カーボンナノコイルの製造方法および製造装置
【課題】カーボンナノコイルを大量合成する、カーボンナノコイルの製造方法および製造装置を実現する。
【解決手段】粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填し、上記触媒担持体を加熱しながら、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させる。
【解決手段】粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填し、上記触媒担持体を加熱しながら、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノコイルの製造方法および製造装置に関するものであり、特に高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することを可能とするカーボンナノコイルの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノコイルは、導電性を有しかつコイル形状であることから高性能な電磁波吸収材料としての利用が期待されるとともに、ナノメートルオーダーの大きさであることから、マイクロマシンのスプリングやアクチュエーターの材料としても注目されている。
【0003】
そのため、グラファイト構造からなる線状、曲線状、コイル状等の様々な形状のカーボンナノ構造物が生成する合成工程において、コイル状のカーボン生成物であるカーボンナノコイルの生成率を高めるとともに、工業的な利用を目指して大量合成を可能とするための研究が重ねられている。
【0004】
従来カーボンナノコイルの製造方法としては、基板上に触媒膜を製膜して、反応炉内に静置した状態で触媒を加熱し、原料ガスを供給して基板上にカーボンナノコイルを生成させる基板法(例えば、特許文献1等参照。)や、炭素化合物ガスの中に噴霧ノズルから炭化物触媒微粒子からなる粉体を噴霧してカーボンナノコイルを生成させる方法が報告されている(例えば、特許文献2等参照。)。
【0005】
また、カーボンナノ構造物の中でもカーボンナノチューブについては、流動床法を用いて、流動する触媒粒子にカーボンナノチューブを生成させることが報告されている(例えば、特許文献3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−45637(平成19年2月22日公開)
【特許文献2】国際公開第2004/105940号パンフレット(2004年12月9日公開)
【特許文献3】特表2004−526660(平成16年9月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来知られているカーボンナノコイルの製造方法は、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成するためには未だ十分であるとはいえない。
【0008】
上記基板法では、基板上に製膜された触媒表面にのみカーボンナノコイルが生成するため、カーボンナノコイルを生成させることができる表面積が限られ、カーボンナノコイルの大量合成を行うことは困難である。
【0009】
また、カーボンナノコイルは、カーボンナノチューブに比べて生成速度が顕著に遅いため、カーボンナノコイルを効率よく合成することは、カーボンナノチューブの合成と比較して非常に困難である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるカーボンナノコイルの製造方法および製造装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法は、上記課題を解決するために、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含むことを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記反応炉として、上記フィルターが、該反応炉内の空間を上下方向に二分するように設置されている反応炉を用いることが好ましい。
【0014】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記混合ガスの線速度を、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することが好ましい。
【0015】
これにより、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させることができ、カーボンナノコイルの合成を良好に行うことができるというさらなる効果を奏する。
【0016】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することが好ましい。
【0017】
上記差圧が2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することにより、上記触媒担持体を好適に流動および反応させることができるというさらなる効果を奏する。
【0018】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒担持体として、平均粒子径が10μm以上1mm以下の触媒担持体を用いることが好ましい。
【0019】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒担持体として、単分散した触媒担持体を用いることが好ましい。
【0020】
これにより、触媒担持体の粒子同士の衝突が起こりにくいため、より長いカーボンナノコイルを合成することが可能となるというさらなる効果を奏する。
【0021】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1未満となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.6重量%以下の触媒担持体を用いることが好ましい。
【0022】
上記触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1未満となるような量の上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができるというさらなる効果を奏する。
【0023】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1以上となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.3重量%以下の触媒担持体を用いることが好ましい。
【0024】
上記触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1以上となるような量の上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができるというさらなる効果を奏する。
【0025】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含むように設定することが好ましい。
【0026】
これにより、加熱領域を反応領域にあわせて設定することによって、好適に反応温度を制御することができる。というさらなる効果を奏する。
【0027】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域と、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するガス予熱領域を含むように設定することが好ましい。
【0028】
これにより、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを予め加熱することにより、供給されるガスによる反応領域の温度低下を防ぐことができるというさらなる効果を奏する。
【0029】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域の温度を600℃以上850℃以下に制御することが好ましい。
【0030】
反応領域の温度を上記範囲内に制御することにより、カーボンナノコイルを好適に製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域の温度を600℃以上850℃以下で、且つ、ガス予熱領域の温度を300℃以上850℃以下に制御することが好ましい。
【0032】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、FeおよびSnを少なくとも含む触媒を用いることが好ましい。
【0033】
FeおよびSnを少なくとも含む触媒を用いることにより、さらに高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【0034】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30である触媒を用いることが好ましい。
【0035】
FeとSnとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0036】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、さらにInを含む触媒を用いることが好ましい。
【0037】
これにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0038】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であって、かつ、InとSnとのモル比が、0≦In/Sn≦30である触媒を用いることが好ましい。
【0039】
これにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0040】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、酸化物を用いることが好ましい。
【0041】
上記触媒として、酸化物を用いることにより、触媒を空気中で使用してもそれ以上酸化せず、化学的に安定であるので、カーボンナノコイルを安定して合成可能であるというさらなる効果を奏する。
【0042】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造装置は、上記課題を解決するために、内部にフィルターが設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉であって、該フィルター上に触媒担持体が充填される反応領域を有する反応炉と、該反応炉の少なくとも反応領域の外周部に設置された加熱装置と、該反応炉の上記フィルターの下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、フィルターを通して供給するためのガス導入部と、を有することを特徴としている。
【0043】
上記の構成によれば、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法は、以上のように、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含むことを特徴としている構成を備えているので、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置を模式的に示す図である。
【図2】実施例において、触媒上に生成したカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図3】実施例において、触媒上に生成したカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図4】実施例における、混合ガスの線速度と、触媒担持体の上下における差圧との関係を示すグラフである。
【図5】実施例における、混合ガスの線速度と、触媒担持体の上下における差圧との関係を示すグラフである。
【図6】実施例において、触媒の組成を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図7】実施例において、触媒の組成を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図8】実施例において、用いた触媒担持体の粒度分布と生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により観察した結果とを示す図である。
【図9】実施例において、用いた触媒担持体の粒度分布と生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により観察した結果とを示す図である。
【図10】実施例において、触媒担持率を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図11】実施例において、触媒担持率を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると以下の通りである。
【0047】
(I)カーボンナノコイルの製造方法
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法は、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含んでいる。
【0048】
また、本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法は、さらに、上記触媒担持体を調製する触媒担持体調製工程を含んでいてもよく、さらにその他の工程を含んでいてもよい。以下に、本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法を、(I−1)触媒充填工程、(I−2)カーボンナノコイル合成工程、(I−3)触媒担持体調製工程、(I−4)その他の工程の順に説明する。
【0049】
(I−1)触媒充填工程
本工程では、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する。
【0050】
<反応炉に設置されたフィルター>
本発明で用いられる反応炉には、上記触媒担持体をその上に充填できるようにフィルターが設置されている。本発明において、フィルターとは、上記触媒担持体を実質的に通さないが、キャリアガスおよび原料ガスを通すことができるものであればよい。
【0051】
かかるフィルターは、上記触媒担持体をその上に充填でき、かつ、該フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを、該フィルターを通して上記触媒担持体に供給することができるように反応炉に設置されていればよい。かかる構成により、フィルターの上に充填された上記触媒担持体を、フィルターを通る上記混合ガスで流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させることが可能となる。
【0052】
ここで、上記反応炉としては、鉛直方向に延びる筒状の反応炉を用いることがより好ましく、上記フィルターは、該フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスが、該フィルターのみを通って上記触媒担持体に供給されるように設置されていることがより好ましい。
【0053】
好ましい一例としては、例えば、図1に模式的に示すように、上記反応炉として鉛直方向に延びる筒状の反応炉を用い、上記フィルターが、該反応炉内の空間を上下方向に二分するように設置されている構成を好適に用いることができる。かかる構成により、上記触媒担持体をフィルター上で流動させることができるため、反応に必要な熱が持続供給される領域で流動させて、カーボンナノコイルを効率よく製造することができる。また、フィルター上の触媒担持体に対して、フィルターを通して原料ガスおよびキャリアガスが供給されるため、原料ガスおよびキャリアガスの線速度の制御を好適に行うことができる。さらに、上記フィルターは、その面が、鉛直方向に延びる筒状の反応炉の鉛直方向に対して垂直に設置されていることが好ましい。これにより、上記フィルター上に均一に上記触媒担持体を充填することができる。それゆえ、上記触媒担持体を上記原料ガスと効率よく接触させることが可能となり、カーボンナノコイルを効率よく製造することができる。
【0054】
また、上記フィルターは、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給しながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させる工程において、反応炉に安定して固定されていれば、その設置の方法は特に限定されるものではない。かかる設置方法としては、フィルターを直接反応炉に溶接してもよいし、ネジ等により固定してもよいし、反応管に設置された溝にはめ込んで上部から押さえる方法により固定してもよいが、上記フィルター部分以外からは原料ガスおよびキャリアガスが通過しないように、反応炉の側面との間は密封されていることがより好ましい。
【0055】
上記フィルターの材質は、該フィルターが、カーボンナノコイルの合成に悪い影響を及ぼすものでなければ特に限定されるものではない。例えば、石英;金属;A1203等のセラミックス等からなるフィルターを好適に用いることができる。
【0056】
また、上記フィルターの孔径も、上記触媒担持体の粒子径よりも小さく、上記触媒担持体を実質的に通さない範囲であればよい。上記フィルターの孔径は、具体的には、10μm以上500μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましい。上記フィルターの孔径が上記範囲内であることにより、上記触媒担持体を実質的に通さないが、キャリアガスおよび原料ガスを通すことが可能となる。
【0057】
<触媒担持体>
本工程では、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、上記フィルターの上に充填する。
【0058】
かかる触媒担持体を用いることにより、基板上に製膜された触媒表面にのみカーボンナノコイルが生成する基板法と比較して、カーボンナノコイルを生成させることができる表面積を増大することできる。ゆえに、カーボンナノコイルを効率よく合成することができる。また、担体に担持させない触媒粒子をそのまま用いる場合と比較して、粒子状担体が蓄熱機能を有するため、触媒の温度の低下を防止することができる。それゆえ、反応の温度条件を安定させることができ、カーボンナノコイルを効率的に合成することができる。
【0059】
本発明で用いる触媒としては、遷移金属を含む触媒を好適に用いることができる。かかる触媒を用いることにより高純度のカーボンナノコイルを製造することができる。
【0060】
ここで、上記遷移金属は、遷移金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Fe、Co、Ni、Mo、Cu等であることがより好ましい。上記触媒は遷移金属を含む触媒であればよいが、遷移金属を1種類以上含んでいればよい。また、遷移金属を1種類以上含んでいれば、さらに、遷移金属以外の元素を含んでいてもよい。上記触媒としては、例えば、Fe−Sn系触媒、Fe−Sn−In系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−S系触媒、Ni−Cu系触媒、SUS触媒、Co、Ni等を好適に用いることができる。上記触媒は、上記遷移金属および上記元素を含んでいるものであればよいが、上記遷移金属および上記元素は、酸化物、カルボニル誘導体、有機化合物、金属塩等の種々の化合物として含まれうる。
【0061】
中でも、本発明で用いる触媒としては、FeおよびSnを少なくとも含む触媒をより好適に用いることができる。かかる触媒を用いることによりさらに高純度のカーボンナノコイルを製造することができる。
【0062】
ここで、FeおよびSnを少なくとも含む触媒とは、FeとSnとを含んでいればその割合は特に限定されるものではないが、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であることが好ましく、3≦Fe/Sn≦10であることがより好ましく、5≦Fe/Sn≦10であることがさらに好ましい。FeとSnとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができる。
【0063】
また、本発明では、FeとSnとに加えてさらにInを含む触媒も好適に用いることができる。Inを含む場合も、FeとSnとのモル比は、上記範囲であることが好ましく、かつ、InとSnとのモル比は、0≦In/Sn≦30であることが好ましく、1≦In/Sn≦10であることがより好ましく、1.2≦In/Sn≦4であることがさらに好ましい。FeとSnとInとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができる。
【0064】
また、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるという観点から、上記触媒として、(i)Fe:Inのモル比が3:1であり、かつ、SnがFeの10%以上33%以下のモル比である触媒、または(ii)Fe:Snのモル比が7.5:1であり、かつ、InがFeの33%以上66%以下のモル比である触媒を、特に好適に用いることができる。
【0065】
本発明で用いられる触媒は特に好ましくは、Fe−Sn系触媒、すなわち、FeとSnとを含む2成分系触媒、または、Fe−Sn−In系触媒、すなわち、FeとSnとInとを含む3成分系触媒である。しかしながら、上記触媒は、FeおよびSn、または、Fe、SnおよびInの他に、カーボンナノコイルの合成に悪影響を与えない範囲で他の金属を含んでいてもよい。他の金属としては、例えば、Al、Na等を挙げることができる。
【0066】
