説明

カーボンナノチューブを放射性標識化する方法、放射性標識化カーボンナノチューブ、およびその応用

本発明は、本発明は、カーボンナノチューブを放射性標識化する方法、該方法を実行することにより得ることができる放射性標識化カーボンナノチューブ、およびその応用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを放射性標識化する方法、該方法を実行することにより得ることができる放射性標識化カーボンナノチューブ、およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は1991年に発見され(Ijima S.、Nature、1991、354、54〜56頁)、それ以来、特にその機械的特性(高い機械的強度(Treacy M.M.J.ら、Nature、1996、381、678〜680頁)、電子的特性(導体または半導体特性(Wildoer J.W.G.ら、Nature、1998、391、59〜62頁;Odom T.W.ら、Nature、1998年、391、62〜64頁)および熱的特性のために、非常に関心を集めてきた。
【0003】
高収率を得ることを可能とするEbbesen T.W.ら(Nature、1992、358、220〜222頁)の方法を含め、CNTを調製する方法がいくつか説明されている。
【0004】
CNTを精製する方法もまた説明されており(Hiura H.ら、Adv.Mater.、1995、7、275〜276頁;Bonard J.M.ら、Mater.、1997、9、827〜831頁およびDuesberg G.S.ら、Chem.Commun.、1998、3、435〜436頁)、これらの様々な方法により、所望量のCNTを得ることが可能である。具体的には、CNTを調製する現在の方法は、ある特定の数の炭素系不純物だけでなく金属不純物もまた生成し、これは精製ステップにより除去する必要がある。粗カーボンナノチューブを精製するこれらのステップの間、芳香族カルボン酸で例示され得るカルボン酸が、前記CNTの表面、主にその端部に形成される(表面カルボン酸基を生成するカーボンナノチューブの工業的精製ステップの図表示である添付図1を参照)。しかしながら、ほとんどの「未加工」のCNTは、この形態で販売および使用されている。
【0005】
使用される技術および条件に依存して、直径、長さ、さらに炭素原子の連結により異なる様々な構造のCNT、特に、Carbon Nanotechnologies Inc.(CNI)社からHiPco(登録商標)の商品名で販売されているもの等の小さい直径のCNT、または「多層」構造(多層カーボンナノチューブ:MWCNT)もしくは「単層」構造(単層カーボンナノチューブ:SWCNT)もしくはグラファイト構造を有するものを調製することができる。
【0006】
さらに、これらの様々な種類のカーボンナノチューブは、完全もしくは部分的に酸化された形態または全く酸化されていない形態となり得る。
【0007】
したがって、化学的観点からは、CNTは、炭素原子のみから構成され、また百万個の原子までを含有し得るポリマーである。炭素化学の法則に従い、CNTの炭素原子は、堅牢な共有結合により連結し、各原子は厳密に3つの隣接原子を有する。したがってCNTは、いかなる長さのものであっても、その端部において遊離した化学結合が残らないように該端部で閉じている。一般に、CNTの直径は通常約1nmから30nmであり、その長さは数マイクロメートルに達し得る。
【0008】
物理的観点からは、CNTは、単一方向に伸びる炭素結晶として定義することができ、その反復単位は螺旋の対称性を有する(Yakobson B.I.ら、American Scientist、1997、85、324〜337頁)。
【0009】
数年の間、CNTは、生物学的分野(ナノメディシン)であるか新材料の開発であるかにかかわらず、電界放出、エネルギー貯蔵、分子エレクトロニクスまたは原子間力顕微鏡を含む多くの用途が見出されている。これらの用途は、最も一般的には基礎的研究の分野に属するが、工業的研究にもまた属する。これに関して、いくつかの企業はすでにCNTの大量生成を開始している。
【0010】
しかしながら、未加工CNTは、水溶液に可溶化するのが困難である。したがって、多くの生物学的用途では、それらに水溶性およびある特定の生物学的または物理的特性を与えるために、未加工CNTの表面の官能化が必要である。そのような用途には、特に、DNA分子バイオセンサとして、タンパク質輸送体およびバイオセンサとして、またはイオンチャンネルブロッカーとしてのCNTの使用が含まれる。CNTの化学的官能化の方法は、従来技術において、特に国際出願公開第97/32571号パンフレットにおいて説明されている。
【0011】
したがって、これらの所見はすべて、診断または治療分子の投与手段としてのCNTの使用を推進する傾向にある。しかしながら、このように著しく急発展していく中、環境および健康に対するCNTの影響が問題となる。いくつかの生体外(in vitro)試験では、CNTの吸入が肺に対し大きなリスクを示し得ることが示唆されている。同様に、生体内(in vivo)試験では、CNT(SWCNTおよびMWCNT)は、肺に達すると線維症にまで発達し得る重大な炎症反応をもたらす可能性を有することが実証されている。したがって、様々な著者が、生体内でのCNTの生体適合性の問題を提起しており、CNTにより誘発され得る肺毒性および皮膚刺激性および細胞毒性の両方に関連した様々な得られた結果を検討している(Smart S.K.ら、Carbon、2006、44、1034〜1047頁およびMonteiro−Riviere N.A.ら、Carbon、2006、44、1070〜1078頁)。さらに、研究によると、CNTの官能化、およびそれに従う水溶性に関する、ひいてはこれらの材料の生体適合性に関する改良が、逆に生体外において観察される毒性プロファイルを著しく増加させることが報告されている(Sayes C.M.ら、Nano Lett.、2004、4、1881〜1887頁およびSayes C.M.ら、Toxicol.Lett.、2006、161、135〜142頁)。
