カルボン酸を用いた伝導性金属薄膜の製造方法
本発明は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加することにより、伝導性金属コーティング液を製造する段階と、前記伝導性金属コーティング液を基材の上部にコーティングし、熱処理して、コア/シェル構造の伝導性金属粒子の表面の酸化膜を除去する段階と、前記酸化膜が除去された伝導性金属粒子で薄膜を形成する段階と、を含む伝導性金属薄膜の製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加した伝導性金属コーティング液を用いて基材の上部に膜を形成することにより、伝導性及び焼結性が向上された伝導性金属薄膜を製造する方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
現在、電気/電子素子の製作において、微細構造物、例えば、金属パターン、絶縁層、分離膜などの製作には、露光とエッチング工程に基づいたフォトリソグラフィ(photolithography)法が主に用いられている。しかし、フォトリソグラフィは、多段階の複雑な製造工程が必要な、エネルギー集約的、高コストの生産技術である。また、露光とエッチング工程中にガス、廃水などが排出されるため、環境汚染を齎すという問題点がある。従って、露光/エッチング工程によるフォトリソグラフィ法に代替可能な、簡単且つ低コストで、環境に優しい技術開発の必要性が高まっている。
【0003】
フォトリソグラフィ工程は、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)などの伝導性高分子液相材料を、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティングなどの溶液工程によりパターンにすることが可能であるという工程の容易性が、大きい長所である。しかし、PEDOT/PSS伝導性高分子の伝導度は、金属素材に比べ非常に劣るという欠点がある。
【0004】
従って、優れた伝導度を有する金属素材を、工程が簡単で、パターンの形成が容易であるスピンコーティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティングなどの溶液工程に適用するために、液相材料として開発しようとする研究の必要性が非常に高まっている。簡単な例として、金属素材をナノ粒子に形成した後、特定溶媒で金属粒子を分散させる工程が最も注目されている。金属粒子をナノスケールで合成する場合、金属材料の融点を格段に低めることができる。これは、300℃以下の温度での低温熱処理により電極用伝導性被膜を形成できる基盤を提供する。このようにすると、粒子サイズによって300℃以下の温度でも粒子が融着することができ、自然に緻密な金属被膜を得ることができ、金属被膜の電気抵抗値が低くなる。
【0005】
しかし、安価の電極材料である銅の場合、粒子のサイズも重要であるが、熱力学的に酸化される性質を有するため、熱処理時の焼結挙動に障害を与える要因となり、その結果、高い伝導性被膜を得ることが困難となる。従来に電極物質として用いられる銀や金の場合、このような酸化の問題点はないが、高コストのためその使用が制限されている。従って、高い伝導性物質である銅を電極に適用するためには、酸化銅を除去または還元することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題点を解決するための本発明の目的は、銅やアルミニウムなどのように酸化されやすい伝導性金属ナノ粒子を特定溶媒に分散させ、カルボン酸(carboxylic acids)を添加して、金属酸化物とカルボン酸との物理的、化学的吸着を誘導することにより、金属酸化物の表面の酸化膜が除去された金属薄膜を形成して、伝導性及び焼結性に優れた伝導性金属薄膜を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明による伝導性金属薄膜の製造方法は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加することにより、伝導性金属コーティング液を製造する段階と、前記伝導性金属コーティング液を基材の上部にコーティングし、熱処理して、コア/シェル構造の伝導性金属粒子の表面の酸化膜を除去する段階と、前記酸化膜が除去された伝導性金属粒子で薄膜を形成する段階と、を含む伝導性金属薄膜の製造方法を提供する。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明は、基材の上部に伝導性金属薄膜を形成するために、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加して、伝導性金属コーティング液として用いる。
【0010】
本発明の発明者らは、伝導性金属薄膜を形成するための溶液工程に適した伝導性金属の液相材料を鋭意研究した結果、伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加した伝導性金属コーティング液を用いることにより、高効率の伝導性金属薄膜を形成することができる製造方法を開発するに至った。
【0011】
本発明は、前記伝導性金属コーティング液に適用可能な伝導性金属粒子の形態として、金属ナノ粒子、酸化金属ナノ粒子、コア/シェル(Core/Shell)構造の金属ナノ粒子及び有機金属化合物などを含む金属基盤の材料を用いることができ、好ましくは、コア/シェル(Core/Shell)構造の金属ナノ粒子を用いることが最も効果的である。前記伝導性金属粒子は、伝導性を有する全ての金属元素に適用することができ、好ましくは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、これらの合金及びこれらの複合体などに適用することができ、銅を用いることが最も好ましい。前記伝導性金属粒子は、表面自然酸化膜が形成されやすく、これにより電気伝導度が低下するため、酸化膜を除去することが電気伝導度及び焼結性の向上のために最も重要である。
【0012】
上記の金属粒子は、材料工程中、または工程後に、大気で空気中の酸素または水分と接触することにより自然酸化され、このような酸化は、焼結の進行を妨害し、高い伝導性の発現を困難とする。また、液相材料で金属被膜を形成した後、大気または低真空下で熱処理時に酸化がより速く進み、伝導度が全く発現されない結果を齎す。特に、優れた伝導性及び焼結性を有するために、金属ナノ粒子の構造が求められる。その反面、ナノ粒子は酸化速度がより速く、酸化する場合、高い表面積だけ酸化膜を形成する酸素の量も増加するため、伝導度及び焼結性に悪影響を与える。
【0013】
従って、本発明は、伝導性金属薄膜を高い伝導性が要求される電極として活用するために、有機酸(organic acid)であるカルボン酸(carboxylic acids)を伝導性金属粒子を含む分散液に添加する方法を提案している。本発明の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加して製造された伝導性金属コーティング液は、金属粒子酸化物とカルボン酸とが物理的、化学的に吸着して金属酸化物を還元させたり、前記酸化膜が除去された伝導性金属薄膜を形成することにより、焼結性及び伝導性を向上させる。また、前記カルボン酸が添加された伝導性金属コーティング液は、大気または低真空下で熱処理時にも優れた伝導性を発現するという驚くべき効果を有する。特に、このような工程は、コア/シェル構造の伝導性金属粒子に適用する場合に効果的であり、上記に挙げられた金属粒子のうちコア/シェル構造の銅ナノ粒子が最も効果的である。コア/シェル構造の銅ナノ粒子の薄膜形成に関するメカニズムは、下記でより詳細に説明する。