上記触媒は、上記金属元素を含んでいるものであればよいが、上記金属元素は種々の金属化合物として含まれうる。例えば、Feは、Fe2O3、Fe3O4等の鉄酸化物;カルボン酸鉄、鉄カルボニル、鉄カルボニル誘導体、鉄ニトロシル、鉄ニトロシル誘導体等の鉄有機化合物;硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄等の金属塩等として触媒に含まれうる。また、Inは、例えば、In2O3等のインジウム酸化物;トリメチルインジウム、トリフェニルインジウム、オクチル酸インジウム、カルボン酸インジウム等のインジウム有機化合物;硝酸インジウム、塩化インジウム、硫酸インジウム等の金属塩等として触媒に含まれうる。また、Snは、例えば、SnO、SnO2等のスズ酸化物;トリエチルスズ、テトラフェニルスズ、オクチル酸スズ、カルボン酸スズ等のスズ有機化合物;塩化スズ、硫酸スズ等の金属塩等として触媒に含まれうる。中でも、酸化物を用いることにより、触媒を空気中で使用してもそれ以上酸化せず、化学的に安定であるので、カーボンナノコイルを安定して合成可能であるため、上記金属は酸化物として含まれていることがより好ましい。
【0067】
上記触媒を担持する粒子状担体は、上記触媒を担持することができ、且つ、原料ガスと反応しないものであれば、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、セラミックス、ゼオライト、アルミノリン酸塩、シリカアルミノリン酸塩、樹脂、マグネシア、セリア、シリカ、ジルコニア等の粒子を好適に用いることができる。中でも、CVD反応中でも安定であるとの観点から、上記粒子状担体は、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミックスであることがより好ましい。
【0068】
上記粒子状担体及び触媒担持体の形状は、粒子状であれば特に限定されるものではなく、例えば、球状、略球状、棒状、立方体状等を挙げることができる。中でも、安定な流動状態を作るという観点から、上記粒子状担体の形状は、球状であることがより好ましい。
【0069】
また、上記粒子状担体及び触媒担持体の平均粒子径は、10μm以上1mm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましく、40μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。上記粒子状担体の平均粒子径が10μm以上であれば、用いるガス線速度範囲内において長時間炉内に担持体が滞在できるため好ましい。また、上記粒子状担体の平均粒子径が1mm以下であれば、安定な流動状態を保持できると同時に、カーボンナノコイルを成長させるための表面積を十分に確保できるため好ましい。
【0070】
なお、本明細書において、平均粒子径とは、以下の方法で決定された値をいう。上記粒子状担体及び触媒担持体について、走査型電子顕微鏡による観察を行い、得られる観察像内のそれぞれの粒子に対して、粒子1つの長軸径、すなわち、粒子の形状の最も寸法の大きい方向の寸法を、顕微鏡写真から計測する。計測した値を平均した値を本発明における平均粒子径とする。
【0071】
また、上記粒子状担体及び触媒担持体としては、単分散した上記粒子状担体及び触媒担持体を用いることがより好ましい。ここで、「単分散した」とは、触媒担持体の粒子径がそろっていれば特に限定されるものではないが、粒子径分布が狭く、粒子径の相対標準偏差が70%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。なお、粒子径の相対標準偏差は、粒子径の標準偏差を観測値の母集団の平均値を基準として百分率で表した値である。
【0072】
単分散した触媒担持体を用いることにより、粒子径分布の大きい触媒担持体を用いる場合より触媒担持体の粒子同士の衝突が起こりにくい。それゆえ、より長いカーボンナノコイルを合成することが可能となる。また、単分散した触媒担持体を用いる場合、フィルターを通って加熱領域外に移動したり、混合ガスにより飛散して加熱領域外に放出されたりするような粒子径の小さい触媒担持体の量が少ないため、カーボンナノコイル合成の歩留まりをよりよくすることができる。
【0073】
また、上記触媒担持体の触媒担持率は、0.01重量%以上0.6重量%以下の範囲であることが好ましい。ここで、上記触媒担持体の触媒担持率とは、触媒担持体全体の重量に対する、触媒の重量の割合をいい、以下の式で表される値である。ここで、触媒の重量は、触媒を担持させる前の粒子状担体の重量と、該粒子状担体に触媒を担持させて得られる触媒担持体の重量との差から求められる。
【0074】
触媒担持率(重量%)=(触媒の重量/触媒担持体全体の重量)×100
上記触媒は、粒子状担体に担持されていればよく、担持の状態も特に限定されるものではない。上記触媒を粒子状担体に担持させる方法としても、特に限定されるものではなく、例えば、後述する液相法、気相法、固相法等により担持させることができる。
【0075】
<触媒担持体の充填>
本工程において、上記触媒担持体を上記フィルターの上に充填する方法は特に限定されるものではなくどのような方法であってもよい。例えば、反応炉に設けられた触媒導入管、触媒導入口等の触媒導入部から導入すればよい。
【0076】
ここで充填する触媒担持体の量は、フィルターを通る上記混合ガスで、当該触媒担持体を流動させることができる量である必要がある。なお本発明において、触媒担持体が流動するとは、触媒担持体が充填されている状態からガス流で空中に押し上げられて対流しているが、充填された触媒担持体の上端部付近で対流し、飛散してしまわない状態をいう。充填する触媒担持体の量を、当該触媒担持体を流動させることができる量に制御する方法として、本発明者らは、ガス流が充填された触媒担持体を通過する前後における圧力差、すなわち、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧に注目した。より具体的には、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値に注目した。そして、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することによって、上記触媒担持体を好適に流動させることができることを見出した。「触媒充填後であって加熱前に」とは、触媒担持体を加熱する前であればよいが、通常は室温下であり、例えば、−5℃以上40℃以下の温度下である。以下、本明細書において、単に「差圧」というときも、触媒充填後であって加熱前の差圧を意味するものとする。
【0077】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧とは、換言すれば、ガス導入部とフィルターとの間の領域と、触媒担持体が充填された領域の上端部と反応炉からガスを排気するガス排気部との間の領域との差圧である。また、ガス導入部とガス排気部との差圧であるということもできる。
【0078】
したがって、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値とは、換言すれば、触媒が充填された状態での上記ガス導入部と上記ガス排気部との間の差圧から、触媒が充填されていない状態での上記ガス導入部と上記ガス排気部との間の差圧を引いた値である。
【0079】
ここで、差圧は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0080】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値は、触媒充填後であって加熱前に、2kPa以下であることが好ましいが、0.2kPa以上1kPa以下であることがより好ましく、0.3kPa以上0.7kPa以下であることがさらに好ましい。
【0081】
従って、例えば、上記触媒担持体を上記フィルターの上に充填する本工程においては、フィルターの下方からキャリアガスを供給しながら上記差圧を測定し、差圧の測定結果に応じて充填する触媒担持体の量を制御しながら、触媒担持体を上記フィルターの上に充填する方法を好適に用いることができる。
【0082】
また、触媒担持体の量を制御しながら触媒担持体を上記フィルターの上に充填する方法は、手動で行ってもよいが、導入する触媒担持体を貯蔵した貯蔵容器を、反応炉に接続して備えておき、差圧計の測定値に応じて、自動的に充填する触媒担持体の量を制御しながら触媒担持体を上記フィルターの上に充填してもよい。
【0083】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することが好ましいが、触媒担持体の最小流動化速度に応じて、所定の触媒担持率を有する上記触媒担持体を用いることがさらに好ましい。例えば、触媒充填後であって加熱前の最小流動化速度が0.03m・sec−1未満となるように上記触媒担持体を充填するときは、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.6重量%以下の触媒担持体を用いることが特に好ましい。上記触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1未満となるように上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、カーボンナノコイル合成工程において反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができる。
【0084】
ここで、最小流動化速度とは、上記反応炉内に充填された上記触媒担持体が流動し始める反応領域における最小のガス線速度をいい、後述する実施例に示す方法を用いて求められる。
【0085】
また、例えば、触媒充填後であって加熱前の触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1以上となるように上記触媒担持体を充填するときは、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.3重量%以下の触媒担持体を用いることが特に好ましい。触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1以上となるように上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができる。
【0086】
(I−2)カーボンナノコイル合成工程
本工程では、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させる。
【0087】
<触媒担持体の加熱>
本工程では上記触媒担持体を加熱しながらカーボンナノコイルを合成する。なお、触媒担持体の加熱は上記触媒と上記原料ガスとを接触させるときに行えばよいが、上記原料ガスの供給前に、上記触媒担持体を予め加熱しておくことがより好ましい。これにより、最初から好適な温度条件下でカーボンナノコイルの合成を行うことができる。それゆえ、カーボンナノコイルを効率的に合成することができる。
【0088】
なお、原料ガスとの反応を防止する観点からは、上記触媒担持体を加熱する前に、反応炉中の酸素を除去しておくことがより好ましい。
【0089】
ここで、上記触媒担持体を加熱する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって上記触媒担持体を加熱する方法を挙げることができる。勿論反応炉内部に備えられた加熱装置による加熱も可能であるが、装置構造および保守面から反応炉の外周部に加熱装置を設置する方がより好ましい。また、上記加熱装置も特に限定されるものはないが例えば抵抗加熱炉、赤外線加熱炉等を好適に用いることができる。
【0090】
なお、上記触媒担持体を加熱するために加熱する反応炉の領域は、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含む領域であることが好ましい。かかる領域を加熱するためには、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域が、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含むようにすればよい。なお、本発明では、フィルターの上に上記触媒担持体を充填し、該フィルター上で該触媒担持体を流動させるので、反応領域を画定しやすい。ゆえに、加熱領域を反応領域にあわせて設定することによって、好適に反応温度を制御することができる。また、触媒担持体を反応領域内で長時間流動させて、熱容量を維持可能とすることにより、反応炉のスペースを有効利用して、カーボンナノコイルを大量に合成することが可能となる。
【0091】
また、本工程では、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含む領域に加えて、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するためのガス予熱領域を加熱領域とすることがより好ましい。かかる領域を加熱するためには、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域が、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域と、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するガス予熱領域を含むようにすればよい。フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを予め加熱することにより、供給されるガスによる反応領域の温度低下を防ぐことができる。それゆえ、反応温度を一定に制御することができ、カーボンナノコイルを効率よく合成することができる。
【0092】
なお、上記説明では外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用いる例を挙げて説明しているが、外周部に備えられた加熱装置の代わりに、反応炉内部に備えられた加熱装置を用いてもかまわない。
【0093】
本工程では、上記反応領域の温度は、600℃以上850℃以下で、且つガス予熱領域の温度は、300℃以上850℃以下に制御されることが好ましい。反応領域の温度及びガス予熱領域の温度を上記範囲内に制御することにより、予熱領域での原料ガスの分解と重合を抑制し、反応領域での触媒と原料ガスの反応を促進することが可能となるため、カーボンナノコイルを好適に製造することができる。
【0094】
<混合ガスの供給>
本工程では、上記原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスは、上記フィルターの下方から、フィルターを通して供給する。これにより、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させることができ、フィルター上で流動する上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させることができる。
【0095】
上記混合ガスを、上記フィルターの下方から、フィルターを通して供給する方法は特に限定されるものではなく、例えば、反応炉の底部にガス導入口、ガス導入管等のガス導入部を設け、該ガス導入部から、上記原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを導入すればよい。また流動を最適化するために、フィルター下部におけるガス導入部には、適切な混合ガス供給ノズルを使用することも効果的である。
【0096】
また、上記原料ガスとしては、炭素源となる分子であれば特に限定されるものではないが、例えば、アセチレン、エチレン、メタン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール等が用いられる。
【0097】
上記キャリアガスとしては、不活性ガスであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を好適に用いることができる。
【0098】
また、混合ガスに含まれる原料ガスの量は、混合ガスに対して、2体積%以上50体積%以下であることが好ましく、3体積%以上30体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上20体積%以下であることがさらに好ましい。原料ガスの量が、混合ガスに対して、2体積%以上であることにより、カーボンナノコイルを良好に合成することができる。また、原料ガスの量が、混合ガスに対して、50体積%以下であることにより、タール発生などによる原料ガスの浪費を抑えることが可能であるため好ましい。
【0099】
ここで、上記混合ガスの線速度は、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することが好ましく、0.02m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することがより好ましく、0.04m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することがさらに好ましい。なお、線速度とは、気体が単位時間に反応炉を通過する速度をいい、流量とは、単位時間に流れる気体の体積をいう。
【0100】
上記混合ガスの線速度が0.01m・sec−1以上であることにより、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させることができ、カーボンナノコイルの合成を良好に行うことができる。また、上記混合ガスの線速度が50m・sec−1以下であることにより上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を良好に流動させることができる。
【0101】
本工程では、上記原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、上記フィルターの下方から、フィルターを通して供給することにより、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させることができる。
【0102】
<カーボンナノコイルの成長>
本工程では、上記のようにして、フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させる。
【0103】
ここでカーボンナノコイルとは、炭素原子をらせん状に巻回成長させたカーボンコイルであり、そのコイル径が1000nm以下のものであればよい。したがって、らせん状に巻回成長する炭素原子は、内部が中空であるカーボンナノチューブであってもよいし、内部が中実のカーボンファイバーであってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0104】
なお、触媒上に成長するカーボンナノ構造物中には、カーボンナノコイル以外に、少量のらせん状に巻回成長していないカーボンナノ構造物が含まれていてもよいが、得られた全カーボンナノ構造物に対するカーボンナノコイルの割合、すなわち、カーボンナノコイルの純度は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0105】
(I−3)触媒担持体調製工程
触媒担持体の調製工程では上記触媒を上記粒子状担体に担持させる。上記触媒を上記粒子状担体に担持させる方法は、上述した触媒担持体を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。かかる方法としては、液相法、気相法、固相法等を用いることができる。
【0106】
以下に、液相法を用いる場合を、一例として挙げて説明するが、本工程で用いられる触媒担持体の調製方法はこれに限定されるものではない。
【0107】
<触媒溶液の調製>
触媒として用いる遷移金属およびその他の元素の化合物を、溶媒中に溶解させて触媒溶液を得る。かかる化合物としては、特に限定されるものではないが、上記(I−1)で挙げた有機化合物;塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機化合物を用いることができる。また、上記溶媒としては、上記化合物を溶解することができる溶媒を適宜選択すればよい。かかる溶媒としては、特に限定されるものではなく、用いる化合物に応じて適宜選択すればよい。かかる溶媒としては、例えば、アルコール、水等を挙げることができる。
【0108】
<粒子状担体への担持>
上記触媒溶液中に粒子状担体を浸漬する方法、粒子状担体に上記触媒溶液を公知の方法により塗布する方法等を用いて得られた触媒溶液を粒子状担体に付着させる。上記触媒溶液中に粒子状担体を浸漬する方法では、より効率的に触媒溶液を付着させるために、溶液を攪拌したり、超音波処理を行ってもよい。
【0109】
触媒溶液を付着させた粒子状担体は、乾燥後焼成されて所望の触媒を含む触媒担持体が得られる。ここで、焼成温度は、特に限定されるものではないが通常400℃〜1200℃である。また焼成時間は通常0.5時間〜48時間である。酸化雰囲気中で焼成することにより、金属化合物は金属酸化物に変化する。
【0110】
(I−4)その他の工程
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法は、さらに、その他の工程として、生成したカーボンナノコイルを回収するカーボンナノコイル回収工程、装置クリーニング工程等を含んでいてもよい。
【0111】
生成したカーボンナノコイルを回収する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。例えば、反応炉を室温まで冷却後、反応炉からカーボンナノコイルが生成している触媒担持体を取り出し、カーボンナノコイルを分離すればよい。触媒担持体からカーボンナノコイルを分離する方法も特に限定されるものではなく、例えば、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム溶液等に触媒担持体を浸漬し、粒子状担体を溶解してカーボンナノコイルを取り出す方法、適当な溶媒中で超音波を照射することにより、カーボンナノコイルを担持体から剥離する方法等を用いることができる。
【0112】
(II)カーボンナノコイルの製造装置
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。図1は本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置を模式的に示す図である。
【0113】
