説明

カートリッジ型注入方式固着剤

【課題】カートリッジに収納した薬剤を注入する方式の固着剤であって、短時間に低温度環境下においても優れた固着力を発揮し、あと施工アンカーの固着剤として最適な無機系固着剤を提供する。
【解決手段】A薬剤とB薬剤とが個々にカートリッジに収納されており、ペースト状の両薬剤を各カートリッジから押し出し混合して使用する注入形式の固着剤であって、A薬剤がリン酸一アンモニウムを有効成分とし、且つ水を含有し、B薬剤がマグネシウム塩を有効成分とすることを特徴とし、好ましくは、マグネシウム塩が酸化マグネシウムであり、A剤がリン酸一アンモニウムと共にリン酸三カルシウムおよびトリポリリン酸ナトリウムを含み、B剤がマグネシウム塩と共に、A剤に対して不活性な無機微粉および該無機微粉と含有するマグネシウム塩に不活性な液体を含む固着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジに収納した薬剤を注入する方式の固着剤であって、鉄筋等を母材に固定する手段として利用され、短時間に低温度環境下においても優れた固着力を発揮し、あと施工アンカーの固着剤として最適な無機系固着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
あと施工アンカーには金属系アンカーと接着系アンカーとが有り、金属系アンカーは金属部材を用いたアンカーであり、軽量付帯設備の転倒防止など作用する引張荷重の低い箇所に用いられている。一方、接着系アンカーは、接着剤を用いたアンカーであり、高い引張耐力を有するので構造物の補修、補強、重量物の吊り下げなど作用する引張荷重の高い箇所に用いられる。
【0003】
接着系アンカーは使用材料面から大別して樹脂系と無機系とが有り、樹脂系薬剤としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが用いられており、無機系薬剤としてはマグネシアリン酸塩、セメントなどが用いられている。
【0004】
一般に、無機系固着剤は耐熱性に優れており、硬化後の収縮率が小さく、原材料の入手が比較的容易であり特別な設備を必要としないと云う利点を有している。また、セメント系固着剤は0℃以下では硬化せず、硬化性に温度依存性があるが、マグネシアリン酸塩系固着剤は−5℃の低温でも使用可能であり、15分程度で硬化するなど低温環境下での硬化性に優れている。
【0005】
一方、樹脂系固着剤は、耐熱性が低く、硬化後の収縮率も大きいうえ、硬化性は温度依存性があり、低温下においてエポキシ樹脂系は−5℃まで使用可能であるが硬化時間が長く、ウレタン樹脂系は0℃以下では硬化しない。また、樹脂系固着剤は原材料が入手し難く、合成設備が必要である。
【0006】
また、従来の固着剤は、施工方法によってカプセル方式と注入方式とに分類される。カプセル方式は施工箇所に埋設して使用する方式であり、カプセルの形状が各種施工条件毎に固定されており基本的にはメーカーが推奨する標準施工に適用されアンカー筋の種類および径、定着長等が規定される。このためメーカーは各種施工条件に応じ多数の種類のカプセルを用意しなければならない。しかし、定着長が長い場合、カプセル方式では限界があり、また、アンカー筋の打ち残しの発生確率が高くなる、施工作業が煩雑となる等の問題がある。また、アンカー筋打ち込みの場合、振動や騒音が発生するため構造物を使用しながらの施工が困難である。
【0007】
一方、注入方式はペースト状の主剤を収納したカートリッジと、主剤を固化させる固化剤を収納したカートリッジを用い、これらの薬剤を混合して施工箇所に注入する方式である。従来、施工の簡便性や品質を確保するため樹脂系カートリッジ型のアンカー固着剤が使用されてきた。
【0008】
樹脂系固着剤の場合、ペースト状の主剤および固化剤をそれぞれのカートリッジに分離収納することが容易であり、これらの薬剤をピストンで押し出しカートリッジ先端に取り付けたミキシングノズルで混合することが容易であるので、従来は主に樹脂系固着剤が使用されてきた。
【0009】
