説明

カルボン酸エステルの製造方法およびジスタノキサン化合物の製造方法

【課題】 触媒の回収に多量の水や非水溶性有機溶剤を使用することなく、また触媒を繰返し利用した場合でも触媒活性の低下が少ないエステル交換反応によるカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】 金属化合物を触媒としてカルボン酸エステルとアルコールとからエステル交換反応によりカルボン酸エステルを製造し、得られた少なくとも該金属化合物の変性物と製品エステルとを含む液またはスラリーから蒸留により製品エステルの一部または全部を留去して製品エステルを取得する。ついで製品エステルを留去した結果得られた少なくとも該金属化合物の変性物を含む残渣にアルコールを添加し、得られた溶液またはスラリーを50℃以上かつ当該溶液またはスラリーの沸点以下で処理する。得られた処理物を触媒としてカルボン酸エステルとアルコールとからエステル交換反応によりカルボン酸エステル製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物、特にスズ化合物を触媒としてカルボン酸エステルとアルコールとからエステル交換反応によりカルボン酸エステルを製造する方法に関する。
【0002】
また、本発明は前記のエステル交換反応の触媒として利用できるジスタノキサン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カルボン酸エステルとアルコールとからエステル交換反応によりカルボン酸エステルを製造するための触媒としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、クロム、アルミニウム、スズ、アンチモン等の各種金属の化合物が知られている。例えば、特許文献1にはスズ化合物が、特許文献2にはカルシウム化合物が、特許文献3にはカルシウム化合物とリチウム化合物が、特許文献4にはナトリウム化合物とカリウム化合物が開示されている。
【0004】
また特許文献1にはエステル交換反応に使用した後の反応液から製品のt-ブチルアミノエチルメタアクリレートを留去後の残渣をそのまま次回のエステル交換反応触媒として使用できることが開示されている。
【0005】
特許文献5にはアクリル酸エステルとアルカンジオールとのエステル交換反応によるヒドロキシアルキルモノアクリレートの製造方法において、スタノキサン化合物を反応触媒として使用し、反応後、反応生成液から抽出操作により触媒を回収して反応系に循環することが開示されている。
【特許文献1】特開昭56−104851号公報
【特許文献2】特開昭50−142513号公報
【特許文献3】特開昭61−50940号公報
【特許文献4】特開昭56−77242号公報
【特許文献5】特開平11−43466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにエステル交換反応に使用した後の反応液から製品のカルボン酸エステルを留去後の残渣をそのまま次回のエステル交換反応触媒として使用した場合、触媒の活性低下による反応遅延(反応時間の延長)が起きるという問題がある。特許文献5に記載の方法では、触媒を回収する際に複数回の抽出操作を行う必要があり、水や非水溶性有機溶剤を大量に使用するという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、触媒の回収に多量の水や非水溶性有機溶剤を使用することなく、また触媒を繰返し利用した場合でも触媒活性の低下が少ないエステル交換反応によるカルボン酸エステルの製造方法を提供することにある。
【0008】
また本発明は、前記のエステル交換反応によるカルボン酸エステルの製造方法で触媒として使用できるジスタノキサン化合物の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次の4つの工程を含むカルボン酸エステルの製造方法である。
【0010】
(反応工程1) 金属化合物を触媒としてカルボン酸エステル(原料エステル1という)とアルコール(原料アルコール1という)とからエステル交換反応によりカルボン酸エステル(製品エステル1という)を製造する工程。
【0011】
(製品回収工程) 製造工程1のエステル交換反応で得られた少なくとも該金属化合物の変性物と製品エステル1とを含む液またはスラリーから蒸留により製品エステル1の一部または全部を留去して製品エステル1を取得する工程。
【0012】
(残渣処理工程) 製品回収工程で製品エステル1を留去した結果得られた少なくとも該金属化合物の変性物を含む残渣にアルコール(添加アルコールという)を添加し、得られた溶液またはスラリーを50℃以上かつ当該溶液またはスラリーの沸点以下で処理する工程。
【0013】
(反応工程2) 残渣処理工程で得られた処理物(処理後残渣という)を触媒としてカルボン酸エステル(原料エステル2という)とアルコール(原料アルコール2という)とからエステル交換反応によりカルボン酸エステル(製品エステル2という)を製造する工程。
【0014】
また、本発明は次の4つのジスタノキサン化合物の製造方法である。
【0015】
1. 式(1)で表されるジオルガノスズジカルボキシレートとアルコールとを反応させる式(2)で表されるジスタノキサン化合物の製造方法。
【0016】
【化1】