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置100は、図1に示すように、鉛直方向に延びる筒状の反応炉1の内部にフィルター2が設けられており、反応炉の外周部に加熱装置6が反応炉1の鉛直長手方向に沿って設置されている。反応炉1は、石英管からなり、内部に石英製平板状のフィルター2が、反応炉1内の空間を上下方向に二分するように、溶接により固定されている。フィルター2は、複数の孔を有し、その上に充填された触媒担持体3を通さないが、下方から供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを通すようになっている。そして、フィルター2の上に触媒担持体3を充填することにより、触媒担持体3を保持し、フィルター2上で流動させることができるようになっている。これにより、フィルターの上に充填された上記触媒担持体を、フィルターを通る上記混合ガスで流動させながら、上記触媒と下方から供給される原料ガスとを接触させることが可能となる。このようにして、本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置100に、上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域4を設定することができる。
【0114】
ここで反応炉1は石英管に限られるものではなく、他の材質からできているものであってもよい。他の材質としては、例えば、金属、セラミックス等を挙げることができる。
【0115】
また、フィルター2も、石英製に限られるものではなく、原料ガスと反応しない材料であれば何でもよい。フィルター2としては、石英の他に例えば、金属、セラミックス、グラファイト等を好適に用いることができる。
【0116】
また、フィルター2の、反応炉1への設置方法も溶接に限られるものではなく、フィルター2を固定することができれば如何なる方法であってもよい。フィルターを設置する他の方法としては、例えば、ネジ等により固定する方法、反応管に設置された溝にはめ込んで上部から押さえる方法等を用いることができる。
【0117】
また、フィルター2の形状も平板状に限られるものではなく、その上に触媒担持体3を充填することができる形状であれば、かご状であってもよい。
【0118】
フィルター2は、反応炉1内の空間を上下方向に二分するように設置されていれば、その位置は特に限定されるものではない。フィルター2の上方に反応領域を確保し、触媒担持体3に供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを予熱するためのガス予熱領域を確保するという観点からは、反応炉1の底部から、反応炉1の長手方向の長さの20%〜80%の位置に設置することが好ましく、30%〜70%の位置に設置することがより好ましく、40%〜60%の位置に設置することがさらに好ましい。
【0119】
フィルター2の孔径(ポアサイズ)は、触媒担持体3の粒子径に応じて適宜選択すればよいが、通常10μm以上500μm以下である。
【0120】
反応炉1には、触媒導入部8を通じて、触媒担持体3がフィルター2の上に充填される。触媒担持体3は、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる。この触媒担持体3については、上記(I−1)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0121】
加熱装置6は、反応炉1の反応領域4に該当する部分と、反応領域4の直下に位置し、反応領域に供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを予熱するガス予熱領域5に該当する部分との外周に配置されている。これにより、フィルター2の上に充填された触媒担持体3を、加熱装置6によって予熱することができるとともに、上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを反応させる間に反応領域を加熱することができる。なお、加熱装置6は、反応炉1の反応領域4に該当する部分の外周のみに配置されていてもよい。
【0122】
反応炉1には、ガス導入部7を通じて、原料ガスおよび/またはキャリアガスが導入され、フィルター2を通して、フィルター2の上に充填された触媒担持体3に供給される。
【0123】
フィルター2を通して、フィルター2の上に充填された触媒担持体3に供給された原料ガスおよび/またはキャリアガスは、図示しないガス排気部から、反応炉の外に排出される。
【0124】
触媒導入部8は、金属製触媒導入管からなり、また、ガス導入部7は金属製ガス導入管からなる。しかし、触媒導入部8およびガス導入部7は、金属製に限られるものではなく、石英、セラミックス等の他の材質からなるものであってもよい。
【0125】
また、反応炉1は、反応炉1内の触媒担持体3が充填された領域の上下の差圧、または、触媒担持体3が充填されていない状態でフィルター2の上下の差圧を測定するために、図示しない差圧計を備えていてもよい。差圧計を用いて、触媒担持体3の充填時に、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することにより、カーボンナノコイルを良好に合成することができる。
【0126】
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置では、さらにフィルター2の上に充填する触媒担持体3を貯蔵した貯蔵容器が、反応炉1に接続して備えられていてもよい。また、差圧計の測定値、または、測定値から計算された、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値に応じて、自動的に充填する触媒担持体3の量を制御しながら触媒担持体3を上記フィルターの上に充填するための制御装置が備えられていてもよい。
【実施例】
【0127】
本発明について、実施例、比較例および図2〜12に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0128】
なお、実施例および比較例における(a)カーボンナノコイルの純度、(b)カーボンナノコイルの合成量、(c)カーボン生成物重量および(d)触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値、(e)最小流動化速度の測定法は次の通りである。
【0129】
(a)カーボンナノコイルの純度
合成後の触媒担持体を、走査型電子顕微鏡で、1000〜2000倍の倍率にて観察し、視野の中に存在するカーボンナノ構造物の数と、カーボンナノ構造物中のカーボンナノコイルの数とを数えた。これを10視野について行い、観察した全視野中の全カーボンナノ構造物の数に対する、カーボンナノコイルの数の割合をカーボンナノコイルの純度とした。
【0130】
(b)カーボンナノコイルの合成量
カーボンナノコイルが成長した触媒担持体を、有機溶媒中で超音波印加して、カーボンナノコイルを触媒担持体から剥離した。この触媒担持体と剥離したカーボンナノコイルとを含む有機溶媒を、篩に通して、篩を通らない触媒担持体と、篩を通るカーボンナノコイルが分散した有機溶媒とを分離した。カーボンナノコイルが分散した有機溶媒を回収し、吸引ろ過することによりカーボンナノコイルを取り出した。その後、電子天秤を用いてカーボンナノコイルの重量を測定した。測定したカーボンナノコイルの重量を、原料ガスの投入時間でわることによって、カーボンナノコイルの合成量(単位:g/h)とした。
【0131】
(c)カーボン生成物重量
カーボンナノコイル合成後の触媒担持体と生成したカーボンナノ構造物との全重量から、反応前の触媒担持体の重量を引いた値をカーボン生成物重量とした。重量の測定には電子天秤を用いた。
【0132】
(d)触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値
ガス導入部を分岐して差圧計の高圧側に導入し、ガス排気部を分岐して差圧計の低圧側に導入した。キャリアガスを供給しながら、差圧計から出力される電気信号をデータロガーに取り込むことによって、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧Bを測定した。さらに触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧Aを、差圧Bを測定したときと同じキャリアガスを同じガス流量で供給しながら別途測定し、B−Aの値を差圧と定義した。
【0133】
(e)最小流動化速度
上記反応炉内に流通させるキャリアガスのガス流量を変化させることにより、反応領域におけるキャリアガスの線速度を変化させ、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧Bを各線速度に対して測定した。上記差圧Bの測定と同様に、別途、触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧Aを、各線速度に対して測定して、それぞれの線速度に対応するB−Aの値を算出した。このようにして算出したB−Aの値を各線速度に対してプロットしたグラフにおいて、B−Aの値が線速度の増加に伴い直線的に増加する部分と、B−Aの値が線速度の増加に伴い、一定値を示す部分との交点における線速度の値を最小流動化速度とした。
【0134】
〔実施例1:カーボンナノコイルの製造〕
本実施例では、触媒担持体を反応炉の内部に設置されたフィルター上に充填して加熱し、該フィルターの下方より原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給して、触媒担持体に流動状態を発生させ、CVD反応によりカーボンナノコイルを製造した。
【0135】
<触媒担持体の調製>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を、触媒組成比が、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように調製して、触媒溶液とした。
【0136】
具体的には、硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2O、塩化インジウムInCl3および塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た。
【0137】
得られた触媒溶液に粒子状担体としてのアルミナ粒子(平均粒子径:78μm)250gを添加した。得られたアルミナ粒子と触媒溶液との混合物を攪拌し、アルミナ粒子表面と触媒溶液とを接触させた。
【0138】
その後、触媒溶液が付着したアルミナ粒子を取り出し、耐熱容器中で、800℃で約1時間加熱し、室温まで冷却した。
【0139】
冷却後、触媒担持体を粒子状態に解して触媒担持体を得た。
【0140】
<カーボンナノコイルの製造>
得られた触媒担持体を、反応炉内に導入して加熱し、原料ガスと混合させてCVD反応によりカーボンナノコイルを製造した。
【0141】
具体的には、反応炉として円筒状の石英管(内径:26mm、長さ1000mm、容積:約0.53L)を用い、この石英管を鉛直に配置し、当該石英管の長手方向中央部(端から500mmの位置)に、石英製のフィルター(ポアサイズ:40μm)を設置した。そして、この石英管の長手方向中央部400mmの領域、すなわち、石英管の両端からそれぞれ300mmの領域を除く中央部を反応領域およびガス予熱領域とし、該反応領域およびガス予熱領域の外周部を抵抗加熱炉で覆った。この反応炉は、上記フィルターの下方から原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給して、フィルター上に充填した触媒担持体を流動させることができる流動床炉である。
【0142】
上記反応炉のフィルター上に、上記触媒担持体50g(触媒担持体上下の差圧は0.7kPaであった)を充填し、フィルター下部となる反応炉下方のガス導入口より、Heを1.2slmで約15分間流通させ、フィルター上の触媒担持体を流動させて反応炉内の酸素を除去した。なお、ここで、触媒担持体上下の差圧が0.7kPaであったとは、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が0.7kPaであったことを意味する。
【0143】
酸素除去終了後、Heを1.2slmで流通させた状態で、700℃まで昇温した後、700℃で保持して触媒担持体を加熱した。700℃までの昇温に要した時間と保持時間との合計時間は30分であった。
【0144】
その後、700℃に加熱装置を加熱保持した状態で、キャリアガスHe1.2slmに、原料ガスC2H2を0.3slm混合させた混合ガスを、上記ガス導入口より240分間流通させてCVDを実施し、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0145】
カーボンナノコイルの合成量は2g/4時間であった。また、カーボンナノコイルの純度は80%であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、後述する比較例1に示すように、容積35Lのより大規模な反応炉を用いてもカーボンナノコイルの合成量が1g/4時間であった従来法と比べ、容積約0.53Lの反応炉で2g/4時間の合成量を確保することができる。すなわち、従来法の約1.5%の容積で、2倍の量のカーボンナノコイルを合成することができる。
【0146】
〔実施例2:カーボンナノコイルの製造〕
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:75mm、長さ1000mm、容積:約4.4L)を用いた点、上記触媒担持体150g(触媒担持体上下の差圧は0.3kPaであった)を充填した点、キャリアガスとしてArを用い、キャリアガスAr13.4slmに、原料ガスC2H2を1.6slm混合させた混合ガスを、ノズルを用いて流通させた点(混合ガスの線速度:47m・sec−1(2.8×105cm/min))以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。
【0147】
なお、ここで、触媒担持体上下の差圧が0.3kPaであったとは、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が0.3kPaであったことを意味する。
【0148】
カーボンナノコイルの合成量は8g/4時間であった。また、カーボンナノコイルの純度は80%であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、後述する比較例1に示すように、容積35Lのより大規模な反応炉を用いてもカーボンナノコイルの合成量が1g/4時間であった従来法と比べ、容積約4.4Lの反応炉で8g/4時間の合成量を確保することができる。すなわち、従来法の約13%の容積で、8倍の量のカーボンナノコイルを合成することができる。
【0149】
〔実施例3:カーボンナノコイルの製造〕
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:95mm、長さ1000mm、容積:約7.1L)を用いた点、上記触媒担持体450g(上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値は0.65kPaであった)を充填した点、キャリアガスとしてArを用い、キャリアガスAr27slmに、原料ガスC2H2を3.0slm混合させた混合ガスを流通させた点(混合ガスの線速度:0.07m・sec−1)以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。
【0150】
カーボンナノコイルの合成量は29.2g/2時間であった。また、カーボンナノコイルの純度は80%であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、後述する比較例1に示すように、容積35Lのより大規模な反応炉を用いてもカーボンナノコイルの合成量が1g/4時間であった従来法と比べ、容積約7.1Lの反応炉で29.2g/2時間の合成量を確保することができる。すなわち、従来法の約20%の容積で、29.2倍の量のカーボンナノコイルを合成することができる。
【0151】
〔比較例1:従来の基板法によるカーボンナノコイルの製造〕
触媒を耐熱基板面上に塗布して、触媒塗布基板を作製した。作製した触媒塗布基板を反応管内に設置して加熱し、原料ガスを供給して触媒塗布基板表面の触媒と原料ガスを接触させ、CVD反応により触媒塗布基板表面にカーボンナノコイルを製造した。
【0152】
具体的には、容積35Lの反応管の約半分の容積を700℃に保持して、反応完了までに、不活性ガス2500L、原料ガス110Lを使用して合成を実施した。その結果、カーボンナノコイルの合成量は1g/4時間であった。
【0153】
〔実施例4:カーボンナノコイルの合成量に対する混合ガスの線速度の影響〕
カーボンナノコイルの合成量に対する混合ガスの線速度の影響を調べるため、混合ガスの線速度を変化させて、カーボンナノコイルを合成した。
【0154】
<実施例4−1>
実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。得られた触媒担持体100gを投入した点、キャリアガスHe0.675slmに、原料ガスC2H2を0.075slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例1と同様にして、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0155】
<実施例4−2>
キャリアガスHe1.35slmに、原料ガスC2H2を0.15slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0156】
<実施例4−3>
キャリアガスHe2.7slmに、原料ガスC2H2を0.3slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0157】
<実施例4−4>
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:75mm、長さ1000mm)を用い、キャリアガスHe27slmに、原料ガスC2H2を3slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0158】
<実施例4−5>
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:75mm、長さ1000mm)を用い、キャリアガスHe13.4slmに、原料ガスC2H2を1.6slm混合させた混合ガスを、ノズルを用いて流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0159】
<実施例4−6>
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:95mm、長さ1000mm)を用い、キャリアガスHe27slmに、原料ガスC2H2を3.0slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0160】
下表1に、実施例4−1〜4−6について、供給されたキャリアガス、原料ガス、及び、混合ガスのガス流量、石英管の内径及び断面積、混合ガスの線速度、カーボンナノコイルの合成量(g/h)示す。また、粒子状担体からの触媒の剥離を多、少で示す。なお、混合ガスのガス流量は、表1中、「ガス流量」の「トータル(混合ガス)」の欄に記載された値である。
【0161】
粒子状担体からの触媒の剥離は、反応炉からの排気ガスをエタノール中でバブリングさせて、粒子状担体から剥離した触媒の量を目視観察することにより評価した。エタノール溶液が剥離した触媒により赤く変色した場合を触媒の剥離が多であるとし、エタノール溶液がわずかに赤くなる程度であった場合を触媒の剥離が少であるとした。
【0162】
また、図2に、実施例4−1、4−2及び4−3について、触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により低倍率で観察した結果(図2中、それぞれ、(a)、(b)及び(c))と、高倍率で観察した結果(図2中、それぞれ(d)、(e)及び(f))を示す。
【0163】
また、図3に実施例4−4、4−5及び4−6について、触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により低倍率で観察した結果(図3中、それぞれ、(a)、(b)及び(c))と高倍率で観察した結果(図3中、それぞれ(d)、(e)及び(f))を示す。
【0164】
【表1】
【0165】
表1から判るように、混合ガスの線速度が0.02m・sec−1、0.05m・sec−1、0.07m・sec−1、0.09m・sec−1、0.11m・sec−1、47m・sec−1のときはいずれも、カーボンナノコイルを製造することができることが判る。
【0166】
〔実施例5:触媒担持体が充填された領域の上下の差圧〕
本実施例では触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。
【0167】
<実施例5−1>
実施例1と同様にして触媒担持体を調製した。得られた触媒担持体50gを、実施例1と同様に、反応炉のフィルター上に充填したのち、キャリアガスHeを供給し、そのガス流量を変化させながら、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。
【0168】
測定結果を図4に示す。図4中、縦軸は触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値(B−A)(単位:kPa)を示し、横軸はキャリアガスHeの線速度(図4中「Flow rate」と記載、単位:m・sec−1)を示す。図4に示されるように、上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧は、触媒充填後であって加熱前に1kPa以下であった。
【0169】
<実施例5−2>
実施例1と同様にして触媒担持体を調製した。得られた触媒担持体150gを、実施例2で用いた反応炉のフィルター上に充填したのち、キャリアガスArを供給し、そのガス流量を変化させながら、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。次に、実施例2で用いた反応炉のフィルター上に充填する触媒担持体の量を300gとした場合と450gとした場合とにおいて、同様の測定を行った。
【0170】
測定結果を図5(a)に示す。図5(a)中、縦軸は触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値(B−A)(単位:kPa)を示し、横軸はキャリアガスArの線速度(図5(a)中「Flow rate」と記載、単位:m・sec−1)を示す。図5(a)に示されるように、上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧は、触媒充填後であって加熱前に1kPa以下であった。
