カード基材、カード及びICカードの製造方法
【課題】物理的強度を向上させるとともに、リサイクル適合性を有する紙基材を用いたカード基材、カード及びカードの製造方法を提供する。
【解決手段】対向する2枚の最外層紙基材と、前記2枚の最外層紙基材の間に配置された、膜厚が100μm以上300μm以下の内層紙基材とを備え、各紙基材の間が熱可塑性樹脂の溶融接着により固定されていることを特徴とするカード基材とする。また、当該カード基材の前記内層紙基材の間に、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットを挟んで形成したことを特徴とするICカードとする。
【解決手段】対向する2枚の最外層紙基材と、前記2枚の最外層紙基材の間に配置された、膜厚が100μm以上300μm以下の内層紙基材とを備え、各紙基材の間が熱可塑性樹脂の溶融接着により固定されていることを特徴とするカード基材とする。また、当該カード基材の前記内層紙基材の間に、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットを挟んで形成したことを特徴とするICカードとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗車券、証明証等の各種の情報記録媒体として用いられるカードに関する。
【背景技術】
【0002】
使用期間の限られた使い捨てカードや、エコロジー性を考慮したカードとして、紙基材を用いたカードが知られている。このような紙基材を用いたカードとしては、図14のように、紙基材11の両面に絵柄等を印刷した印刷層や、樹脂フィルムからなる保護層14をラミネートすることで積層した構成が挙げられる(特許文献1参照)。また、図15のように、紙基材11の間にアンテナコイルとICモジュールをプラスチックシート上に設けたインレット15を挟み、ICカードとした構成が挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの紙基材を用いたカードは、塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PET-G等の基材を用いたカードと比較して、折れ強度等の物理的な耐性が著しく低くかった。例えば、図14のように1枚の紙基材に保護層をラミネートした構成の場合、折れ強度のために厚みが約400μm以上の板紙が用いられることが一般的だが、この場合でも強度が不十分であり、一方、その厚みのために、紙内で繊維が抜けて、表裏のラミネートした保護層14が剥離してしまう場合もある。
【0004】
また、エコロジー性を考慮する場合、紙のリサイクル適合性が問題となる。特許文献2では、紙基材を用いたカードの物理的強度の向上を課題として、紙基材中に樹脂(生分解性プラスチック)を含浸させている。この場合、紙の繊維内に樹脂が入り込み、紙繊維が樹脂により固定されているために、紙と含浸させた樹脂とを現在のリサイクル工程で分離することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−212991
【特許文献2】特開平7−32775
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような紙基材を用いたカードの問題点を鑑みて、本願発明では、物理的強度を向上させるとともに、リサイクル適合性を有する紙基材を用いたカード基材、カード及びカードの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために為された請求項1に係る発明は、対向する2枚の最外層紙基材と、前記2枚の最外層紙基材の間に配置された、膜厚が100μm以上300μm以下の内層紙基材とを備え、各紙基材の間が熱可塑性樹脂の溶融接着により固定されていることを特徴とするカード基材である。
また請求項2に係る発明は、前記熱可塑性樹脂の厚みが、10μm以上60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカード基材である。
また請求項3に係る発明は、カード基材の総重量に対して、紙基材の合計重量が、50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカード基材である。
また請求項4に係る発明は、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカード基材である。
また請求項5に係る発明は、前記各紙基材の紙目方向を一致させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材である。
また請求項6に係る発明は、請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの長辺方向となるように裁断したことを特徴とするカードである。
また請求項7に係る発明は、請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの短辺方向となるように裁断されていることを特徴とするカードである。
また請求項8に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の間に、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットを挟んで形成したことを特徴とするICカードである。
また請求項9に係る発明は、請求項7に記載のICカードであって、前記インレットの上下を熱可塑性樹脂を介して1又は複数の内層紙基材で挟持し、さらに該内層紙基材の上下を熱可塑性樹脂を介して最外層紙基材で挟持したことを特徴とするICカードである。
また請求項10に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の一つに、アンテナコイルと、ICチップとを設けて形成したことを特徴とするICカードである。
また請求項11に係る発明は、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットの上下に、該インレット側に熱可塑性樹脂を積層した内層紙基材を配置してラミネートする工程と、該工程と同時あるいはその後に、前記内層紙基材側に熱可塑性樹脂を積層した最外層紙基材を配置してラミネートする工程と、を含むICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上下2枚の紙基材と、該紙基材に挟まれた少なくとも1枚の紙基材を有し、これら紙基材が熱可塑性樹脂で溶融接着され、固定されているので、膜厚の厚いコア基材を用いることなく、物理的強度に優れた紙製のカード基材及びカードとすることができる。
【0009】
また、樹脂層を薄くできるため、カード基材の総重量に対して紙基材の合計重量を50%以上とすることで、紙製品としてリサイクル適合性のあるカード基材及びカードとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るカード基材の実施形態を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係るカード基材の実施形態を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係るカード基材の製造方法の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係るカード基材を個片化する際の紙目とカードの裁断位置を示す模式図である。
【図5】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図6】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図7】本発明に係るインレットの実施形態を示す断面模式図である。
【図8】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図9】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図10】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図11】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図12】本発明に係る磁気カードの実施形態を示す断面模式図である。
【図13】本発明に係るカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図14】従来の紙基材を用いたカードの例を示す断面模式図である。
