説明

カルボン酸の製造方法、ジピロメテン化合物の製造方法、着色感放射線性組成物、カラーフィルタ、固体撮像素子及び液晶表示装置

【課題】チオール基含有カルボン酸と塩基とを用いて、カルボキシル基含有化合物を生成させる反応の際に、脱炭酸体の生成を抑制する方法を提供する。
【解決手段】チオール基含有カルボン酸を溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程と、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程と、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加する塩基添加工程と、を含むカルボン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸の製造方法、ジピロメテン化合物の製造方法、着色感放射線性組成物、カラーフィルタ、固体撮像素子及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、とりわけカラー液晶表示装置の需要が増加する傾向にある。更なる高画質化の要求から有機EL表示装置の普及も待ち望まれている。一方、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話の普及から、CCDイメージセンサーなどの固体撮像素子も需要が大きく伸びている。
これらの表示装置や固体撮像素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されており、更なる高画質化の要求とともにコストダウンへの要求が高まっている。このようなカラーフィルタは、通常、赤(R)、緑(G)、及び青(B)の3原色の着色パターンを備えており、表示装置においては、通過する光に3原色を付与し、また固体撮像素子においては、通過する光を3原色へ分光する役割を果たしている。
【0003】
カラーフィルタに使用されている着色剤には、共通して次のような特性が求められる。
即ち、色再現性上好ましい分光特性を有すること、表示装置におけるコントラスト低下の原因である光散乱や固体撮像素子における色ムラ・ザラツキ感の原因となる光学濃度の不均一性といった光学的な乱れがないこと、使用される環境条件下における堅牢性、例えば、耐熱性、耐光性、耐湿性等が良好であること、モル吸光係数が大きくカラーフィルタ層の薄膜化が可能なこと、等が必要とされている。
【0004】
近年、カラーフィルタに好適な分光特性に着目して、ジピロメテン染料を用いた着色感放射線性組成物及び色素化合物が検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、ジピロメテン染料を用いると色むら・ザラツキ感の問題およびコントラストの問題は解消されるものの、現像性においてなお改良の余地があり、さらなる技術開発が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−292970号公報
【特許文献2】特開2010−18788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明は、チオール基含有カルボン酸と塩基とを用いて、カルボキシル基含有化合物を生成させる反応の際に、不純物である脱炭酸体の生成を抑制する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ピロール化合物とチオール基含有カルボン酸とを反応させてカルボキシル基含有ピロール化合物を製造する際に、脱炭酸化されたピロール化合物が生成することを抑制し、高純度なジピロメテン化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、アルカリ現像時の現像性に優れた着色硬化膜を形成しうる着色感放射線性組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該着色感放射線性組成物を用いて高精細の色相の着色画素を有するカラーフィルタ及びその製造方法、並びに該カラーフィルタを備えた固体撮像素子、および液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は、以下の通りである。
<1> チオール基含有カルボン酸を溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程と、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程と、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加する塩基添加工程と、を含むカルボン酸の製造方法。
<2> 前記チオール基含有カルボン酸が、第二級カルボン酸または第三級カルボン酸である<1>に記載のカルボン酸の製造方法。
<3> ピロール化合物と、チオール基含有カルボン酸とを溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加してカルボキシル基含有ピロール化合物を合成するカルボキシル基含有ピロール化合物合成工程、及び、得られたカルボキシル基含有ピロール化合物と、下記一般式(3)で表されるピロール化合物とを反応させてジピロメテン化合物を合成するジピロメテン化合物合成工程、を含むジピロメテン化合物の製造方法。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(3)中、R〜Rは、各々独立に水素原子又は置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して5員、又は6員の環を形成してもよい。R10は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環を表す。Yは、硫黄原子、酸素原子、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、又はジアリールアミノ基を表す。
<4> 前記カルボキシル基含有ピロール化合物の合成工程で得られたピロール化合物における、脱炭酸化されたピロール化合物の含有量が、カルボキシル基含有ピロール化合物に対して1質量%未満である<3>に記載のジピロメテン化合物の製造方法。
<5> (A)<3>に記載のジピロメテン化合物の製造方法で得られたジピロメテン化合物、(B)顔料、(C)重合性化合物、(D)有機溶剤及び(E)光重合開始剤を含有する着色感放射線性組成物。
<6> 前記(E)光重合開始剤が、オキシム開始剤である<5>に記載の着色感放射線性組成物。
<7> 支持体上に<5>又は<6>に記載の着色感放射線性組成物を硬化して得られた着色硬化膜。
<8> <7>に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
<9> 色分離に用いられる<8>に記載のカラーフィルタ。
<10> <5>又は<6>に記載の着色感放射線性組成物を、支持体上に付与し着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と、前記着色感放射線性組成物層をパターン様に露光する露光工程と、露光後の前記着色感放射線性組成物層を現像してパターン状の着色硬化膜を形成する着色パターン形成工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
<11> <8>又は<9>のいずれかに記載のカラーフィルタを具備する固体撮像素子。
<12> <8>又は<9>のいずれかに記載のカラーフィルタを具備する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チオール基含有カルボン酸と塩基とを用いて、カルボキシル基含有化合物を生成させる反応の際に、不純物である脱炭酸体の生成を抑制する方法を提供することができる。また、本発明によれば、ピロール化合物とチオール基含有カルボン酸とを反応させてカルボキシル基含有ピロール化合物を製造する際に、脱炭酸化されたピロール化合物が生成することを抑制し、高純度なジピロメテン化合物を製造する方法を提供することができる。
また、本発明によれば、アルカリ現像時の現像性に優れた着色硬化膜を形成しうる着色感放射線性組成物を提供することができる。
さらに、本発明によれば、該着色感放射線性組成物を用いて高精細の着色画素を有するカラーフィルタ及びその製造方法、並びに該カラーフィルタを備えた固体撮像素子、および液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書においては「アルキル基」は「直鎖、分岐、および環状」のアルキル基を示し、また置換基で置換されていても、無置換でもよい。
また、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートの双方、又は、いずれかを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルの双方、又は、いずれかを表す。
また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本明細書における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。本明細書において、重合性化合物とは、重合性官能基を有する化合物のことをいい、単量体であっても、ポリマーであってもよい。重合性官能基とは、重合反応に関与する基を言う。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明において「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を含むものを意味する。
【0012】
本発明は、チオール基含有カルボン酸を溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程と、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程と、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加する塩基添加工程と、を含むカルボン酸の製造方法に関する。
【0013】
本発明の作用は明確ではないが以下のように推定している。
すなわち、塩基とチオールとの反応により発生する硫黄アニオンが、酸素の酸化作用で硫黄ラジカルとなり、該ラジカルによってカルボン酸中のプロトンが引き抜かれるために発生すると推定される脱炭酸化が、溶液中にラジカル捕捉剤を添加することにより抑制されるものと考えられる。このため不純物の生成が抑制された高純度の目的物質が得られるものと推定する。さらに、親水性がより低い脱炭酸体の着色感放射線性組成物への混入により、アルカリ現像時の現像性の低下が抑制されると考えられる。
また、ピロール化合物が共存する場合には、該ピロール化合物が光を吸収し、増感剤として作用するために、上記反応が加速し、硫黄ラジカルの生成量が増加することが懸念される。そのため、ピロール化合物が共存する系に、本願発明に記載のカルボン酸の製造方法を適用することにより、その効果はより顕著になるものと推定される。
【0014】
以下に本発明の製造方法、着色感放射線性組成物、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、固体撮像素子及び液晶表示装置について詳述する。
【0015】
≪カルボン酸の製造方法≫
本発明のカルボン酸の製造方法においては、チオール基含有カルボン酸を溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程と、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程と、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加する塩基添加工程とを含む。
【0016】
<溶液調製工程>
溶液調製工程では、チオール基含有カルボン酸を溶媒に溶解させて溶液を調製する。
【0017】
(チオール基含有カルボン酸)
溶液調製工程で用いる、チオール基含有カルボン酸としては、1分子中に少なくともチオール基及びカルボン酸基をそれぞれ1つ以上含有するものであり、好ましくは第二級カルボン酸や第三級カルボン酸などが挙げられ、より好ましくは第二級カルボン酸が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられるチオール基含有カルボン酸の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0019】
【化2】

【0020】
チオール基含有カルボン酸の溶液中の濃度としては、1重量%〜50重量%であり、1重量%〜30重量%が好ましく、5重量%〜20重量%が更に好ましい。
【0021】
(溶媒)
溶液調製工程で用いる、溶媒としては、チオール基含有カルボン酸を溶解するものであり、例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、NEP、DMAc、DMF、MEK、DMSO、IPA、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0022】
<ラジカル捕捉剤添加工程>
ラジカル捕捉剤添加工程では、上記の通り調整した溶液に、ラジカル捕捉剤を添加する。
【0023】
(ラジカル捕捉剤)
ラジカル捕捉剤添加工程で用いるラジカル捕捉剤とは、光や熱の影響によってラジカルを発生しやすい化合物に添加して、ラジカル付加反応、重合反応を阻害する試薬のことを指す。例えばキノン類、BHT(フェノール類)、ニトロ・ニトロソ類、アニリン類、ヒンダードアミン類、チオエーテル類、多環状類、無機、リン化合物類等が挙げられ、好ましくは、キノン類、ニトロ・ニトロソ類、アニリン類が挙げられ、より好ましくはニトロ・ニトロソ類が挙げられ、より具体的にはテトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、ニトロベンゼン、2,4ジニトロクロロベンゼン、1,5−ジニトロナフタレン、5−ニトロイソフタル酸メチルエステル、5−ニトロイソフタル酸、4−エチルニトロベンゼン、4−ニトロフタルイミド、m−ニトロ安息香酸等が挙げられる。
【0024】
ラジカル捕捉剤の添加量としては、1モル%〜20モル%であり、1モル%〜10モル%が好ましく、1モル%〜4.5モル%が更に好ましい。
【0025】
<塩基添加工程>
塩基添加工程では、ラジカル捕捉剤を添加した溶液に、塩基を添加する。
(塩基)
塩基添加工程で用いる塩基としては、pKaが11以上の塩基が挙げられ、具体的には、環状アミン、アルコキシド、等が挙げられ、好ましくは、ナトリウムメトキシド(NaOMe)、ナトリウムエトキシド(NaOEt)、カリウムtert−ブトキシド(t−BuOK)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)が挙げられ、さらに好ましくは、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)が挙げられる。
【0026】
≪ジピロメテン化合物の製造方法≫
本発明のジピロメテン化合物の製造方法においては、ピロール化合物と、チオール基含有カルボン酸とを溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加してカルボキシル基含有ピロール化合物を合成するカルボキシル基含有ピロール化合物合成工程、及び、得られたカルボキシル基含有ピロール化合物と、下記一般式(3)で表されるピロール化合物を反応させてジピロメテン化合物とを合成するジピロメテン化合物合成工程とを含む。
【0027】
なお、本発明のジピロメテン化合物の製造方法における溶液調製工程、ラジカル捕捉剤工程及び塩基の添加は、上記溶液調製工程、上記ラジカル捕捉剤工程及び上記塩基添加工程と同様である。
【0028】
(ピロール化合物)
本発明における溶液調製工程で用いる、ピロール化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物のハロゲン化物が挙げられる。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(2)中、R〜R各々それぞれは水素原子又は1価の置換基を表す。R〜Rで表される置換基は、下記一般式(M)におけるR〜Rで説明する置換基と同義であるが、Rとしては、エーテル基、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基が好ましく、アルキル基、アリール基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。Rとしては、エステル基、エーテル基、ケトン基、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基が好ましく、エステル基がより好ましい。Rとしては、エステル基、エーテル基、ケトン基、NHR基(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アミド基を表す。)が好ましく、NHR基がより好ましい。R〜Rが更に置換可能な基である場合には、前記の一般式(1)中のR〜R、R〜Rで説明した置換基で置換されていてもよく、複数の置換基で置換されている場合には、それらは、同一でも異なっていてもよい。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して5員、又は6員の環を形成してもよい。
また、一般式(2)で表される化合物のハロゲン化物としては、塩素化物、臭素化物、ヨウ化物等が挙げられる。
【0031】
ここで、一般式(2)で表されるピロール誘導体の具体例をそれぞれ例示するが、これに限られるものではない。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
【化11】