【0012】
しかしながら、CNTの毒物学的および薬理学的なプロファイルを決定するための系統的な生体内試験は行われておらず、現在までに行われた試験は、特に様々な種の実験動物における様々な種類のCNTの使用に起因して、概略的な、時には矛盾した、また比較的不確定な結果となっている。したがって、生体内におけるCNTの動向、器官によるその排除もしくは結合、その代謝またはその毒性そのものに関して、依然として回答すべき問題が数多くある。
【0013】
これらの問題に対処するために、フルオロフォアの使用、および特にCNTの同位体炭素標識化が最適なツールとなっている。生体外における細胞透過の試験が、フルオロフォアで標識化されたCNTを使用して行われた(Pantarotto D.ら、Chem.Commun.、2004、16〜17頁)。より最近では、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)/111In錯体で表面標識化されたCNTの生体内分布の第1の試験が、同グループによりマウスに対して行われた(Singh R.ら、PNAS、2006、103(9)、3357〜3362頁)。この試験では、この特定の場合において、水に可溶で生体適合性であるそのように標識化されたSWCNTおよびMWCNTが、官能化されていない同じCNTと比較して改善された毒性プロファイルを有することが示されている。
【0014】
それにもかかわらず、これらの標識化方法は、未加工CNT構造の改変を引き起こし、これは必ずしも許容されるわけではない。これは、CNTの表面にグラフトされた放射性錯体または追加的なフルオロフォアの存在が、CNTの固有の特性を弱め、ひいては生体外および生体内両方におけるCNTの動向を改変する可能性があるためである。さらに、CNTの表面におけるこれらの比較的阻害的な錯体の存在は、関心のある試薬によるその後のCNTの官能化を制限またはさらには阻止する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際出願公開第97/32571号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Ijima S.、Nature、1991、354、54〜56頁
【非特許文献2】Treacy M.M.J.ら、Nature、1996、381、678〜680頁
【非特許文献3】Wildoer J.W.G.ら、Nature、1998、391、59〜62頁
【非特許文献4】Odom T.W.ら、Nature、1998年、391、62〜64頁
【非特許文献5】Ebbesen T.W.ら(Nature、1992、358、220〜222頁
【非特許文献6】Hiura H.ら、Adv.Mater.、1995、7、275〜276頁
【非特許文献7】Bonard J.M.ら、Mater.、1997、9、827〜831頁
【非特許文献8】Duesberg G.S.ら、Chem.Commun.、1998、3、435〜436頁
【非特許文献9】Yakobson B.I.ら、American Scientist、1997、85、324〜337頁
【非特許文献10】Smart S.K.ら、Carbon、2006、44、1034〜1047頁
【非特許文献11】Monteiro−Riviere N.A.ら、Carbon、2006、44、1070〜1078頁
【非特許文献12】Sayes C.M.ら、Nano Lett.、2004、4、1881〜1887頁
【非特許文献13】Sayes C.M.ら、Toxicol.Lett.、2006、161、135〜142頁
【非特許文献14】Pantarotto D.ら、Chem.Commun.、2004、16〜17頁
【非特許文献15】Singh R.ら、PNAS、2006、103(9)、3357〜3362頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明者らは、生体外および生体内におけるCNTの毒物学的および薬理学的なプロファイルの特定を可能とするために、想定される用途によるこれらのCNTのその後の官能化の可能性を制限することなく、CNTの構造の改変を引き起こさないカーボンナノチューブを標識化する新規な方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明による方法は、共有結合の、したがって安定なCNTの放射性標識化に基づくものであり、その表面の構造的改変を引き起こすことなく、未加工CNTの表面に存在する1つまたは複数のカルボキシル基の炭素12(12C)原子を、炭素13(13C)または炭素14(14C)原子で置換することである。
【0019】
したがって、本発明の第1の主題は、1つまたは複数の表面カルボキシル基を備えるカーボンナノチューブを放射性標識化する方法であって、少なくとも以下のステップ:
