説明

カルボン酸を産生するパスツレラ科のメンバー

本発明は、元々はウシの第一胃から単離され、炭素源としてグリセロールを利用することができる、有機酸、特にコハク酸(SA)を産生する能力を有する、DD1と命名された新規細菌株;およびその能力を保持するそれから誘導された変異株;ならびに該微生物を利用することにより、有機酸、特にコハク酸を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元々はウシの第一胃から単離された、有機酸、特に、コハク酸(SA)を産生する能力を有し、炭素源としてグリセロールを利用することができる、DD1と命名された新規細菌株;およびその能力を保持する、それから誘導される変異株;ならびに該微生物を利用することにより、有機酸、特に、コハク酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスからのコハク酸(SA)の発酵生産は、この酸が合成樹脂の重要な構成要素であるか、またはさらに価値の高い低分子量化合物、特に、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ブタンジオール(BDO)、γ-ブチロラクトン(GBL)およびピロリドン(WO-A-2006/066839)の起源であるため、既に大きな注目を集めている。
【0003】
ウシの第一胃から単離されたSAを産生する細菌は、Leeら(2002a)により記載されている。この細菌は、非運動性、非胞子形成性、中等温度好性および好二酸化炭素性のグラム陰性桿菌または球桿菌である。16S rRNA配列に基づく系統発生分析および生理学的分析により、この株が新種としてマンヘイミア(Mannheimia)属に属することが示され、マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス(Mannheimia succiniciproducens)MBEL55Eと命名された。100%のCO2条件下で、それは6.0〜7.5のpH範囲で良好に増殖し、2:1:1の一定の比率でコハク酸、酢酸および蟻酸を産生する。マンヘイミア・スクシニシプロデューセンスMBEL55Eを、炭素源としてグルコースと共にCO2飽和条件下で嫌気的に培養した場合、7.5時間のインキュベーション中に、19.8 g/Lのグルコースが消費され、13.3 g/LのSAが産生された。
【0004】
しかしながら、前記生物の重大な欠点は、トリアシルグリセロール(TAG)の構成要素として、例えば、バイオディーゼル生産のトランスエステル化反応における副生成物として、容易に入手可能になる、グリセロールを代謝することができないことである(Dharmadiら、2006)。
【0005】
グリセロールからのコハク酸の発酵生産は、科学文献(Leeら、2001;Dharmadiら、2006)に記載されており、グリセロールについては、グルコースなどの一般的な糖よりも高い収率[産生されたSAの質量/消費された原材料の質量]が達成された(Leeら、2001)。しかしながら、グリセロールについて得られた空時収率は、グルコースについてよりも実質的に低く(0.14と1.0 g SA/[L h])、粗グリセロールを使用しなかった。わずかな事例においてのみ、発酵産物へのグリセロールの嫌気的代謝が記載されている。大腸菌は、酸性pH、発酵気体水素の蓄積の回避、および好適な培地組成などの非常に特異的な条件下でグリセロールを発酵することができる(Dharmadiら、2006、YazdaniおよびGonzalez 2007)。多くの微生物は、外部電子受容体の存在下でグリセロールを代謝(呼吸代謝)することができるが、それを発酵的に(すなわち、電子受容体の非存在下で)行うことができない微生物もいる。グリセロールの発酵代謝は、シトロバクター・フレウンジ(Citrobacter freundii)およびクレブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)などの腸内細菌科のいくつかの種において詳細に研究されている。これらの生物中でのグリセロールの異化作用は、高度に還元された生成物1,3-プロパンジオール(1,3-PDO)を合成するその能力に厳密に関連する(Dharmadiら、2006)。アナエロビオスピリルム・スクシニシプロデューセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)を用いるコハク酸へのグリセロールの変換が報告されている(Leeら、2001)。この研究により、炭素源としてグリセロールを用いることにより副生成物である酢酸をわずかに形成させるだけでコハク酸を製造し、かくして、コハク酸の精製を容易にすることができることが示された。約19 g/Lのコハク酸の産生をもたらす戦略である、グリセロールおよび酵母抽出物の断続的供給により、高収率が得られた。しかしながら、酵母抽出物中の未確認の栄養成分が、グリセロール発酵が起こるために必要であることに留意した。
【0006】
酵素ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)およびピルビン酸カルボキシラーゼ(PycA)により触媒されるオキサロ酢酸のカルボキシル化反応は、CO2源としてHCO3-を用いる(Peters-Wendisch, PGら)。従って、NaHCO3、KHCO3、NH4HCO3などの炭化水素源を発酵および培養培地に適用して、基質のコハク酸への代謝におけるHCO3-の利用性を改善することができる。グルコースからのコハク酸の産生は、今までのところ、従来技術におけるHCO3-の添加に依存することは判明していなかった。
【0007】
嫌気性生物のバイオマス生産は、発酵経路から産生されるATPの量により制限される。嫌気性生物中でのグリセロールのバイオマス収率は、グルコース、フルクトースなどのヘキソース、キシロース、アラビノースなどのペントースまたはスクロースもしくはマルトースなどの二糖類などの糖類のものよりも低い(Leeら、2001、Dharmadi、2007)。
【0008】
しかしながら、糖類は、理論的には、ポリオールであるグリセロールと比較して、糖類の還元状態がより低いことに起因して、グリセロールより有意に低い収率でコハク酸に変換され得る。糖類とグリセロールの組合せは、コハク酸産生嫌気性生物において機能する(Leeら、2001)が、コハク酸力価は28 g/lに達することがないことがわかった。
【0009】
従って、グリセロールから、有機酸、特に、SAを産生する能力を有するさらなる細菌株の必要性が存在する。特に、そのような株は、特に、例えば、バイオディーゼル製造に由来する粗グリセロールを予め精製することなく用いることができる場合、グリセロールから高い生産性で前記酸を産生するべきである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の課題は、グリセロール、特に、粗グリセロールからコハク酸を産生する能力を有する細菌株を提供することである。
【0011】
前記課題は、驚くべきことに、所望の代謝特性を有する、DD1と命名された新規細菌株を単離した本発明者らにより解決された。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】DD1に関する系統樹を示す。
【図2】DD1の16S rDNA配列(配列番号1)を示す。
【図3】DD1の23S rDNA配列(配列番号2)を示す;「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL55Eの対応する6個の個々の配列に対するそのアラインメント(式中、DD1配列(下)とMBEL55E配列との差異を強調する)を別添の添付物Aに示す。
【図4】DD1の光学顕微鏡写真を示す。
【図5】様々な初期グルコース濃度でのDD1のNH4OH制御されたバッチ式培養を示す。
【図6】様々な温度およびpH値でのDD1のNH4OH制御されたバッチ式培養を示す。
【図7】DD1のNH4OH制御されたバッチ式培養を示す。図は、酵母抽出物(Y)、ペプトン(P)およびトウモロコシ浸出液(コーンスティープリカー)(C)の初期レベル[g/L]を表す。
【図8】ペプトンを用いておよび用いずにDD1のNH4OH制御されたバッチ式培養において得られた副生成物を示す。
【図9】炭素源としてグルコースを用いたDD1の好気的バッチ式培養の結果を示す。
【図10】Leeら、2002aおよび2002bにより記載された、グルコースとのCO2飽和条件下でのDD1の嫌気的バッチ式培養の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態は、ウシの第一胃から単離することができ、炭素源としてグリセロール(粗グリセロールを含む)を利用することができる、DD1と命名された細菌株;およびその能力を保持するそれから誘導された変異株に関する。
【0014】
好ましくは、前記株は、特に、嫌気的条件下で、グリセロール(粗グリセロールを含む)からコハク酸を産生する能力を有する。
【0015】
特に、この新規株は、配列番号1の16S rDNAもしくは少なくとも96、97、98もしくは99.9%の配列相同性を示す配列および/または配列番号2の23S rDNAもしくは少なくとも95、96、97、98、99もしくは99.9%の配列相同性を示す配列を有する。
【0016】
2個のヌクレオチド配列間の「同一性」または「相同性」は、例えば、バイオインフォマティックスソフトウェアパッケージEMBOSS (バージョン5.0.0、http://emboss.sourceforge.net/what/)に由来するneedleプログラムを、デフォルトパラメーター:
・ギャップオープン(ギャップを開くペナルティ):10.0
・ギャップエクステンド(ギャップを拡張するペナルティ):0.5
・データファイル(パッケージに含まれるスコアリングマトリックスファイル):EDNAFUL
と共に援用して算出された同一性(むしろ類似する配列について)などの、整列された配列の完全長に渡る残基の同一性を意味する。
【0017】
DD1株の23S rDNA配列と、「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL55Eの対応する6個の個々の配列とのアラインメントを、添付物Aに示す。その中で、DD1配列(下)とMBEL55E配列の6個の23S rDNA配列との差異を強調する。DD1配列(配列番号2も参照)は、DD1のPCR増幅された23S rDNAを配列決定することにより得られる配列情報である。配列決定実験により、DD1から誘導可能な23S rDNA情報を、DD1株の特徴として用いることができることを示唆する一義的な配列情報が得られた。前記DD1配列は、それぞれ個々のMBEL55E配列と、少なくとも6個の配列位置において異なる。最も有意な差異は、それぞれのMBEL55E配列(近隣位置1325)への約133 bpの挿入であり、これはDD1配列においては失われている。さらに有意な特異的配列差異は、位置451、1741、2040、2041、2045および2492(アラインメント中で用いた番号)である。
【0018】
また、本発明の株は、好ましくは以下のさらなる代謝特性のうちの少なくとも1個を示す:
a)特に、嫌気的条件下での、スクロースからのコハク酸の産生;
b)特に、嫌気的条件下での、マルトースからのコハク酸の産生;
c)特に、嫌気的条件下での、D-フルクトースからのコハク酸の産生;
d)特に、嫌気的条件下での、D-ガラクトースからのコハク酸の産生;
e)特に、嫌気的条件下での、D-マンノースからのコハク酸の産生;
f)特に、嫌気的条件下での、D-グルコースからのコハク酸の産生;
g)特に、嫌気的条件下での、D-キシロースからのコハク酸の産生;
h)特に、嫌気的条件下での、L-アラビノースからのコハク酸の産生;
i)キシリトール、イノシトールおよびソルビトールの不使用;
j)好気的および嫌気的条件下での増殖;
k)75 g/L以上の初期グルコース濃度での増殖;
l)アンモニア許容性。
【0019】
特に、前記株は、前記のさらなる特徴のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11個または全部を含む。
【0020】
DD1を、例えば、糖類とポリオールであるグリセロールを同時に代謝する能力についてさらに分析した。DD1はマルトースとグリセロールを同時代謝し、バイオマス形成、コハク酸形成ならびにマルトースとグリセロールの同時利用をもたらすことがわかった。
【0021】
用語「酸」(本明細書で言及される有機モノもしくはジカルボン酸、すなわち、酢酸、乳酸およびコハク酸の文脈において)は、その最も広い意味で理解される必要があり、その塩、例えば、NaおよびK塩などのアルカリ金属塩、またはMgおよびCa塩などのアルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩;またはその酸の無水物も包含する。
【0022】
用語「粗グリセロール」は、例えば、バイオディーゼルまたはバイオエタノールの製造に関する、グリセロールが副生成物であるプロセスにおいて発生する未処理のグリセロールを含む流れと理解される必要がある。
【0023】
好ましい実施形態においては、本発明は、DSMZに寄託され、受託番号DSM 18541を有する細菌株DD1およびそれから誘導される変異株または突然変異株に関する。前記変異体および突然変異体は、グリセロール、スクロース、マルトース、D-グルコース、D-フルクトースおよび/またはD-キシロースからコハク酸(SA)を産生する少なくとも前記能力を保持する。特に、それらは、配列番号1の16S rDNAまたは少なくとも96、97、98、99もしくは99.9%の配列相同性を示す配列および/または配列番号2の23S rDNAまたは少なくとも95、96、97、98、99もしくは99.9%の配列相同性を示す配列を有してもよい。前記DD1株の変異体または突然変異体は、MBEL55E株のものから23S rDNA配列を識別する上記で考察された少なくとも1個の配列差異を維持しながら、配列番号2のものとは異なる23S rDNAを有してもよい。例えば、そのような変異体または突然変異体においては、必要に応じて、添付物1のアラインメントに記載の他の特異的配列差異の1個以上と組合わせた、132 bpの挿入物が失われている。
【0024】
別の実施形態に従えば、本発明の細菌株は、少なくとも0.5 g/g〜約1.28 g/gの収率係数YP/S;例えば、少なくとも0.6 g/g、少なくとも0.7 g/g、少なくとも0.75 g/g、少なくとも0.8 g/g、少なくとも0.85 g/g、少なくとも0.9 g/g、少なくとも0.95 g/g、少なくとも1.0 g/g、少なくとも1.05 g/g、少なくとも1.1 g/g、少なくとも1.15 g/g、少なくとも1.20 g/g、少なくとも1.22 g/g、少なくとも1.24 g/gの収率係数YP/Sで、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源を、コハク酸に変換する。
【0025】
さらに別の実施形態に従えば、本発明の細菌株は、少なくとも1.0 g/g、または1.0 g/gを超える、または1.05 g/gを超える、または1.1 g/gを超える、または1.15 g/gを超える、または1.20 g/gを超える、または1.22 g/gを超える、または1.24 g/gから最大で約1.28 g/gの収率係数YP/Sで、少なくとも28 g/Lのグリセロールを少なくとも28.1 g/Lのコハク酸に変換する。例えば、28 g/Lのグリセロールを、最大で約40または最大で約35 g/Lのコハク酸に変換することができる。
【0026】
さらに別の実施形態に従えば、本発明の細菌株は、少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸、または少なくとも0.65、少なくとも0.7 g gDCW-1h-1、少なくとも0.75 g gDCW-1h-1、または少なくとも0.77 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源を、コハク酸に変換する。
【0027】
さらに別の実施形態に従えば、本発明の細菌株は、少なくとも2.2 g/(L h)または少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.25、少なくとも3.5または少なくとも3.7 g/(L*h)のコハク酸の、コハク酸の空時収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源をコハク酸に変換する。
【0028】
さらに別の実施形態に従えば、本発明の細菌株は、少なくとも2.2 g/(L h)、または少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.25、少なくとも3.5または少なくとも3.7 g/(L*h)のコハク酸の空時収率で、少なくとも28 g/Lのスクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択されるすくなくとも1種の炭素源をコハク酸に変換する。
【0029】
別の実施形態に従えば、本発明の細菌株は、少なくとも0.6 g gDCW-1h-1もしくは少なくとも0.65もしくは少なくとも0.7 g gDCW-1h-1のコハク酸、または少なくとも0.77 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的産生収率、および少なくとも2.2 g/(L h)、または少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.25、少なくとも3.5もしくは少なくとも3.7 g/(L*h)のコハク酸の空時収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源をコハク酸に変換する。
【0030】
上記で定義された特許請求された細菌株の別の実施形態においては、炭素源はグリセロールまたはグリセロールと、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-、マンノース、D-グルコース、D-キシロース、およびL-アラビノースから選択される少なくとも1種のさらなる炭素源との混合物である。
【0031】
本明細書に記載の様々な収率パラメーター(「収率」もしくはYP/S;「特異的生産性収率」;または空時収率(STY))は当業界でよく知られており、例えば、SongおよびLee、2006により記載のように決定される。
【0032】
「収率」および「YP/S」(それぞれ、産生された生成物の質量/消費された材料の質量で表される)を、本明細書では同義語として用いる。
【0033】
特異的生産性収率は、乾燥バイオマス1 gあたり、1時間および発酵培地(L)あたりに産生されるコハク酸などの生成物の量を記載する。DCWとして記述される乾燥細胞重量の量は、生化学反応において生物学的に活性な微生物の量を記載する。この値は、g DCWあたり、1時間あたりの生成物(g)(すなわち、g gDCW-1h-1)として与えられる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、有機酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のためのプロセス(方法)であって、
a)吸収可能(同化可能)な炭素源を含む培地中で特許請求の範囲のいずれか1項で定義された細菌株をインキュベートし、二酸化炭素の存在下で、約10〜60℃もしくは20〜50℃もしくは30〜45℃の範囲の温度、5.0〜9.0もしくは5.5〜8.0もしくは6.0〜7.0のpHで該株を培養する工程;ならびに
b)該培地から、前記有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程、
を含む、前記プロセスに関する。
【0035】
前記プロセスを、断続的または連続的に実施し、酸産生の過程を、従来の手段、例えば、HPLCまたはGC分析によりモニターすることができる。
【0036】
好ましくは、前記プロセスにより、コハク酸(SA)を、好ましくは嫌気的条件下で製造する。嫌気的条件を、従来の技術により、例えば、反応媒体の構成要素を脱気し、二酸化炭素もしくは窒素またはその混合物、必要に応じて、水素を、例えば、0.1〜1または0.2〜0.5 vvmの流速で導入することにより嫌気的条件を維持することにより確立することができる。
【0037】
好気的条件を、従来の技術により、例えば、例えば、0.1〜1または0.2〜0.5 vvmの流速で空気または酸素を導入することにより確立することができる。
【0038】
必要に応じて、0.1〜1.5バールのわずかに過剰の圧力を印加することができる。
【0039】