【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
カルボキシル基含有ピロール化合物としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化14】

【0044】
溶液調製工程における溶液において、前記ピロール化合物と、前記チオール基含有カルボン酸との濃度比率は、10:90〜50:50であり、好ましくは20:80〜50:50であり、より好ましくは30:70〜50:50である。
【0045】
本発明に記載のジピロメテン化合物の製造方法によれば、塩基とチオールとの反応により発生する硫黄アニオンが、酸素の酸化作用で硫黄ラジカルとなり、該ラジカルによってカルボン酸中のプロトンが引き抜かれるために発生すると推定される脱炭酸を抑制することができる。
そのため、本発明のジピロメテン化合物の製造方法によれば、脱炭酸化されたピロール化合物の含有量は、カルボキシル基含有ピロール化合物に対して1質量%未満であり、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満となる。
脱炭酸化されたピロール化合物の含有量は、HPLC法など、公知の方法により測定することができる。
【0046】
<ジピロメテン化合物合成工程>
ジピロメテン化合物合成工程においては、前記カルボキシル基含有ピロール化合物と、下記一般式(3)で表されるピロール化合物を反応させてジピロメテン化合物とを合成する。
【0047】
(一般式(3)で表されるピロール化合物)
【0048】
【化15】

【0049】
一般式(3)中、R〜Rは、各々独立に水素原子又は置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して5員、又は6員の環を形成してもよい。R10は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環を表す。一般式(3)中、R〜R及びR10は下記一般式(M)R〜R及びR10で説明する置換基と同義であり、その好ましい範囲も同様である。
【0050】
一般式(3)中、Yは、硫黄原子、酸素原子、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、又はジアリールアミノ基を表す。具体的には、モノアルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1のモノアルキルアミノ基である。例えば、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノn-プロピルアミノ基、モノiso-プロピルアミノ基、モノn-ブチルアミノ基、モノsec-ブチルアミノ基、モノiso-ブチルアミノ基、モノtert-ブチルアミノ基)、ジアルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1のジアルキルアミノ基である。例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジiso-プロピルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基、ジsec-ブチルアミノ基、ジiso-ブチルアミノ基、ジtert-ブチルアミノ基)、モノアリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜12のモノアリールアミノ基である。例えば、アニリノ基、1−アミノナフタレン基、2−アミノナフタレン基)、ジアリールアミノ基(好ましくは炭素数12〜48、より好ましくは12〜24のジアリールアミノ基である。例えば、ジフェニルアミノ基、カルバゾール基)が挙げられる。
【0051】
一般式(3)で表されるピロール誘導体の具体例を例示するが、これに限られるものではない。
【0052】
【化16】

【0053】
【化17】

【0054】
【化18】

【0055】
【化19】

【0056】
【化20】

【0057】
【化21】

【0058】
【化22】

【0059】
本発明の製造方法に従い合成された前記カルボキシル基含有ピロール化合物と、上記一般式(3)で表されるピロール化合物とを強酸条件下で反応させることにより、以下で詳述するジピロメテン化合物を製造することができる。
【0060】
前記カルボキシル基含有ピロール化合物と、前記一般式(3)で表されるピロール化合物との濃度比率は、70:30〜30:70であり、好ましくは70:30〜40:60であり、より好ましくは60:40〜40:60である。
【0061】
なお、本発明におけるジピロメテン化合物は、前記カルボキシル基含有ピロール化合物と、上記一般式(3)で表されるピロール化合物とを用いて、特開2009-227639号公報の段落番号[0056]〜[0066]などに記載の条件に従い合成することも可能である。
【0062】
≪着色感放射線性組成物≫
本発明の着色感放射線性組成物は、(A)染料、(B)顔料、(C)重合性化合物、(D)有機溶剤及び(E)光重合開始剤を含み、更に必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
以下に、本発明の着色感放射線性組成物を構成する各成分について説明する。
【0063】
<(A)染料>
本発明における着色感放射線性組成物において、(A)染料としては特に限定されないが、例えばジピロメテン化合物、アゾ色素、アゾメチン色素、ポリメチン色素などが挙げられる。
ジピロメテン化合物としては、本発明における製造方法に従って得られるジピロメテン化合物が挙げられ、該ジピロメテン化合物と金属又は金属化合物とから得られるジピロメテン金属錯体化合物も好ましい。
上記したジピロメテン金属錯体化合物は、本発明における製造方法に従って得られる下記一般式(M)で表されるジピロメテン化合物と金属または金属化合物とから得られるジピロメテン金属錯体化合物及びその互変異性体が好ましく、なかでも、好ましい態様として下記一般式(7)で表されるジピロメテン金属錯体化合物又は一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物由来の色素構造が挙げられ、一般式(8)で表される色素構造が最も好ましい。
【0064】
(一般式(M)で表されるジピロメテン化合物と金属または金属化合物とから得られるジピロメテン金属錯体化合物及びその互変異性体)
本発明の色素構造の好ましい態様の一つは、下記一般式(M)で表される化合物(ジピロメテン化合物)又はその互変異性体が、金属又は金属化合物に配位した錯体(以下、適宜「特定錯体」と称する。)を色素部位として含む色素構造である。
なお、本発明では、ジピロメテン構造を含む化合物をジピロメテン化合物と称し、ジピロメテン構造を含む化合物に金属又は金属化合物に配位した錯体をジピロメテン金属錯体化合物と称する。
【0065】
【化23】

【0066】
前記一般式(M)において、R〜R10は、各々独立に水素原子又は1価の置換基を表す。ただし、RとRとが互いに結合して環を形成することはない。
【0067】
前記一般式(M)におけるR〜Rが1価の置換基を表す場合の1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、
【0068】
シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、
【0069】
アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、
【0070】
アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、
【0071】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)を表す。
【0072】
一般式(M)中のR〜Rで示される1価の置換基が、さらに置換可能な基である場合には、R〜Rで説明した置換基をさらに有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0073】
一般式(M)中のRとR、RとR、RとR、及び、RとRは、それぞれ独立に、互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成していてもよい。ただし、RとRとが互いに結合して環を形成することはない。形成される5員、6員、及び7員の環が、さらに置換可能な基である場合には、前記R〜Rで説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
一般式(M)中のRとR、RとR、RとR、及び、RとRは、各々独立に、互いに結合して、置換基を有しない5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成する場合、置換基を有しない5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。
【0074】
一般式(M)におけるR10は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロ環基としては、前記R〜Rの置換基で説明したものとそれぞれ同義であり、その好ましい範囲も同様である。
10がアルキル基、アリール基、又は、ヘテロ環基を表す場合の、アルキル基、アリール基、及び、ヘテロ環基が、さらに置換可能な基である場合には、前記R〜Rにおける1価の置換基で説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0075】
〜金属又は金属化合物〜
本発明における特定錯体は、既述の一般式(M)で表される化合物又はその互変異性体が金属又は金属化合物に配位した錯体である。
ここで、金属又は金属化合物としては、錯体を形成可能な金属又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。金属又は金属化合物としては、例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl2、SnCl2、SiCl2、GeCl2などの金属塩化物、TiO、VO等の金属酸化物、Si(OH)2等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、又はVOが好ましく、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、又はVOが更に好ましく、Znが最も好ましい。
【0076】
次に、一般式(M)で表される化合物の本発明における特定錯体のさらに好ましい範囲について説明する。
本発明における特定錯体の好ましい範囲は、一般式(M)において、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、アニリノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シリル基、ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アニリノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、又はホスフィノイルアミノ基であり、R10が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基であり、金属又は金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、又はV=Oである範囲である。
【0077】
本発明における特定錯体のより好ましい範囲は、一般式(M)において、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基であり、R及びRが、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はスルファモイル基であり、R10が、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表され、金属又は金属化合物が、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、又はV=Oである範囲である。
【0078】
本発明における特定錯体の特に好ましい範囲は、一般式(M)において、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、ヘテロ環アミノ基、カルボンアミド基、ウレイド基、イミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アゾ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はホスフィノイルアミノ基であり、R及びRが、各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基で表され、R及びRが、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基であり、R10が、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基で表され、金属又は金属化合物が、Zn、Cu、Co、又はV=Oである範囲である。
さらに、以下に詳述する一般式(7)又は一般式(8)で表されるような態様も特に好ましい様態である。
【0079】
(一般式(7)で表されるジピロメテン金属錯体化合物)
本発明の色素構造の態様の一つは、下記の一般式(7)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である。
【0080】
【化24】

【0081】
上記一般式(7)中、R〜Rは各々独立に、水素原子、又は置換基を表し、R10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Maは、金属原子、又は金属化合物を表す。Xは、Maに結合可能な基を表し、Xは、Maの電荷を中和する基を表し、XとXは、互いに結合してMaと共に5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。ただし、RとRとが互いに結合して環を形成することはない。
なお、上記一般式(7)で表されるジピロメテン金属錯体化合物は、互変異性体を含む。
【0082】
一般式(7)における中のR〜Rは、前記一般式(M)におけるR〜Rと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0083】
前記一般式(7)中、Maは、金属原子又は金属化合物を表す。金属原子又は金属化合物としては、錯体を形成可能な金属原子又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。
例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等、及びAlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、TiO、V=O等の金属酸化物、Si(OH)等の金属水酸化物が含まれる。
【0084】
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、金属原子又は金属化合物として、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、及びV=Oが好ましく、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、及びV=Oが更に好ましく、Zn、Co、V=O、及びCuが特に好ましく、Znが最も好ましい。
【0085】
また、前記一般式(7)中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、好ましくは水素原子である。
【0086】
前記一般式(7)中、Xは、Maに結合可能な基であればいずれであってもよく、具体的には、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)等、更に「金属キレート」([1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、[2](1996年)、[3](1997年)等)に記載の化合物が挙げられる。中でも、製造の点で、水、カルボン酸化合物、アルコール類が好ましく、水、カルボン酸化合物がより好ましい。
【0087】
前記一般式(7)中、Xで表される「Maの電荷を中和する基」としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等が挙げられ、中でも、製造の点で、ハロゲン原子、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基が好ましく、水酸基、カルボン酸基がより好ましい。
【0088】
前記一般式(7)中、XとXは、互いに結合して、Maと共に5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、及び7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、及び7員の環は、炭素原子のみで構成されていてもよく、窒素原子、酸素原子、又は/及び硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環を形成していてもよい。
【0089】
前記一般式(7)で表される化合物の好ましい態様としては、R〜Rは各々独立に、R〜Rの説明で記載した好ましい態様であり、R10はR10の説明で記載した好ましい態様であり、MaはZn、Cu、Co、又はV=Oであり、Xは水、又はカルボン酸化合物であり、Xは水酸基、又はカルボン酸基であり、XとXとが互いに結合して5員又は6員環を形成していてもよい。
【0090】
(一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物)
本発明の着色感放射線性組成物に用いる色素構造の態様の一つは、下記の一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物である。
【0091】
【化25】