a)1つまたは複数の炭素13標識化または炭素14標識化ニトリル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒中、パラジウム触媒の存在下で前記カーボンナノチューブを炭素13放射性標識化または炭素14放射性標識化シアン化物と反応させることである、表面カルボキシル基を放射性標識化ニトリル基で置換するステップと、
b)酸官能性を保持する炭素原子が炭素13または炭素14原子である1つまたは複数のカルボキシル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒または水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物中、上記ステップa)において得られたカーボンナノチューブを酸または塩基と反応させることである、ニトリル基(複数可)を加水分解するステップとを含むことを特徴とする方法である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
そのような方法は、以下の反応スキームA:
【0021】
【化1】

【0022】
により表すことができ、
ハニカム状のメッシュは、カーボンナノチューブの構造を形成する炭素ポリマーの一部を表し、
Cは、炭素13または炭素14原子を表し、
このスキームにおいては図示および例示の便宜上の理由から単一の表面基が示されているが、本発明による方法は、明らかに、1つまたは複数の表面カルボキシル基を備えるカーボンナノチューブにも適用されることが理解される。
【0023】
本発明による放射性標識化の方法は、CNTの構造的改変をも引き起こさないという利点を有する。さらに、放射能はCNT自体に直接的に関連し、その表面上にグラフトされた試薬または錯体に関連しない。したがって、CNTの固有の特性は不変のままであり、特有の経時的安定性を維持する。さらに、本発明の方法により得られる放射性標識化CNTの改変されていない表面は、放射性標識化CNT上に特有の生物学的および/または酵素的特性を付与するための、その後の官能基のあらゆるグラフトを可能とする。
【0024】
本発明による方法の第1の具体的実施形態によれば、置換ステップa)は、好ましくはパラジウム(II)(PdII)塩から選択されるパラジウム触媒の存在下での表面カルボキシル基のシアン化脱炭酸により、単一ステップで行われる。
【0025】
前記実施形態によれば、PdII塩は、例えば、トリフルオロ酢酸パラジウム(Pd(OCOCF)、硫酸パラジウム(PdSO)および硝酸パラジウム(Pd(NO)から選択される。
【0026】
前記第1の実施形態の好ましい実施形態によれば、溶媒a)は、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)および水、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0027】
前記第1の実施形態の特に好ましい実施形態によれば、有機溶媒a)は、DMF単独または約100/0から80/20の範囲の体積比、さらにより好ましくは約95/5の体積比のDMF/DMSO混合物である。
【0028】
この第1の実施形態の別の好ましい実施形態によれば、シアン化脱炭酸ステップa)は、約25℃から150℃の温度、さらにより好ましくは約120℃の温度で行われる。
【0029】
この第1の実施形態のさらに別の好ましい実施形態によれば、シアン化脱炭酸ステップa)は、特に炭酸銀、硝酸銀および銀トリフラート、または炭酸銅、硝酸銅および銅トリフラートから選択され得る銀塩または銅塩の存在下で行われる。
【0030】
本発明によれば、シアン化脱炭酸ステップa)の期間は、約1時間から12時間の範囲となり得る。さらにより好ましくは、ステップa)の期間は、約3時間である。
【0031】
本発明による方法の第2の具体的実施形態によれば、置換ステップa)は、以下の3つのサブステップ:
a1)1つまたは複数の酸ハロゲン化物基を表面に備えるカーボンナノチューブが得られるように、必要に応じて溶媒の存在下で、前記カーボンナノチューブをハロゲン化剤と反応させることである、前記表面カルボキシル基のヒドロキシル基をハロゲン化物基で置換するサブステップと、
a2)1つまたは複数の炭素13標識化または炭素14標識化ケトニトリル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒中、上記ステップa1)において得られたカーボンナノチューブを炭素13放射性標識化または炭素14放射性標識化シアン化物と反応させることである、前記酸ハロゲン化物基のハロゲン原子を放射性標識化ニトリル基で置換する第2のサブステップと、
a3)1つまたは複数の炭素13標識化または炭素14標識化ニトリル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒中、パラジウム(Pd)塩および錯体から選択される触媒の存在下で上記ステップa2)において得られた放射性標識化カーボンナノチューブを反応させることである、前記ケトニトリル基を脱カルボニル化する第3のサブステップとを含む。
【0032】
この第2の実施形態によれば、サブステップa1)において使用されるハロゲン化剤は、好ましくは、二塩化チオニル(SOCl)、塩化オキサリル(ClCOCOCl)、三塩化リン(PCl)および五塩化リン(PCl)から選択される。この調製方法の具体的実施形態によれば、サブステップa1)において使用されるハロゲン化剤が二塩化チオニルである場合、それはまた有機溶媒としても機能し、追加的な有機溶媒の使用が不必要となることに留意されたい。
【0033】
