説明

カードコネクタ

【課題】簡単な構成でメモリーカードを着脱可能に保持できるカードコネクタを得る。
【解決手段】 カードコネクタ1が、ベースプレート10と、ベースプレートの上面を覆って装着可能且つ前後にスライド移動可能なカードホルダ20と、ベースプレートに取り付けられて接触部33がベースプレートの上面より上方に突出する複数のコンタクト30とを備える。ベースプレートの上面にメモリカードを載置してカード側端子82と接触部33とを当接接触させた状態で、ベースプレートの上面を覆ってカードホルダを取り付けるとともにこれを押し下げてメモリカードを下方に押し下げたときに、アーム部32が弾性変形して接触部がスロット11a内に入り込んでアーム部の弾性変形力により接触部がカード側端子と押圧接触する。この状態で、プレート側係止部13L,13Rと、ホルダ側係合部22L,22Rが互いに係止してカードホルダが上動するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップを有するICチップ基板等のような所定情報が記録可能なメモリカードと電子機器等との間に介在してこれら両者間の情報伝送を可能にするカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップ基板(ICチップカード、メモリカード等と称される)は小型のICチップが実装されて種々の情報を記録可能な構成となっており、様々な電子機器に使用され、電子機器に実装されたカードコネクタを介して電子機器との間で情報伝送が行われる。
【0003】
電子機器に使用されるカードコネクタとして、従来から種々の型式のカードコネクタが考案されており、例えば特許文献1にも記載があるように、導電性のコンタクト(接触端子)を保持する絶縁性のベースプレート(モールド)と、ベースプレートに対して揺動可能に取り付けられたカードホルダとから構成される。このようなカードコネクタは、ICチップ基板を一旦カードホルダに取り付け、このカードホルダを揺動させてカードホルダがICチップ基板を被せるようにしてICチップ基板をコンタクトに抑え付け、ICチップ基板の面端子とコンタクトとを接触させる構成となっている。このような、いわゆる接点部押し当て方式のカードコネクタでは、ICチップ基板の面端子とコンタクトとを確実に導通させる必要性があるため、ICチップ基板を装着させた状態でカードホルダをコンタクトが設けられたベースプレートに、ネジによる締結固定をしたり、もしくはバネのような付勢手段により抑え付けている。あるいは、ICチップ基板のベースプレートへの固定は、カードホルダによる抑え付けによらずにベースプレートに固定手段を設け、この固定手段によりICチップ基板の面端子をコンタクトに抑え付ける方法によるもの(ベースプレート自身によるICチップ基板の固定)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−270279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カードホルダによりICチップ基板をコンタクトに抑え付けた状態でカードホルダをベースプレートに固定する方法では、カードホルダをベースプレートに固定させるためのネジやバネといった部品が必要であるため、その分、部品点数が多くなりカードコネクタのコストが上昇する、といった問題がある。また、カードホルダによる押さえ付けによらずにベースプレートに固定手段を設けてICチップ基板をベースプレートのみで固定する方法では、ICチップ基板の面端子とコンタクトとを導通させる必要があるため、ICチップ基板をベースプレートに確実に固定させなければならず、ICチップ基板が簡単に外れないようにするためにベースプレートに設けられた固定手段の構造が複雑になる、といった問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みたもので、簡単な構成で、メモリカードをカードホルダによりベースプレート上に押圧保持させることが可能なカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明に係るカードコネクタは、矩形平板状のベースプレートと、前記ベースプレートの上面を覆って前記ベースプレートに装着可能で且つ前記上面に沿って前後にスライド移動可能に前記ベースプレートに取り付けられるカードホルダと、前記ベースプレートに取り付けられて接触部が前記ベースプレートの上面より上方に突出する複数のコンタクトとを備え、矩形平板状のメモリカードを前記ベースプレートの上面に載置するとともに前記ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付け、前記メモリカードの下面に設けられたカード側端子と前記コンタクトの前記接触部とを当接接触させるように構成される。