前記プロセスにおいては、前記の吸収可能な炭素源を、好ましくは、グリセロール、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノースおよびその混合物もしくは該化合物の少なくとも1種を含む組成物から選択するか、またはデンプン、セルロース、ヘミセルロースおよび/もしくはリグノセルロースの分解産物から選択する。
【0040】
吸収可能な炭素源の初期濃度を、好ましくは、5〜100 g/lの範囲の値に調整し、培養の間に該範囲に維持することができる。
【0041】
反応媒体のpHを、例えば、NH4OH、NH4HCO3、(NH4)2CO3、NaOH、Na2CO3、NaHCO3、KOH、K2CO3、KHCO3、Mg(OH)2、MgCO3、Mg(HCO3)2、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(HCO3)2、CaO、CH6N2O2、C2H7Nなどの好適な塩基、または他の塩基およびその混合物の添加により制御することができる。この塩基の物理的状態は、水性溶液、水性懸濁液、気体または固体であってよい。
【0042】
SAを製造するために特に好適な条件は、
炭素源:グルコース、キシロースもしくはマルトースおよび/またはグリセロール(粗グリセロールなど)、
温度:30〜45℃、
pH:上記の塩基、好ましくはNa2CO3、NaHCO3、Mg(HCO3)2、Ca(HCO3)2またはMg(OH)2、MgCO3、Ca(OH)2、CaCO3などのHCO3-源により制御される、6.0〜7.0、
供給気体:CO2
である。
【0043】
本発明の別の実施形態は、コハク酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のためのプロセスであって、
a)少なくとも1種の吸収可能な炭素源を含む培地中で細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;
b)該培地から、該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程;
を含み、
少なくとも1.0 g/g、もしくは1.0 g/gを超える、もしくは1.05 g/gを超える、もしくは1.1 g/gを超える、もしくは1.15 g/gを超える、もしくは1.20 g/gを超える、もしくは1.22 g/gを超える、もしくは1.24を超える、最大で1.28 g/gの収率係数YP/S、例えば、少なくとも0.6 g/g、少なくとも0.7 g/g、少なくとも0.75 g/g、少なくとも0.8 g/g、少なくとも0.85 g/g、少なくとも0.9 g/g、少なくとも0.95 g/g、少なくとも1.0 g/g、少なくとも1.05 g/g、少なくとも1.1 g/g、少なくとも1.15 g/g、少なくとも1.20 g/g、少なくとも1.22 g/g、もしくは少なくとも1.24 g/gの収率係数YP/Sで、少なくとも28 g/Lのグリセロールを少なくとも28.1 g/Lのコハク酸に変換することをさらに特徴とする、前記プロセスを提供する。例えば、28 g/Lのグリセロールを、最大で約40または最大で約35 g/Lのコハク酸に変換することができる。
【0044】
別の実施形態においては、本発明は、コハク酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のためのプロセスであって、
a)少なくとも1種の吸収可能な炭素源を含む培地中で細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;
b)該培地から、該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程;
を含み、
少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸または少なくとも0.65もしくは少なくとも0.7 g gDCW-1h-1のコハク酸、または少なくとも0.75 g gDCW-1h-1のコハク酸、または少なくとも0.77 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される炭素源をコハク酸に変換することをさらに特徴とする、前記プロセスを提供する。
【0045】
別の実施形態においては、本発明は、コハク酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のためのプロセスであって、
a)少なくとも1種の吸収可能な炭素源を含む培地中で細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;
b)該培地から、該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程;
を含み、
少なくとも2.2 g/(L h)、または少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.25、少なくとも3.5もしくは少なくとも3.7 g/(L*h)のコハク酸のコハク酸に関する空時収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される炭素源をコハク酸に変換することをさらに特徴とする、前記プロセスを提供する。
【0046】
別の実施形態においては、本発明は、コハク酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のためのプロセスであって、
a)少なくとも1種の吸収可能な炭素源を含む培地中で細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;
b)該培地から、該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程;
を含み、
少なくとも2.2 g/(L h)、または少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.25、少なくとも3.5もしくは少なくとも3.7 g/(L*h)のコハク酸に関する空時収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも28 g/Lの炭素源をコハク酸に変換することをさらに特徴とする、前記プロセスを提供する。
【0047】
別の実施形態においては、本発明は、コハク酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のためのプロセスであって、
a)少なくとも1種の吸収可能な炭素源を含む培地中で細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;
b)該培地から、該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程;
を含み、
少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸または少なくとも0.65もしくは少なくとも0.7 g gDCW-1h-1のコハク酸、または少なくとも0.75 g gDCW-1h-1のコハク酸、または0.77 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率および少なくとも2.2 g/(L h)、または少なくとも2.5、少なくとも2.75、少なくとも3、少なくとも3.25、少なくとも3.5もしくは少なくとも3.7 g/(L*h)のコハク酸に関する空時収率で、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される炭素源をコハク酸に変換することをさらに特徴とする、前記プロセスを提供する。
【0048】
コハク酸を製造する上記で同定されたプロセスの別の実施形態においては、炭素源はグリセロールまたはグリセロールと、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-グルコース、D-キシロース、およびL-アラビノースから選択される少なくとも1種のさらなる炭素源との混合物である。
【0049】
さらに好ましい条件は、添付の実施例および図面から誘導されるであろう。
【0050】
産生されるコハク酸および/またはコハク酸塩を、当業界で公知の方法、例えば、結晶化、濾過、電気透析、クロマトグラフィーなどにより従来の様式で単離することができる。例えば、沈降物の中和および濾過のために水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウムまたは炭酸水素カルシウムを用いることにより、発酵の間に発酵器中でコハク酸カルシウム生成物として沈降させることにより、それらを単離することができる。
【0051】
所望のコハク酸産物を、硫酸を用いるコハク酸塩の酸性化、次いで、濾過を行って硫酸カルシウム(石膏)を除去することにより沈降したカルシウムもしくはコハク酸塩から回収するか、または沈降する。得られる溶液を、イオン交換クロマトグラフィーによりさらに精製して、望ましくない残留イオンを除去することができる。
【0052】
本発明の別の実施形態は、コハク酸および/またはコハク酸塩、特に、アンモニウム塩の製造のためのプロセスであって、上記で定義されたコハク酸の発酵生産および好適な塩基、特に、アンモニア、またはその水性溶液などの無機塩基を用いてpHを制御することを含む前記プロセスに関する。
【0053】
本発明の別の実施形態は、テトラヒドロフラン(THF)および/または1,4-ブタンジオール(BDO)および/またはγ-ブチロラクトン(GBL)の製造のためのプロセスであって、
a)コハク酸および/もしくはコハク酸塩、例えば、上記で定義されたアンモニウム塩の発酵生産、ならびに
b1)得られる遊離酸のTHFおよび/もしくはBDOおよび/もしくはGBLの直接触媒的水素化または
b2)得られる遊離コハク酸および/もしくはコハク酸アンモニウム塩の、その対応するジ-低級アルキルエステルへの化学的エステル化ならびにその後の該エステルのTHFおよび/もしくはBDOおよび/もしくはGBLへの触媒的水素化、
を含む前記プロセスに関する。
【0054】
低級アルキルは、好ましくは、直鎖もしくは分枝鎖C1-C6-、好ましくは、C1-C4-アルキル残基、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ならびにn-ペンチルおよびn-ネキシルおよびその分枝状類似体である。
【0055】
本発明の別の実施形態は、ピロリドンの製造のためのプロセスであって、
a)上記で定義されたコハク酸アンモニウム塩の発酵生産、および
b)自体公知の様式、例えば、WO-A-2006/066839(この書類は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のような、コハク酸アンモニウム塩のピロリドンへの化学的変換、
を含む前記プロセスに関する。
【0056】
好ましい実施形態においては、吸収可能な炭素源として用いられる前記グリセロールは、粗グリセロールである。
【0057】
SAの直接的水素化に関するさらなる詳細
直接触媒的水素化を実施するための好適な実験条件はよく知られており、例えば、本明細書に組み入れられるものとする米国特許第4,550,185号に記載されている。
【0058】
当業者にはよく知られたプロセス、装置および溶媒などの補助を用いて、自体公知の様式でSAを水素化する。特に、連続式またはバッチ式液相水素化を、酸水素化にとって好適な異種触媒の存在下で実行する。当業者であれば、最適なプロセスパラメーターを、許容できない努力なしに確立することができる。例えば、反応温度は、約100〜約300℃の範囲、好ましくは約130〜285℃の範囲であり、圧力は約20〜350バール、例えば、100〜250バールである。水素化反応に用いることができる触媒は、当業者には公知である。例えば、様々なパラジウム/ルテニウム/炭素触媒を用いることができる。水素化反応に用いることができる溶媒は当業者には公知である。例えば、水性溶媒媒体を用いることができる。
【0059】
SAのエステル化後の水素化に関するさらなる詳細
化学的エステル化、次いで、直接触媒的水素化を実施するための好適な実験条件はよく知られており、例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとする欧州特許出願第06007118.0に記載されている。
【0060】
a)エステル化プロセス:
反応蒸留を含んでもよいエステル化プロセスを、様々な設計において自体公知の装置を用いて実施することができる。
【0061】
例えば、トレイまたはパッキングの取り付けにより達成される好適な数の理論的段階を有する精留カラムを含む、連続様式で操作されるエステル化プラントを用いることができる。蒸発装置ループ中で蒸発させた供給アルカノールがカラムの汚水槽に付着した結果として、安定状態の温度がカラム中で形成したらすぐに、SAのアンモニウム塩を含む水性電荷を、貯蔵容器からカラムの頂部に供給する。この反応は、下向きのアンモニウム塩を含有する液体の向流を形成し、上向きのアルカノールを含有する蒸気相を濃縮する。エステル化反応を触媒するために、同種触媒をアンモニウム塩の初期充填に添加することができる。あるいは、異種触媒をカラム内部に提供することができる。形成さえるカルボン酸エステルは、プロセス条件下で液体であり、カラムの下端を通って蒸留カラムの汚水槽中に通過し、この汚水槽から連続的に引き出される。気体成分、例えば、アルカノール-水および/またはアンモニアを含む共沸混合物を、反応カラムから、および従って、カラムの頂部の反応平衡物から除去する。
【0062】
当業者であれば、上記の特定の実子形態のさらなる改変を、許容できない努力なしに実行することができる。
【0063】
当業者であれば、本発明に従うエステル化プロセスのための好適なプロセスパラメーター範囲を、用いられる装置の配置、例えば、用いられるカラム内部の型、反応物の型および量、必要に応じて、用いられる触媒の型および量に応じて容易に決定することができる。例えば、それに限定されるものではないが、個々のパラメーターを、以下のパラメーター範囲内に設定することができる:
カラム温度:0〜300℃、特に、40〜250℃、または70〜200℃、
圧力:0.1〜6バール、特に、標準的な圧力、
滞留時間:数秒(例えば、1〜60秒)から数時間(例えば、1〜15時間)、より好ましくは、数分(例えば、5〜20分)から2時間。
【0064】
b)水素化プロセス:
本発明に従って調製されたSAエステルを、当業者には公知のプロセス、装置および触媒などの補助を用いて自体公知の様式で水素化する。
【0065】
特に、連続式またはバッチ式気相水素化を、エステル水素化にとって好適な異種触媒の存在下で実行する。当業者であれば、最適なプロセスパラメーターを許容できない努力なしに特定のエステルについて確立することができる。例えば、反応温度は、約100〜約300℃の範囲、好ましくは、約200〜280℃の範囲にあり、圧力は約5〜100バール、例えば、10〜50バールである。反応物と水素のモル比を、約1:100〜約1:2000、例えば、1:800〜1:1500の範囲内に設定する。
【0066】
本発明の水素化反応のために使用可能な触媒は、当業者には公知である。例えば、様々な銅触媒を用いることができる。従来技術は、例えば、Davy Process Technology Ltd., Englandから85/1の名称の下で取得可能な還元銅クロマイト触媒の使用を記載している。しかしながら、本発明に従う特に好適な触媒は、支持された酸化銅触媒、アルミナまたはシリカ支持体材料に適用される酸化銅である。銅触媒を用いるコハク酸のBDO(1,4-ブタンジオール)/GBL (γ-ブチルラクトン)/THFへの水素化の例は、以下の論文:Schlander, Jan., Feb. 2000, University of Karlsruhe、「Gasphasenhydrierung von Maleinsauredimethylester zu 1,4-Butandiol, gamma-Butyrolacton und Tetrahydrofuran an Kupfer-Katalysatoren」にも記載されている。
【0067】
発酵工程に関するさらなる詳細
本発明に従って用いられる発酵を、攪拌発酵器、気泡カラムおよびループ反応器中で実施することができる。攪拌器の型および幾何学的設計を含む可能な方法の型に関する包括的な概説を、「Chmiel: Bioprozesstechnik: Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik, Band 1」に見出すことができる。このプロセスにおいては、利用可能な典型的な変形は、当業者には公知の以下の変形であるか、または、例えば、バイオマスの再利用を含むか、もしくは含まないバッチ式、供給バッチ式、反復供給バッチ式もしくは他の連続式発酵など、「Chmiel, Hammes and Bailey: Biochemical Engineering」で説明されている。良好な収率を達成するために、産生株に応じて、空気、酸素、二酸化炭素、水素、窒素または好適な気体混合物を用いる散布を行うことができる/行わなければならない。
【0068】
本発明に従うプロセスにおける発酵培地中での化学的変換の前に、発酵培地を予備処理することができる;例えば、培地のバイオマスを除去することができる。例えば、濾過、沈降および浮遊などのバイオマスを除去するプロセスが当業者には公知である。結果として、例えば、遠心分離機、分離装置、デカンター、フィルターを用いて、または浮遊装置中でバイオマスを除去することができる。価値ある生成物を最大限回収するためには、例えば、透析濾過の形態でバイオマスを洗浄するのが望ましいことが多い。この方法の選択は、発酵培地中のバイオマス含量およびバイオマスの特性、ならびにまた、バイオマスと価値ある生成物との相互作用に依存する。一実施形態においては、発酵培地を滅菌するか、または低温殺菌することができる。
【0069】
さらなる実施形態においては、発酵培地を濃縮する。要件に応じて、この濃縮をバッチ式で、または連続的に行うことができる。圧力および温度範囲を、第1に生成物の損傷が起こらないように、第2に装置およびエネルギーの最低限の使用が必要となるように選択すべきである。特に、多段階蒸発のための圧力および温度レベルの熟練した選択により、エネルギーの節約が可能になる。
【0070】
装置的な用語においては、攪拌タンク、流下膜式蒸発器、薄膜蒸発器、強制フラッシュ循環蒸発器および他の蒸発器型を、自然式または強制循環様式で用いることができる。
【0071】
結果として、用語「発酵培地(ブロス)」は、発酵プロセスに基づき、例えば、本明細書に記載のように、徐々に増加していないか、または徐々に増加した水性溶液を意味すると理解される。
【0072】
本発明を、以下の実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例は、例示目的のためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0073】
(実施例)
【実施例1】
【0074】
DD1の単離
単離のために、サンプリング、富化培養、純粋な培養物の単離およびコハク酸(SA)産生に関する純粋な培養物の試験の工程を含む4工程の手法を用いた。
【0075】
1. 実験手法
1.1. サンプリング
サンプルをウシの第一胃から、消化スラッジを都市下水プラントおよび搾りかすから、残りをワイン製造から取得した。これらの生息環境は、比較的高濃度の有機物質と酸素を含まないCO2に富む雰囲気を特徴とする。サンプル、その起源および取り扱いに関するより詳細な情報を以下に与える。
【0076】
a)第一胃の内容物を、Institut fur Tierernahrung , University of Hohenheimでカニューレを挿入されたホルスタイン牛から取得した。in situでのpHおよび温度は、それぞれ6.7および37℃であった。この材料を滅菌濾過布を通して濾過し、CO2を供給し、輸送のためにすぐに氷上で冷却し、同じ日に加工した。
【0077】
b)消化スラッジを、Mannheim-Sandhofenにある都市下水プラントの消化棟から取得した。in situでのpHおよび温度は、それぞれ7.1および36.3℃であった。サンプルを氷上で冷却し、同じ日に加工した。スラッジ中の気相の主要成分はメタンと二酸化炭素である。
【0078】
c)搾りかすを、ドイツ南西部の畑から2005年11月に収集した。赤ぶどう(Spatburgunder)から得た搾りかすを、大きい在庫の中央から取得した。この領域は嫌気的であるべきである。白ぶどう(Muller-Thurgau)から得た搾りかすを、アルコール発酵が既に進行中である保存容器から取得した。
【0079】
1.2. 富化培養
富化培養を、唯一の炭素源としてD-グルコース、D-キシロースおよびL-アラビノースを含む異なる培地上で実施した。培地組成を以下に記載する。
【表1】

