説明

カードコネクタ及びハウジングSubAssyの製造方法

【課題】本発明は簡単な構造で、2.0mm以下のコネクタの低背化ができ、安全性にも優れた構造のカードコネクタを提供する。
【解決手段】本目的はメモリカード60が着脱自在に挿抜されるカードコネクタ10であって、メモリカード60の接続部と接触するコンタクト14と、コンタクト14が配列・保持されるハウジング12とを備えるカードコネクタ10において、ハウジング12の幅方向両側に突出するように金属製のメタルプレート16を装着し、メタルプレート16には一体に基板へ接続する接続部163を設け、複数のメーリカード60を装着する金属製のトレイ18を設けるとともにトレイ18の幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分26をメタルプレート16上に摺動可能に係合させることにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話・PDAやプリンター・カードリーダーなどの各種電子・電気機器に使用され、メモリカードを挿入してメモリカードと信号入出力可能なカードコネクタに関するもので、特にカードコネクタの低背化を図り、安全な操作性を高める構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の普及に伴って記憶容量が大きく且つコンパクトな形状からなるメモリカードが用いられるようになった。メモリカードも、メモリカードを利用する機器の特性等によって、例えばSD(Secure Digital memory card、登録商標)カード(以下単にSDカードという。)、メモリースティック(登録商標)カード(以下単にMSカードという。)、スマートメディア(登録商標)カード(以下単にSMカードという。)、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード(以下単にCFカードという。)、xDカード(登録商標)(以下単にxDカードという。)、マルチメディア(登録商標)カード(以下単にMMカード)やSIMカード(登録商標)(Subscriber Identity Module)等種々のものが用いられるようになった。これに伴い、これら種々のメモリカードへ書込み/読込みを行う装置として、メモリカードリーダライタが、コンピュータ本体内に、或は、外部機器として用いられている。
【0003】
従来、前記メモリカードと機器とを接続するためには、カードコネクタが使用されることが一般的である。
特許文献1としてプッシュープッシュタイプの特開2003−45562と、特許文献2及び特許文献3としてトレイを用いた特願2005−123252(特許文献2)と特願2006−115165(特許文献3)とを示す。
【特許文献1】特開2003−45562の要約によると、ICカードが着脱自在に挿入されるICカードの挿脱装置を提供することを目的とし、電子機器に組み込まれるICカードの挿脱装置であって、ハウジンク100とこれに被せられるカバー200を有し、ハウジンク100は、概略コ字型のフレーム部分110とこの一面側を塞ぐ底面120からなり、フレーム部分110の対向する両長手方向フレーム部111a,111bの内側には、ガイド溝113を設けると共に、底フレーム部111cには、ICカード用のコンタクト130を配列し、かつ、両長手方向フレーム部の一方には、ICカード用のロック及びエジェクト機構300を組み込んでなるICカードの挿脱装置にあり、これによって、使用部品の小型化、簡素化を図り、また、ICカードにあっても、安定して保持される優れた挿脱装置が開示されている。 ちなみに、特許請求の範囲には、請求項1として、電子機器に組み込まれるICカードの挿脱装置であって、ハウジンクとこれに被せられるカバーを有し、前記ハウジンクは概略コ字型のフレーム部分とその補強用の底面からなり、前記フレーム部分の対向する両長手方向フレーム部の内側には、ICカード用のガイド溝を設け、前記両長手方向フレーム部に直交する底フレーム部にはICカード用のコンタクトを配列し、かつ、前記両長手方向フレーム部の少なくとも一方には、ICカードの挿脱によりICカードと同方向に進退移動するスライダと、このスライダを常時前記ICカード用のガイド溝のカード挿入口側に附勢する附勢手段と、前記スライダに設けた概略ハート形状のカム溝と、このカム溝にその遊端が係合されると共に、その他端が前記底フレーム部側に固定される揺動自在のバネピンとを備えたICカード用のロック及びエジェクト機構を組み込んでなることを特徴とするICカードの挿脱装置が、請求項2として、前記スライダには、ICカードのコーナー傾斜部が当接する斜面部が設けてあることを特徴とする請求項1記載のICカードの挿脱装置が、請求項3として、前記スライダを、前記長手方向フレーム部に設けたガイドロッド部に摺動させることを特徴とする請求項1又は2記載のICカードの挿脱装置が、請求項4として、前記ICカード用のロック及びエジェクト機構の組み込まれていない長手方向フレーム部に、そのICカード用のガイド溝に弾性的に突出してICカードの側面を押圧する弾性押圧片を有するバネ金具を組み込んだことを特徴とする請求項1、2又は3記載のICカードの挿脱装置が、請求項5として、前記カバーの一部に、ICカードの表面を押圧する弾性押圧片を設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のICカードの挿脱装置が記載されている。