さらに、前記複数のコンタクトがそれぞれ、前記ベースプレートに固定保持された基部と、前記基部の一端側に一体に繋がって前記ベースプレートの下面側に延びたリード部と、前記基部の他端側に一体に繋がって前記ベースプレートに上面側に開口して形成されたスロット内に延びたアーム部と、前記アーム部の先端側に繋がるとともに前記ベースプレートの上面より上方に突出した前記接触部とから構成され、前記ベースプレートの上面に前記メモリカードを載置して前記メモリカードの下面の前記カード側端子と前記接触部とを当接接触させた状態で、前記ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付けるとともに前記カードホルダを押し下げて前記メモリカードを下方に押し下げたときに、前記アーム部が弾性変形して前記接触部が前記スロット内に入り込んで前記アーム部の弾性変形力により前記接触部が前記カード側端子と押圧接触するように構成されており、さらに、前記ベースプレートの左右側部に形成されたプレート側係止部と、前記カードホルダの左右側部に形成されたホルダ側係合部とから構成され、前記ベースプレートの上面を覆って取り付けられた前記カードホルダを押し下げた状態で前記プレート側係止部と前記ホルダ側係止部とが互いに係止して前記カードホルダが上動するのを阻止する係止保持手段を備える。
【0008】
上記構成のカードコネクタにおいて、好ましくは、前記プレート側係止部が前後に延びる突起状に形成されるとともに下面にプレート側係止面を有し、前記ホルダ側係止部が前後に延びる突起状に形成されるとともに上面にホルダ側係止面を有し、前記ベースプレートの上面に前記メモリカードを載置するとともに前記ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付けるときに、前記プレート側係止部と前記ホルダ側係止部が前後にずれて位置して前記ホルダ側係止部が前記プレート側係止部と干渉することなく下方に移動し、前記カードホルダを押し下げたまま前後にスライド移動させることにより前記ホルダ側係止部が前記プレート側係止部の下方に位置し、前記カードホルダの押し下げを解放すると前記ホルダ側係止面が前記プレート側係止面と係合して前記カードホルダの上動を阻止して係止保持するように構成される。
【0009】
さらに、上記構成のカードコネクタにおいて、好ましくは、前記ホルダ側係止面が係合スライド移動方向に向かって斜め上に延びるテーパを有して形成され、前記プレート側係止面が係合スライド移動方向に向かって斜め下に延びるテーパ面を有して形成され、前記アーム部の弾性変形力を受けて前記メモリカードを介して前記カードホルダが上動方向の力を受けることにより、前記ホルダ側係止部と前記プレート側係止部との係合を強める方向の力が作用するように構成される。
【0010】
さらに、上記構成のカードコネクタにおいて、好ましくは、前記カードホルダに上下に貫通する開口が形成され、前記ベースプレートの上面に、前記カードホルダが前記倒伏姿勢の状態で前記開口を通して前記ベースプレートの上面側に向かって露出する平面状の吸着部が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に関するカードコネクタによれば、ネジやバネといった固定部材を用いずにカードホルダをベースプレートに固定することが可能であるためシンプルな構造となる。特に、コンタクトを構成するアーム部をスロット内に延びて弾性変形可能とし、アーム部の先端をベースプレートの上面から上方に突出させ、ベースプレートの上面にメモリカードを載置してメモリカードの下面のカード側端子と接触部とを当接接触させた状態で、ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付けてこれを押し下げてメモリカードを下方に押し下げるだけで、アーム部が弾性変形して接触部がスロット内に入り込んでアーム部の弾性変形力により接触部がカード側端子と押圧接触するので、メモリカードの保持および端子の電気接続を行わせる構成をシンプルなものとすることができる。このカードコネクタはさらに、ベースプレートの左右側部に形成されたプレート側係止部と、カードホルダの左右側部に形成されたホルダ側係合部とから構成される係止保持手段を備えており、ベースプレートの上面を覆って取り付けられたカードホルダを押し下げた状態でプレート側係止部とホルダ側係止部とが互いに係止してカードホルダが上動する構成であり、この構成が非常にシンプルである。
【0012】