【0014】
本発明の前記伝導性金属コーティング液に含有されるカルボン酸として、飽和モノ−カルボン酸、不飽和カルボン酸、ジ−カルボン酸、及びトリ−カルボン酸から選択される1種以上を用いることが好ましく、その例としては、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸などの飽和モノ−カルボン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸、マロン酸、シュウ酸などのジ−カルボン酸、クエン酸などのトリ−カルボン酸を用いることが最も好ましい。
【0015】
本発明の前記コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液は、5〜40重量%の濃度を有することが好ましく、コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液に添加されるカルボン酸の添加量は、少なくとも金属粒子の表面を完全にコーティングできる程度の量でなければならず、前記分散液に含有された金属粒子に対して0.01〜30重量%のカルボン酸を添加することが好ましい。カルボン酸を0.01重量%未満で添加する場合、カルボン酸の添加による効果を期待することが困難であり、30重量%を超過して添加する場合、金属粒子の含量を高めることが困難であるため、十分な伝導性を確保することが困難となる。前記分散液に含有された金属粒子に対して、0.1〜10重量%のカルボン酸を添加することがより好ましい。
【0016】
前記コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液は、伝導性金属粒子、有機溶媒及び分散剤を含む。ここで、前記コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液の組成比は、(a)伝導性金属粒子5〜40重量%、(b)有機溶媒50〜90重量%、及び(c)分散剤1〜10重量%の比で混合することが好ましい。
【0017】
前記有機溶媒は、特に限定されないが、カルボン酸と混合(または溶解)可能な溶媒を用いることが好ましく、例えば、極性溶媒として、エチレングリコール(ethyleneglycol)、メチルアルコール(methylalcohol)、イソプロピルアルコール(iso−propyl alcohol)、超純水(deionized water)、メトキシエタノール(methoxyethanol)、グリセロール(glycerol)などから選択される1種以上を用いることができ、非極性溶媒として、アセトン(acetone)、トルエン(toluene)、メチルエチルケトン(methylethylketone)、酢酸エチル(ethylacetate)、シクロヘキサン(cyclohexane)、乳酸ブチル(butyllactate)及びブチルカルビトールアセテート(butylcarbitolacetate)などから選択される1種以上を用いることができる。
【0018】
前記分散剤は、セバシン酸ジブチル(Dibutyl sebacate;DBS)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate;SDS)、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(Sodium bis(2−ethylhexyl)sulfosuccinate;AOT)などのアニオン系分散剤、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium bromide;CTAB)などのカチオン系分散剤、トリトンX−100(Triton X−100)、ツイン20(Tween 20)などのノ二オン系分散剤、ポリアクリル酸(Poly(acrylic acid);PAA)、ポリスチレン−alt−マレイン酸(poly(styrene−alt−maleic acid);PSM)、ポリスチレン−co−アクリル酸(Poly(styrene−co−acrylic acid);PSA)などの高分子電解質分散剤、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediamine tetraacetic acid;EDTA)、クエン酸(Citric acid)などから選択される1種以上を用いることができる。
【0019】
本発明は、前記伝導性金属コーティング液を用いて基材の上部に伝導性金属被膜を形成するために、工程が容易であるスピンコーティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、フレキソ(Flexo)、グラビア(Gravure)、オフセット(Off−set)などの溶液コーティング工程を利用することができ、上記で挙げられたコーティング工程に限定されず、その他に通常の溶液コーティング方法が利用可能である。
【0020】
本発明は、前記伝導性金属コーティング液を基材の上部に前記コーティング方法によりコーティングした後、大気または低真空の雰囲気下で熱処理する。前記熱処理工程において熱処理温度は150〜300℃であることができ、150〜250℃で行うことが好ましい。前記熱処理温度で熱処理する時間は0.5〜1時間であることが好ましい。前記熱処理工程は、ホットプレートまたは加熱空気対流などの通常の熱処理工程を用いたり、IRランプ、プラズマ焼結(Plasma sintering)、マイクロ波焼結(Microwave sintering)及びレーザ焼結(Laser sintering)などから選択される熱処理方法を利用することができる。
【0021】
本発明の前記熱処理工程時、低真空雰囲気とは、1×10−1〜1×10−3torrを意味する。
【0022】
以下、本発明の伝導性金属薄膜を形成するメカニズムをより詳細に説明する。
【0023】
カルボン酸が銅粒子表面の酸化膜を除去する1次反応の反応式は次のとおりである。
CuO+2RCOOH−−>Cu(RCOO)2+H2O
【0024】
また、熱処理時、銅被膜に残存するカルボン酸が銅粒子に物理的、化学的に吸着されたカルボン酸とその他の残存するカルボン酸による酸化銅の2次還元反応の反応式は次のとおりである。
CuO+2RCOOH−−>Cu(COOH)2+H2O+CO2
Cu(COOH)2−−>Cu+CO2+H2
Cu(COOH)2−−>Cu+CO+H2O
【0025】
2次反応の副産物であるCOとH2は、酸化銅をさらに還元させる役割をし、その反応は次のとおりである。
CuO+CO−−>Cu+CO2
CuO+H2−−>Cu+H2O
【0026】
銅基盤の液相伝導性材料にカルボン酸を添加すると、上記のような反応により、伝導性発現の障害要因である酸化銅成分が銅に還元されるため、大気または低真空下での熱処理時にも比抵抗が発現される。
【0027】
