説明

カードコネクタ

【課題】複数の情報記録カードを装着するようにすることで携帯機器を大型化することなく省スペース化を図ることができるカードコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ側接点20を有する端子12が固定されたインシュレータ11と、カード挿入保持部15,16と、を備え、情報が収納されている情報記録カード60,61がカード挿入保持部15,16に装着されるのに伴い、情報記録カード60,61に有するカード側接点62にコネクタ側接点20が電気的に接続されて情報記録カード60,61に収納されている情報を抽出するカードコネクタ10であって、インシュレータ11が、少なくとも2個のカード挿入保持部15,16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等に装着することで個人情報を使うSIMカード(subscriber identity module)等の情報記録カードの装着用に用いられるカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に用いられるSIMカードは、例えば、ヨーロッパ等の国を超えて単一の携帯電話を使用する機会が多い場合、その国で発行されているSIMカードを入れ換えて使用すれば、異なる国において、その携帯電話を使用することができる。特に、SIMカードは、使用する国で購入する方が、低価格な通話料金で通話をすることができる。
【0003】
従来のカードコネクタとして、図5に示すように、インシュレータ101にヒンジ連結されたカバー102を有し、情報記録カード103を装着させたカバー102をインシュレータ101側に閉じることで、情報記録カード103のカード側接点104をコネクタ側接点105に電気的に接続させるようにしたカードコネクタ100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−85987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に開示されたカードコネクタ100においては、単一の情報記録カード103のみを装着する構造であるために、複数枚の記録情報カード103を装備するには、携帯電話等の携帯機器に複数のカードコネクタ100を組み込むこととなり、携帯機器の外形が大型化する虞がある。
【0006】
また、情報記録カード103を装着させるに際し、カバー102をインシュレータ101から跳ね上げなければならいので、このカードコネクタ100が搭載される携帯機器等に、カバー102の跳ね上げ用のスペースを確保しなければならない。それによって、携帯機器等に大きなスペースを必要として小型化を図れない。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の情報記録カードを装着するようにすることで携帯機器を大型化することなく省スペース化を図ることができるカードコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1)本発明に係るカードコネクタは、コネクタ側接点を有する端子が固定されたインシュレータと、カード挿入保持部とを備え、情報が収納されている情報記録カードが該カード挿入保持部に装着されるのに伴い、該情報記録カードに有するカード側接点に該コネクタ側接点が電気的に接続されて前記情報記録カードに収納されている情報を抽出するカードコネクタであって、前記インシュレータが、少なくとも2個の前記カード挿入保持部を備えていることを特徴としている。
【0009】
上記1)に記載の発明によれば、インシュレータが少なくとも2個のカード挿入保持部を備えているために、国を超えて単一の携帯電話を使用する機会において、複数のSIMカードを同時に装着して、その国毎に使用するのに適する。もちろん、単一のインシュレータに複数の情報記録カードを装着・保持できるために、携帯機器に大きなスペースを必要とせずに、外形が大型化することがない。
【0010】
2)また、本発明に係るカードコネクタは、上記1)に記載のカードコネクタであって、前記カード挿入保持部が、前記情報記録カードを重ね合わせるように配置され、前記コネクタ側接点が、該情報記録カードの間の前記インシュレータに配置されていることを特徴としている。
【0011】
上記2)に記載の発明によれば、情報記録カードが重ね合わせで配置され、情報記録カードの間のインシュレータにコネクタ側接点が配置されているために、コネクタ側接点を一個所に集中して配置することができる。
【0012】
3)また、本発明に係るカードコネクタは、上記1)または上記2)に記載のカードコネクタであって、前記カード挿入保持部が、トレーに収納された前記情報記録カードを挿脱自在であることを特徴としている。
【0013】
