説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】エアバッグを車体に取付けるための取付ブラケットを構成するプレート片とブラケット片とが互いに簡単に分離可能に構成して、取付ブラケットの交換作業を容易化或いはアバッグモジュールの重量アップに対する自動車生産ラインにおける取付け作性を向上させる。
【構成】 車体の開口部4の上縁に沿って配置されるエアバッグ2が、エアバッグ2に設けた複数の取付片部6を取付けた取付ブラケット7を介してルーフサイドレール5に取着する場合、取付ブラケット7が、取付片部6を係着するプレート片8と、プレート片8と共にルーフサイドレール5に装着されるブラケット片9とで構成し、プレート片8とブラケット片9とは、互いに加締めることによって形成された凹状部8aと凸状部9aとを嵌合して形成された加締め部10を作用部を介して取外し可能に連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車車体の開口部の上縁に沿って配置されたエアバッグを当該開口部を閉塞するように膨張展開可能に構成したカーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかるカーテンエアバッグ装置は、通常、折り畳んだ状態のエアバッグを、車体の開口部の上縁に沿って配置した状態で、エアバッグに設けた複数の取付片部を取付けた取付ブラケットを介して車体に取着することによって、車体と装着されるように構成している。
【0003】
そして、この種の従来のカーテンエアバッグ装置における取付ブラケットは、車体への取付けのための取付孔を備えて車外側に配置される外プレート(ブラケット片)と車内側に配置される内プレート(プレート片)とから構成されている。外側プレートおよび内側プレートの前記取付片部への取付けは、取付片部の車外側の面と車内側の面とに、それぞれ、外側プレートと内側プレートを配置させて、両プレートによって取付片部を挟持した状態で、両プレートを車内側へ凹むように共に加締め、両プレートを固着した状態で車体へ取着するようにしていた(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−247203号公報 (特に、段落番号0028〜0029の記載を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のカーテンエアバッグ装置は、車体への装着を容易化することを意図して、かかる装着前に予めモジュール化しておく必要がある。かかるエアバッグモジュールは、インフレータなどを装着したエアバッグに設けた取付片部を取付ブラケットに装着しておくことにより行われている。そして、かかる取付片部の取付ブラケットへの装着は、たとえば上記従来技術においては、エアバッグの取付片部を内外プレートにより挟着した状態で、両プレートを共に加締めにより固着することにより行っている。内外両プレートは、車体への取付に際しては、ボルトなどの締着具を用いて車体に共締めされることから、取付片部を作業者が挟着した状態で片方の手により支持されながら車体に共締めするということも考えられる。
【0006】
しかしながら、互いに別体状態となっている内外両プレートを作業者が手に持って車体へ直接共締めすることは、車体取付作業の効率化やエアバッグモジュールにおける車体装着前の運搬作業のし易さなどを理由に通常行われておらず、上記モジュール化を行う際に、内外両プレートは、取付片部を挟着した状態で共締めしておくことが一般的である。このことから、上記従来の技術においては、モジュール化に際して、両プレートは、共に取付片部を挟持した状態で、車内側へ凹むように加締め付けることによって、可塑変形状態で固着構成するようにしている。しかも、両プレートは、可塑変形状態(取外し不可状態)で加締め付けた後に、ボルトなどを使用して車体に取付けるように構成されている。
【0007】
かかる構成により、従来の技術は、エアバッグを車体と取付けるには、両プレートの可塑変形による取付片部の挟着と共に、ボルトなどによる車体への取り付け作業が加わって、エアバッグの車体への取付工数や相応の設備費を要することになる。加えて、最近、エアバッグモジュールと統合化・一体化・合理化するための取付周辺部品が増加する傾向にあって、エアバッグモジュールの全体重量が嵩んでしまい、車体への取付ける作業性を益々悪くしている。
【0008】