【図15】従来の紙基材を用いたカードの別の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明に係るカード基材の一構成例を示す。図に示す実施形態では、4層の紙基材が積層されている。最外層の紙基材101と、最外層紙基材101の間に挟まれた内層紙基材102である。内層紙基材102は図では2層構成であるが、層数は特にこれに限られるものではなく、1又は複数の内層紙基材を備えていても良い。また、紙基材の間には、後述するように、アンテナコイルとICモジュールを設けたインレット等、別の層を加えることも可能である。
【0012】
各紙基材の間には熱可塑性樹脂が積層されており、各紙基材は熱可塑性樹脂の溶融接着により固定され、積層している。なおここでいう溶融接着とは、溶媒を用いずに、加熱により軟化させて基材に固着させる形態の熱可塑性樹脂材料を用いて、紙基材を貼りあわせていることを意味する。このように溶融接着を用いることで、繊維間に極力樹脂を含浸させずに紙基材を貼り合わせる事ができるため、リサイクル工程で容易に紙繊維を熱可塑性樹脂から分離させることができる。
【0013】
最外層紙基材101及び内層紙基材102の材料としては、一般的なパルプを抄いた紙があげられるが、特に紙基材の厚み(紙厚)が100μm以上300μm以下であることが好ましい。カード基材として積層した際に、紙厚が300μmを超えると紙内で剥離を生じるおそれがある。また、紙厚が小さいと、相対的に熱可塑性樹脂等のカード基材中の他の構成物の割合が多くなってしまう。このため総重量中に紙の割合が50%というリサイクル適性を満たさないおそれがある。また、カード基材の強度及び剛性のために、紙の密度は大きいことが好ましく、具体的には0.4g/cm3以上、より好ましくは0.6g/cm3以上である。例えば一般的な上質紙の密度は0.6〜0.8g/cm3、中質紙の密度は0.4〜0.6g/cm3程度である。なお紙の密度は、坪量÷紙厚で算出することができる。坪量及び紙厚はJIS P8118に規定の測定方法により測定することが好ましい。
【0014】
最外層紙基材101と内層紙基材102は、同一の材料を用いても良いし、異なる紙基材を用いても良い。例えば、最外層紙基材に内層紙基材よりも紙厚のある紙基材を用いて、カード基材の膜厚を調整しても良い。あるいは、後述するように内層紙基材の間にインレット等の別の層を挟む場合には、最外層紙基材よりも内層紙基材の紙の密度を小さくすることで、インレット等の表面の凹凸を緩衝するようにしても良い。
【0015】
紙基材101,102には、それぞれ表面処理を加えても良い。例えば熱可塑性樹脂103との接着性の向上のために、コロナ放電処理、アンカーコート(プライマー層)などを施しても良い。これらの処理は、リサイクル適合性を満たす程度であることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、各紙基材の間に積層されている熱可塑性樹脂層103により各紙基材が貼り合わせられている。本発明のカード基材100においては、最外層紙基材101及び内層紙基材102を合わせて少なくとも3層の紙基材を備えていることから、熱可塑性樹脂層103は少なくとも2層存在している。この構成によれば、(1又は複数の)内層紙基材と上下の最外層紙基材101が熱可塑性樹脂層103により固定されているため、図2に示すように、カード基材を変形させた際(斜め上方向矢印)に、両面から変形を解消するように応力(斜め下方向矢印)が発生する。内層紙基材が特に前述した膜厚100〜300μm程度であれば、熱可塑性樹脂層に挟まれた内層紙基材での伸縮が少ないため、応力が大きくなる。上質紙等のある程度密度を備えた一般的な紙の引張弾性率は小さいためである。同様の理由で最外層紙基についても膜厚100〜300μmが好ましい。
【0017】
以上のような本発明に係るカード基材の構成によれば、応力を生じる層が、膜厚の薄い複数の層に分散しているために、変形時に各紙基材に掛かる応力が小さくなる。また板紙等の膜厚の厚い紙基材を単層又は2層積層して用いた場合に比べて、紙基材内での剥離が生じにくくなる。このため、耐折強度等の物理的強度に優れたカード基材となり、剛性の高いコア基材を用いることなく、物理的強度を向上させた紙製のカードを作製することができる。
【0018】
さらに、内層紙基材102は、熱可塑性樹脂層103に挟持された構造となっているため、防水・防湿性が保持され、紙基材の吸水による伸縮を防ぐことができる。このため、カード基材の反りや変形を抑制することができる。この目的のためには、最外層紙基材101の表面にも防水・防湿のために熱可塑性樹脂層やその他の樹脂等からなる保護層104を設けることが好ましい。
【0019】
熱可塑性樹脂層103に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等、ヒートシールやラミネートで用いられる一般的な熱可塑性樹脂を用いることができる。中でもポリエチレン、特にポリエチレンは、紙パック等の保護層に用いられていることから、紙パックのリサイクル工程で扱うことが可能であるため好ましい。なお、熱可塑性樹脂層103は、水に不溶で水蒸気透過率が高いことが好ましい。防水・防湿性が高い材料であれば、層間での水分透過を抑制することで、カード基材の反りを防ぐことができるためである。
【0020】
熱可塑性樹脂層103の膜厚は、10〜60μm程度が好ましい。熱可塑性樹脂層の膜厚が10μm以下になると、紙基材表面の凹凸よりも膜厚が小さくなり、熱可塑性樹脂層が非連続になることで、紙基材の剥離を生じるおそれがある。一方で、熱可塑性樹脂層の膜厚が60μm以上になると、カード基材100を変形させた際に、紙と比較して弾性の高い熱可塑性樹脂層内での変形量が大きくなり、カード基材100の剛性が保たれない可能性がある。また、総重量中に紙の割合が50%という紙製品としてのリサイクル適性を満たさない場合があるためにも好ましくない。
【0021】
カード基材の最表面には、印字特性の向上のための印刷層や、先に述べたように、耐水・耐湿のための保護層を設けても良い。最外層紙基材101に直接印字・描画することも可能であるが、印刷層上に印字すれば紙基材にインクが浸透せず、紙の再生が容易である。これらの印刷層/保護層は、多層構造としても良い。印刷層/保護層の形成や、絵柄・文字の印刷は紙基材の積層前あるいは積層後のいずれでも可能であるが、絵柄・文字の印刷は、紙基材の積層前に行うことが好ましい。一般的な紙印刷設備を用いて印刷を行うことができる。また積層前なので、基材が印刷工程で反ることもない。
【0022】
IDカードのように、カード形成後に印字を行う場合、最外層紙基材101表面にプライマー層形成等の表面処理を施し接着性を向上させた後に、プライマー層上に受像層を設ける。受像層はポリアクリルビニル等のビニル系樹脂あるいはポリエステル系樹脂が好ましい。これらの受像層を構成する樹脂は、紙基材加熱圧着(ラミネート)時に最外層紙基材101表面から剥離してしまうおそれがあるため、紙基材を積層した後に形成することが好ましい。
【0023】
本発明のカード基材の積層方法としては、各紙基材の一方の面に加熱溶融した熱可塑性樹脂を途工(ホットメルト)し、熱可塑性樹脂層付きの紙基材とした上で、それぞれの基材を重ね合わせてラミネートして積層することができる。図3では4層構成の場合のラミネート時の配置を示している。ラミネートは、内側の層から順に行っても良いし、一度に行っても良い。積層方法はこれに限られるものではなく、例えば押し出しラミネート、サンドラミネート等用いることができる。
【0024】
図4(A)及び図4(B)は、カード基材を個片化する際の紙目とカードの裁断位置の関係を示している。矢印は紙目の方向であり、点線はカードの裁断位置を示す。多面付けされたカード基材は、個々のカードサイズに裁断、個片化される。積層する紙基材の繊維方向である紙目は、少なくとも対になる最外層紙基材101で一致していることが好ましく、全ての紙基材の紙目が一致していることが好ましい。図4(A)のように紙目をカードの長辺方向bに一致させると、長辺方向の曲げに対して紙基材の剛性が高くなるので、カード自体の剛性が向上する。一方、図4(B)のようにカードの短辺方向aに一致させると、長辺方向の曲げに対してカードの柔軟性が高くなり、曲げ耐性が向上する。
【0025】
本発明の別の実施形態を説明する。
図5は、内層紙基材102の間に、非接触通信するためのアンテナ及びICチップを備えたインレット105が挟持されたICカード200の断面模式図及び平面図である。図5(A)に示すように、この実施形態では、積層された2層の内層紙基材102の間に、熱可塑性樹脂103を介してインレット105が挟まれている。
【0026】
図5の構成では、インレットはその側面が熱可塑性樹脂105に覆われるように、カードのサイズより一回り小さいサイズとなっている(図5(B))。インレットの前面が熱可塑性樹脂で覆われることになり、インレットの防水性等の耐性が向上する。また図3で示したのと同様に、熱可塑性樹脂層付きの紙基材を、それぞれ熱可塑性樹脂層をインレット側に向けてラミネートする場合には、上下の熱可塑性樹脂層がカード周辺部で直接接着されるので、接着性も向上する。