一方、無機系薬剤の固着剤は、固化成分として水硬性材料が用いられるが、その形態は粉末であるためカートリッジに充填してもピストンで押し出すことができない。また、カートリッジに薬剤を収納するにはペースト状にする必要があるが、水硬性材料はペースト化するために水を使用することが出来ない。このため、従来の無機系固化剤は、水硬性材料と水を含む材料とを分離収納されたカプセル型や紙チューブ式のものが知られている(特許文献1:特公平3−16480号公報)。しかし、紙チューブ式の場合、水への浸漬時間の違いによって品質が大きく変動する問題があり、吸水後、紙チューブが柔らかくなり施工性が悪くなる等の欠点がある。
【0010】
また、無機系のアンカー固着剤を使用することによって樹脂系アンカー固着剤で見られた問題点を解消できることが提案されている(特許文献2:特開2004−244238号公報)。しかし、この提案はカプセル方式、回転・打撃型、ガラス管式の固着剤であり、カートリッジ型注入方式の固着剤ではない。
【特許文献1】特公平3−16480号公報
【特許文献2】特開2004−244238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のカートリッジ型注入方式の固着剤は樹脂系薬剤を用いたものである。しかし、樹脂系薬剤は耐熱性が弱い欠点があり、例えば、火災発生時に温度と引抜き荷重が同時に作用した場合、固着力を失いアンカー筋が抜け出す問題がある。また、低温度下(特に氷点下)における強度発現が遅い欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、注入方式における樹脂系固着剤の上記課題を解決した、以下に示す無機系注入方式の固着剤を提供する。
〔1〕A薬剤とB薬剤とが個々にカートリッジに収納されており、ペースト状の両薬剤を各カートリッジから押し出し混合して使用する注入形式の固着剤であって、A薬剤がリン酸一アンモニウムを有効成分とし、且つ水を含有し、B薬剤がマグネシウム塩を有効成分とすることを特徴とする固着剤。
【0013】
本発明の固着剤は以下の態様を含む。
〔2〕マグネシウム塩が酸化マグネシウムである上記[1]に記載する固着剤。
〔3〕A剤がリン酸一アンモニウムと共にリン酸三カルシウムおよびトリポリリン酸ナトリウムを含む上記[1]または上記[2]に記載する固着剤。
〔4〕B剤がマグネシウム塩と共に、A剤に対して不活性な無機微粉および該無機微粉と含有するマグネシウム塩に不活性な液体を含む上記[1]〜上記[3]の何れかに記載する固着剤。
〔5〕A剤およびB剤の粘度が20℃において800〜6000mPa・Sの範囲である上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する固着剤。
〔6〕低温で注入使用する上記[1]〜上記[5]の何れかに記載する固着剤。
〔7〕あと施工アンカーの固定に用いられる上記[1]〜上記[6]の何れかに記載する固着剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の固着剤は、無機系薬剤を用いているので耐熱性に優れており、また、固着成分としてマグネシアリン酸塩を用いているので、氷点下−5℃程度においても強度発現が良好である。
【0015】
また、本発明の固着剤は、従来は知られていない無機系注入方式、カートリッジ型アンカー固着剤であり、カプセル方式とは異なるので、あと施工アンカー固着剤として使用した場合、アンカー筋の径や定着長の制限を受けることが無く、種々の施工条件においても1種類の品種で対応が可能であり、打ち残しが無くなるなど、施工の安定化が得られる。また、アンカー筋を打ち込む際に大きな振動が発生しないため構造物の使用制限を受けずに施工が可能であるなどの利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の固着剤は、A薬剤とB薬剤とが個々にカートリッジに収納されており、両薬剤を各カートリッジから押し出し混合して使用する注入形式の固着剤であって、A薬剤がリン酸一アンモニウムおよび水を有効成分とするペースト状薬剤であり、B薬剤がマグネシウム塩を有効成分とするペースト状薬剤であることを特徴とする固着剤である。
【0017】
本発明の固着剤の使用態様を図1に示す。図示するように、ピストン型のカートリッジ10、11におのおの薬剤A、薬剤Bが収納されている。カートリッジ10、11の先端にはミキシングノズル12が接続している。カートリッジ10、11の後端はピストン部分13であり、このピストン部分13を押し込むと、薬液A、薬液Bがミキシングノズル12に押し出される。ミキシングノズル12は一定の長さを有しており、薬液Aおよび薬液Bはミキシングノズル12を流れる間に混合され、混合された状態の薬剤(A+B)がノズル12から押し出される。