【化2】

(式(1)および(2)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基(ただしエテニル基およびイソプロペニル基は除く)、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基および置換基を有していてもよいベンジル基からなる置換基の群から独立に選択される置換基である。)
【0017】
2. 式(3)で表されるジオルガノスズジアクリレートと炭素数2以上のアルコールとを反応させる式(4)で表されるジスタノキサン化合物の製造方法。
【0018】
【化3】

【化4】

(式(3)および(4)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基である。)
【0019】
3. 式(5)で表されるジオルガノスズジメタクリレートと、炭素数3以上のアルコールまたはエチレングリコールとを反応させる式(6)で表されるジスタノキサン化合物の製造方法。
【0020】
【化5】

【化6】

(式(5)および(6)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基である。)
【0021】
4. 式(7)で表されるジオルガノスズジベンゾエートと、炭素数4以上のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、またはグリセロールとを反応させる式(8)で表されるスタノキサン化合物の製造方法。
【0022】
【化7】

【化8】


(式(7)および(8)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基、各Rはベンゼン環の任意の炭素と結合する炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、および−Iからなる置換基の群から独立に選択される置換基である。各nは独立に0〜5の整数である。)
【発明の効果】
【0023】
本発明のエステル交換反応によるカルボン酸エステルの製造方法によれば、触媒の回収に多量の水や非水溶性有機溶剤を必要としない。また、触媒を繰返し利用した場合でも触媒活性の低下が少ないことからカルボン酸エステルを効率的に製造することができる。
【0024】
さらに、本発明のジスタノキサン化合物の製造方法によれば、前記のエステル交換反応によるカルボン酸エステルの製造方法で触媒として使用できるジスタノキサン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は次の4つの工程を含むカルボン酸エステルの製造方法である。
【0026】
(反応工程1) 金属化合物を触媒としてカルボン酸エステル(原料エステル1という)とアルコール(原料アルコール1という)とからエステル交換反応によりカルボン酸エステル(製品エステル1という)を製造する工程。
【0027】
(製品回収工程) 製造工程1のエステル交換反応で得られた少なくとも該金属化合物の変性物と製品エステル1とを含む液またはスラリーから蒸留により製品エステル1の一部または全部を留去して製品エステル1を取得する工程。
【0028】
(残渣処理工程) 製品回収工程で製品エステル1を留去した結果得られた少なくとも該金属化合物の変性物を含む残渣にアルコール(添加アルコールという)を添加し、得られた溶液またはスラリーを50℃以上かつ当該溶液またはスラリーの沸点以下で処理する工程。
【0029】
(反応工程2) 残渣処理工程で得られた処理物(処理後残渣という)を触媒としてカルボン酸エステル(原料エステル2という)とアルコール(原料アルコール2という)とからエステル交換反応によりカルボン酸エステル(製品エステル2という)を製造する工程。
【0030】
最初に反応工程1について説明する。
【0031】
触媒として用いる金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、マンガン、チタン、ジルコニウム、鉄、コバルト、クロム、アルミニウム、スズ、アンチモン等の各種金属の化合物が挙げられる。中でも、スズ、チタン、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、およびリチウム化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、ジブチルスズオキサイド、チタンテトラブトキシド、亜鉛アセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。本発明で用いる触媒としてはスズ化合物がより好ましい。