【0092】
上記一般式(8)中、R11及びR16は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。R12〜R15は各々独立に、水素原子、又は置換基を表す。R17は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。Maは、金属原子、又は金属化合物を表す。X及びXは各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。Y及びYは、各々独立に、NR(Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。)、窒素原子又は炭素原子を表す。R11とYは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、R16とYは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。XはMaと結合可能な基を表し、aは0、1、又は2を表す。
なお、上記一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物は、互変異性体を含む。
【0093】
上記R12〜R15は、前記一般式(M)中のR〜Rと同義であり、好ましい態様も同様である。上記R17は、前記一般式(M)中のR10と同義であり、好ましい態様も同様である。上記Maは、前記一般式(7)中のMaと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0094】
より詳細には、前記一般式(8)において上記R12〜R15のうち、前記R12及びR15としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ニトリル基、イミド基、又は、カルバモイルスルホニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトリル基、イミド基、カルバモイルスルホニル基が更に好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基が特に好ましい。
前記R13及びR14としては、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のヘテロ環基が好ましく、更に好ましくは置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基である。ここで、より好ましいアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基の具体例は、一般式(M)の前記R及びRにおいて列記した具体例を同様に挙げることができる。
【0095】
前記一般式(8)中、R11及びR16は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、2−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基)、アルキルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルアミノ基で、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、t−ブチルアミノ基、t−オクチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基)、アリールアミノ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールアミノ基で、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−エチル−N−フェニルアミノ基)、又はヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、2−アミノピロール基、3−アミノピラゾール基、2−アミノピリジン基、3−アミノピリジン基)を表す。
【0096】
前記R11及びR16としては、上記の中でも、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、がより好ましく、アルキル基、アルケニル基、アリール基が更に好ましく、アルキル基が特に好ましい。
【0097】
前記一般式(8)中、R11及びR16のアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基が、更に置換可能な基である場合には、後述する一般式(1)のRの置換基で説明する置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0098】
前記一般式(8)中、X及びXは、各々独立にNR、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜24、より好ましくは炭素数2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数2〜18のアシル基で、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−エチルヘキシル基、ベンゾイル基、シクロヘキサノイル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜18のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜24、より好ましくは炭素数6〜18のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基)を表す。
【0099】
前記一般式(8)中、Y及びYは各々独立に、NR、窒素原子、又は炭素原子を表し、Rは、前記X及びXのRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0100】
前記一般式(8)中、R11とYは、互いに結合して炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環)、6員環(例えば、シクロヘキサン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環、ジチアン環、ベンゼン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピリダジン環、キノリン環、キナゾリン環)、又は7員環(例えば、シクロヘプタン環、ヘキサメチレンイミン環)を形成してもよい。
【0101】
前記一般式(8)中、R16とYは、互いに結合して炭素原子と共に5員環(例えば、シクロペンタン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環)、6員環(例えば、シクロヘキサン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、ペンタメチレンスルフィド環、ジチアン環、ベンゼン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピリダジン環、キノリン環、キナゾリン環)、又は7員環(例えば、シクロヘプタン環、ヘキサメチレンイミン環)を形成してもよい。
【0102】
前記一般式(8)中、R11とY、及びR16とYが結合して形成される5員、6員、及び7員の環が、置換可能な環である場合には、後述する一般式(1)のRの置換基で説明する置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0103】
前記一般式(8)中、R11及びR16が各々独立に、立体パラメータである−Es値が1.5以上の1価の置換基であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましく、3.5以上であることがさらに好ましく、5.0以上であることが特に好ましい。
ここで、立体パラメータ−Es’値は、置換基の立体的嵩高さを表すパラメータであり、文献(J.A.Macphee,et al,Tetrahedron,Vol.34,pp3553〜3562、藤田稔夫編 化学増刊107 構造活性相関とドラックデザイン、1986年2月20日発行(化学同人))に示されている−Es’値を用いる。
【0104】
前記一般式(8)中、XはMaと結合可能な基を表し、具体的には、前記一般式(7)におけるXと同様な基が挙げられ、好ましい態様も同様である。aは0、1、又は2を表す。
【0105】
前記一般式(8)で表される化合物の好ましい態様としては、R12〜R15は各々独立に、前記一般式(M)中のR〜Rの説明で記載した好ましい態様であり、R17は前記一般式(M)中のR10の説明で記載した好ましい態様であり、MaはZn、Cu、Co、又はV=Oであり、XはNR(Rは水素原子、アルキル基)、窒素原子、又は酸素原子であり、XはNR(Rは水素原子、アルキル基)、又は酸素原子であり、YはNR(Rは水素原子、アルキル基)、窒素原子、又は炭素原子であり、Yは窒素原子、又は炭素原子であり、R11及びR16は各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、aは0又は1である。R11とYとが互いに結合して5員又は6員環を形成、又はR16とYとが互いに結合して5員、6員環を形成していてもよい。
【0106】
前記一般式(8)で表される化合物の更に好ましい態様としては、R12〜R15は各々独立に、一般式(M)で表される化合物におけるR〜Rの説明で記載した好ましい態様であり、R17は前記一般式(M)中のR10の説明で記載した好ましい態様であり、MaはZnであり、X及びXは、酸素原子であり、YはNHであり、Yは窒素原子であり、R11及びR16は各々独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基であり、Xは酸素原子を介して結合する基であり、aは0又は1である。R11とYとが互いに結合して5員又は6員環を形成、又はR16とYとが互いに結合して5員、6員環を形成していてもよい。
【0107】
前記一般式(7)及び一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物のモル吸光係数は、着色力の観点から、できるだけ高いほうが好ましい。また、最大吸収波長λmaxは、色純度向上の観点から、520nm〜580nmが好ましく、530nm〜570nmが更に好ましい。この領域にあることで、着色感放射線性組成物等に適用する際、色再現性の良好なカラーフィルタを作製することができる。更に、本発明の色素多量体の450nmにおける吸光度に対し、最大吸収波長(λmax)の吸光度が1,000倍以上であることが好ましく、10,000倍以上であることがより好ましく、100,000倍以上であることが更に好ましい。この比率がこの範囲にあることで、本発明の色素多量体を着色感放射線性組成物等に適用する際、特に青色カラーフィルタを作製する場合に、より透過率の高いカラーフィルタを形成することができる。なお、最大吸収波長、及びモル吸光係数は、分光光度計cary5(バリアン社製)により測定されるものである。
前記一般式(7)及び一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物の融点は、溶解性の観点から、高すぎない方がよい。
【0108】
前記一般式(7)及び一般式(8)で表されるジピロメテン金属錯体化合物は、米国特許第4,774,339号明細書、同第5,433,896号明細書、特開2001−240761号公報、同2002−155052号公報、特許第3614586号公報、Aust.J.Chem,1965,11,1835−1845、J.H.Boger et al,Heteroatom Chemistry,Vol.1,No.5,389(1990)等に記載の方法で合成することができる。具体的には、特開2008−292970号公報の段落0131〜0157に記載の方法を適用することができる。
【0109】
本発明における製造方法に従って得られるジピロメテン化合物としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0110】
【化26】

【0111】
<アゾ色素>
下記一般式(9)で表わされるアゾ色素においては、助色団としてアシルアミノ基を導入する場合や、置換基としてアシルオキシ基を導入する場合において、本発明の嵩高いアシル基が有効に作用する。
Cp−N=N−D (9)
【0112】
一般式(9)において、Cpはカップリング成分を、Dはジアゾ成分を表わす。カップリング成分の例としては、フェノール類、ナフトール類、アニリン類などの芳香族炭化水素環、ピラゾロン類、アミノピリジン類、ピリドン類などのヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを挙げることが出来る。ジアゾ成分としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ヘテロ環(例えば、チアゾール環、ピラゾール環、チオフェン環、イミダゾール環)などを挙げることが出来る。本発明の嵩高い置換基は、アゾ基の共役位への導入(例えばベンゼン環やピリジン環であればアゾ基に対して2位もしくは4位)が好ましい。
以下に、一般式(9)で表されるアゾ色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0113】
【化27】



【0114】
<アゾメチン色素>
【0115】
【化28】

【0116】
一般式(10)において、R31、R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフイニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基を表す。Eは−NR3536またはヒドロキシ基を表わし、R35およびR36はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表わす。Eは−NR3536であることが好ましい。R35とR36とは、互いに結合して環を形成していてもよい。Bは=C(R33)−または=N−を表わし、Bは−C(R34)=または−N=を表わす。B、Bが同時には−N=とならない場合が好ましく、Bが=C(R33)−、Bが−C(R34)=となる場合がさらに好ましい。R33、R34は、上記のR31、R32と同義である。R31とR35、R33とR36とは、及び/又は、R31とR32とは、互いに結合して芳香族環又は複素環を形成していてもよい。Xは活性メチレン化合物の残基を表わす。
【0117】
一般式(10)においてR32は上記置換基のうち、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルフアモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基であることが好ましい。
以下に、一般式(10)で表されるアゾメチン色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0118】
【化29】



【0119】
<ポリメチン色素>
ポリメチン色素としては、下記一般式に示すようなオキソノール色素、メロシアニン色素、シアニン色素、アリーリデン色素、スチリル色素が知られており、シアニン色素にはスクアリリウム色素、クロコニウム色素が含まれる。それらの色素中でも、オキソノール色素、及びシアニン色素が好ましく、特にシアニン色素、その中でもスクアリリウム色素が特に好ましい。
【0120】
シアニン染料: Bs=Lo−Bo
メロシアニン染料: Bs=Le=Ak
アリーリデン染料: Ak=Lo−Ar
スチリル染料: Bo−Le−Ar
オキソノール染料: Ak=Lo−Ae
【0121】
式中、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;Akは、ケト型酸性核であり;Aeは、エノール型酸性核であり;Arは、芳香族核であり;Loは、奇数個のメチンからなるメチン鎖であり;そして、Leは、偶数個のメチンからなるメチン鎖である。なお、本発明においては、Loが1個のメチンからなるモノメチン色素もポリメチン色素に含まれる。
【0122】
ポリメチン染料は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレイテッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds Cyanine Dyes and Related Compounds )」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク、ロンドン、1964年、;ディー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-SpecialTopics in Heterocyclic Chemistry)」第18章、第14節、および特開平6−313939号公報の記載を参照して合成できる。
以下に、ポリメチン色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0123】
【化30】