さらに、この第2の実施形態によれば、サブステップa3)において使用されるパラジウム塩および錯体は、好ましくは、ホスフィン型の配位子の存在下でのPdIIの塩から選択される。これらの塩は、その場でパラジウムを生成する。そのような塩のうち、より具体的には、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)を挙げることができ、また酢酸パラジウムII/トリフェニルホスフィン(Pd(OAc)/TPP)、酢酸パラジウムII/トリブチルホスフィン(Pd(OAc)/TBP)および酢酸パラジウムII/トリシクロヘキシルホスフィン(Pd(OAc)/PCy)の対の中からも挙げることができる。
【0034】
サブステップa1)、a2)およびa3)を行うために使用することができる有機溶媒(複数可)は、好ましくは、トルエン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジオキサン、ならびにこれらの混合物から選択される。
【0035】
この第2の実施形態の特に好ましい実施形態によれば、ステップa3)は、ケトニトリル基からニトリル基への変換の収率の目覚ましい改善を可能とする求核性化合物の存在下で行われる。
【0036】
本発明によれば、「求核性化合物」という用語は、正電荷を帯びた種により引き寄せられ、非結合ダブレットを有する任意の化合物を意味するように意図される。
【0037】
この場合、求核性化合物は、好ましくは、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)およびシアン化カリウム(KCN)から選択される。
【0038】
この第2の実施形態の別の好ましい実施形態によれば、ステップa1)は、25℃から120℃の温度、さらにより好ましくは約70℃の温度で行われ、ステップa2)は、25℃から120℃の温度、さらにより好ましくは約25℃の温度で行われ、ステップa3)は、50℃から120℃の温度、さらにより好ましくは約110℃の温度で行われる。
【0039】
本発明による方法の実行の有利な実施形態によれば、サブステップa2)は、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(IBu)およびヨウ化カリウム等のヨウ化物塩の存在下で行われる。
【0040】
本発明の目的において、「シアン化物」という用語は、シアン化物自体だけでなくその誘導体をも意味するように意図される。
【0041】
本発明によれば、放射性標識化シアン化物は、好ましくは、シアン化物、シアン化トリメチルシリル、金属シアン化物、例えばシアン化カリウム(KCN)、シアン化第1銅(CuCN)、シアン化銀(AgCN)およびシアン化亜鉛(Zn(CN))等(これらのシアン化物において、窒素原子との三重結合に関与する炭素原子は炭素13または炭素14原子であることが理解される)、ならびに下記式(I):
【0042】
【化2】

【0043】
(式中:
およびRは、同一または異なっていてもよく、C〜Cアルキル基を表し、または、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になってヘキサン環を形成し、
Cは、炭素13または炭素14原子を表す)のシアン化物誘導体から選択される。
【0044】
上記式(I)の化合物として、具体的には、炭素13標識化または炭素14標識化アセトンシアノヒドリンおよび炭素13標識化または炭素14標識化シクロヘキサノンシアノヒドリンを挙げることができる。
【0045】
表面ニトリル基を加水分解するステップb)は、酸性条件下(酸加水分解)またはアルカリ性条件下(アルカリ加水分解)で行うことができる。
【0046】
酸加水分解である場合、ステップb)は、具体的には、硫酸、塩酸、ギ酸、臭化水素酸、および酢酸(三フッ化ホウ素の存在下で)から選択することができる酸の存在下で行われる。
【0047】
アルカリ加水分解である場合、ステップb)は、具体的には、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)および水酸化テトラブチルアンモニウム等の強塩基から選択することができる塩基の存在下で行われる。これらの塩基は、好ましくは、水溶液または水−アルコール溶液として、例えば水とエタノールとの混合物中の溶液として使用される。
【0048】
本発明による標識化方法の好ましい実施形態によれば、カーボンナノチューブは、1回または複数回の洗浄および/または超音波照射ステップに供され、後者は、方法の様々なステップおよびサブステップの間、ならびに/またはニトリル基を加水分解するステップb)の最後に行われる。
【0049】
洗浄操作は、好ましくは、水、酸性水溶液、例えば塩酸溶液(具体的には5%)等、塩基性水溶液、例えばアンモニア水溶液等、ならびに有機溶媒、例えばDMSO、エーテル、トルエンおよびエタノール等の低級アルコールから選択される溶媒を用いて行われる。
【0050】
本発明による方法の特に有利な実施形態によれば、各洗浄ステップは、溶媒の添加、続いて超音波照射によるナノチューブの分散、次いで遠心分離、続いて存在し得る不純物を取り除くためのピペットによる上澄みの除去からなる。
【0051】
調製後、このようにして得られた放射性標識化ナノチューブは、好ましくはロータリーエバポレーターを使用して乾燥される。
【0052】
本発明の主題はまた、本発明による方法を実行することにより得ることができる放射性標識化カーボンナノチューブであって、酸官能性を保持する炭素原子が炭素13または炭素14原子である1つまたは複数の表面カルボキシル基を備えることを特徴とする、放射性標識化カーボンナノチューブである。