【特許文献2】特願2005−123252の要約によると、簡単な構造で、コネクタの低背化が可能なカードコネクタ10を提供することを目的とし、少なくとも2枚以上のカード60と接続するカードコネクタ10において、カード60数に対応するコンタクト14と、少なくとも2枚以上のカード60が設置可能なトレイ16と、トレイ16が入る1つの嵌合口20を有するとともに前記コンタクト14が保持・配列されるハウジング12とを備えることにより達成でき、4枚のカード60と接続するカードコネクタ10においては4種類のコンタクト14と、4枚のカード60が設置可能なカード装着部22を有するトレイ16と、トレイ16が入る1つの嵌合口20を有するとともに4種類のコンタクト14が保持・配列されるハウジング12とを備える構造のカードコネクタが開示されている。 ちなみに、特許請求の範囲には、請求項1として、少なくとも2枚以上のカードと接続するカードコネクタにおいて、前記カード数に対応するコンタクトと、少なくとも2枚以上のカードが設置可能なトレイと、該トレイが入る1つの嵌合口を有するとともに前記コンタクトが保持・配列されるハウジングとを備えるカードコネクタが、請求項2として、4枚のカードと接続するカードコネクタにおいて、4種類のコンタクトと、4枚のカードが設置可能なカード装着部を有するトレイと、該トレイが入る1つの嵌合口を有するとともに4種類の前記コンタクトが保持・配列されるハウジングとを備えるカードコネクタが、請求項3として、前記トレイには1枚のカードしか設置できないように各カードの一部がラップするような位置関係にカード装着部を設けることを特徴とする請求項1又は2記載のカードコネクタが、請求項4として、前記トレイには少なくとも2枚以上のカードがラップしないように設置可能な位置関係にカード装着部を設けるとともに使用するカードを認識する機構を設けることを特徴とする請求項1又は2記載のカードコネクタが、請求項5として、前記ハウジングの嵌合口側に、前記トレイの飛び出しを防止するストッパー手段を設けることを特徴とする請求項1、2又は3、4記載のカードコネクタが、請求項6として、前記トレイが装着された状態で、前記トレイを押すことで前記トレイがある程度抜去できる機構を有することを特徴とする請求項1から5項のうちいずれか1項記載のカードコネクタ等が記載されている。
【特許文献3】特願2006−115165の要約によると、簡単な構造で、コネクタの軽薄短小化ができ、メモリカードを容易に取り出せる構造のカードコネクタを提供することを目的とし、メモリカード60が着脱自在に挿抜されるカードコネクタ10であって、メモリカード60の接続部と接触するコンタクト14と、メモリカード60が挿入される挿入口22を有するとともにコンタクト14が配列・保持されるハウジング12とを備えるカードコネクタ10において、ハウジング12は2つの側壁24と奥壁26とこれらの側壁24と奥壁26と連設する下壁28とを有するとともに2つの側壁24と奥壁26と下壁28とによりメモリカード60の挿入口22を形成し、下壁28の反対側にはシェル16を配置し、下壁28にトレイ抑え板20により摺動可能に弾性変形するトレイ18を配置する構造のカードコネクタ10が開示されている。 ちなみに、特許請求の範囲には、請求項1として、メモリカードが着脱自在に挿抜されるカードコネクタであって、メモリカードの接続部と接触するコンタクトと、メモリカードが挿入される挿入口を有するとともに前記コンタクトが配列・保持されるハウジングとを備えるカードコネクタにおいて、前記ハウジングは2つの側壁と奥壁とこれらの側壁と奥壁と連設する下壁とを有するとともに2つの側壁と奥壁と下壁とにより前記メモリカードの挿入口を形成し、前記下壁の反対側にはシェルを配置し、前記下壁にトレイ抑え板により摺動可能に弾性変形するトレイを配置するカードネクタが、請求項2として、前記トレイを弾性を有する金属により板状に形成し、一方の自由端側に前記メモリカード装着時に前記下壁端面より突出した操作部を有し、該操作部を引くことで前記トレイが摺動することを特徴とする請求項1記載のカードコネクタが、請求項3として、前記トレイには前記メモリカードの誤嵌合防止手段と位置決め手段とを備えることを特徴とする請求項1または2記載のカードコネクタが、請求項4として、前記トレイを板状片にすることで、前記トレイを引き抜いた際に前記メモリカードの下面部分に空間部を設けることを特徴とする請求項1から3項のうちいずれか1項記載のカードコネクタが開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、機器の小型化が進む中、コネクタの小型化要求もより一層強くなってきており、2.0mm以下の低背化の要求が出てきている。