除く化合物であり、その具体例としては、例えば、分子中に1個の水酸基を有するモノアルコール化合物(a−4−1)、分子中に2個の水酸基を有し、カルボキシル基を有さない、式量もしくは重量平均分子量が50以上500未満であるジオール化合物(a−4−2)、分子中に3個以上の水酸基を有し、式量もしくは重量平均分子量が50以上500未満である多価アルコール化合物(a−4−3)を挙げることができる。これらは、分子中に、水酸基と、水酸基以外の官能基を併有していてもよい。また、単独で使用してもよいし、複数を併用して用いてもよい。
【0049】
分子中に1個の水酸基を有するモノアルコール化合物(a−4−1)としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
シクロヘキサノール等の脂環族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フルオレノール、フェノール、メトキノン等の芳香族モノアルコール;
水酸基以外の官能基を併有するモノアルコール化合物として、12−ヒドロキシステアリン酸等の水酸基含有カルボン酸化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート[「2−ヒドロキシエチルアクリレート」と「2−ヒドロキシエチルメタクリレート」とをあわせて、「2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート」と表記する。以下同様。]、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物、グリシドールなどの水酸基含有エポキシ化合物、オキセタンアルコールなどの水酸基含有オキセタン化合物が挙げられる。
【0050】
その他、片末端メトキシ化ポリエチレングリコール、片末端メトキシ化ポリプロピレングリコール、モノアルコールを開始剤としたカプロラクトン付加重合物、などのオリゴマー型モノアルコールが挙げられる。
【0051】
本発明において、これら分子中に1個の水酸基を有するモノアルコール化合物を用いる場合、得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)の重合末端を封止することができるため、意図的に低分子量のウレタンプレポリマー(A)を合成する際など、分子量の調整が必要な時に好適に用いることができる。また、水酸基以外の官能基を併有する水酸基含有化合物を使用した場合、ウレタンプレポリマー(A)の末端に水酸基以外の官能基を導入することができるため、ウレタンプレポリマー(A)の末端変性が必要な時に好適に用いることができる。本発明において、水酸基の反応性や重合制御を考慮すると、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、12−ヒドロキシステアリン酸、グリシドール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0052】
分子中に2個の水酸基を有し、カルボキシル基を有さない、式量もしくは重量平均分子量が50以上500未満であるジオール化合物(a−4−2)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、水素添加ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂肪族ジオール類;
ヒドロキノン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノール、ビスフェノキシエタノールフルオレン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレンなどの芳香族ジオール類;
N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ヘキシルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンジルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキシルアミンなどの3級アミノ基含有ジオール化合物;
その他、硫黄原子含有ジオール、臭素原子含有ジオールなどが挙げられる。本発明において、これらのジオール化合物(a−4−2)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。本発明において、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン等の3級アミノ基含有ジオール化合物を使用することで、塗膜の凝集力が増大し、可撓性を保持したまま、より耐性に優れる強靭な塗膜を形成することができるため好ましい。
【0053】
分子中に3個以上の水酸基を有し、式量もしくは重量平均分子量が50以上500未満である多価アルコール化合物(a−4−3)としては、例えば、トリメチロールエタン、ポリトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、ガラクチトール、グリセリン等が挙げられる。本発明において、これら多価アルコール化合物(a−4−3)を用いる場合、得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)の一部を分岐させることができるため、硬化物の架橋密度が上昇し、硬化塗膜の耐性を向上することができる。従って本発明において硬化塗膜の耐性を更に向上する目的で、必要に応じて使用すればよい。これら多価アルコール化合物(a−4−3)の中でも、反応制御の面でトリメチロールプロパンやペンタエリスリトールを使用することが好ましい。
【0054】
分子中にイソシアネート基を1個又は3個以上有するイソシアネート化合物(a−5)として、1分子中に1個のイソシアネート基を有する単官能イソシアネートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス[(メタ)アクリロイルオキシメチル]エチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、1,6−ジイソシアナトヘキサン、ジイソシアン酸イソホロン、ジイソシアン酸4,4’−ジフェニルメタン、キシリレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアン酸トリレン、ジイソシアン酸トルエン、2,4−ジイソシアン酸トルエン、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、ジイソシアン酸4−メチル−m−フェニレン、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等のジイソシアン酸エステル化合物と水酸基、カルボキシル基、もしくはアミド基含有ビニルモノマーとを等モルで反応せしめた化合物が挙げられる。
【0055】
また、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、さらには、前述したジイソシアネート化合物(a−2)のトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
【0056】
本発明において、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)の末端に残る未反応基を低減したい場合、末端を封止する目的で、1分子中に1個のイソシアネート基を有する単官能イソシアネートを用いることが好ましく、また、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を硬化して得られる塗膜の耐性を向上するなどの目的で、ウレタンプレポリマー(A)を分岐させる場合には、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートを用いることが好ましい。本発明において、これらのイソシアネート化合物は、目的や用途に応じて適宜選択して用いることができ、また、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0057】
さらに、本発明において、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)を合成する際、所望成分としてアミン化合物(a−6)を反応させることができる。本発明でいうアミン化合物(a−6)とは、分子内に少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基を有する化合物をいう。