【0124】
【化31】



【0125】
<(B)顔料>
本発明の着色感放射線性組成物は、さらに(B)顔料を含む。
【0126】
顔料としては、有機顔料、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60などの青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38などのバイオレット色顔料;C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214などの黄色顔料;C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73などのオレンジ色の顔料;C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、209、215、216、224、242、254、255、264、265などの赤色顔料;C.I.ピグメントグリーン7、36、58などの緑色顔料;などが挙げられる。なかでも、C.I.ピグメントレッドバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、15:6から選ばれる少なくとも1つの顔料を含有していることが好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6を含有していることが特に好ましい。着色感放射線性組成物が、C.I.ピグメントレッドバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、15:6から選ばれる少なくとも1つの顔料を含むことにより、青色感放射線性組成物としての透過スペクトルの最適化が容易であり、耐薬品性が良好になるため好ましい。
【0127】
赤色感放射線性組成物としては、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254が好ましく、C.I.ピグメントレッド177、242、254がより好ましい。緑色感放射線性組成物としては、C.I.ピグメントイエロー138、139、150、C.I.ピグメントグリーン7、36、58が好ましく、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントグリーン36、58がより好ましい。
これらの顔料は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0128】
顔料の含有量は、顔料分散液の全固形分に対して、20質量%〜90質量%であり、好ましくは30質量%〜80質量%であり、より好ましくは40質量%〜75質量%である。
上記ジピロメテン化合物と顔料との含有量比率(質量比)は、10:90〜90:10であることが適しており、20:80〜80:20であることが好ましく、25:75〜75:25であることがより好ましい。
このような比率とすることにより、透過スペクトルの最適化が容易となり、高コントラスト、高明度を得るために良好である。さらに、耐熱性、耐薬品性が良好となる。
【0129】
特にC.I.ピグメントブルー15:6とジピロメテン化合物との質量比が10:80〜60:40であることが好ましく、15:85〜50:50であることがさらに好ましい。
また、C.I.ピグメントブルー15:6とジピロメテン化合物との質量比が5:95〜25:75であることが好ましく、10:90〜25:75であることがより好ましく、15:85〜20:80であることがさらに好ましい。
【0130】
さらに、赤色感放射線性組成物としては、C.I.ピグメントレッド177、242及び254からなる群から選ばれる少なくとも1種とジピロメテン化合物との質量比が10:90〜90:10であることが好ましい。
【0131】
有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基又は塩基性基が導入された顔料誘導体などを用いた表面処理、高分子化合物などによる顔料表面へのグラフト処理、硫酸微粒化法などによる微粒化処理、又は不純物を除去するための有機溶剤や水などによる洗浄処理、イオン性不純物のイオン交換法などによる除去処理などが施されていてもよい。
【0132】
−分散剤−
本発明の着色感放射線性組成物は、顔料を含む場合、分散剤を含有することができる。
本発明に用いうる顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等の界面活性剤、及び、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0133】
顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子としては、例えば、特開平3−112992号公報、特表2003−533455号公報等に記載の末端にリン酸基を有する高分子、特開2002−273191号公報等に記載の末端にスルホン酸基を有する高分子、特開平9−77994号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有する高分子などが挙げられる。また、特開2007−277514号公報に記載の高分子末端に2個以上の顔料表面へのアンカー部位(酸基、塩基性基、有機色素の部分骨格やヘテロ環等)を導入した高分子も分散安定性に優れ好ましい。
【0134】
顔料表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子としては、例えば、ポリエステル系分散剤等が挙げられ、具体的には、特開昭54−37082号公報、特表平8−507960号公報、特開2009−258668号公報等に記載のポリ(低級アルキレンイミン)とポリエステルの反応生成物、特開平9−169821号公報等に記載のポリアリルアミンとポリエステルの反応生成物、特開平10−339949号公報、特開2004−37986号公報等に記載のマクロモノマーと、窒素原子モノマーとの共重合体、特開2003−238837号公報、特開2008−9426号公報、特開2008−81732号公報等に記載の有機色素の部分骨格や複素環を有するグラフト型高分子、特開2010−106268号公報等に記載のマクロモノマーと酸基含有モノマーの共重合体等が挙げられる。特に、特開2009−203462号公報に記載の塩基性基と酸性基を有する両性分散樹脂は、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた着色感放射線性組成物が示す現像性の観点から特に好ましい。
【0135】
顔料表面へのアンカー部位を有するグラフト型高分子をラジカル重合で製造する際に用いるマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーを用いることができ、東亜合成(株)製のマクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学工業(株)製のプラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)、及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマー等が挙げられる。これらの中でも、特に柔軟性且つ親溶剤性に優れるポリエステル系マクロモノマーが、顔料分散物の分散性、分散安定性、及び顔料分散物を用いた着色感放射線性組成物が示す現像性の観点から特に好ましく、更に、特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロモノマーで表されるポリエステル系マクロモノマーが最も好ましい。
【0136】
顔料表面へのアンカー部位を有するブロック型高分子としては、特開2003−49110号公報、特開2009−52010号公報等に記載のブロック型高分子が好ましい。
【0137】
本発明に用いうる顔料分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、楠木化成株式会社製「DA−7301」、BYKChemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000E等、信越化学工業(株)製、オルガノシロキサンポリマーKP341、裕商(株)製「W001:カチオン系界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、「W004、W005、W017」等のアニオン系界面活性剤、森下産業(株)製「EFKA−46、EFKA−47、EFKA−47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ(株)製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」等の高分子分散剤、(株)ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123」、及び三洋化成(株)製「イオネット(商品名)S−20」等が挙げられる。
【0138】
これらの顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。また、本発明の顔料分散剤は、前記顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子と伴に、アルカリ可溶性樹脂と併用して用いても良い。アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を変性した樹脂が挙げられるが、特に(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。また、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー共重合体、特開2004−300204号公報に記載のエーテルダイマー共重合体、特開平7−319161号公報に記載の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
【0139】
着色感放射線性組成物における顔料分散剤の含有量としては、顔料100質量部に対して、1質量部〜80質量部であることが好ましく、5質量部〜70質量部がより好ましく、10質量部〜60質量部であることが更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料100質量部に対して、質量換算で5部〜100部の範囲が好ましく、10部〜80部の範囲であることがより好ましい。
また、顔料誘導体を併用する場合、顔料誘導体の使用量としては、顔料100質量部に対し、質量換算で1部〜30部の範囲にあることが好ましく、3部〜20部の範囲にあることがより好ましく、5部〜15部の範囲にあることが特に好ましい。
【0140】
着色感放射線性組成物において、着色剤としての顔料を用い、顔料分散剤をさらに用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、着色剤及び分散剤の含有量の総和が、着色感放射線性組成物を構成する全固形分に対して50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、55質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0141】
さらに、前記の顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、ポリエステル系、ポリアミン系、アクリル系などの界面活性剤などが挙げられる。
これらの顔料分散剤は、単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料分散剤を用いる場合、その使用量は、顔料(A−2)1質量部あたり、好ましくは1質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。顔料分散剤の使用量が前記の範囲にあると、均一な分散状態の顔料分散液が得られる傾向があるため好ましい。
【0142】
<(C)重合性化合物>
本発明の着色感放射線性組成物は、(C)重合性化合物を含有する。
重合性化合物としては、具体的には、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。中でも、4官能以上の多官能重合性化合物が好ましく、5官能以上の多官能重合性化合物がさらに好ましい。
このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明における重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
より具体的には、モノマー及びそのプレポリマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの多量体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの多量体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号〔0095〕〜〔0108〕に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0144】
また、前記重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報、特開昭51−37193号公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させ得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
また、その他の好ましい重合性化合物として、特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、特許第4364216号明細書等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和基を2官能以上有する化合物、カルド樹脂も使用することが可能である。
【0145】
また、常圧下で100℃以上の沸点を有し、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を持つ化合物としては、特開2008−292970号公報の段落番号[0254]〜[0257]に記載の化合物も好適である。
【0146】
上記のほか、下記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される、ラジカル重合性モノマーも好適に用いることができる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0147】
【化32】

【0148】
【化33】

【0149】
前記一般式において、nは0〜14であり、mは1〜8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
前記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される重合性化合物の各々において、複数存在するRの少なくとも1つは、−OC(=O)CH=CH、又は、−OC(=O)C(CH)=CHで表される基を表す。
前記一般式(MO−1)〜(MO−5)で表される重合性化合物の具体例としては、特開2007−269779号公報の段落番号0248〜段落番号0251に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0150】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、重合性化合物として用いることができる。
【0151】
中でも、重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。以下に好ましい重合性化合物の態様を示す。
【0152】
重合性化合物としては、多官能モノマーであって、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。エチレン性化合物が、上記のように混合物である場合のように未反応のカルボキシル基を有するものであれば、これをそのまま利用することができるが、必要において、上述のエチレン性化合物のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を導入してもよい。この場合、使用される非芳香族カルボン酸無水物の具体例としては、無水テトラヒドロフタル酸、アルキル化無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、アルキル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が挙げられる。
【0153】
本発明において、酸基を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、 特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M−510、M−520などが挙げられる。
【0154】
これらのモノマーは1種を単独で用いてもよいが、製造上、単一の化合物を用いることは難しいことから、2種以上を混合して用いてもよい。また、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用してもよい。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1mgKOH/g〜40mgKOH/gであり、特に好ましくは5mgKOH/g〜30mgKOH/gである。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が落ち、高すぎると製造や取扱いが困難になり光重合性能が落ち、画素の表面平滑性等の硬化性が劣るものとなる。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが好ましい。
【0155】
また、重合性モノマーとして、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体を含有することも好ましい態様である。
カプロラクトン構造を有する多官能性単量体としては、その分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε−カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε−カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも下記一般式(Z−1)で表されるカプロラクトン構造を有する多官能性単量体が好ましい。
【0156】
【化34】

【0157】
一般式(Z−1)中、6個のRは全てが下記一般式(Z−2)で表される基であるか、または6個のRのうち1〜5個が下記一般式(Z−2)で表される基であり、残余が下記一般式(Z−3)で表される基である。
【0158】
【化35】

【0159】
一般式(Z−2)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、mは1または2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。
【0160】
【化36】

【0161】
一般式(Z−3)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0162】
このようなカプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20(上記式(1)〜(3)においてm=1、式(2)で表される基の数=2、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA−30(同式、m=1、式(2)で表される基の数=3、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA−60(同式、m=1、式(2)で表される基の数=6、R1が全て水素原子である化合物)、DPCA−120(同式においてm=2、式(2)で表される基の数=6、R1が全て水素原子である化合物)等を挙げることができる。
本発明において、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0163】
また、本発明における特定モノマーとしては、下記一般式(Z−4)又は(Z−5)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0164】
【化37】

【0165】
前記一般式(Z−4)及び(Z−5)中、Eは、各々独立に、−((CH)yCHO)−、又は−((CH)yCH(CH)O)−を表し、yは、各々独立に0〜10の整数を表し、Xは、各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。
前記一般式(Z−4)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0〜10の整数を表し、各mの合計は0〜40の整数である。但し、各mの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
前記一般式(ii)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0〜10の整数を表し、各nの合計は0〜60の整数である。但し、各nの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
【0166】
前記一般式(Z−4)中、mは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。
また、各mの合計は、2〜40の整数が好ましく、2〜16の整数がより好ましく、4〜8の整数が特に好ましい。
前記一般式(Z−5)中、nは、0〜6の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。
また、各nの合計は、3〜60の整数が好ましく、3〜24の整数がより好ましく、6〜12の整数が特に好ましい。
また、一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)中の−((CH)yCHO)−又は−((CH)yCH(CH)O)−は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0167】
前記一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、一般式(ii)において、6個のX全てがアクリロイル基である形態が好ましい。
【0168】
また、一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物の重合性化合物中における全含有量としては、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0169】
前記一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物は、従来公知の工程である、ペンタエリスリト−ル又はジペンタエリスリト−ルにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基に、例えば(メタ)アクリロイルクロライドを反応させて(メタ)アクリロイル基を導入する工程と、から合成することができる。各工程は良く知られた工程であり、当業者は容易に一般式(i)又は(ii)で表される化合物を合成することができる。
【0170】
前記一般式(Z−4)又は一般式(Z−5)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
具体的には、下記式(a)〜(f)で表される化合物(以下、「例示化合物(a)〜(f)」ともいう。)が挙げられ、中でも、例示化合物(a)、(b)、(e)、(f)が好ましい。
【0171】
【化38】