コネクタが軽薄短小化すると、前記メモリカードの出し入れが難しくなる。このような状況の中、上述した特許文献1〜特許文献3のような構造では、部品点数や部品の厚さや構造の問題から2.0mm以下の低背化を実現することが出来なかった。また、世の中の趨勢として、操作性の安全性やメモリカードの誤嵌合を防止したいという要求も強くなってきている。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、2.0mm以下のコネクタの低背化ができ、安全性にも優れた構造のカードコネクタを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、メモリカード60が着脱自在に挿抜されるカードコネクタ10であって、メモリカード60の接続部と接触するコンタクト14と、該コンタクト14が配列・保持されるハウジング12とを備えるカードコネクタ10において、前記ハウジング12の幅方向両側に突出するように金属製のメタルプレート16を装着し、該メタルプレート16には一体に基板へ接続する接続部163を設け、複数のメーリカード60を装着する金属製のトレイ18を設けるとともに前記トレイ18の幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分26を前記メタルプレート16上に摺動可能に係合させることにより達成できる。
【0007】
1枚のメモリカードの場合には、メモリカード60が着脱自在に挿抜されるカードコネクタ10であって、メモリカード60の接続部と接触するコンタクト14と、該コンタクト14が配列・保持されるハウジング12とを備えるカードコネクタ10において、前記ハウジング12の幅方向両側に突出する突出部24を設け、1枚のメーリカード60を装着する金属製のトレイ18を設けるとともに前記トレイ18の幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分26を前記突出部24上に摺動可能に係合させることにより達成できる。
【0008】
請求項3記載のカードコネクタ10は、前記ハウジング12の突出部24を、別部品の金属製のメタルプレート16にするとともに前記メタルプレート16と一体に基板へ接続する接続部163を設ける。
また、請求項4記載のカードコネクタ10は、前記トレイ18には、他方端側で、かつ、幅方向一方側に樹脂製のボタン22を取り付ける。
請求項5記載のカードコネクタ10は、前記メタルプレート16若しくは前記突出部24の前記トレイ挿入側で、かつ、幅方向両側に突出する突起30を設け、前記トレイ18の側面部34に前記突起30が摺動可能に係合できる係止溝28を設ける。
さらに、請求項6記載のカードコネクタ10は、前記コンタクト14と前記メタルプレート16とを一体成型により形成したハウジングAssy20を用いる。
請求項7記載のカードコネクタ10は、前記トレイ18の幅方向両側の前記側面部34の自由端にを折り返し部38を設ける。
【0009】
前記ハウジングAssy20の製造方法としては、第一工程として、前記コンタクト14と前記メタルプレート16を一体の所定形状にプレス加工したSubAssy21を形成し、第二工程として、第一工程のSubAssy品21をモールド金型にセットした後に一体成型し、第三工程として、第二工程の一体成型品の前記コンタクト14と前記メタルプレート16との連結部分を切断する切断加工をし、第一から第三工程を順次行なう。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明のカードコネクタ10及びハウジングSubAssy20の製造方法によると、次のような優れた顕著な効果が得られる。
(1)メモリカード60が着脱自在に挿抜されるカードコネクタ10であって、メモリカード60の接続部と接触するコンタクト14と、該コンタクト14が配列・保持されるハウジング12とを備えるカードコネクタ10において、前記ハウジング12の幅方向両側に突出するように金属製のメタルプレート16を装着し、該メタルプレート16には一体に基板へ接続する接続部163を設け、複数のメーリカード60を装着する金属製のトレイ18を設けるとともに前記トレイ18の幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分26を前記メタルプレート16上に摺動可能に係合させているので、2.0mm以下の低背化が可能で、かつ、カードを挿入するだけでシールド及び静電気対策も容易に行なえる。