また、この際に添加するカルボン酸の種類は非常に重要である。ギ酸と酢酸などの飽和酸、アクリル酸などの不飽和酸、二つのカルボキシル基を有するシュウ酸などのジ−カルボン酸、三つのカルボキシル基を有するクエン酸などのトリ−カルボン酸など、多様なカルボン酸が全て適用可能である。しかし、酸化銅を銅に還元させる効果は、カルボン酸の種類によって差があった。常温で液相形態である飽和酸の場合、純粋なギ酸(98%)と酢酸(99%)、プロピオン酸(99%)は、カルボキシル基の数は同一でアルキル基の鎖の長さのみが増加するが、図1に示すように、飽和酸のうちギ酸が添加された銅被膜の比抵抗が、真空下で熱処理時、全ての温度範囲で最も低かった。これは、ギ酸が酸化銅を除去したり銅に還元させるにおいてその効果が大きいということを意味する。ギ酸を除いた酢酸、プロピオン酸は、非極性を有する尾(tail)部分と極性を有する頭(head)とで構成されているが、アルキル鎖の長さが長くなるにつれて非極性を有する尾部分が相対的に大きくなるのである。即ち、分子量が増加するとカルボン酸は大きい非極性を有するようになり、従って、(+)電荷を有するCuOのCuは相対的にカルボキシル基と活発に反応しないため、酢酸、プロピオン酸が含まれた場合はギ酸が添加された場合に比べ酸化銅の還元が活発に発生しないと判断される。また、ジ−カルボン酸であるシュウ酸とトリ−カルボン酸であるクエン酸を添加した被膜の場合、図1の比抵抗特性を参照すると、シュウ酸、クエン酸の酸化銅の還元及び除去に効果があり、特にシュウ酸はギ酸とともに非常に優れた効果を示した。ギ酸とシュウ酸の雰囲気で還元が活発に起こる理由は、上述の2次還元反応式により理解されることができる。2次還元反応で示されるCu(COOH)2がギ酸とシュウ酸の雰囲気で熱処理時にうまく生成されて銅に容易に還元される反面、クエン酸の場合は、175℃程度で殆どがCO2とH2Oに熱分解されるため、熱処理時に還元効果が相対的に小さいのである。
【発明の効果】
【0028】
上述したように、本発明によると、コア/シェル(core/shell)構造の酸化銅成分を銅に還元させ、酸化を防止することにより、伝導性及び焼結性を向上させる方法が提供される。また、銅のような安価の材料を用いることにより材料費を低減することができるため、フレキシブル電子/電気システムに適用するための電極の工程コストを減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1〜実施例5及び比較例1に従って真空雰囲気下で熱処理時、カルボン酸を添加していない銅被膜(比較例1)とカルボン酸を添加した銅被膜(実施例1〜5)の温度による比抵抗特性を示したグラフである。
【図2】カルボン酸を添加していない銅被膜(比較例1)の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】ギ酸が添加された実施例1の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】酢酸が添加された実施例2の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】プロピオン酸が添加された実施例3の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】シュウ酸が添加された実施例4の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】クエン酸が添加された実施例5の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】実施例1及び実施例4に従って大気雰囲気で熱処理時、ギ酸、シュウ酸を添加した銅被膜の温度による比抵抗特性を示したグラフである。
【図9】カルボン酸を添加していない銅被膜(比較例1)の大気雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10】ギ酸が添加された銅被膜(実施例1)の大気雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図11】シュウ酸が添加された銅被膜(実施例4)の大気雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を下記の実施例に基づいてより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0031】
[実施例1]
20重量%の固形分率を有する銅ナノ粒子を含むコーティング分散液を製造するために、主溶媒としてエチレングリコール35gと副溶媒としてメチルアルコール40gを含む溶媒に、優れた単分散度を有する銅ナノ粒子20gを混合した後、これに分散剤としてナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(Sodium bis(2−ethylhexyl)sulfosuccinate;AOT)5gを混合する。このように準備された銅液相材料にギ酸0.0026molを添加する。前記溶液を超音波処理(sonication)とプラネタリーミリング(Planetary milling)を利用して均一に混合して、銅伝導性インクを製造した。前記コーティング液を液滴キャスティングを用いてガラス基板上にコーティングして、真空雰囲気(10−3 Torr)と大気雰囲気下で、200℃で30分間熱処理工程を行う。
【0032】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図3に示した。
【0033】
また、銅ナノ粒子被膜の走査型電子顕微鏡写真を図10に示した。
【0034】
[実施例2]
ギ酸を酢酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0035】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図4に示した。
【0036】
[実施例3]
ギ酸をプロピオン酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0037】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図5に示した。
【0038】
[実施例4]
ギ酸をシュウ酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0039】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図6に示した。
【0040】
また、銅ナノ粒子被膜の走査型電子顕微鏡写真を図11に示した。
【0041】
[実施例5]
ギ酸をクエン酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0042】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図7に示した。
【0043】
[比較例1]
ギ酸を添加せず、その他の条件は実施例1と同様に施す。
【0044】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図2に示した。
【0045】
また、銅ナノ粒子被膜の走査型電子顕微鏡写真を図9に示した。
【0046】
図1に示されたように、カルボン酸を添加した実施例1の場合、添加していない比較例1の場合に比べ、銅ナノ粒子の比抵抗値が大きく減少することが分かり、これにより、銅ナノ粒子の電気伝導性が向上したことが分かる。
【0047】
