説明

カードの製造方法

【課題】カード基材の外装ラミネート工程で使用するマット表面を持ち、シリコン系成分を含む離型フィルムを用いることにより、シリコン成分が外装シートに転写してしまうことで、後工程の2次ラミネート工程にて外装シートおよびコアシートの接着強度が劣り、外装シートはがれの原因になることを防止すること。
【解決手段】加圧・加熱するためのプレス板に外装シートと磁気テープが貼りつかないようにするために、プレス板と外装シートの間に離型シートを挟む離型フィルムについて、片面にマット表面を持つフッ素樹脂シートまたはマット表面を持つフッ素樹脂含浸シートを用いるとともに、反対面に耐熱性の高い接着剤をもちプレス板に一体的に貼りつけられていることを特徴とするカードの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型ICカード、接触型ICカード、接触・非接触共用型ICカード、および磁気カード等に関するものであり、特にラミネート工程起因のコア基材からの外装シートの剥がれを防止するカードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カードの製造方法の一つに、熱可塑性樹脂からなるシート基材を複数重ねたり、磁気テープ、ICモジュール、アンテナを重ね合わせ、熱プレスすることによって積層、一体化してカード化する方法が知られている。
【0003】
なお、材料シート、材料フィルムの複数枚を所定の順に積層し、貼り合わせて一体化する工程をラミネート工程、または単にラミネートと言う。ラミネート工程において、加圧だけでなく加熱が併用される。単に熱による貼り合わせの他、各フィルムの間に接着剤を使用する場合もある。
【0004】
ラミネート工程において、加圧・加熱するためのプレス板にカード基材が貼り付かないようにするために、離型シートをプレス板とカード基材の間に挟み込むが、熱プレス後にプレス板や離型シートを取り外す際に剥離帯電が発生し、非接触型ICカード用のICチップが静電破壊してしまうことがある。従来のラミネート工程と、この剥離帯電が発生する。前期静電破壊の対策や、基材送り対策として、耐熱シリコンシートや、シリコン系成分を含む表面をマット加工した離型フィルムが使われている(特許文献1)。
【0005】
カードの製造工程でのラミネート工程は、第一工程として印刷前の外装シートへの磁気テープ埋め込み、および外装シートへの表面マット化(外装ラミネートもしくは0次ラミネート)、第二工程としてインレットとコアシートを一体化(1次ラミネート)、第三工程として、外装シートとコアシートを一体化(2次ラミネート)の3工程から構成される。
【0006】
外装ラミネート工程では、外装シートへ磁気テープを埋め込む際、加圧・加熱するためのプレス板に外装しーとおよび磁気テープが貼りつかないようにするために、離型シートをプレス板と外装シートの間に挟む。この離型フィルムには外装シートとの離型性をもたせるためシリコン成分を含ませるものを使用することが多い。
【0007】
外装ラミネート工程において、シリコン成分を含んだ離型フィルムを使用すると、外装シートにシリコン成分が転写するのを避けることができない。後工程の2次ラミネート工程において、外装シートおよびコアシートの接着強度が劣り、外装シートはがれの原因になることがあった。
【0008】
また離型フィルムには外装シートに表面マット化を施す役割も必要なため、表面がマット化したものを使用する必要がある。
【0009】
外装シートは印刷工程において印刷装置の供給部に積んだ状態から1枚ずつ取り出し、印刷部に送る必要がある。表面がマット化していない外装シートを使用した場合、外装シート同士が密着しており供給部に積んだ状態から1枚ずつシートを取り出すとともに印刷部に送ることが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−52541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、カード基材のラミネート工程で使用する表面をマット加工したシリコン系成分含有離型フィルムからのシリコン系成分が、カード基材に転写してしまうことで発生するラミネート不良を防止し、ぬれ性を改善し、さらにはカード基材のラミネート工程で発生する静電気によるICの破壊を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、印刷前の外装シートへの磁気テープ埋め込みおよび外装シートへの表面マット化する工程を含むカードの製造方法において、