そして、カーテンエアバッグ装置は、車体へ装着された通常の状態(自動車が側突事故に遭遇してエアバッグ自体が未だ膨張展開していない状態)において、稀ではあるが、乗員による想定以上の大きな力がアシストストラップやルーフライニングなどを介してエアバッグの車体への取付片部に加わってしまうような場合があった。このような場合には、取付ブラケットが損傷して車体取付部から外れてしまうこともあった。
【0009】
かかる場合、特許文献1に開示されたカーテンバッグ装置において、損傷してしまった取付ブラケットを新品の補用部品と交換することになるのである。しかし、取付ブラケットを構成する外側プレートと内側プレートとは、エアバッグの取付片部を挟着すべく隙間なく張り合わされており、しかも、加締め部による塑性変形状態で固着構成となっていることから、両プレートを折曲変形させながら無理矢理に分離することになって、分離作業を非常に困難なものとなり、取付ブラケットの新規な補用部品との交換作業が大掛かりとなって、取付ブラケットの交換作業コストが嵩むことになってしまう。
【0010】
そこで、この発明は、上記従来の技術における課題に鑑み、エアバッグを車体に取付けるための取付ブラケットを構成するプレート片とブラケット片とが簡単に分離可能に構成することにより、組み付け時の作業性の向上に加え、大掛かりな交換作業を行う必要をなく、延いては交換作業コストの低減を図るようになし、加えて、エアバッグモジュールの重量アップしたとしても、車体への取付作業性を向上させたカーテンエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るカーテンエアバッグ装置は、折り畳まれた状態で車体の開口部の上縁に沿って配置されるエアバッグが、エアバッグに設けた複数の取付片部をそれぞれ取付けた取付ブラケットを介して車体に取着することにより車体に装着されるように構成する場合に、取付ブラケットが、エアバッグに形成された取付片部を係着するプレート片と、プレート片と共に車体に装着されるブラケット片とで構成し、プレート片とブラケット片とは、互いに作用部を介して取外し可能に取着したことを特徴とする。
【0012】
かかる構成により、この発明は、取付ブラケットの新品補用部品との交換作業において、互いに弾性的に取着しているブラケット片とプレート片とを作用部を介して取外し可能に構成することによって簡単に取外すことができ、取付ブラケットの交換作業を容易化し、交換作業コストの低減を図ることができることになり、しかも、ブラケット片とプレート片とを個別状態で車体への取付を可能にすることができことから、エアバッグモジュールの重量アップに対する自動車生産ラインにおける取付け作性を向上させることができる。
【0013】
又、この発明のカーテンエアバッグ装置は、実施の態様として、ブラケット片とプレート片とが、互いに加締めることによって形成された断面凹状部と凸状部とを嵌合して形成された加締め部を作用部を介して取外し可能に構成している。
【0014】
かかる構成により、この発明は、上記発明が奏する作用効果に加えて、加締め部においては、エアバッグが膨張展開することによって加えられる一次モーメントによっては、凹状部と凸状部との弾性力を持って嵌合する状態が維持され、エアバッグの膨張展開作動には何ら支障を来たさないことになる。しかも、この発明は、エアバッグ自体は膨張展開していない状態下で、取付ブラケットが変形したような場合においては、加締め部における凹状部と凸状部との嵌合による弾性力に抗して作用部に二次モーメントを加えることによって、プレート片とブラケット片とを互いに取り外すことができ、取付ブラケットの交換作業を容易化し、交換作業コストの低減を図ることができる。しかも、凹状部と凸状部との嵌合により、プレート片とブラケット片とは、実質的に仮止めされた状態となっていることから、ボルトなどを用いて車体に取り付ける作業が非常に簡単化することができる。
【0015】
又、この発明のカーテンエアバッグ装置は、実施の態様として、プレート片とブラケット片とにそれぞれ互いに隙間を持って対向するようにエアバッグ方向に延在するように延設した延在片部により作用部を構成している。
【0016】
かかる構成により、この発明のカーテンエアバッグ装置は、上記発明が奏する作用効果に加えて、両延在片部間の隙間に例えばマイナスドライバーなどの工具を用いて両延在片部に二次モーメントを付与すれば、加締め部における凹凸嵌合部を取り外して、両者を簡単に分離できる。この結果、取付ブラケットの交換作業は容易化され、交換作業コストの低減を図ることができる。
【0017】
又、かかる構成により、ブラケット片とプレート片の延在片部が互いに対向していることから、ブラケット片あるいはプレート片の面方向に加えられる一次モーメントに対して、延在片部同士が干渉し合って対抗することができ、プレート片とブラケット片との連結部は離脱することがない。