上記3)に記載の発明によれば、情報記録カードが保護用のカバーとして機能するトレーに収納されている場合においても、そのトレーとともに情報記録カードをカード挿入保持部に挿脱できるので、トレーでもって比較的薄く、剛性の低い情報記録カードを保護して取り扱いを良好にすることができる。
【0014】
4)また、本発明に係るカードコネクタは、上記3)に記載のカードコネクタであって、前記トレーが、前記情報記録カードを前記コネクタ接点側に押圧する押圧機構を備えていることを特徴としている。
【0015】
上記4)に記載の発明によれば、トレーの押圧機構によって、情報記録カードがコネクタ接点側に押圧される。これにより、情報記録カードがカード挿入保持部に安定して保持されるとともに、情報記録カードのカード側接点とコネクタ側接点とを良好な電気的接続状態とすることができる。
【0016】
5)また、本発明に係るカードコネクタは、上記1)〜上記4)のいずれかに記載のカードコネクタであって、前記コネクタ側接点が、前記インシュレータの成形時に、金型のキャビティの一部を形成することを特徴としている。
【0017】
上記5)に記載の発明によれば、コネクタ側接点をインシュレータにインサートモールドする際に、金型のキャビティの一部にコネクタ側接点を用い、金型の分離時に、そのコネクタ側接点をインシュレータから剥離することで、簡素な金型でコネクタ側接点を弾性変形可能に成形することができるので、限られたスペース内で適切なバネ圧を持った接点構造を作成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカードコネクタによれば、携帯機器の外形が大型化する、携帯機器等に大きなスペースを必要として小型化を図れないという問題を解決でき、これにより、複数の情報記録カードを装着するようにすることで、1台で2台分の機能を付加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るカードコネクタと情報記録カードとの分解斜視図、図2は図1の組込斜視図、図3は図2のI−I線断面図、図4は図1のインシュレータ成形時の金型の断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の一実施形態であるカードコネクタ10は、インシュレータ11と、インシュレータ11に一体成形されている複数の12個のコネクタ側端子12と、を備え、複数の2枚の情報記録カード60,61を挿脱自在に保持する。
【0022】
インシュレータ11は、導電性のない、例えば硬質の樹脂を用いて断面視H字形に成形されている。インシュレータ11は、平板状をなす本体13の両側部に一対の側板14を有しており、本体13の上面と側板14とで囲まれていて情報記録カード60の外形よりもわずかに大きい上側カード挿入保持部15と、本体13の下面と側板14とで囲まれていて情報記録カード61の外形よりもわずかに大きい下側カード挿入保持部16と、を備えている。
【0023】
本体13は、両カード挿入保持部15,16の前面である情報記録カード60、61の挿入側に、円弧形状に切除されたカード挿抜用切欠17が形成されている。また、本体13は、上側カード挿入保持部15と下側カード挿入保持部16との左寄りに、一対の矩形の導通用貫通孔18,19が形成されており、導通用貫通孔18,19のそれぞれに、12個のコネクタ側端子12の先端部に有するコネクタ側接点20のうちの6個ずつが、3個ずつ並列にして上下に配置されている。このとき、12個のコネクタ側接点20のうちの上側の6個は上方に向けた弾性反発力を蓄積しているとともに、下側の6個は下方に向けた弾性反発力を蓄積しているために、導通用貫通孔18,19の側縁部に形成された変形規制用突部21にそれぞれ係止されることで、上側の6個は上方に、下側の6個は下方に、その位置からさらに変形しないようになっている。
【0024】
コネクタ側端子12は、インシュレータ11の本体13に一体成形されており、情報記録カード60のカード側接点62に一致するように配置されたコネクタ側接点20を先端部に有し、回路基板接続部22を他端部に有する。コネクタ側接点20は、接触の安定、撓み易さのために半球形状に形成されている。
【0025】
インシュレータ11は、12個のうちの6個ずつのコネクタ側端子12の回路基板接続部22を側板14の下端縁に突出させており、これらの側部に接地回路形成用の一対の接地端子23を突出させている。
【0026】
情報記録カード60、61は、世界中の国で発行されている統一規格のSIMカード(subscriber identity module)であり、長寸側と、短寸側と、を有する長方形の板状体である。情報記録カード60,61は、図1に示す矢印方向であるカードコネクタ10への挿入方向に沿って3個ずつで、カードコネクタ10への挿入方向に直交する方向に2個ずつ配列された合計6個のカード側接点62を備えている。カード側接点62は、上側に配置される情報記録カード60は下面に、下側に配置される情報記録カード61は上面に、それぞれ配置される。