【0027】
一方、図6のようにカードのサイズと、インレット105のサイズが同一の場合には、図6(B)に示すように、インレットについてもシートに多面付けすることで、基材と同時に裁断できることから、工程を簡略化することができる。
【0028】
図7に、インレット構成例として、アンテナシート301上にアンテナのパターン302を設けたインレット300を示す。図7の構成例では、アンテナシート301の一面にアンテナパターン302が設けられ、パターンの交差部分では接続用のビア305を設けて他面のジャンパー線303で電気的に接続している。アンテナシート302としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材を用いることができる。また紙基材を用いてもよい。さらには、図7に示すように、アンテナシートは中抜きしても良い。このようにすることにより、上下の熱可塑性樹脂層103が接触するので、接着性が向上する。さらに、アンテナシートと熱可塑性樹脂層103の接着性を向上させるために、アンテナシート表面に接着層を設けても良い。当該接着層は、紙基材に直接接触することがないため、一般的な接着剤であれば紙リサイクルに悪影響を与えることはない。
【0029】
アンテナパターン301は、エッチング法、メッキ法、印刷法またはパターン蒸着法により形成することができる。エッチング法はアンテナ基材上にアルミ、銅などの金属箔を貼り合せ、またはアルミ、銅などの金属薄膜を蒸着法、スパッタリング法などにより形成し、金属箔・金属薄膜上にマスクパターンを形成し、エッチングによりアンテナ形状にパターニングする方法である。印刷法は、導電性インキを印刷する方法であり、微細パターニングできる方法であれば特に限定するものではないが、スクリーン印刷法を好適に用いることができる。アンテナ基材として紙基材を用いる場合、アンテナの形成法としては印刷法を好適に用いることができる。メッキ法は、触媒層をパターニング形成し、その後電解または無電解メッキにより、形成する方法である。パターン蒸着法は、開口部を有するマスクを用い、パターン状に蒸着法又はスパッタリング法等により、アンテナパターンを形成する方法である。裏面にジャンパー線303を設ける代りに、アンテナパターンの交差する部分に絶縁基材と導電部材からなる配線を用いて貼り合せ、配線の端部をアンテナと導通させることにより交差させるようにしても良い。
【0030】
また別のアンテナ形成方法としては、基材の一方又はアンテナシート上に銅線等の金属線をコイル状に固着配置してアンテナを形成しても良い。アンテナの巻き数、形状などは、通信周波数、その他の特性に応じて適宜設定することができる。この構成は特に片面にアンテナ・配線を形成する場合に好適に用いることができる。
【0031】
ICチップとアンテナ301との接続はアンテナの終端とICチップに接続するバンプまたは接続パッドと溶接や接着剤で貼り合せることにより接続できる。
【0032】
ICチップの厚みを緩和するために、アンテナシートに開口を設け、そこにICチップを配置するようにしても良い。接着剤としては導電性の接着剤を好適に用いることができる。
【0033】
図8は、本発明に係るICカードの別の実施形態を示す断面模式図である。製造工程での配置が分かりやすいように、ラミネート時の各層の間隔を空けて表示している。図8では、アンテナシート301及びICチップ307を熱可塑性樹脂からなるアンテナシート301で挟んだ構成となっている。この場合、インレット105のアンテナシートによりインレットに隣り合う内層基材102が固定されるため、インレットはカードサイズに等しい。当該実施形態におけるアンテナシート301を構成する材料としては、熱可塑性樹脂層103と同様のものを用いることができる。あるいは、アンテナシートを内層紙基材102側に熱可塑性樹脂層を設けた多層構造としても良い。当該実施形態によれば、加熱圧着によりインレット105と内層紙基材102を固定できるので、内層紙基材に熱可塑性樹脂層を設ける必要がない。むろん、さらに内層紙基材102側に熱可塑性樹脂層を設けることで、インレット105との接着性を向上させても良い。
【0034】
図9は、本発明に係るICカードのさらに別の実施形態を示す断面模式図である。図9では、内層紙基材102上に直接アンテナ302及びICチップ307(インレット105)が設けられた構成である。内層紙基材102上に直接インレットを設けることで、内層紙基材間にインレットを別途挟み込まずICカードを製造できるため、積層後のラミネート工程で、インレット105が位置ずれすることがない。アンテナ302の形成は、接着剤を用いて被覆金属線を布線して形成しても良いし、印刷によりパターン形成しても良い。特に被覆金属線の布線は内層紙基材の片面にジャンパー線等を用いずに容易にアンテナを形成でき、さらには紙基材表面の粗さの影響をほとんど受けないために好ましい。さらに、この構成では特に内層紙基材のアンテナ及びICチップ形成面に別の内層紙基材を熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる事で、アンテナやICチップによる凹凸を緩衝させることができることから好ましい。
【0035】
ICチップ307がモジュール化され、内層紙基材102や熱可塑性樹脂層103に比して厚みがある場合には、図10のように、ICチップ配置位置と一致するように紙基材に開口を設けても良い。図10(A)は、インレットを設けた内層紙基材に対向する基材に開口を設けた構成である。図10(B)は、インレットを設けた内層紙基材に開口を設けた構成である。なお、図10(A)及び(B)の構成では、インレットから突出した厚みに合わせた厚みの内層紙基材を選択することで、張り合わせた際に内層基材表面が平坦化されるようにしてもよい。図10(C)は、開口ではなく表面を削ってインレットから突出した厚みに応じた凹部を設けることで、平坦性を確保した構成である。これらの構成は、インレットを設けた内層紙基材及び対向する基材の両方に開口を設けた構成や、一方の開口を凹部にした構成等、任意に組み合わせて採用することができる。
【0036】
図11は、上下の最外層紙基材101と、一層の内層紙基材102の3層構成とした本発明に係るICカードの実施形態である。この実施形態では、内層紙基材102上に直接アンテナ302及びICチップ307が設けられている。従って、このインレット付き内層基材を最外層紙基材と重ね合わせて熱可塑性樹脂103により溶融接着することで、ICカードを作製することができる。この構成では、紙基材以外の要素が最低限で済むため、コストを低減することができる。
【0037】
次にICカード以外の応用例として、磁気カード400の例を示す。図12では、最外層紙基材101上に磁気ストライプ401を設ける。最外層紙基材101上に熱可塑性樹脂層106を積層し、ラミネートにより磁気ストライプを熱可塑性樹脂層に溶融接着して埋め込んでも良いし、最外層紙基材101に磁気ストライプを接着剤により直接積層しても良い。また、磁気ストライプを設けた後、磁気ストライプを覆うようにカード表面に隠蔽層402を設けても良い。
【0038】
カードの耐水・耐湿性の向上や剥離防止のために、図13に示すようにカード側面にも側面保護層107を設け、カード全体を樹脂で覆うようにしても良い。
【0039】
上記本発明に係るカードについても、インレットや磁気ストライプ等を含めたカードの総重量中に紙の割合が50%とすることが好ましい。紙製品としてリサイクル適合性のあるカードとすることができる。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として、厚み200μmの上質紙に20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)を片面に積層したシートを用意した。
【0041】
前記シートを図3のように、上下の最外層紙基材101と2枚の内層紙基材102を、それぞれポリエチレンが対向するように4枚を重ねた。このとき紙基材の紙目が全ての層で一致するように配置した。これを約130℃で加圧することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。なお最終的なカード基材の膜厚は、0.8mmであった。また、カード基材の総重量に対する紙の割合を、作製したカード基材とポリエチレンが塗布されていない紙基材の重量をそれぞれ測定して算出したところ、88%であった。
【0042】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの長辺方向(縦)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0043】
<比較例1>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として厚み200μmの上質紙を用意し、熱可塑性樹脂(ポリエチレン)の代替として、ポリビニルアルコール(PVA)を水溶液に溶解したものを接着剤として用いた。厚み200μmの上質紙の1面に接着剤を塗布し、4層の紙基材を積層した。
【0044】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、実施例1と同様に、個々のカードの長辺方向を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0045】
<実施例2>
実施例1と同様の工程でカード基材を作製した。次に、縦85.6mm×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、実施例1と異なり、個々のカードの短辺方向(横)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0046】
<比較例2>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として厚み200μmの上質紙を用意し、熱可塑性樹脂の代替として、ポリビニルアルコール(PVA)を水溶液に溶解したものを接着剤として用いた。厚み200μmの上質紙の1面に接着剤を塗布し、4層の紙基材を積層した。
【0047】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、実施例2と同様に、個々のカードの短辺方向(横)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0048】
<比較例3>
最外層紙基材101として、厚み200μmの上質紙に20μmの低密度ポリエチレンを片面に積層したシート(坪量157g/m2)を用意した。
【0049】
前記上下の最外層紙基材101のみを、それぞれポリエチレンが対向するように重ねた。このとき紙基材の紙目が上下の層で一致するように配置した。これを約130℃で加圧することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。なお最終的なカード基材の膜厚は、0.4mmであった。
【0050】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの長辺方向(縦)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0051】
<比較例4>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として、厚み400μmの板紙(坪量310g/m2)に20μmの低密度ポリエチレンを溶融して塗工し、片面に低密度ポリエチレンを積層したシートを用意した。
【0052】
前記上下の最外層紙基材101のみを、それぞれポリエチレンが対向するように重ねた。このとき紙基材の紙目が上下の層で一致するように配置した。これを約140℃のロールで加圧(ラミネート)することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。なお最終的なカード基材の膜厚は、0.8mmであった。
【0053】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの長辺方向(縦)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0054】
<評価実験>
上記実施例1,2及び比較例1〜4で作製したカードに対して、JIS X6305−1:2010に規定された曲げ強さの試験方法に準拠して、静的曲げ強さを測定した。結果を下記の表1に示す。荷重時たわみ量は、カードの一方を固定し、もうもう一方に0.7Nの荷重を1分間掛けた際のカード荷重側のたわみ量(高さ変化量)であり、荷重撤去後たわみ量は、荷重を取り去った後、1分後のカード荷重側のたわみ量(高さ変化量)である。
【0055】
表1の評価結果から、溶融接着のカードと、水溶液接着剤で一部紙基材に接着剤を含浸させたカードでは、剛性に相違はないことが分かる(実施例1と比較例1、実施例2と比較例2)。一方、2層構成の場合には大きく剛性が下がる(比較例3)。また、膜厚の等しい4層構成と2層構成のカードを比較すると(実施例1と比較例4)、膜厚はほぼ等しいが、荷重撤去後のたわみ量で50%以上戻り量に差がでており、本発明の構成では、荷重に対する物理強度が向上していることが分かる。
【0056】
【表1】
【0057】
<実施例5>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として、厚み200μmの上質紙(坪量157g/m2)に20μmのポリエチレンを片面に積層したシートと、インレット105を用意した。インレットは、PETフィルムからなるアンテナシート上に、エッチングにより設けられたアンテナパターンとアンテナパターンに接続されたICチップとを設けたものである。またアンテナシートは、カードサイズ(縦85.6mm×横 54.0mm)よりも一回り小さい形状である。
【0058】
前記シートを図3のように、上下の最外層紙基材101と2枚の内層紙基材102がそれぞれポリエチレンが対向するように配置し、さらに内層紙基材の間にインレット105を重ねた。インレットは、裁断時の各カード位置に一致するように配置した。これを約140℃に加熱して加圧することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。
【0059】
次に上下の最外層紙基材の表面にオフセット印刷を用いて、多面付けされたICカード位置に一致するように、絵柄層パターンを形成した。
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの短辺方向を紙目の方向に一致させて裁断した。なお最終的なカードの膜厚は、0.8mmであった。またカードの総重量に対する紙の割合を、作製したICカードと、ポリエチレンが塗布されていない紙基材及びインレットの重量をそれぞれ測定して算出したところ、86%となった。
【符号の説明】
【0060】
100・・・カード基材
101・・・最外層紙基材
102・・・内層紙基材
103・・・熱可塑性樹脂層
104・・・保護層/印刷層
105・・・インレット
106・・・熱可塑性樹脂層
107・・・側面保護層
200・・・ICカード
300・・・インレット
301・・・アンテナシート
302・・・アンテナパターン
303・・・ジャンパー線
305・・・ビア
306・・・接続パッド
307・・・ICチップ
400・・・磁気カード
401・・・磁気ストライプ
402・・・隠蔽層
10・・・カード基材
11・・・紙基材
14・・・印刷層/樹脂層
15・・・インレット
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗車券、証明証等の各種の情報記録媒体として用いられるカードに関する。
【背景技術】
【0002】
使用期間の限られた使い捨てカードや、エコロジー性を考慮したカードとして、紙基材を用いたカードが知られている。このような紙基材を用いたカードとしては、図14のように、紙基材11の両面に絵柄等を印刷した印刷層や、樹脂フィルムからなる保護層14をラミネートすることで積層した構成が挙げられる(特許文献1参照)。また、図15のように、紙基材11の間にアンテナコイルとICモジュールをプラスチックシート上に設けたインレット15を挟み、ICカードとした構成が挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの紙基材を用いたカードは、塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PET-G等の基材を用いたカードと比較して、折れ強度等の物理的な耐性が著しく低くかった。例えば、図14のように1枚の紙基材に保護層をラミネートした構成の場合、折れ強度のために厚みが約400μm以上の板紙が用いられることが一般的だが、この場合でも強度が不十分であり、一方、その厚みのために、紙内で繊維が抜けて、表裏のラミネートした保護層14が剥離してしまう場合もある。
【0004】
また、エコロジー性を考慮する場合、紙のリサイクル適合性が問題となる。特許文献2では、紙基材を用いたカードの物理的強度の向上を課題として、紙基材中に樹脂(生分解性プラスチック)を含浸させている。この場合、紙の繊維内に樹脂が入り込み、紙繊維が樹脂により固定されているために、紙と含浸させた樹脂とを現在のリサイクル工程で分離することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−212991
【特許文献2】特開平7−32775