スズ化合物としては、例えば、ジメチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジフェニルスズオキサイド等のスズオキサイド化合物、ジブチルスズクロライド、ジブチルスズブロマイド等のスズハロゲン化物、ジブチルスズジメトキサイド、ジブチルスズジエトキサイド等のスズアルコキシド化合物、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジメタクリレート、ジブチルスズジベンゾエート等のスズカルボキシレート化合物、1,3−ジアセトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン、1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン、1,3−ジベンジルオキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等のジスタノキサン化合物、ブチルヒドロキシスズオキサイド等が挙げられる。特に、スズ化合物由来の不純物を抑えることができ、触媒活性の高い、例えば、ジメチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、およびジフェニルスズオキサイド等のジアルキル(アリール)スズオキサイド化合物が好ましい。
【0032】
原料エステル1はカルボン酸エステルであれば特に限定されないが、カルボン酸のメチルエステル、エチルエステルが好ましい。このようなカルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、n−酪酸メチル、i−酪酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類、クロトン酸メチル、4−ペンテン酸メチル等の不飽和カルボン酸エステル類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のα,β不飽和カルボン酸エステル類、安息香酸メチル、クロロ安息香酸メチル、ブロモ安息香酸メチル、ヨード安息香酸メチル等の安息香酸エステル類、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等のα,β不飽和ジカルボン酸エステル類等が挙げられる。中でも、α,β不飽和カルボン酸エステル類、安息香酸エステル類、α−β不飽和ジカルボン酸エステル類が好ましい。
【0033】
原料アルコール1は特に限定されないが、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等のアルキルアルコール類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−ブタノール等のアルコキシアルキルアルコール類、2−フェノキシエタノール、1−フェノキシ−2−プロパノール等のフェノキシアルキルアルコール類、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール等のシクロアルキルアルコール類、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール等のハロアルキルアルコール類、エタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等のアミノアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、グリセロール等の多価アルコール類、ベンジルアルコール等が挙げられる。特に炭素数が2〜18のものが好ましい。
【0034】
エステル交換反応における原料エステル1と原料アルコール1の仕込み比率は特に限定されないが、例えば、1molの原料アルコール1に対して原料エステル1は0.05〜20molが好ましく、収率と生産性の兼ね合いから0.1〜10molがより好ましい。
【0035】
触媒の使用量は、金属化合物中の金属が原料アルコール1に対して0.0001〜0.1mol%となる量が好ましく、コストと反応性の兼ね合いから0.0001〜0.01mol%となる量が好ましい。
【0036】
原料エステル1が重合反応を起こすエステル類、例えば(メタ)アクリル酸エステル等の場合には、反応系内に重合防止剤を存在させることが好ましい。使用できる重合防止剤は特に限定されない。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール等のフェノール系化合物、N,N’−ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルパラフェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系化合物、あるいは下記式(9)で例示されるN−オキシル系化合物等が挙げられる。
【0037】
【化9】