【0018】
〔A剤の成分等〕
本発明の固着剤において、A薬剤(A剤と云う)はリン酸一アンモニウムを有効成分としている。A剤のリン酸一アンモニウムは固着の際の硬化反応成分である。A剤はリン酸一アンモニウムと共に水を含有している。水は反応性成分の一つであると共にA剤をペースト状に保つ成分である。
【0019】
リン酸一アンモニウムに対する水の比は、好ましくは、0.7〜2.0(質量比)であり、より好ましくは、1.2〜1.7(質量比)である。リン酸一アンモニウムに対する水の比が0.7(質量比)未満になると、A剤の粘度が増加するので、ミキシングノズル内でのA剤とB剤の混合性が低下し、リン酸一アンモニウムに対する水の比が2.0(質量比)を上回ると固着強度が低下する。
【0020】
A剤は、好ましくは、容量および粘度の調節のため、水溶性増粘剤、あるいは水と接触しても反応および変質を起こさず、かつミキシングノズルを通過することができる粒径約0.6mm程度以下の物質を一種類または二種類以上混入すると良い。これらの物質としてはリン酸三カルシウム、スラグ、珪砂、フライアッシュ、シリカフューム、ガラス、陶磁器、セラミックなどを用いることができる。
【0021】
より好ましくは、リン酸三カルシウムを混入使用すると良い。なお、リン酸三カルシウムを用いる場合には、リン酸三カルシウムの分散および粘度の調節のためトリポリリン酸ナトリウムを用いるのが望ましい。また、硬化速度、強度発現の調整剤として、トリポリリン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムを混入するのが好ましい。なお、強度発現の調節剤はかならずしもA剤に添加する必要は無くB剤に添加しても良い。
【0022】
リン酸三カルシウムに対するトリポリリン酸ナトリウムの比は0.034〜0.375(質量比)の範囲が好ましい。また、ホウ酸ナトリウムはA剤量に対して0.15(質量比)以下が好ましい。
【0023】
A剤の粘度は、20℃において800〜6000mPa・Sの範囲が適している。A剤の粘度が800mPa・S未満であり、また6000mPa・Sを上回るとミキシングノズル内でA剤とB剤の混合性が低下する。
【0024】
〔B剤の成分等〕
本発明の固着剤において、B薬剤(B剤と云う)はマグネシウム塩を有効成分としている。また、B剤は、好ましくは、これをペースト化するためのペースト化溶液が併用される。マグネシウム塩は特に限定されず、例えば、好ましくは、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが用いられ、より好ましくは酸化マグネシウムが用いられる。
【0025】
B剤中の酸化マグネシウム量は、A剤と混合された際、A剤中のリン酸一アンモニウムに対して0.3〜1.8(質量比)になる範囲が好ましく、1.1〜1.6(質量比)となる範囲がより好ましい。B剤中の酸化マグネシウム量が、A剤中のリン酸一アンモニウムに対して0.3(質量比)未満であり、また1.8(質量比)を上回ると固着強度が低下する。
【0026】
B剤はさらに容量、粘度の調節のため、水と接触しても反応および変質を起こさず、かつミキシングノズルを通過することができる無機微粉、即ち粒径約0.6mm程度以下の無機物質を一種類または二種類以上混入すると良い。これらの無機物質としてはスラグ、珪砂、フライアッシュ、シリカフューム、ガラス、陶磁器、セラミックなどを用いることができる。また、石灰系の膨張材を併用しても良い。
【0027】
B剤に併用するペースト化溶液は、B剤中に含まれるマグネシウム塩および上記粒径約0.6mm程度以下の無機物質に対して実質的に不活性であって、A剤との反応を阻害しないものであれば良く、例えば、アルコール、グリコール低級アルキルエーテール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール低級アルキルエーテルなどを用いることが出来る。これらの物質を一種類または二種類以上用いても良い。
【0028】