【0171】
<実施例5−3>
実施例1と同様にして触媒担持体を調製した。得られた触媒担持体450gを、実施例3で用いた反応炉のフィルター上に充填したのち、キャリアガスArを供給し、そのガス流量を変化させながら、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。次に、実施例3で用いた反応炉のフィルター上に充填する触媒担持体の量を900gとした場合において、同様の測定を行った。
【0172】
測定結果を図5(b)に示す。図5(b)中、縦軸は触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値(B−A)(単位:kPa)を示し、横軸はキャリアガスArの線速度(図5(b)中「Flow rate」と記載単位:m・sec−1)を示す。図5(b)に示されるように、上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧は、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下であった。
【0173】
〔実施例6:反応炉内の温度〕
<実施例6−1>
実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。得られた触媒担持体を用いて、混合ガスのガス流量を15slmとした点以外は実施例2と同様にして、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。このときの、反応炉内の反応領域の温度を測定した。反応炉内の反応領域の温度は、熱電対を炉内のフィルターから10mm上部の位置に挿入して測定した。
【0174】
反応炉内の反応領域の温度は700℃〜770℃の範囲内であり、カーボンナノコイルを好適に製造することができた。
【0175】
<実施例6−2>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)の金属エタノール溶液を用いる代わりに、硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2Oおよび塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:Sn=10:1となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た点以外は実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。
【0176】
得られた触媒担持体を用いて、混合ガスのガス流量を10slm、15slmまたは22.4slmとした点以外は実施例2と同様にして、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。それぞれの混合ガスのガス流量について、実施例6−1と同様にして反応炉内の反応領域の温度を測定した。
【0177】
反応炉内の反応領域の温度は700℃〜770℃の範囲内であり、カーボンナノコイルを好適に製造することができた。
【0178】
〔実施例7:種々の触媒を用いたカーボンナノコイルの製造〕
<実施例7−1>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を用いる代わりに、硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2Oおよび塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:Sn=2:1となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た点以外は実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。
【0179】
上記のようにして得られた触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。
【0180】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(a)に示す。図6の(a)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0181】
<実施例7−2>
触媒のFeとSnとのモル比が、Fe:Sn=10:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−1と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0182】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(b)に示す。図6の(b)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0183】
<実施例7−3>
触媒のFeとSnとのモル比が、Fe:Sn=20:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−1と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0184】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(c)に示す。図6の(c)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0185】
<実施例7−4>
触媒のFeとSnとのモル比が、Fe:Sn=30:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−1と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0186】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(d)に示す。図6の(d)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0187】
<実施例7−5>
実施例1と同様にして触媒担持体を製造した。得られた触媒担持体を用いて、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。
【0188】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(a)に示す。図7の(a)に示すように、カーボンナノコイルの純度は80%より大きく、かつ、カーボン生成物重量は15.7gであった。カーボンナノコイルは非常に良好に製造できた。
【0189】
<実施例7−6>
硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2O、塩化インジウムInCl3および塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.3となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た以外は実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。
【0190】
上記のようにして得られた触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0191】
<実施例7−7>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:1:0.6となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0192】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(b)に示す。図7の(b)に示すように、カーボンナノコイルの純度は80%より大きく、かつ、カーボン生成物重量は13.3gであった。カーボンナノコイルは非常に良好に製造できた。
【0193】
<実施例7−8>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:1:0.8となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0194】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(c)に示す。図7の(c)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0195】
<実施例7−9>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:1:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0196】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(d)に示す。図7の(d)に示すように、カーボンナノコイルを製造することができた。
【0197】
<実施例7−10>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:2:0.4となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0198】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(e)に示す。図7の(e)に示すように、カーボンナノコイルを製造することができた。
【0199】
下表2に、実施例7−5〜実施例7−10の結果を示す。表2では、触媒中に含まれるFeの量をモル数で3とし、SnとInとの量を変化させたときの、カーボンナノコイルの生成状況を示す。表2中、カーボンナノコイルの生成状態が◎であるとは、カーボンナノコイルの合成が非常に良好である場合、すなわち、純度が80%以上、カーボン生成物重量が7.5g以上である場合をいい、カーボンナノコイルの生成状態が○であるとは、カーボンナノコイルの合成が良好である場合、すなわち、純度が80%以上、カーボン生成物重量が4g以上である場合をいい、カーボンナノコイルの生成状態が△であるとは、カーボンナノコイルの合成が可能である場合、すなわち、純度が10%以上、カーボン生成物重量が2g以上である場合をいう。
【0200】
【表2】
【0201】
〔実施例8:カーボンナノコイルの製造への粒子状担体の粒度分布の影響〕
<実施例8−1>
実施例1では、触媒を担持させる粒子状担体として、平均粒子径が78μmのアルミナ粒子を用いた。用いたアルミナ粒子の粒度分布を図8の(a)に示す。図8の(a)に示されるように、用いた粒子状担体は、粒度分布が狭く、粒子径の相対標準偏差が12%以下であった。
【0202】
図8の(b)に、得られたカーボンナノコイルのうち平均的な長さを有するカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。また、表3に、本実施例で得られた平均的なカーボンナノコイルの長さと、カーボン生成物重量を示す。
【0203】
図8の(b)および表3に示されるように、得られた平均的なカーボンナノコイルの長さは、18μmであった。
【0204】
<実施例8−2>
触媒を担持させる粒子状担体として、平均粒子径が49μmで、粒度分布がより大きいアルミナ粒子を用いた以外は実施例1と同様にして触媒担持体を調製し、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。用いたアルミナ粒子の粒度分布を図9の(a)に示す。図9の(a)に示されるように、用いた粒子状担体は、20μm付近と70μm付近に2つの分布を有し、粒子径の相対標準偏差が64%以下であった。
【0205】
図9の(b)に得られたカーボンナノコイルのうち平均的な長さを有するカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。また、表3に、本実施例で得られた平均的なカーボンナノコイルの長さと、カーボン生成物重量を示す。
【0206】
図9の(b)および表3に示されるように、得られた平均的なカーボンナノコイルの長さは、5.7μmであった。
【0207】
【表3】
【0208】
〔実施例9:カーボンナノコイルの製造への触媒担持率の影響〕
<触媒担持体の調製>
種々の触媒担持率を有する触媒担持体を用いて、カーボンナノコイルを製造した。触媒担持率を変化させた触媒担持体の調製は、実施例1の触媒担持体の調製方法において、エタノールに溶解させる金属塩の濃度を変えることにより行った。
【0209】
具体的には、エタノールに溶解させる金属塩の濃度を変えた以外は、実施例1と同様にして、触媒担持率が、0.02重量%、0.12重量%、0.33重量%、および、0.56重量%の触媒担持体を調製した。
【0210】
<実施例9−1>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.02重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0211】
<実施例9−2>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.12重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0212】
<実施例9−3>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.33重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0213】
<実施例9−4>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.56重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0214】
<実施例9−5>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.56重量%の触媒担持体を用い、その反応炉への投入量を150gとした以外は実施例2と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときのこのときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.02m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
<実施例9−6>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.56重量%の触媒担持体を用い、その反応炉への投入量を450gとした以外は実施例3と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.02m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0215】
【表4】
【0216】
表4に示すように、触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1のときには、触媒担持率が0.02重量%、0.12重量%の場合に、反応炉内の固着が生じず、良好にカーボンナノコイルを製造することができた。
【0217】
また、触媒担持体の最小流動化速度が0.02m・sec−1のときには、触媒担持率が0.56重量%の場合でも、反応炉内の固着が生じず、良好にカーボンナノコイルを製造することができた。
【0218】
また、図10に、実施例9−1及び9−2について、当該触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを低倍率で走査型電子顕微鏡により観察した結果(図10中、(a)及び(b))と、高倍率で観察した結果(図10中、(c)及び(d))を示す。なお、図10中(a)(c)は実施例9−1についての観察結果を、(b)(d)は実施例9−2についての観察結果を示す。また、図11に、実施例9−3及び9−4について、当該触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを低倍率で走査型電子顕微鏡により観察した結果(図11中、(a)及び(b))と、高倍率で観察した結果(図11中、(c)及び(d))を示す。なお、図11中(a)(c)は実施例9−3についての観察結果を、(b)(d)は実施例9−4についての観察結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明のカーボンナノコイルの製造方法および製造装置を用いれば、高純度のカーボンナノコイルを従来と比較して短時間に効率よく合成することができ、カーボンナノコイルの大量合成が実現できる。それゆえ、本発明は、カーボンナノコイルの製造工業において利用可能であるのみならず、さらにはこれを組み込んだ各種製品を製造する電子機器製造工業等においても利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
【符号の説明】
【0220】
1 反応炉
2 フィルター
3 触媒担持体
4 反応領域
5 ガス予熱領域
6 加熱装置
7 ガス導入部
8 触媒導入部
100 カーボンナノコイルの製造装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノコイルの製造方法および製造装置に関するものであり、特に高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することを可能とするカーボンナノコイルの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノコイルは、導電性を有しかつコイル形状であることから高性能な電磁波吸収材料としての利用が期待されるとともに、ナノメートルオーダーの大きさであることから、マイクロマシンのスプリングやアクチュエーターの材料としても注目されている。
【0003】
そのため、グラファイト構造からなる線状、曲線状、コイル状等の様々な形状のカーボンナノ構造物が生成する合成工程において、コイル状のカーボン生成物であるカーボンナノコイルの生成率を高めるとともに、工業的な利用を目指して大量合成を可能とするための研究が重ねられている。
【0004】
従来カーボンナノコイルの製造方法としては、基板上に触媒膜を製膜して、反応炉内に静置した状態で触媒を加熱し、原料ガスを供給して基板上にカーボンナノコイルを生成させる基板法(例えば、特許文献1等参照。)や、炭素化合物ガスの中に噴霧ノズルから炭化物触媒微粒子からなる粉体を噴霧してカーボンナノコイルを生成させる方法が報告されている(例えば、特許文献2等参照。)。
【0005】
また、カーボンナノ構造物の中でもカーボンナノチューブについては、流動床法を用いて、流動する触媒粒子にカーボンナノチューブを生成させることが報告されている(例えば、特許文献3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−45637(平成19年2月22日公開)
【特許文献2】国際公開第2004/105940号パンフレット(2004年12月9日公開)
【特許文献3】特表2004−526660(平成16年9月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来知られているカーボンナノコイルの製造方法は、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成するためには未だ十分であるとはいえない。
【0008】
上記基板法では、基板上に製膜された触媒表面にのみカーボンナノコイルが生成するため、カーボンナノコイルを生成させることができる表面積が限られ、カーボンナノコイルの大量合成を行うことは困難である。
【0009】
また、カーボンナノコイルは、カーボンナノチューブに比べて生成速度が顕著に遅いため、カーボンナノコイルを効率よく合成することは、カーボンナノチューブの合成と比較して非常に困難である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるカーボンナノコイルの製造方法および製造装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法は、上記課題を解決するために、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含むことを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【0013】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記反応炉として、上記フィルターが、該反応炉内の空間を上下方向に二分するように設置されている反応炉を用いることが好ましい。
【0014】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記混合ガスの線速度を、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することが好ましい。
【0015】
これにより、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させることができ、カーボンナノコイルの合成を良好に行うことができるというさらなる効果を奏する。
【0016】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することが好ましい。
【0017】
上記差圧が2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することにより、上記触媒担持体を好適に流動および反応させることができるというさらなる効果を奏する。
【0018】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒担持体として、平均粒子径が10μm以上1mm以下の触媒担持体を用いることが好ましい。
【0019】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒担持体として、単分散した触媒担持体を用いることが好ましい。
