説明

カードキー・テンキー式錠前装置

【課題】最初のテンキーによる電気信号記録を残したまま機械的に且つ一時的に非常解錠することができ、再びテンキーの操作で再度施錠操作することを不要にする。
【解決手段】ラッチ10の90度回転域範囲内においてシリンダー錠11の上側(解錠)位置と左側(施錠)位置とに、ソレノイド31通電入力用のスイッチをそれぞれ配置し、ラッチ10が解錠方向または施錠方向に回転したときには、上側(解錠)位置または左側(施錠)位置のスイッチがON状態となってソレノイド31を通電することでロックレバー37でラッチ10の係合部10aを係止して施解錠を阻止する。また、マスターキーの挿入により、リンクレバーピン41を押して、リンクレバー44の押片部44aでロックレバー37を押圧することでロックレバー37はラッチ10の係合部10aから退避し、ラッチ10を回転可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、専用のカードのみならず、クレジットカードや定期券カード等の一般のカード類を使用することを可能にし、且つ非常解錠後の再度施錠時に、テンキーを操作して消去した電気信号記録の入力を不要とした低コストで且つ簡易な構造によるカードキー・テンキー式錠前装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カード、テンキーおよび通常使用キーによる施錠中における非常解錠を行う場合には、いったんテンキーの電気信号記録を解除して解錠するのが一般的である。したがって、非常解錠後に再度施錠するには、消去した電気信号記録を再びテンキーを操作して入力させなければならない。
【0003】
また、従来におけるカードキー式錠前装置としては、本出願人自身によって出願され、特許登録となった特許文献1に開示されている技術がある。すなわち、このカードキー式錠前装置は、無施錠時には、作動板がベースプレートの収納凹部内においてスプリングにより回動付勢されて先端側が所要角度立ち上がっているため、開口部のカードキーストッパはベースプレートの孔の上面側に位置していてカードキー差込口から退去している。
【0004】
このとき、シリンダー錠のラッチの係合ピンは作動板の開口部に設けられたガイド片の係合凹部に弾圧状態で係合され、さらに錠係止板はスプリングにより付勢されてスライド溝の前端側へ移行し、先端のピンストッパがベースプレートの長孔の先端から上方へ貫通突出していてシリンダー錠の係合ピンを係止しているため、キー操作によるシリンダー錠のラッチの回動を阻止している。
【0005】
このような状態において、カードキーをカードキー差込口から差し込んでケーシングの底部上のベースプレートの凹部内へ収納するが、このときカードキーの後端縁が錠係止板後端の係止片に当接して当該錠係止板をベースプレートのスライド溝内をスプリングのバネ力に抗して後退させるため、先端のピンストッパも長孔内を後退し、シリンダー錠の係合ピンに対する係止を解除する。
【0006】
そこで、シリンダー錠の錠孔に差し込んだキーを回動させると、ラッチの係合ピンが錠取付プレートのガイド孔に沿って移動するのに伴い、作動板のガイド片の凹部を摺動して当該作動板を押圧回動させつつラッチを約90度回動してケーシングから突出しケース体の凹部内へ嵌入する。これによって扉板はケース体へ閉成状態に施錠ロックされる。
【0007】
カードキーとして専用カードキーを使用するときは、ベースプレート後部のフレームの嵌合凹部へガイドピースを嵌合しておく。これにより、専用カードキーがケーシングの底板上においてベースプレートの凹部内へ収納されたとき、当該カードキー後端縁に設けられた凹部が上記ガイドピースの半球状の係合体内へ係合するため、錠係止板はシリンダー錠が施錠可能な状態まで後退する。
【0008】
カードキーとして一般のカードキー(クレジットカード、定期券カード等)を使用するときは、ベースプレート後部のフレームの嵌合凹部に嵌合したガイドピースを外しておく。これにより、カードキーがケーシングの底板上においてベースプレートの凹部内へ収納されたとき、当該カードキー後端縁がフレーム内側へ当接するため、錠係止板はシリンダー錠が施錠可能な状態まで後退する。
【0009】
而して、シリンダー錠が施錠ロックした状態のとき、ラッチの係合ピンは作動板を下側へ押圧保持していてそのカードキーストッパがベースプレートの孔を挿通してカードキー差込口内へ突出しているため、内部のカードキーの取り出しおよび新たなカードキーの差し込みはいずれも阻止される。