なお、上記構成のカードコネクタにおいて、好ましくは、メモリカードを載置したベースプレートの上面を覆ってカードホルダを取り付けるときに、プレート側係止部とホルダ側係止部が前後にずれて位置してホルダ側係止部がプレート側係止部と干渉することなく下方に移動し、カードホルダを押し下げたまま前後にスライド移動させることによりホルダ側係止部がプレート側係止部の下方に位置し、カードホルダの押し下げを解放するとホルダ側係止面がプレート側係止面と係合してカードホルダの上動を阻止して係止保持する構成とするのが好ましく、これにより、カードホルダの係止保持構造をシンプルとするとともに、その係止保持させる作動が簡単に行えるようになる。
【0013】
さらに、上記構成のカードコネクタにおいて、ホルダ側係止面が係合スライド移動方向に向かって斜め上に延びるテーパを有し、プレート側係止面が係合スライド移動方向に向かって斜め下に延びるテーパ面を有するように形成すれば、アーム部の弾性変形力を受けてメモリカードを介してカードホルダが上動方向の力を受けることにより、ホルダ側係止部とプレート側係止部との係合を強める方向の力が作用して、カバー部材の係合が解除されにくい構成とすることができる。このため、カードコネクタを落としたときのようにカードコネクタに加えられる振動、衝撃に対してカバー部材がベースプレートから解除されにくくなっている。すなわち、本発明に係るカードコネクタは、シンプルな構造とすることでカードコネクタの製造コストを抑えつつも、カードコネクタに装着されるICチップ基板(メモリカード)といった基板が簡単に外れないようになっており、コスト面を考慮しながら基板とコンタクトとの確実な導通性をも考慮した優れたものといえる。
【0014】
また、本発明に係るカードコネクタを構成するカードホルダには、倒伏姿勢の状態における上下に貫通する開口が形成され、ベースプレートの上面に、カードホルダが倒伏姿勢の状態で開口を通して露出される平面状の吸着部が形成されているため、カードホルダをベースプレートに被せて倒伏姿勢にした状態で、当該開口を介して露出される吸着面を自動実装機に直接吸着させれば、カードコネクタを配線基板上の所望もしくは任意の位置に実装させることが可能である。このように、本発明では、自動実装機による自動実装のために従来必要とされていた吸着パットといった付属部品を別途取り付ける必要がないため、このような点からも製造コストを抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るカードコネクタの展開姿勢の状態を示す斜視図である。
【図2】上記カードコネクタに取り付けられるICチップ基板の平面図である。
【図3】(a)は上記カードコネクタの展開姿勢の状態における平面図で、(b)は上記カードコネクタの展開姿勢の状態における底面図である。
【図4】上記カードコネクタの展開姿勢の状態における正面図である。
【図5】上記カードコネクタの倒伏姿勢の状態における、図3(a)のX−X´間の側断面図である。
【図6】上記カードコネクタの左側面図で、展開姿勢から倒伏姿勢に向けて揺動するカードホルダの様子を示す図である。
【図7】上記カードコネクタの倒伏姿勢における前端部における左側部分側面図である。
【図8】上記カードコネクタを構成するベースプレートの斜視図である。
【図9】上記カードコネクタの倒伏姿勢における底面側の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1に本発明に係るカードコネクタの好ましい実施例を斜視図として示し、図2にカードコネクタに取り付けられるICチップ基板の平面図を示す。また、図3(a)に上記カードコネクタの展開姿勢(カードコネクタを構成するカードホルダが上方に揺動した姿勢)の状態における平面図を示し、図3(b)に上記カードコネクタの展開姿勢の状態における底面図を示す。また、図4にカードコネクタの展開姿勢の状態における正面図を示し、図5に図3(a)のX−X´間の側断面図を示し、図6にカードコネクタの展開姿勢における左側面図を示す。また、図7にカードコネクタの倒伏姿勢における前端部における左側部分側面図を示し、図8にカードコネクタを構成するベースプレートの斜視図を示し、図9にカードコネクタの展開姿勢における底面側の部分斜視図を示す。なお、実施例においては、説明の便宜上、図1中に座標軸および方向を付記する様に、前後・左右および上下を定義して説明するが、カードホルダ20の形状を説明する場合には、カードホルダ20がベースプレート10に倒伏した倒伏姿勢において図1中に示す座標軸と一致する方向を前後・左右および上下を定義して説明する。
【0017】
カードコネクタ1は、矩形平板状のベースプレート10と、このベースプレート10に後端側が揺動およびスライド移動可能に支持されたカードホルダ20と、ベースプレート10に圧入固定された複数のコンタクト30とから構成されており、図1に示すようにベースプレート10に対してカードホルダ20を開いた展開姿勢で図2に示すようなICチップ81が実装された矩形平板状のICチップ基板80をベースプレート10上に載置するようにしてベースプレート10に受容させ、カードホルダ20をベースプレート10の上面を覆うように倒伏させて閉じた倒伏姿勢において、ICチップ基板80に設けられた面端子82とコンタクト30とを当接接触させる形態のカードコネクタである。