【0058】
本発明の、アミン化合物(a−6)としては、例えば、プロピルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、アニリン等のモノアミン化合物、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ポリアミン、およびフェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0059】
また、両末端アミノ基変性ポリエチレンオキサイド、両末端アミノ基変性ポリプロピレンオキサイド、ポリシリコーンジアミン、ポリブタジエンジアミン等のジアミン化合物や、片末端アミノ基変性ポリエチレンオキサイド、片末端アミノ基変性ポリプロピレンオキサイド、ポリシリコーンモノアミン、ポリブタジエンモノアミン等のモノアミン化合物、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリマー型ポリアミン化合物が挙げられる。
【0060】
また、アミン化合物(a−6)として、1級アミノ基を有する化合物中の1級アミノ基を、(メタ)アクリロイル基含有化合物の(メタ)アクリロイル基とマイケル付加反応させることで2級アミノ基に変性して得られるアミン化合物が挙げられる。この様な化合物を用いる場合、(メタ)アクリロイル基含有化合物を工夫することで、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中に極性官能基を導入することができる。例えば、4−ヒドロキシブチルアクリレートのアクリロイル基を、イソホロンジアミンの1級アミノ基にマイケル付加させることで、2級アミノ基を有するジアミンを合成し、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂の原料として用いることで、樹脂中に水酸基を導入することができる。
【0061】
また、本発明のアミン化合物(a−6)として、アミノ基以外の官能基を有するアミン化合物も使用することができる。例えば、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン等の水酸基を有するジアミン類、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、および両末端にプロポキシアミンを有するポリオキシアルキレングリコールジアミン等が挙げられる。
【0062】
本発明において、これらのアミン化合物(a−6)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、目的や用途に応じてモノアミン、ジアミン、3官能以上のポリアミンを適宜選択または組み合わせて用いることができる。例えば、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)を合成する際に、モノアミン化合物を併用することで、残存イソシアネート基の量を低減し、末端を封止できるため、分子量の制御が容易になる。また、ジアミン化合物を用いることで、ポリマー鎖を伸長することが可能となり、高分子量のポリマーを得ることができる。さらに、3官能以上のポリアミン化合物を用いることで、ポリマー鎖を分岐させて最終的には塗膜の凝集力・耐性を向上させることができる。
【0063】
アミン化合物(a−6)を反応させる方法としては、ポリマーポリオール(a−1)等の他の原料と同時に仕込んでからジイソシアネート化合物(a−2)[場合により、さらにイソシアネート化合物(a−5)]と反応させる方法や、予めイソシアネート末端のウレタン鎖を合成しておき、そこにアミン化合物(a−6)を滴下または添加して鎖延長することで、ウレア結合を含むイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)を得る方法などが挙げられる。本発明において、このようにアミン化合物(a−6)を反応させた場合、得られるイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)の凝集力が向上し、より耐熱性、耐久性に優れる塗膜を形成できるため、必要に応じてアミン化合物(a−6)を使用すればよい。
【0064】
本発明において、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにポリマーポリオール(a−1)および溶剤[場合により、さらにカルボン酸化合物(a−3)、水酸基含有化合物(a−4)]を仕込み、窒素気流下、20〜120℃で加熱・攪拌することで均一に溶解した後、ジイソシアネート化合物(a−2)[場合により、さらにイソシアネート化合物(a−5)]を投入し、攪拌しながら50〜150℃で加熱することでイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)を得ることができる。この際、必要に応じて有機錫化合物や、3級アミノ基含有化合物等の、ウレタン化触媒を使用してもよい。
【0065】
また、ジイソシアネート化合物(a−2)を投入する前に、予めフラスコに仕込んだポリマーポリオール(a−1)、および溶剤を100℃以上で加熱・攪拌し、溶剤の一部を脱溶剤してもよい。この操作は、通常、系内の水分を除去(脱水処理)するために行い、この操作によって、ジイソシアネート化合物(a−2)を反応させる際に、水によるイソシアネート基の失活が抑制され、最終的に、より理論値に近い物性値を有するイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)が得られる。
【0066】
次に、本発明における水酸基含有樹脂(B)について説明する。水酸基含有樹脂(B)は、エポキシ基含有化合物(b−1)と、2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)とを必須成分として反応させることで製造される。
【0067】
本発明で用いるエポキシ基含有化合物(b−1)は、エポキシ基を分子内に2個含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロロヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジフェニルスルホンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報に開示されている柔軟性に優れたエポキシ化合物や、下記式(1)〜(3)で表される構造のエポキシ化合物等が挙げられる。
【0068】
式(1)
【0069】
【化1】

【0070】
式(2)
【0071】
【化2】

【0072】
式(3)
【0073】
【化3】

【0074】
本発明で用いる2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)は、フェノール性水酸基を分子内に2個含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)が代表例であり、その他にも、ビス(4−ヒドロキシフェノル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−デカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルイルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−エチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−n−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−n−ブチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−ペンチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−ヘキシルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−フルオロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−クロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(2−フルオロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(2−クロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラクロロフェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン等の中心炭素に水素原子が結合しているビスフェノール類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ノナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(通称ビスフェノールP)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−トルイルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−n−プロピルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−イソプロピルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−n−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ペンチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヘキシルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(4−クロロフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−フルオロフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−クロロフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−テトラフルオロフェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−テトラクロロフェニルエタン等の中心炭素に1つのメチル基が結合しているビスフェノール類;
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールC)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の中心炭素に2つのメチル基が結合しているビスフェノール類;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン等のジフェニルメタン誘導体であるビスフェノール類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(通称ビスフェノールZ)、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のシクロヘキサン誘導体であるビスフェノール類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン誘導体であるビスフェノール類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン誘導体であるビスフェノール類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン等のシクロアルカン誘導体であるビスフェノール類;
4,4’−ビフェノール等の芳香族環が直接結合したビフェノール類;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のスルホン誘導体であるビスフェノール類;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のエーテル結合を有するビスフェノール類;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のスルフィド結合を有するビスフェノール類;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のスルホキシド誘導体であるビスフェノール類;
フェノールフタレイン等のヘテロ原子含有脂肪族環を有するビスフェノール類;
ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、1,1−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロエタン、2,2−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン等の炭素−水素結合のないビスフェノール類等を挙げることができる。
【0075】
さらに、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチルヒドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類;
1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類等を挙げることができる。
【0076】
本発明において、水酸基含有樹脂(B)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにエポキシ基含有化合物(b−1)、2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)、および溶剤を仕込み、攪拌しながら100〜150℃で加熱することで水酸基含有樹脂(B)を得ることができる。この際、必要に応じてトリフェニルホスフィンや、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0077】
次に、本発明における水酸基含有樹脂(C)について説明する。水酸基含有樹脂(C)は、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)と、水酸基含有樹脂(B)とを反応させることで得ることができる。
【0078】
本発明において、水酸基含有樹脂(C)の合成条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコにイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)、水酸基含有樹脂(B)、および溶剤を仕込み、攪拌しながら50〜100℃で加熱することで水酸基含有樹脂(C)を得ることができる。この反応は無触媒下でも進行するが、必要に応じて、有機錫化合物や、3級アミノ基含有化合物等の、ウレタン化触媒を使用してもよい。
【0079】
次に、本発明における酸無水物基含有化合物(D)について説明する。水酸基含有樹脂(C)と酸無水物基含有化合物(D)とを反応させることにより、樹脂中にカルボキシル基を導入することができる。本発明に用いる酸無水物基含有化合物(D)は、酸無水物基を分子内に1個以上含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルペンタヒドロ無水フタル酸、メチルトリヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水ヘット酸、テトラブロモ無水フタル酸などの脂環構造、または芳香環構造を有する、酸無水物基を含む化合物が挙げられる。その他の酸無水物基含有化合物(D)としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、ブチルコハク酸無水物、ヘキシルコハク酸無水物、オクチルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ブチルマレイン酸無水物、ペンチルマレイン酸無水物、ヘキシルマレイン酸無水物、オクチルマレイン酸無水物、デシルマレイン酸無水物、ドデシルマレイン酸無水物、ブチルグルタミン酸無水物、ヘキシルグルタミン酸無水物、ヘプチルグルタミン酸無水物、オクチルグルタミン酸無水物、デシルグルタミン酸無水物、ドデシルグルタミン酸無水物などが挙げられる。本発明において、酸無水物基含有化合物(D)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。