【0020】
これにより、触媒担持体の粒子同士の衝突が起こりにくいため、より長いカーボンナノコイルを合成することが可能となるというさらなる効果を奏する。
【0021】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1未満となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.6重量%以下の触媒担持体を用いることが好ましい。
【0022】
上記触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1未満となるような量の上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができるというさらなる効果を奏する。
【0023】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1以上となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.3重量%以下の触媒担持体を用いることが好ましい。
【0024】
上記触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1以上となるような量の上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができるというさらなる効果を奏する。
【0025】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含むように設定することが好ましい。
【0026】
これにより、加熱領域を反応領域にあわせて設定することによって、好適に反応温度を制御することができる。というさらなる効果を奏する。
【0027】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域と、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するガス予熱領域を含むように設定することが好ましい。
【0028】
これにより、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを予め加熱することにより、供給されるガスによる反応領域の温度低下を防ぐことができるというさらなる効果を奏する。
【0029】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域の温度を600℃以上850℃以下に制御することが好ましい。
【0030】
反応領域の温度を上記範囲内に制御することにより、カーボンナノコイルを好適に製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域の温度を600℃以上850℃以下で、且つ、ガス予熱領域の温度を300℃以上850℃以下に制御することが好ましい。
【0032】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、FeおよびSnを少なくとも含む触媒を用いることが好ましい。
【0033】
FeおよびSnを少なくとも含む触媒を用いることにより、さらに高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【0034】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30である触媒を用いることが好ましい。
【0035】
FeとSnとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0036】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、さらにInを含む触媒を用いることが好ましい。
【0037】
これにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0038】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であって、かつ、InとSnとのモル比が、0≦In/Sn≦30である触媒を用いることが好ましい。
【0039】
これにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるというさらなる効果を奏する。
【0040】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法では、上記触媒として、酸化物を用いることが好ましい。
【0041】
上記触媒として、酸化物を用いることにより、触媒を空気中で使用してもそれ以上酸化せず、化学的に安定であるので、カーボンナノコイルを安定して合成可能であるというさらなる効果を奏する。
【0042】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造装置は、上記課題を解決するために、内部にフィルターが設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉であって、該フィルター上に触媒担持体が充填される反応領域を有する反応炉と、該反応炉の少なくとも反応領域の外周部に設置された加熱装置と、該反応炉の上記フィルターの下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、フィルターを通して供給するためのガス導入部と、を有することを特徴としている。
【0043】
上記の構成によれば、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係るカーボンナノコイルの製造方法は、以上のように、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含むことを特徴としている構成を備えているので、高純度のカーボンナノコイルを、効率よく合成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置を模式的に示す図である。
【図2】実施例において、触媒上に生成したカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図3】実施例において、触媒上に生成したカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図4】実施例における、混合ガスの線速度と、触媒担持体の上下における差圧との関係を示すグラフである。
【図5】実施例における、混合ガスの線速度と、触媒担持体の上下における差圧との関係を示すグラフである。
【図6】実施例において、触媒の組成を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図7】実施例において、触媒の組成を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図8】実施例において、用いた触媒担持体の粒度分布と生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により観察した結果とを示す図である。
【図9】実施例において、用いた触媒担持体の粒度分布と生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により観察した結果とを示す図である。
【図10】実施例において、触媒担持率を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【図11】実施例において、触媒担持率を変化させたときのカーボンナノコイルの生成を走査型電子顕微鏡により観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一実施形態について図1ないし図11に基づいて説明すると以下の通りである。
【0047】
(I)カーボンナノコイルの製造方法
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法は、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含んでいる。
【0048】
また、本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法は、さらに、上記触媒担持体を調製する触媒担持体調製工程を含んでいてもよく、さらにその他の工程を含んでいてもよい。以下に、本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法を、(I−1)触媒充填工程、(I−2)カーボンナノコイル合成工程、(I−3)触媒担持体調製工程、(I−4)その他の工程の順に説明する。
【0049】
(I−1)触媒充填工程
本工程では、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する。
【0050】
<反応炉に設置されたフィルター>
本発明で用いられる反応炉には、上記触媒担持体をその上に充填できるようにフィルターが設置されている。本発明において、フィルターとは、上記触媒担持体を実質的に通さないが、キャリアガスおよび原料ガスを通すことができるものであればよい。
【0051】
かかるフィルターは、上記触媒担持体をその上に充填でき、かつ、該フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを、該フィルターを通して上記触媒担持体に供給することができるように反応炉に設置されていればよい。かかる構成により、フィルターの上に充填された上記触媒担持体を、フィルターを通る上記混合ガスで流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させることが可能となる。
【0052】
ここで、上記反応炉としては、鉛直方向に延びる筒状の反応炉を用いることがより好ましく、上記フィルターは、該フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスが、該フィルターのみを通って上記触媒担持体に供給されるように設置されていることがより好ましい。
【0053】
好ましい一例としては、例えば、図1に模式的に示すように、上記反応炉として鉛直方向に延びる筒状の反応炉を用い、上記フィルターが、該反応炉内の空間を上下方向に二分するように設置されている構成を好適に用いることができる。かかる構成により、上記触媒担持体をフィルター上で流動させることができるため、反応に必要な熱が持続供給される領域で流動させて、カーボンナノコイルを効率よく製造することができる。また、フィルター上の触媒担持体に対して、フィルターを通して原料ガスおよびキャリアガスが供給されるため、原料ガスおよびキャリアガスの線速度の制御を好適に行うことができる。さらに、上記フィルターは、その面が、鉛直方向に延びる筒状の反応炉の鉛直方向に対して垂直に設置されていることが好ましい。これにより、上記フィルター上に均一に上記触媒担持体を充填することができる。それゆえ、上記触媒担持体を上記原料ガスと効率よく接触させることが可能となり、カーボンナノコイルを効率よく製造することができる。
【0054】
また、上記フィルターは、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給しながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させる工程において、反応炉に安定して固定されていれば、その設置の方法は特に限定されるものではない。かかる設置方法としては、フィルターを直接反応炉に溶接してもよいし、ネジ等により固定してもよいし、反応管に設置された溝にはめ込んで上部から押さえる方法により固定してもよいが、上記フィルター部分以外からは原料ガスおよびキャリアガスが通過しないように、反応炉の側面との間は密封されていることがより好ましい。
【0055】
上記フィルターの材質は、該フィルターが、カーボンナノコイルの合成に悪い影響を及ぼすものでなければ特に限定されるものではない。例えば、石英;金属;A1203等のセラミックス等からなるフィルターを好適に用いることができる。
【0056】
また、上記フィルターの孔径も、上記触媒担持体の粒子径よりも小さく、上記触媒担持体を実質的に通さない範囲であればよい。上記フィルターの孔径は、具体的には、10μm以上500μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましい。上記フィルターの孔径が上記範囲内であることにより、上記触媒担持体を実質的に通さないが、キャリアガスおよび原料ガスを通すことが可能となる。
【0057】
<触媒担持体>
本工程では、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、上記フィルターの上に充填する。
【0058】
かかる触媒担持体を用いることにより、基板上に製膜された触媒表面にのみカーボンナノコイルが生成する基板法と比較して、カーボンナノコイルを生成させることができる表面積を増大することできる。ゆえに、カーボンナノコイルを効率よく合成することができる。また、担体に担持させない触媒粒子をそのまま用いる場合と比較して、粒子状担体が蓄熱機能を有するため、触媒の温度の低下を防止することができる。それゆえ、反応の温度条件を安定させることができ、カーボンナノコイルを効率的に合成することができる。
【0059】
本発明で用いる触媒としては、遷移金属を含む触媒を好適に用いることができる。かかる触媒を用いることにより高純度のカーボンナノコイルを製造することができる。
【0060】
ここで、上記遷移金属は、遷移金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Fe、Co、Ni、Mo、Cu等であることがより好ましい。上記触媒は遷移金属を含む触媒であればよいが、遷移金属を1種類以上含んでいればよい。また、遷移金属を1種類以上含んでいれば、さらに、遷移金属以外の元素を含んでいてもよい。上記触媒としては、例えば、Fe−Sn系触媒、Fe−Sn−In系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−S系触媒、Ni−Cu系触媒、SUS触媒、Co、Ni等を好適に用いることができる。上記触媒は、上記遷移金属および上記元素を含んでいるものであればよいが、上記遷移金属および上記元素は、酸化物、カルボニル誘導体、有機化合物、金属塩等の種々の化合物として含まれうる。
【0061】
中でも、本発明で用いる触媒としては、FeおよびSnを少なくとも含む触媒をより好適に用いることができる。かかる触媒を用いることによりさらに高純度のカーボンナノコイルを製造することができる。
【0062】
ここで、FeおよびSnを少なくとも含む触媒とは、FeとSnとを含んでいればその割合は特に限定されるものではないが、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であることが好ましく、3≦Fe/Sn≦10であることがより好ましく、5≦Fe/Sn≦10であることがさらに好ましい。FeとSnとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができる。
【0063】
また、本発明では、FeとSnとに加えてさらにInを含む触媒も好適に用いることができる。Inを含む場合も、FeとSnとのモル比は、上記範囲であることが好ましく、かつ、InとSnとのモル比は、0≦In/Sn≦30であることが好ましく、1≦In/Sn≦10であることがより好ましく、1.2≦In/Sn≦4であることがさらに好ましい。FeとSnとInとのモル比をかかる範囲とすることにより、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができる。
【0064】
また、高純度のカーボンナノコイルをより効率よく製造することができるという観点から、上記触媒として、(i)Fe:Inのモル比が3:1であり、かつ、SnがFeの10%以上33%以下のモル比である触媒、または(ii)Fe:Snのモル比が7.5:1であり、かつ、InがFeの33%以上66%以下のモル比である触媒を、特に好適に用いることができる。
【0065】
本発明で用いられる触媒は特に好ましくは、Fe−Sn系触媒、すなわち、FeとSnとを含む2成分系触媒、または、Fe−Sn−In系触媒、すなわち、FeとSnとInとを含む3成分系触媒である。しかしながら、上記触媒は、FeおよびSn、または、Fe、SnおよびInの他に、カーボンナノコイルの合成に悪影響を与えない範囲で他の金属を含んでいてもよい。他の金属としては、例えば、Al、Na等を挙げることができる。
【0066】
上記触媒は、上記金属元素を含んでいるものであればよいが、上記金属元素は種々の金属化合物として含まれうる。例えば、Feは、Fe2O3、Fe3O4等の鉄酸化物;カルボン酸鉄、鉄カルボニル、鉄カルボニル誘導体、鉄ニトロシル、鉄ニトロシル誘導体等の鉄有機化合物;硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄等の金属塩等として触媒に含まれうる。また、Inは、例えば、In2O3等のインジウム酸化物;トリメチルインジウム、トリフェニルインジウム、オクチル酸インジウム、カルボン酸インジウム等のインジウム有機化合物;硝酸インジウム、塩化インジウム、硫酸インジウム等の金属塩等として触媒に含まれうる。また、Snは、例えば、SnO、SnO2等のスズ酸化物;トリエチルスズ、テトラフェニルスズ、オクチル酸スズ、カルボン酸スズ等のスズ有機化合物;塩化スズ、硫酸スズ等の金属塩等として触媒に含まれうる。中でも、酸化物を用いることにより、触媒を空気中で使用してもそれ以上酸化せず、化学的に安定であるので、カーボンナノコイルを安定して合成可能であるため、上記金属は酸化物として含まれていることがより好ましい。
【0067】
上記触媒を担持する粒子状担体は、上記触媒を担持することができ、且つ、原料ガスと反応しないものであれば、その材質は特に限定されるものではないが、例えば、アルミナ、セラミックス、ゼオライト、アルミノリン酸塩、シリカアルミノリン酸塩、樹脂、マグネシア、セリア、シリカ、ジルコニア等の粒子を好適に用いることができる。中でも、CVD反応中でも安定であるとの観点から、上記粒子状担体は、アルミナ、シリカ、ゼオライト等のセラミックスであることがより好ましい。
【0068】
上記粒子状担体及び触媒担持体の形状は、粒子状であれば特に限定されるものではなく、例えば、球状、略球状、棒状、立方体状等を挙げることができる。中でも、安定な流動状態を作るという観点から、上記粒子状担体の形状は、球状であることがより好ましい。
【0069】
また、上記粒子状担体及び触媒担持体の平均粒子径は、10μm以上1mm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましく、40μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。上記粒子状担体の平均粒子径が10μm以上であれば、用いるガス線速度範囲内において長時間炉内に担持体が滞在できるため好ましい。また、上記粒子状担体の平均粒子径が1mm以下であれば、安定な流動状態を保持できると同時に、カーボンナノコイルを成長させるための表面積を十分に確保できるため好ましい。
【0070】
なお、本明細書において、平均粒子径とは、以下の方法で決定された値をいう。上記粒子状担体及び触媒担持体について、走査型電子顕微鏡による観察を行い、得られる観察像内のそれぞれの粒子に対して、粒子1つの長軸径、すなわち、粒子の形状の最も寸法の大きい方向の寸法を、顕微鏡写真から計測する。計測した値を平均した値を本発明における平均粒子径とする。
【0071】
また、上記粒子状担体及び触媒担持体としては、単分散した上記粒子状担体及び触媒担持体を用いることがより好ましい。ここで、「単分散した」とは、触媒担持体の粒子径がそろっていれば特に限定されるものではないが、粒子径分布が狭く、粒子径の相対標準偏差が70%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。なお、粒子径の相対標準偏差は、粒子径の標準偏差を観測値の母集団の平均値を基準として百分率で表した値である。
【0072】
単分散した触媒担持体を用いることにより、粒子径分布の大きい触媒担持体を用いる場合より触媒担持体の粒子同士の衝突が起こりにくい。それゆえ、より長いカーボンナノコイルを合成することが可能となる。また、単分散した触媒担持体を用いる場合、フィルターを通って加熱領域外に移動したり、混合ガスにより飛散して加熱領域外に放出されたりするような粒子径の小さい触媒担持体の量が少ないため、カーボンナノコイル合成の歩留まりをよりよくすることができる。
【0073】
また、上記触媒担持体の触媒担持率は、0.01重量%以上0.6重量%以下の範囲であることが好ましい。ここで、上記触媒担持体の触媒担持率とは、触媒担持体全体の重量に対する、触媒の重量の割合をいい、以下の式で表される値である。ここで、触媒の重量は、触媒を担持させる前の粒子状担体の重量と、該粒子状担体に触媒を担持させて得られる触媒担持体の重量との差から求められる。
【0074】
触媒担持率(重量%)=(触媒の重量/触媒担持体全体の重量)×100
上記触媒は、粒子状担体に担持されていればよく、担持の状態も特に限定されるものではない。上記触媒を粒子状担体に担持させる方法としても、特に限定されるものではなく、例えば、後述する液相法、気相法、固相法等により担持させることができる。
【0075】
<触媒担持体の充填>
本工程において、上記触媒担持体を上記フィルターの上に充填する方法は特に限定されるものではなくどのような方法であってもよい。例えば、反応炉に設けられた触媒導入管、触媒導入口等の触媒導入部から導入すればよい。
【0076】
ここで充填する触媒担持体の量は、フィルターを通る上記混合ガスで、当該触媒担持体を流動させることができる量である必要がある。なお本発明において、触媒担持体が流動するとは、触媒担持体が充填されている状態からガス流で空中に押し上げられて対流しているが、充填された触媒担持体の上端部付近で対流し、飛散してしまわない状態をいう。充填する触媒担持体の量を、当該触媒担持体を流動させることができる量に制御する方法として、本発明者らは、ガス流が充填された触媒担持体を通過する前後における圧力差、すなわち、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧に注目した。より具体的には、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値に注目した。そして、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することによって、上記触媒担持体を好適に流動させることができることを見出した。「触媒充填後であって加熱前に」とは、触媒担持体を加熱する前であればよいが、通常は室温下であり、例えば、−5℃以上40℃以下の温度下である。以下、本明細書において、単に「差圧」というときも、触媒充填後であって加熱前の差圧を意味するものとする。