(式(9)中、m=1〜18であり、R=R=H、もしくは、R、Rの一方が水素原子であり、他方がメチル基である。また、R、R、R、Rは直鎖状あるいは分岐状のアルキル基である。さらに、R10=Hまたは(メタ)アクリロイル基である。)
重合防止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
エステル交換反応の反応温度は、通常0〜200℃であり、50〜150℃が好ましい。反応温度は高い程反応速度が速くなり、低い程副反応が抑制できる。
【0039】
エステル交換反応の反応時間は、基質等の条件により異なるが、通常50時間以下であり、30時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。また反応時間は通常0.5時間以上であるが、これよりも短時間であってもよい。反応時間は短いほど工程時間が短縮されるので好ましい。
【0040】
エステル交換反応中には副生するアルコールを反応系から除去することもできる。副生するアルコールを除去すれば、逆反応を抑制して平衡移動を起こすことができるため反応時間が短くなるので好ましい。
【0041】
エステル交換反応後の液またはスラリーには、少なくとも触媒として使用した金属化合物の変性物と製品エステルとが含まれている。金属化合物の変性物とは、反応初期の金属化合物とは構造が変化したもので、初期の金属化合物とは触媒活性等の触媒性能が異なる。ただし、エステル交換反応開始後に全ての金属化合物が変性物に変わるとは限らない。例えば、反応初期の金属化合物がジブチルスズオキサイドで、原料エステル1がR−COORで表されるカルボン酸エステルの場合は前記式(1)で表されるジオルガノスズカルボキシレートが、原料エステル1がアクリル酸エステルの場合は前記式(3)で表されるジオルガノスズジアクリレートが、原料エステル1がメタクリル酸エステルの場合は前記式(5)で表されるジオルガノスズジメタクリレートが、原料エステル1がベンゼン環に置換基を有していてもよい安息香酸エステルの場合は前記式(7)で表されるジオルガノスズジベンゾエートが金属化合物の変性物に含まれる。
【0042】
次に製品回収工程について説明する。
【0043】
製品回収工程では製造工程1で得られたエステル交換反応後の液またはスラリーから蒸留により製品エステル1の一部または全部を留去して製品エステル1を取得する。蒸留は常圧で行っても減圧で行ってもよい。製品エステルが易重合性エステルの場合は、蒸留を低温で行い、重合が抑制できることから減圧の方が好ましい。
【0044】
製品エステル1を留去した結果、少なくとも該金属化合物の変性物を含む残渣(以下、単に残渣ともいう。)が得られる。残渣には、原料エステル1、原料アルコール1、製品エステル1が留去されずに残っている場合がある。残渣にエステル類が含まれていると、次の残渣処理工程において金属酸化物の変性物と添加アルコールとの反応を阻害する反応が起きることがあるので、残渣に含まれるエステル類は、残渣処理工程において残渣と添加アルコールの混合物の好ましくは0〜70体積%、より好ましくは0〜10体積%となるようにしておく。
【0045】
次に残渣処理工程について説明する。
【0046】
この工程では、製品回収工程で得られた残渣にアルコール(添加アルコールという)を添加する。添加アルコールは特に限定されないが、例えば、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、エタノールアミン等のモノアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、またはグリセロール等の多価アルコール類が好ましい。
【0047】
加熱時間を短くするという観点からは、高沸点なn−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、エタノールアミンがより好ましい。
【0048】
一方、次の反応工程2に先立って添加アルコールを除去または低減する必要がないことから、添加アルコールとしては反応工程2で使用する原料アルコール2が好ましい。
【0049】
また、好ましい添加アルコールは原料エステル1によっても異なる。原料エステル1がアクリル酸エステルの場合には、添加アルコールは炭素数2以上のアルコール類が好ましく、炭素数3以上のモノアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類がより好ましく、炭素数4以上のモノアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類が特に好ましい。原料エステル1がメタクリル酸エステルの場合には、添加アルコールは炭素数3以上のアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類が好ましく、炭素数4以上のモノアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類がより好ましく、炭素数5以上のモノアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類が特に好ましい。原料エステル1がベンゼン環に置換基を有していてもよい安息香酸エステルの場合には、添加アルコールは炭素数4以上のアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類が好ましく、炭素数5以上のモノアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類がより好ましく、炭素数6以上のモノアルコール類および炭素数2以上の多価アルコール類が特に好ましい。
【0050】