【0053】
本発明によれば、これらの放射性標識化ナノチューブは、一般に、約0.8nmから15nmの範囲の直径を有する。さらに、これらのナノチューブの長さは、約0.1μmから10μmの範囲となり得る。
【0054】
本発明によるナノチューブの構造は、例えば、単層構造(SWCNT)または多層構造(MWCNT)であってもよい。
【0055】
本発明による放射性標識化CNTは、その未加工状態で放射性標識化されるという利点を有し、したがって後に所望の用途に従い必要に応じて官能化され得る。
【0056】
したがって、本発明の一変形例によれば、放射性標識化ナノチューブは、共有結合により放射性標識化カルボキシル基の酸素原子の少なくとも1つに結合した1つまたは複数の官能性反応物質をその表面に備える。
【0057】
本発明による放射性標識化ナノチューブ上にグラフトされ得る官能性反応物質として、具体的には、ジアゾニウム、ニトレン、カルベンおよびピロリジンを挙げることができる。
【0058】
したがって、本発明による放射性標識化CNTは、特にナノチューブが官能化された場合、その表面にグラフトされた反応物質の種類に依存して様々な用途に使用することができる。
【0059】
したがって、本発明の主題はまた、特に、
生体内におけるカーボンナノチューブの代謝および/または生体内分布の試験(薬学的プロファイルの決定)、
生体内におけるナノチューブの細胞透過の試験、
環境におけるカーボンナノチューブの動向の試験、
関心のある分子の調査(標的化診断)、のための診断ツールとしての、上に定義された放射性標識化カーボンナノチューブの使用であり、
官能化カーボンナノチューブの放射性標識化の利点の図表示である添付図2に例示されている。
【0060】
上記構成に加え、本発明はまた、本発明の主題である方法による放射性標識化ナノチューブの調製の実施例、様々なカーボンナノチューブ構造に対する放射性標識化の有効性、および添付の図面に関する以下の追加的な説明から生じるその他の構成も含む。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】表面カルボキシル基を生成するカーボンナノチューブの工業的精製ステップの図表示である。
【図2】官能化カーボンナノチューブの放射性標識化の利点の図表示である。
【図3】実施例2の標識化方法、および実施例4において行われた対照ステップの図表示である。
【図4】実施例2の方法によるナノチューブの13C標識化前後に得られた単層ナノチューブの固体(13C)NMRスペクトルを示した図である。
【図5】本発明の放射性標識化カーボンナノチューブの用途の図表示である。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
炭素14放射性標識化カーボンナノチューブの調製
Carbon Solution Inc.社からP3−SWNTの商品名で販売されている表面カルボキシル基を備える未加工単層カーボンナノチューブ(SWCNT)20mg、炭素14標識化シアン化カリウム(K14CN)1.08mg、炭酸銀AgCO14mgおよびPd(COCF1.1mgを、DMF/DMSO混合物(体積比95/5)10mlに添加した。濃縮器を取り付けた丸底フラスコ内で、反応混合物を120℃の温度で3時間撹拌した。
【0063】
冷却後、ロータリーエバポレータにより反応媒体を濃縮した。次いでナノチューブを、水(10×10ml)、水で5%まで希釈した塩酸(8×10ml)、DMSO(9×10ml)、次いでエーテル(5×10ml)で洗浄した。各洗浄ステップ間で、ナノチューブを超音波照射により再分散させ、次いで遠心分離し、存在し得る不純物を取り除くために遠心分離後の上澄みをピペットを用いて除去した。
【0064】
次いで、このようにして得られたカーボンナノチューブを、水中40%の水酸化カリウム4mlと無水エタノール4mlとの混合物中で撹拌しながら18時間加熱した。次いで混合物を4N塩酸でpH5まで酸性化した。
【0065】
加水分解の終わりに、カーボンナノチューブを水(1×10ml)で洗浄し、次いでロータリーエバポレータ内で乾燥させた。放射性標識化ナノチューブ(CNT−1)9.2mgを得、その導入された比放射能を、Perkin Elmer Life Science社からWallac(登録商標)1409の商品名で販売されているカウンタを使用して測定した。
【0066】
また、同じ方法を使用して、Carbon Nanotechnologies Inc.社からHiPco(登録商標)の商品名で販売されている小さい直径(0.8nmから1.3nm)のカーボンナノチューブ10mgを放射性標識化した。放射性標識化ナノチューブ(CNT−2)6mgを得、その導入された比放射能もまたWallac(登録商標)1409カウンタを使用して測定した。
【0067】
CNT−1およびCNT−2ナノチューブの比放射能を、以下の表1に記載する。
【0068】
【表1】

【0069】
[実施例2]
炭素14放射性標識化カーボンナノチューブの調製
Carbon Solution Inc.社からP3−SWNTの商品名で販売されている表面カルボキシル基を備える未加工単層カーボンナノチューブ(SWCNT)50mgを塩化チオニル10mlに添加し、次いで混合物を70℃の温度で18時間撹拌した。
【0070】
次いで反応媒体をロータリーエバポレータにより完全に蒸発させ、次いでアセトニトリル20ml、炭素14標識化シアン化第1銅(Cu14CN)45mg、およびヨウ化ナトリウム(NaI)150mgを添加した。混合物を周囲温度で18時間撹拌した。次いでアセトン(2×10ml)で洗浄することによりヨウ化ナトリウムを抽出し、次いで反応媒体を再び完全に蒸発させた。