【0018】
ベースプレート10は、矩形平板状のプレート部11、このプレート部11の後端側の左右に形成された軸支部12,12、プレート部11の前端側の左右に形成された前方保持部13L,13R、プレート部11の左右両側面17,17に立設された中央張出部14,14、プレート部11の下面に突出して形成され回路基板上にカードコネクタ1を実装する場合に位置決めを行うための位置決めポスト18a,18aなどからなり、例えば、液晶ポリマー(LCP)やポリフェニレンサルファイド(PPS)ポリアミドイミド(PAI)などの電気絶縁性の樹脂材料を用いて射出成形等の成形手段により図示する形状に一体成形される。
【0019】
プレート部11には、プレート部11の前後方向に延びる長孔状のコンタクトスロット11aが左右に22個ずつ前後4列に並んで形成されるとともに、プレート部11の底面がコンタクトスロット11aの前後の側端面から延びるようにして凹んでコンタクト30を保持する溝状のコンタクト保持溝11bが形成されている。また、プレート部11の略中央部には、コンタクトスロット11a,11aにより前後が挟まれた位置に位置し、カードコネクタ1を基板上に自動実装させる自動実装機を吸着させるための平面視略矩形状の平坦な吸着部15が形成されている。
【0020】
中央張出部14は、プレート部11から側方に側面視逆L字状に突出形成されており、プレート部11の側面を前後に且つやや斜め下方にアーム状に延びる部分は、後述するホルダ側ロックアーム22mを係止可能なプレート側ロックアーム14mを構成している。中央張出部14よりも前方であってプレート部11の側面最下部には、プレート部11の側面から側方に側面視略矩形状に突出する係止部16が形成されている。
【0021】
前方支持部13L,13Rの各底面後部には後方に向けて斜め下方に傾斜するプレート側テーパ面13h,13hが形成されていて、このプレート側テーパ面13h,13hは、後述するように、カードホルダ20の前端側に延びて突出形成された側面部22,22の突出端部22L,22Rの上面に形成されたホルダ側テーパ面22h,22hに当接可能である。
【0022】
コンタクト30は、コンタクト保持溝11bに固定される基部31と、この基部31から上方に折り曲げられ一旦下方に折り返されてから斜め上方に延びるコンタクトアーム部32と、コンタクトアーム部32の先端部に形成されて上方に凸な円弧状の接触部33と、基部31から下方に屈曲および水平に折り返されてコンタクトアーム部32と反対方向に延びるリード部34とからなり、例えば、ベリリューム銅やバネ用ステンレス鋼などの導電性金属材料の薄板をファインブランキングプレス(精密打抜加工)等の成形手段により加工成形して図示する形状に構成する。
【0023】
各コンタクト30は、プレート部11の下部に前後に延びて形成されたコンタクト保持溝11bからコンタクトスロット11aに向けて挿入され、基部31がコンタクト保持溝11bに圧入されてベースプレート10に取り付けられる。コンタクト30は、基部31がコンタクト保持溝11bに固定保持されると、コンタクトスロット11aに突出するコンタクトアーム部32が片持ち支持された板バネのように作用し、アーム先端の接触部33が上下方向に揺動変位自在に支持される。
【0024】
このため、接触部33は無負荷時においてコンタクトスロット11aからプレート部11の上面に突出して位置しているが、上方から押圧されるとコンタクトアーム部32が弾性変形して下方に揺動変位し、接触部33を含むコンタクトアーム部32全体がコンタクトスロット11a内に押し沈められるように収容される基部31から下方に屈曲および水平に折り返されたリード部34は、コンタクト取付姿勢においてプレート部11の下面と略同一高さに位置しており、プレート部下面に突出する位置決めポスト18a,18bで実装基板の回路パターンと位置整合されたリード部34が基板上の回路パターンに半田接合(サーフェースマウント)される。
【0025】
カードホルダ20は、ベースプレート10に対して後端側が上下に揺動可能に取り付けられており、略中央部に略矩形状に形成された開口23を有する矩形平板状のカバー部21、カバー部21の左右両端から下方へ折曲し前後に板状に延びる側面部22,22などからなり、ベースプレート10と同様の樹脂材料を用いて射出成形等により一体成形される。
【0026】