【0027】
情報記録カード60,61は、電話番号、ユーザーID、料金等の通話契約情報や、個人メールアドレス等が、内蔵されている記録装置(RAM)に保存されているとともに、情報の演算処理等を行うことができ、カード側接点62から、それらの情報を抽出することができる。
【0028】
情報記録カード60には、上側トレー63が外装され、情報記録カード61には、下側トレー64が外装される。
【0029】
上側トレー63は、情報記録カード60の保護用のカバーとして機能するとともに外乱防止用のシールドとして機能し、例えば、銅(Cu)合金を用いて薄肉に成形されて、情報記録カード60の反カード側接点62側の上面及び側面並びに後面を覆う形状に形成されている。上側トレー63は、両側部に鍔形状のフランジ65をそれぞれ有し、ほぼ中央部に、押圧機構である一対の板ばね部材66が形成されており、挿入方向の反対側に引き出し用のフック67を有する。板ばね部材66は、下方に向けた弾性反発力を蓄積している。
【0030】
下側トレー64は、情報記録カード61の保護用のカバーとして機能し、樹脂部材を用いて情報記録カード60の反カード側接点62側の下面と外周面とを覆う形状に形成されており、挿入方向の反対側に突部68を有し、両側部に鍔形状のフランジ69をそれぞれ有する。
【0031】
図2、図3に示すように、インシュレータ11の上側カード挿入保持部15に、上側トレー62に装着された情報記録カード60が短寸側を先にして挿入され、下側カード挿入保持部16に、下側トレー64に装着された情報記録カード61が長寸側を先にして挿入される。
【0032】
上側トレー62は、フランジ65がインシュレータ11の側板14に形成されているガイド溝26に誘導されながら挿入されて上側カード挿入保持部15に保持される。
【0033】
下側トレー63は、フランジ69がインシュレータ11の側板14に形成されているガイド溝27に誘導されながら挿入されて下側カード挿入保持部16に保持される。
【0034】
このとき、上側トレー62の一対の板ばね部材66が上側の情報記録カード60を下方に向けて付勢するために、情報記録カード60は、カード側接点62がコネクタ側接点20に安定して電気的に接続される。
【0035】
図4に示すように、コネクタ側端子12は、コネクタ側接点20が、インシュレータ11の成形時に、上側金型70及び下側金型71のキャビティ72,73のうちの一部を形成する。
【0036】
上側金型70と下側金型71とは、合体された際に、コネクタ側端子12の先端部側のキャビティ72と、コネクタ側端子12の中央部側のキャビティ73と、が形成されており、先端部側のキャビティ72に、コネクタ側端子12の先端部が埋設されている。
【0037】
両キャビティ72,73内に樹脂材料が注入された後に、上側金型70と下側金型71が分離される。そして、コネクタ側端子12の先端部を樹脂材料から剥離することで、中央部側がインシュレータ11に一体成形されていて、先端部がインシュレータ11から弾性変形可能なコネクタ側端子12が成形される。
【0038】
このようなカードコネクタ10は、不図示の回路基板上に組み付けられ、インシュレータ11のコネクタ側端子12の回路基板接続部22と、接地端子23と、が回路基板のプリント配線に、例えば半田付け等で電気的に接続されて、不図示の携帯機器等に装備される。
【0039】
情報記録カード60,61を両カード挿入保持部15,16から抜き出すに際しては、カード挿抜用切欠17を介して、上側トレー63のフック67を指で摘んで引っ張ることで、上側トレー63とともに情報記録カード60が簡単に抜き出され、下側トレー64の突部68を指で摘んで引っ張ることで、下側トレー64とともに情報記録カード61が簡単に抜き出される。
【0040】
上述したように、本実施形態のカードコネクタ10によれば、インシュレータ11が2個のカード挿入保持部15,16を備えているために、国を超えて単一の携帯電話を使用する機会において、複数の情報記録カード61,61を同時に装着して、その国毎に使用するのに適する。もちろん、単一のインシュレータ11に2個の情報記録カード60,61を装着・保持できるために、携帯機器に大きなスペースを必要とせずに、外形が大型化することがない。
【0041】
また、カードコネクタ10によれば、情報記録カード60,61が重ね合わせで配置され、情報記録カード60,61の間のインシュレータ11の本体13にコネクタ側接点20が配置されているために、コネクタ側接点20を一個所に集中して配置することができる。
【0042】
また、カードコネクタ10によれば、情報記録カード60,61が保護用のカバーとして機能するトレー63,64に収納され、それらトレー63,64とともに情報記録カード60,61をカード挿入保持部15,16に挿脱できるので、トレー63,64でもって、比較的薄く、剛性の低い情報記録カード60,61を保護して取り扱いを良好にすることができる。