(2)1枚のメモリカードの場合には、メモリカード60が着脱自在に挿抜されるカードコネクタ10であって、メモリカード60の接続部と接触するコンタクト14と、該コンタクト14が配列・保持されるハウジング12とを備えるカードコネクタ10において、前記ハウジング12の幅方向両側に突出する突出部24を設け、1枚のメーリカード60を装着する金属製のトレイ18を設けるとともに前記トレイ18の幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分26を前記突出部24上に摺動可能に係合させているので、2.0mm以下の低背化が可能になる。
(3)請求項3記載のカードコネクタ10は、前記ハウジング12の突出部24を、別部品の金属製のメタルプレート16にするとともに前記メタルプレート16と一体に基板へ接続する接続部163を設けているので、2.0mm以下の低背化が可能で、かつ、カードを挿入するだけでシールド及び静電気対策も容易に行なえる。
(4)請求項4記載のカードコネクタ10は、前記トレイ18には、他方端側で、かつ、幅方向一方側に樹脂製のボタン22を取り付けているので、前記トレイ18の取扱いが安全に行える。
(5)請求項5記載のカードコネクタ10は、前記メタルプレート16若しくは前記突出部24の前記トレイ挿入側で、かつ、幅方向両側に突出する突起30を設け、前記トレイ18の側面部34に前記突起30が摺動可能に係合できる係止溝28を設けているので、摺動時のガイドにもなり、安定して摺動でき、かつ、前記トレイ18の移動量を制限できる。
(6)請求項6記載のカードコネクタ10は、前記コンタクト14と前記メタルプレート16とを一体成型により形成したハウジングAssy20を用いているので、2.0mm以下の低背化が可能になる。
(7)請求項7記載のカードコネクタ10は、前記トレイ18の幅方向両側の前記側面部34の自由端に折り返し部38を設けているので、手で金属製の前記トレイ18に触れても手を怪我することがない。
(8)前記ハウジングAssy20の製造方法としては、第一工程として、前記コンタクト14と前記メタルプレート16を一体の所定形状にプレス加工したSubAssy21に形成し、第二工程として、第一工程のSubAssy品21をモールド金型にセットした後に一体成型し、第三工程として、第二工程の一体成型品の前記コンタクト14と前記メタルプレート16との連結部分を切断する切断加工をし、第一から第三工程を順次行なっているので、簡単な方法で前記ハウジングAssy20を製造でき、かつ、2.0mm以下の低背化にも繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図6に基づいて、本発明のカードコネクタの一実施例について説明する。図1(A)は嵌合方向からみたトレイが引き出された状態のカードコネクタの斜視図であり、(B)は嵌合方向からみたトレイが挿入された状態のカードコネクタの斜視図である。図2(A)は嵌合方向からみたカードが装着され、トレイが引き出された状態のカードコネクタの斜視図であり、(B)は嵌合方向からみたカードが装着さら、トレイが挿入された状態のカードコネクタの斜視図である。図3はトレイの斜視図であり、図4はボタンの斜視図であり、図5はコンタクトとメタルプレートが一体に保持されたハウジングの斜視図である。図6(A)はコンタクトとメタルプレートが一体の状態の斜視図であり、(B)はコンタクトとメタルプレートが分割した状態の斜視図である。図7(A)はボタンが装着された図3とは別のトレイの斜視図であり、(B)はA部拡大図である。
一実施例の本発明のカードコネクタ10は、主にハウジングSubAssy20(コンタクト14とメタルプレート16が一体成型された状態品)とトレイ18とボタン22とを備えている。
【0012】
構成部品を説明する前に、カードについて説明する。前記カードはプリンターやカードリーダ等に使用されるものであって、前記カードには主にコンタクト14の接触部141と接触する接触部と該接触部から回路へ繋がるパターンと該パターン上に搭載されたICやCPUと接続する接続部とを備えている。本発明のカードコネクタ10に使用されるカードとしては、SIMカード(登録商標)(Subscriber Identity Module)、マルチメディアカード(登録商標)、SDカード(Secure Digital memory card、登録商標)、Mini−SDカード(Mini Secure Digital memory card、登録商標)、メモリースティック(登録商標)、スマートメディア(登録商標)、コンパクトフラッシュ(登録商標)、xDカード(登録商標)、RS−MMCカード(Reduce Size MMC card、登録商標)、Transflashカード(登録商標)、Sカード(S card、登録商標)、Memory-Stick Duo(登録商標)などのように、CPUあるいはメモリー用のICが内臓されたICカードが挙げられる。
本実施例のカードコネクタ10には、SIMカード(登録商標)が挿入できる構造になっている。
【0013】
まず、低背化には欠かすことのできない、ハウジングAssy20の製造方法について説明する。