【0080】
MgCO3および水(0.75 gおよび40 mL)を、100 mLの血清ボトル中でオートクレーブした(121℃、20分)。酵母抽出物、ペプトン、炭素源、NH4SO4およびK2HPO4を、全部別々にオートクレーブした。Ca、MgおよびNa塩化物については、1つの保存溶液を調製し、これをオートクレーブした。酸素が存在しないことを確保するために、以下の標準的な手順を用いた:
・培養培地を、オートクレーブ後に滅菌および無酸素CO2を供給した;
・嫌気ボックス(Meintrup DWS Laborgerate GmbH, Lahden-Holte, Germany)を、嫌気的条件下で実施する必要がある実験に用いた;
・寒天プレートのインキュベーションを嫌気ジャー中で行った。嫌気的条件を確保するために、Anaerocult(登録商標)A (Merck)を用いた。
【0081】
第一胃サンプルおよび消化スラッジを、接種材料として希釈せずに用いた。50 gの固形搾りかすを、100 mLの0.9% NaCl溶液中に希釈し、濾過して粗い粒子を除去した後、接種材料として用いた。
【0082】
100 mLの血清ボトル(Zscheile & Klinger, Hamburg, Germany)に、50 mLの培地および2 mLの対応する接種材料を充填し、ブチルゴムストッパー(Ochs GmbH, Bovenden/Lenglern, Germany)で閉じ、CO2を供給した。約0.8バールの超過気圧を調整した。ボトルを振とうインキュベーター(160 rpm、振とう直径:2.5 cm)中、37℃でインキュベートした。
【0083】
グルコース、キシロースおよびアラビノースの消費ならびにコハク酸および副生成物の形成を、RI-検出を用いる培養培地の非希釈無細胞上清のHPLC分析を介して定量した。培地サンプルを、ブチルゴムプラグを通して滅菌シリンジを用いて取得し、細胞分離を濾過(0.22μm)により実施した。300 x 7.8 mmのI.D. Column Aminex HPX-87 H(Biorad)および5 mmのH2SO4を、それぞれ固定相および移動相として用いた。カラムの温度は30℃であり、流速は0.5 mL/分であった。
【0084】
1.3. 純粋な培養物の単離
富化培養物からの純粋な培養物の単離を、寒天プレート上での反復振とうにより達成した。
【0085】
1.4. コハク酸産生に関する純粋な培養物の試験
純粋な培養物を、SA産生について液体培養物中で試験した。糖の消費ならびにSAおよび副生成物の形成を、HPLCにより定量した。培養およびHPLC条件は、上記の節「富化培地」に記載のものと同じであった。
【0086】
2. 結果
2.1. 推奨される富化条件
以下の表は、これらの実験条件をまとめたものであり、コハク酸(SA)産生菌の富化にとって推奨される。
【表2】

