説明

カーボンナノチューブ含有構造体及びその観察方法、複合体

【課題】カーボンナノチューブによる導電性付与効果を充分に発揮できるカーボンナノチューブ含有構造体及び複合体を提供する。
【解決手段】本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有し、下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上である。式(I):カーボンナノチューブ面積率[A1]=[(観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積)/(全観察面積)]×100(%)、式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ含有構造体及びその観察方法に関する。また、カーボンナノチューブ含有構造体を有する複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年さまざまな産業分野において、ナノメートルサイズを有するいわゆるナノ物質を取り扱うナノテクノロジーが注目されている。ナノ物質を他の複数の材料とナノメーターレベルで複合化させることによって、従来にない新しい優れた機能を持った材料が開発されている。
ところで、ナノ物質は、高度に分散させることによって、バルク状態とは異なる性質を示すため、複合体中に分散させる技術が求められる。しかしながら、一般にナノ物質はその表面状態が不安定であるため、複合化の際に凝集しやすく、ナノ物質特有の機能を発揮できないという問題がある。
【0003】
ナノ物質の中でもカーボンナノチューブは、1991年に発見されて以来、その物性評価、機能解明が行われており、その応用に関する研究開発も盛んに実施されている。しかし、カーボンナノチューブは絡まった状態で製造されているため、樹脂や溶液と複合化する場合には凝集して、本来の特性を発揮できないという問題がある。そのため、カーボンナノチューブを物理的に処理したり、化学的に修飾したりして、溶媒や樹脂に均一に分散又は溶解する試みがなされている。例えば、特許文献1では、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、溶媒からなる組成物、及びそれから製造される複合体が提案されている。また、特許文献2では、ナノ物質、(メタ)アクリル系重合体、溶媒からなる組成物、及びそれから製造される複合体が提案されている。
【0004】
特許文献1,2に記載の組成物から調製される複合体は、カーボンナノチューブにより導電性を発現する。しかし、複合体内でのカーボンナノチューブの分散状態が定量化されていないために、そのカーボンナノチューブ含有量で可能なほぼ最大の導電性を発現できるような分散状態になっているかどうは不明であった。また、カーボンナノチューブの分散状態と導電性の関係も不明であった。そのため、少量のカーボンナノチューブであっても、その量で可能なほぼ最大限の導電性を発現できる複合体を得ることが難しいという問題があった。すなわち、カーボンナノチューブによる導電性付与効果が充分に発揮されていなかった。
【0005】
そこで、熱可塑性樹脂中に極細炭素繊維を分散させた樹脂成形体であって、面積率[Ar]が0.2〜5.0%である炭素繊維含有成形体が提案されている(特許文献3参照)。ここで、面積率[Ar]は、樹脂成形体の厚さ1μmのスライス片を透過型実体顕微鏡にて30倍で写真撮影し、その画像内に占める1.23×10−1μm以上5.0×10μm以下の粒子を抽出し、その視野内に占める該粒子の合計面積を百分率で表したものである。
この検出方法では、1本で単分散したカーボンナノチューブは検出下限以下となり、塗膜全体の分散状態を把握しているとは言い切れない。また、5.0×10μm以上の粒子も除外されており、単分散したカーボンナノチューブの微凝集により形成される導電性ネットワークは含まれていない。したがって、特許文献3に記載の炭素繊維含有成形体が、高い導電性を有するとは限らなかった。
【0006】
また、平均繊維径50〜500nm、平均アスペクト比50〜1000である炭素繊維と樹脂とからなり、樹脂中の炭素繊維凝集体とこれを構成する炭素繊維1本との体積比が1500以下である導電性樹脂成形体が提案されている(特許文献4参照)。
しかし、特許文献4には、凝集体と炭素繊維の体積比は小さいほど均一分散となり、好ましいと記載されているが、炭素繊維の微凝集により形成される導電性ネットワークに関する記載はない。
したがって、特許文献3,4に記載の樹脂成形体においても、カーボンナノチューブの分散状態と導電性との関係が明らかでなく、カーボンナノチューブによる導電性付与効果が充分に発揮されていなかった。
【特許文献1】国際公開WO2004/039893号のパンフレット
【特許文献2】国際公開WO2006/028200号のパンフレット
【特許文献3】特開2006−193649号公報
【特許文献4】特開2006−11870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カーボンナノチューブによる導電性付与効果を充分に発揮できるカーボンナノチューブ含有構造体及び複合体を提供することにある。
また、本発明の目的は、カーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブの分散状態を定量化し、分散状態と導電性との関係を明らかにできるカーボンナノチューブ含有構造体の観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有するカーボンナノチューブ含有構造体であって、
下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体。
式(I):カーボンナノチューブ面積率[A1]=[(観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積)/(全観察面積)]×100(%)
式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)