加圧・加熱するためのプレス板に外装シートと磁気テープが貼りつかないようにするために、プレス板と外装シートの間に離型シートを挟む離型フィルムについて、マット表面を持つフッ素樹脂シートまたはマット表面を持つフッ素樹脂含浸シートを用いることを特徴とするカードの製造方法である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記の片面にマット表面を持つフッ素樹脂シートまたはフッ素樹脂含浸シートが、反対面に耐熱性の高い接着剤によりプレス板に一体的に貼りつけられていることを特徴とする請求項1に記載のカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
カードの外装ラミネート工程に使用する離型フィルムについて、マット表面を持つフッ素樹脂シートまたはマット表面を持つフッ素樹脂含浸シートを用いることにより、2次ラミネート工程での外装シートおよびコアシートのはがれを防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のマット表面を持つフッ素樹脂シート1をシリコン系接着剤2によって取り付けたSUS鏡面板3からなるプレス板を用いて外装シート7をラミネートにより一体化する製造方法の一例を示した概念図である。
【図2】はマット表面を持つフッ素樹脂シート1に代えて離型フィルムであるシリコン含有マットシート9を用いて外装シート7をラミネートにより一体化する製造方法の、一従来例を示した概念図である。
【図3】は外装シート7、コアシート11、ICチップ14を持つ非接触IC媒体12を積層ラミネートにより一体化された非接触型ICカード15の一例を示した断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の、外装シート7をラミネートにより一体化する製造方法を示しており、2枚のSUS鏡面板3の間に、延伸PET5の両面にポリエステル樹脂6、片面に磁気記録層8を重ね合わせで、加熱、加圧することにより、延伸PET5、ポリエステル樹脂6、磁気記録層8が熱融着され一体となった外装シート7を形成する。一方のSUS鏡面板3には、シリコン系接着剤2によりマット表面を持つフッ素系樹脂シートが貼り付けられており、もう一方にはポリプロピレンフィルム4が重ねられている。
【0017】
図2は従来の外装シート7をラミネートにより一体化する製造方法を示しており、2枚のSUS鏡面板3の間に、延伸PET5の両面にポリエステル樹脂6、片面に磁気記録層
8を重ね合わせで、加熱、加圧することにより、延伸PET5、ポリエステル樹脂6、磁気記録層8が熱融着され一体となった外装シート7を形成する。一方のSUS鏡面板3には、シリコン含有マットシート9が重ねられ、もう一方にはポリプロピレンフィルム4が重ねられている。
【0018】
図3は、非接触型ICカード15の断面を示しており、外装シート7、コアシート11、ICチップ14を持つ非接触IC媒体12を積層ラミネートにより一体化され、磁気記録層8上にはオーバープリント印刷10が設けられ、反対面の外装シート7には印刷3が設けられる。
【0019】
フッ素系樹脂シート1はフッ素樹脂シートまたはフッ素樹脂含有シートよりなる離型シートである。一例としては、高強度ガラスクロスを支持体とし、導電性ポリテトラフルオロエチレン樹脂を含浸させたものがあり、導電性を持っているため、剥離帯電を抑える効果もある。また、導電性により、外装シート7表面にごみ・ほこりなどを引き寄せず、外観不良を抑える効果もある。
【0020】
フッ素樹脂シートまたはフッ素樹脂含有シートからなるフッ素系樹脂シート1は、シリコン成分を含んだタイプの離型シートと比較して高価であり、コストアップとなってしまう問題であった。フッ素系樹脂シート1は、剥離性に優れた性質と外装シート7にシリコン成分を転写させないという優れた機能を持つもが、高価なため1回の使用で捨てしまうことは、経済面から困難である。しかし材質がSUS鏡面板3に貼り付け一体化させることにより、繰り返し使用が可能となりコスト面の問題は少なくなる。
【0021】
SUS鏡面板3へのはり付けは、SUSの鏡面側とマット化させていないフッ素系樹脂シート面とで行われる。SUS鏡面板3の鏡面側にはり付けられる。SUS板と一体化させていないフッ素系樹脂シート1単体では、ハンドリングが困難であり、ハンドリング時に折れ傷、破れが発生しやすく、その折れ傷、破れが外装シート7の外観に現れて外観不良となってしまうという問題があったが、これも解決できる。
【実施例1】
【0022】