【特許文献1】特許第3692250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来においては、非常解錠を行う場合、いったんテンキーの電気信号記録を解除して解錠しなければならず、しかも非常解錠後に再度施錠する場合にも、消去した電気信号記録をテンキーを操作して再度入力させなければならないため、非常に面倒な作業となる。
【0011】
また、特許文献1においては、カードキーとして専用カードキーを使用するときは、当該専用カードキーの凹部の位置に対応して、ベースプレート後部のフレームの嵌合凹部へガイドピースを嵌合しておき、また、カードキーとして一般のカードキー(クレジットカード、定期券カード等)を使用するときは、ベースプレート後部のフレームの嵌合凹部に嵌合したガイドピースを外しておく。そのためには、ケーシングのカバー全体を外さなければならず、しかもケーシングに対するカバーの取り付けは多数のネジやボルト・ナット等を使用して行うため、着脱操作が非常に面倒なものとなる。
【0012】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、最初のテンキーによる電気信号記録を残したまま機械的に且つ一時的に非常解錠することができ、これによって再びテンキーの操作で再度施錠操作することを不要とすることができると共に、カードキーの種類に応じてのガイドピースの取り外しもしくは交換に際し、多数のネジやボルト・ナット等を外してケーシングのカバー全体を外すような面倒な作業を行わなくても、ガイドピースを容易に取り外しもしくは交換することができるカードキー・テンキー式錠前装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、シリンダー錠のキー挿入孔の内奥中央部から錠取付プレートにかけて貫通配置され、シリンダー錠内方に向けて常時付勢されて成るリンクレバーピンと、錠取付プレート下面側に回動可能に枢着され、前記リンクレバーピンの先端との連繋部、ロックレバーを押圧する押片部それぞれを備えたリンクレバーとを備え、マスターキーの挿入により、リンクレバーピンが押されてリンクレバーを揺動させ、当該リンクレバーの押片部が、ロックレバー降端を押圧することで当該ロックレバーをラッチの係合部から係合解除方向に退避させ、マスターキーを介してのラッチの回転を許容させることを特徴とする。
【0014】
正規のカードキーの挿入によってシリンダー錠におけるラッチの係止を解除し、テンキーの操作によってソレノイドを介してロックレバーを、ラッチの係合部から係合解除方向に退避させると共に、ラッチの90度回転域範囲内においてシリンダー錠の上側(解錠)位置と左側(施錠)位置とに、ソレノイド通電入力用のスイッチがそれぞれ配置され、ラッチが解錠方向または施錠方向に回転したときには、上側(解錠)位置または左側(施錠)位置のスイッチがON状態となってソレノイドを通電させることでロックレバーでラッチの係合部を係止させて施解錠を阻止するものとしたことを特徴とする。
【0015】
ケーシングには、ベースプレート後方の複数のガイドピース取付部分を露出させるために形成された開口部を閉蓋させるガイドピースカバーを備え、当該ガイドピースカバーを外して開口部を開放させることでガイドピースの取付位置を変更可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、最初のテンキーによる電気信号記録を残したまま機械的に且つ一時的に非常解錠することができ、これによって再びテンキーの操作で再度施錠操作することを不要とすることができると共に、カードキーの種類に応じてのガイドピースの取り外しもしくは交換に際し、多数のネジやボルト・ナット等を外してケーシングのカバー全体を外すような面倒な作業を行わなくても、ガイドピースを容易に取り外しもしくは交換することができる。
【0017】
すなわち、本発明は、シリンダー錠のキー挿入孔の内奥中央部から錠取付プレートにかけて貫通配置され、シリンダー錠内方に向けて常時付勢されて成るリンクレバーピンと、錠取付プレート下面側に回動可能に枢着され、前記リンクレバーピンの先端との連繋部、ロックレバーを押圧する押片部それぞれを備えたリンクレバーとを備え、マスターキーの挿入により、リンクレバーピンが押されてリンクレバーを揺動させ、当該リンクレバーの押片部が、ロックレバーを押圧することで当該ロックレバーをラッチの係合部から係合解除方向に退避させ、マスターキーを介してのラッチの回転を許容させるものとしたので、最初のテンキーによる電気信号記録を残したまま機械的に且つ一時的に非常解錠することができ、これによって再びテンキーの操作で再度施錠操作することを不要とすることができる。