ただし、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積は、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡の共焦点モードを用いて、カーボンナノチューブ含有構造体を、厚さ方向に所定の間隔毎に観察してスライス画像を取得し、該スライス画像から再構築した拡張フォーカス画像を解析して求めた値である。また、面積率[A1]及び面積率[A2]は3箇所以上で求め、面積率[A1]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A1]の平均値であり、面積率[A2]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A2]の平均値である。
[2] 膜状である[1]に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
[3] 厚さ方向に三等分にした際のいずれか部分にカーボンナノチューブ(a)が45面積%以上含有されている[2]に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
[4] 基材の片面または両面上に、[2]または[3]に記載のカーボンナノチューブ含有構造体を有する複合体。
[5] 透明導電性フィルムまたは透明導電性シートである[4]に記載の複合体。
[6] カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有するカーボンナノチューブ含有構造体を、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡で観察することを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体の観察方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体及び複合体は、カーボンナノチューブによる導電性付与効果を充分に発揮できる。
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体の観察方法によれば、カーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブの分散状態を定量化し、分散状態と導電性との関係を明らかにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(カーボンナノチューブ含有構造体)
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、カーボンナノチューブ(a)と樹脂(b)とを含有するものである。
【0011】
<カーボンナノチューブ(a)>
カーボンナノチューブ(a)は、2〜数十層のグラファイト状炭素が積み重なってできた外径がnmオーダーのチューブである。
カーボンナノチューブ(a)としては、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、単層のカーボンナノチューブが同心円状に多層に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったものが挙げられる。
さらには、カーボンナノチューブ(a)には、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーン、その頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質、カーボンナノチューブ(a)の類縁体であるフラーレン、カーボンナノファイバーも含まれる。
これらの中でも、導電性がより高くなる点では、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブが好ましい。
【0012】
カーボンナノチューブ(a)の製造方法としては、例えば、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法(CVD法)、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法等が挙げられる。また、カーボンナノチューブ(a)を製造する際には、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、高純度化することが好ましい。
【0013】
カーボンナノチューブ(a)は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等によって粉砕されていてもよい。また、カーボンナノチューブ(a)は、化学的、物理的処理によって短く切断されていてもよい。
【0014】
<樹脂(b)>
樹脂(b)としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれもが使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ポリブタジエン、ポリウレタン、メラミンフェノール樹脂、ケイ素樹脂、ポリアミドイミド、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0015】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ジアリルフタレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル樹脂、アイオノマー、塩素化ポリエーテル、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン、アクリル塩化ビニル共重合樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、ポリアセタール、ポリメチレンペンテン、ポリフェニレンオキシド、変性PPO、ポリフェニレンスルフィド、ブタジエンスチレン樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミノビスマレイミド、ポリスルフォン、ポリブチレン、ケイ素樹脂、MBS樹脂、メタクリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリアリルスルフォン、ポリブタジェン、ポリカーボネートメタクリレート複合樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリメチルペンテン、四フッ化エチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/エチレン共重合体、ポリビニルフルオライド、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0016】