【0077】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧とは、換言すれば、ガス導入部とフィルターとの間の領域と、触媒担持体が充填された領域の上端部と反応炉からガスを排気するガス排気部との間の領域との差圧である。また、ガス導入部とガス排気部との差圧であるということもできる。
【0078】
したがって、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値とは、換言すれば、触媒が充填された状態での上記ガス導入部と上記ガス排気部との間の差圧から、触媒が充填されていない状態での上記ガス導入部と上記ガス排気部との間の差圧を引いた値である。
【0079】
ここで、差圧は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0080】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値は、触媒充填後であって加熱前に、2kPa以下であることが好ましいが、0.2kPa以上1kPa以下であることがより好ましく、0.3kPa以上0.7kPa以下であることがさらに好ましい。
【0081】
従って、例えば、上記触媒担持体を上記フィルターの上に充填する本工程においては、フィルターの下方からキャリアガスを供給しながら上記差圧を測定し、差圧の測定結果に応じて充填する触媒担持体の量を制御しながら、触媒担持体を上記フィルターの上に充填する方法を好適に用いることができる。
【0082】
また、触媒担持体の量を制御しながら触媒担持体を上記フィルターの上に充填する方法は、手動で行ってもよいが、導入する触媒担持体を貯蔵した貯蔵容器を、反応炉に接続して備えておき、差圧計の測定値に応じて、自動的に充填する触媒担持体の量を制御しながら触媒担持体を上記フィルターの上に充填してもよい。
【0083】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することが好ましいが、触媒担持体の最小流動化速度に応じて、所定の触媒担持率を有する上記触媒担持体を用いることがさらに好ましい。例えば、触媒充填後であって加熱前の最小流動化速度が0.03m・sec−1未満となるように上記触媒担持体を充填するときは、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.6重量%以下の触媒担持体を用いることが特に好ましい。上記触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1未満となるように上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、カーボンナノコイル合成工程において反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができる。
【0084】
ここで、最小流動化速度とは、上記反応炉内に充填された上記触媒担持体が流動し始める反応領域における最小のガス線速度をいい、後述する実施例に示す方法を用いて求められる。
【0085】
また、例えば、触媒充填後であって加熱前の触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1以上となるように上記触媒担持体を充填するときは、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.3重量%以下の触媒担持体を用いることが特に好ましい。触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1以上となるように上記触媒担持体を充填するときに、上記触媒担持率の触媒担持体を用いれば、反応炉内での触媒担持体の固着が起こりにくく、より良好にカーボンナノコイルを合成することができる。
【0086】
(I−2)カーボンナノコイル合成工程
本工程では、上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させる。
【0087】
<触媒担持体の加熱>
本工程では上記触媒担持体を加熱しながらカーボンナノコイルを合成する。なお、触媒担持体の加熱は上記触媒と上記原料ガスとを接触させるときに行えばよいが、上記原料ガスの供給前に、上記触媒担持体を予め加熱しておくことがより好ましい。これにより、最初から好適な温度条件下でカーボンナノコイルの合成を行うことができる。それゆえ、カーボンナノコイルを効率的に合成することができる。
【0088】
なお、原料ガスとの反応を防止する観点からは、上記触媒担持体を加熱する前に、反応炉中の酸素を除去しておくことがより好ましい。
【0089】
ここで、上記触媒担持体を加熱する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって上記触媒担持体を加熱する方法を挙げることができる。勿論反応炉内部に備えられた加熱装置による加熱も可能であるが、装置構造および保守面から反応炉の外周部に加熱装置を設置する方がより好ましい。また、上記加熱装置も特に限定されるものはないが例えば抵抗加熱炉、赤外線加熱炉等を好適に用いることができる。
【0090】
なお、上記触媒担持体を加熱するために加熱する反応炉の領域は、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含む領域であることが好ましい。かかる領域を加熱するためには、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域が、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含むようにすればよい。なお、本発明では、フィルターの上に上記触媒担持体を充填し、該フィルター上で該触媒担持体を流動させるので、反応領域を画定しやすい。ゆえに、加熱領域を反応領域にあわせて設定することによって、好適に反応温度を制御することができる。また、触媒担持体を反応領域内で長時間流動させて、熱容量を維持可能とすることにより、反応炉のスペースを有効利用して、カーボンナノコイルを大量に合成することが可能となる。
【0091】
また、本工程では、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含む領域に加えて、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するためのガス予熱領域を加熱領域とすることがより好ましい。かかる領域を加熱するためには、例えば、外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域が、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域と、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するガス予熱領域を含むようにすればよい。フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを予め加熱することにより、供給されるガスによる反応領域の温度低下を防ぐことができる。それゆえ、反応温度を一定に制御することができ、カーボンナノコイルを効率よく合成することができる。
【0092】
なお、上記説明では外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用いる例を挙げて説明しているが、外周部に備えられた加熱装置の代わりに、反応炉内部に備えられた加熱装置を用いてもかまわない。
【0093】
本工程では、上記反応領域の温度は、600℃以上850℃以下で、且つガス予熱領域の温度は、300℃以上850℃以下に制御されることが好ましい。反応領域の温度及びガス予熱領域の温度を上記範囲内に制御することにより、予熱領域での原料ガスの分解と重合を抑制し、反応領域での触媒と原料ガスの反応を促進することが可能となるため、カーボンナノコイルを好適に製造することができる。
【0094】
<混合ガスの供給>
本工程では、上記原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスは、上記フィルターの下方から、フィルターを通して供給する。これにより、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させることができ、フィルター上で流動する上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させることができる。
【0095】
上記混合ガスを、上記フィルターの下方から、フィルターを通して供給する方法は特に限定されるものではなく、例えば、反応炉の底部にガス導入口、ガス導入管等のガス導入部を設け、該ガス導入部から、上記原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを導入すればよい。また流動を最適化するために、フィルター下部におけるガス導入部には、適切な混合ガス供給ノズルを使用することも効果的である。
【0096】
また、上記原料ガスとしては、炭素源となる分子であれば特に限定されるものではないが、例えば、アセチレン、エチレン、メタン、ヘキサン、ベンゼン等の炭化水素;メタノール、エタノール等のアルコール等が用いられる。
【0097】
上記キャリアガスとしては、不活性ガスであれば特に限定されるものではないが、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を好適に用いることができる。
【0098】
また、混合ガスに含まれる原料ガスの量は、混合ガスに対して、2体積%以上50体積%以下であることが好ましく、3体積%以上30体積%以下であることがより好ましく、5体積%以上20体積%以下であることがさらに好ましい。原料ガスの量が、混合ガスに対して、2体積%以上であることにより、カーボンナノコイルを良好に合成することができる。また、原料ガスの量が、混合ガスに対して、50体積%以下であることにより、タール発生などによる原料ガスの浪費を抑えることが可能であるため好ましい。
【0099】
ここで、上記混合ガスの線速度は、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することが好ましく、0.02m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することがより好ましく、0.04m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することがさらに好ましい。なお、線速度とは、気体が単位時間に反応炉を通過する速度をいい、流量とは、単位時間に流れる気体の体積をいう。
【0100】
上記混合ガスの線速度が0.01m・sec−1以上であることにより、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させることができ、カーボンナノコイルの合成を良好に行うことができる。また、上記混合ガスの線速度が50m・sec−1以下であることにより上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を良好に流動させることができる。
【0101】
本工程では、上記原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、上記フィルターの下方から、フィルターを通して供給することにより、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させることができる。
【0102】
<カーボンナノコイルの成長>
本工程では、上記のようにして、フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させる。
【0103】
ここでカーボンナノコイルとは、炭素原子をらせん状に巻回成長させたカーボンコイルであり、そのコイル径が1000nm以下のものであればよい。したがって、らせん状に巻回成長する炭素原子は、内部が中空であるカーボンナノチューブであってもよいし、内部が中実のカーボンファイバーであってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0104】
なお、触媒上に成長するカーボンナノ構造物中には、カーボンナノコイル以外に、少量のらせん状に巻回成長していないカーボンナノ構造物が含まれていてもよいが、得られた全カーボンナノ構造物に対するカーボンナノコイルの割合、すなわち、カーボンナノコイルの純度は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0105】
(I−3)触媒担持体調製工程
触媒担持体の調製工程では上記触媒を上記粒子状担体に担持させる。上記触媒を上記粒子状担体に担持させる方法は、上述した触媒担持体を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。かかる方法としては、液相法、気相法、固相法等を用いることができる。
【0106】
以下に、液相法を用いる場合を、一例として挙げて説明するが、本工程で用いられる触媒担持体の調製方法はこれに限定されるものではない。
【0107】
<触媒溶液の調製>
触媒として用いる遷移金属およびその他の元素の化合物を、溶媒中に溶解させて触媒溶液を得る。かかる化合物としては、特に限定されるものではないが、上記(I−1)で挙げた有機化合物;塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機化合物を用いることができる。また、上記溶媒としては、上記化合物を溶解することができる溶媒を適宜選択すればよい。かかる溶媒としては、特に限定されるものではなく、用いる化合物に応じて適宜選択すればよい。かかる溶媒としては、例えば、アルコール、水等を挙げることができる。
【0108】
<粒子状担体への担持>
上記触媒溶液中に粒子状担体を浸漬する方法、粒子状担体に上記触媒溶液を公知の方法により塗布する方法等を用いて得られた触媒溶液を粒子状担体に付着させる。上記触媒溶液中に粒子状担体を浸漬する方法では、より効率的に触媒溶液を付着させるために、溶液を攪拌したり、超音波処理を行ってもよい。
【0109】
触媒溶液を付着させた粒子状担体は、乾燥後焼成されて所望の触媒を含む触媒担持体が得られる。ここで、焼成温度は、特に限定されるものではないが通常400℃〜1200℃である。また焼成時間は通常0.5時間〜48時間である。酸化雰囲気中で焼成することにより、金属化合物は金属酸化物に変化する。
【0110】
(I−4)その他の工程
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造方法は、さらに、その他の工程として、生成したカーボンナノコイルを回収するカーボンナノコイル回収工程、装置クリーニング工程等を含んでいてもよい。
【0111】
生成したカーボンナノコイルを回収する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を好適に用いることができる。例えば、反応炉を室温まで冷却後、反応炉からカーボンナノコイルが生成している触媒担持体を取り出し、カーボンナノコイルを分離すればよい。触媒担持体からカーボンナノコイルを分離する方法も特に限定されるものではなく、例えば、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウム溶液等に触媒担持体を浸漬し、粒子状担体を溶解してカーボンナノコイルを取り出す方法、適当な溶媒中で超音波を照射することにより、カーボンナノコイルを担持体から剥離する方法等を用いることができる。
【0112】
(II)カーボンナノコイルの製造装置
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。図1は本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置を模式的に示す図である。
【0113】
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置100は、図1に示すように、鉛直方向に延びる筒状の反応炉1の内部にフィルター2が設けられており、反応炉の外周部に加熱装置6が反応炉1の鉛直長手方向に沿って設置されている。反応炉1は、石英管からなり、内部に石英製平板状のフィルター2が、反応炉1内の空間を上下方向に二分するように、溶接により固定されている。フィルター2は、複数の孔を有し、その上に充填された触媒担持体3を通さないが、下方から供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを通すようになっている。そして、フィルター2の上に触媒担持体3を充填することにより、触媒担持体3を保持し、フィルター2上で流動させることができるようになっている。これにより、フィルターの上に充填された上記触媒担持体を、フィルターを通る上記混合ガスで流動させながら、上記触媒と下方から供給される原料ガスとを接触させることが可能となる。このようにして、本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置100に、上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域4を設定することができる。
【0114】
ここで反応炉1は石英管に限られるものではなく、他の材質からできているものであってもよい。他の材質としては、例えば、金属、セラミックス等を挙げることができる。
【0115】
また、フィルター2も、石英製に限られるものではなく、原料ガスと反応しない材料であれば何でもよい。フィルター2としては、石英の他に例えば、金属、セラミックス、グラファイト等を好適に用いることができる。
【0116】
また、フィルター2の、反応炉1への設置方法も溶接に限られるものではなく、フィルター2を固定することができれば如何なる方法であってもよい。フィルターを設置する他の方法としては、例えば、ネジ等により固定する方法、反応管に設置された溝にはめ込んで上部から押さえる方法等を用いることができる。
【0117】
また、フィルター2の形状も平板状に限られるものではなく、その上に触媒担持体3を充填することができる形状であれば、かご状であってもよい。
【0118】
フィルター2は、反応炉1内の空間を上下方向に二分するように設置されていれば、その位置は特に限定されるものではない。フィルター2の上方に反応領域を確保し、触媒担持体3に供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを予熱するためのガス予熱領域を確保するという観点からは、反応炉1の底部から、反応炉1の長手方向の長さの20%〜80%の位置に設置することが好ましく、30%〜70%の位置に設置することがより好ましく、40%〜60%の位置に設置することがさらに好ましい。
【0119】
フィルター2の孔径(ポアサイズ)は、触媒担持体3の粒子径に応じて適宜選択すればよいが、通常10μm以上500μm以下である。
【0120】
反応炉1には、触媒導入部8を通じて、触媒担持体3がフィルター2の上に充填される。触媒担持体3は、粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる。この触媒担持体3については、上記(I−1)で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0121】
加熱装置6は、反応炉1の反応領域4に該当する部分と、反応領域4の直下に位置し、反応領域に供給される原料ガスおよび/またはキャリアガスを予熱するガス予熱領域5に該当する部分との外周に配置されている。これにより、フィルター2の上に充填された触媒担持体3を、加熱装置6によって予熱することができるとともに、上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを反応させる間に反応領域を加熱することができる。なお、加熱装置6は、反応炉1の反応領域4に該当する部分の外周のみに配置されていてもよい。
【0122】
反応炉1には、ガス導入部7を通じて、原料ガスおよび/またはキャリアガスが導入され、フィルター2を通して、フィルター2の上に充填された触媒担持体3に供給される。
【0123】
フィルター2を通して、フィルター2の上に充填された触媒担持体3に供給された原料ガスおよび/またはキャリアガスは、図示しないガス排気部から、反応炉の外に排出される。
【0124】
触媒導入部8は、金属製触媒導入管からなり、また、ガス導入部7は金属製ガス導入管からなる。しかし、触媒導入部8およびガス導入部7は、金属製に限られるものではなく、石英、セラミックス等の他の材質からなるものであってもよい。
【0125】
また、反応炉1は、反応炉1内の触媒担持体3が充填された領域の上下の差圧、または、触媒担持体3が充填されていない状態でフィルター2の上下の差圧を測定するために、図示しない差圧計を備えていてもよい。差圧計を用いて、触媒担持体3の充填時に、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することにより、カーボンナノコイルを良好に合成することができる。
【0126】
本発明にかかるカーボンナノコイルの製造装置では、さらにフィルター2の上に充填する触媒担持体3を貯蔵した貯蔵容器が、反応炉1に接続して備えられていてもよい。また、差圧計の測定値、または、測定値から計算された、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値に応じて、自動的に充填する触媒担持体3の量を制御しながら触媒担持体3を上記フィルターの上に充填するための制御装置が備えられていてもよい。
【実施例】
【0127】
本発明について、実施例、比較例および図2〜12に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