【0087】
第一胃の内容物からのSA産生菌の富化にとっては、最良の炭素源はアラビノースである(SA産生を示す富化培養物は3/3、グルコースについては0/3、キシロースについては2/3)。その結果を以下の表にまとめる。富化培地へのイオノフォア抗生物質ラサロシドおよびモネンシンの添加により、実質的により高いSA産生(17時間で1.9〜5.4対0.9〜1.2 g/L)ならびに乳酸およびプロピオン酸のより少ない産生が得られた。従って、これらの結果は、SAを産生する微生物を、富化培地にこれらの化合物を添加することにより実際に託すことができることを確認するものである(Leeら、2002a)。MgCO3で緩衝化された富化培養物は、TRISを用いる試験よりも高いSA産生を示した(17時間で1.9〜5.4対0.9〜1.2 g/L)。おそらく、これはi)MgCO3のより高いバッファー能力、ii)より低い溶解性に起因する、より低い浸透圧およびiii)SAの生合成にとって必要である炭酸イオンからのCO2の放出により引き起こされる。
【表3】

【0088】
消化スラッジからのSA産生菌の富化のために、試験した唯一の炭素源はアラビノースであった。その結果を以下の表にまとめる。これらの実験は、おそらく、プロピオン酸を産生する細菌による基質の枯渇およびSAの消費を防止するためには、24時間以下の短いインキュベーション時間が必要であることを示唆していた:
コハク酸2-+ H2O→プロピオン酸-+ HCO3-(Janssen, 1991)。
【表4】

【0089】
搾りかすから得た富化培養物において得られた結果を、以下の表にまとめる。搾りかすからのSA産生菌の富化は、赤ぶどう(Spatburgunder型)に由来する搾りかすを用いた場合にのみ成功した。おそらくワイン酵母により引き起こされる、エタノール産生を抑制するために、富化培地にアンホテリシンBを添加することが絶対的に必要である。グルコースおよびアラビノースは両方とも好適な炭素源であるが、キシロースはそうではなかった。SA産生を明白に検出するのに必要なインキュベーション時間は、第一胃および消化スラッジに由来するサンプル材料に関するものよりも実質的に高かった。
【表5】

【0090】
2.2. 富化実験に由来する最良の結果
SA産生菌に関する富化培養物中で得られた最良の結果を、以下の表6に列挙する。
【表6】

【0091】
前記表は、3つのサンプル材料のそれぞれについて、SAを産生する富化培養物を受容することができることを示している。消化スラッジから生じる富化培養物は、第一胃および搾りかすに由来するものよりも高い空時収率を示した(0.4対0.2および0.1 g/[L h])。しかしながら、SAを産生する単離物は、接種材料として第一胃材料を含むSAを産生する富化培養物からのみ得られた。消化スラッジおよび搾りかすに由来するSA産生菌の見かけの単離物には、より洗練された戦略が必要である。
【0092】
2.3. コハク酸を産生する単離株
純粋な培養実験におけるSA産生を示す最良の単離株(=純粋な培養物)およびその特性を、以下の表にまとめる。最も高いSA濃度(8.8 g/L)および空時収率(0.6 g/[L h])は、第一胃単離株であるDD1について達成された。
【表7】

【0093】
3. 結論
確立された手順は、第一胃、消化スラッジおよび搾りかすからのSA産生菌の富化にとって好適である。しかしながら、SAを産生する単離株は、接種材料として第一胃材料を含むSAを産生する富化培養物からのみ得られた。最も有望な単離株は、第一胃の細菌DD1である。それは、SA産生のためにグルコースとアラビノースを用いる。まだ最適化されていない条件下で、ほぼ9 g/LのSAが15 g/Lのアラビノースから産生される。図4は、光学顕微鏡を用いて撮られたDD1の写真を示す。
【実施例2】
【0094】
DD1の細胞バンク調製物
1. 培地の調製
培養培地の組成を表8に記載する。
【表8】