樹脂(b)の中でも、カーボンナノチューブの分散性及び得られるカーボンナノチューブ含有構造体の導電性、透明性の観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂を主成分として含む樹脂が好適に用いられる。ここで「主成分として含む」とは、全樹脂成分中におけるアクリル樹脂、メタクリル樹脂が50質量%以上であることを指す。
【0017】
また、樹脂(b)としては、導電性ポリマーを用いることもできる。導電性ポリマーとしては、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、カルバゾリレン等を繰り返し単位として含むπ共役系高分子である。
本発明では、水溶性導電性ポリマーが好ましく用いられる。水溶性導電性ポリマーは、π共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、酸性基、あるいは酸性基で置換されたアルキル基またはエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーである。これらの中でも特に、カーボンナノチューブの分散性、構造体の導電性の点で、スルホン酸及び/またはカルボキシ基を有する水溶性導電性ポリマーが好適に用いられる。
さらに、導電性ポリマーとして、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートも用いられる。この水溶性導電性ポリマーは、導電性ポリマーの骨格にはスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付与されている構造を有している。
【0018】
カーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブ(a)の量は、樹脂(b)100質量部に対して0.001〜20質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部であることがより好ましい。カーボンナノチューブの含有量が0.001質量部以上であれば、導電性が充分に高くなるが、20質量部を超えて含んでも、さらなる導電性向上は期待できない。
【0019】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体には、必要に応じて、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、可塑剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤などが含まれてもよい。
また、本発明のカーボンナノチューブ含有構造体には、その導電性をより向上させるために導電性物質を含有させることができる。導電性物質としては、例えば、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、銀、ニッケル、銅等の金属、対称型または非対称型のインドール誘導体三量体などが挙げられる。これらの導電性物質の中でも、インドール誘導体三量体またはこれらのドーピング物が好ましい。
【0020】
<カーボンナノチューブの分散状態>
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上である。また、好ましくは、 下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が15%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が35%以上である。
【0021】
式(I):カーボンナノチューブ面積率[A1]=[(観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積)/(全観察面積)]×100(%)
式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)
【0022】
ここで、「観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積」は、後述する画像処理において二値化処理する際に抽出された単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積の合計である。
「全観察面積」は、顕微鏡での観察面積であり、例えば、1000倍で観察した場合には10000μmである。
「長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計」は、後述する画像処理において二値化処理する際に抽出された単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体のうち、その最大長が30μm以上であるカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計である。
カーボンナノチューブ微凝集体とは、少なくとも1本以上の単分散カーボンナノチューブが少なくとも一部分以上の箇所で接触することにより形成されるカーボンナノチューブ集合体である。したがって、分散できずに絡まっているカーボンナノチューブとは異なる。本発明におけるカーボンナノチューブ微凝集体はカーボンナノチューブ含有構造体中で、導電性ネットワーク形成に寄与している部分であるため、面積率[A2]とカーボンナノチューブ含有構造体の導電性との相関性は大きい。