アルコールとしては、エタノール、メタノールなどの低級アルコールを始めとして、高級アルコールあるいは多価アルコールなどを用いることができる。なお、ペースト化溶液の発火点温度はなるべく高い物がより好ましい。
【0029】
ペースト化溶液の添加量は特に制限されず、カートリッジ先端に取り付けたミキシングノズルによってA剤とB剤が容易に混合され、押し出し抵抗が少なくなる範囲であれば良い。
【0030】
B剤の粘度は、20℃において800〜6000mPa・Sの範囲が適している。B剤の粘度が800mPa・S未満であり、または6000mPa・Sを上回るとミキシングノズル内でのA剤とB剤の混合性が低下する。
【0031】
〔カートリッジの配合〕
カートリッジのA剤とB剤との混合比は、容積比でA剤100体積部に対して、B剤は25〜146体積部の範囲が望ましい。
【0032】
〔カートリッジの形状・材質等〕
カートリッジの形状はA剤とB剤を同時に押し出す機能を有するものであれば良く、特に限定されない。運搬または保管時に破損せず、A剤およびB剤の漏れが無いように封入でき、なるべく気密性に優れ、A剤およびB剤の乾燥を防ぐ構造のものが望ましい。カートリッジの材質はA剤およびB剤によって劣化しないものを用い、使用後に廃棄のため焼却処理する場合を考慮し、なるべく火力が低くなるものがより好ましい。
【0033】
先端のミキシングノズルは、A剤とB剤を充分に混合する構造が好ましい。例えば、スパイラル状等のエレメントが内蔵されたノズルなどが好ましく、カートリッジから押し出されたA剤とB剤がスパイラル状等のエレメントによって撹拌され混合されるものなどが良い。また、種々の施工条件に対応出来るように数種類の長さのミキシングノズルを準備すると良い。
【0034】
カートリッジは筒状であれば良く、材質はポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフローロエチレン類、ポリプロピレン、金属、内外面に防水処理を施した紙筒等にピストンを取り付けたもの、変形が容易な形状の金属製チューブまたはビニールチューブなどを用いることが出来る。
【実施例】
【0035】
〔実施例1〕
<薬剤成分>
A剤として、リン酸一アンモニウム、水、リン酸三カルシウム、トリポリリン酸ナトリウムを表1に示す量比に配合したものを用い、B剤として、酸化マグネシウム、フェロニッケルスラグ、7号珪砂、ブタノールを表1に示す量比に配合したものを用い、比較試料のC剤として、酸化マグネシウム、フェロニッケルスラグ、7号珪砂を表1に示す量比に配合したものを用い、これらをカートリッジに充填して、各薬剤の押し出し試験を行った。<試験方法>
二本のカートリッジ(内径32mm、長さ135mm)を有する2液用カートリッジの先端に長さ155mmのミキシングノズルを取り付けたカートリッジを用い、このカートリッジにA剤を約166gとB剤を約230g充填した本発明品と、上記カートリッジにA剤を約166gとC剤を約183g充填した比較品とについて、これらを突出ガンにセットし、手動でピストンを押し込み、各薬剤の押し出し状態を観察した。この結果を表2に示した。
<試験結果>
表2に示すように、何れもペースト状のA剤およびB剤を用いた本発明品は、押し出し可能であり、A剤とB剤の混合性が良好であるが、粉体のC剤を用いた比較品は、押し出し不能であり、A剤とC剤を混合することができなかった。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
〔実施例2〕
常温(20℃)におけるアンカー筋の固定能力評価試験を以下のように行った。
<施工方法>
圧縮強度約30N/mm2のコンクリート母材に錘径19mmのドリルビットを用いて深さ130mmまで穿孔し、孔内を吸塵機、ブラシ、ブロアーを用いて清掃した後に、表3に示す配合からなる固着剤(本発明品1〜9、参考品1〜4)を孔内に約15ml注入し、この中に全ねじアンカー筋(材質SS400、呼び径16mm)をゆっくり回転させながらアンカー筋の先端が孔底につくまで挿入した。
<試験方法>
最大出力200kNのセンターホール型油圧ジャッキを母材コンクリートの表面に密着させて上記アンカー筋に引張荷重を与えた。荷重の検出は容量150kNのセンターホール型荷重計を用いて測定した。なお、本発明品1および本発明品9については材質SNB7のアンカー筋を用いて引張耐力の測定を行なった。この結果を表4に示した。