また、図8は、実施例1と実施例4でカルボン酸としてギ酸またはシュウ酸を添加した場合、大気雰囲気(真空雰囲気でなく)下で熱処理時、銅ナノ粒子の被膜の温度変化による比抵抗特性を観察したグラフであり、図8で銅は検出されなかった。
【0048】
本発明によると、図1から図11に示されたように、伝導性金属ナノ粒子の分散液にカルボン酸を添加すると、金属ナノ粒子の焼結が活発に進んで焼結性が向上され、これにより、伝導性金属ナノ粒子の比抵抗性が減少し、伝導性が向上することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によると、優れた伝導度を示す金属材料を、工程が簡単で、パターンの形成が容易であるスピンコーティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティングなどの溶液工程に適用することができる。また、安価の材料である銅基盤の液相材料に、酸化銅の還元及び除去に効果的なカルボン酸を添加することにより、銅被膜を低真空または大気雰囲気下で低温熱処理することで、優れた伝導性を有するようになるため、銅を電極物質として容易に適用することができる。従って、電気/電子材料産業の分野において次世代技術として適用することができるだけでなく、インク基盤の技術からタンパク質バイオチップの製造などのバイオ産業などの多様な産業分野への応用が期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加した伝導性金属コーティング液を用いて基材の上部に膜を形成することにより、伝導性及び焼結性が向上された伝導性金属薄膜を製造する方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
現在、電気/電子素子の製作において、微細構造物、例えば、金属パターン、絶縁層、分離膜などの製作には、露光とエッチング工程に基づいたフォトリソグラフィ(photolithography)法が主に用いられている。しかし、フォトリソグラフィは、多段階の複雑な製造工程が必要な、エネルギー集約的、高コストの生産技術である。また、露光とエッチング工程中にガス、廃水などが排出されるため、環境汚染を齎すという問題点がある。従って、露光/エッチング工程によるフォトリソグラフィ法に代替可能な、簡単且つ低コストで、環境に優しい技術開発の必要性が高まっている。
【0003】
フォトリソグラフィ工程は、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)などの伝導性高分子液相材料を、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティングなどの溶液工程によりパターンにすることが可能であるという工程の容易性が、大きい長所である。しかし、PEDOT/PSS伝導性高分子の伝導度は、金属素材に比べ非常に劣るという欠点がある。
【0004】
従って、優れた伝導度を有する金属素材を、工程が簡単で、パターンの形成が容易であるスピンコーティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティングなどの溶液工程に適用するために、液相材料として開発しようとする研究の必要性が非常に高まっている。簡単な例として、金属素材をナノ粒子に形成した後、特定溶媒で金属粒子を分散させる工程が最も注目されている。金属粒子をナノスケールで合成する場合、金属材料の融点を格段に低めることができる。これは、300℃以下の温度での低温熱処理により電極用伝導性被膜を形成できる基盤を提供する。このようにすると、粒子サイズによって300℃以下の温度でも粒子が融着することができ、自然に緻密な金属被膜を得ることができ、金属被膜の電気抵抗値が低くなる。
【0005】
しかし、安価の電極材料である銅の場合、粒子のサイズも重要であるが、熱力学的に酸化される性質を有するため、熱処理時の焼結挙動に障害を与える要因となり、その結果、高い伝導性被膜を得ることが困難となる。従来に電極物質として用いられる銀や金の場合、このような酸化の問題点はないが、高コストのためその使用が制限されている。従って、高い伝導性物質である銅を電極に適用するためには、酸化銅を除去または還元することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題点を解決するための本発明の目的は、銅やアルミニウムなどのように酸化されやすい伝導性金属ナノ粒子を特定溶媒に分散させ、カルボン酸(carboxylic acids)を添加して、金属酸化物とカルボン酸との物理的、化学的吸着を誘導することにより、金属酸化物の表面の酸化膜が除去された金属薄膜を形成して、伝導性及び焼結性に優れた伝導性金属薄膜を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明による伝導性金属薄膜の製造方法は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加することにより、伝導性金属コーティング液を製造する段階と、前記伝導性金属コーティング液を基材の上部にコーティングし、熱処理して、コア/シェル構造の伝導性金属粒子の表面の酸化膜を除去する段階と、前記酸化膜が除去された伝導性金属粒子で薄膜を形成する段階と、を含む伝導性金属薄膜の製造方法を提供する。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明は、基材の上部に伝導性金属薄膜を形成するために、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加して、伝導性金属コーティング液として用いる。
【0010】
本発明の発明者らは、伝導性金属薄膜を形成するための溶液工程に適した伝導性金属の液相材料を鋭意研究した結果、伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加した伝導性金属コーティング液を用いることにより、高効率の伝導性金属薄膜を形成することができる製造方法を開発するに至った。
【0011】
本発明は、前記伝導性金属コーティング液に適用可能な伝導性金属粒子の形態として、金属ナノ粒子、酸化金属ナノ粒子、コア/シェル(Core/Shell)構造の金属ナノ粒子及び有機金属化合物などを含む金属基盤の材料を用いることができ、好ましくは、コア/シェル(Core/Shell)構造の金属ナノ粒子を用いることが最も効果的である。前記伝導性金属粒子は、伝導性を有する全ての金属元素に適用することができ、好ましくは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、これらの合金及びこれらの複合体などに適用することができ、銅を用いることが最も好ましい。前記伝導性金属粒子は、表面自然酸化膜が形成されやすく、これにより電気伝導度が低下するため、酸化膜を除去することが電気伝導度及び焼結性の向上のために最も重要である。
【0012】
上記の金属粒子は、材料工程中、または工程後に、大気で空気中の酸素または水分と接触することにより自然酸化され、このような酸化は、焼結の進行を妨害し、高い伝導性の発現を困難とする。また、液相材料で金属被膜を形成した後、大気または低真空下で熱処理時に酸化がより速く進み、伝導度が全く発現されない結果を齎す。特に、優れた伝導性及び焼結性を有するために、金属ナノ粒子の構造が求められる。その反面、ナノ粒子は酸化速度がより速く、酸化する場合、高い表面積だけ酸化膜を形成する酸素の量も増加するため、伝導度及び焼結性に悪影響を与える。