【0023】
カーボンナノチューブ含有構造体において、面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値が前記範囲であることは、構造体中のカーボンナノチューブが、微凝集による導電性ネットワークを高効率で形成していることを示している。そのため、カーボンナノチューブによる導電性付与効果を充分に発揮でき、少ないカーボンナノチューブ含有量でも充分な導電性を得ることができるため、透明性と導電性とを容易に両立させることができる。
【0024】
また、得られるカーボンナノチューブ含有構造体の透明性の観点から、面積率[A1]の平均値は60%であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、面積率[A2]の平均値は99%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましい。
【0025】
<観察方法、観察条件>
観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積は、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡の共焦点モードを用いて、カーボンナノチューブ含有構造体を、厚さ方向に所定の間隔毎に観察してスライス画像を取得し、該スライス画像から再構築した拡張フォーカス画像を解析して求めた値である。
また、面積率[A1]及び面積率[A2]は3箇所以上で求め、面積率[A1]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A1]の平均値であり、面積率[A2]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A2]の平均値である。
【0026】
本発明における顕微鏡にて使用する液浸レンズとは、観察試料と対物レンズの間に屈折率を調整するための液(以下、屈折率調整液という。)を満たしたレンズである。本発明では、水浸レンズ、油浸レンズのいずれも使用できるが、油浸レンズが好ましい。油浸レンズを使用すれば、大きな開口数が得られ、高解像度で観察できるだけでなく、樹脂の表面反射の影響を少なくでき、カーボンナノチューブ含有構造体表面から内部に存在するカーボンナノチューブを高解像度で観察することができる。
屈折率調整液は、レンズ及びカーボンナノチューブ含有構造体を侵さないものであれば特に限定されないが、カーボンナノチューブ含有構造体の屈折率に近い屈折率を持つ屈折率調整液を使用することが好ましい。例えば、樹脂(b)がアクリル樹脂である場合、屈折率調整液の屈折率は1.518程度の市販の液浸対物レンズ用屈折率調整液が好適に使用される。
【0027】
本発明に使用する共焦点光学系の顕微鏡は特に限定されないが、共焦点レーザー顕微鏡を使用することが好ましい。共焦点レーザー顕微鏡を用いることによって、カーボンナノチューブ含有構造体の前処理なしに、三次元方向のカーボンナノチューブ分布だけでなく、カーボンナノチューブ含有構造体の特定の領域内に存在するカーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブによって形成される微凝集面積の計測が可能となる。
共焦点レーザー顕微鏡で用いられるレーザーの波長は、可視光レーザーであれば特に限定されないが、解像度の観点から、400〜550nmであることが好ましい。また、樹脂(b)として導電性ポリマーを使用する場合には、導電性ポリマーの吸収波長を考慮してレーザーの波長を選択することが好ましい。例えば、樹脂(b)として、ポリアニリンスルホン酸を使用する場合、レーザーの波長を540〜650nmとすることが好ましい。
【0028】
本発明において、カーボンナノチューブ含有構造体は共焦点光学系を有する顕微鏡において、共焦点モードにて観察される。この際の観察倍率は100〜4000倍が好ましく、500〜1000倍がより好ましい。この倍率で観察することによって、カーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブ(a)の分散状態を明瞭に観察することができる。
また、共焦点光学系を有する顕微鏡を用いることにより、カーボンナノチューブ含有構造体の観察平面に対して、垂直方向(すなわち、厚さ方向)の走査を行って、構造体内部に存在するカーボンナノチューブ(a)を観察することができる。垂直方向の走査範囲(深さ)は、測定対象物の厚さやカーボンナノチューブ含有量によって異なるが、好ましくは0.1〜100μmであり、より好ましくは0.1〜30μmである。カーボンナノチューブ含有構造体が膜状である場合、厚さ方向の全範囲を測定することが好ましい。
厚さ方向における観察ピッチは、測定対象物の厚さやカーボンナノチューブ含有量によって異なるが、共焦点レーザー顕微鏡で観察されるスライス画像一枚の光学的厚さを考慮して、上下のスライス画像が半分以上重なるように画像取得することが好ましく、具体的には、0.05〜1μmが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
なお、面積率[A1]及び面積率[A2]は、各カーボンナノチューブ含有構造体固有の値であり、観察条件によって大幅に変わるものではない。
【0029】
前記方法により観察されたカーボンナノチューブ含有構造体の観察画像を画像解析することにより、面積率[A1]及び面積率[A2]を求めることができる。ここで、画像解析に供する観察画像は、垂直方向に取得したスライス画像の重ね合わせ像、すなわち拡張フォーカス画像である。拡張フォーカス画像は、複数のスライス画像のピントの合っている部分のみを抽出して作成した1枚の画像である。よって、拡張フォーカス画像を解析することにより、高い精度で面積率[A1]及び面積率[A2]を求めることができる。