【0018】
また、ラッチの90度回転域範囲内においてシリンダー錠の上側(解錠)位置と左側(施錠)位置とに、ソレノイド通電入力用のスイッチがそれぞれ配置され、ラッチが解錠方向または施錠方向に回転したときには、上側(解錠)位置または左側(施錠)位置のスイッチがON状態となってソレノイドを通電させることでロックレバーでラッチの係合部を係止させて施解錠を阻止するものとしたので、最初のテンキーによる電気信号記録を残したまま一時的に施解錠不能にすることができる。
【0019】
ケーシングには、ベースプレート後方の複数のガイドピース取付部分を露出させるために形成された開口部を閉蓋させるガイドピースカバーを備え、当該ガイドピースカバーを外して開口部を開放させることでガイドピースの取付位置を変更可能としたので、カードキーの種類に応じてのガイドピースの取り外しもしくは配置の交換に際し、多数のネジやボルト・ナット等を外してケーシングのカバー全体を外すような面倒な作業を行わなくても、ガイドピースを容易に取り外しもしくは交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
本発明に係るカードキー・テンキー式錠前装置(以後、装置本体と称す)は、ケーシング1と、ベースプレート2と、錠取付プレート3と、カードキー16の抜止め用の作動板4と、錠係止板5と、ソレノイド31と、ロックレバー37と、リンクレバー44と、上下一対のスイッチSW1、SW2と、係合ピン9を突設したラッチ10を有するシリンダー錠11と、ガイドピース15とを主要構成部材としている。
【0021】
上記装置本体は、図3および図4に示すように、硬質プラスチックを素材として、前面板1a、後面板1b、左右の側面板1c、1cおよび底面板1dにより上面に開口部1eを設けた矩形箱形状に形成されて成るケーシング1の開口部1e側に、図1に示すように、上側にテンキーの操作部用窓部P1を備え、下側にシリンダー錠11に隣接してカードキー16の視認用窓部P2を備えたカバーPによって被蓋されて成る。そして、図2に示すように、扉板6の錠前取付所定位置に形成された矩形開口部6aに内側から装着し、ケーシング1の底面板1dの周縁に突設した不図示の取付用ネジ孔部を介して扉体6の矩形開口部6aにネジで固定される。尚、カバーPの視認用窓部P2の内側面には凹溝状の把手P3が設けられている。
【0022】
ケーシング1の前面板1aにはシリンダー錠11のラッチ10およびカードキー16が出入りできるように半欠の切欠き1fとカードキー差込口を形成するための完欠の切欠き1gとを連設してある。底面板1dには、その周縁にベースプレート2、錠取付プレート3および扉板6の不図示の取付用ネジ孔部を突設すると共に、上記切欠き1g後方にカードキー16の差込みとその保持のため前端を薄く後端に向って漸次厚くなるようにテーパ1iに形成してある。
【0023】
上記ベースプレート2は、図3および図4に示したように、硬質プラスチック材を素材として、その下面前部において上記ケーシング1前面板1aの切欠き1gおよび底面板1dのテーパ1iと対応するようにテーパ2aを形成したカードキー係止板2bを突設し、その後方および左右両側に略コ字形状のフレーム2c、2d、2eを突設することによりカードキー収納部2fを形成し、且つカードキー収納部2fの収納方向(フレーム2d)に沿って錠係止板5のスライド溝2gを形成してある。このスライド溝2gは、前方底壁が抜けて長孔2hとなっており、その後方両側にはスプリング7の収納凹部2iを形成してある。上記したフレーム2d、2eの対向側は各々切欠かれており、スライド溝2gと連通するように錠係止板5後端の可動凹所2jを形成してある。
【0024】
また、上記フレーム2cの略中央部と左右両側との上端には、図11および図12に示すように、後述するガイドピース用の、内方より外方へ拡がったテーパ状の嵌合凹部2kを形成してある。
【0025】
一方、上記ベースプレート2は、図4に示すように、その上面前方に作動板4の収納凹部2lを形成してある。この収納凹部2l上方の前後方向に上記した長孔2hが位置しており、該長孔2hに隣接して平面L字型のガイド突起2mが突設されている。また、この収納凹部2lの上部後方にバネ掛け2nが突設してあり、且つ図3に示すように、前方の略中央に作動板4のカードキーストッパ出入用の孔2oを穿設してある。