【0043】
また、カードコネクタ10によれば、トレー63の板ばね部材66によって、情報記録カード60がコネクタ接点20側に押圧される。これにより、情報記録カード61がカード挿入保持部15に安定して保持されるとともに、情報記録カード60のカード側接点62とコネクタ側接点20とを良好な電気的接続状態とすることができる。
【0044】
また、カードコネクタ10によれば、コネクタ側端子12をインシュレータ11にインサートモールドする際に、金型70,71のキャビティ72の一部にコネクタ側端子12を用い、金型70,71の分離時に、コネクタ側接点20をインシュレータ11から剥離することで、簡素な金型70,71でコネクタ側端子12を弾性変形可能に成形することができるので、限られたスペース内で適切なバネ圧を持った接点構造を作成できる。
【0045】
さらに、カードコネクタ10によれば、単一の携帯機器に複数の情報記録カード60,61を装備することができるので、複数の国において、それぞれ格安の通話サービスを受けることができるとともに情報記録カード60,61の交換忘れによる通話サービスのロスを減少させることができ、加えて、情報記録カード60,61の挿脱回数を減らせるので、情報記録カード60,61の紛失や破損等のトラブルを減少させて、携帯機器を快適に使用することができる。
【0046】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0047】
例えば、カード側接点の数は一例であって、情報量に応じた記録装置の容量等の変更に伴い増加或いは減少が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るカードコネクタと情報記録カードとの分解斜視図である。
【図2】図1の組込斜視図である。
【図3】図2のI−I線断面図である。
【図4】図1のインシュレータ成形時の金型の断面図である。
【図5】従来のカードコネクタの概観図である。
【符号の説明】
【0049】
10 カードコネクタ
11 インシュレータ
12 コネクタ側端子(端子)
15 上側カード挿入保持部(カード挿入保持部)
16 下側カード挿入保持部(カード挿入保持部)
20 コネクタ側接点
60,61 情報記録カード
62 カード側接点
63 上側トレー(トレー)
64 下側トレー(トレー)
66 板ばね部材(押圧機構)
70 上側金型(金型)
71 下側金型(金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ側接点を有する端子が固定されたインシュレータと、カード挿入保持部と、を備え、情報が収納されている情報記録カードが該カード挿入保持部に装着されるのに伴い、該情報記録カードに有するカード側接点に該コネクタ側接点が電気的に接続されて前記情報記録カードに収納されている情報を抽出するカードコネクタであって、
前記インシュレータが、少なくとも2個の前記カード挿入保持部を備えていることを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記カード挿入保持部が、前記情報記録カードを重ね合わせるように配置され、前記コネクタ側接点が、該情報記録カードの間の前記インシュレータに配置されていることを特徴とする請求項1に記載したカードコネクタ。
【請求項3】
前記カード挿入保持部が、トレーに収納された前記情報記録カードを挿脱自在であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載したカードコネクタ。
【請求項4】
前記トレーが、前記情報記録カードを前記コネクタ接点側に押圧する押圧機構を備えていることを特徴とする請求項3に記載したカードコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタ側接点が、前記インシュレータの成形時に、金型のキャビティの一部を形成することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載したカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−130515(P2008−130515A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317461(P2006−317461)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(500371259)矢崎シスコムプラス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】