【0013】
従って、本発明は、伝導性金属薄膜を高い伝導性が要求される電極として活用するために、有機酸(organic acid)であるカルボン酸(carboxylic acids)を伝導性金属粒子を含む分散液に添加する方法を提案している。本発明の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加して製造された伝導性金属コーティング液は、金属粒子酸化物とカルボン酸とが物理的、化学的に吸着して金属酸化物を還元させたり、前記酸化膜が除去された伝導性金属薄膜を形成することにより、焼結性及び伝導性を向上させる。また、前記カルボン酸が添加された伝導性金属コーティング液は、大気または低真空下で熱処理時にも優れた伝導性を発現するという驚くべき効果を有する。特に、このような工程は、コア/シェル構造の伝導性金属粒子に適用する場合に効果的であり、上記に挙げられた金属粒子のうちコア/シェル構造の銅ナノ粒子が最も効果的である。コア/シェル構造の銅ナノ粒子の薄膜形成に関するメカニズムは、下記でより詳細に説明する。
【0014】
本発明の前記伝導性金属コーティング液に含有されるカルボン酸として、飽和モノ−カルボン酸、不飽和カルボン酸、ジ−カルボン酸、及びトリ−カルボン酸から選択される1種以上を用いることが好ましく、その例としては、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸などの飽和モノ−カルボン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸、マロン酸、シュウ酸などのジ−カルボン酸、クエン酸などのトリ−カルボン酸を用いることが最も好ましい。
【0015】
本発明の前記コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液は、5〜40重量%の濃度を有することが好ましく、コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液に添加されるカルボン酸の添加量は、少なくとも金属粒子の表面を完全にコーティングできる程度の量でなければならず、前記分散液に含有された金属粒子に対して0.01〜30重量%のカルボン酸を添加することが好ましい。カルボン酸を0.01重量%未満で添加する場合、カルボン酸の添加による効果を期待することが困難であり、30重量%を超過して添加する場合、金属粒子の含量を高めることが困難であるため、十分な伝導性を確保することが困難となる。前記分散液に含有された金属粒子に対して、0.1〜10重量%のカルボン酸を添加することがより好ましい。
【0016】
前記コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液は、伝導性金属粒子、有機溶媒及び分散剤を含む。ここで、前記コア/シェル構造の伝導性金属粒子を含む分散液の組成比は、(a)伝導性金属粒子5〜40重量%、(b)有機溶媒50〜90重量%、及び(c)分散剤1〜10重量%の比で混合することが好ましい。
【0017】
前記有機溶媒は、特に限定されないが、カルボン酸と混合(または溶解)可能な溶媒を用いることが好ましく、例えば、極性溶媒として、エチレングリコール(ethyleneglycol)、メチルアルコール(methylalcohol)、イソプロピルアルコール(iso−propyl alcohol)、超純水(deionized water)、メトキシエタノール(methoxyethanol)、グリセロール(glycerol)などから選択される1種以上を用いることができ、非極性溶媒として、アセトン(acetone)、トルエン(toluene)、メチルエチルケトン(methylethylketone)、酢酸エチル(ethylacetate)、シクロヘキサン(cyclohexane)、乳酸ブチル(butyllactate)及びブチルカルビトールアセテート(butylcarbitolacetate)などから選択される1種以上を用いることができる。
【0018】
前記分散剤は、セバシン酸ジブチル(Dibutyl sebacate;DBS)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate;SDS)、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(Sodium bis(2−ethylhexyl)sulfosuccinate;AOT)などのアニオン系分散剤、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium bromide;CTAB)などのカチオン系分散剤、トリトンX−100(Triton X−100)、ツイン20(Tween 20)などのノ二オン系分散剤、ポリアクリル酸(Poly(acrylic acid);PAA)、ポリスチレン−alt−マレイン酸(poly(styrene−alt−maleic acid);PSM)、ポリスチレン−co−アクリル酸(Poly(styrene−co−acrylic acid);PSA)などの高分子電解質分散剤、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediamine tetraacetic acid;EDTA)、クエン酸(Citric acid)などから選択される1種以上を用いることができる。
【0019】
本発明は、前記伝導性金属コーティング液を用いて基材の上部に伝導性金属被膜を形成するために、工程が容易であるスピンコーティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、フレキソ(Flexo)、グラビア(Gravure)、オフセット(Off−set)などの溶液コーティング工程を利用することができ、上記で挙げられたコーティング工程に限定されず、その他に通常の溶液コーティング方法が利用可能である。
【0020】
本発明は、前記伝導性金属コーティング液を基材の上部に前記コーティング方法によりコーティングした後、大気または低真空の雰囲気下で熱処理する。前記熱処理工程において熱処理温度は150〜300℃であることができ、150〜250℃で行うことが好ましい。前記熱処理温度で熱処理する時間は0.5〜1時間であることが好ましい。前記熱処理工程は、ホットプレートまたは加熱空気対流などの通常の熱処理工程を用いたり、IRランプ、プラズマ焼結(Plasma sintering)、マイクロ波焼結(Microwave sintering)及びレーザ焼結(Laser sintering)などから選択される熱処理方法を利用することができる。
【0021】
本発明の前記熱処理工程時、低真空雰囲気とは、1×10−1〜1×10−3torrを意味する。
【0022】
以下、本発明の伝導性金属薄膜を形成するメカニズムをより詳細に説明する。
【0023】
カルボン酸が銅粒子表面の酸化膜を除去する1次反応の反応式は次のとおりである。
CuO+2RCOOH−−>Cu(RCOO)2+H2O
【0024】
また、熱処理時、銅被膜に残存するカルボン酸が銅粒子に物理的、化学的に吸着されたカルボン酸とその他の残存するカルボン酸による酸化銅の2次還元反応の反応式は次のとおりである。