【0095】
5 gの酵母抽出物、5 gのペプトン、MgCO3および(固形培地のため)12 gのBacto-Agarを、900 mLの蒸留水中で混合し、オートクレーブした(20分)。約65℃に冷却した後、不足成分を滅菌保存溶液として添加した。グルコース、硫酸アンモニウムおよびK2HPO4を全て別々にオートクレーブした。Ca、MgおよびNaの塩化物を一緒にオートクレーブした。
【0096】
2. MCBの調製
2個の寒天プレートに、DD1を新鮮に接種し、嫌気ジャー(Anaerocult A, Merck)中、37℃で一晩インキュベートした。バイオマスをプレートから取得し、20 g/Lのグルコースを含みMgCO3を含まない液体培地中に再懸濁して、OD600を約1.0に調整した。接種を、0.5 mLのこの細胞懸濁液を用いて実施した。培養を、20 g/Lのグルコースおよび30 g/LのMgCO3を含む50 mLの液体培地を含む、気密性ブチルゴムストッパー(Ochs GmbH, Bovenden/Lenglem, Germany)を有する100 mLの血清ボトル中で、かつ0.8バールの超過気圧を有するCO2雰囲気で実施した。血清ボトル(合計10個)を、37℃で、160 rpmの回転速度、および2.5 cmの振とう直径でインキュベートした。
【0097】
グルコース消費をモニターするために、1個のボトルの培養を停止させ、サンプリングおよびHPLC分析を、0、3、4、5、7、8および8.5時間後に実施した。8.5時間後(グルコース濃度は3.4 g/Lであった)、培養を停止させた。0.5 mLアリコートの細胞懸濁液および0.5 mLの滅菌グリセロールを、低温バイアル中に充填し、混合し、MCBとして-20℃、その後-80℃で13時間保存した。MCBを、夾雑制御のために寒天プレート上に最後の低温バイアルのループをストリークし、液体培養物中で(表8に記載の培地)、生成物のスペクトルを精査し、夾雑について精査(顕微鏡による)することにより、純度について試験した。HPLC条件は、実施例1に記載のものと同じであった。
【0098】
3. WCBの調製
MCBの1個のバイアルを用いて、50 mLの液体培地を含む、気密性ブチルゴムストッパー(上記参照)を有する100 mLの血清ボトルに50 g/Lのグルコースを接種した。インキュベーションを、振とうインキュベーター(回転速度:180 rpm、振とう直径:2.5 cm)中、37℃で10時間実施した。培養の終わりに、グルコース濃度は20 g/Lであり、pHは約6.5であった。0.5 mLアリコートの細胞懸濁液および0.5 mLの滅菌グリセロールを低温バイアルに充填し、混合し、WCBとして-80℃で保存した。純度のチェックはMCBについてと同じであった。HPLC条件は、実施例1に記載のものと同じであった。
【実施例3】
【0099】
DD1の分類学上の特性評価
DD1株の分類学上の特性評価を、以下に記載のように行う16Sおよび23S rDNA分析を介して実施した。
【0100】
ゲノムDNAの抽出、16S rDNAのPCRを介する増幅およびPCR産物の精製を、Raineyら、1996により記載されたように実行した。23S rDNAを含むDNA断片を、フォワードプライマー:5’- AGTAATAACGAACGACACAG-3’およびリバースプライマー: 5’- AGCCGATTCCCTGACTAC-3’を用いて、同じ方法により増幅した。精製されたPCR産物を、製造業者のプロトコルに指示されたように、CEQ(商標)DTCS-Quick Startキット(Beckman Coulter)を用いて配列決定した。配列反応産物の電気泳動には、CEQ(商標)8000 Genetic Analysis Systemを用いた。ae2エディター(Maidakら、1999)を用いて、EMBLおよびEDPデータベースから利用可能なプロテオバクテリア(Proteobacteria)のγサブクラスの代表的なメンバーのものに対するDD1株の16S rDNA配列を整列させた。系統樹の構築のために、PHYLIP(Phylogeny Inference Package, version 3.5c.、J. Felsenstein, Department of Genome Sciences, University of Washington, Seattle, USAにより配給)の手順を用いた:ペアワイズ進化距離を、JukesおよびCantor (1969)の方法を用いて算出し、系統樹を、近隣結合法(Saitou & Nei, 1987)を用いてこれらの距離から構築した。
【0101】
16S rDNAに基づく系統樹を、図1に記載する。16S rDNA分析に基づいて、DD1株の最も近い関連株は、99.8%の類似性を有する「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL 55Eである。この株は、ウシの第一胃からKorea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST)の科学者により単離されたものであった(Leeら、2002a;Leeら、2002b)。DD1に由来する増幅された23S rDNA断片を、「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL 55E(完全ゲノム配列アクセッション番号AE016827)に由来する23S rDNA配列とアラインメントさせて、株間の差異を示させた。
【0102】
図2は、DD1株の16S rDNA配列を示す。図3は、DD1株の23S rDNA配列を示し、「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL 55E(完全ゲノム配列アクセッション番号AE016827)の23S rDNAとのアラインメントを添付物1に示す。
【実施例4】
【0103】
DD1の細胞形態およびコロニー形態
WCB(実施例2)の1個のバイアルを用いて、50 mLの液体培地を含む気密性ブチルゴムストッパー(上記参照)を有する100 mLの血清ボトルに、50 g/Lのグルコースを接種した(実施例2に記載の組成および調製)。インキュベーションを、37℃および170 rpm(振とう直径:2.5 cm)で15時間実施した。培養の終わりに、グルコース濃度は約17 g/Lに減少した(HPLCを介する測定、実施例1に記載の条件)。DD1の細胞形態を試験するために、1個の細胞を光学顕微鏡を用いて観察した。DD1のコロニー形態を特性評価するために、細胞懸濁液のループを、Brain Heart Infusionプレート(Bacto Brain Heart Infusion、12 g/LのBacto Agarで固体化された製品番号:237500、製品番号:214010;両方ともBecton, Dickinson and Companyによる)上にストリークし、37℃で好気的および嫌気的(Anaerocult A, Merck)にインキュベートした。
【0104】
DD1の細胞は、単独、1対または短い鎖で生息する桿状に見える(図4を参照)。インキュベーションの24時間後に、コロニーは円形、白-黄色、半透明ならびに直径0.5〜1μm(好気的増殖)および1〜2μm(嫌気的増殖)であった。
【実施例5】
【0105】
様々な炭素源の利用
DD1による様々な炭素源の利用を、Leeら、2002aにより記載された条件下で試験した。
【0106】
1. 培地の調製
培養培地の組成を表9に記載する。
【表9】

【0107】
酵母抽出物、ポリペプトンおよびMgCO3を一緒にオートクレーブした。冷却後、不足成分を滅菌保存溶液として添加した。グルコースおよび他の炭素源、硫酸アンモニウムならびにK2HPO4を、全て別々にオートクレーブした。Ca、MgおよびNaの塩化物を一緒にオートクレーブした。Na2S*9H2Oを1 mg/Lの最終濃度で添加して、嫌気的条件を確保した。
【0108】
2. 培養および分析
種培養物を増殖させるために、WCBの1個のバイアルを用いて、表9に記載されたが、20 g/Lのグルコースを含む50 mLの液体培地を含む、気密性ブチルゴムストッパー(上記参照)を有する100 mLの血清ボトルに、0.8バールの超過気圧を有するCO2雰囲気で接種した。インキュベーションを、37℃および160 rpm(振とう直径:2.5 cm)で13時間行った。細胞懸濁液を、5000 gで5分間遠心分離し(Biofuge primo R, Heraeus)、細胞ペレットを洗浄した後、炭素源もMgCO3も含まない50 mLの培地中に再懸濁して、グルコースを含まない接種材料を作製した(全工程を室温かつ嫌気的チャンバー中で行った)。
【0109】
主培養物を、10 g/Lのそれぞれの炭素源(D-マンニトール、D-フルクトース、D-キシロース、スクロース、マルトース、ラクトース、キシリトール、イノシトール、D-ソルビトール、グリセロール、L-アラビノース、D-ガラクトースもしくはD-マンノース)を含む50 mLの液体培地を含む100 mLの血清ボトル中、0.8バールの超過気圧を有するCO2雰囲気で増殖させた。グリセロール利用に関する試験のために、「グリセロール99%純度」品質(Riedel-de Haen、Sigma-Aldrich Laborchemikalien GmbH, Seelze, Germanyによる製品番号: 15523-1L-R)を用いた。接種を、1.5 mLのグルコースを含まない接種材料を用いて実施した。このボトルを、37℃および160 rpm(振とう直径:2.5 cm)でインキュベートした。少なくとも3 g/Lの炭素源が24時間以内に消費された場合、DD1によるそれぞれの炭素源の利用を陽性であると見なした。主培養物中で得られた結果を検証するために、1 mLのそれぞれの主培養物を用いて、50 mLの新鮮な培養培地に10 g/Lのそれぞれの炭素源を接種した。従って、結果を、2つのその後の主培養物中で確認した。炭素源の消費を、実施例1に記載のようにHPLCを介して定量した。グリセロールを測定する際、カラムの温度を50℃に調整して、類似する滞留時間を有するSA、乳酸およびグリセロールの十分な分離を達成した。
【0110】
3. 結果
結果を以下の表10にまとめる。
【表10】

【0111】
前記の表は、2つの株の炭素源利用パターンが、グリセロールに関して異なることを示す。DD1は、MBEL 55Eにより使用されないグリセロールを代謝することができる。
【0112】
スクロース、D-グルコースおよびD-フルクトースに加えて、DD1はD-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトースおよびD-マンノースを利用する。従って、リグノセルロース中の全ての型の単糖類(Kammら、2006;Leeら、1997)が、DD1により利用される。MBEL55EによるL-アラビノース、D-ガラクトースおよびD-マンノースの利用は、Leeら、2002aによっては試験されていない。
【実施例6】
【0113】
グリセロールおよび様々なヘキソースおよびペントースからのSAおよび副生成物の形成
グリセロール、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトースおよびD-マンノースに関数するDD1のコハク酸(SA)生産性を、10 g/Lのそれぞれの炭素源(参照として10 g/Lのグルコース)を用いて血清ボトル試験において評価した。
【0114】
1. 培地の調製
培養培地の組成および調製は、実施例2(種培養)および実施例5(主培養)と同じであった。
【0115】
2. 培養および分析
50 g/Lのグルコースおよび30 g/LのMgCO3を含む液体培地中での種培養物の増殖を、実施例2に記載のように行った。グルコースを含まない接種材料の調製を、実施例5に記載のように実施した。
【0116】
10 g/Lのグリセロール、スクロース、D-キシロース、D-フルクトース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノースまたはD-グルコースおよび10 g/LのMgCO3を含む主培養物の増殖を、実施例5に記載のように行った。それぞれの炭素源の消費ならびにSAおよび副生成物の産生を、実施例5に記載のようにHPLCにより定量した。
【0117】
3. 結果
以下の表11に、結果をまとめる。
【表11】

【0118】
表11は、全ての事例において、実質的なSA量が形成されることを示している。DD1によるスクロース(suc)、D-グルコース(gluc)、D-フルクトース(fruc)、D-キシロース(xyl)、L-アラビノース(ara)、D-ガラクトース(gal)またはD-マンノース(man)の代わりにグリセロール(glyc)からのSAの産生は、2つの明らかな利点を有する:i)実質的により高い収率、ii)実質的により低い蟻酸および酢酸形成。一方、グリセロールを用いるSAの生産性(空時収率)は、糖を用いる場合よりもわずかに低い。しかしながら、グリセロールを用いるDD1のSA生産性は、Leeら、2001によりアナエロビオスピリルム・スクシニシプロデューセンスについて得られた値よりも実質的に高い(0.14 g SA/[L h])。
【0119】
特に、グリセロールを用いて達成された実質的により高い収率は非常に興味深い結果である。それは、特に、バイオディーゼルプラントから得た安価な粗グリセロールを適用することができる場合、それぞれ、発酵的コハク酸、コハク酸塩およびBDO/GBL/THFまたはそれから作られるピロリドンに関する製造費用の明確な減少に寄与し得る。
【実施例7】
【0120】
様々な粗グリセロールからのSAおよび副生成物の形成
様々な粗グリセロール(C1〜C3)に関するDD1のSA生産性を、10 g/Lのそれぞれのグリセロール(参照として10 g/Lの純粋なグリセロール[P1])を用いる血清ボトル試験において評価した。
【0121】
1. 培地の調製
培地の組成を以下の表12に記載する。
【表12】