【0080】
本発明において、水酸基含有樹脂(C)と酸無水物基含有化合物(D)との反応条件は特に限定されるものではなく、公知の条件で行うことができる。例えば、フラスコに水酸基含有樹脂(C)と酸無水物基含有化合物(D)とを仕込み、攪拌しながら25〜150℃で加熱することで本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を得ることができる。この反応は無触媒下でも進行するが、必要に応じてや、有機錫化合物や、3級アミノ基含有化合物等の触媒を使用してもよい。
【0081】
本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂の酸価は、1〜150mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5〜100mgKOH/gである。酸価が1mgKOH/g未満の場合、硬化性基として機能するカルボキシル基または酸無水物基が少なく、硬化後の塗膜に充分な耐性を得ることができない。また、酸価が150mgKOH/gを超える場合、塗膜の硬度が高くなり、充分な接着力が得られない場合がある。また、酸価が1〜150mgKOH/gの範囲内において、1mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、得られる塗膜の屈曲性や密着性が向上し、一方、150mgKOH/gに近い範囲で設計する場合、架橋点が多くなることから、最終的に得られる塗膜の耐熱性が向上する。このように、本発明においてカルボキシル基含有ウレタン樹脂の酸価は、1〜150mgKOH/gの範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0082】
本発明のカルボキシル基ウレタン樹脂の重量平均分子量は、10000〜1000000であることが好ましく、より好ましくは、10000〜300000である。重量平均分子量が10000未満の場合、充分な半田耐熱性及び可撓性が得られない場合がある。また、重量平均分子量が1000000を超える場合は、塗工時の粘度やハンドリングが課題となる場合がある。また、重量平均分子量が10000〜1000000の範囲内において、10000に近い値で設計する場合、得られる樹脂の末端(すなわち酸無水物基)が多いことから、架橋性に富む樹脂が得られ、最終的に得られる塗膜の耐熱性を向上することができ、一方、1000000に近い値で設計する場合、最終的に得られる塗膜は、密着性や屈曲性に優れる。このように、本発明において硬化性ウレタン樹脂の重量平均分子量は、10000〜1000000の範囲内で目的に応じて調整することが可能である。
【0083】
次に、本発明における多官能エポキシ化合物(E)について説明する。多官能エポキシ化合物(E)としては、エポキシ基を分子内に2個以上含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。例えば、上記のエポキシ基含有化合物(b−1)や、エポキシ基含有化合物(b−1)以外の化合物として、例えば、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジャパンエポキシレジン株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」の他、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、特開2001−240654号公報に開示されているジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、等が挙げられる。また、エポキシ基以外の他の熱硬化性基を併有する化合物も使用できる。例えば、特開2001−59011号公報や、特開2003−48953号公報に開示されているシラン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0084】
特に、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ化合物は、本発明に使用した場合、ポリイミドや銅に対して接着力が向上する傾向があり、好ましい。また、ジャパンエポキシレジン株式会社製「エピコート1031S」、「エピコート1032H60」、「エピコート604」、「エピコート630」は、耐熱性に優れるため、本発明において好ましく、また、脂肪族系のエポキシ化合物や、特開2004−156024号公報、特開2004−315595号公報、特開2004−323777号公報記載のエポキシ化合物は、硬化塗膜の柔軟性に優れるため、好ましい。また、特開2001−240654号公報記載のジシクロペンタジエン型エポキシ化合物や、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、などは、本発明において、熱硬化性および吸湿性や耐熱性をはじめとする硬化塗膜の耐久性の面で優れており好ましい。
【0085】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂と、多官能エポキシ化合物(E)とを含んでなる。本発明において、これらの多官能エポキシ化合物(E)は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。多官能エポキシ化合物(E)の使用量は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有ウレタン樹脂100重量部に対して、0.5重量部〜100重量部の範囲内が好ましく、1重量部〜80重量部の範囲内がより好ましい。多官能エポキシ化合物(E)を使用することにより、本発明の熱硬化性樹脂組成物の架橋密度を適度な値に調節することができるので、本発明の樹脂組成物の各種物性をより一層向上させることができる。多官能エポキシ化合物(E)の使用量が0.5重量部よりも少ないと、加熱硬化後の塗膜の架橋密度が低くなり過ぎ、所望の接着力や耐熱性が不充分となる場合がある。また、該使用量が100重量部よりも多いと、加熱硬化後の架橋密度が高くなり過ぎ、その結果、塗膜の屈曲性、可撓性が低下し、接着力をも著しく悪化させる場合がある。
【0086】
また、本発明において、上記多官能エポキシ化合物(E)と併用して単官能エポキシ化合物(G)を、必要に応じて使用することができる。単官能エポキシ化合物(G)としては、例えば、N−グリシジルフタルイミド、グリシジルメタクリレート、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、等が挙げられる。本発明において、これらを使用する場合、接着界面に寄与することで接着力が向上する傾向にあり、好ましい。特に、N−グリシジルフタルイミド、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等は、界面への接着力向上に有用であり、より好ましい。本発明において、単官能エポキシ化合物(G)を使用する場合、カルボキシル基含有ウレタン樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の割合で加えることが好ましく、2〜25重量部の割合で加えることがより好ましい。1重量部より少ない場合、単官能エポキシ化合物(G)による接着力の向上効果は得られがたく、30重量部より多い場合、余剰の単官能エポキシ化合物(G)が残存しやすくなることで、フロー性や耐熱性の低下をまねく場合がある。
次に、本発明における熱硬化助剤(F)について説明する。本発明でいう熱硬化助剤とは、熱硬化時に硬化反応に直接または触媒的に寄与する化合物を表し、本発明の熱硬化性樹脂組成物において好ましく用いられる。
【0087】
熱硬化助剤(F)としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルピペラジン等の3級アミン類、およびその塩類;
2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−1]−エチル−S−トリアジン等のイミダゾール類、およびその塩類;
1,5−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデカン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン、1,4−ジアビシクロ[2,2,2,]オクタン等のジアザビシクロ化合物類;
トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン、トリス(シアノエチル)ホスフィン等のホスフィン類;
テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、メチルトリシアノエチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩類;
その他、触媒的かつ自らも直接硬化反応に寄与する化合物として、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド等が挙げられる。カルボン酸ヒドラジドとしては、コハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0088】
本発明において、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、イミダゾール類、ジアザビシクロ化合物類を用いると、より効率的に熱硬化反応が進行し、塗膜の耐性が優れるため好ましい。
【0089】
また、本発明において、熱硬化助剤(F)は、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内で使用することが好ましく、0.5〜8重量部の範囲内がさらに好ましい。使用量が0.1重量部よりも少ないと、熱硬化助剤として充分な効果を発揮できず、最終的に塗膜の凝集力や耐久性が不充分となる場合がある。また、該使用量が10重量部よりも多いと、余剰の熱硬化助剤が系内に残存し、滲み出しや絶縁性の劣化など、塗膜の諸物性を悪化させる場合がある。
【0090】
本発明により、接着力、耐熱性、加工性に優れ、特に、接着力と耐熱性とを両立し得る、カルボキシル基含有ウレタン樹脂及び該ウレタン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が得られた。また、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂は、フレキシブル性、絶縁性、密着性等に優れており、フレキシブルプリント配線板周辺をはじめとする電子材料用接着剤や接着シート、コーティング剤、回路被覆用ソルダーレジスト、カバーレイフィルム、メッキレジスト、線板用層間電気絶縁材料、感光性光導波路等に好適に用いることができる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、特に、接着剤組成物に好適に用いられる。
【実施例】
【0091】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」を表し、「Mn」および「Mw」は、数平均分子量および重量平均分子量をそれぞれ意味する。
【0092】
(合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:18000、水酸基価244)溶液を得た。
【0093】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2020」、Mn=2000]22.28部、イソホロンジイソシアネート2.72部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:53000、イソシアネート当量11600g/eq)溶液を得た。
【0094】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して、酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.74部、ジメチルベンジルアミン1.03部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価13.89mgKOH/g、重量平均分子量117700のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−1)溶液を得た。
【0095】
(合成例2)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:16973、水酸基価246)溶液を得た。
【0096】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]22.32部、イソホロンジイソシアネート2.68部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:70097、イソシアネート当量15421g/eq)溶液を得た。
【0097】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が41部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.93部、ジメチルベンジルアミン1.03部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価22.46mgKOH/g、重量平均分子量96500のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−2)溶液を得た。
【0098】
(合成例3)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:16973、水酸基価246)を得た。
【0099】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]22.32部、イソホロンジイソシアネート2.68部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:70097、イソシアネート当量15421g/eq)溶液を得た。
【0100】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.89部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価12.75mgKOH/g、重量平均分子量144700のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−3)溶液を得た。
【0101】
(合成例4)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:16030、水酸基価243)溶液を得た。
【0102】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]22.32部、キシリレンジイソシアネート[三井武田ケミカル(株)社製、タケネート500]2.68部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:47906、イソシアネート当量10539g/eq)溶液を得た。
【0103】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.73部、ジメチルベンジルアミン1.03部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価13.47mgKOH/g、重量平均分子量73600のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−4)溶液を得た。
【0104】
(合成例5)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:18069、水酸基価242)溶液を得た。
【0105】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2020」、Mn=2000]22.28部、イソホロンジイソシアネート2.72部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:52525、イソシアネート当量11556g/eq)溶液を得た。
【0106】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]5.48部、ジメチルベンジルアミン1.03部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価28.01mgKOH/g、重量平均分子量138500のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−5)溶液を得た。