【0172】
【化39】

【0173】
一般式(Z−4)、(Z−5)で表される重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR−494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA−60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA−330などが挙げられる。
【0174】
また、重合性化合物としては、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、重合性化合物として、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた硬化性組成物を得ることができる。
重合性化合物の市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」(新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
【0175】
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、着色感放射線性組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、感度の観点では、1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合は2官能以上が好ましい。また、着色感放射線性組成物膜の強度を高める観点では、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能基数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。さらに、3官能以上のものでエチレンオキサイド鎖長の異なる重合性化合物を併用することが、着色感放射線性組成物の現像性を調節することができ、優れたパターン形成能が得られるという点で好ましい。
また、着色感放射線性組成物に含有される他の成分(例えば、光重合開始剤、被分散体、アルカリ可溶性樹脂等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体などの硬質表面との密着性を向上させる観点で特定の構造を選択することもあり得る。
【0176】
本発明の着色感放射線性組成物中における重合性化合物の含有量は、着色感放射線性組成物中の固形分に対して0.1質量%〜90質量%が好ましく、1.0質量%〜50質量%がさらに好ましく、2.0質量%〜30質量%が特に好ましい。
【0177】
<(D)有機溶剤>
本発明の着色感放射線性組成物は、(D)有機溶剤を含有する。
有機溶剤は、各成分の溶解性や着色感放射線性組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はないが、特に紫外線吸収剤、アルカリ可溶性樹脂や分散剤等の溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。また、本発明における着色感放射線性組成物を調製する際には、少なくとも2種類の有機溶剤を含むことが好ましい。
【0178】
有機溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキル(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル及び2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(例えば、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等、並びに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0179】
これらの有機溶剤は、紫外線吸収剤及びアルカリ可溶性樹脂の溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合することも好ましい。この場合、特に好ましくは、上記の3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0180】
有機溶剤の着色感放射線性組成物中における含有量は、塗布性の観点から、組成物の全固形分濃度が5質量%〜80質量%になる量とすることが好ましく、5質量%〜60質量%が更に好ましく、10質量%〜50質量%が特に好ましい。
【0181】
<(E)光重合開始剤>
本発明の感放射線性組成物は、(E)光重合開始剤を含有する。
本発明における(E)光重合開始剤(以下、単に「重合開始剤」ということがある。)としては、以下に述べる光重合開始剤として知られているものを用いることができる。
本発明における光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、光重合開始剤は、約300nm〜800nm(330nm〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0182】
本発明における(E)光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどが挙げられる。これらの中でも、オキシム化合物が好ましい。
【0183】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載の化合物、米国特許第4212976号明細書に記載の化合物、などが挙げられる。
【0184】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0185】
また、上記以外の重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンなど)、N−フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフラノイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5−19475号公報、特開平7−271028号公報、特開2002−363206号公報、特開2002−363207号公報、特開2002−363208号公報、特開2002−363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)など)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる。
【0186】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0187】
重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10−291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE−184、DAROCUR−1173、IRGACURE−500、IRGACURE−2959,IRGACURE−127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE−907、IRGACURE−369、及び、IRGACURE−379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤として、365nmまたは405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009−191179公報に記載の化合物も用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE−819やDAROCUR−TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0188】
重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、特開2001−233842号記載の化合物、特開2000−80068号記載の化合物、特開2006−342166号記載の化合物を用いることができる。
【0189】
本発明で重合開始剤として好適に用いられるオキシム誘導体等のオキシム化合物としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0190】
オキシム化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.15
6−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE OXE−01(BASF社製)、IRGACURE OXE−02(BASF社製)も好適に用いられる。
【0191】
また上記以外のオキシム化合物として、カルバゾールのN位にオキシムが連結した特表2009−519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010−15025号公報および米国特許公開2009−292039号記載の化合物、国際公開特許2009−131189号公報に記載のケトオキシム系化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009−221114号公報記載の化合物などを用いてもよい。
【0192】
好ましくはさらに、特開2007−231000号公報、及び、特開2007−322744号公報に記載される環状オキシム化合物に対しても好適に用いることができる。環状オキシム化合物の中でも、特に特開2010−32985号公報、特開2010−185072号公報に記載されるカルバゾール色素に縮環した環状オキシム化合物は、高い光吸収性を有し高感度化の観点から好ましい。
また、オキシム化合物の特定部位に不飽和結合を有する特開2009−242469号公報に記載の化合物も、重合不活性ラジカルから活性ラジカルを再生することで高感度化を達成でき好適に使用することができる。
【0193】
最も好ましくは、特開2007−269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX−1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシムのN−O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0194】
【化40】

【0195】
(式(OX−1)中、R及びBは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。)
前記式(OX−1)中、Rで表される一価の置換基としては、一価の非金属原子団であることが好ましい。
前記一価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、アリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
【0196】
置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、及び、3−ニトロフェナシル基が例示できる。
【0197】
置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基、o−クメニル基、m−クメニル基及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、並びに、オバレニル基が例示できる。
【0198】
置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、及び、4−メトキシベンゾイル基が例示できる。
【0199】
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、及び、トリフルオロメチルオキシカルボニル基が例示できる。
【0200】
置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基として具体的には、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルオキシカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルオキシカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルオキシカルボニル基、2−クロロフェニルオキシカルボニル基、2−メチルフェニルオキシカルボニル基、2−メトキシフェニルオキシカルボニル基、2−ブトキシフェニルオキシカルボニル基、3−クロロフェニルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルオキシカルボニル基、3−シアノフェニルオキシカルボニル基、3−ニトロフェニルオキシカルボニル基、4−フルオロフェニルオキシカルボニル基、4−シアノフェニルオキシカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルオキシカルボニル基が例示できる。
【0201】
置換基を有していてもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはリン原子を含む、芳香族又は脂肪族の複素環が好ましい。
具体的には、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、及び、チオキサントリル基が例示できる。
【0202】
置換基を有していてもよいアルキルチオカルボニル基として具体的には、メチルチオカルボニル基、プロピルチオカルボニル基、ブチルチオカルボニル基、ヘキシルチオカルボニル基、オクチルチオカルボニル基、デシルチオカルボニル基、オクタデシルチオカルボニル基、及び、トリフルオロメチルチオカルボニル基が例示できる。
【0203】
置換基を有していてもよいアリールチオカルボニル基として具体的には、1−ナフチルチオカルボニル基、2−ナフチルチオカルボニル基、4−メチルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−フェニルスルファニルフェニルチオカルボニル基、4−ジメチルアミノフェニルチオカルボニル基、4−ジエチルアミノフェニルチオカルボニル基、2−クロロフェニルチオカルボニル基、2−メチルフェニルチオカルボニル基、2−メトキシフェニルチオカルボニル基、2−ブトキシフェニルチオカルボニル基、3−クロロフェニルチオカルボニル基、3−トリフルオロメチルフェニルチオカルボニル基、3−シアノフェニルチオカルボニル基、3−ニトロフェニルチオカルボニル基、4−フルオロフェニルチオカルボニル基、4−シアノフェニルチオカルボニル基、及び、4−メトキシフェニルチオカルボニル基が挙げられる。
【0204】
前記式(OX−1)中、Bで表される一価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は、複素環カルボニル基を表す。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0205】
なかでも、特に好ましくは以下に示す構造である。
下記の構造中、Y、X、及びnは、後述する式(OX−2)におけるY、X、及びnとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0206】
【化41】

【0207】
前記式(OX−1)中、Aで表される二価の有機基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アルキニレン基が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
中でも、式(OX−1)におけるAとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0208】
前記式(OX−1)中、Arで表されるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、また、置換基を有していてもよい。置換基としては、先に置換基を有していてもよいアリール基の具体例として挙げた置換アリール基に導入された置換基と同様のものが例示できる。
なかでも、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。
【0209】
式(OX−1)においては、前記式(OX−1)中のArとそれに隣接するSとで形成される「SAr」の構造が、以下に示す構造であることが感度の点で好ましい。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0210】
【化42】

【0211】
オキシム化合物は、下記式(OX−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0212】
【化43】

【0213】
(式(OX−2)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、A及びYは各々独立に二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(OX−2)におけるR、A、及びArは、前記式(OX−1)におけるR、A、及びArと同義であり、好ましい例も同様である。
【0214】
前記式(OX−2)中、Xで表される一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、複素環基、ハロゲン原子が挙げられる。また、これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
【0215】
これらの中でも、式(OX−2)におけるXとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、アルキル基が好ましい。
また、式(2)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜2の整数が好ましい。
【0216】
前記式(OX−2)中、Yで表される二価の有機基としては、以下に示す構造が挙げられる。なお、以下に示される基において、「*」は、前記式(OX−2)において、Yと隣接する炭素原子との結合位置を示す。
【0217】
【化44】

【0218】
中でも、高感度化の観点から、下記に示す構造が好ましい。
【0219】
【化45】

【0220】
さらにオキシム化合物は、下記式(OX−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0221】
【化46】

【0222】
(式(OX−3)中、R及びXは各々独立に一価の置換基を表し、Aは二価の有機基を表し、Arはアリール基を表し、nは0〜5の整数である。)
式(OX−3)におけるR、X、A、Ar、及び、nは、前記式(OX−2)におけるR、X、A、Ar、及び、nとそれぞれ同義であり、好ましい例も同様である。
【0223】
以下、好適に用いられるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0224】
【化47】

【0225】
【化48】

【0226】
オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有するものであり、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものであることが好ましく、365nm及び455nmの吸光度が高いものが特に好ましい。
【0227】
オキシム化合物は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、5,000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0228】
本発明に用いられる重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0229】
本発明の着色感放射線性組成物に用いられる(E)重合開始剤としては、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0230】
さらに好ましくは、トリハロメチルトリアジン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α−アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が最も好ましい。
【0231】
特に、本発明の着色感放射線性組成物を固体撮像素子のカラーフィルタの作製に使用する場合には、微細なパターンをシャープな形状で形成する必要があるために、硬化性とともに未露光部に残渣がなく現像されることが重要である。このような観点からは、重合開始剤としてはオキシム化合物を使用することが特に好ましい。特に、固体撮像素子において微細なパターンを形成する場合、硬化用露光にステッパー露光を用いるが、この露光機はハロゲンにより損傷される場合があり、重合開始剤の添加量も低く抑える必要があるため、これらの点を考慮すれば、固体撮像素子の如き微細パターンを形成するには(E)重合開始剤としては、オキシム化合物を用いるのが最も好ましい。
【0232】
本発明の着色感放射線性組成物に含有される(E)重合開始剤の含有量は、着色感放射線性組成物の全固形分に対し0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは1質量%以上15質量%以下である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0233】
<他の成分>
本発明の着色感放射線性組成物は、上述の各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、バインダー樹脂、架橋剤などの他の成分を含んでいてもよい。
【0234】
(バインダー樹脂)
本発明の着色感放射線性組成物は、さらにバインダー樹脂を含有することが好ましい。また、バインダー樹脂としては、特に限定はされないが、現像性・パターン形成性向上の観点より、アルカリ可溶性バインダーを含有することが好ましい。
−アルカリ可溶性バインダー−
【0235】
アルカリ可溶性バインダーとしては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性バインダーの中から適宜選択することができる。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
前記重合後に酸基を付与しうるモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有するモノマー、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有するモノマー等が挙げられる。これら酸基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーに酸基を導入するには、例えば、酸基を有するモノマーおよび/または重合後に酸基を付与しうるモノマー(以下「酸基を導入するための単量体」と称することもある。)を、単量体成分として重合するようにすればよい。
なお、重合後に酸基を付与しうるモノマーを単量体成分として酸基を導入する場合には、重合後に例えば後述するような酸基を付与するための処理が必要となる。
【0236】
アルカリ可溶性バインダーの製造には、例えば、公知のラジカル重合法による方法を適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性バインダーを製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0237】
アルカリ可溶性バインダーとして用いられる線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が、アルカリ可溶性バインダーとして好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、N―フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アルカリ可溶性バインダーとしては、下記一般式(ED)で示される化合物(以下「エーテルダイマー」と称することもある。)を必須とする単量体成分を重合してなるポリマー(a)を、必須成分であるポリマー成分(A)として含むことも好ましい。
【0238】
【化49】