前記ハウジングAssy20の製造方法としては、次の第一から第三工程を順次行なう。
第一工程として、図6(A)のごとく、前記コンタクト14と前記メタルプレート16を一体の所定形状にプレス加工し、SubAssy21を形成する。
第二工程として、第一工程のSubAssy品21をモールド金型にセットした後に一体成型する。
第三工程として、第二工程の一体成型品の前記コンタクト14と前記メタルプレート16との連結部分を切断する切断加工を行なう。絶縁体がない状態では図6(B)のような状態で、前記コンタクト14と前記メタルプレート16とが分離した状態になる。つまり、絶縁体に覆われた状態では、図5のようになり、孔32の部分で前記コンタクト14と前記メタルプレート16とが分離する。
【0014】
まず、SubAssy品21(前記コンタクト14と前記メタルプレート16を一体にしたもの)について説明する。SubAssy品21は金属製であり、公知技術のプレス加工によって製作されている。前記SubAssy品21の材質としては、導電性や寸法安定性や成型性やバネ性などが要求されるので、黄銅やベリリウム銅やリン青銅等を挙げることができる。
【0015】
図6に基づいて、それぞれの部位であるコンタクト14とメタルプレート16について説明する。前記コンタクト14は、主に、メモリカードの接続部に接触する接触部141と基板に接続される接続部143とを有している。前記コンタクト14は、SIMカード(登録商標)60に対応するものであり、コンタクト14の接続部143は、基板の回路設計や占有面積やコネクタ10の大きさ及び設計を考慮して適宜設計している。本実施例では、コンタクト14の接続部143は前記トレイ挿入方向とその反対側の両方に、突出するように設けられ、図1のように表面実装(SMT)タイプになっている。
また、コンタクト14の接触部141は、挿入されたメモリカード60を接触しやすいように湾曲した構造になっている。前記接触部141の位置は挿入されるメモリカード60の接続部の位置を考慮して適宜設計され、湾曲量はメモリカード60との接触圧を考慮して適宜設計している。
【0016】
前記メタルプレート16は、主に、前記ハウジング12の幅方向両側に突出する突出部24と基板に接続する接続部163とを有している。前記メタルプレート16はトレイと接触することで、シールドや静電気除去としての機能を有するものであり、前記メタルプレート16の接続部163は、基板の回路設計や占有面積やコネクタ10の大きさ及び設計を考慮して適宜設計している。本実施例では、前記メタルプレート16の接続部163は前記トレイ挿入方向とその反対側の両方に、突出するように設けられ、図1のように表面実装(SMT)タイプになっている。
【0017】
前記コンタクト14と前記メタルプレート16とが一体に形成された状態のものが、SubAssy品21である。本実施例では、6本の前記コンタクト14と、2つの前記メタルプレート16とから、前記SubAssy品21はなっている。
本実施例においては、前記突出部24を前記メタルプレート16として形成したが、前記突出部24を前記メタルプレート16と前記ハウジング12とで形成しても良いし(場合によっては前記メタルプレート16を上側にする)、前記突出部24を前記ハウジング12のみで形成し、前記メタルプレート16を用いなくてもよい。
【0018】
前記突出部24には、前記トレイ挿入側で、かつ、幅方向両側に突出する突起30が設けられている。前記突起30は、前記トレイ18の側面部34に設けられた係止溝28と係合する部分である。このように前記突起30と前記係止溝28とを係合させることで、摺動時のガイドにもなり、安定して摺動でき、かつ、前記トレイ18の移動量を制限できる。また、前記トレイ18を引き出す際のあおりで前記トレイ18が外れることも防止できる。前記突起30の大きさは、前記トレイ18の強度や摺動性等を考慮して適宜設計している。
【0019】
次に、前記ハウジングAssy品20について説明する。前記ハウジングAssy品20は前記SubAssy品21を金型にセットし、一体成型したもの(つまり、前記コンタクト14と前記メタルプレート16とハウジング12とが一体化したもの)である。絶縁体部分(ハウジング12)は、電気絶縁性のプラスチックであり、公知技術の射出成形によって製作され、この材質としては寸法安定性や加工性やコスト等を考慮して適宜選択するが、一般的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリアミド(66PA、46PA)や液晶ポリマー(LCP)やポリカーボネート(PC)やこれらの合成材料を挙げることができる。
前記ハウジングAssy品20の最終品には、前記コンタクト14と前記メタルプレート16とを電気的に分離する孔32が設けられる。前記孔32は、前記ハウジングAssy品20を所定の金型にセットして、孔加工を施すことで前記コンタクト14と前記メタルプレート16とを電気的に分離するものである。前記孔32の位置は、コンタクト14と前記メタルプレート16との連結部分である。