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような紙基材を用いたカードの問題点を鑑みて、本願発明では、物理的強度を向上させるとともに、リサイクル適合性を有する紙基材を用いたカード基材、カード及びカードの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために為された請求項1に係る発明は、対向する2枚の最外層紙基材と、前記2枚の最外層紙基材の間に配置された、膜厚が100μm以上300μm以下の内層紙基材とを備え、各紙基材の間が熱可塑性樹脂の溶融接着により固定されていることを特徴とするカード基材である。
また請求項2に係る発明は、前記熱可塑性樹脂の厚みが、10μm以上60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカード基材である。
また請求項3に係る発明は、カード基材の総重量に対して、紙基材の合計重量が、50%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカード基材である。
また請求項4に係る発明は、前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカード基材である。
また請求項5に係る発明は、前記各紙基材の紙目方向を一致させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材である。
また請求項6に係る発明は、請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの長辺方向となるように裁断したことを特徴とするカードである。
また請求項7に係る発明は、請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの短辺方向となるように裁断されていることを特徴とするカードである。
また請求項8に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の間に、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットを挟んで形成したことを特徴とするICカードである。
また請求項9に係る発明は、請求項7に記載のICカードであって、前記インレットの上下を熱可塑性樹脂を介して1又は複数の内層紙基材で挟持し、さらに該内層紙基材の上下を熱可塑性樹脂を介して最外層紙基材で挟持したことを特徴とするICカードである。
また請求項10に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の一つに、アンテナコイルと、ICチップとを設けて形成したことを特徴とするICカードである。
また請求項11に係る発明は、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットの上下に、該インレット側に熱可塑性樹脂を積層した内層紙基材を配置してラミネートする工程と、該工程と同時あるいはその後に、前記内層紙基材側に熱可塑性樹脂を積層した最外層紙基材を配置してラミネートする工程と、を含むICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上下2枚の紙基材と、該紙基材に挟まれた少なくとも1枚の紙基材を有し、これら紙基材が熱可塑性樹脂で溶融接着され、固定されているので、膜厚の厚いコア基材を用いることなく、物理的強度に優れた紙製のカード基材及びカードとすることができる。
【0009】
また、樹脂層を薄くできるため、カード基材の総重量に対して紙基材の合計重量を50%以上とすることで、紙製品としてリサイクル適合性のあるカード基材及びカードとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るカード基材の実施形態を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係るカード基材の実施形態を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係るカード基材の製造方法の一例を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係るカード基材を個片化する際の紙目とカードの裁断位置を示す模式図である。
【図5】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図6】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図7】本発明に係るインレットの実施形態を示す断面模式図である。
【図8】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図9】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図10】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図11】本発明に係るICカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図12】本発明に係る磁気カードの実施形態を示す断面模式図である。
【図13】本発明に係るカードの実施形態を示す断面模式図である。
【図14】従来の紙基材を用いたカードの例を示す断面模式図である。
【図15】従来の紙基材を用いたカードの別の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、本発明に係るカード基材の一構成例を示す。図に示す実施形態では、4層の紙基材が積層されている。最外層の紙基材101と、最外層紙基材101の間に挟まれた内層紙基材102である。内層紙基材102は図では2層構成であるが、層数は特にこれに限られるものではなく、1又は複数の内層紙基材を備えていても良い。また、紙基材の間には、後述するように、アンテナコイルとICモジュールを設けたインレット等、別の層を加えることも可能である。
【0012】
各紙基材の間には熱可塑性樹脂が積層されており、各紙基材は熱可塑性樹脂の溶融接着により固定され、積層している。なおここでいう溶融接着とは、溶媒を用いずに、加熱により軟化させて基材に固着させる形態の熱可塑性樹脂材料を用いて、紙基材を貼りあわせていることを意味する。このように溶融接着を用いることで、繊維間に極力樹脂を含浸させずに紙基材を貼り合わせる事ができるため、リサイクル工程で容易に紙繊維を熱可塑性樹脂から分離させることができる。
【0013】
最外層紙基材101及び内層紙基材102の材料としては、一般的なパルプを抄いた紙があげられるが、特に紙基材の厚み(紙厚)が100μm以上300μm以下であることが好ましい。カード基材として積層した際に、紙厚が300μmを超えると紙内で剥離を生じるおそれがある。また、紙厚が小さいと、相対的に熱可塑性樹脂等のカード基材中の他の構成物の割合が多くなってしまう。このため総重量中に紙の割合が50%というリサイクル適性を満たさないおそれがある。また、カード基材の強度及び剛性のために、紙の密度は大きいことが好ましく、具体的には0.4g/cm3以上、より好ましくは0.6g/cm3以上である。例えば一般的な上質紙の密度は0.6〜0.8g/cm3、中質紙の密度は0.4〜0.6g/cm3程度である。なお紙の密度は、坪量÷紙厚で算出することができる。坪量及び紙厚はJIS P8118に規定の測定方法により測定することが好ましい。
【0014】
最外層紙基材101と内層紙基材102は、同一の材料を用いても良いし、異なる紙基材を用いても良い。例えば、最外層紙基材に内層紙基材よりも紙厚のある紙基材を用いて、カード基材の膜厚を調整しても良い。あるいは、後述するように内層紙基材の間にインレット等の別の層を挟む場合には、最外層紙基材よりも内層紙基材の紙の密度を小さくすることで、インレット等の表面の凹凸を緩衝するようにしても良い。
【0015】
紙基材101,102には、それぞれ表面処理を加えても良い。例えば熱可塑性樹脂103との接着性の向上のために、コロナ放電処理、アンカーコート(プライマー層)などを施しても良い。これらの処理は、リサイクル適合性を満たす程度であることが好ましい。
【0016】
本実施形態では、各紙基材の間に積層されている熱可塑性樹脂層103により各紙基材が貼り合わせられている。本発明のカード基材100においては、最外層紙基材101及び内層紙基材102を合わせて少なくとも3層の紙基材を備えていることから、熱可塑性樹脂層103は少なくとも2層存在している。この構成によれば、(1又は複数の)内層紙基材と上下の最外層紙基材101が熱可塑性樹脂層103により固定されているため、図2に示すように、カード基材を変形させた際(斜め上方向矢印)に、両面から変形を解消するように応力(斜め下方向矢印)が発生する。内層紙基材が特に前述した膜厚100〜300μm程度であれば、熱可塑性樹脂層に挟まれた内層紙基材での伸縮が少ないため、応力が大きくなる。上質紙等のある程度密度を備えた一般的な紙の引張弾性率は小さいためである。同様の理由で最外層紙基についても膜厚100〜300μmが好ましい。