前記拡張フォーカス画像を市販の画像処理ソフトで処理し、面積率[A1]及び面積率[A2]を求める。具体的には、拡張フォーカス像を二値化し、画像内のカーボンナノチューブを抽出し、画像内に占める単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値及び長さを計測する。そして、画像解析により得られた、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積、及び、式(1)、式(2)によって、面積率[A1]及び面積率[A2]を求める。
なお、一つのサンプルに付き3箇所以上、好ましくは5箇所以上観察して、面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値を算出する。
【0030】
さらに、前記方法により取得したスライス画像からカーボンナノチューブ含有構造体中に存在するカーボンナノチューブの厚さ方向の分布状態を解析することができる。具体的には、取得した画像を表面から所定のピッチの深さでの画像を抜き出し、画像処理ソフトを用いて、二値化処理により画像内のカーボンナノチューブを抽出して、画像内に占める各カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値を計測する。得られた計測値から、厚さ方向に三等分にした際のいずれかの部分(表面層、中間層、底面層)に存在するカーボンナノチューブの面積割合を算出する。
【0031】
本発明では、厚さ方向に三等分にした際のいずれかの部分にカーボンナノチューブが40面積%以上含有していることが好ましく、50%以上含有していることがより好ましい。厚さ方向に三等分した際のいずれかの部分にカーボンナノチューブが40面積%以上含有していれば、構造体中のカーボンナノチューブが、微凝集による導電性ネットワークをより高い効率で形成するため、より導電性の高い構造体を得ることができる。
【0032】
<カーボンナノチューブ含有構造体の形状>
本発明におけるカーボンナノチューブ含有構造体の形状としては特に限定されないが、例えば、シート状、フィルム状、膜状、ペレット状、ロッド状、繊維状などが挙げられる。これらの形状の中でも、カーボンナノチューブ含有構造体の透明性及び導電性を容易に活用できることから、シート状、フィルム状、膜状が好ましく、膜状がより好ましい。
【0033】
カーボンナノチューブ含有構造体からなる膜は、容易に作製できることから、塗膜及び/または硬化膜であることが好ましい。カーボンナノチューブ含有構造体からなる塗膜及び/または硬化膜の膜厚は、充分な導電性を実現するために、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、充分な透明性を実現し、かつ塗膜及び/または硬化膜にクラックが発生したり、構造体の加工時に塗膜及び/または硬化膜が欠けたりする等の不具合を抑制するため、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0034】
<カーボンナノチューブ含有構造体の製造方法>
本発明におけるカーボンナノチューブ含有構造体の製造方法としては、例えば、(1)カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)からなるカーボンナノチューブ含有組成物を成形する方法、(2)カーボンナノチューブ(a)、樹脂(b)及び溶剤(c)からなるカーボンナノチューブ含有組成物を塗工する方法、(3)カーボンナノチューブ(a)、樹脂(b)の前駆体である重合性単量体(d)からなるカーボンナノチューブ組成物を用い、重合性単量体(d)を重合させる方法などが挙げられる。
【0035】
(1)の製造方法では、樹脂(b)が熱可塑性樹脂の場合には、一般的な押出機やニーダーなどで各成分を溶融混錬して成形することで、構造体を得ることができる。この際、カーボンナノチューブ(a)は、そのまま投入し溶融混錬することで分散させてもよいし、あらかじめ粉砕し、パウダー状にしたものを樹脂(b)に混合してもよい。また、高濃度にカーボンナノチューブ(a)を混合したマスターバッチを製造し、所望のカーボンナノチューブ(a)の濃度になるように樹脂(b)で希釈してもよい。
【0036】
(1)の製造方法によりカーボンナノチューブ含有構造体を製造する場合に、面積率[A1]の平均値を10%以上、且つ、面積率[A2]の平均値を25%以上にする方法としては、単分散したカーボンナノチューブが流動性を持つ状態で微凝集を形成させ、その状態で固化させることにより、その状態を保持、固定化する方法であれば、特に限定されない。例えば、成型温度、冷却温度、冷却時間の最適化等を挙げることができる。
【0037】
(2)の製造方法では、樹脂(b)が溶解または分散する溶剤(c)中に、カーボンナノチューブ(a)を分散させたカーボンナノチューブ含有組成物から塗膜または硬化膜を得ることができる。
(2)の製造方法で使用される溶剤(c)は、樹脂(b)を溶解または分散させることができる溶剤であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、四塩化炭素、二塩化エチレン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、セルソルブアセテート、メトキシアセテート、乳酸エチル、メトキシブタノール、ブチルセルソルブ、メチルメトキシブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤及び、含水有機溶剤が使用できる。これらの溶剤は単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
(2)の製造方法では、カーボンナノチューブ(a)の分散性向上の観点から、分散剤(e)を併用してもよい。使用できる分散剤は特に限定されないが、例えば、界面活性剤、高分子分散剤を例示することができる。