【0026】
図中2pはベースプレート2の収納凹部2lの後方に開設された窓穴、2qはこの窓穴2pの上面周縁に形成された透明な遮蔽板8の嵌合凹部、2r…はベースプレート2の周縁に上記したケーシング1の取付用ネジ孔部(不図示)と対応して穿設されたネジ孔を各々示す。
【0027】
上記錠取付プレート3は図3に示したように、金属板よりなり、前方上面の略中央部に、下面に係合ピン9を突設したラッチ10を有するシリンダー錠11を垂直に植設してある。また、上記錠取付プレート3の前方には、シリンダー錠11のキー操作によってラッチ10が90度回動するように係合ピン9挿通用の弧状のガイド孔3a(図7参照)が、後方には上記ベースプレート2の窓穴2pと対応する位置に窓穴3bが各開設してある。
【0028】
上記作動板4は図3および図4に示したように、金属板よりなり、上方およびその下部前方寄りに大小の開口部4a、4bを各穿設させてあり、大きい開口部4aの上方には、シリンダー錠11におけるラッチ10の係合ピン9が係合する係合凹部4cを備えたガイド片4dを横方向へ連設してあり、一方、小さい開口部4bには、その前端縁を下側へ直角に折曲することでベースプレート2の孔2oに出入りするカードストッパ4eを突設してある。また、作動板4の上部後端には、ベースプレート2のバネ掛け2nに対向するようにバネ掛け4fを上方に直角に折曲することで突設してある。この作動板4のバネ掛け4fとベースプレート2のバネ掛け2n間にバネ12を掛け止めすることにより、作動板4は、ベースプレート2上面の収納凹部2lにおいて上記シリンダー錠11の施錠操作により後方へ回動自在に上記バネ12にて前方へ回動付勢されつつ保持させてある。
【0029】
上記錠係止板5は図11および図12に示したように、金属板よりなり、先端上方に、シリンダー錠11におけるラッチ10の係合ピン9を係止するピンストッパ5aが、後端にカードキー用の係止片5bが上記カードキー収納部2f側へ略直角に折曲することにより各形成してある。また、この錠係止板5の略中央部には、長手方向へスプリング7挿入用の長孔5cを穿設してある。
【0030】
図中13はケーシング1の切欠き1gとベースプレート2のカードキー係止板2b間に形成されたカードキーの差入口(図3参照)、14はシリンダー錠11のラッチ10が嵌入するケース体(図2参照)、15は上記ベースプレート2後方のフレーム2cの嵌合凹部2kに脱着自在に嵌合するガイドピースを各示す。このガイドピース15は、図11乃至図13に示すように、上記嵌合凹部2kに対する嵌合用のテーパ脚15aとカードキー用の半球体状の係合体15bとより構成されている。このテーパ脚15aをベースプレート2のフレーム2cの嵌合凹部2kに嵌合することによりガイドピース15の前方への抜けが阻止される。
【0031】
また、図13に示すように、ケーシング1の底面板1dには、ベースプレート2後方のフレーム2c部分を露出させるための長方形状の開口部21が形成され、該開口部21にガイドピースカバー22を嵌めて左右をネジ23で固定するようにしてある。そして、ガイドピースカバー22を外して開口部21を開放させてからフレーム2cの嵌合凹部2kからガイドピース15を取り外しもしくは交換する。
【0032】
カードキー16としては、例えば後端部の中央または左右側に上記ガイドピース15の係合体15bが適合する係合凹部16aを有する専用カードキーと、当該係合凹部16aを有しない一般カードキー(クレジットカード、定期券カード等)との2種類のカードキーを使用する。
【0033】
また、錠取付プレート3上面には、図5および図6に示すように、シリンダー錠11に隣接してソレノイド31がロック機構ベース30を介して取り付けられている。このソレノイド31は、図8に示すように、可動軸32がスプリング33を介して挿入されており、通電による電磁力によって可動軸32がスプリング33の弾性力に抗してソレノイド31内に吸引退避されるものである。そして、当該可動軸32の先端にはスプリング33を係止するようにして直角に連結バー34が嵌着され、該連結バー34の一端は、錠取付プレート3上においてロック機構ベース30の起立側面から突出した支軸35に挿通されて揺動自在とされたソレノイドレバー36の一端の孔部に回動可能に装着されている。
【0034】