【0122】
MgCO3および水(1.5 gおよび40 mL)を、100 mLの血清ボトル中で滅菌した(121℃、20分)。冷却後、他の化合物の別の滅菌溶液を添加した。酵母抽出物、ペプトン、硫酸アンモニウムおよびK2HPO4を、それぞれの保存溶液の濾過により全て別々に滅菌した。Ca、MgおよびNaの塩化物について、1つの保存溶液を調製し、これを濾過により滅菌した。グルコースと様々なグリセロールを、全て別々に滅菌した(121℃、20分)。純粋なグリセロールを用いる参照試験のために、Honeywell Specialty Chemicals Seelze GmbH, Seelze, Germanyによる「グリセロール99%純度」(Riedel-de Haen、製品番号:15523-1L-R)品質を用いた。
【0123】
2. 培養および分析
種培養物を、50 g/Lのグルコースを含む表12に記載の50 mLの培地を含む、気密性ブチルゴムストッパー(上記参照)を有する100 mLの血清ボトル中、0.8バールの超過気圧を有するCO2雰囲気中で増殖させた。接種を、1 mLのWCB(実施例2)を用いて行った。インキュベーションを、37℃および170 rpm(振とう直径:2.5 cm)で15時間実施した。培養の終わりに、グルコース濃度は約17 g/Lに低下した。
【0124】
細胞懸濁液を5000 gで5分間遠心分離し(Biofufe primo R, Heraeus)、細胞ペレットを洗浄した後、グルコースもMgCO3も含まない50 mLの培地中に再懸濁して、グルコースを含まない接種材料を作製した。
【0125】
主培養物を、10 g/Lのそれぞれのグリセロールを含む50 mLの培地を含む100 mLの血清ボトル中、0.8バールの超過気圧を有するCO2雰囲気中で増殖させた。接種を、2.0 mLのグルコースを含まない接種材料を用いて行った。このボトルを、37℃および170 rpm(振とう直径:2.5 cm)で9時間インキュベートした。
【0126】
それぞれの炭素源(種培養物中ではグルコース、主培養物中ではグリセロール)の消費ならびにSAおよび副生成物の産生を、実施例5に記載のHPLCにより測定した。
【0127】
3. 結果
以下の表13に結果をまとめる。
【表13】

【0128】
表13は、9時間後、SA濃度および従って、粗グリセロールC1〜C3について得られたSTY(7.4〜8.4 g SA/Lおよび0.8〜0.9 g SA/[L h])は、全ての事例において、純粋なグリセロールP1について得られたそれぞれの値よりも高い(6.2 g SA/Lおよび0.7 g SA/[L h])。従って、粗グリセロールは、より低い値段に加えて、より良好な生産性の利点を有する。粗グリセロールC1〜C3について得られた収率(1.1〜1.2 g SA/gグリセロール)は、純粋なグリセロールP1について得られたそれぞれの値(1.1 g SA/gグリセロール)と類似する。
【実施例8】
【0129】
DD1のアンモニアおよびグルコースに対する許容性
グルコースからのコハク酸および/またはコハク酸アンモニウム塩の発酵生産のための一般的な手法は、特定の初期グルコースレベルを有するNH3により制御された供給バッチ式培養であってよい。この設定には、前記株のNH3/NH4OHおよびグルコースの両方に対する許容性が必要である。これらの特性に関してDD1を試験するために、pH調節剤としてのNH4OHおよび変化するグルコースレベルを用いてバッチ式培養を実施した。
【0130】
1. 培地の調製
培養培地の組成を表14に記載する。
【表14】

【0131】
酵母抽出物、ペプトンおよびMgCO3を、発酵器および血清ボトル中で一緒にオートクレーブした。グルコース、硫酸アンモニウムおよびK2HPO4を、全部別々にオートクレーブした。Ca、MgおよびNaの塩化物を一緒にオートクレーブした。発酵器および血清ボトルを冷却した後、不足成分を滅菌保存溶液として添加した。前培養のために、同じ培地組成を用いたが、MgCO3を30 g/Lに調整した。
【0132】
2. 培養および分析
前培養物を、振とうインキュベーター(回転速度:160 rpm、振とう直径:2.5 cm)中、37℃で、50 mLの前培養培地を含む、気密性ブチルゴムストッパー(Ochs GmbH, Bovenden/Lenglern, Germany)を有する100 mLの血清ボトル中で嫌気的に増殖させた。前培養物の接種を、嫌気的チャンバー(MAKS MG 500、meintrup-dws)中、1 mLのDD1機能細胞バンクを用いて行った。接種の直後に、気体雰囲気(80%のN2、15%のCO2および5%のH2)を、約0.8バールの超過気圧を有する純粋なCO2により置換した。インキュベーションの16〜18時間後、2個のボトルを嫌気ボックス中にプールし、それぞれの場合、15 mLを用いて、CO2を一晩供給した300 mLの培養培地を含む発酵器(Sixfors, Infors, Switzerland)を接種して、無酸素条件を確保した。培養温度は37℃であり、6.5のpHを25%NH4OHを用いて維持した。CO2気流および攪拌器の速度を、それぞれ、0.1 L/分および500 rpmに調整した。グルコースの消費およびSAの産生を、実施例1に記載のようにHPLCにより定量した。
【0133】
3. 結果
結果を図5に示す。
【0134】
グルコースを含むNH4OH制御されたバッチ式培養においては、最大で40 g/L SAが48時間以内に形成される。従って、DD1は、THF/BDO/GBLおよびピロリドンへの化学的変換にとって有利であるコハク酸および/またはコハク酸アンモニウム塩の強い合成能力を有する(WO-A-2006/066839)。
【0135】
75 g/Lのグルコースを用いる試験における初期SA産生速度は、50および25 g/Lを用いる試験におけるよりもわずかに低い。しかしながら、6〜12時間では、基質阻害が最大で75 g/Lのグルコースレベルで問題ではないことを示すような差異はなかった。
【実施例9】
【0136】
DD1によるSA形成に対する培養温度とpHの効果
この実験においては、培養温度とpHを、75 g/Lのグルコースを含むNH4OH制御されたバッチ式培養において変化させた。
【0137】
1. 培地の調製
一定のグルコース濃度とは別に、培地組成および調製は、実施例8の「DD1のアンモニアおよびグルコースに対する許容性」に記載のものと同じであった。
【0138】
2. 培養および分析
試験した様々な培養温度およびpH値とは別に、培養およびHPLC分析の実験条件は、実施例8の「DD1のアンモニアおよびグルコースに対する許容性」に記載のものと同一であった。
【0139】
3. 結果
結果を図6に示す。図6は、37℃およびpH 6.5での2つの試験が、低い変動性を示すグルコース消費とSA産生の両方に関して非常に類似していることを示す。この変動性に基づけば、pH 6.5で行った試験は、34.5〜39.5℃で、培養温度がプロセスの性能に影響しないことを示す。しかしながら、37℃での試験は、0.5単位でのpHの低下がSA生産性の明らかな低下を、0.5単位でのpHの増加がSA生産性のわずかな低下をもたらすことを示している。これらの結果に基づいて、DD1のさらなる培養を、pH制御が可能である場合、pH 6.5で行った。
【実施例10】
【0140】
DD1培養に対する複合培地成分の効果
DD1の富化および単離を、5 g/Lの酵母抽出物および5 g/Lのペプトンを含む培養培地中で実施した。従って、DD1を用いる第1の実験を、これらの化合物を含む培地中で行った。それらは原材料に関する費用に寄与し、さらなる不純物を誘導するため、それぞれ、酵母抽出物およびペプトンを減少させ、より安価なトウモロコシ浸出液(コーンスティープリカー)(Solulys L48L, Roquette)により置換した様々な培地組成を試験した。試験の初期培地組成を、図面(濃度を表す、すなわち、2、5、15もしくは25 g/L)および文字(それぞれの複合化合物、すなわち、酵母抽出物、ペプトンもしくはトウモロコシ浸出液を表す)により示す。
【0141】
1. 培地の調製
酵母抽出物およびペプトンの濃度のそれぞれの改変とは別に、さらなるトウモロコシ浸出液培地の組成および調製は実施例8の「DD1のアンモニアおよびグルコースに対する許容性」に記載のものと同じであった。グルコースのバッチ濃度は、全ての試験において50 g/Lであった。
【0142】
2. 培養および分析
実験条件は、実施例8の「DD1のアンモニアおよびグルコースに対する許容性」に記載のものと同一であった。全ての培養を37℃で実施し、発酵器中での培養を25%NH4OHを用いてpH 6.5に維持した。HPLC分析を、実施例8に記載のように実施した。
【0143】
3. 結果
結果を図7に示す。試験「5Y5P」と「5Y」の比較は、SA産生に負に影響することなくペプトンを省略することができることを示している。CSLによる酵母抽出物の部分的置換は、コハク酸産生の低下をもたらさない(試験「5Y」対試験「2Y15C」)。しかしながら、CSLによる酵母抽出物の完全な置換は、中程度の生産性損失をもたらす。
【0144】
試験「5Y5P」および「5Y」の副生成物スペクトルを図8に示す。図8は、培養培地中でのペプトンの省略は、実質的により低い濃度の蟻酸および酢酸をもたらすが、乳酸の濃度は両試験において同等であったことを示している。この実験は、i)原料費用の低下、ii)培地化合物により誘導される不純物の減少およびiii)培養中の副生成物形成の減少による培地改良に関する能力を示す。
【実施例11】
【0145】
DD1と酸素との関係
発酵的SA生産は、嫌気的条件に依存するプロセスであるため、SA産生のためのDD1の培養を酸素の非存在下で実施する必要がある。しかしながら、DD1が酸素の存在も許容するかどうかを知ることが非常に重要である。この場合、前記株を好気的条件下で取り扱って、実験室での仕事をより容易に、かつより速くすることができる。従って、DD1株を、グルコースを含む振とうフラスコ実験において試験した。
【0146】
1. 培地の調製
培地の組成および調製は、表8に記載のものと同じであった。
【0147】
2. 培養および分析
嫌気的種培養物を、50 g/Lのグルコースおよび30 g/LのMgCO3を含む50 mLの培地を含有する気密性ブチルゴムストッパー(上記参照)を有する100 mLの血清ボトル中、37℃および160 rpm(振とう直径:2.5 cm)で0.8バールの超過気圧を有するCO2雰囲気で16時間増殖させた。接種を、1 mLのWCB(実施例2)を用いて実施した。7.5 mLのこれらの前培養物を用いて、好気的主培養物に接種した。
【0148】
好気的主培養物(60 g/Lのグルコースおよび80 g/LのMgCO3を含む150 mLの培地)を、2個の調節板およびコットンプラグを有する500 mLのErlenmeyerフラスコ中、37℃および200 rpm(振とう直径:2.5 cm)で増殖させた。基質の消費および生成物の形成を、実施例1に記載のようにHPLCにより測定した。
【0149】
3. 結果
結果を図9に示す。この結果は、DD1株による好気的なグルコース消費を明確に示している。主生成物は酢酸および乳酸であり、これは「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL 55Eの好気的に増殖させた細胞の支配的な生成物である(Leeら、2002a)。初期SAレベルを、嫌気的前培養物により導入し、15時間の培養後に広く消費させる。データは、DD1が酸素許容性であることを明確に示している。
【実施例12】
【0150】
KAISTにより記載された条件下でのDD1の試験
DD1の最も近い関連株は、KAIST(上記参照)により単離された株である「マンヘイミア・スクシニシプロデューセンス」MBEL 55Eである。DD1と前記株とを比較するために、KAISTにより記載された培養実験(Leeら、2002aの図2bおよびLeeら、2002bの図3)を、DD1を用いて実施した。
【0151】
1. 培地の調製
培養培地の組成は、Leeら、2002bの対応する実験と同一であり、以下の表15に記載する。
【表15】