【0017】
以上のような本発明に係るカード基材の構成によれば、応力を生じる層が、膜厚の薄い複数の層に分散しているために、変形時に各紙基材に掛かる応力が小さくなる。また板紙等の膜厚の厚い紙基材を単層又は2層積層して用いた場合に比べて、紙基材内での剥離が生じにくくなる。このため、耐折強度等の物理的強度に優れたカード基材となり、剛性の高いコア基材を用いることなく、物理的強度を向上させた紙製のカードを作製することができる。
【0018】
さらに、内層紙基材102は、熱可塑性樹脂層103に挟持された構造となっているため、防水・防湿性が保持され、紙基材の吸水による伸縮を防ぐことができる。このため、カード基材の反りや変形を抑制することができる。この目的のためには、最外層紙基材101の表面にも防水・防湿のために熱可塑性樹脂層やその他の樹脂等からなる保護層104を設けることが好ましい。
【0019】
熱可塑性樹脂層103に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、リニア低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等、ヒートシールやラミネートで用いられる一般的な熱可塑性樹脂を用いることができる。中でもポリエチレン、特にポリエチレンは、紙パック等の保護層に用いられていることから、紙パックのリサイクル工程で扱うことが可能であるため好ましい。なお、熱可塑性樹脂層103は、水に不溶で水蒸気透過率が高いことが好ましい。防水・防湿性が高い材料であれば、層間での水分透過を抑制することで、カード基材の反りを防ぐことができるためである。
【0020】
熱可塑性樹脂層103の膜厚は、10〜60μm程度が好ましい。熱可塑性樹脂層の膜厚が10μm以下になると、紙基材表面の凹凸よりも膜厚が小さくなり、熱可塑性樹脂層が非連続になることで、紙基材の剥離を生じるおそれがある。一方で、熱可塑性樹脂層の膜厚が60μm以上になると、カード基材100を変形させた際に、紙と比較して弾性の高い熱可塑性樹脂層内での変形量が大きくなり、カード基材100の剛性が保たれない可能性がある。また、総重量中に紙の割合が50%という紙製品としてのリサイクル適性を満たさない場合があるためにも好ましくない。
【0021】
カード基材の最表面には、印字特性の向上のための印刷層や、先に述べたように、耐水・耐湿のための保護層を設けても良い。最外層紙基材101に直接印字・描画することも可能であるが、印刷層上に印字すれば紙基材にインクが浸透せず、紙の再生が容易である。これらの印刷層/保護層は、多層構造としても良い。印刷層/保護層の形成や、絵柄・文字の印刷は紙基材の積層前あるいは積層後のいずれでも可能であるが、絵柄・文字の印刷は、紙基材の積層前に行うことが好ましい。一般的な紙印刷設備を用いて印刷を行うことができる。また積層前なので、基材が印刷工程で反ることもない。
【0022】
IDカードのように、カード形成後に印字を行う場合、最外層紙基材101表面にプライマー層形成等の表面処理を施し接着性を向上させた後に、プライマー層上に受像層を設ける。受像層はポリアクリルビニル等のビニル系樹脂あるいはポリエステル系樹脂が好ましい。これらの受像層を構成する樹脂は、紙基材加熱圧着(ラミネート)時に最外層紙基材101表面から剥離してしまうおそれがあるため、紙基材を積層した後に形成することが好ましい。
【0023】
本発明のカード基材の積層方法としては、各紙基材の一方の面に加熱溶融した熱可塑性樹脂を途工(ホットメルト)し、熱可塑性樹脂層付きの紙基材とした上で、それぞれの基材を重ね合わせてラミネートして積層することができる。図3では4層構成の場合のラミネート時の配置を示している。ラミネートは、内側の層から順に行っても良いし、一度に行っても良い。積層方法はこれに限られるものではなく、例えば押し出しラミネート、サンドラミネート等用いることができる。
【0024】
図4(A)及び図4(B)は、カード基材を個片化する際の紙目とカードの裁断位置の関係を示している。矢印は紙目の方向であり、点線はカードの裁断位置を示す。多面付けされたカード基材は、個々のカードサイズに裁断、個片化される。積層する紙基材の繊維方向である紙目は、少なくとも対になる最外層紙基材101で一致していることが好ましく、全ての紙基材の紙目が一致していることが好ましい。図4(A)のように紙目をカードの長辺方向bに一致させると、長辺方向の曲げに対して紙基材の剛性が高くなるので、カード自体の剛性が向上する。一方、図4(B)のようにカードの短辺方向aに一致させると、長辺方向の曲げに対してカードの柔軟性が高くなり、曲げ耐性が向上する。
【0025】
本発明の別の実施形態を説明する。
図5は、内層紙基材102の間に、非接触通信するためのアンテナ及びICチップを備えたインレット105が挟持されたICカード200の断面模式図及び平面図である。図5(A)に示すように、この実施形態では、積層された2層の内層紙基材102の間に、熱可塑性樹脂103を介してインレット105が挟まれている。
【0026】
図5の構成では、インレットはその側面が熱可塑性樹脂105に覆われるように、カードのサイズより一回り小さいサイズとなっている(図5(B))。インレットの前面が熱可塑性樹脂で覆われることになり、インレットの防水性等の耐性が向上する。また図3で示したのと同様に、熱可塑性樹脂層付きの紙基材を、それぞれ熱可塑性樹脂層をインレット側に向けてラミネートする場合には、上下の熱可塑性樹脂層がカード周辺部で直接接着されるので、接着性も向上する。
【0027】
一方、図6のようにカードのサイズと、インレット105のサイズが同一の場合には、図6(B)に示すように、インレットについてもシートに多面付けすることで、基材と同時に裁断できることから、工程を簡略化することができる。
【0028】
図7に、インレット構成例として、アンテナシート301上にアンテナのパターン302を設けたインレット300を示す。図7の構成例では、アンテナシート301の一面にアンテナパターン302が設けられ、パターンの交差部分では接続用のビア305を設けて他面のジャンパー線303で電気的に接続している。アンテナシート302としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム基材、ポリイミド基材、アクリル系基材、塩化ビニル系基材を用いることができる。また紙基材を用いてもよい。さらには、図7に示すように、アンテナシートは中抜きしても良い。このようにすることにより、上下の熱可塑性樹脂層103が接触するので、接着性が向上する。さらに、アンテナシートと熱可塑性樹脂層103の接着性を向上させるために、アンテナシート表面に接着層を設けても良い。当該接着層は、紙基材に直接接触することがないため、一般的な接着剤であれば紙リサイクルに悪影響を与えることはない。
【0029】
アンテナパターン301は、エッチング法、メッキ法、印刷法またはパターン蒸着法により形成することができる。エッチング法はアンテナ基材上にアルミ、銅などの金属箔を貼り合せ、またはアルミ、銅などの金属薄膜を蒸着法、スパッタリング法などにより形成し、金属箔・金属薄膜上にマスクパターンを形成し、エッチングによりアンテナ形状にパターニングする方法である。印刷法は、導電性インキを印刷する方法であり、微細パターニングできる方法であれば特に限定するものではないが、スクリーン印刷法を好適に用いることができる。アンテナ基材として紙基材を用いる場合、アンテナの形成法としては印刷法を好適に用いることができる。メッキ法は、触媒層をパターニング形成し、その後電解または無電解メッキにより、形成する方法である。パターン蒸着法は、開口部を有するマスクを用い、パターン状に蒸着法又はスパッタリング法等により、アンテナパターンを形成する方法である。裏面にジャンパー線303を設ける代りに、アンテナパターンの交差する部分に絶縁基材と導電部材からなる配線を用いて貼り合せ、配線の端部をアンテナと導通させることにより交差させるようにしても良い。
【0030】
また別のアンテナ形成方法としては、基材の一方又はアンテナシート上に銅線等の金属線をコイル状に固着配置してアンテナを形成しても良い。アンテナの巻き数、形状などは、通信周波数、その他の特性に応じて適宜設定することができる。この構成は特に片面にアンテナ・配線を形成する場合に好適に用いることができる。
【0031】
ICチップとアンテナ301との接続はアンテナの終端とICチップに接続するバンプまたは接続パッドと溶接や接着剤で貼り合せることにより接続できる。
【0032】
ICチップの厚みを緩和するために、アンテナシートに開口を設け、そこにICチップを配置するようにしても良い。接着剤としては導電性の接着剤を好適に用いることができる。
【0033】