添加アルコールの使用量は特に限定されないが、残渣に含まれる金属化合物中の金属に対して、10倍mol以上が好ましく、50〜10000倍molがより好ましい。
【0051】
添加アルコールとして原料アルコール2を用いる場合は、添加アルコールの使用量は反応工程2における原料アルコール2の仕込み量としておくことが作業効率の点で好ましい。
【0052】
次いで添加アルコールを添加して得られた溶液またはスラリーを50℃以上かつ当該溶液またはスラリーの沸点以下で処理する。この際の処理温度は60〜160℃が好ましく、100〜120℃がより好ましい。処理温度は高いほど処理時間が短くて済み、低いほど金属化合物の変性物を高活性な化合物に変える反応の副反応が少なくなる。処理時間は、添加アルコールの種類等の条件により異なるが、通常10時間以下であり、5時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましい。また処理時間は通常0.25時間以上であるが、これよりも短時間であってもよい。処理時間は短いほど工程時間が短縮されるので好ましい。
【0053】
処理圧力は特に限定はなく、通常は常圧(大気圧近辺)で可能である。添加アルコールとして比較的沸点の低いメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールを用いる場合は、処理温度が高くなる高圧下で処理を行ってもよい。
【0054】
処理に用いる装置は内容物を前記処理温度の範囲に保持できるものであれば特に限定されないが、反応工程1および/または反応工程2で使用する反応釜(反応器)を用いることが好ましい。
【0055】
次に反応工程2について説明する。
【0056】
残渣処理工程で得られた処理後残渣を触媒として原料エステル2と原料アルコール2とからエステル交換反応により製品エステル2を製造する。触媒は全量が処理後残渣であってもよいし、処理後残渣に新品の触媒を追加したものであってもよい。反応工程2において原料、反応温度、反応時間、反応圧力、重合防止剤等の触媒以外の条件は、反応工程1と同様にして適宜決めればよい。原料エステル2および原料アルコール2の組合せは、反応工程1の組合せ、すなわち原料エステル1および原料アルコール1の組合せと同一でも異なっていてもよいが、同じ組合せであることが好ましい。
【0057】
本発明は繰返し行うことができる。すなわち、反応工程2を次回の反応工程1として本発明を繰返し行うことができる。
【0058】
このように、本発明のカルボン酸エステルの製造方法によれば、エステル交換反応に使用した金属化合物触媒、特にスズ化合物触媒にアルコールを加えて加熱処理するだけで活性を復活または維持することができる。そのため、触媒廃棄物の量を低減できる。また、加熱処理に使用するアルコールとして次回のエステル交換反応の原料アルコール2を使用し、エステル交換反応器で当該加熱処理を行った場合には、追加の装置や複雑な操作を必要としないことから、非常に低コストで実施することができる。
【0059】
次に、本発明のジスタノキサン化合物の製造方法について説明する。
【0060】
前記式(2)で表されるジスタノキサン化合物は、前記式(1)で表されるジオルガノスズジカルボキシレートとアルコールとを反応させて製造する。
【0061】
前記式(4)で表されるジスタノキサン化合物は、前記式(3)で表されるジオルガノスズジアクリレートと炭素数2以上のアルコールとを反応させて製造する。
【0062】
前記式(6)で表されるジスタノキサン化合物は、前記式(5)で表されるジオルガノスズジメタクリレートと、炭素数3以上のアルコールまたはエチレングリコールとを反応させて製造する。
【0063】
前記式(8)で表されるスタノキサン化合物は、前記式(7)で表されるジオルガノスズジベンゾエートと、炭素数4以上のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、またはグリセロールとを反応させて製造する。
【0064】
式(1)、(3)、(5)および(7)で表されるジオルガノスズジカルボキシレート(以下、ジオルガノスズジカルボキシレートという。)とアルコールとを反応させて式(2)、(4)、(6)および(8)で表される1,1,3,3−テトラオルガノ−1,3−ジカルボキシジスタノキサン化合物(以下、ジスタノキサン化合物という。)を製造する反応(以下、ジスタノキサン製造反応という。)において、ジオルガノスズジカルボキシレートとアルコールの仕込み比率は特に限定されないが、スズ化合物1molに対してアルコール10mol以上が好ましく、50mol以上がより好ましい。ジスタノキサン製造反応の反応温度は特に限定されないが、60〜160℃が好ましく、副反応の抑制、および反応速度を高めるために100〜120℃がより好ましい。ジスタノキサン製造反応の反応時の圧力は特に限定されないが、通常は大気圧付近で反応を行い、アルコールとして比較的沸点の低いメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を用いる場合は、加熱温度が高くなる加圧下で行ってもよい。ジスタノキサン製造反応の反応完了に必要な反応時間は、用いるアルコールおよびジオルガノスズジカルボキシレートによって異なる。反応時間は、沸点が高いアルコールを用いると短くなる傾向がある。
【0065】