CuO+2RCOOH−−>Cu(COOH)2+H2O+CO2
Cu(COOH)2−−>Cu+CO2+H2
Cu(COOH)2−−>Cu+CO+H2O
【0025】
2次反応の副産物であるCOとH2は、酸化銅をさらに還元させる役割をし、その反応は次のとおりである。
CuO+CO−−>Cu+CO2
CuO+H2−−>Cu+H2O
【0026】
銅基盤の液相伝導性材料にカルボン酸を添加すると、上記のような反応により、伝導性発現の障害要因である酸化銅成分が銅に還元されるため、大気または低真空下での熱処理時にも比抵抗が発現される。
【0027】
また、この際に添加するカルボン酸の種類は非常に重要である。ギ酸と酢酸などの飽和酸、アクリル酸などの不飽和酸、二つのカルボキシル基を有するシュウ酸などのジ−カルボン酸、三つのカルボキシル基を有するクエン酸などのトリ−カルボン酸など、多様なカルボン酸が全て適用可能である。しかし、酸化銅を銅に還元させる効果は、カルボン酸の種類によって差があった。常温で液相形態である飽和酸の場合、純粋なギ酸(98%)と酢酸(99%)、プロピオン酸(99%)は、カルボキシル基の数は同一でアルキル基の鎖の長さのみが増加するが、図1に示すように、飽和酸のうちギ酸が添加された銅被膜の比抵抗が、真空下で熱処理時、全ての温度範囲で最も低かった。これは、ギ酸が酸化銅を除去したり銅に還元させるにおいてその効果が大きいということを意味する。ギ酸を除いた酢酸、プロピオン酸は、非極性を有する尾(tail)部分と極性を有する頭(head)とで構成されているが、アルキル鎖の長さが長くなるにつれて非極性を有する尾部分が相対的に大きくなるのである。即ち、分子量が増加するとカルボン酸は大きい非極性を有するようになり、従って、(+)電荷を有するCuOのCuは相対的にカルボキシル基と活発に反応しないため、酢酸、プロピオン酸が含まれた場合はギ酸が添加された場合に比べ酸化銅の還元が活発に発生しないと判断される。また、ジ−カルボン酸であるシュウ酸とトリ−カルボン酸であるクエン酸を添加した被膜の場合、図1の比抵抗特性を参照すると、シュウ酸、クエン酸の酸化銅の還元及び除去に効果があり、特にシュウ酸はギ酸とともに非常に優れた効果を示した。ギ酸とシュウ酸の雰囲気で還元が活発に起こる理由は、上述の2次還元反応式により理解されることができる。2次還元反応で示されるCu(COOH)2がギ酸とシュウ酸の雰囲気で熱処理時にうまく生成されて銅に容易に還元される反面、クエン酸の場合は、175℃程度で殆どがCO2とH2Oに熱分解されるため、熱処理時に還元効果が相対的に小さいのである。
【発明の効果】
【0028】
上述したように、本発明によると、コア/シェル(core/shell)構造の酸化銅成分を銅に還元させ、酸化を防止することにより、伝導性及び焼結性を向上させる方法が提供される。また、銅のような安価の材料を用いることにより材料費を低減することができるため、フレキシブル電子/電気システムに適用するための電極の工程コストを減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1〜実施例5及び比較例1に従って真空雰囲気下で熱処理時、カルボン酸を添加していない銅被膜(比較例1)とカルボン酸を添加した銅被膜(実施例1〜5)の温度による比抵抗特性を示したグラフである。
【図2】カルボン酸を添加していない銅被膜(比較例1)の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】ギ酸が添加された実施例1の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】酢酸が添加された実施例2の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】プロピオン酸が添加された実施例3の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】シュウ酸が添加された実施例4の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】クエン酸が添加された実施例5の真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】実施例1及び実施例4に従って大気雰囲気で熱処理時、ギ酸、シュウ酸を添加した銅被膜の温度による比抵抗特性を示したグラフである。
【図9】カルボン酸を添加していない銅被膜(比較例1)の大気雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図10】ギ酸が添加された銅被膜(実施例1)の大気雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図11】シュウ酸が添加された銅被膜(実施例4)の大気雰囲気下で熱処理(200℃)した後の表面微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を下記の実施例に基づいてより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0031】
[実施例1]
20重量%の固形分率を有する銅ナノ粒子を含むコーティング分散液を製造するために、主溶媒としてエチレングリコール35gと副溶媒としてメチルアルコール40gを含む溶媒に、優れた単分散度を有する銅ナノ粒子20gを混合した後、これに分散剤としてナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(Sodium bis(2−ethylhexyl)sulfosuccinate;AOT)5gを混合する。このように準備された銅液相材料にギ酸0.0026molを添加する。前記溶液を超音波処理(sonication)とプラネタリーミリング(Planetary milling)を利用して均一に混合して、銅伝導性インクを製造した。前記コーティング液を液滴キャスティングを用いてガラス基板上にコーティングして、真空雰囲気(10−3 Torr)と大気雰囲気下で、200℃で30分間熱処理工程を行う。
【0032】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図3に示した。
【0033】
また、銅ナノ粒子被膜の走査型電子顕微鏡写真を図10に示した。
【0034】
[実施例2]
ギ酸を酢酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0035】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図4に示した。
【0036】
[実施例3]
ギ酸をプロピオン酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0037】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図5に示した。
【0038】
[実施例4]
ギ酸をシュウ酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0039】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図6に示した。
【0040】
また、銅ナノ粒子被膜の走査型電子顕微鏡写真を図11に示した。
【0041】
[実施例5]