図8は、本発明に係るICカードの別の実施形態を示す断面模式図である。製造工程での配置が分かりやすいように、ラミネート時の各層の間隔を空けて表示している。図8では、アンテナシート301及びICチップ307を熱可塑性樹脂からなるアンテナシート301で挟んだ構成となっている。この場合、インレット105のアンテナシートによりインレットに隣り合う内層基材102が固定されるため、インレットはカードサイズに等しい。当該実施形態におけるアンテナシート301を構成する材料としては、熱可塑性樹脂層103と同様のものを用いることができる。あるいは、アンテナシートを内層紙基材102側に熱可塑性樹脂層を設けた多層構造としても良い。当該実施形態によれば、加熱圧着によりインレット105と内層紙基材102を固定できるので、内層紙基材に熱可塑性樹脂層を設ける必要がない。むろん、さらに内層紙基材102側に熱可塑性樹脂層を設けることで、インレット105との接着性を向上させても良い。
【0034】
図9は、本発明に係るICカードのさらに別の実施形態を示す断面模式図である。図9では、内層紙基材102上に直接アンテナ302及びICチップ307(インレット105)が設けられた構成である。内層紙基材102上に直接インレットを設けることで、内層紙基材間にインレットを別途挟み込まずICカードを製造できるため、積層後のラミネート工程で、インレット105が位置ずれすることがない。アンテナ302の形成は、接着剤を用いて被覆金属線を布線して形成しても良いし、印刷によりパターン形成しても良い。特に被覆金属線の布線は内層紙基材の片面にジャンパー線等を用いずに容易にアンテナを形成でき、さらには紙基材表面の粗さの影響をほとんど受けないために好ましい。さらに、この構成では特に内層紙基材のアンテナ及びICチップ形成面に別の内層紙基材を熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる事で、アンテナやICチップによる凹凸を緩衝させることができることから好ましい。
【0035】
ICチップ307がモジュール化され、内層紙基材102や熱可塑性樹脂層103に比して厚みがある場合には、図10のように、ICチップ配置位置と一致するように紙基材に開口を設けても良い。図10(A)は、インレットを設けた内層紙基材に対向する基材に開口を設けた構成である。図10(B)は、インレットを設けた内層紙基材に開口を設けた構成である。なお、図10(A)及び(B)の構成では、インレットから突出した厚みに合わせた厚みの内層紙基材を選択することで、張り合わせた際に内層基材表面が平坦化されるようにしてもよい。図10(C)は、開口ではなく表面を削ってインレットから突出した厚みに応じた凹部を設けることで、平坦性を確保した構成である。これらの構成は、インレットを設けた内層紙基材及び対向する基材の両方に開口を設けた構成や、一方の開口を凹部にした構成等、任意に組み合わせて採用することができる。
【0036】
図11は、上下の最外層紙基材101と、一層の内層紙基材102の3層構成とした本発明に係るICカードの実施形態である。この実施形態では、内層紙基材102上に直接アンテナ302及びICチップ307が設けられている。従って、このインレット付き内層基材を最外層紙基材と重ね合わせて熱可塑性樹脂103により溶融接着することで、ICカードを作製することができる。この構成では、紙基材以外の要素が最低限で済むため、コストを低減することができる。
【0037】
次にICカード以外の応用例として、磁気カード400の例を示す。図12では、最外層紙基材101上に磁気ストライプ401を設ける。最外層紙基材101上に熱可塑性樹脂層106を積層し、ラミネートにより磁気ストライプを熱可塑性樹脂層に溶融接着して埋め込んでも良いし、最外層紙基材101に磁気ストライプを接着剤により直接積層しても良い。また、磁気ストライプを設けた後、磁気ストライプを覆うようにカード表面に隠蔽層402を設けても良い。
【0038】
カードの耐水・耐湿性の向上や剥離防止のために、図13に示すようにカード側面にも側面保護層107を設け、カード全体を樹脂で覆うようにしても良い。
【0039】
上記本発明に係るカードについても、インレットや磁気ストライプ等を含めたカードの総重量中に紙の割合が50%とすることが好ましい。紙製品としてリサイクル適合性のあるカードとすることができる。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として、厚み200μmの上質紙に20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)を片面に積層したシートを用意した。
【0041】
前記シートを図3のように、上下の最外層紙基材101と2枚の内層紙基材102を、それぞれポリエチレンが対向するように4枚を重ねた。このとき紙基材の紙目が全ての層で一致するように配置した。これを約130℃で加圧することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。なお最終的なカード基材の膜厚は、0.8mmであった。また、カード基材の総重量に対する紙の割合を、作製したカード基材とポリエチレンが塗布されていない紙基材の重量をそれぞれ測定して算出したところ、88%であった。
【0042】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの長辺方向(縦)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0043】
<比較例1>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として厚み200μmの上質紙を用意し、熱可塑性樹脂(ポリエチレン)の代替として、ポリビニルアルコール(PVA)を水溶液に溶解したものを接着剤として用いた。厚み200μmの上質紙の1面に接着剤を塗布し、4層の紙基材を積層した。
【0044】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、実施例1と同様に、個々のカードの長辺方向を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0045】
<実施例2>
実施例1と同様の工程でカード基材を作製した。次に、縦85.6mm×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、実施例1と異なり、個々のカードの短辺方向(横)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0046】
<比較例2>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として厚み200μmの上質紙を用意し、熱可塑性樹脂の代替として、ポリビニルアルコール(PVA)を水溶液に溶解したものを接着剤として用いた。厚み200μmの上質紙の1面に接着剤を塗布し、4層の紙基材を積層した。
【0047】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、実施例2と同様に、個々のカードの短辺方向(横)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0048】
<比較例3>
最外層紙基材101として、厚み200μmの上質紙に20μmの低密度ポリエチレンを片面に積層したシート(坪量157g/m2)を用意した。
【0049】
前記上下の最外層紙基材101のみを、それぞれポリエチレンが対向するように重ねた。このとき紙基材の紙目が上下の層で一致するように配置した。これを約130℃で加圧することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。なお最終的なカード基材の膜厚は、0.4mmであった。
【0050】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの長辺方向(縦)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0051】
<比較例4>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として、厚み400μmの板紙(坪量310g/m2)に20μmの低密度ポリエチレンを溶融して塗工し、片面に低密度ポリエチレンを積層したシートを用意した。
【0052】
前記上下の最外層紙基材101のみを、それぞれポリエチレンが対向するように重ねた。このとき紙基材の紙目が上下の層で一致するように配置した。これを約140℃のロールで加圧(ラミネート)することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。なお最終的なカード基材の膜厚は、0.8mmであった。
【0053】
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの長辺方向(縦)を紙目の方向に一致させて裁断した。