ジスタノキサン化合物の製造に用いるアルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等のアルキルアルコール類、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−ブタノール等のアルコキシアルキルアルコール類、2−フェノキシエタノール、1−フェノキシ−2−プロパノール等のフェノキシアルキルアルコール類、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクタノール等のシクロアルキルアルコール類、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール等のハロアルキルアルコール類、エタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等のアミノアルキルアルコール類、ベンジルアルコール等が挙げられるが、カルボキシレートの種類によって、好ましいアルコール種が異なる。
【0066】
式(1)で表されるジオルガノスズジカルボキシレートを原料とする場合、用いるアルコールは特に限定されないが、中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、エタノールアミン等のモノアルコール類、またはエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類が好ましい。
【0067】
式(3)で表されるジオルガノスズジアクリレートを原料とする場合、用いるアルコールは炭素数2以上のアルコールである。このようなアルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、エタノールアミン等のモノアルコール類、またはエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。中でも、反応時間の短い炭素数3以上のアルコールが好ましい。
【0068】
式(5)で表されるジオルガノスズジメタクリレートを原料とする場合、用いるアルコールは炭素数3以上のアルコールまたはエチレングリコールである。炭素数3以上のアルコールとしては、例えば、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、エタノールアミン等のモノアルコール類、またはプロピレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。中でも、反応時間の短い炭素数4以上のアルコールが好ましい。
【0069】
式(7)で表されるジオルガノスズジベンゾエートを原料とする場合、用いるアルコールは炭素数4以上のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、またはグリセロールである。炭素数4以上のアルコールとしては、例えば、n−ブタノール、n−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、エタノールアミン等のモノアルコール類、または1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類が挙げられる。中でも、反応時間の短いの点で炭素数5以上のアルコールが好ましい。
【0070】
ジスタノキサン製造反応において、オルガノスズジカルボキシレートがジカルボキシジスタノキサンに変換していることは、13C−NMRまたはH−NMRによって確認することができる。すなわち、13C−NMRではカルボニル炭素の化学シフトが高磁場側にシフトすることが確認できる。また、H−NMRでは、C=Cに結合したプロトンの化学シフトにより、式(4)および式(6)で表されるジカルボキシジスタノキサンに変換していることが確認できる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例におけるスズ化合物の分析はH−NMRおよび13C−NMR、原料アルコールおよび製品エステル等の分析はガスクロマトグラフィー(以下、GCという。)により行った。エステル交換反応の原料アルコールの転化率は次式により算出した。
【0072】
転化率(%)=原料アルコールのモル数/[(原料アルコールのモル数+製品エステルのモル数]×100
【0073】
[実施例1]
(反応工程1)
20段オールダーショウ付き1Lガラス製四つ口フラスコに、n−ブタノール(以下、n−BuOHという。)を194g(2.617mol)、メチルメタクリレート(以下、MMAという。)を451g(4.505mol)、重合防止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−アセトアミノピペリジン−N−オキシル(以下、AMXという。)を0.075g、触媒としてジブチルスズオキサイド(以下、DBTOという。)を0.65g(2.6mmol)仕込み、油浴でフラスコを加熱してエステル交換反応によるn−ブチルメタクリレート(以下、BMAという。)の合成反応を開始させた。スズ量は原料ブタノールに対して0.001mol%とした。副生するメタノールを抜き出しながら釜内温103〜135℃で2時間加熱還流し、n−BuOHの転化率が99.6%に達したところで反応を終了した。
【0074】
(製品回収工程)
反応終了後、加熱減圧下においてMMAとBMAを蒸留により除去し、製品BMAを取得した。
【0075】
(残渣処理工程)
次いで、DBTOの変性物とAMXを含むフラスコ中の残渣にn−BuOHを194g(2.617mol)加えて油浴を140℃に加熱し、還流下で3時間加熱を行った。
【0076】
(反応工程2)
その後フラスコの内容物を40℃まで冷却し、MMAを451g(4.505mol)、AMXを0.075g加えて、1回目エステル交換反応と同様にして再びエステル交換反応を行った。この操作を繰り返して計6回のエステル交換反応を行った。各反応においては、n−BuOHの転化率が99%を超えた時点で反応を終了した。
【0077】
表1に各回の反応の反応時間と、n−BuOHの転化率を示した。この結果から6回目の反応においても1回目の活性が維持されていることが判った。
【表1】