また、上記支軸35には、ソレノイドレバー36に隣接してアーム状のロックレバー37の基端側の孔部が回動可能に装着され、このロックレバー37の基端側にL字状に折曲形成された作動片38を、ソレノイドレバー36の略中央に穿設した幅広な矩形開口状の係止孔部36aに任意のガタを持たせて挿入した状態とし、支軸35に側面からCリング状の止め輪39を嵌め込むことによって係止されている。
【0035】
このロックレバー37の先端には、L字片状のロック片37aが作動片38とは90度向きを変えて形成されており、当該ロックレバー37が支軸35の廻りに回動されることによって、ラッチ10の左右いずれかに形成されている切欠き状の係合部10aに係架される(図5、図6参照)。
【0036】
このとき、ソレノイドレバー36とロックレバー37との間における支軸35には、つるまきバネ40が巻挿され、該つるまきバネ40の一端は、ロックレバー37の基端側に架けられ、他端はソレノイドレバー36の係止孔部36aの内縁部に架けられることにより、作動片38を係止孔部36aの内縁部に常時圧接させている。したがって、ロックレバー37先端側のL字片状のロック片37aは、図9および図10に示すように、ラッチ10側に向けて常時付勢されている。
【0037】
また、図5、図6に示すように、ラッチ10の90度回転域範囲内においてシリンダー錠11の上側(解錠)位置と左側(施錠)位置とには、ソレノイド31通電入力用のスイッチSW1、SW2がそれぞれ配置されており、ラッチ10が解錠方向または施錠方向に回転したときには、上側(解錠)位置または左側(施錠)位置のスイッチSW1、SW2がON状態となってソレノイド31を通電させ、電磁力によって可動軸32がスプリング33の弾性力に抗してソレノイド31外に伸長されることでソレノイドレバー36を介してロックレバー37のロック片37aをラッチ10の係合部10aに係架させる。これによって、ラッチ10の回転が阻止され、再びキーをシリンダー錠11に差し込んで廻してもテンキーを解錠操作しない限り、ラッチ10の切欠き状の係合部10aに対するロックレバー37のロック片37aによる係止は維持されるため解錠はできない。
【0038】
また、図6、図7、図9、図10に示すように、シリンダー錠11のキー挿入孔の内奥中央部から錠取付プレート3にかけては、リンクレバーピン41が不図示のバネで付勢された状態で嵌挿され、錠取付プレート3下面側に互いに対向して配置された軸支板42に支軸43を介して回動可能に枢着されたリンクレバー44の一辺側に突設した連繋部45にリンクレバーピン41の先端側が咬持連繋されている。そして、リンクレバー44の端部には押片部44aが突設され、ロックレバー37の基端側にある三角突起状の係架部37bを当該押片部44aによって押圧することで、ロックレバー37先端側のロック片37aを、ラッチ10の係合部10aから係合解除方向に退避させる。
【0039】
すなわち、リンクレバーピン41は、キー挿入孔に向けてバネを介して常時付勢されていて、図9に示すように、キー挿入孔へ通常使用キーK1を差し込んだ際には、キーK1先端はリンクレバーピン41に接触せずにリンクレバー44の押片部44aは、ロックレバー37の基端側にある三角突起状の係架部37bを押圧しないものとなって、ロックレバー37先端側のロック片37aとラッチ10の係合部10aとの係合を維持させる。
【0040】
一方、図10に示すように、非常解錠の際に、通常使用キーK1と比べて若干先端が突出しているマスターキーK2がキー挿入孔へ差し込まれた際には、キーK2先端はリンクレバーピン41を押圧し、リンクレバー44を揺動させ、ロックレバー37の基端側にある三角突起状の係架部37bをリンクレバー44の押片部44aによって押圧することで、ロックレバー37先端側のロック片37aを、ラッチ10の係合部10aから係合解除方向に退避させ、マスターキーK2を介してのラッチ10の回転を許容させて解錠が可能となる。
【0041】
次に、以上のように構成された最良の形態についての使用、動作の一例について説明する。
【0042】
先ず、正規のカードキー16の挿入とテンキーK3の操作による通常使用時の場合について説明する。扉板6を開けて物品をロッカー内に収納し、装置本体のカードキー16の差込口に正規のカードキー16を挿入する。このとき、図11および図12に示すように、当該カードキー16後端部中央の係合凹部16aがガイドピース15の係合体15bに係合すると同時に、カードキー16の後端縁が錠係止板5後端の係止片5bに当接して当該錠係止板5をベースプレート2のスライド溝2g内をスプリング7のバネ力に抗して後退させるため、先端のピンストッパ5aも長孔2h内を後退し、シリンダー錠11の係合ピン9に対する係止を解除する。また、この状態でのソレノイド31の可動軸32は伸長状態となっていて、ラッチ10はロックレバー37によって係止されている。