【0018】
さらに、この発明のカーテンエアバッグ装置は、実施の態様として、プレート片の延在片部に取付片部係着部を形成するとともに、取付片部係着部にエアバッグにおける取付片部をブラケット片に係着することにより、取付片部がブラケット片とプレート片との間において挟持されていないように構成している。
【0019】
かかる構成により、この発明のカーテンエアバッグ装置は、上記発明が奏する作用効果に加えて、ブラケット片の延在片部に係着されたエアバッグの取付片部が、ブラケット片の延在片部に対して対向するプレート片の延在片部に対して離間していることになる。この結果、従来のように、外プレートと内プレートとで挟着するような場合とは異なって、エアバッグの取付片部が、プレート片の延在片部に干渉することを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように構成するこの発明に係るカーテンエアバッグ装置は、取付ブラケットの新品補用部品との交換作業において、互いに取着しているブラケット片とプレート片とを作用部を介して取外し可能に構成することによって、簡単に取外すことができ、取付ブラケットの交換作業を容易化し、交換作業コストの低減を図ることができることになり、しかも、ブラケット片とプレート片とを個別状態で車体への取付を可能にすることができことから、エアバッグモジュールの重量アップに対する自動車生産ラインにおける取付け作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置を装備した自動車を車内側から描画した概略図である。
【図2】図1の一点鎖線楕円内を拡大して車内側より描画した斜視図である。
【図3】図1の一点鎖線楕円内を拡大して車外側より描画した斜視図である。
【図4】図2の一点鎖線円内を拡大して車内側より描画した斜視図である。
【図5】図1における取付ブラケットを構成するプレート片およびブラケット片を組み付ける前における分解した状態を描画した斜視図である。
【図6】図4におけるA−A断面図である。
【図7】ブラケット片に対してプレート片を取り外した状態を描画した図4のA−A断面図である。
【図8】ブラケット片の面方向に一次モーメントが加わった場合を描画した図4におけるA−A断面図である。
【図9】プレート片の面方向に一次モーメントが加わった場合を描画した図4におけるA−A断面図である。
【図10】この発明の他の実施例に係るカーテンエアバッグ装置における図4におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明に係るカーテンエアバッグ装置は、取付ブラケットの新品補用部品との交換作業において、互いに弾性的に取着しているブラケット片とプレート片とを作用部を介して取外し可能に構成することによって、簡単に取外すことができ、取付ブラケットの交換作業を容易化し、交換作業コストの低減を図ることができように構成している。
【0023】
次に、この発明のカーテンエアバッグ装置に係る実施例について、図を用いて説明する。
【0024】
図1に示すように、この発明に係るカーテンエアバッグ装置1は、所定の形状を有する複数の基布を互いに縫製することにより袋状に形成したエアバッグ2とエアバッグ2内に膨張ガスを射出して膨張展開させるインフレータ3とを有して構成している。エアバッグ2は、細長く折り畳んだ状態で車体の開口部4の上縁であるルーフサイドレール5に配置されている。
【0025】
そして、エアバッグ2は、小片で構成する複数個の取付片部6が互いに離間する状態で形成されて構成しており、各取付片部6をそれぞれ係着した取付ブラケット7を介してルーフサイドレール5に取着されている。取付ブラケット7は、エアバッグ2の取付片部6を係着するプレート片8と、プレート片8と共に車体を構成するルーフサイドレール5に装着されるブラケット片9とで構成している。
【0026】
各プレート片8と各ブラケット片9とは、互いに重合した状態で加締めることによって断面凹凸形状に形成された加締め部10により取外し可能に連結構成されている。加締め部10は、プレート片8側を車外側に向かって凹状になるように形成される凹状部8aとブラケット片9側を車内側に向かって凸状になるように形成された凸状部9aとは、互いに取外し可能に嵌合することによって、二次モーメントを付与することで取外し可能に構成している。このために、凹状部8aに対する凸状部9aの嵌合寸法は、ブラケット片9の板厚より小さな寸法であることが好ましく、また、凸状部9aの断面形状が小さなテーパ状を呈した先細り状に形成されているとともに凹状部8aの断面形状が同じく小さなテーパ状を呈した先太り状に形成されている。