ギ酸をクエン酸に変更することを除き、実施例1と同様に施す。
【0042】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図7に示した。
【0043】
[比較例1]
ギ酸を添加せず、その他の条件は実施例1と同様に施す。
【0044】
真空雰囲気下で熱処理(200℃)した後、銅ナノ粒子被膜の表面微細構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果を図2に示した。
【0045】
また、銅ナノ粒子被膜の走査型電子顕微鏡写真を図9に示した。
【0046】
図1に示されたように、カルボン酸を添加した実施例1の場合、添加していない比較例1の場合に比べ、銅ナノ粒子の比抵抗値が大きく減少することが分かり、これにより、銅ナノ粒子の電気伝導性が向上したことが分かる。
【0047】
また、図8は、実施例1と実施例4でカルボン酸としてギ酸またはシュウ酸を添加した場合、大気雰囲気(真空雰囲気でなく)下で熱処理時、銅ナノ粒子の被膜の温度変化による比抵抗特性を観察したグラフであり、図8で銅は検出されなかった。
【0048】
本発明によると、図1から図11に示されたように、伝導性金属ナノ粒子の分散液にカルボン酸を添加すると、金属ナノ粒子の焼結が活発に進んで焼結性が向上され、これにより、伝導性金属ナノ粒子の比抵抗性が減少し、伝導性が向上することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によると、優れた伝導度を示す金属材料を、工程が簡単で、パターンの形成が容易であるスピンコーティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティングなどの溶液工程に適用することができる。また、安価の材料である銅基盤の液相材料に、酸化銅の還元及び除去に効果的なカルボン酸を添加することにより、銅被膜を低真空または大気雰囲気下で低温熱処理することで、優れた伝導性を有するようになるため、銅を電極物質として容易に適用することができる。従って、電気/電子材料産業の分野において次世代技術として適用することができるだけでなく、インク基盤の技術からタンパク質バイオチップの製造などのバイオ産業などの多様な産業分野への応用が期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加することにより、伝導性金属コーティング液を製造する段階と、
前記伝導性金属コーティング液を基材の上部にコーティングし、熱処理して、コア/シェル構造の伝導性金属粒子の表面の酸化膜を除去する段階と、
前記酸化膜が除去された伝導性金属粒子で薄膜を形成する段階と、
を含む伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子は、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、モリブデン及びこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子は銅であることを特徴とする請求項2に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理は、大気または低真空下で行うことを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は、ホットプレート、加熱空気対流、IRランプ、プラズマ焼結(Plasma sintering)、マイクロ波焼結(Microwave sintering)及びレーザ焼結(Laser sintering)から選択される熱処理方法を用いることを特徴とする請求項4に記載の伝導性金属薄膜の製造方法
【請求項6】
前記熱処理温度は150〜300℃であることを特徴とする請求項5に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理温度は150〜250℃であることを特徴とする請求項6に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記カルボン酸は、飽和モノ−カルボン酸、不飽和カルボン酸、ジ−カルボン酸及びトリ−カルボン酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、マロン酸、シュウ酸及びクエン酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液は、(a)伝導性金属粒子5〜40重量%と、(b)有機溶媒50〜90重量%と、(c)分散剤1〜10重量%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒は、エチレングリコール(ethyleneglycol)、メチルアルコール(methyl alcohol)、イソプロピルアルコール(iso−propyl alcohol)、超純水(deionized water)、メトキシエタノール(methoxy ethanol)、グリセロール(glycerol)、アセトン(acetone)、トルエン(toluene)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、酢酸エチル(ethylacetate)、シクロヘキサン(cyclohexane)、乳酸ブチル(butyllactate)及びブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記分散剤は、セバシン酸ジブチル(Dibutyl sebacate;DBS)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate;SDS)、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(Sodium bis(2−ethylhexyl)sulfosuccinate;AOT)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium bromide;CTAB)、トリトンX−100(Triton X−100)、ツイン20(Tween 20)、ポリアクリル酸(Poly(acrylic acid);PAA)、ポリスチレン−alt−マレイン酸(poly(styrene−alt−maleic acid);PSM)、ポリスチレン−co−アクリル酸(Poly(styrene−co−acrylic acid);PSA)、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid;EDTA)及びクエン酸(Citric acid)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項13】
前記カルボン酸は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子に対して0.1〜10重量%で添加することを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項14】
前記コーティングは、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、フレキソ(Felxo)、グラビア(Gravure)及びオフセット(Off−set)から選択されるコーティング方法を用いることを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項1】
コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液にカルボン酸を添加することにより、伝導性金属コーティング液を製造する段階と、
前記伝導性金属コーティング液を基材の上部にコーティングし、熱処理して、コア/シェル構造の伝導性金属粒子の表面の酸化膜を除去する段階と、
前記酸化膜が除去された伝導性金属粒子で薄膜を形成する段階と、
を含む伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項2】
前記コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子は、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、モリブデン及びこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項3】
前記コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子は銅であることを特徴とする請求項2に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理は、大気または低真空下で行うことを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理は、ホットプレート、加熱空気対流、IRランプ、プラズマ焼結(Plasma sintering)、マイクロ波焼結(Microwave sintering)及びレーザ焼結(Laser sintering)から選択される熱処理方法を用いることを特徴とする請求項4に記載の伝導性金属薄膜の製造方法
【請求項6】
前記熱処理温度は150〜300℃であることを特徴とする請求項5に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理温度は150〜250℃であることを特徴とする請求項6に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記カルボン酸は、飽和モノ−カルボン酸、不飽和カルボン酸、ジ−カルボン酸及びトリ−カルボン酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、マロン酸、シュウ酸及びクエン酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項8に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項10】
前記コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子を含む分散液は、(a)伝導性金属粒子5〜40重量%と、(b)有機溶媒50〜90重量%と、(c)分散剤1〜10重量%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒は、エチレングリコール(ethyleneglycol)、メチルアルコール(methyl alcohol)、イソプロピルアルコール(iso−propyl alcohol)、超純水(deionized water)、メトキシエタノール(methoxy ethanol)、グリセロール(glycerol)、アセトン(acetone)、トルエン(toluene)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、酢酸エチル(ethylacetate)、シクロヘキサン(cyclohexane)、乳酸ブチル(butyllactate)及びブチルカルビトールアセテート(butyl carbitol acetate)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記分散剤は、セバシン酸ジブチル(Dibutyl sebacate;DBS)、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate;SDS)、ナトリウムビス(2−エチルヘキシル)スルホスクシネート(Sodium bis(2−ethylhexyl)sulfosuccinate;AOT)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethylammonium bromide;CTAB)、トリトンX−100(Triton X−100)、ツイン20(Tween 20)、ポリアクリル酸(Poly(acrylic acid);PAA)、ポリスチレン−alt−マレイン酸(poly(styrene−alt−maleic acid);PSM)、ポリスチレン−co−アクリル酸(Poly(styrene−co−acrylic acid);PSA)、エチレンジアミン四酢酸(Ethylenediaminetetraacetic acid;EDTA)及びクエン酸(Citric acid)から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項13】
前記カルボン酸は、コア/シェル(core/shell)構造の伝導性金属粒子に対して0.1〜10重量%で添加することを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【請求項14】
前記コーティングは、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、ディップコーティング、液滴キャスティング、フレキソ(Felxo)、グラビア(Gravure)及びオフセット(Off−set)から選択されるコーティング方法を用いることを特徴とする請求項1に記載の伝導性金属薄膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−508934(P2013−508934A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536666(P2012−536666)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007371
【国際公開番号】WO2011/052966
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(501014658)ハンワ ケミカル コーポレイション (3)
【出願人】(507175175)インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007371
【国際公開番号】WO2011/052966
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(501014658)ハンワ ケミカル コーポレイション (3)
【出願人】(507175175)インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション,ヨンセイ ユニバーシティ (18)
【Fターム(参考)】
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