【0239】
(式(ED)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。)
【0240】
これにより、本発明の着色感放射線性組成物は、耐熱性とともに透明性にも極めて優れた硬化塗膜を形成しうる。前記エーテルダイマーを示す前記一般式(1)中、RおよびRで表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0241】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。前記一般式(ED)で示される化合物由来の構造体は、その他の単量体を共重合させてもよい。
【0242】
また、本発明における着色感放射線性組成物の架橋効率を向上させるために、重合性基を有したアルカリ可溶性バインダーを使用してもよい。重合性基を有したアルカリ可溶性バインダーとしては、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有したアルカリ可溶性バインダー等が有用である。上述の重合性基を含有するポリマーの例としては、ダイヤナ-ルNRシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer. Diamond Shamrock Co.Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業株式会社製)、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業株式会社製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー株式会社製)などが挙げられる。これら重合性基を含有するアルカリ可溶性バインダーとしては、予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂、カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂、酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂、OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂、OH基を含むアクリル樹脂とイソシアネートと重合性基を有する化合物を反応させた樹脂、特開2002-229207号公報及び特開2003-335814号公報に記載されるα位又はβ位にハロゲン原子或いはスルホネート基などの脱離基を有するエステル基を側鎖に有する樹脂を塩基性処理を行うことで得られる樹脂などが好ましい。
【0243】
アルカリ可溶性バインダーとしては、特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。この他、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられ、特に好ましくはメタクリル酸ベンジル/メタクリル酸の共重合体等が挙げられる。
【0244】
アルカリ可溶性バインダーの酸価としては好ましくは20mgKOH/g〜200mgKOH/g、より好ましくは50mgKOH/g〜150mgKOH/gであることが好ましく、70mgKOH/g〜120mgKOH/gであることが最も好ましい。酸価が200を越えた場合、アクリル系樹脂がアルカリに対する溶解性が大きくなりすぎて現像適正範囲(現像ラチチュード)が狭くなる。一方、20未満と小さすぎると、アルカリに対する溶解性が小さく現像に時間がかかり過ぎて好ましくない。
また、アルカリ可溶性バインダーの重量平均分子量Mw(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)は、カラーレジストを塗布等の工程上使用しやすい粘度範囲を実現するために、また膜強度を確保するために、2,000〜100,000が好ましく、2,000〜70,000がさらに好ましく、3,000〜50,000が最も好ましい。
【0245】
アルカリ可溶性バインダーの着色感放射線性組成物中における含有量としては、該組成物の全固形分に対して、1質量%〜15質量%が好ましく、より好ましくは、2〜12質量%であり、特に好ましくは、3質量%〜10質量%である。
【0246】
(架橋剤)
本発明の着色感放射線性組成物に補足的に架橋剤を用い、着色感放射線性組成物を硬化させてなる着色硬化膜の硬度をより高めることもできる。
架橋剤としては、架橋反応により膜硬化を行なえるものであれば、特に限定はなく、例えば、(a)エポキシ樹脂、(b)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、(c)メチロール基、アルコキシメチル基、及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換された、フェノール化合物、ナフトール化合物又はヒドロキシアントラセン化合物、が挙げられる。中でも、多官能エポキシ樹脂が好ましい。
架橋剤の具体例などの詳細については、特開2004−295116号公報の段落0134〜0147の記載を参照することができる。
【0247】
(重合禁止剤)
本発明の着色感放射線性組成物においては、該着色感放射線性組成物の製造中又は保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、全組成物の質量に対して、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
【0248】
(界面活性剤)
本発明の着色感放射線性組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0249】
特に、本発明の着色感放射線性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する着色感放射線性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0250】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、着色感放射線性組成物中における溶解性も良好である。
【0251】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0252】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株))等が挙げられる。
【0253】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0254】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0255】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の添加量は、着色感放射線性組成物の全質量に対して、0.001質量%〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%〜1.0質量%である。
【0256】
(有機カルボン酸、有機カルボン酸無水物)
本発明の着色感放射線性組成物は、分子量1000以下の有機カルボン酸、及び/又は有機カルボン酸無水物を含有していてもよい。
有機カルボン酸化合物としては、具体的には、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、グリコール酸、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸、トリカルバリル酸、アコニット酸等のトリカルボン酸等が挙げられる。また、芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸等のフェニル基に直接カルボキシル基が結合したカルボン酸、およびフェニル基から炭素結合を介してカルボキシル基が結合したカルボン酸類が挙げられる。これらの中では、特に分子量600以下、とりわけ分子量50〜500のもの、具体的には、例えば、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸が好ましい。
【0257】
有機カルボン酸無水物としては、例えば、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物が挙げられ、具体的には、例えば、無水酢酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、無水n−オクタデシルコハク酸、無水5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等の脂肪族カルボン酸無水物が挙げられる。芳香族カルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、無水ナフタル酸等が挙げられる。これらの中では、特に分子量600以下、とりわけ分子量50〜500のもの、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸が好ましい。
【0258】
これらの有機カルボン酸及び/又は有機カルボン酸無水物の添加量は、通常、全固形分中0.01〜10重量%、好ましくは0.03〜5重量%、より好ましくは0.05〜3重量%の範囲である。
これら分子量1000以下の有機カルボン酸、及び/又は有機カルボン酸無水物を添加することによって、高いパターン密着性を保ちながら、着色感放射線性組成物の未溶解物の残存をより一層低減することが可能である。
【0259】
(その他の添加物)
着色感放射線性組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004−295116号公報の段落0155〜0156に記載のものを挙げることができる。
本発明の着色感放射線性組成物においては、特開2004−295116号公報の段落0078に記載の増感剤や光安定剤、同公報の段落0081に記載の熱重合防止剤を含有することができる。
【0260】
<着色感放射線性組成物の調製方法>
本発明の着色感放射線性組成物は、前述の成分を混合することで調製される。
なお、着色感放射線性組成物の調製に際しては、着色感放射線性組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解・分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解・分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液・分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
上記のようにして調製された着色感放射線性組成物は、好ましくは、孔径0.01μm〜3.0μm、より好ましくは孔径0.05μm〜0.5μm程度のフィルタなどを用いて濾別した後、使用に供することができる。
【0261】
本発明の着色感放射線性組成物は、保存安定性に優れ、更に、耐熱性に優れた着色硬化膜を形成することができるため、液晶表示装置(LCD)や固体撮像素子(例えば、CCD、CMOS等)に用いられるカラーフィルタなどの着色画素形成用として、また、印刷インキ、インクジェットインキ、及び塗料などの作製用途として好適に用いることができる。特に、CCD、及びCMOS等の固体撮像素子用の着色画素形成用として好適に用いることができる。
【0262】
≪カラーフィルタ及びその製造方法≫
次に、本発明におけるカラーフィルタについて、その製造方法を通じて詳述する。
なお、本発明におけるカラーフィルタは、本発明の着色感放射線性組成物を用いてなる着色硬化膜を有しており、当該着色硬化膜の膜厚は1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm〜0.9μmであることがより好ましく、0.2μm〜0.8μmであることがさらに好ましい。
膜厚を、1.0μm以下とすることにより、高解像性、高密着性を得られるため、好ましい。
【0263】
本発明におけるカラーフィルタの製造方法においては、既述の本発明の着色感放射線性組成物が用いられる。
本発明の着色感放射線性組成物を用いることで、現像性に優れると共に感度よく良好な高度の硬度が得られるので、形状良好で高解像度の微細なパターンで構成されたカラーフィルタを簡易に作製することができる。また、着色感放射線性組成物を用いることで薄膜化(厚み1μm以下)が可能となり、色分離に優れるカラーフィルタを作製することができる。
【0264】
本発明におけるカラーフィルタの製造方法は、本発明の着色感放射線性組成物を支持体上に塗布後、パターン露光し、現像してパターンを形成する工程を設けて構成したものである。具体的には、本発明の着色感放射線性組成物を支持体上に回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布方法により塗布して着色感放射線性組成物層を形成し、該層を所定のマスクパターンを介して露光し、現像液で現像することでネガ型の着色パターンを形成することによって好適に作製することができる(画像形成工程)。また、必要により、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0265】
カラーフィルタの作製においては、前記画像形成工程(及び必要により硬化工程)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタを作製することができる。この際に使用される光若しくは放射線としては、特にg線、h線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。
【0266】
前記支持体としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子(CCDやCMOS)等に用いられる光電変換素子基板が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの基板上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止あるいは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0267】
前記現像液としては、本発明の着色感放射線性組成物(未硬化部)を溶解する一方、照射された硬化部を溶解しない組成よりなるものであればいかなるものも用いることができる。具体的には、種々の有機溶剤の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。前記有機溶剤としては、本発明の着色感放射線性組成物を調製する際に使用される前述の有機溶剤が挙げられる。
【0268】
前記アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−〔5.4.0〕−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように溶解してなるアルカリ性水溶液が好適である。
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合は、一般に現像後水で洗浄する。
【0269】
本発明におけるカラーフィルタは、液晶表示装置やCCD、CMOS等の固体撮像素子に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS等に好適である。本発明のカラーフィルタは、例えば、CCD、CMOSを構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【0270】
≪固体撮像素子≫
−固体撮像素子用カラーフィルタ及びその製造方法−
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法は、支持体上に、既述の本発明の着色感放射線性組成物を付与して着色感放射線性組成物層を形成する工程(以下、「着色感放射線性組成物層形成工程」ともいう)と、前記着色感放射線性組成物層を、マスクを介して露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)と、露光後の着色感放射線性組成物層を現像して着色パターン(以下、「着色画素」ともいう)を形成する工程(以下、「現像工程」ともいう)と、を含む。
また、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法によって製造されたものである。
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法によって製造された赤色パターン(赤色画素)を少なくとも有していればよい。本発明の固体撮像素子用カラーフィルタの具体的形態としては、例えば、前記赤色パターンと他の着色パターンとを組み合わせた多色のカラーフィルタの形態(例えば、前記赤色パターン、青色パターン、及び緑色パターンを少なくとも有する3色以上のカラーフィルタ)が好適である。
以下、固体撮像素子用カラーフィルタを単に「カラーフィルタ」ということがある。
【0271】
<着色感放射線性組成物層形成工程>
着色感放射線性組成物層形成工程では、支持体上に、本発明の着色感放射線性組成物を付与して着色感放射線性組成物層を形成する。
本工程に用いうる支持体としては、例えば、基板(例えば、シリコン基板)上にCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用基板を用いることができる。
本発明における着色パターンは、固体撮像素子用基板の撮像素子形成面側(おもて面)に形成されてもよいし、撮像素子非形成面側(裏面)に形成されてもよい。
固体撮像素子における着色画素の間や、固体撮像素子用基板の裏面には、遮光膜が設けられていてもよい。
また、支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0272】
支持体上への本発明の着色感放射線性組成物の付与方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0273】
支持体上に塗布された着色感放射線性組成物層の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10秒〜300秒で行うことができる。
【0274】
<露光工程>
露光工程では、着色感放射線性組成物層形成工程において形成された着色感放射線性組成物層を、例えば、ステッパー等の露光装置を用い、所定のマスクパターンを有するマスクを介してパターン露光する。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は30mJ/cm〜1500mJ/cmが好ましく50mJ/cm〜1000mJ/cmがより好ましく、80mJ/cm〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0275】
<現像工程>
次いでアルカリ現像処理を行うことにより、露光工程における光未照射部分の着色感放射線性組成物層がアルカリ水溶液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の撮像素子や回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は従来は20秒〜90秒であった。より残渣を除去するため、近年では120秒〜180秒実施する場合もある。さらには、より残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返す場合もある。
【0276】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられ、これらのアルカリ剤を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。
なお、現像液には無機アルカリを用いてもよく、無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウムなどが好ましい。
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0277】
次いで、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。多色の着色パターンを形成するのであれば、各色ごとに前記工程を順次繰り返して硬化皮膜を製造することができる。これによりカラーフィルタが得られる。
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、通常100℃〜240℃、好ましくは200℃〜240℃の熱硬化処理を行う。
このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0278】
なお、本発明の製造方法は、必要に応じ、上記以外の工程として、固体撮像素子用カラーフィルタの製造方法として公知の工程を有していてもよい。例えば、上述した、着色感放射線性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0279】
また、本発明に係る着色感放射線性組成物を用いる場合、例えば、塗布装置吐出部のノズルや配管部の目詰まりや塗布機内への着色感放射線性組成物や顔料の付着・沈降・乾燥による汚染等が生じる場合がある。そこで、本発明の着色感放射線性組成物によってもたらされた汚染を効率よく洗浄するためには、前掲の本組成物に関する溶剤を洗浄液として用いることが好ましい。また、特開平7−128867号公報、特開平7−146562号公報、特開平8−278637号公報、特開2000−273370号公報、特開2006−85140号公報、特開2006−291191号公報、特開2007−2101号公報、特開2007−2102号公報、特開2007−281523号公報などに記載の洗浄液も本発明に係る着色感放射線性組成物の洗浄除去として好適に用いることができる。
上記のうち、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート及びアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
これら溶媒は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合することが好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶剤で、その比率が60/40であることが特に好ましい。なお、汚染物に対する洗浄液の浸透性を向上させるために、洗浄液には前掲の本組成物に関する界面活性剤を添加してもよい。
【0280】
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、本発明の着色感放射線性組成物を用いているため、剥がれ欠陥及び残渣欠陥が少なく、また、着色パターンの耐熱性に優れている。
本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、CCD、CMOS等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCDやCMOS等に好適である。本発明の固体撮像素子用カラーフィルタは、例えば、CCD又はCMOSを構成する各画素の受光部と、集光するためのマイクロレンズと、の間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【0281】
固体撮像素子用カラーフィルタにおける着色パターン(着色画素)の膜厚としては、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
また、着色パターン(着色画素)のサイズ(パターン幅)としては、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.7μm以下が特に好ましい。
【0282】
−固体撮像素子−
本発明における固体撮像素子は、既述の本発明の固体撮像素子用カラーフィルタを備える。本発明における固体撮像素子の構成としては、本発明における固体撮像素子用カラーフィルタが備えられた構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0283】
支持体上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、前記フォトダイオード及び前記転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、前記デバイス保護膜上に、本発明の固体撮像素子用カラーフィルタを有する構成である。
更に、前記デバイス保護層上であってカラーフィルタの下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。
【0284】
≪液晶表示装置≫
本発明におけるカラーフィルタは、前記固体撮像素子のみならず液晶表示装置に用いることができ、特に液晶表示装置の用途に好適である。液晶表示装置に用いた場合、分光特性及び耐熱性に優れた金属錯体色素を着色剤として含有しながらも、比抵抗の低下に伴う液晶分子の配向不良が少なく、表示画像の色合いが良好で表示特性に優れる。
このため、本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置は、表示画像の色合いが良好で表示特性に優れた高画質画像を表示することができる。
【0285】
表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0286】
本発明におけるカラーフィルタは、カラーTFT方式の液晶表示装置に用いてもよい。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。更に、本発明はIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN、TN、VA、OCS、FFS、及びR−OCB等にも適用できる。
また、本発明におけるカラーフィルタは、明るく高精細なCOA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタ層に対する要求特性は、前述のような通常の要求特性に加えて、層間絶縁膜に対する要求特性、すなわち低誘電率及び剥離液耐性が必要とされることがある。本発明のカラーフィルタにおいては、色相に優れた染料多量体を用いることから、色純度、光透過性などが良好で着色パターン(画素)の色合いに優れるので、解像度が高く長期耐久性に優れたCOA方式の液晶表示装置を提供することができる。なお、低誘電率の要求特性を満足するためには、カラーフィルタ層の上に樹脂被膜を設けてもよい。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0287】
本発明におけるカラーフィルタを備えた液晶表示装置は、本発明におけるカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角保障フィルムなど様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については、例えば、「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18〜24ページ(島 康裕)、同25〜30ページ(八木隆明)などに記載されている。
【0288】
本発明におけるカラーフィルタを液晶表示装置に用いると、従来公知の冷陰極管の三波長管と組み合わせたときに高いコントラストを実現できるが、更に、赤、緑、青のLED光源(RGB−LED)をバックライトとすることによって輝度が高く、また、色純度の高い色再現性の良好な液晶表示装置を提供することができる。
【0289】
以上述べたように、本発明によれば、ジピロメテン系化合物と金属若しくは金属化合物とから得られるジピロメテン系金属錯体化合物及びその互変異性体を色素部位の部分構造として含む色素多量体を含有する、分光特性、耐熱性に優れた色補正用の赤〜紫色色素が得られる。さらに、カラーフィルタ作製プロセスにおける混色、即ち、形成される着色硬化膜が、耐溶剤性や熱硬化工程における色移りに対して優れた耐性を有する、着色感放射線性組成物が得られる。このため、従来の色補正用染料を用いたカラーレジストで達成できなかった課題が解決され、固体撮像素子や表示用装置(例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置など)に用いられるカラーフィルタに特に有用である。
【実施例】
【0290】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表す。
【0291】
<実施例1>
(合成例1)酸クロライドの合成
窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン128gのTHF500mL溶液にn―ブチルリチウム(20%シクロヘキサン溶液)500mLを−10℃下で滴下した。その後、2−エチルブタン酸64gを滴下し、40℃に昇温させ、2時間攪拌した。―10℃に冷却した後、1−ブロモクロロプロパン113g滴下した。0℃以下で3時間攪拌した後に、15℃以下で水100mL、続いて6N塩酸500mLを滴下した。酢酸エチル500mLで分液後、濃縮し、蒸留精製することで酸クロライド117g(収率75%)を得た。
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.87(6H、t)、1.62−1.83(8H、m)、3.55(2H、t)
【0292】
【化50】