SUS鏡面板3の鏡面側にシリコン系接着剤2を用いて、高強度ガラスクロスを支持体として導電性ポリテトラフルオロエチレンを含浸させた表面がマット状(Rz 約4μm)の剥離シート(日東電工株式会社製No.973SC、180μm)をはり合せた。その上に図1に示すように、ポリエステル樹脂、延伸PET、磁気記録層を仮止めしたポリエステル樹脂6、を順次重ね合わせ、ポリプロピレンフィルム4を重ねた後に、SUS鏡面板3によって挟んだ。
【0023】
所定の温度(80℃〜150℃の温度範囲)、圧力(例えば、20kgf/cm程度)で一定時間(50分〜60分)加圧し、ラミネートによる一体化と磁気記録層8を外装シート7に埋め込みを行った。
<比較例>
実施例1に用いた高強度ガラスクロスを支持体として導電性ポリテトラフルオロエチレンを含浸させた、フッ素系樹脂シート1に代えて、延伸PETにSiO、シリコン系成分を含むマット剤を塗布した離型フィルムであるシリコン含有マットシート9(Rz 約3.7μm)を用い、同様に、ポリエステル樹脂6、延伸PET5、磁気記録層8を仮止めしたポリエステル樹脂6、を順次重ね合わせ、ポリプロピレンフィルム4を重ねた後に、SUS鏡面板3によって挟んで、実施例と同じ条件で、ラミネートによる一体化と磁気記録層8を外装シート7に埋め込みを行った。ぬれ性の比較結果を表に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
その結果、シリコン系成分を含む表面をマット加工したシリコン含有マットシート9使用の外装シート7と比較して、フッ素系樹脂シート1使用の外装シート7は、表面のぬれ性は良いことが確認できた。次ぎにこの2種類の外装シート7をコアシート11と2次ラミネートを行い、非接触ICカード15化まで行った。
【0026】
この2種類の外装シート7を使用して、図3に示した構成で非接触ICカード15を作製し、環境促進テスト(60℃、90%、80℃、90%)を96時間行い、剥離具合を比較した。その結果、定量的な剥離強度の測定はできなかったが、シリコン系成分を含む表面をマット加工した比較例(シリコン含有マットシート9使用品)よりも、実施例(フッ素系樹脂シート1使用品)は密着具合が強いことが確認できた。
【0027】
得られた外装シート7の表面粗さは、それぞれRz 約4μm、3.7μmであり、離型フィルムであるシリコン含有マットシート9使用の表面粗さと同じであり、印刷時のさばき及び印刷に対して問題とならないこともわかった。すなわち適切なマット表面を持ち、印刷工程において印刷装置の供給部に積んだ状態から1枚ずつ取り出し、印刷部に送ることが出来るとともに、印刷において文字カスレなどの問題がない。
【0028】
シリコン系成分を含む表面をマット加工したシリコン含有マットシート9を使用する場合と異なり、外装ラミネートにおいて、外装シート7にシリコン成分を転写させることがなく、コアシート11と外装シート7との剥離が生じる危険性を軽減することができ、外装シート表面へのシリコン成分の転写をなくすと共に、ガラス繊維のマット目により外装シート表面に適度なマット感を持たせることができた。
【符号の説明】
【0029】
1・・・フッ素系樹脂シート
2・・・シリコン系接着剤
3・・・SUS鏡面板
4・・・ポリプロピレンシート
5・・・延伸PET
6・・・ポリエステル樹脂
7・・・外装シート
8・・・磁気記録層
9・・・シリコン含有マットシート
10・・・オーバープリント印刷
11・・・コアシート
12・・・非接触IC媒体
13・・・印刷
14・・・ICチップ
15・・・非接触ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷前の外装シートへの磁気テープ埋め込みおよび外装シートへの表面マット化する工程を含むカードの製造方法において、
加圧・加熱するためのプレス板に外装シートと磁気テープが貼りつかないようにするために、プレス板と外装シートの間に離型シートを挟む離型フィルムについて、マット表面を持つフッ素樹脂シートまたはマット表面を持つフッ素樹脂含浸シートを用いることを特徴とするカードの製造方法。
【請求項2】
前記の片面にマット表面を持つフッ素樹脂シートまたはフッ素樹脂含浸シートが、反対面に耐熱性の高い接着剤によりプレス板に一体的に貼りつけられていることを特徴とする請求項1に記載のカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−800(P2012−800A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135898(P2010−135898)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】