【0020】
次に、本発明のポイントの1つであるトレイ18について説明する。このトレイ18は本実施例では金属製であり、公知技術のプレス加工によって製作されている。前記トレイ18の材質としては、導電性や寸法安定性や成型性やバネ性などが要求されるので、黄銅やベリリウム銅やリン青銅やステンレス鋼等を挙げることができる。
【0021】
前記トレイ18の役割は、前記メモリーカードを保持して、前記ハウジングAssy品20への出し入れを行なうことで、前記メモリーカードの挿抜を行なうものである。前記トレイ18は断面略U(コ字)形状をし、前記トレイ挿入方向と反対側で、かつ、幅方向両側に折り曲げられた折り曲げ部分26が設けられている。前記折り曲げ部分26は、前記ハウジングAssy品20の突出部24に係合・接触し、前記突出部24上を摺動する部分である。前記折り曲げ部分26の形状としては、前記突出部24に接触し、かつ、前記突出部24上を摺動できればよく、強度や摺動性や導電性や加工性等を考慮して適宜設計している。
【0022】
前記トレイ18の側面部34には、前記突起30と係合する係止溝28が設けられている。このように前記突起30と前記係止溝28とを係合させることで、摺動時のガイドにもなり、安定して摺動でき、かつ、前記トレイ18の移動量を制限できる。また、前記トレイ18を引き出す際のあおりで前記トレイ18が外れることも防止できる。前記係止溝28は、前記側面部34のほぼ全長に亘って設けられている。前記係止溝28の大きさは、前記トレイ18の強度や摺動性等を考慮して適宜設計している。
【0023】
前記トレイ18は、前記メモリカード60を装着するものであるために、前記メモリカード60を囲うように前記側面部34のような立設部分が設けられている。
また、図7のように、手で金属製の前記トレイ18に触れても手を怪我することを防ぐために、前記トレイ18の幅方向両側の前記側面部34の自由端に折り返し部38を設けることが望ましい。但し、前記トレイ18は前記ハウジングAssy20が摺動するので、摺動に影響がないように折り返す必要がある。前記折り返し部38の折り返し量は、上記のことを満足できればよく、立設部分の自由端が破断面ではなく、多少なりとも折り返されていればよい。形状及び大きさは、上記のことを満足するように適宜設計している。本実施例では0.05〜0.1mm程度折り返している。
【0024】
ここで、複数のメモリカードが装着されるトレイ18について説明する。以下では、上述したトレイ18(1枚が装着されるもの)との相違部分についてのみ説明する。複数のメモリカードを前記トレイ18に装着するためには、カード間を絶縁物で仕切る必要がある。上述した1枚のメモリカード60が装着される前記トレイ18に絶縁物で形成した仕切り部材を圧入や溶着等により固定する必要がある。仕切り部材は、装着するカードの大きさによって適宜設計する。カード間の仕切り部材の厚さは、0.5mm程度である。
製作上や仕切り部材の強度や管理コストを考えると、下述するボタン22と合わせて、金属製の前記トレイ18に一体成型によって形成することが望ましい。
【0025】
最後に、ボタン22について説明する。前記ボタン22は、電気絶縁性のプラスチックであり、公知技術の射出成形によって製作され、この材質としては寸法安定性や加工性やコスト等を考慮して適宜選択するが、一般的にはポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリアミド(66PA、46PA)や液晶ポリマー(LCP)やポリカーボネート(PC)やこれらの合成材料を挙げることができる。
前記ボタン22の役割は、前記トレイ18が金属で出来ているために、前記トレイ18の取扱時に怪我をしないようにするためのものである。また、前記ボタン22は、傾斜部36を設けることで、メモリカード60の誤嵌合防止も行なうことが可能である。前記ボタン22を装着する位置及び形状としては、取扱性や誤嵌合防止等を考慮して適宜設計する。本実施例では、前記トレイ18の他方端側で、かつ、幅方向一方側に装着されている。前記ボタン22は、前記トレイ18に圧入や溶着や一体成型等によって固定されている。
【0026】
本実施例においては、SIMカード(登録商標)61が挿入できる構造のカードコネクタ10を説明した。言うまでもなく、その他のカードについても同様の構造を取ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の活用例としては、携帯電話・PDAやプリンター・カードリーダーなどの各種電子・電気機器に使用され、メモリカードを挿入してメモリカードと信号入出力可能なカードコネクタに活用され、特にカードコネクタの低背化を図り、安全な操作性を高める構造に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A) 嵌合方向からみたトレイが引き出された状態のカードコネクタの斜視図である。(B) 嵌合方向からみたトレイが挿入された状態のカードコネクタの斜視図である。