側面部22の前後方向略中央部よりもやや後方に位置して、側面部22の内壁側から外壁側に向けて断面略コの字状に上下に切り欠かれた切欠部26が形成されている。この切欠部26により、側面部22の肉厚が他の部分よりも薄い薄肉部27が部分的に形成されている。なお、切欠部26や薄肉部27は、左右の側面部22のうちいずれにも形成されている。切欠部26の後方面は下部が後方に斜め下方に傾斜しており、また、切欠部26の後方面の上部は後方面の下部よりも後方に引っ込んだ位置において上下に延びており、切欠部26にはベースプレート10の中央張出部14と位置整合し、側面部22の前方に突出したホルダ側ロックアーム22mが形成される。また、側面部22には、切欠部26よりもやや後方に位置して側面部22の最下部が断面略半円状に切り欠かれ(図9参照)、係止部16に係合可能な係合部28が形成されている。この係合部28は、左右の側面部22のうちいずれにも形成されている。
【0027】
カバー部21の後端部分はカバー部21と分かれて後方にアーム状に延びるアーム部24,24が形成され、各アーム部24,24の下部には、それぞれ左右外側に突出する側面視略半円状の軸部25,25が形成されている(図6参照)。この軸部25,25は、ベースプレート10の軸支部12,12に形成された溝部29と各々係合させることで、カードホルダ20が軸支部12,12を揺動中心としてベースプレート10に対して上下に揺動することが可能であり、カードホルダ20を下方に(図6における矢印A方向に)揺動させて倒伏姿勢にさせたときにはベースプレート10を上方から覆うような状態となる。
【0028】
これに対し、カードホルダ20を、その倒伏姿勢の状態から矢印Aとは逆方向に軸部25を揺動中心として上方に揺動させると、カードホルダ20は、図6に示すようにベースプレート10に対して90°以上の角度まで揺動する。このようにすることで、ICチップ基板80のベースプレート10上への載置やベースプレート10からの取り外しの際に、カードホルダ20が邪魔にならないため、カードコネクタ1へのICチップ基板80の装着および取り外しが容易である。
【0029】
カードホルダ20が、倒伏姿勢になってベースプレート10を上方から覆うような状態になると、カードホルダ20のカバー部21に形成された開口23を通して、ベースプレート10のプレート部10の上面に形成された吸着部15が露出される。この吸着部15は、自動実装機に設けられカードコネクタを吸着保持する吸着部材(例えばエアノズル)を吸着させるために形成されている。このため、従来とは異なり吸着部材に吸着させるための吸着パットといったものを別途設けずに、自動実装機の吸着部材を吸着部に直接吸着させれば、カードコネクタ1を回路基板上の所望もしくは任意の位置に実装することが可能である。
【0030】
左右の軸部25,25を受容して支持するベースプレート10側の軸支部12,12には、軸部25,25を受容するための軸支空間が溝部29,29によって形成されており、この軸支空間内を溝部29,29によって案内されるようにして軸部25,25が前後に移動することが可能である(図6において後方に位置する状態を点線で示し、前方に位置する状態を鎖線で示す)。このため、軸支部12に軸支されたカードホルダ20は、ベースプレート10に対して倒伏された倒伏姿勢の状態で前方に移動させることにより、倒伏姿勢の状態のまま、カードホルダ20をベースプレート10に対して前方に移動させることが可能である。すなわち、カードホルダ20はベースプレート10に対して開いた展開姿勢と、コンタクト30,30,…を上方から覆うようにベースプレート10上に閉じた倒伏姿勢との間で上下に揺動(開閉)可能であり、且つ、カードホルダ20がベースプレート10と略平行な倒伏姿勢において前後にスライド移動可能である。
【0031】
上記のようなカードコネクタ1の構成の下、カードコネクタ1にICチップ基板80を装着するには、まず、カードホルダ20を上方に展開させた展開姿勢でICチップ基板80をベースプレート10上に載置させる。次いで、カードホルダ20を、軸部24を揺動中心としてベースプレート10の上面を覆うように倒伏させる。倒伏過程においてはカードホルダ20は、図6に示すように、軸部25を基端側としてベースプレート10に対して略垂直に延びた状態から下方に(矢印A方向に)揺動し、ベースプレート10に対して略平行に延びた倒伏姿勢になる。
【0032】
カードコネクタ1には、カードホルダ20を倒伏姿勢の状態で前方にスライド移動した状態に係止保持する側面保持手段が設けられており、この側面保持手段は、ベースプレート10の側面部17に設けられた係止部16と、カードホルダ20の側面部22に設けられた係合部28とから構成される。この係止部16は、左右の中央張出部14の後方に形成され、また係合部28は、側面部22の切欠部26の後方に形成されている。
【0033】