【0071】
次いで、このようにして得られたカーボンナノチューブをトルエン20mlに入れ、これにPd(PPh213mgおよびフッ化セシウム(CsF)30mgを添加した。反応混合物を110℃の温度で5時間撹拌した。
【0072】
トルエン(2×10ml)、10%のアンモニア水溶液(2×10ml)、水(2×10ml)およびエタノール(2×10ml)を用いて、一連の洗浄−超音波照射−ピペット除去を実施例1で上述したように行った。
【0073】
次いで、このようにして得られた放射性標識化カーボンナノチューブを、水中40%の水酸化カリウム4mlと無水エタノール4mlとの混合物中で撹拌しながら18時間加熱した。次いで混合物を4N塩酸でpH5まで酸性化した。
【0074】
加水分解の終わりに、カーボンナノチューブを水(2×10ml)で洗浄し、次いでロータリーエバポレータ内で乾燥させた。放射性標識化ナノチューブ(CNT−3)19.0mgを得、その導入された比放射能を、Ludlum社製カウンタ、モデル2200を使用して測定した。
【0075】
また、比較のために、本実施例において上述した方法に従い、ただしフッ化セシウムを使用せずに、同じP3−SWNTカーボンナノチューブ50mgを放射性標識化した(CNT−4)。CNT−4の比放射能もまた、Ludlum社製カウンタ、モデル2200を使用して測定した。
【0076】
また、同じ方法を使用して、Arkema社からMWCNT−Graphistrength(登録商標)の商品名で販売されている、表面カルボキシル基を備える未加工多層カーボンナノチューブ(MWCNT)50mgを(フッ化セシウムの存在下で)放射性標識化した。放射性標識化ナノチューブ(CNT−5)13mgを得、その導入された比放射能もまた、Ludlum社製カウンタ、モデル2200を使用して測定した。
【0077】
CNT−3、CNT−4およびCNT5ナノチューブの比放射能を、以下の表2に記載する。
【0078】
【表2】

【0079】
これらの結果はすべて、まず、使用するカーボンナノチューブの種類がいかなるものであっても、本発明による放射性標識化方法により、良好な放射能導入結果をもって放射性標識化カーボンナノチューブを調製することができることを示している。
【0080】
また、これらの結果は、方法がその第2の変形例(サブステップa1)からa3)の実行)に従い行われた場合、標識化効率が改善されること(CNT−3からCNT−5と比較した、CNT−1およびCNT−2に対して測定された放射能の比較)、およびサブステップa3)の実行の間の求核性化合物の存在により、放射性標識化の効率をさらに改善することができること(CNT−3およびCNT−4に対し測定された比放射能の比較)を示している。
【0081】
しかしながら、上記実施例において、炭素14標識化反応性シアン化物の使用は制限的ではないことを明確に理解されたい。炭素13による放射性標識化を同じ条件下で行ったが、その場合も比放射能に関して非常に良好な結果を得ることができた。
[実施例3]
方法の効率および一般性
本発明の標識化方法を、いくつかの種類のカーボンナノチューブに適用した。以下の表3に示す得られた結果は、最も効率的な方法が「脱カルボニル化」法であることを裏付けている。前記方法は、単層であるか多層であるかにかかわらず、任意の種類のナノチューブに、また様々なサイズ(直径、長さ)のナノチューブに適用可能である。
【0082】
【化3】

【0083】
【表3】

【0084】
したがって、本方法の利点は、i)方法の一般性、ii)標識化に関連する構造的改変が存在しないこと、iii)(例えばペプチド結合による)ナノチューブの官能化に使用されることが多いカルボン酸の維持である。
[実施例4]
実施例2の方法の検証を可能とする解析要素を提供するために試験を行った。これらの試験は、基本的に単層ナノチューブ(Carbon Solution Inc.社製標準P3−SWCNT)に対し行った。実施例2の方法を用いたが、該方法は、ナノチューブの表面、特に端部に存在するカルボン酸を使用する。標識化に必要な各ステップの後に、ナノチューブに関連した放射能を測定した。この測定は、放射性標識化効率の指標を提供する(図3)。したがって、約5%のカルボン酸官能性を備えるナノチューブの場合、1000個の12C原子あたり約1個の14C原子が導入され、これは存在するカルボン酸の約2%の標識化に対応することが留意される。標識化に必要なある特定の化学成分(SOClおよびPd)を用いずに行った対照実験は、標識化されていないことを明確に示している。この所見は、共有結合的標識化の存在を裏付けている。最後に、フッ化物イオン(CsF)を用いずに行った対照実験は、より低い標識化効率を示しており、これは、この化学添加物の有益な(ただし必須ではない)役割を裏付けている。
【0085】
また、追加的な分析を行うことができるようにするために、同じバッチのナノチューブに対して13C標識化を行った。表面元素分析(XPS、図3)では、14C/12C比と同じ桁の窒素/炭素比が得られている。窒素は、通常はナノチューブに存在しない原子であり、したがって、前記窒素は本発明の標識化方法によってのみ、また14Cと同程度の効率で導入された可能性がある。
【0086】
最後に、13C標識化前後の同じバッチのナノチューブに対し固体NMR試験を行った。以前に得られた14C標識化結果によれば、方法の最後でカルボン酸の約2%が標識化されている。13C標識化後、カルボン酸の化学シフト(λ=175ppm)に対応するNMR信号の増加が実際に観測される(図4)。