【図2】(A) 嵌合方向からみたカードが装着され、トレイが引き出された状態のカードコネクタの斜視図である。(B) 嵌合方向からみたカードが装着さら、トレイが挿入された状態のカードコネクタの斜視図である。
【図3】トレイの斜視図である。
【図4】ボタンの斜視図である。
【図5】コンタクトとメタルプレートが一体に保持されたハウジングAssy品の斜視図である。
【図6】(A) コンタクトとメタルプレートが一体の状態のSubAssy品の斜視図である。(B) コンタクトとメタルプレートが分割した状態の斜視図である。
【図7】(A) ボタンが装着された図3とは別のトレイの斜視図である。(B) A部拡大図である。
【符号の説明】
【0029】
10 カードコネクタ
12 ハウジング
14 コンタクト
141 接触部
143 接続部
16 メタルプレート
163 接続部
18 トレイ
20 ハウジングAssy(SubAssyの一体成型品)
21 SubAssy(コンタクトとメタルプレート一体品)
22 ボタン
24 突出部
26 折り曲げ部分
28 係止溝
30 突起
32 孔
34 側面部
36 傾斜部
38 折り返し部
60 メモリカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリカードが着脱自在に挿抜されるカードコネクタであって、メモリカードの接続部と接触するコンタクトと、該コンタクトが配列・保持されるハウジングとを備えるカードコネクタにおいて、
前記ハウジングの幅方向両側に突出するように金属製のメタルプレートを装着し、該メタルプレートには一体に基板へ接続する接続部を設け、複数のメーリカードを装着する金属製のトレイを設けるとともに前記トレイの幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分を前記メタルプレート上に摺動可能に係合させることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
メモリカードが着脱自在に挿抜されるカードコネクタであって、メモリカードの接続部と接触するコンタクトと、該コンタクトが配列・保持されるハウジングとを備えるカードコネクタにおいて、
前記ハウジングの幅方向両側に突出する突出部を設け、1枚のメーリカードを装着する金属製のトレイを設けるとともに前記トレイの幅方向両側の一方端側を略L字形状に折り曲げ、この折り曲げた部分を前記突出部上に摺動可能に係合させることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングの突出部を、別部品の金属製のメタルプレートにするとともに前記メタルプレートと一体に基板へ接続する接続部を設けることを特徴とする請求項2記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記トレイには、他方端側で、かつ、幅方向一方側に樹脂製のボタンを取り付けることを特徴とする請求項1、2または3記載のカードコネクタ。
【請求項5】
前記メタルプレート若しくは前記突出部の前記トレイ挿入側で、かつ、幅方向両側に突出する突起を設け、前記トレイの側面部に前記突起が摺動可能に係合できる係止溝を設けることを特徴とする請求項1、2または3記載のカードコネクタ。
【請求項6】
前記コンタクトと前記メタルプレートとを一体成型により形成したハウジングAssyを用いることを特徴とする請求項1または3記載のカードコネクタ。
【請求項7】
前記トレイの幅方向両側の前記側面部の自由端に折り返し部を設けることを特徴とする請求項1から6項のうちいずれか1項記載のカードコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングAssyの製造方法において、
第一工程として、前記コンタクトと前記メタルプレートを一体の所定形状にプレス加工したSubAssyを形成し、
第二工程として、第一工程のSubAssy品をモールド金型にセットした後に一体成型し、
第三工程として、第二工程の一体成型品の前記コンタクトと前記メタルプレートとの連結部分を切断する切断加工をし、
第一から第三工程を順次行なうことを特徴とするハウジングSubAssyの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−4523(P2008−4523A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345308(P2006−345308)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000208835)第一電子工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】