【0027】
さらに、プレート片8およびブラケット片9は、加締め部10に対して離間した位置において、不図示のボルトなどの締着具を用いてルーフサイドレール5に取着すべく、取付孔8b、9bがそれぞれ形成されている。プレート片8およびブラケット片9には、加締め部10および両取付孔8b、9bと共に直線で結んだ上で形成される略三角形の頂点に位置するように、加締め部10を形成する際の治具に対する位置決め孔8c、9cが形成されている。したがって、プレート片8およびブラケット片9とは、取付孔8b、9bを互いに連通させると共に、位置決め孔8c、9cを不図示の治具の位置決め部に嵌合して当該治具に位置決め保持された状態で、加締め部10を形成することにより連結構成されている。
【0028】
また、プレート片8とブラケット片9とは、それぞれ位置決め孔8c、9cより車体下側(すなわちエアバッグ2側)にそれぞれ延設された延在片部8d、9dを有して構成している。プレート片8側の延在片部8dには、取付片部6を挿通させる取付片部係着部としての通し孔8eが形成されている。したがって、取付片部6は、通し孔8eに挿通させた状態でループ状に形成した後縫製することによって、プレート片8に係着されることになる。かかることから、取付片部6は、ブラケット片9とプレート片8との間において挟着されていない状態において、係着されていることになる。なお、取付片部6は、通し孔8eに挿通させた状態でループ状に形成した後縫製することによってプレート片8に係着するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、プレート片8に取付片部6を挟合することができる挟合部を形成し、当該挟着部に取付け片部6を挟着した後にリベットなどにより係着するようにしてもよい。
【0029】
さらに、プレート片8側の延在片部8dは、車内側に折曲された折曲部8d−1を有して、ブラケット片9側の延在片部9dとの間に隙間11を持って対向するように形成されている。そして、両延在片部8d、9d間における隙間11に図2に示すように挿入したマイナスドライバーのような工具12を例えば矢印13方向に回転させることによって、両延在片部8d、9dに二次モーメント14を付与することによって、加締め部10を当該弾性力に抗して分離可能に構成している(図7に示す状態を参照)。したがって、両延在片部8d、9でゃ、加締め部10を取外すための作用部を構成していることになる。
【0030】
したがって、プレート片8の延在片部8dに係着したエアバッグ2の取付片部6が、プレート片8の延在片部8dに対して対向するブラケット片9の延在片部9dに対して離間していることになる。この結果、従来のように、外プレートと内プレートとで挟着するような場合とは異なって、ブラケット片9とプレート片8との間において挟着されない状態で構成されていることから、エアバッグ2の取付片部が、ブラケット片9の延在片部9dに干渉することを防止できる。
【0031】
加えて、ブラケット片9は、例えば相隣り合う同士を一組として、クランク状を呈して延在する連結片9−1により一体に連結構成されている。連結片9−1における略中央に存するコ字状部9−1aには、車体取付孔9−1cが穿設されており、車体取付孔9−1cは、これに挿入した不図示のボルトなどの締着具をルーフサイドレール5に取り付けることによって、車体の前後方向に長寸法となったエアバッグ2が垂れ下がらないように構成している。
【0032】
各ブラケット片9の外側部には、外方に延びる引掛け爪片9fが形成されている。引掛け爪片9fは、図4に示すように、ルーフサイドレール5に設けた引っ掛け孔5aに引っ掛けするように構成されている。かかる、引っ掛け孔5aへの引掛け爪片9fの引掛けによって、エアバッグ2は、ルーフサイドレール5に装着する際に捩じれてしまわないように、位置決めするようになっている。
【0033】
車体に装着された状態のエアバッグ2の一部は、バッグカバー体片Cでカバーされている。バッグカバー体片Cは、連結片9−1における中央部に存する平面視コ字状部9−1aに対向するように、一対の起立片C−1が形成されている。各起立片C−1には、上下一対の係合爪部C−2が形成されており、各係合爪部C−2は、コ字状部9−1aを係合抱着することにより、連結片9−1とバッグカバー体片Cとを組み付けている。また、各起立片部C−1の略中間部には、係合爪部C−3が形成されており、係合爪部C−3が形成されており、係合爪部C−3は、連結片9−1のコ字状部9−1aに形成した係合孔9−1bに係合して、係合爪C−2による連結片9−1とバッグカバー体Cとの組み付け状態を助成している。