【0152】
酵母抽出物、ペプトンおよびMgCO3を、発酵器および血清ボトル中で一緒にオートクレーブした。グルコース、硫酸アンモニウムおよびリン酸カリウムを、全て別々にオートクレーブした。Ca、MgおよびNaの塩化物を一緒にオートクレーブした。発酵器および血清ボトルを冷却した後、不足成分を滅菌保存溶液として添加した。種培養のために、同じ培地を用いた。
【0153】
2. 培養および分析
種培養物を、振とうインキュベーター(回転速度:160 rpm、振とう直径:2.5 cm)中、39℃で50 mLの培地を含む気密性ブチルゴムストッパーを有する100 mLの血清ボトル中で嫌気的に増殖させた。種培養の接種を、嫌気的チャンバー(MAKS MG 500、meintrup-dws)中、1 mLのWCB(実施例2)を用いて実施した。接種の直後、気体雰囲気(80%N2、15%CO2および5%H2)を、約0.8バールの超過気圧を有する純粋なCO2により置換した。インキュベーションの9時間後、発酵器に30 mLを接種して、CO2を一晩供給して無酸素条件を確保した300 mLの培養培地を含む発酵器(Sixfors, Infors Switzerland)中での培養を開始した。培養温度を39℃および5 M NaOHを用いてpHを6.5に維持した。CO2気流を0.25 vvmに調整した。攪拌器の速度を500 rpmに調整した。グルコースの消費ならびにSAおよび副生成物の形成を、実施例1に記載のようにHPLCにより測定した。
【0154】
3. 結果
結果を図10にまとめる。インキュベーションの5時間以内に、18.9 g/Lのグルコースが消費され、12.3 g/Lのコハク酸、4.5 g/Lの酢酸および3.3 g/Lの蟻酸がDD1により産生され、生成物のスペクトルがMBEL55Eの1つと類似することを示している。しかしながら、コハク酸に関するDD1について得られる空時収率は2.5 g/(L g)であり、MBEL55E株の1つよりも明らかに高い(1.8 g/[L h]、Leeら、2002b)。この収率は、0.7 gのコハク酸/グルコース1 gであり、MBEL55E株の1つと類似する。
【実施例13】
【0155】
合成培地中でのDD1の増殖
DD1の発酵のために複合成分を含まない合成培地を用いて、下流のプロセッシングを改良し、費用効率的な発酵のための無駄のない合成培地を設計することが有利である。従って、合成培地をDD1のために設計する。一方、合成培地はまた、近い関連株マンヘイミア・スクシニシプロデューセンスのために公開されている(Songら、2008)。必須化合物および刺激化合物が、DD1の増殖について決定されている。この結果と、マンヘイミア・スクシニシプロデューセンスとを比較したところ、明らかな差異が観察され、DD1株にとって好適なより経済的な増殖培地に対する手掛かりが得られた。
【0156】
1. 培地の調製
DD1のための合成増殖培地は、他の細菌を用いる以前の組織内経験および単一省略実験を行うことにより、第一胃の細菌のための他の合成増殖培地と関連して開発された(NiliおよびBrooker, 1995、McKinlayら、2005)。
【0157】
最後に、培地は、50 g/Lのグルコース、1 g/Lの(NH4)2SO4、0.2 g/LのCaCl2・2H2O、0.2 g/LのMgCl2・6H2O、1 g/LのNaCl、3 g/LのK2HPO4、1 mg/Lのニコチン酸、1.5 mg/Lのパントテン酸、5 mg/Lのピリドキシン、5 mg/Lのリボフラビン、5 mg/Lのビオチン、1.5 mg/LのチアミンHCl、0.26 g/Lのリジン、0.15 g/Lのトレオニン、0.05 g/Lのメチオニン、0.71 g/Lのグルタミン酸、0.06 g/Lのヒスチジン、0.07 g/Lのトリプトファン、0.13 g/Lのフェニルアラニン、0.06 g/Lのチロシン、0.5 g/Lのセリン、0.5 g/Lのグリシン、0.5 g/Lのシステイン、0.1 g/Lのβ-アラニン、0.27 g/Lのアラニン、0.19 g/Lのバリン、0.23 g/Lのロイシン、0.16 g/Lのイソロイシン、0.33 g/Lのアスパラギン酸、0.1 g/Lのアスパラギン、0.13 g/Lのプロリン、0.15 g/Lのアルギニンおよび0.1 g/Lのグルタミンを含んでいた。
【0158】
50 mLの複合培地または合成培地を含む血清ボトルを、水と共にオートクレーブし、30 g/LのMgCO3をバッファー系として用いた。グルコース、硫酸アンモニウムおよびリン酸カリウムを、別々に滅菌した。Ca、MgおよびNaの塩化物を一緒に滅菌した。ビタミンおよびアミノ酸を、種々の保存溶液中で集合させ、濾過滅菌した。血清ボトルを冷却した後、前記成分を滅菌保存溶液として添加した。
【0159】
標準的な複合培地を、ポリペプトンを用いずに、また50 g/Lのグルコースおよび30 g/LのMgCO3で開始して実施例12に記載のように調製した。種培養およびいくつかの主培養対照実験のために、複合培地を用いた。
【0160】
2. 培養および分析
種培養物を、振とうインキュベーター(回転速度:160 rpm、振とう直径:2.5 cm)中、37℃で50 mLの培地を含む気密性ブチルゴムストッパーを有する100 mLの血清ボトルを用いて嫌気的に複合培地中で増殖させた。1回目の種培養の接種を、無菌条件下で1 mLのWCB(実施例2)を用いて好気的に実施した。接種の直後、好気性気体雰囲気を、約0.8バールの超過気圧を有する純粋なCO2により置換した。インキュベーションの8時間後、2 mlの1回目の種培養物を遠心分離し、2 g/Lの(NH4)2SO4、0.4 g/LのCaCl2・2H2O、0.4 g/LのMgCl2・6H2O、2 g/LのNaClおよび6 g/LのK2HPO4を含む滅菌洗浄溶液を用いて3回洗浄した後、2回目の種培養物を100 mLの血清ボトルに接種した。
【0161】
2回目の種培養物のインキュベーションを、1回目の種培養物について記載されたように20時間行った後、2 mLの2回目の培養物を再度用いて、主培養物に接種し、さらに20時間インキュベートした。必須化合物または刺激化合物を決定するために、目的のビタミンまたはアミノ酸を2回目の種培養および主培養において省略した。グルコースの消費およびコハク酸の形成を、実施例1に記載のようにHPLCにより測定した。
【0162】
3. 結果
結果を表16にまとめる。ビオチンおよび値アミンHClを省略する培地は増殖およびコハク酸産生を持続しないことが観察された。従って、ビオチンおよび値アミンHClは、DD1の増殖にとって必須化合物であることが示された。0.6 mg/L未満のビオチンの濃度は、DD1の増殖にとって十分であった。アミノ酸システインは、DD1の増殖にとって必須ではなかったが、これはシステインの省略がシステインを含有する対照と同様のコハク酸産生を誘導したからである。
【0163】
これらの結果と対照的に、ビオチンはマンヘイミア・スクシニシプロデューセンスの増殖にとって必須ではないが、刺激的であり、システインは必須であると記載された(Songら、2008)。チアミンHClは両生物にとって必須である。システインに関して原栄養性の株は、コハク酸産生のためのより無駄がなく安価な産生培地を有すると期待される。
【表16】

【実施例14】
【0164】
DD1株によるグリセロールの代謝
炭素源としてのグリセロールの存在下でのDD1株の生産性を、以下の最適化された培地およびインキュベーション条件を用いてさらに分析した。
【0165】
1. 培地の調製および培養
DD1を以下の様式で増殖させた。凍結保存溶液に由来する細胞を、BHI寒天プレート(Becton Dickinson)上にストリークした。細胞を擦り取り、新鮮なBHI培地中に懸濁し、37℃で5.5時間、嫌気的血清ボトル中でインキュベートした。細胞を、100 mLの血清ボトルを用いて、表17に記載の化合物を含む培地中に接種した。600 nmでの開始ODは0.1であった(1 mLパス中で決定)。培地成分1〜7を一緒にオートクレーブし、化合物8を血清ボトル中でオートクレーブし、化合物9および10を別々にオートクレーブし、最終培地に添加した。血清ボトルをブチルゴムストッパーを通してCO2で少なくとも3回散布し、0.8バールのCO2超過気圧で静置した。血清ボトルを200 rpmおよび37℃でインキュベートした。24時間後、血清ボトルを開け、代謝物を実施例1に記載のようにHPLCにより決定した。
【表17】

【0166】
【表18】

【0167】
2. 結果
以下の結果は表18に記載のように得られたものである。DD1は、24時間以内に28.4 g/Lのグリセロールから35.3 g/Lのコハク酸を産生し、1時間あたり1.47 g/Lのコハク酸の空時収率をもたらし、これはグリセロール代謝の他の書類化された例よりも優れている(Leeら、2001)。1Mグリセロールおよび1M CO2の1Mコハク酸への代謝回転が達成される場合、1.24 g/gの収率はグリセロール1 gあたり1.29 gのコハク酸の記載された理論的収率に近かった(SongおよびLee、2006)。
【実施例15】
【0168】
グリセロールおよびマルトースからのコハク酸(スクシネート)の産生
2つの炭素源の存在下でのDD1の生産性を決定した。DD1を、二糖類であるマルトースおよびグリセロールの存在下で同時に増殖させた。
【0169】
1. 培地の調製および培養
凍結保存溶液に由来する細胞を、BHI寒天プレート(Becton Dickinson)上にストリークした。細胞を擦り取り、新鮮なBHI培地中に懸濁し、37℃で5.5時間、嫌気的血清ボトル中でインキュベートした。この培地は表19に記載されている。200 mLの血清ボトルを用いた。細胞を、0.1の開始ODで接種した(600 nmでPharmaciaの光度計を用いて1 mLパス中で決定)。血清ボトルを、ブチルゴムストッパーを通してCO2で少なくとも3回散布し、0.8バールのCO2超過気圧で静置した。血清ボトルを200 rpmおよび37℃でインキュベートした。
【表19】