【0039】
〔実施例3〕
低温(−5℃)におけるアンカー筋の固定能力評価試験を以下のように行った。
<施工方法>
実施例2と同様にして穿孔し、清掃した孔内に表3に示す配合からなる固着剤(本発明品1〜9、参考品1〜4)を約15ml注入し、この中に全ねじアンカー筋(材質SS400、呼び径16mm)をゆっくり回転させながらアンカー筋の先端が孔底につくまで挿入した。
<試験方法>
アンカー筋が施工された試験体を3日間氷点下−5℃に養生した後、速やかに最大出力200kNのセンターホール型油圧ジャッキを母材コンクリートの表面に密着させてアンカー筋に引張荷重を与えた。荷重の検出は容量150kNのセンターホール型荷重計を用いて測定した。この結果を表4に示した。
【0040】
〔実施例4〕
高温度(250℃)におけるアンカー筋の固定能力評価試験を以下のように行った。
<施工方法>
実施例2と同様にして穿孔し、清掃した孔内に表3に示す配合からなる固着剤(本発明品1〜9、参考品1〜4)を約15ml注入し、この中に全ねじアンカー筋(材質SS400、呼び径16mm)をゆっくり回転させながらアンカー筋の先端が孔底につくまで挿入した。
<試験方法>
アンカー筋が施工された試験体を約2時間電気炉で250℃に加熱した後、速やかに最大出力200kNのセンターホール型油圧ジャッキを母材コンクリートの表面に密着させてアンカー筋に引張荷重を与えた。荷重の検出は容量150kNのセンターホール型荷重計を用いて測定した。この結果を表4に示した。
【0041】
表4に示すように、参考品1は固着剤が硬化せず、引張耐力は測定できなかった。参考品2はミキシングノズル内で固着剤が硬化したため押し出し不能であり、引張耐力は測定できなかった。
【0042】
本発明品は、表4に示すように、常温(20℃)、氷点下(−5℃)、および高温下(250℃)の何れにおいても、70kN以上の固着強度を発揮し、使用環境に影響されずに優れた固着力を得ることができる。また、本発明品は、比較例の参考品4に示す樹脂系の従来の固着剤と比較して、常温の場合、遜色の無い性能が得られ、低温の場合、強度発現性に優れおよび高温度の場合、著しい優位差が見られた。また高温度時においても施工されたアンカー筋は十分な引張耐力が得られた。
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】




【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の固着剤の使用態様を示す説明図。
【符号の説明】
【0046】
10、11−カートリッジ、12−ミキシングノズル、13−ピストン部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A薬剤とB薬剤とが個々にカートリッジに収納されており、ペースト状の両薬剤を各カートリッジから押し出し混合して使用する注入形式の固着剤であって、A薬剤がリン酸一アンモニウムを有効成分とし、且つ水を含有し、B薬剤がマグネシウム塩を有効成分とすることを特徴とする固着剤。
【請求項2】
マグネシウム塩が酸化マグネシウムである請求項1に記載する固着剤。
【請求項3】
A剤がリン酸一アンモニウムと共にリン酸三カルシウムおよびトリポリリン酸ナトリウムを含む請求項1または請求項2に記載する固着剤。
【請求項4】
B剤がマグネシウム塩と共に、A剤に対して不活性な無機微粉および該無機微粉と含有するマグネシウム塩に不活性な液体を含む請求項1〜請求項3の何れかに記載する固着剤。
【請求項5】
A剤およびB剤の粘度が20℃において800〜6000mPa・Sの範囲である請求項1〜請求項4の何れかに記載する固着剤。
【請求項6】
低温で注入使用する請求項1〜請求項5の何れかに記載する固着剤。
【請求項7】
あと施工アンカーの固定に用いられる請求項1〜請求項6の何れかに記載する固着剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−155183(P2009−155183A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337901(P2007−337901)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】