界面活性剤としては具体例としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの塩などのアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪アミン、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルホリニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド及びその塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物及びその塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどの非イオン系界面活性剤;及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。なお、界面活性剤は2種以上用いても何ら差し支えない。
【0039】
高分子分散剤としては、例えば、特開2006−225632号公報に記載の極性基を含む(メタ)アクリル系重合体を好適に使用することができる。また、カーボンナノチューブ(a)の分散性、得られる構造体の導電性の観点から、導電性ポリマーを用いることもできる。導電性ポリマーとしては、樹脂(b)で挙げたものと同様を使用できる。
【0040】
(2)の製造方法におけるカーボンナノチューブ含有組成物は、あらかじめ樹脂(b)を溶剤(c)に溶解または分散させ、その後カーボンナノチューブ(a)を添加し、分散させてもよいし、溶剤(c)にカーボンナノチューブ(a)、樹脂(b)を一括で投入し、分散処理を施してもよい。また、高濃度にカーボンナノチューブ(a)を分散させたマスターバッチを製造し、所望のカーボンナノチューブ(a)の濃度になるように溶剤(c)で希釈してもよい。
【0041】
(2)の製造方法によりカーボンナノチューブ含有構造体を製造する場合に、面積率[A1]の平均値を10%以上、且つ、面積率[A2]の平均値を25%以上にする方法としては、単分散したカーボンナノチューブが流動性を持つ状態で微凝集を形成させ、その状態で固化させることにより、その状態を保持、固定化する方法であれば、特に限定されない。例えば、塗工方法、乾燥時間、乾燥温度、樹脂量、分散剤量、分散剤種、溶剤種、カーボンナノチューブ含有組成物の粘度の最適化等を挙げることができる。
【0042】
前記(3)の製造方法では、樹脂(b)の前駆体である重合性単量体(d)を含むカーボンナノチューブ含有組成物を用い、該重合性単量体を重合させることにより成形体、塗膜等を製造することができる。
ここで使用される重合性単量体(d)は特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらのうち、得られるカーボンナノチューブ含有構造体の透明性、耐衝撃性、耐擦傷性、易成形性の観点から、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物が好適に用いられる。
【0043】
重合性単量体(d)は単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。なお、本発明における「(メタ)アクリル」は「メタクリル」及び「アクリル」の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、「メタアクリロイル」及び「アクリロイル」の総称である。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール等が挙げられる。
【0045】
重合性基を二つ以上有する(メタ)アクリル系化合物としては、(i)多価アルコール1モルに対し2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体を反応させて得られるエステル化物;(ii)多価アルコールと、多価カルボン酸またはその無水物と、(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物;(iii)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート;(iv)エポキシポリアクリレート等が挙げられる。
【0046】
(i)のエステル化物としては、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
(ii)のエステル化物において、多価カルボン酸またはその無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸の好ましい組み合わせとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0048】
(iii)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートとしては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジまたはトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とイソシアネート化合物との反応物である。
前記水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化1】

【0051】
(式中、R11は水素原子またはメチル基を示し、R12はエーテル結合を含んでもよい炭素数2〜24のいずれかの炭化水素基であり、m及びnはそれぞれ1以上、且つ(m+n)がR12の炭素数以下である整数を表す。)
【0052】
【化2】

【0053】
(式中、R21は水素原子またはメチル基を示し、R22は炭素数2〜24のいずれかのアルキレン基、炭素数1〜24のいずれかのアリーレン基、または炭素数1〜24のいずれかのアラルキレン基を、nは1〜100のいずれかの整数を表す。)
【0054】