【0170】
種培養物に、振とうインキュベーター(回転速度:160 rpm、振とう直径:2.5 cm)中、37℃で50 mLの培地を含む気密性ブチルゴムストッパーを有する200 mLの血清ボトル中で嫌気的に増殖させた2 mLの凍結培養物を接種した。ボトルを約0.8バールの超過気圧を有する純粋なCO2により散布した。インキュベーションの8時間後、発酵器に50 mLを接種して、CO2を供給して無酸素条件を確保した1Lの培養培地を含む発酵器中での培養を開始した。培養温度を37℃に維持し、培地中にMgCO3バッファー以外の塩基を添加することなくpHを6.5に維持した。CO2気流を0.2 vvmに調整した。攪拌器の速度を300 rpmに調整した。マルトースおよびグリセロールの濃度ならびにSAおよび副生成物の形成を、実施例1に記載のようにHPLCにより測定した。細胞を37℃で増殖させ、バイオマスを決定し、サンプルを取り、1M HClの添加により残留するMgCO3を溶解した。MgCO3を溶解した後、細胞を水で洗浄し、凍結乾燥により乾燥した。乾燥バイオマスを計量により決定した。
【0171】
結果
結果を表20にまとめる。インキュベーションの16時間以内に、DD1により、36.5 g/Lのグリセロールおよび11.2 g/Lのマルトースが消費され、57.54 g/Lのコハク酸、3.41 g/Lの酢酸および3.7 g/Lの蟻酸が形成される。コハク酸に関してDD1について得られた空時収率は3.4 g/(L h)であり、これはMBEL55E株およびアナエロビオスピリルム・スクシニシプロデューセンスについて以前に報告されたものよりも明らかに高く、文献(Leeら、2002b、Leeら、2001、SongおよびLee、2006)に記載の他の株よりも優れている。
【0172】
コハク酸の収率は、グリセロールとマルトースの合計について炭素源1 gあたり1.2 gのコハク酸であると決定された。この収率も、文献(Leeら、2002b、Leeら、2001、SongおよびLee、2006)に記載の株よりも優れている。
【0173】
3.7 g/(L h)のコハク酸の空時収率は、文献(Songら、2006)に記載の株よりも優れている。
【0174】
加えて、コハク酸に関する特異的生産性0.77[g gDCW-1h-1]hは文献(Songら、2006)に記載の株よりも優れていることがわかった。
【表20】

【0175】
実験のまとめ
1. 本発明のDD1株は非常に有望な特徴を有する:
・グリセロールに関する魅力的な生産性パラメーター(SA力価:最大57 g/L、3.4 g/(L h)のコハク酸の空時収率、0.77 g/(g DCW h)のコハク酸に関する特異的生産性および最大1.24 g/gの消費炭素の炭素収率);
・それぞれ、少なくとも75 g/Lおよび70 g/Lのグルコースおよびグリセロールレベルが許容される;
・D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノースがSAに効率的に変換され、生物精製手法を用いるSA産生に対する好適性を示す;
・グリセロール、特に、バイオディーゼルプラントに由来する未精製の材料も、SA産生に効率的に用いられる;空時収率、特異的生産性および生成物/副生成物比は、D-グルコースおよび他の糖類よりも実質的に高く、かつ良好である;
・pH制御のためにNH3/NH4OHが許容され、従って、コハク酸および/またはコハク酸アンモニウム塩の産生が可能である;
・D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノースがSAに効率的に変換され、生物精製手法を用いるSA産生に対する好適性を示す;
・グリセロール、特に、バイオディーゼルプラントに由来する未精製の材料も、SA産生に効率的に用いられる;空時収率、特異的生産性および生成物/副生成物比は、D-グルコースおよび他の糖類よりも実質的に高く、かつ良好である;
・別々の炭素源の組合せがコハク酸に効率的に変換され;
・好気的細胞培養が可能であり、これは研究室における株の一般的な取り扱いにとって、特に、さらなる株の開発にとって明らかに有利である;
・培養培地が生産性を損失することなく実質的に改良された。
【0176】
結論
1. 前記株は、THF/BDO/GBLおよびピロリドンに変換することができるコハク酸および/またはコハク酸塩、例えば、アンモニウム塩の産生に関する優れた能力を有する。
【0177】
2. モノマー用途のためのコハク酸の産生は別の魅力的なオプションである。
【0178】
参考文献
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【0179】
本発明の文脈においては、細菌株DD1は2006年8月11日にDSMZに寄託され、受託番号DSM 18541を有する。
【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【受託番号】
【0186】
DSM 18541




【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源としてグリセロールを利用することができる、元々は第一胃から単離されたパスツレラ科のメンバーである細菌株ならびにその能力を保持するそれから誘導された変異株および突然変異株。
【請求項2】
グリセロールからコハク酸を産生する能力を有する、請求項1に記載の株。
【請求項3】
配列番号1の16S rDNA;または少なくとも96、97、98、99もしくは99.9%の配列相同性を示す配列を有する、請求項1または2に記載の株。
【請求項4】
配列番号2の23S rDNA;または少なくとも95、96、97、98、99もしくは99.9%の配列相同性を示す配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の株。
【請求項5】
少なくとも1個の以下のさらなる代謝特性:
a)スクロースからのコハク酸の産生;
b)マルトースからのコハク酸の産生;
c)D-フルクトースからのコハク酸の産生;
d)D-ガラクトースからのコハク酸の産生;
e)D-マンノースからのコハク酸の産生;
f)D-グルコースからのコハク酸の産生;
g)D-キシロースからのコハク酸の産生;
h)L-アラビノースからのコハク酸の産生;
i)キシリトール、イノシトール、ソルビトールの不使用;
j)好気的および嫌気的条件下での増殖;
k)75 g/l以上の初期グルコース濃度での増殖;
l)70 g/l以上の初期グリセロール濃度での増殖;
m)アンモニア許容性、
を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の株。
【請求項6】
スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールを、少なくとも0.5 g/gの収率係数YP/Sでコハク酸に変換する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の株。
【請求項7】
少なくとも1個の以下の特徴:
a)少なくとも28 g/Lのグリセロールを、少なくとも1.0 g/gの収率係数YP/Sで少なくとも28.1 g/Lのコハク酸に変換すること;
b)スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源を、少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率でコハク酸に変換すること;
c)スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源を、少なくとも2.2 g/(L h)コハク酸のコハク酸に関する空時収率でコハク酸に変換すること;
d)スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源の少なくとも28 g/Lを、少なくとも2.2 g/(L h)のコハク酸に関する空時収率でコハク酸に変換すること;
e)スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源を、少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率および少なくとも2.2 g/(L h)のコハク酸に関する空時収率でコハク酸に変換すること、
を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の株。
【請求項8】
コハク酸を産生する能力を有する受託番号DSM 18541を有するDSMZに寄託された細菌株DD1ならびにコハク酸を産生する少なくともその能力を保持するそれから誘導された変異株または突然変異株。
【請求項9】
有機酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のための方法であって、
a)吸収可能な炭素源を含む培地中で請求項1〜8のいずれか1項に記載の細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;および
b)該培地から、該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程、
を含む、前記方法。
【請求項10】
発酵を、二酸化炭素の存在下で約10〜60℃の範囲の温度、5.0〜9.0のpHで行う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機酸がコハク酸である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
吸収可能な炭素源が、グリセロール、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、デンプンの分解産物、セルロース、ヘミセルロースおよびリグノセルロース;ならびにその混合物から選択される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記炭素源がグリセロールまたはグリセロールと、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-グルコース、D-キシロース、およびL-アラビノースから選択される少なくとも1種のさらなる炭素源との混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
吸収可能な炭素源の濃度を、5〜80 g/lの範囲の値に調整する、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
コハク酸またはその塩もしくは誘導体の発酵生産のための方法であって、
a)少なくとも1種の吸収可能な炭素源を含む培地中で細菌株をインキュベートし、所望の有機酸の形成を好む条件下で該株を培養する工程;
b)該培地から該有機酸またはその塩もしくは誘導体を取得する工程;
を含み、少なくとも1個の以下の特徴:
c)少なくとも1.0 g/gの収率係数YP/Sでの、少なくとも28 g/Lのグリセロールの少なくとも28.1 g/Lのコハク酸への変換;
d)少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率での、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源のコハク酸への変換;
e)少なくとも2.2 g/(L h)のコハク酸のコハク酸に関する空時収率での、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源のコハク酸への変換;
f)少なくとも2.2 g/(L h)のコハク酸に関する空時収率での、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも28 g/Lの少なくとも1種の炭素源のコハク酸への変換;
g)少なくとも0.6 g gDCW-1h-1のコハク酸の特異的生産性収率および少なくとも2.2 g/(L h)のコハク酸に関する空時収率での、スクロース、マルトース、D-フルクトース、D-グルコース、D-キシロース、L-アラビノース、D-ガラクトース、D-マンノース、および/またはグリセロールから選択される少なくとも1種の炭素源のコハク酸への変換、
をさらに特徴とする、前記方法。
【請求項16】
前記細菌株が、請求項1〜8のいずれか1項に記載の株である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
断続的または連続的に実施される、請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コハク酸および/またはコハク酸アンモニウム塩の製造のための方法であって、請求項9〜17のいずれか1項に記載のコハク酸の発酵生産ならびにアンモニアもしくはその水溶液、またはNH4HCO3、(NH4)2CO3、NaOH、Na2CO3、NaHCO3、KOH、K2CO3、KHCO3、Mg(OH)2、MgCO3、MgH(CO3)2、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(HCO3)2、CaO、CH6N2O2、C2H7Nおよびその混合物を用いるpHの制御を含む、前記方法。
【請求項19】
テトラヒドロフラン(THF)および/もしくは1,4-ブタンジオール(BDO)および/もしくはγ-ブチロラクトン(GBL)の製造のための方法であって、
a)請求項18に記載のコハク酸および/もしくはコハク酸塩の発酵生産、ならびに
b1)得られた遊離酸のTHFおよび/もしくはBDOおよび/もしくはGBLへの直接触媒的水素化または
b2)得られた遊離コハク酸および/もしくはコハク酸塩のその対応するジ-低級アルキルエステルへの化学的エステル化ならびに該エステルのTHFおよび/もしくはBDOおよび/もしくはGBLへのその後の触媒的水素化、
を含む、前記方法。
【請求項20】
ピロリドンの製造のための方法であって、
a)請求項18に記載のコハク酸アンモニウム塩の発酵生産、および
b)自体公知の様式でのコハク酸アンモニウム塩のピロリドンへの化学的変換、
を含む、前記方法。
【請求項21】
吸収可能な炭素源として用いられる前記グリセロールを、トリアシルグリセリドのエステル切断により得る、請求項13〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
グリセロールがバイオディーゼルの製造から得られた廃棄物である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
有機ファインケミカルの発酵生産のための請求項1〜8のいずれか1項に記載の細菌株の使用。
【請求項24】
前記有機ファインケミカルがコハク酸またはその塩もしくは誘導体である、請求項22に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−536329(P2010−536329A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520496(P2010−520496)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006714
【国際公開番号】WO2009/024294
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】