【0043】
図1に示すテンキーK3を4桁押した後、入力ボタンを押すと、ソレノイド31の可動軸32が退避してロックレバー37先端のロック片37aがロック解除位置まで上がる。このためラッチ10はロック片37aによる係止が解除されてフリーな状態となる。
【0044】
差し込まれている通常使用キーK1をそのまま左側へ廻し、ラッチ10を90度廻して施錠する。これによって扉板6はロックされるが、このラッチ10を左側へ廻した際に、下側に位置するスイッチSW1の接点が押されてON状態となり、再びソレノイド31の可動軸32は伸長状態となってロックレバー37先端のロック片37aがロック位置まで下がる。このため、ラッチ10はそのままロック片37aによって係合固定されて施錠状態を維持する。
【0045】
通常使用キーK1を引き抜いた後の物品を保管中は勿論、再び当該キーK1を差し込んで廻してもテンキーK3を解錠操作していないため、ラッチ10の切欠き状の係合部10aに対するロックレバー37のロック片37aによる係止は維持されるため解錠はできない。
【0046】
そこで、再びテンキーK3を押して入力ボタンを押すことにより、ソレノイド31の可動軸32が退避してロックレバー37のロック片37aがロック解除位置まで上がり、ラッチ10に対する係止が外れる。この状態で通常使用キーK1を右へ90度廻すことでラッチ10による扉板6の施錠状態から解錠状態へ移行する。
【0047】
このようにしてラッチ10を90度右へ廻した際に、上側に位置するもう一つのスイッチSW2の接点が押されてON状態となり、再びソレノイド31の可動軸32は伸長状態となってロックレバー37先端のロック片37aがロック位置まで下がる。したがって、ラッチ10はロック片37aによって係止され、この状態で施錠を行うことは、テンキーK3を解錠操作しない限りできなくなる。
【0048】
次に、長尺マスターキーK2の差し込みによる非常解錠時の場合について説明する。
先ず、図9に示すように、キー挿入孔へ通常使用キーK1を差し込んでもキー先端はリンクレバーピン41に接触せずに、リンクレバー44の押片部44aはロックレバー37の基端側にある三角突起状の係架部37bを押圧しない。したがって、ロックレバー37先端側のロック片37aによるラッチ10の係合部10aの係止は維持され、解錠が不可能な状態となったままである。
【0049】
一方、図10に示すように、非常解錠の際に、若干先端が突出しているマスターキーK2がキー挿入孔へ差し込まれた際には、マスターキーK2先端はリンクレバーピン41を押圧してリンクレバー44を揺動させる。そして、ロックレバー37の基端側にある三角突起状の係架部37bがリンクレバー44の押片部44aによって押圧され、これによってロックレバー37先端側のロック片37aは、ラッチ10の係合部10aから係合解除方向に退避させられる。したがって、マスターキーK2を使ってのラッチ10の回転が許容されて解錠が可能となる。
【0050】
また、ガイドピース15を取り外すかあるいは交換する場合には、図13に示すように、ガイドピースカバー22の左右のネジ23を外して当該ガイドピースカバー22を外して開口部21を開放し、ベースプレート2後方のフレーム2cを露出させてから嵌合凹部2kからガイドピース15を取り外しもしくは交換する。
【0051】
このとき、図14に示すように、カードキー16の後端中央に、ガイドピース15の係合体15bが適合する係合凹部16aを有する専用カードキーを採用する場合には、ガイドピース15のテーパ脚15aをベースプレート2のフレーム2cの中央にある嵌合凹部2kに嵌合する。
【0052】
また、図15に示すように、カードキー16の後端中央から横側にずれた位置に、ガイドピース15の係合体15bが適合する係合凹部16aを有する専用カードキーを採用する場合には、ガイドピース15のテーパ脚15aを、ベースプレート2のフレーム2cの中央よりも横側にずれた位置にある嵌合凹部2kに嵌合する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るカード式錠前装置の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】同じくカード式錠前装置の断面図である。
【図4】専用カードキーの一部と作動板付のベースプレートを示す平面図である。