【0054】
<評価実験>
上記実施例1,2及び比較例1〜4で作製したカードに対して、JIS X6305−1:2010に規定された曲げ強さの試験方法に準拠して、静的曲げ強さを測定した。結果を下記の表1に示す。荷重時たわみ量は、カードの一方を固定し、もうもう一方に0.7Nの荷重を1分間掛けた際のカード荷重側のたわみ量(高さ変化量)であり、荷重撤去後たわみ量は、荷重を取り去った後、1分後のカード荷重側のたわみ量(高さ変化量)である。
【0055】
表1の評価結果から、溶融接着のカードと、水溶液接着剤で一部紙基材に接着剤を含浸させたカードでは、剛性に相違はないことが分かる(実施例1と比較例1、実施例2と比較例2)。一方、2層構成の場合には大きく剛性が下がる(比較例3)。また、膜厚の等しい4層構成と2層構成のカードを比較すると(実施例1と比較例4)、膜厚はほぼ等しいが、荷重撤去後のたわみ量で50%以上戻り量に差がでており、本発明の構成では、荷重に対する物理強度が向上していることが分かる。
【0056】
【表1】
【0057】
<実施例5>
最外層紙基材101及び内層紙基材102として、厚み200μmの上質紙(坪量157g/m2)に20μmのポリエチレンを片面に積層したシートと、インレット105を用意した。インレットは、PETフィルムからなるアンテナシート上に、エッチングにより設けられたアンテナパターンとアンテナパターンに接続されたICチップとを設けたものである。またアンテナシートは、カードサイズ(縦85.6mm×横 54.0mm)よりも一回り小さい形状である。
【0058】
前記シートを図3のように、上下の最外層紙基材101と2枚の内層紙基材102がそれぞれポリエチレンが対向するように配置し、さらに内層紙基材の間にインレット105を重ねた。インレットは、裁断時の各カード位置に一致するように配置した。これを約140℃に加熱して加圧することで、各層を加熱圧着し、カード基材を作製した。
【0059】
次に上下の最外層紙基材の表面にオフセット印刷を用いて、多面付けされたICカード位置に一致するように、絵柄層パターンを形成した。
次に、縦85.6mm ×横 54.0mmのサイズにカード基材を裁断し、個々のカードに個片化した。このとき、個々のカードの短辺方向を紙目の方向に一致させて裁断した。なお最終的なカードの膜厚は、0.8mmであった。またカードの総重量に対する紙の割合を、作製したICカードと、ポリエチレンが塗布されていない紙基材及びインレットの重量をそれぞれ測定して算出したところ、86%となった。
【符号の説明】
【0060】
100・・・カード基材
101・・・最外層紙基材
102・・・内層紙基材
103・・・熱可塑性樹脂層
104・・・保護層/印刷層
105・・・インレット
106・・・熱可塑性樹脂層
107・・・側面保護層
200・・・ICカード
300・・・インレット
301・・・アンテナシート
302・・・アンテナパターン
303・・・ジャンパー線
305・・・ビア
306・・・接続パッド
307・・・ICチップ
400・・・磁気カード
401・・・磁気ストライプ
402・・・隠蔽層
10・・・カード基材
11・・・紙基材
14・・・印刷層/樹脂層
15・・・インレット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2枚の最外層紙基材と、前記2枚の最外層紙基材の間に配置された、膜厚が100μm以上300μm以下の内層紙基材とを備え、
各紙基材の間が熱可塑性樹脂の溶融接着により固定されていることを特徴とするカード基材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の厚みが、10μm以上60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカード基材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカード基材。
【請求項4】
カード基材の総重量に対して、紙基材の合計重量が、50%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカード基材。
【請求項5】
前記各紙基材の紙目方向を一致させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材。
【請求項6】
請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの長辺方向となるように裁断したことを特徴とするカード。
【請求項7】
請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの短辺方向となるように裁断されていることを特徴とするカード。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の間に、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットを挟んで形成したことを特徴とするカード。
【請求項9】
請求項8に記載のICカードであって、前記インレットの上下を熱可塑性樹脂を介して1又は複数の内層紙基材で挟持し、さらに該内層紙基材の上下を熱可塑性樹脂を介して最外層紙基材で挟持したことを特徴とするICカード。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の一つに、アンテナコイルと、ICチップとを設けて形成したことを特徴とするICカード。
【請求項11】
アンテナコイルとICチップとを備えたインレットの上下に、該インレット側に熱可塑性樹脂を積層した内層紙基材を配置してラミネートする工程と、該工程と同時あるいはその後に、前記内層紙基材側に熱可塑性樹脂を積層した最外層紙基材を配置してラミネートする工程と、を含むICカードの製造方法。
【請求項1】
対向する2枚の最外層紙基材と、前記2枚の最外層紙基材の間に配置された、膜厚が100μm以上300μm以下の内層紙基材とを備え、
各紙基材の間が熱可塑性樹脂の溶融接着により固定されていることを特徴とするカード基材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の厚みが、10μm以上60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカード基材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のカード基材。
【請求項4】
カード基材の総重量に対して、紙基材の合計重量が、50%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカード基材。
【請求項5】
前記各紙基材の紙目方向を一致させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材。
【請求項6】
請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの長辺方向となるように裁断したことを特徴とするカード。
【請求項7】
請求項5に記載のカード基材の前記紙目方向が、カードの短辺方向となるように裁断されていることを特徴とするカード。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の間に、アンテナコイルとICチップとを備えたインレットを挟んで形成したことを特徴とするカード。
【請求項9】
請求項8に記載のICカードであって、前記インレットの上下を熱可塑性樹脂を介して1又は複数の内層紙基材で挟持し、さらに該内層紙基材の上下を熱可塑性樹脂を介して最外層紙基材で挟持したことを特徴とするICカード。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載のカード基材の前記内層紙基材の一つに、アンテナコイルと、ICチップとを設けて形成したことを特徴とするICカード。
【請求項11】
アンテナコイルとICチップとを備えたインレットの上下に、該インレット側に熱可塑性樹脂を積層した内層紙基材を配置してラミネートする工程と、該工程と同時あるいはその後に、前記内層紙基材側に熱可塑性樹脂を積層した最外層紙基材を配置してラミネートする工程と、を含むICカードの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−61619(P2012−61619A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205328(P2010−205328)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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