【0293】
(合成例2)中間体1の合成
米国特許出願公開第2008/0076044号明細書に記載の方法で得た中間体500gのアセトニトリル2L溶液にトリエチルアミン161gを室温下で滴下した。80℃に昇温度後、酸クロライド308gを滴下した。80℃で4時間攪拌後、65℃に冷却し、メタノール1.2kg添加した。30分攪拌後、ろ過し、中間体1 650g(収率89%)を得た。
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.86(6H、t)、0.90(18H、s)、1.02(3H、d)、1.21(6H、d)、1.25−1.73(15H、m)、3.45(1H、quint)、6.02(1H、s)、6.20(1H、s)、10.52(1H、s)、10.94(1H、s)
【0294】
【化51】


中間体1
【0295】
(合成例3)カルボキシル基含有ピロール化合物の合成
下記チオール基含有カルボン酸(SH−1)(チオリンゴ酸、東京化成工業(株)製)70.8gと上記中間体1 130gとを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、和光純薬工業(株)製)390gに溶解した。その後、ニトロベンゼン(ラジカル捕捉剤、東京化成工業(株)製)1.3gとDBU(東京化成工業(株)製)4.56gを溶液に添加し、40℃で2時間反応を行った。反応終了後、THF390g、15%NaOH水溶液390g添加後、60℃で2時間加水分解反応を行った。酢酸エチル1L、水1Lを添加し分液を行った。有機層を廃棄後、さらに酢酸エチル1Lで水層を洗浄後酢酸エチル1Lおよび35%塩酸300mL添加し、系を酸性にした。水層を廃棄後、有機層を水500mLで2回洗浄後、40℃80Torrで濃縮を行った。この濃縮物にアセトニトリル200mL、水86mL添加後、2時間攪拌を行い、下記カルボキシル基含有ピロール化合物(a−1)130g(収率83%)を得た。
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.86(6H、t)、0.89(18H、s)、1.02(3H、d)、1.18−1.80(21H、m)、2.61−2.80(3H、m)、2.98(1H、td)、3.46(1H、quint)、3.64(1H、dd)、6.01(1H、s)、6.23(1H、s)、10.61(1H、s)、10.94(1H、s)
【0296】
【化52】



チオール基含有カルボン酸(SH−1)
【0297】
【化53】


カルボキシル基含有ピロール化合物(a−1)
【0298】
生成物に含有されている脱炭酸化されたピロール化合物をHPLCで測定した結果、脱炭酸化されたピロール化合物の含有量は検出限界以下であった。HPLC条件は下記表1に記載の通りである。
【0299】
【表1】

【0300】
<実施例2〜実施例17、比較例1〜比較例3>
実施例1において、チオール基含有カルボン酸、ラジカル捕捉剤及び塩基を、それぞれ表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、カルボキシル基含有ピロール化合物を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0301】
【表2】

【0302】
以下に実施例2〜実施例17及び比較例1〜比較例3で用いたチオール基含有カルボン酸の構造式を示す。
【0303】
【化54】

【0304】
以下に実施例1〜実施例17及び比較例1〜比較例3で得られたカルボキシル基含有ピロール化合物の構造式を示す。
【0305】
【化55】

【0306】
【化56】

【0307】
(合成例4)ピロール化合物(p−1)の合成
合成例2で得られた中間体1 250gのDMAc550mL溶液に対して、メタクリル酸(東京化成工業(製))78.1g、ヨウ化カリウム(和光純薬工業(製))、p−メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)0.125g、ジイソプロピルアミン114.7g(東京化成工業(製))を添加し、85℃に昇温した。10時間攪拌した後に、酢酸エチル1.2L,水1.2Lを添加し、分液を行った。得られた有機層にメタノール0.9L、水0.9Lを添加し、晶析させた。得られた結晶に対してメタノール0.6Lでかけ洗いを行い、中間体2を258.21g(収率95%)得た。
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.86(6H、t)、0.89(18H、s)、1.02(3H、d)、1.27(6H、d)、1.36(4H、q)、1.73−1.93(11H、m)、1.94(3H、s)、3.46(1H、quint)、4.14(2H、t)、5.54(1H、s)、6.02(1H、s)、6.09(1H、s)、6.22(1H、s)、10.54(1H、s)、10.94(1H、s)
【0308】
【化57】


中間体2
【0309】
N−メチルホルムアニリド(東京化成工業(製))67.3gをアセトニトリル530mL中5℃で攪拌しながら、オキシ塩化リン(東京化成工業(製))76.3gを滴下し、1時間攪拌後、中間体2(230g)、p−メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)0.115gを添加し室温で30分攪拌した。40℃で5時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル1.2L、水1.2L、メタノール0.8L添加して晶析出させた。得られた結晶に対して、メタノール1Lでかけ洗いを行い、ピロール化合物(p−1)を236g(収率98%)得た。
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.86(6H、t)、0.89(18H、s)、1.03(3H、d)、1.26(4H、q)、1.42(6H、d)、1.57−1.94(11H、m)、1.93(3H、s)、4.11(1H、quint)、4.14(2H、t)、5.55(1H、s)、6.04(1H、s)、6.10(1H、s)、9.87(1H、s)、11.01(1H、s)、11.16(1H、s)
【0310】
【化58】