【0107】
(合成例6)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:18069、水酸基価244)を得た。
【0108】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、ポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2020」、Mn=2000]11.13部とポリカーボネートジオール[(株)クラレ製「クラレポリオールC−2090」、Mn=2000]11.15部、イソホロンジイソシアネート2.72部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:40807、イソシアネート当量8978g/eq)溶液を得た。
【0109】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.72部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価10.82mgKOH/g、重量平均分子量250900のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−6)溶液を得た。
【0110】
(合成例7)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:15606、水酸基価242)を得た。
【0111】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]21.98部、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート[BASF INOACポリウレタン(株)社製、ルプラネートMI]3.02部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:87086、イソシアネート当量19159g/eq)溶液を得た。
【0112】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]1.30部、ジメチルベンジルアミン0.49部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価10.22mgKOH/g、重量平均分子量166300のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−7)溶液を得た。
【0113】
(合成例8)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:18069、水酸基価246)溶液を得た。
【0114】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2020」、Mn=2000]22.28部、イソホロンジイソシアネート2.72部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:52525、イソシアネート当量11556g/eq)溶液を得た。
【0115】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.74部、ジメチルベンジルアミン1.03部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価13.89mgKOH/g、重量平均分子量193100のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−8)溶液を得た。
【0116】
(合成例9)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:14839、水酸基価241)溶液を得た。
【0117】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]22.32部、イソホロンジイソシアネート2.68部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:70097、イソシアネート当量15421g/eq)溶液を得た。
【0118】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.71部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価16.15mgKOH/g、重量平均分子量188800のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−9)溶液を得た。
【0119】
(合成例10)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:17007、水酸基価246)溶液を得た。
【0120】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、イソフタル酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2030」、Mn=2105]22.40部、イソホロンジイソシアネート2.60部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:64003、イソシアネート当量14081g/eq)溶液を得た。
【0121】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドSA]1.79部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価9.55mgKOH/g、重量平均分子量150400のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−10)溶液を得た。
【0122】
(合成例11)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:17007、水酸基価239)溶液を得た。
【0123】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、イソフタル酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2030」、Mn=2105]22.40部、イソホロンジイソシアネート2.60部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:64003、イソシアネート当量14081g/eq)溶液を得た。
【0124】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が24部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[三菱ガス化学(株)社製、TMA]1.75部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価10.54mgKOH/g、重量平均分子量160500のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−11)溶液を得た。
【0125】
(合成例12)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:14031、水酸基価246)溶液を得た。
【0126】
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]21.89部、イソホロンジイソシアネート3.11部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:27845、イソシアネート当量6126g/eq)溶液を得た。
【0127】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が62部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]2.72部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価12.97mgKOH/g、重量平均分子量84100のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−12)溶液を得た。