【0034】
上記のように構成するこの発明における実施例においては、エアバッグ2自体は膨張展開していない状態下で、取付ブラケット7が車体であるルーフサイドレール5から外れたような場合においては、取付孔8b、9bおよび車体取付孔9−1cに挿入されてルーフサイドレール5に取着されているボルトなどの締着具が取り外された際には、凸状部9aと凹状部8aとが互いに嵌合している加締め部10において、二次モーメント14を加えることによって、プレート片8とブラケット片9とを取り外すことができ、取付ブラケット7の交換作業を容易化し、交換作業コストの低減を図ることができる。しかも、凹状部9aと凸状部8aとの嵌合により、プレート片8とブラケット片9とは、実質的に仮止めされた状態となっていることから、ボルトなどを用いて車体に取り付ける作業が非常に簡単化することができる。加えて、プレート片8とブラケット片9とは、取外し可能な加締め部10によって互いに組み付けられていることから、例えば、新車組み立てラインなどにおいてそれぞれ個別状態で車体に取付けることができ、エアバッグモジュールへの取付部品が増加して、プレート片8やブラケット片9が重量的に嵩んでしまったような場合でも、取付け作業性を向上させることができる。
【0035】
また、上記実施例においては、加締め部10における凹状部8aに対して凸状部9aは、ブラケット片9自体の板厚より小さな寸法だけ嵌合するように構成していることから(図3参照)、両延在片部8d、9d同士の隙間11にマイナスドライバーのような工具を挿入することによって、二次モーメント14を加えない限りプレート片8とブラケット片9とが離脱しない程度の弾性力で保持されている。このことによって、エアバッグ自体が車体に装着されたままの状態を保持して膨張展開することができる。しかも、エアバッグ自体は膨張展開していない状態下で、取付ブラケットが車体から外れたような場合のメンテナンス作業においては、両延在片部8d、9d同士の隙間11にマイナスドライバーのような工具を挿入することによって、加締め部10における凸状部9aと凹状部8aとに二次モーメント14を加えることによって、プレート片8とブラケット片9とを分離でき(図4に示す状態を参照)、プレート片8或いはブラケット片9の新規の補用部品への交換を必要とせず再利用可能とすることができる。
【0036】
また、上記実施例においては、プレート片8およびブラケット片9における両延在片部8d、9dが互いに対向延在しているのであるが、たとえば、図8に示すように、ブラケット片9に面方向(矢印15方向)に加えられる荷重(一次モーメント)がかかった場合には、ブラケット片9に対して延在片部9dが折曲形成されていることから、当該折曲部8d−1が支点となってブラケット片9の延在片部9dがプレート片8の延在片部8dの方向に変形することになる。かかる変形は、延在片部8dに当接することによってある程度折曲変形されるだけであって、ブラケット片9面方向に加えられる一次モーメントに対して、延在片部8d、9d同士が干渉し合って対抗することができる。この結果、プレート片8とブラケット片9との連結部である加締め部10は分離することがない。
【0037】
また、プレート片8の延在片部8dは、プレート片8に対して折曲されずストレート形状を呈して、ブラケット片9の延在片部9dに対向延在していることから、たとえば、図9に示すように、プレート片8に面方向(矢印16方向)に加えられる荷重(一次モーメント)がかかった場合には、プレート片8の延在片部8dがかかる荷重に対して折曲されることがない。この結果、プレート片8とブラケット片9との連結部である加締め部10は分離することがない。
【0038】
図10に示す実施例は、上記に説明した実施例に対して変形例ともいうべく他の実施例である。上記した一実施例では、両延在片部8d、9dにおける隙間11にマイナスドライバーなどの工具を挿入して両延在片部8d、9dのどちらか一方に対して他方に二次モーメントを加えることによって、加締め部10を取外し可能に構成しているが、図10に示す他の実施例においては、両延在片部8d、9dの隙間11が小寸法に設定されているとともに、ブラケット片9の位置決め孔9cに対して、プレート片8の位置決め孔8cを小径に形成することによって、段差部8fを形成している。
【0039】