ピロール化合物(p−1)
<実施例18>
(合成例5)ジピロメテン化合物の合成
実施例1で合成したカルボキシル基含有ピロール化合物(a−1)107.9g、合成例4で合成したピロール化合物(p−1)100g、p−メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)10mgを無水酢酸313g中で攪拌した。水浴で30℃以下に保ったままトリフルオロ酢酸(東京化成工業(製))90.7gを滴下した。反応終了後、THF222g、水337gを加え、40℃で1時間攪拌した。
この反応液を攪拌しているアセトニトリル1.3L、水1.3Lの混合液に滴下した。滴下後、さらに水を1L添加し20分間攪拌した。析出した固体をろ過し、アセトニトリル3.4Lで再結晶を行い、40℃12時間送風乾燥を行うことで、下記ジピロメテン化合物前駆体170gを得た(収率84%)。
【0311】
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.79−0.94(48H、m)、1.02(6H、d)、1.21−1.77(22H、m)、1.42(12H、d)、1.93(3H、s)、2.59−2.78(3H、m)、2.95(1H、dd)、3.66(1H、dd)、4.02−4.15(4H、m)、5.54(1H、s)、6.03(2H、s)、6.11(1H、s)、7.58(1H、s)、10.75(1H、s)、10.78(1H、s)
【0312】
ジピロメテン化合物前駆体170gのMFG684g溶液に酢酸亜鉛2水和物(和光純薬工業(株)29gを添加した。反応終了後、反応液を攪拌している水3.4Lに滴下した。析出した固体を水3Lでかけ洗いを行い、40℃12時間送風乾燥を行うことで、下記ジピロメテン化合物(A−1)175g(収率97%)を合成した。
【0313】
H−NMR、300MHz、δ(CDCl)ppm:0.81−0.99(48H、m)、1.02(6H、d)、1.15−1.90(34H、m)、1.94(3H、s)、2.58−2.80(3H、m)、3.00(1H、d)、3.46(1H、br)、4.14−4.30(4H、m)、5.53(1H、s)、6.04(1H、s)、6.06(1H、s)、6.11(1H、s)、7.80(1H、s)、11.29(1H、s)、11.45(1H、s)
【0314】
【化59】


ジピロメテン化合物前駆体
【0315】
【化60】



ジピロメテン化合物(A−1)
【0316】
(顔料分散液の調製)
前記ピロメテン化合物(A−1)を5.5質量部、C.I.Pigment Blue15:6を11.5質量部(平均一次粒子径55nm)、顔料分散剤BYK−161(BYK社製)を3.5質量部、溶媒として85質量部からなる混合物をビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液を得た。
顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、25nmであった。
【0317】
(カラーフィルタの作製)
1)下塗り層用着色感放射線性組成物溶液(レジスト溶液)の調製
下記組成の各成分を混合して溶解し、下塗り層用レジスト溶液を調製した。
<組成>
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 57.8部
・バインダー:(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル)共重合体(モル比=60/20/20)の41%乳酸エチル(EL)溶液
30.5部
・重合性化合物〔KAYARAD DPHA(日本化薬製)〕 10.2部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.006部
・フッ素系界面活性剤(F−475、DIC化学工業(株)製) 0.80部
・光重合開始剤〔TAZ−107(トリハロメチルトリアジン系光重合開始剤)、みどり化学(株)製〕 0.58部
【0318】
2)下塗り層付ガラス基板の作製
ガラス基板(コーニング1737)を0.5%NaOH水で超音波洗浄した後、水洗、脱水ベーク(200℃/20分)を行った。次いで、前記1)の下塗り層用レジスト溶液を洗浄したガラス基板上に膜厚2.0μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し、220℃で1時間加熱乾燥し、硬化膜(下塗り層)を得た。
【0319】
3)レジスト溶液の調製
前記1)で得られた下塗り層用レジスト溶液9.4gと、上記で調製した顔料分散液0.69gを混合し調製した。
【0320】
4)レジスト膜の形成
前記3)で得られた着色レジスト溶液を、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、10分間そのままの状態で待機させ、真空乾燥とプレベーク(prebake)(100℃80秒)を施して着色感放射線性組成物塗布膜(硬化性組成物層)を形成した。
【0321】
−スリット塗布条件−
・塗布ヘッド先端の開口部の間隙: 50μm
・塗布速度: 100mm/秒
・基板と塗布ヘッドとのクリヤランス: 150μm
・乾燥膜厚 1.75μm
・塗布温度: 23℃
【0322】
その後、2.5kWの超高圧水銀灯を用いて着色感放射線性組成物塗布膜を、線幅20μmのテスト用フォトマスクを用いてパターン状に露光し、露光後、塗布膜の全面を有機系現像液(商品名:CD、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の10%水溶液で被い、60秒間静止した。
静止後、純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、かかる露光(光硬化)処理及び現像処理を施した塗布膜を220℃のオーブンにて1時間加熱した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上にパターン状の着色硬化膜を形成してなるカラーフィルタを得た。
【0323】
<保存安定性評価>
着色感放射線性組成物溶液の23℃における粘度を、東機産業株式会社製E型粘度計を使用して測定した。該組成物を23℃の恒温層に1ヶ月間保存した後の粘度を測定した。調製後の粘度に対して、室温1ヶ月間保存後の粘度上昇の度合いを下記判定基準に従って評価した。結果を表3に示す。
−判定基準−
○:0%以上3%未満の粘度変化
△:3%以上10%未満の粘度変化
×:10%以上の粘度変化
【0324】
<耐熱性評価>
着色感放射線性組成物溶液を塗布した下塗り層付ガラス基板を、ホットプレートにより100℃で1時間加熱した後、色度計MCPD−1000(大塚電子(株)製)にて、加熱前後での色差(ΔEab)を測定し、下記判定基準にしたがって評価した。ΔEab値は、値が小さいほど耐光性が高いことを示す。結果を表3に示す。
−判定基準−
○:ΔEab値<6以下
△:6≦ΔEab値≦10
×:10<ΔEab値
【0325】
<現像性評価>
上記の露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表3に示す。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった
×:未露光部に、残渣が著しく確認された
【0326】
<耐光性評価>
着色感放射線性組成物溶液を塗布した下塗り層付ガラス基板に対し、キセノンランプを2万luxで10時間照射(20万lux・h相当)した後、照射前後での色差(ΔEab)を測定し、下記判定基準にしたがって評価した。ΔEab値は、値が小さいほど耐光性が高いことを示す。結果を表3に示す。
−評価基準−
○:ΔEab値<6
△:6≦ΔEab値≦10
×:10<ΔEab値
【0327】
<実施例19〜実施例32、比較例4〜比較例6>
実施例18において、カルボキシル基含有ピロール化合物と、ピロール化合物とを表3に示すように変更した以外は実施例18と同様にして、顔料分散液、着色感放射線性組成物を調製し、カラーフィルタを作製し、実施例18と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0328】
【化61】


実施例19〜実施例32、比較例4〜比較例6で使用したピロール化合物の構造式
【0329】
以下に実施例18〜実施例32及び比較例4〜比較例6で得られたジピロメテン化合物の構造式を示す。
【0330】
【化62】

【0331】
【化63】



CA−1
【0332】
【化64】

【0333】
【表3】

【0334】
<実施例33〜実施例47>
実施例18〜実施例32において、前記3)レジスト溶液を下記着色感放射線性組成物2に変更した以外は実施例18と同様にして実施例33〜実施例47の各カラーフィルタを作製し、実施例18と同様の評価を行った。
その結果、実施例33〜実施例47は、それぞれ対応する実施例18〜実施例32と同様の結果が得られた。
【0335】
<着色感放射線性組成物2>
・前記実施例18〜実施例32で調製した各顔料分散液 1000部
・重合性化合物;KAYARAD DPHA(日本化薬製) 100部
・光重合開始剤;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム 30部
・下記アルカリ可溶性バインダー(Mw35000) 100部
【0336】
【化65】

【0337】
・溶剤;PGMEA 300部
【0338】
<実施例48〜実施例62>
実施例33〜実施例47において、光重合開始剤 1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムを、IRGACURE OXE01(BASF社製)に変更した以外は、実施例18と同様にして実施例48〜実施例62の各カラーフィルタを作製し、実施例18と同様の評価を行った。
その結果、実施例48〜実施例62は、それぞれ対応する実施例18〜実施例32と同様の結果が得られた。
【0339】
以上の結果より、本発明のカルボン酸の製造方法を用いれば、カルボン酸の脱炭酸を抑制することが可能になり、カラーフィルタ用レジスト膜の現像性を損なわないジピロメテン化合物の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール基含有カルボン酸を溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程と、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程と、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加する塩基添加工程と、を含むカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
前記チオール基含有カルボン酸が、第二級カルボン酸または第三級カルボン酸である請求項1に記載のカルボン酸の製造方法。
【請求項3】
ピロール化合物と、チオール基含有カルボン酸とを溶媒に溶解させて溶液を調製する溶液調製工程、該溶液にラジカル捕捉剤を添加するラジカル捕捉剤添加工程、ラジカル捕捉剤を添加した該溶液に塩基を添加してカルボキシル基含有ピロール化合物を合成するカルボキシル基含有ピロール化合物合成工程、及び、得られたカルボキシル基含有ピロール化合物と、下記一般式(3)で表されるピロール化合物とを反応させてジピロメテン化合物を合成するジピロメテン化合物合成工程、を含むジピロメテン化合物の製造方法。
【化1】


一般式(3)中、R〜Rは、各々独立に水素原子又は置換基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に互いに結合して5員、又は6員の環を形成してもよい。R10は、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環を表す。Yは、硫黄原子、酸素原子、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、又はジアリールアミノ基を表す。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有ピロール化合物の合成工程で得られたピロール化合物における、脱炭酸化されたピロール化合物の含有量が、カルボキシル基含有ピロール化合物に対して1質量%未満である請求項3に記載のジピロメテン化合物の製造方法。
【請求項5】
(A)請求項3に記載のジピロメテン化合物の製造方法で得られたジピロメテン化合物、(B)顔料、(C)重合性化合物、(D)有機溶剤及び(E)光重合開始剤を含有する着色感放射線性組成物。
【請求項6】
前記(E)光重合開始剤が、オキシム開始剤である請求項5に記載の着色感放射線性組成物。
【請求項7】
支持体上に請求項5又は請求項6に記載の着色感放射線性組成物を硬化して得られた着色硬化膜。
【請求項8】
請求項7に記載の着色硬化膜を備えたカラーフィルタ。
【請求項9】
色分離に用いられる請求項8に記載のカラーフィルタ。
【請求項10】
請求項5又は請求項6に記載の着色感放射線性組成物を、支持体上に付与し着色感放射線性組成物層を形成する着色感放射線性組成物層形成工程と、前記着色感放射線性組成物層をパターン様に露光する露光工程と、露光後の前記着色感放射線性組成物層を現像してパターン状の着色硬化膜を形成する着色パターン形成工程と、を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項8又は請求項9のいずれかに記載のカラーフィルタを具備する固体撮像素子。
【請求項12】
請求項8又は請求項9のいずれかに記載のカラーフィルタを具備する液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−201643(P2012−201643A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68657(P2011−68657)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】