【0128】
(合成例13)
合成例1と同様な反応容器に、ビスフェノールA 140.42部、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル[ナガセケムテックス(株)社製、EX−212L]159.58部、トリフェニルホスフィン3部、トルエン200部を仕込み、窒素雰囲気下110℃、5時間反応させて水酸基含有樹脂(Mw:14031、水酸基価241)溶液を得た。
一方、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた別の反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られるポリエステルポリオール[(株)クラレ製「クラレポリオールP−2011」、Mn=2000]22.32部、イソホロンジイソシアネート2.68部、トルエン15部を仕込み、窒素雰囲気下100℃、3時間反応させ、これにトルエン20部を加えて希釈し、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(Mw:63071、イソシアネート当量13876g/eq)溶液を得た。
【0129】
この反応容器に、前記水酸基含有樹脂のトルエン溶液を、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー固形分100部に対して水酸基含有樹脂の固形分が15部となる割合で添加し、100℃、3時間反応させた。IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)が消失したことを確認した後、樹脂固形分(すなわち、イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーと水酸基含有樹脂との合計重量部)100部に対して酸無水物基含有化合物[新日本理化(株)社製、リカシッドTH]3.39部、ジメチルベンジルアミン1.02部を添加し、100℃、3時間反応させた。IRで酸無水物基由来のピーク(1793cm−1付近)が完全に消失した時点で反応を停止し、酸価14.47mgKOH/g、重量平均分子量113600のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−13)溶液を得た。
【0130】
(合成例14)
[ポリエステル−ポリウレタン樹脂]
合成例1と同様な反応容器に、ポリエステルポリオール(テレフタル酸:イソフタル酸:アジピン酸:無水トリメリット酸=42:30:26:2のモル比で構成される多価カルボン酸と、2−メチル−1,3−プロパンジオール:ネオペンチルグリコール=50:50のモル比で構成されるポリオール類とを、多価カルボン酸:ポリオール類=50:50のモル比で混合し、反応させて得られたカルボキシル基含有ポリエステル(Mw:35100、酸価:8.9mgKOH/g)100部、2,2−ジメチロールブタン酸9部、ヘキサメチレンジイソシアネート8部、およびジブチル錫ジラウレート0.4部を、混合溶媒(MEK:トルエン=50:50質量比)150部に溶解させ、80℃、4時間反応させ、酸価33.78mgKOH/g、重量平均分子量49100のポリエステル−ポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0131】
(合成例15)
[ポリエステル−ポリウレタン樹脂]
合成例1と同様な反応容器に、ポリエステルポリオール(テレフタル酸:イソフタル酸:アジピン酸:無水トリメリット酸=40:35:23:2のモル比で構成される多価カルボン酸と、2−メチル−1,3−プロパンジオール:1,4−ブタンジオール=50:50のモル比で構成されるポリオール類とを、多価カルボン酸:ポリオール類=50:50のモル比で混合し、反応させて得られたカルボキシル基含有ポリエステル(Mw:37500、酸価:6.0mgKOH/g)100部、トルエン70部を仕込み溶解後、トルエン20部を蒸留させ、トルエン/水の共沸により反応系を脱水した。60℃まで冷却後、2,2−ジメチロールブタン酸を9部、MEKを50部加えた。2,2−ジメチロールブタン酸が溶解後、ヘキサメチレンジイソシアネートを8部、さらに反応触媒としてジブチル錫ジラウレートを0.4部加え、80℃で3時間反応させてから、MEK37.8部、トルエン37.8部を投入して固形分濃度を40%に調整し、酸価8.8mgKOH/g、重量平均分子量58900のポリエステル−ポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0132】
(実施例1)
合成例1で得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−1)溶液の固形分100部に対して、多官能エポキシ化合物としてグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート」)10部、およびジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン社製「エピキュアDICY7」)1部を混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分が30%になるよう調整して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を剥離処理されたポリエステルフィルム上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗工して乾燥させ、接着剤層を設けた。次に、剥離処理された別のポリエステルフィルムを接着剤層側にラミネートし、両面保護フィルム付きの接着シートを得た。
【0133】
(実施例2〜13)
実施例1と同様に、合成例2〜13で得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A−2〜A−13)溶液をそれぞれ使用して、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0134】
(比較例1、2)
実施例1と同様に、合成例14、15で得られたポリエステル−ポリウレタン樹脂をそれぞれ使用して、両面保護フィルム付きの接着シートを作成した。
【0135】
(比較例3)
ベース樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828EL)37.8部、硬化剤として(3−または4−)メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(日立化成社製、HN−5500)34.8部、硬化促進剤として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(ジャパンエポキシレジン社製、エピキュア3010)0.4部、カルボキシル基含有ブタジエンアクリロニトリルゴム(日本ゼオン社製、ニポール1072)27.0部を、メチルエチルケトンに溶解して固形分が30%になるよう調整し、接着剤組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法で両面保護フィルム付き接着シートを作成した。
【0136】
(比較例4)
カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、ニポール1072)50部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート1001)34部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、BPG−558)7部、イミダゾール(2−エチル−4−メチルイミダゾール)0.2部、フェノール系老化防止剤(住友化学工業社製、スミライザーTP−D)0.5部をメチルエチルケトンに溶解して固形分30%の接着剤組成物を得た。これを用いて、実施例1と同様の方法で両面保護フィルム付き接着シートを作成した。
【0137】
実施例および比較例で得られた接着剤シートについて、フロー性、接着強度、半田浴耐性、半田後接着強度、保存安定性を以下の方法で評価した。
【0138】
(1)フロー性