【図5】同じく錠取付プレートを示す平面図である。
【図6】図5中のY−Y断面図である。
【図7】図6中のZ−Z断面図である。
【図8】ソレノイドの連結バーに、ソレノイドレバー、ロックレバーそれぞれを取り付ける状態を説明する分解斜視図である。
【図9】通常キーを使っての施解錠の状態を示す断面図である。
【図10】非常解錠の際にマスターキーを使っての施解錠の状態を示す断面図である。
【図11】専用カードキーの動作前を示す説明図である。
【図12】同じく専用カードキーの動作後を示す説明図である。
【図13】ガイドピースカバーをケーシングの開口部に取り付ける状態の一部切欠斜視図である。
【図14】同じくガイドピースをベースプレート後方のフレーム中央に取り付けた状態の一部切欠平面図である。
【図15】同じくガイドピースをベースプレート後方のフレーム中央から横にずれた位置に取り付けた状態の一部切欠平面図である。
【符号の説明】
【0054】
P1 操作部用窓部
P2 視認用窓部
P カバー
K1 通常使用キー
K2 マスターキー
K3 テンキー
1 ケーシング
1d 底面板
1e 開口部
2 ベースプレート
2b カードキー係止板
2c、2d、2e フレーム
2f カードキー収納部
2g スライド溝
2h 長孔
2j 可動凹所
2l 収納凹部
2n バネ掛け
2m ガイド突起
2o 孔
2p 窓孔
2k 嵌合凹部
3 錠取付プレート
4 作動板
4c 係合凹部
4d ガイド片
4e カードキーストッパ
5 錠係止板
5a ピンストッパ
5b 係止片
6 扉板
6a 矩形開口部
7 スプリング
9 係合ピン
10 ラッチ
10a 係合部
11 シリンダー錠
12 バネ
15 ガイドピース
15a 脚
15b 係合体
16 カードキー
16a 係合凹部
21 開口部
22 ガイドピースカバー
23 ネジ
31 ソレノイド
32 可動軸
33 スプリング
34 連結バー
35 支軸
36 ソレノイドレバー
36a 係止孔部
37 ロックレバー
37a ロック片
37b 係架部
38 作動片
39 止め輪
41 リンクレバーピン
42 軸支板
43 支軸
44 リンクレバー
44a 押片部
45 連繋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー錠のキー挿入孔の内奥中央部から錠取付プレートにかけて貫通配置され、シリンダー錠内方に向けて常時付勢されて成るリンクレバーピンと、錠取付プレート下面側に回動可能に枢着され、前記リンクレバーピンの先端との連繋部、ロックレバーを押圧する押片部それぞれを備えたリンクレバーとを備え、マスターキーの挿入により、リンクレバーピンが押されてリンクレバーを揺動させ、当該リンクレバーの押片部が、ロックレバー後端を押圧することで当該ロックレバーをラッチの係合部から係合解除方向に退避させ、マスターキーを介してのラッチの回転を許容させるものとしたカードキー・テンキー式錠前装置。
【請求項2】
正規のカードキーの挿入によってシリンダー錠におけるラッチの係止を解除し、テンキーの操作によってソレノイドを介してロックレバーを、ラッチの係合部から係合解除方向に退避させると共に、ラッチの90度回転域範囲内においてシリンダー錠の上側(解錠)位置と左側(施錠)位置とに、ソレノイド通電入力用のスイッチがそれぞれ配置され、ラッチが解錠方向または施錠方向に回転したときには、上側(解錠)位置または左側(施錠)位置のスイッチがON状態となってソレノイドを通電させることでロックレバーでラッチの係合部を係止させて施解錠を阻止するものとしたことを特徴とするカードキー・テンキー式錠前装置。
【請求項3】
ケーシングには、ベースプレート後方の複数のガイドピース取付部分を露出させるために形成された開口部を閉蓋させるガイドピースカバーを備え、当該ガイドピースカバーを外して開口部を開放させることでガイドピースの取付位置を変更可能としたことを特徴とする請求項1または2記載のカードキー・テンキー式錠前装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−127885(P2008−127885A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315167(P2006−315167)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(591225109)ジーエスケー販売株式会社 (14)
【Fターム(参考)】