【0128】
なお、実施例および比較例における(a)カーボンナノコイルの純度、(b)カーボンナノコイルの合成量、(c)カーボン生成物重量および(d)触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値、(e)最小流動化速度の測定法は次の通りである。
【0129】
(a)カーボンナノコイルの純度
合成後の触媒担持体を、走査型電子顕微鏡で、1000〜2000倍の倍率にて観察し、視野の中に存在するカーボンナノ構造物の数と、カーボンナノ構造物中のカーボンナノコイルの数とを数えた。これを10視野について行い、観察した全視野中の全カーボンナノ構造物の数に対する、カーボンナノコイルの数の割合をカーボンナノコイルの純度とした。
【0130】
(b)カーボンナノコイルの合成量
カーボンナノコイルが成長した触媒担持体を、有機溶媒中で超音波印加して、カーボンナノコイルを触媒担持体から剥離した。この触媒担持体と剥離したカーボンナノコイルとを含む有機溶媒を、篩に通して、篩を通らない触媒担持体と、篩を通るカーボンナノコイルが分散した有機溶媒とを分離した。カーボンナノコイルが分散した有機溶媒を回収し、吸引ろ過することによりカーボンナノコイルを取り出した。その後、電子天秤を用いてカーボンナノコイルの重量を測定した。測定したカーボンナノコイルの重量を、原料ガスの投入時間でわることによって、カーボンナノコイルの合成量(単位:g/h)とした。
【0131】
(c)カーボン生成物重量
カーボンナノコイル合成後の触媒担持体と生成したカーボンナノ構造物との全重量から、反応前の触媒担持体の重量を引いた値をカーボン生成物重量とした。重量の測定には電子天秤を用いた。
【0132】
(d)触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値
ガス導入部を分岐して差圧計の高圧側に導入し、ガス排気部を分岐して差圧計の低圧側に導入した。キャリアガスを供給しながら、差圧計から出力される電気信号をデータロガーに取り込むことによって、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧Bを測定した。さらに触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧Aを、差圧Bを測定したときと同じキャリアガスを同じガス流量で供給しながら別途測定し、B−Aの値を差圧と定義した。
【0133】
(e)最小流動化速度
上記反応炉内に流通させるキャリアガスのガス流量を変化させることにより、反応領域におけるキャリアガスの線速度を変化させ、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧Bを各線速度に対して測定した。上記差圧Bの測定と同様に、別途、触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧Aを、各線速度に対して測定して、それぞれの線速度に対応するB−Aの値を算出した。このようにして算出したB−Aの値を各線速度に対してプロットしたグラフにおいて、B−Aの値が線速度の増加に伴い直線的に増加する部分と、B−Aの値が線速度の増加に伴い、一定値を示す部分との交点における線速度の値を最小流動化速度とした。
【0134】
〔実施例1:カーボンナノコイルの製造〕
本実施例では、触媒担持体を反応炉の内部に設置されたフィルター上に充填して加熱し、該フィルターの下方より原料ガスとキャリアガスとを含む混合ガスを供給して、触媒担持体に流動状態を発生させ、CVD反応によりカーボンナノコイルを製造した。
【0135】
<触媒担持体の調製>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を、触媒組成比が、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように調製して、触媒溶液とした。
【0136】
具体的には、硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2O、塩化インジウムInCl3および塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.4となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た。
【0137】
得られた触媒溶液に粒子状担体としてのアルミナ粒子(平均粒子径:78μm)250gを添加した。得られたアルミナ粒子と触媒溶液との混合物を攪拌し、アルミナ粒子表面と触媒溶液とを接触させた。
【0138】
その後、触媒溶液が付着したアルミナ粒子を取り出し、耐熱容器中で、800℃で約1時間加熱し、室温まで冷却した。
【0139】
冷却後、触媒担持体を粒子状態に解して触媒担持体を得た。
【0140】
<カーボンナノコイルの製造>
得られた触媒担持体を、反応炉内に導入して加熱し、原料ガスと混合させてCVD反応によりカーボンナノコイルを製造した。
【0141】
具体的には、反応炉として円筒状の石英管(内径:26mm、長さ1000mm、容積:約0.53L)を用い、この石英管を鉛直に配置し、当該石英管の長手方向中央部(端から500mmの位置)に、石英製のフィルター(ポアサイズ:40μm)を設置した。そして、この石英管の長手方向中央部400mmの領域、すなわち、石英管の両端からそれぞれ300mmの領域を除く中央部を反応領域およびガス予熱領域とし、該反応領域およびガス予熱領域の外周部を抵抗加熱炉で覆った。この反応炉は、上記フィルターの下方から原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給して、フィルター上に充填した触媒担持体を流動させることができる流動床炉である。
【0142】
上記反応炉のフィルター上に、上記触媒担持体50g(触媒担持体上下の差圧は0.7kPaであった)を充填し、フィルター下部となる反応炉下方のガス導入口より、Heを1.2slmで約15分間流通させ、フィルター上の触媒担持体を流動させて反応炉内の酸素を除去した。なお、ここで、触媒担持体上下の差圧が0.7kPaであったとは、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が0.7kPaであったことを意味する。
【0143】
酸素除去終了後、Heを1.2slmで流通させた状態で、700℃まで昇温した後、700℃で保持して触媒担持体を加熱した。700℃までの昇温に要した時間と保持時間との合計時間は30分であった。
【0144】
その後、700℃に加熱装置を加熱保持した状態で、キャリアガスHe1.2slmに、原料ガスC2H2を0.3slm混合させた混合ガスを、上記ガス導入口より240分間流通させてCVDを実施し、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0145】
カーボンナノコイルの合成量は2g/4時間であった。また、カーボンナノコイルの純度は80%であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、後述する比較例1に示すように、容積35Lのより大規模な反応炉を用いてもカーボンナノコイルの合成量が1g/4時間であった従来法と比べ、容積約0.53Lの反応炉で2g/4時間の合成量を確保することができる。すなわち、従来法の約1.5%の容積で、2倍の量のカーボンナノコイルを合成することができる。
【0146】
〔実施例2:カーボンナノコイルの製造〕
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:75mm、長さ1000mm、容積:約4.4L)を用いた点、上記触媒担持体150g(触媒担持体上下の差圧は0.3kPaであった)を充填した点、キャリアガスとしてArを用い、キャリアガスAr13.4slmに、原料ガスC2H2を1.6slm混合させた混合ガスを、ノズルを用いて流通させた点(混合ガスの線速度:47m・sec−1(2.8×105cm/min))以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。
【0147】
なお、ここで、触媒担持体上下の差圧が0.3kPaであったとは、上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が0.3kPaであったことを意味する。
【0148】
カーボンナノコイルの合成量は8g/4時間であった。また、カーボンナノコイルの純度は80%であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、後述する比較例1に示すように、容積35Lのより大規模な反応炉を用いてもカーボンナノコイルの合成量が1g/4時間であった従来法と比べ、容積約4.4Lの反応炉で8g/4時間の合成量を確保することができる。すなわち、従来法の約13%の容積で、8倍の量のカーボンナノコイルを合成することができる。
【0149】
〔実施例3:カーボンナノコイルの製造〕
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:95mm、長さ1000mm、容積:約7.1L)を用いた点、上記触媒担持体450g(上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値は0.65kPaであった)を充填した点、キャリアガスとしてArを用い、キャリアガスAr27slmに、原料ガスC2H2を3.0slm混合させた混合ガスを流通させた点(混合ガスの線速度:0.07m・sec−1)以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。
【0150】
カーボンナノコイルの合成量は29.2g/2時間であった。また、カーボンナノコイルの純度は80%であった。このように、本発明の製造方法を用いることにより、後述する比較例1に示すように、容積35Lのより大規模な反応炉を用いてもカーボンナノコイルの合成量が1g/4時間であった従来法と比べ、容積約7.1Lの反応炉で29.2g/2時間の合成量を確保することができる。すなわち、従来法の約20%の容積で、29.2倍の量のカーボンナノコイルを合成することができる。
【0151】
〔比較例1:従来の基板法によるカーボンナノコイルの製造〕
触媒を耐熱基板面上に塗布して、触媒塗布基板を作製した。作製した触媒塗布基板を反応管内に設置して加熱し、原料ガスを供給して触媒塗布基板表面の触媒と原料ガスを接触させ、CVD反応により触媒塗布基板表面にカーボンナノコイルを製造した。
【0152】
具体的には、容積35Lの反応管の約半分の容積を700℃に保持して、反応完了までに、不活性ガス2500L、原料ガス110Lを使用して合成を実施した。その結果、カーボンナノコイルの合成量は1g/4時間であった。
【0153】
〔実施例4:カーボンナノコイルの合成量に対する混合ガスの線速度の影響〕
カーボンナノコイルの合成量に対する混合ガスの線速度の影響を調べるため、混合ガスの線速度を変化させて、カーボンナノコイルを合成した。
【0154】
<実施例4−1>
実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。得られた触媒担持体100gを投入した点、キャリアガスHe0.675slmに、原料ガスC2H2を0.075slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例1と同様にして、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0155】
<実施例4−2>
キャリアガスHe1.35slmに、原料ガスC2H2を0.15slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0156】
<実施例4−3>
キャリアガスHe2.7slmに、原料ガスC2H2を0.3slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0157】
<実施例4−4>
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:75mm、長さ1000mm)を用い、キャリアガスHe27slmに、原料ガスC2H2を3slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0158】
<実施例4−5>
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:75mm、長さ1000mm)を用い、キャリアガスHe13.4slmに、原料ガスC2H2を1.6slm混合させた混合ガスを、ノズルを用いて流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0159】
<実施例4−6>
反応炉として内径がより大きい円筒状の石英管(内径:95mm、長さ1000mm)を用い、キャリアガスHe27slmに、原料ガスC2H2を3.0slm混合させた混合ガスを流通させた点以外は実施例4−1と同様にして触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。
【0160】
下表1に、実施例4−1〜4−6について、供給されたキャリアガス、原料ガス、及び、混合ガスのガス流量、石英管の内径及び断面積、混合ガスの線速度、カーボンナノコイルの合成量(g/h)示す。また、粒子状担体からの触媒の剥離を多、少で示す。なお、混合ガスのガス流量は、表1中、「ガス流量」の「トータル(混合ガス)」の欄に記載された値である。
【0161】
粒子状担体からの触媒の剥離は、反応炉からの排気ガスをエタノール中でバブリングさせて、粒子状担体から剥離した触媒の量を目視観察することにより評価した。エタノール溶液が剥離した触媒により赤く変色した場合を触媒の剥離が多であるとし、エタノール溶液がわずかに赤くなる程度であった場合を触媒の剥離が少であるとした。
【0162】
また、図2に、実施例4−1、4−2及び4−3について、触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により低倍率で観察した結果(図2中、それぞれ、(a)、(b)及び(c))と、高倍率で観察した結果(図2中、それぞれ(d)、(e)及び(f))を示す。
【0163】
また、図3に実施例4−4、4−5及び4−6について、触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを走査型電子顕微鏡により低倍率で観察した結果(図3中、それぞれ、(a)、(b)及び(c))と高倍率で観察した結果(図3中、それぞれ(d)、(e)及び(f))を示す。
【0164】
【表1】
【0165】
表1から判るように、混合ガスの線速度が0.02m・sec−1、0.05m・sec−1、0.07m・sec−1、0.09m・sec−1、0.11m・sec−1、47m・sec−1のときはいずれも、カーボンナノコイルを製造することができることが判る。
【0166】
〔実施例5:触媒担持体が充填された領域の上下の差圧〕
本実施例では触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。
【0167】
<実施例5−1>
実施例1と同様にして触媒担持体を調製した。得られた触媒担持体50gを、実施例1と同様に、反応炉のフィルター上に充填したのち、キャリアガスHeを供給し、そのガス流量を変化させながら、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。
【0168】
測定結果を図4に示す。図4中、縦軸は触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値(B−A)(単位:kPa)を示し、横軸はキャリアガスHeの線速度(図4中「Flow rate」と記載、単位:m・sec−1)を示す。図4に示されるように、上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧は、触媒充填後であって加熱前に1kPa以下であった。
【0169】
<実施例5−2>
実施例1と同様にして触媒担持体を調製した。得られた触媒担持体150gを、実施例2で用いた反応炉のフィルター上に充填したのち、キャリアガスArを供給し、そのガス流量を変化させながら、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。次に、実施例2で用いた反応炉のフィルター上に充填する触媒担持体の量を300gとした場合と450gとした場合とにおいて、同様の測定を行った。
【0170】
測定結果を図5(a)に示す。図5(a)中、縦軸は触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値(B−A)(単位:kPa)を示し、横軸はキャリアガスArの線速度(図5(a)中「Flow rate」と記載、単位:m・sec−1)を示す。図5(a)に示されるように、上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧は、触媒充填後であって加熱前に1kPa以下であった。
【0171】
<実施例5−3>
実施例1と同様にして触媒担持体を調製した。得られた触媒担持体450gを、実施例3で用いた反応炉のフィルター上に充填したのち、キャリアガスArを供給し、そのガス流量を変化させながら、触媒担持体が充填された領域の上下の差圧を測定した。次に、実施例3で用いた反応炉のフィルター上に充填する触媒担持体の量を900gとした場合において、同様の測定を行った。
【0172】
測定結果を図5(b)に示す。図5(b)中、縦軸は触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値(B−A)(単位:kPa)を示し、横軸はキャリアガスArの線速度(図5(b)中「Flow rate」と記載単位:m・sec−1)を示す。図5(b)に示されるように、上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧は、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下であった。
【0173】
〔実施例6:反応炉内の温度〕
<実施例6−1>
実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。得られた触媒担持体を用いて、混合ガスのガス流量を15slmとした点以外は実施例2と同様にして、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。このときの、反応炉内の反応領域の温度を測定した。反応炉内の反応領域の温度は、熱電対を炉内のフィルターから10mm上部の位置に挿入して測定した。
【0174】
反応炉内の反応領域の温度は700℃〜770℃の範囲内であり、カーボンナノコイルを好適に製造することができた。
【0175】
<実施例6−2>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)の金属エタノール溶液を用いる代わりに、硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2Oおよび塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:Sn=10:1となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た点以外は実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。
【0176】
得られた触媒担持体を用いて、混合ガスのガス流量を10slm、15slmまたは22.4slmとした点以外は実施例2と同様にして、触媒上にカーボンナノコイルを成長させた。それぞれの混合ガスのガス流量について、実施例6−1と同様にして反応炉内の反応領域の温度を測定した。
【0177】
反応炉内の反応領域の温度は700℃〜770℃の範囲内であり、カーボンナノコイルを好適に製造することができた。
【0178】
〔実施例7:種々の触媒を用いたカーボンナノコイルの製造〕
<実施例7−1>
鉄(Fe)、インジウム(In)およびスズ(Sn)を含むエタノール溶液を用いる代わりに、硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2Oおよび塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:Sn=2:1となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た点以外は実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。
【0179】
上記のようにして得られた触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。
【0180】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(a)に示す。図6の(a)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0181】
<実施例7−2>
触媒のFeとSnとのモル比が、Fe:Sn=10:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−1と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0182】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(b)に示す。図6の(b)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0183】
<実施例7−3>
触媒のFeとSnとのモル比が、Fe:Sn=20:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−1と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0184】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(c)に示す。図6の(c)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0185】