【0078】
[比較例1]
残渣処理工程を実施せず、反応工程2でMMAと共に194gのn−BuOHを加えた以外は実施例1と同様にしてBMAの製造を行った。
【0079】
表2に各回の反応時間と、n−BuOHの転化率を示した。この結果から活性が徐々に低下することが判った。
【表2】

【0080】
[実施例2]
比較例1の6回目のエステル交換反応の製品回収工程で得られた残渣について、実施例1と同様にしての残渣処理工程と反応工程2(7回目のエステル交換反応)を行った。その結果、反応時間は2.5時間で、n−BuOHの転化率は99.0%で、6回目に比べて活性が大幅に回復していることが判った。
【0081】
また、6回目と7回目のエステル交換反応終了後に触媒残渣のH,13C−NMR測定を行ったところ、6回目の残渣にはジブチルスズジメタクリレートと1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンが同程度含まれており、7回目の残渣にはジブチルスズジメタクリレートのシグナルはわずかに観測されるのみで、1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンが大部分を占めていることが判った。
13C−NMR:ジブチルスズジメタクリレート in CDCl
>C=O;σ177.1ppm
13C−NMR:1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
>C=O;σ173.9ppm
H−NMR:ジブチルスズジメタクリレート in CDCl
−C=C(CH);σ5.6ppm(s)、σ6.2ppm(s)
H−NMR:1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
−C=C(CH);σ5.4ppm(s)、σ5.9ppm(s)
【0082】
[実施例3]1,3−ジアセトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンへの製造
ジブチルスズジアセテート1g(約2.85mmol)とメタノール60mlとを100ml三ツ口フラスコに入れて加熱還流を行った。1時間後にメタノールを減圧除去し、残渣の13C−NMR測定を行ったところ、全てのジブチルスズジアセテートが1,3−ジアセトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンへ変換されていることが判った。
13C−NMR:ジブチルスズジアセテート in CDCl
>C=O;σ181.6ppm
13C−NMR:1,3−ジアセトキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
>C=O;σ177.2ppm
【0083】
[実施例4]1,3−ジアクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンの製造
ジブチルスズジアクリレート1g(約2.67mmol)とn−ブタノール60mlとを100ml三ツ口フラスコに入れて加熱還流を行った。1時間後にn−ブタノールを減圧除去し、残渣の13C−NMR測定を行ったところ、全てのジブチルスズジアクリレートが1,3−ジアクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンへ変換されていることが判った。
13C−NMR:ジブチルスズジアクリレート in CDCl
>C=O;σ175.6ppm
13C−NMR:1,3−ジアクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
>C=O;σ171.9ppm
【0084】
[実施例5]1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンの製造
ジブチルスズジメタクリレート1g(約2.48mmol)とn−ブタノール60mlとを100ml三ツ口フラスコに入れて加熱還流を行った。3時間後にn−ブタノールを減圧除去し、残渣のH,13C−NMR測定を行ったところ、全てのジブチルスズジメタクリレートが1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンへ変換されていることが判った。
13C−NMR:ジブチルスズジメタクリレート in CDCl
>C=O;σ177.1ppm
13C−NMR:1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
>C=O;σ173.9ppm
H−NMR:ジブチルスズジメタクリレート in CDCl
−C=C(CH);σ5.6ppm(s)、σ6.2ppm(s)
H−NMR:1,3−ジメタクリロキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
−C=C(CH);σ5.4ppm(s)、σ5.9ppm(s)
【0085】
[実施例6]1,3−ジベンゾキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンの製造
ジブチルスズジベンゾエート1g(約2.10mmol)とn−ブタノール60mlとを100ml三ツ口フラスコに入れて加熱還流を行った。6時間後にn−ブタノールを減圧除去し、残渣の13C−NMR測定を行ったところ、全てのジブチルスズジベンゾエートが1,3−ジベンゾキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサンへ変換されていることが判った。
13C−NMR:ジブチルスズジベンゾエート in CDCl
>C=O;σ176.0ppm
13C−NMR:1,3−ジベンゾキシ−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン in CDCl
>C=O;σ172.8ppm