保護フィルムを除去した65mm×65mm四方の接着シートを、厚さが75μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン(株)製「カプトン300H」]と厚さが45μmの銅張積層板との間に挟み、80℃でラミネートし、続いて160℃、1.0MPaの条件で1時間圧着処理をした。さらに、この試験片を160℃で2時間熱硬化させ、評価用試験片を作成した。この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着剤層の表面積の差を測定し、これをはみ出し面積としてフロー性を評価した。このフロー性は、圧着処理時に接着層が熱によって軟化し、回路基板の位置ズレや配線間の接触を引き起こす度合いを評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
○・・・「はみ出し面積 ≦ 250mm2
△・・・「250mm2 < はみ出し面積 ≦ 500mm2
×・・・「500mm2 < はみ出し面積」
【0139】
(2)接着強度
フロー性の評価で作成した試験片を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度300mm/minでTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。この試験は、常温使用時における接着層の接着強度を評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
○・・・「12(N/cm) < 接着強度」
△・・・「8(N/cm) < 接着強度 ≦ 12(N/cm)」
×・・・「接着強度 ≦ 8(N/cm)」
【0140】
(3)半田浴耐性
上記の接着強度測定法と同様に、フロー性の評価で作成した試験片を幅10mm、長さ65mmに切り出し、これを260℃の溶融半田に、ポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、接着剤層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、半田接触時における接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、半田処理の前後で外観が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
○・・・「外観変化無し」
△・・・「発泡が観察される」
×・・・「激しい発泡や剥がれが観察される」
【0141】
(4)半田後接着強度
半田浴耐性評価後の試験片を用いて、上記(2)と同様の方法で接着強度を測定し、半田処理前の接着シートで得られる接着強度と比較した。この試験は、半田接触時における接着層の熱安定性を、半田処理前後における接着強度の変化で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、半田処理の前後で接着強度がほとんど変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に接着力が著しく低下する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
○・・・「接着強度がほとんど変化しない」
△・・・「接着強度がやや低下した」
×・・・「接着強度が著しく低下した」
【0142】
(5)保存安定性
実施例および比較例で作成した両面保護フィルム付き接着シートを、40℃で3ヶ月間加熱保存した後、接着強度を上記(2)と同じ方法で評価し、加熱保存していない接着シートで得られる接着強度と比較した。この試験は、接着層の経時安定性を、加熱保存時による促進後の接着強度で評価するものであり、経時安定性の良好なものほど未硬化の状態が安定で、加熱促進後も接着力の低下は少なく、経時安定性の悪いものほど、未硬化の状態が不安定で、加熱促進時に硬化反応が進行してしまい、促進後の接着力が大きく低下する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
○・・・「接着強度が変化しない」
△・・・「接着強度がやや低下した」
×・・・「接着強度が著しく低下した」
【0143】
評価の結果を下記表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1の結果からわかるように、比較例1、2(従来技術)では、ポリエステル−ポリウレタン樹脂特有の良好な接着強度を示すものの、低分子量成分由来のフロー性悪化や、ポリエステル骨格由来の半田後接着強度の著しい低下が見られた。また、比較例3、4(従来技術)ではゴム系樹脂を用いることで半田後の接着強度やフロー性に改善が見られるものの、全ての物性を同時に満足させることはできなかった。一方、本発明の実施例1〜13は、これら全ての物性を高いレベルで満足することができた。特に、耐熱性と接着強度の両立においては、従来技術に見られない特有の物性であることがわかった。
また、本発明の実施例1および実施例2で得られた接着剤層について、粘弾性測定器(レオメトリック・サイエンティフィック社製、商品名「RDA3」、測定条件:パラレルプレートによるズリ粘弾性、スロープ10℃/分)を用いて動的粘弾性の測定を行った時のtanδと温度の関係を図1および図2に示す。図1および図2からわかるように、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂を使用した接着剤組成物は、二峰性のtanδ曲線を示す。このことが、耐熱性と接着力の両立を実現していると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の実施例1で得られた接着剤層の粘弾性曲線
【図2】本発明の実施例2で得られた接着剤層の粘弾性曲線
【符号の説明】
【0147】
なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と、
エポキシ基含有化合物(b−1)と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)とを反応させて得られる水酸基含有樹脂(B)中の水酸基とを、反応させて水酸基含有樹脂(C)を生成し、
得られた水酸基含有樹脂(C)中の水酸基と、酸無水物基含有化合物(D)中の酸無水物基とを、反応させてなるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【請求項2】
酸価が、1〜150 mgKOH/gである請求項1記載のカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【請求項3】
重量平均分子量が、10000〜1000000である請求項1または2記載のカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載のカルボキシル基含有ウレタン樹脂と、多官能エポキシ化合物(E)と、を含む熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、熱硬化助剤(F)を含む、請求項4記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4または5記載の熱硬化性樹脂組成物を含む接着剤組成物。
【請求項7】
エポキシ基含有化合物(b−1)中のエポキシ基と2個のフェノール性水酸基を有する化合物(b−2)中のフェノール性水酸基と、を反応させて水酸基含有樹脂(B)を得る第一の工程、
イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(A)中のイソシアネート基と水酸基含有樹脂(B)中の水酸基と、を反応させて水酸基含有樹脂(C)を得る第二の工程、
および、水酸基含有樹脂(C)中の水酸基と酸無水物基含有化合物(D)中の酸無水物基と、を反応させてカルボキシル基含有ウレタン樹脂を得る第三の工程、を含むことを特徴とするカルボキシル基含有ウレタン樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144058(P2010−144058A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323046(P2008−323046)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】