また、カードコネクタ1には、カードホルダ20が倒伏姿勢から上方に揺動するのを阻止して倒伏姿勢に係止保持するための係止保持手段が設けられている。係止保持手段は、左右の中央張出部14に形成されたプレート側ロックアーム14mおよびプレート側ロックアーム14mに係合可能であって左右の側面部22の切欠部26に形成されたホルダ側ロックアーム22m、また、プレート部10の前方保持部13L,13Rおよびカードホルダ20の前端側における左右に形成され前方保持部13L,13Rに係止される突出端部22L,22Rから構成される。
【0034】
両ロックアーム14m,22mは、カードホルダ20が展開姿勢から倒伏姿勢に揺動されるとき、途中までの揺動領域(開閉揺動領域)では離れて位置しており、カードホルダ20が倒伏姿勢にされる終了揺動領域においてカードホルダ20が前方にスライド移動され、ホルダ側ロックアーム22mとプレート側ロックアーム14mとが相互に係合し、カードホルダ20が上方に揺動することを規制する。また、カードホルダ20が前方にスライド移動するとともに、カードホルダ20の係合部28とベースプレート10の係止部16とが係合され、これにより、カードホルダ20が前後方向に自由移動することを規制する。
【0035】
さらに、本発明では、下記のようにしてカードホルダ20の上方への揺動が確実に規制される。上述のように、ベースプレート10の前方支持部13L,13Rの各底面後部には後方に向けて斜め下方に傾斜するプレート側テーパ面13h,13hが形成されている。また、カードホルダ20の前端側に延びて突出形成された側面部22,22の突出端部22L,22Rの上面には、後方に向けて斜め下方に傾斜するホルダ側テーパ面22h,22hが形成されている。
【0036】
前方支持部13L,13Rおよび突出端部22L,22Rは、カードホルダ20が倒伏姿勢で前方にスライド移動されるとき、突出端部22L,22Rのホルダ側テーパ面22h,22hが前方支持部13L,13Rのプレート側テーパ面13h,13hに当接し、プレート側テーパ面13h,13hに案内されるように前方に移動する。このように、プレート側テーパ面13h,13hとホルダ側テーパ面22h,22hとが互いに当接した状態で前方支持部13L,13Rと突出端部22L,22Rとが各々係合し、カードホルダ20が開放方向に揺動することを規制する。
【0037】
以上のように、ベースプレート10の前方支持部13L,13Rとカードホルダ20の突出端部22L,22Rとは、カードホルダ20が揺動されつつベースプレート10の前方にスライド移動される間に、ホルダ側テーパ面22h,22hがホルダ側テーパ面22h,22hに案内されるようにして互いに係合するように構成されている。これにより、前述のホルダ側ロックアーム22mおよびプレート側ロックアーム14mからなる係止保持手段、カードホルダ20の係合部28とベースプレート10の係止部16からなる側面保持手段と併せてカードホルダ20がベースプレート10に対してしっかりと固定保持される。
【0038】
なお、カードホルダ20をベースプレート10に対して固定保持するには、カードホルダ20を倒伏姿勢まで揺動させカードホルダ20の左右の側面部22を持ちながらカードホルダ20を前方にスライド移動させるが、上述のようにカードホルダ20の係合部28の近傍に薄肉部27が形成されている。ここで、カードホルダ20を前方にスライド移動させた場合(図9で矢印B方向にスライド移動させた場合)、初めは切欠部26内に収容されていた係止部16が、カードホルダ20の前方移動とともに弾性変形しつつカードホルダ20を乗り越えて係合部28と係合するため、係止部16がカードホルダ20を乗り越える際の衝撃により、カードホルダ20の左右の側面部22を持ちながら前方にスライド移動させる者が、より強いクリック感、手応えを得ることができる。
【0039】
また、カードホルダ20がベースプレート10に固定された状態では、ICチップ基板80はコンタクト30のバネ力により上方に付勢されており、ICチップ基板80はカードホルダ20のカバー部21の下面と、コンタクト30およびプレート部11とにより挟持されるため、ICチップ基板80が前後左右に自由移動することが規制されて強固な保持がなされる。
【符号の説明】
【0040】
1 カードコネクタ
10 ベースプレート
11 プレート部
12 軸支部
13L,13R 前方支持部(係止保持手段、プレート側係止部)
13h プレート側テーパ面
14 中央張出部
14m プレート側ロックアーム
15 吸着部
16 係止部(側面保持手段、プレート側側面係止部)
17 側面部(ベースプレート側側面部)
20 カードホルダ
21 カバー部
22 側面部(ホルダ側側面部)
22m ホルダ側ロックアーム
22L ,22R 突出端部(係止保持手段、ホルダ側係合部)
22h ホルダ側テーパ面
23 開口
25 軸部
26 切欠部
27 薄肉部
28 係合部(側面保持手段、ホルダ側側面係合部)