[実施例5]
14C放射性標識化ナノチューブの生体内試験への使用
標識化効率が、毒物学における用途において放射性標識化ナノチューブの生体内でのモニタリングを可能とすることを確認するために、げっ歯類におけるこれらのナノ粒子の生体内分布の試験を行った。2種類の汚染方法(経鼻的点滴および静脈注射)、ならびに2種類の画像化方法(全身および器官の一群)を使用した。
【0087】
これらの試験は、図5に要約されるが、本発明の方法によるカーボンナノチューブの標識化が、それらの生体内での動向の試験に全く差し支えないことを明確に示している。使用した撮像装置により1mmあたり100pgという微量のナノチューブを検出することができるため、実施例2の方法により行われたようなカーボンナノチューブの炭素14放射性標識化のレベルは、極めて顕著な検出閾値を得ることを可能とする。
【0088】
標的器官および排泄物に対して行った補足的な光学顕微鏡試験は、観測される放射能が確かにカーボンナノチューブの存在に確かに関連していることを裏付けている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の表面カルボキシル基を備えるカーボンナノチューブを放射性標識化する方法であって、少なくとも以下のステップ:
a)1つまたは複数の炭素13標識化または炭素14標識化ニトリル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒中、パラジウム触媒の存在下で前記カーボンナノチューブを炭素13放射性標識化または炭素14放射性標識化シアン化物と反応させることである、表面カルボキシル基を放射性標識化ニトリル基で置換するステップと、
b)酸官能性を保持する炭素原子が炭素13または炭素14原子である1つまたは複数のカルボキシル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒または水性有機混合物中、上記ステップa)において得られたカーボンナノチューブを酸または塩基と反応させることである、ニトリル基(複数可)を加水分解するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
置換ステップa)が、パラジウム触媒の存在下での表面カルボキシル基のシアン化脱炭酸により単一ステップで行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パラジウム触媒が、パラジウム(II)塩から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
パラジウム(II)塩が、トリフルオロ酢酸パラジウム、硫酸パラジウムおよび硝酸パラジウムから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)および水、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)の有機溶媒が、DMF単独または100/0から80/20の範囲の体積比のDMF/DMSO混合物であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
シアン化脱炭酸ステップa)が、25℃から150℃の温度で行われることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シアン化脱炭酸ステップa)が、銀塩または銅塩の存在下で行われることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
銀塩または銅塩が、炭酸銀、硝酸銀および銀トリフラート、または炭酸銅、硝酸銅および銅トリフラートから選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
シアン化脱炭酸ステップa)の期間が、1時間から12時間の範囲であることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
置換ステップa)が、以下の3つのサブステップ:
a1)1つまたは複数の酸ハロゲン化物基を表面に備えるカーボンナノチューブが得られるように、必要に応じて有機溶媒の存在下で、前記カーボンナノチューブをハロゲン化剤と反応させることである、前記表面カルボキシル基のヒドロキシル基をハロゲン化物基で置換するサブステップと、
a2)1つまたは複数の炭素13標識化または炭素14標識化ケトニトリル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒中、上記ステップa1)において得られたカーボンナノチューブを炭素13放射性標識化または炭素14放射性標識化シアン化物と反応させることである、前記酸ハロゲン化物基のハロゲン原子を放射性標識化ニトリル基で置換する第2のサブステップと、
a3)1つまたは複数の炭素13標識化または炭素14標識化ニトリル基を表面に備える放射性標識化カーボンナノチューブが得られるように、有機溶媒中、パラジウム(Pd)塩および錯体から選択される触媒の存在下で上記ステップa2)において得られた放射性標識化カーボンナノチューブを反応させることである、前記ケトニトリル基を脱カルボニル化する第3のサブステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