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の4つの工程を含むカルボン酸エステルの製造方法。
(反応工程1) 金属化合物を触媒としてカルボン酸エステル(原料エステル1という)とアルコール(原料アルコール1という)とからエステル交換反応によりカルボン酸エステル(製品エステル1という)を製造する工程。
(製品回収工程) 製造工程1のエステル交換反応で得られた少なくとも該金属化合物の変性物と製品エステル1とを含む液またはスラリーから蒸留により製品エステル1の一部または全部を留去して製品エステル1を取得する工程。
(残渣処理工程) 製品回収工程で製品エステル1を留去した結果得られた少なくとも該金属化合物の変性物を含む残渣にアルコール(添加アルコールという)を添加し、得られた溶液またはスラリーを50℃以上かつ当該溶液またはスラリーの沸点以下で処理する工程。
(反応工程2) 残渣処理工程で得られた処理物(処理後残渣という)を触媒としてカルボン酸エステル(原料エステル2という)とアルコール(原料アルコール2という)とからエステル交換反応によりカルボン酸エステル(製品エステル2という)を製造する工程。
【請求項2】
式(1)で表されるジオルガノスズジカルボキシレートとアルコールとを反応させる式(2)で表されるジスタノキサン化合物の製造方法。
【化1】

【化2】

(式(1)および(2)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基(ただしエテニル基およびイソプロペニル基は除く)、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基および置換基を有していてもよいベンジル基からなる置換基の群から独立に選択される置換基である。)
【請求項3】
式(3)で表されるジオルガノスズジアクリレートと炭素数2以上のアルコールとを反応させる式(4)で表されるジスタノキサン化合物の製造方法。
【化3】

【化4】

(式(3)および(4)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基である。)
【請求項4】
式(5)で表されるジオルガノスズジメタクリレートと、炭素数3以上のアルコールまたはエチレングリコールとを反応させる式(6)で表されるジスタノキサン化合物の製造方法。
【化5】

【化6】

(式(5)および(6)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基である。)
【請求項5】
式(7)で表されるジオルガノスズジベンゾエートと、炭素数4以上のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、またはグリセロールとを反応させる式(8)で表されるスタノキサン化合物の製造方法。
【化7】

【化8】

(式(7)および(8)において、各Rは炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、および置換基を有していてもよいアリール基からなる置換基の群から独立に選択される置換基、各Rはベンゼン環の任意の炭素と結合する炭素数1〜18の飽和または不飽和アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数5〜10のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、−F、−Cl、−Br、および−Iからなる置換基の群から独立に選択される置換基である。各nは独立に0〜5の整数である。)


【公開番号】特開2006−28066(P2006−28066A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207485(P2004−207485)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】