29 溝部
30 コンタクト
80 ICチップ基板(メモリカード)
81 ICチップ
82 面端子(カード側端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形平板状のベースプレートと、前記ベースプレートの上面を覆って前記ベースプレートに装着可能で且つ前記上面に沿って前後にスライド移動可能に前記ベースプレートに取り付けられるカードホルダと、前記ベースプレートに取り付けられて接触部が前記ベースプレートの上面より上方に突出する複数のコンタクトとを備え、
矩形平板状のメモリカードを前記ベースプレートの上面に載置するとともに前記ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付け、前記メモリカードの下面に設けられたカード側端子と前記コンタクトの前記接触部とを当接接触させるように構成されたカードコネクタであって、
前記複数のコンタクトがそれぞれ、前記ベースプレートに固定保持された基部と、前記基部の一端側に一体に繋がって前記ベースプレートの下面側に延びたリード部と、前記基部の他端側に一体に繋がって前記ベースプレートに上面側に開口して形成されたスロット内に延びたアーム部と、前記アーム部の先端側に繋がるとともに前記ベースプレートの上面より上方に突出した前記接触部とから構成され、
前記ベースプレートの上面に前記メモリカードを載置して前記メモリカードの下面の前記カード側端子と前記接触部とを当接接触させた状態で、前記ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付けるとともに前記カードホルダを押し下げて前記メモリカードを下方に押し下げたときに、前記アーム部が弾性変形して前記接触部が前記スロット内に入り込んで前記アーム部の弾性変形力により前記接触部が前記カード側端子と押圧接触するように構成されており、
前記ベースプレートの左右側部に形成されたプレート側係止部と、前記カードホルダの左右側部に形成されたホルダ側係合部とから構成され、前記ベースプレートの上面を覆って取り付けられた前記カードホルダを押し下げた状態で前記プレート側係止部と前記ホルダ側係止部とが互いに係止して前記カードホルダが上動するのを阻止する係止保持手段を備えたことを特徴とするカードコネクタ。
【請求項2】
前記プレート側係止部が前後に延びる突起状に形成されるとともに下面にプレート側係止面を有し、前記ホルダ側係止部が前後に延びる突起状に形成されるとともに上面にホルダ側係止面を有し、
前記ベースプレートの上面に前記メモリカードを載置するとともに前記ベースプレートの上面を覆って前記カードホルダを取り付けるときに、前記プレート側係止部と前記ホルダ側係止部が前後にずれて位置して前記ホルダ側係止部が前記プレート側係止部と干渉することなく下方に移動し、前記カードホルダを押し下げたまま前後にスライド移動させることにより前記ホルダ側係止部が前記プレート側係止部の下方に位置し、前記カードホルダの押し下げを解放すると前記ホルダ側係止面が前記プレート側係止面と係合して前記カードホルダの上動を阻止して係止保持するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタ。
【請求項3】
前記ホルダ側係止面が係合スライド移動方向に向かって斜め上に延びるテーパを有して形成され、前記プレート側係止面が係合スライド移動方向に向かって斜め下に延びるテーパ面を有して形成され、前記アーム部の弾性変形力を受けて前記メモリカードを介して前記カードホルダが上動方向の力を受けることにより、前記ホルダ側係止部と前記プレート側係止部との係合を強める方向の力が作用するように構成されていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のカードコネクタ。
【請求項4】
前記カードホルダに上下に貫通する開口が形成され、
前記ベースプレートの上面に、前記カードホルダが前記倒伏姿勢の状態で前記開口を通して前記ベースプレートの上面側に向かって露出する平面状の吸着部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−177215(P2010−177215A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107244(P2010−107244)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2006−135182(P2006−135182)の分割
【原出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000105338)ケル株式会社 (51)
【Fターム(参考)】