サブステップa1)において使用されるハロゲン化剤が、二塩化チオニル(SOCl)、塩化オキサリル(ClCOCOCl)、三塩化リン(PCl)および五塩化リン(PCl)から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
サブステップa3)において使用されるパラジウム塩および錯体が、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)から、ならびに酢酸パラジウムII/トリフェニルホスフィン(Pd(OAc)/TPP)、酢酸パラジウムII/トリブチルホスフィン(Pd(OAc)/TBP)および酢酸パラジウムII/トリシクロヘキシルホスフィン(Pd(OAc)/PCy)の対から選択されることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
サブステップa1)、a2)およびa3)を実行するために使用され得る有機溶媒(複数可)が、トルエン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルホルムアミドおよびジオキサン、ならびにこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップa3)が、求核性化合物の存在下で行われることを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
求核性化合物が、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)およびシアン化カリウム(KCN)から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ステップa1)が25℃から120℃の温度で行われ、ステップa2)が25℃から120℃の温度で行われ、ステップa3)が50℃から120℃の温度で行われることを特徴とする、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
サブステップa2)が、ヨウ化物塩の存在下で行われることを特徴とする、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ヨウ化物塩が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウムおよびヨウ化カリウムから選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
放射性標識化シアン化物が、シアン化物、シアン化トリメチルシリル、金属シアン化物(これらのシアン化物において、窒素原子との三重結合に関与する炭素原子は炭素13または炭素14原子であることが理解される)、および下記式(I):
【化1】

(式中:
およびRは、同一または異なっていてもよく、C〜Cアルキル基を表し、または、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になってヘキサン環を形成し、
Cは、炭素13または炭素14原子を表す)のシアン化物誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
式(I)の化合物が、炭素13標識化または炭素14標識化アセトンシアノヒドリンおよび炭素13または炭素14標識化シクロヘキサノンシアノヒドリンから選択されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を実行することにより得ることができる放射性標識化カーボンナノチューブであって、炭素原子が炭素13または炭素14原子である1つまたは複数の表面カルボキシル基を備えることを特徴とする、放射性標識化カーボンナノチューブ。
【請求項23】
共有結合により放射性標識化カルボキシル基の酸素原子の少なくとも1つに結合した1つまたは複数の官能性反応物質をその表面に備えることを特徴とする、請求項22に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項24】
官能性反応物質が、ジアゾニウム、ニトレン、カルベンよびピロリジンから選択されることを特徴とする、請求項23に記載のカーボンナノチューブ。
【請求項25】
診断ツールとしての、請求項22から24のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの使用。
【請求項26】
生体内におけるカーボンナノチューブの代謝および/または生体内分布の試験、
生体内におけるナノチューブの細胞透過の試験、
環境におけるカーボンナノチューブはどうなるのかの試験、
関心のある分子の調査
のための診断ツールとしての、請求項22から24のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−502920(P2011−502920A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531560(P2010−531560)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001560
【国際公開番号】WO2009/092913
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510083027)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】25 rue Leblanc, Batiment Le Ponant D 75015 Paris FRANCE
【Fターム(参考)】