かかる図10に示す他の実施例においては、ブラケット片9の位置決め孔9c側から挿入した不図示の工具を段差部8fに当接させた状態で殴打することによって、加締め部10を取外し可能にするようになっている。したがって、段差部8fは、加締め部10を取外すための作用部を構成することになる。
【0040】
なお、上記2つの実施例においては、プレート片8とブラケット片9とは、互いに加締め部10によって連結するように構成しているが、これに限定されるものではなく、両者をビス等の締着具を用いて連結するようにして、かかる締着具を取外すことによって、互いに分離可能に構成するようにしてもよい。
【0041】
上記いずれの実施例においては、プレート片8の凸状部9aにブラケット片9の凸状部9aを嵌合することによって加締め部10を構成するようにしたが、これに限定されるものではなく、ブラケット片9側に凸状部9aを形成するとともにプレート片8側に凸状部9aを形成することによって、加締め部10を構成するようにしてもよい。かかる場合、凸状部9aが、車体を構成するルーフサイドレール5側に突出するように形成されることになることから、ルーフサイドレール5側に凸状部9aにおける突起部を受け入れる凹部を形成しておくことが肝要である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、取付ブラケットの新品補用部品との交換作業において、互いに弾性的に取着しているブラケット片とプレート片とを作用部を介して取外し可能に構成することによって簡単に取外すことができ、取付ブラケットの交換作業を容易化し、交換作業コストの低減を図ることができることになり、しかも、ブラケット片とプレート片とを個別状態で車体への取付を可能にすることができことから、エアバッグモジュールの重量アップに対する自動車生産ラインにおける取付け作性を向上させることができることから、例えば自動車車体の開口部の上縁に沿って配置されるエアバッグを前記開口部を閉塞するように膨張展開可能に構成したカーテンエアバッグ装置等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0043】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグ
4 開口部
5 ルーフサイドレール(車体)
6 取付片部
7 取付ブラケット
8 プレート片
8a 凸状部
8d 延在片部(作用部)
8e 通し孔(取付片部係着部)
8f 段差部(作用部)
9 ブラケット片
9a 凹状部
9d 延在片部(作用部)
10 加締め部
11 隙間
12 工具
14 二次モーメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態で車体の開口部の上縁に沿って配置されるエアバッグが、該エアバッグに設けた複数の取付片部を取付けた取付ブラケットを介して前記車体に取着することにより車体に装着されるように構成したカーテンエアバッグ装置であって、前記取付ブラケットが、前記エアバッグに形成された前記取付片部を係着するプレート片と、該プレート片と共に前記車体に装着されるブラケット片とで構成し、該ブラケット片と前記プレート片とは、互いに作用部を介して取外し可能に取着したことを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ブラケット片と前記プレート片とは、互いに加締めることによって形成された断面凹状部と凸状部とを嵌合して形成された加締め部を構成していることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記ブラケット片と前記プレート片に、それぞれ互いに隙間を持って対向するようにエアバッグ方向に延在するように延設された延在片部により前記作用部を構成していることを特徴とする請求項2に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記プレート片の前記延在片部に取付片部係着部を形成するとともに、該取付片部係着部に前記エアバッグにおける前記取付片部を前記ブラケット片に係着することにより、前記取付片部が前記ブラケット片と前記プレート片との間において挟持されていないことを特徴とする請求項3に記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−49390(P2013−49390A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189571(P2011−189571)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】