<実施例7−4>
触媒のFeとSnとのモル比が、Fe:Sn=30:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−1と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0186】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図6の(d)に示す。図6の(d)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0187】
<実施例7−5>
実施例1と同様にして触媒担持体を製造した。得られた触媒担持体を用いて、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。
【0188】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(a)に示す。図7の(a)に示すように、カーボンナノコイルの純度は80%より大きく、かつ、カーボン生成物重量は15.7gであった。カーボンナノコイルは非常に良好に製造できた。
【0189】
<実施例7−6>
硝酸鉄Fe(NO3)3・9H2O、塩化インジウムInCl3および塩化スズSnCl4・5H2Oを、モル比で、Fe:In:Sn=3:1:0.3となるように、攪拌しながらエタノール400mlに溶解し、400gの触媒溶液を得た以外は実施例1と同様にして、触媒担持体を製造した。
【0190】
上記のようにして得られた触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0191】
<実施例7−7>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:1:0.6となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0192】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(b)に示す。図7の(b)に示すように、カーボンナノコイルの純度は80%より大きく、かつ、カーボン生成物重量は13.3gであった。カーボンナノコイルは非常に良好に製造できた。
【0193】
<実施例7−8>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:1:0.8となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0194】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(c)に示す。図7の(c)に示すように、カーボンナノコイルは良好に製造できた。
【0195】
<実施例7−9>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:1:1となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0196】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(d)に示す。図7の(d)に示すように、カーボンナノコイルを製造することができた。
【0197】
<実施例7−10>
触媒のFeとInとSnとのモル比が、Fe:In:Sn=3:2:0.4となるように触媒溶液を調製した以外は、実施例7−6と同様にして触媒担持体を製造しカーボンナノコイルを製造した。
【0198】
触媒上に生成したカーボンナノコイルを、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)により観察した結果を、図7の(e)に示す。図7の(e)に示すように、カーボンナノコイルを製造することができた。
【0199】
下表2に、実施例7−5〜実施例7−10の結果を示す。表2では、触媒中に含まれるFeの量をモル数で3とし、SnとInとの量を変化させたときの、カーボンナノコイルの生成状況を示す。表2中、カーボンナノコイルの生成状態が◎であるとは、カーボンナノコイルの合成が非常に良好である場合、すなわち、純度が80%以上、カーボン生成物重量が7.5g以上である場合をいい、カーボンナノコイルの生成状態が○であるとは、カーボンナノコイルの合成が良好である場合、すなわち、純度が80%以上、カーボン生成物重量が4g以上である場合をいい、カーボンナノコイルの生成状態が△であるとは、カーボンナノコイルの合成が可能である場合、すなわち、純度が10%以上、カーボン生成物重量が2g以上である場合をいう。
【0200】
【表2】
【0201】
〔実施例8:カーボンナノコイルの製造への粒子状担体の粒度分布の影響〕
<実施例8−1>
実施例1では、触媒を担持させる粒子状担体として、平均粒子径が78μmのアルミナ粒子を用いた。用いたアルミナ粒子の粒度分布を図8の(a)に示す。図8の(a)に示されるように、用いた粒子状担体は、粒度分布が狭く、粒子径の相対標準偏差が12%以下であった。
【0202】
図8の(b)に、得られたカーボンナノコイルのうち平均的な長さを有するカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。また、表3に、本実施例で得られた平均的なカーボンナノコイルの長さと、カーボン生成物重量を示す。
【0203】
図8の(b)および表3に示されるように、得られた平均的なカーボンナノコイルの長さは、18μmであった。
【0204】
<実施例8−2>
触媒を担持させる粒子状担体として、平均粒子径が49μmで、粒度分布がより大きいアルミナ粒子を用いた以外は実施例1と同様にして触媒担持体を調製し、実施例1と同様にしてカーボンナノコイルを製造した。用いたアルミナ粒子の粒度分布を図9の(a)に示す。図9の(a)に示されるように、用いた粒子状担体は、20μm付近と70μm付近に2つの分布を有し、粒子径の相対標準偏差が64%以下であった。
【0205】
図9の(b)に得られたカーボンナノコイルのうち平均的な長さを有するカーボンナノコイルを、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す。また、表3に、本実施例で得られた平均的なカーボンナノコイルの長さと、カーボン生成物重量を示す。
【0206】
図9の(b)および表3に示されるように、得られた平均的なカーボンナノコイルの長さは、5.7μmであった。
【0207】
【表3】
【0208】
〔実施例9:カーボンナノコイルの製造への触媒担持率の影響〕
<触媒担持体の調製>
種々の触媒担持率を有する触媒担持体を用いて、カーボンナノコイルを製造した。触媒担持率を変化させた触媒担持体の調製は、実施例1の触媒担持体の調製方法において、エタノールに溶解させる金属塩の濃度を変えることにより行った。
【0209】
具体的には、エタノールに溶解させる金属塩の濃度を変えた以外は、実施例1と同様にして、触媒担持率が、0.02重量%、0.12重量%、0.33重量%、および、0.56重量%の触媒担持体を調製した。
【0210】
<実施例9−1>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.02重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0211】
<実施例9−2>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.12重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0212】
<実施例9−3>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.33重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0213】
<実施例9−4>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.56重量%の触媒担持体を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.03m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0214】
<実施例9−5>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.56重量%の触媒担持体を用い、その反応炉への投入量を150gとした以外は実施例2と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときのこのときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.02m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
<実施例9−6>
上記のようにして調製した、触媒担持率0.56重量%の触媒担持体を用い、その反応炉への投入量を450gとした以外は実施例3と同様にして、カーボンナノコイルを製造した。このときの触媒担持体の最小流動化速度は、0.02m・sec−1であった。下表4に、カーボンナノコイルの生成の状態を示す。
【0215】
【表4】
【0216】
表4に示すように、触媒担持体の最小流動化速度が0.03m・sec−1のときには、触媒担持率が0.02重量%、0.12重量%の場合に、反応炉内の固着が生じず、良好にカーボンナノコイルを製造することができた。
【0217】
また、触媒担持体の最小流動化速度が0.02m・sec−1のときには、触媒担持率が0.56重量%の場合でも、反応炉内の固着が生じず、良好にカーボンナノコイルを製造することができた。
【0218】
また、図10に、実施例9−1及び9−2について、当該触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを低倍率で走査型電子顕微鏡により観察した結果(図10中、(a)及び(b))と、高倍率で観察した結果(図10中、(c)及び(d))を示す。なお、図10中(a)(c)は実施例9−1についての観察結果を、(b)(d)は実施例9−2についての観察結果を示す。また、図11に、実施例9−3及び9−4について、当該触媒担持体の触媒上に生成したカーボンナノコイルを低倍率で走査型電子顕微鏡により観察した結果(図11中、(a)及び(b))と、高倍率で観察した結果(図11中、(c)及び(d))を示す。なお、図11中(a)(c)は実施例9−3についての観察結果を、(b)(d)は実施例9−4についての観察結果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明のカーボンナノコイルの製造方法および製造装置を用いれば、高純度のカーボンナノコイルを従来と比較して短時間に効率よく合成することができ、カーボンナノコイルの大量合成が実現できる。それゆえ、本発明は、カーボンナノコイルの製造工業において利用可能であるのみならず、さらにはこれを組み込んだ各種製品を製造する電子機器製造工業等においても利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
【符号の説明】
【0220】
1 反応炉
2 フィルター
3 触媒担持体
4 反応領域
5 ガス予熱領域
6 加熱装置
7 ガス導入部
8 触媒導入部
100 カーボンナノコイルの製造装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、
上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含むことを特徴とする、カーボンナノコイルの製造方法。
【請求項2】
上記反応炉として、上記フィルターが、該反応炉内の空間を上下方向に二分するように設置されている反応炉を用いることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項3】
上記混合ガスの線速度を、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項4】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項5】
上記触媒担持体として、平均粒子径が10μm以上1mm以下の触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項6】
上記触媒担持体として、単分散した触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項7】
触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1未満となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.6重量%以下の触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項8】
触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1以上となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.3重量%以下の触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項9】
外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含むように設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項10】
外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域と、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するガス予熱領域を含むように設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項11】
上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域の温度を600℃以上850℃以下で、且つ、ガス予熱領域の温度を300℃以上850℃以下に制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項12】
上記触媒として、FeおよびSnを少なくとも含む触媒を用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項13】
上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30である触媒を用いることを特徴とする請求項12に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項14】
上記触媒として、さらにInを含む触媒を用いることを特徴とする請求項12または13に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項15】
上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であって、かつ、InとSnとのモル比が、0≦In/Sn≦30である触媒を用いることを特徴とする請求項14に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項16】
上記触媒として、酸化物を用いることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項17】
内部にフィルターが設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉であって、該フィルター上に、触媒担持体が充填される反応領域を有する反応炉と、
該反応炉の少なくとも反応領域の外周部に設置された加熱装置と、
該反応炉の上記フィルターの下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、フィルターを通して供給するためのガス導入部と、
を有することを特徴とするカーボンナノコイルの製造装置。
【請求項1】
粒子状担体に、遷移金属を含む触媒を担持してなる触媒担持体を、鉛直方向に延びる筒状の反応炉に設置されたフィルターの上に充填する触媒充填工程と、
上記触媒担持体の加熱下で、上記フィルターの下方から原料ガスおよびキャリアガスを含む混合ガスを、フィルターを通して供給することによって、フィルターを通る上記混合ガスで上記触媒担持体を流動させながら、上記触媒と上記原料ガスとを接触させて、触媒上にカーボンナノコイルを成長させるカーボンナノコイル合成工程とを含むことを特徴とする、カーボンナノコイルの製造方法。
【請求項2】
上記反応炉として、上記フィルターが、該反応炉内の空間を上下方向に二分するように設置されている反応炉を用いることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項3】
上記混合ガスの線速度を、0.01m・sec−1以上50m・sec−1以下に制御することを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項4】
上記反応炉内の上記触媒担持体が充填された領域の上下の差圧から触媒が充填されていない状態での上記反応炉内に設置されたフィルターの上下の差圧を引いた値が、触媒充填後であって加熱前に2kPa以下となるように、上記触媒担持体を充填することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項5】
上記触媒担持体として、平均粒子径が10μm以上1mm以下の触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項6】
上記触媒担持体として、単分散した触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項7】
触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1未満となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.6重量%以下の触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項8】
触媒担持体の最小流動化速度が、触媒充填後であって加熱前に0.03m・sec−1以上となるように、上記触媒担持体を充填し、且つ、上記触媒担持体として触媒担持率が0.01重量%以上0.3重量%以下の触媒担持体を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項9】
外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域を含むように設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項10】
外周部に加熱装置が備えられた反応炉を用い、該加熱装置によって加熱される加熱領域を、上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域と、フィルターを通過する前のキャリアガスおよび/または原料ガスを加熱するガス予熱領域を含むように設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項11】
上記フィルターの上に充填された上記触媒担持体を流動させて上記触媒と上記原料ガスとを接触させる反応領域の温度を600℃以上850℃以下で、且つ、ガス予熱領域の温度を300℃以上850℃以下に制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項12】
上記触媒として、FeおよびSnを少なくとも含む触媒を用いることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項13】
上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30である触媒を用いることを特徴とする請求項12に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項14】
上記触媒として、さらにInを含む触媒を用いることを特徴とする請求項12または13に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項15】
上記触媒として、FeとSnとのモル比が、2≦Fe/Sn≦30であって、かつ、InとSnとのモル比が、0≦In/Sn≦30である触媒を用いることを特徴とする請求項14に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項16】
上記触媒として、酸化物を用いることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のカーボンナノコイルの製造方法。
【請求項17】
内部にフィルターが設置された、鉛直方向に延びる筒状の反応炉であって、該フィルター上に、触媒担持体が充填される反応領域を有する反応炉と、
該反応炉の少なくとも反応領域の外周部に設置された加熱装置と、
該反応炉の上記フィルターの下方から原料ガスおよび/またはキャリアガスを、フィルターを通して供給するためのガス導入部と、
を有することを特徴とするカーボンナノコイルの製造装置。
【図1】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−100518(P2010−100518A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215044(P2009−215044)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、大阪府地域結集型共同研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、大阪府地域結集型共同研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】
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