具体的には、1つの(メタ)アクリレート基と1つの水酸基を持つ化合物(m,nが共に1の一般式(1)で表される化合物、一般式(2)で表される化合物)として、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1−(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシヘプシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸2−((6−ヒドロキシヘキサノイル)オキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ブトキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸9−ヒドロキシ−10−メトキシデシル、(メタ)アクリル酸2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、デカエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリデカエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸17−ヒドロキシ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン1−イル、(メタ)アクリル酸20−ヒドロキシ−3,6,9,12,15、18−ヘキサオキサイコサン1−イル、(メタ)アクリル酸2‐メチル‐2‐(3‐ヒドロキシ‐2,2‐ジメチルプロポキシカルボニル)プロピル、(メタ)アクリル酸3‐[3‐(3‐ヒドロキシプロピル)‐3‐オキソプロポキシ]‐3‐オキソプロピル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐3‐アリルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1‐フェニル‐2‐ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4‐ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ3‐フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸2‐(4‐ヒドロキシフェニル)エチル、(メタ)アクリル酸2‐[(2‐ヒドロキシベンジル)オキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2‐(4‐ヒドロキシフェノキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3‐ヒドロキシ‐4‐アセチルフェニル、(メタ)アクリル酸4‐(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3‐ヒドロキシ‐4‐ベンゾイルフェニル、(メタ)アクリル酸1‐(ヒドロキシメチル)トリデシル、(メタ)アクリル酸10‐ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシテトラデシル等が挙げられる。
【0055】
また、1つの(メタ)アクリレート基と2つ以上の水酸基を持つ化合物(mが1,nが2の一般式(1)で表される化合物)として、(メタ)アクリル酸3,4‐ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐1‐ヒドロキシメチルエチル、(メタ)アクリル酸1,1‐ビス(ヒドロキシメチル)エチル、(メタ)アクリル酸2,3‐ジヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3‐ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐1‐ヒドロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸3‐ヒドロキシ‐2‐(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸2,3‐ジヒドロキシ‐1‐メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2,4‐ジヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2‐メチル‐3‐ヒドロキシ‐2‐(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸2,3‐ジヒドロキシ‐2‐メチルプロピル、(メタ)アクリル酸3‐ヒドロキシ‐1‐(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸9,10‐ジヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸2,3‐ジヒドロキシ‐2‐(ヒドロキシメチル)プロピル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐1,1‐ビス(ヒドロキシメチル)エチル、ペンタエリトリトールモノ(メタ)アクレート、(メタ)アクリル酸2,3,4‐トリヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸1‐(ヒドロキシメチル)‐2,3‐ジヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0056】
また、2つ以上の(メタ)アクリレート基と1つ以上の水酸基を持つ化合物(mが2,nが1の一般式(1)で表される化合物)として、ジ(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシトリメチレン、ジ(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐2‐メチルトリメチレン、ビス(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシメチル‐2‐メチル‐1,3‐プロパンジイル、ジ(メタ)アクリル酸2‐エチル‐2‐(ヒドロキシメチル)トリメチレン、ジ(メタ)アクリル酸2‐(ヒドロキシメチル)‐1,3‐プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐1‐メチル‐1,3‐プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐(2‐ヒドロキシエチル)‐1,2‐エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐ヒドロキシメチル‐1,2‐エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐(1‐ヒドロキシエチル)‐1,2‐エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐ヒドロキシメチル‐2‐メチル‐1,2‐エタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐(ヒドロキシメチル)‐1‐メチルエチレン、ビス(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐1,4‐ブタンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐(ヒドロキシメチル)‐1,3‐プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐1,6‐ヘキサンジイル、ビス(メタ)アクリル酸1‐(2‐ヒドロキシプロポキシメチル)エチレンビス[オキシ(1‐メチル‐2,1‐エタンジイル)]、ビス(メタ)アクリル酸2‐(2‐ヒドロキシプロポキシ)‐1,3‐プロパンジイルビス[オキシ(1‐メチル‐2,1‐エタンジイル)]、(メタ)アクリル酸8‐(2‐ヒドロキシプロポキシ)‐1,4,12‐トリメチル‐14‐オキソ‐3,6,10,13‐テトラオキサ‐15‐ヘキサデセン‐1‐イル、(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ3‐[(2‐メチル‐1‐オキソ‐2‐プロペニル)オキシ]プロピル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、トリス(メタ)アクリル酸2‐(ヒドロキシメチル)プロパン‐1,2,3‐トリイル、ビス(メタ)アクリル酸2‐(アクリロイルオキシメチル)‐2‐ヒドロキシプロパン‐1,3‐ジイル、トリス(メタ)アクリル酸3‐(ヒドロキシメチル)プロパン‐1,2,3‐トリイル、トリス(メタ)アクリル酸3‐ヒドロキシブタン‐1,2,4‐トリイル、(メタ)アクリル酸3‐[2,2‐ビス[((メタ)アクリロイルオキシ)メチル]‐3‐ヒドロキシプロポキシ]‐2,2‐ビス[((メタ)アクリロイルオキシ)メチル]プロピルジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリラート、ビス(メタ)アクリル酸2‐[[[2‐(ヒドロキシメチル)‐2‐[((メタ)アクリロイルオキシ)メチル]‐3‐((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル]オキシ]メチル]‐2‐[((メタ)アクリロイルオキシ)メトキシ]プロパン‐1,3‐ジイル等が挙げられる。
【0057】
また、2つ以上の(メタ)アクリレート基と2つ以上の水酸基を持つ化合物(mが2,nが2の一般式(1)で表される化合物)としては、ビス(メタ)アクリル酸2,3‐ジヒドロキシブタン‐1,4‐ジイル、ビス(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐2‐(ヒドロキシメチル)プロパン‐1,3‐ジイル、ジ(メタ)アクリル酸2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)‐1,3‐プロパンジイル、ビス(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシ‐3‐(ヒドロキシメチル)プロパン‐1,3‐ジイル、ビス(メタ)アクリル酸1,1‐ビス(ヒドロキシメチル)エチレン、ビス(メタ)アクリル酸1‐(1,2‐ジヒドロキシエチル)エタン‐1,2‐ジイル、ビス(メタ)アクリル酸1,2‐ビス(ヒドロキシメチル)エチレン、ビス(メタ)アクリル酸1,6‐ヘキサンジイルビス(オキシ)ビス(2‐ヒドロキシ‐3,1‐プロパンジイル)、ビス(メタ)アクリル酸(2,11‐ジヒドロキシ‐4,9‐ジオキサドデカン)‐1,12‐ジイル、ビス(メタ)アクリル酸2,9‐ジヒドロキシ‐4,7‐ジオキサデカン‐1,10‐ジイル、ジ(メタ)アクリル酸3,3′‐(1,3‐フェニレンビスオキシ)ビス(2‐ヒドロキシプロピル)等が挙げられる。
これら水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0058】
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のうち、イソシアネート化合物との反応性の点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ジ(メタ)アクリル酸2‐ヒドロキシトリメチレン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸8‐ヒドロキシ‐3,6‐ジオキサオクタン‐1‐イル、(メタ)アクリル酸2‐[2‐[2‐(2‐ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル、デカエチレングリコール(メタ)アクリラート、ウンデカエチレングリコール(メタ)アクリラート、ドデカエチレングリコール(メタ)アクリラート、トリデカエチレングリコール(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸17‐ヒドロキシ‐3,6,9,12,15‐ペンタオキサヘプタデカン‐1‐イル、(メタ)アクリル酸20‐ヒドロキシ‐3,6,9,12,15,18‐ヘキサオキサイコサン‐1‐イルが特に好ましく用いられる。
【0059】
イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート類、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類、ポリイソシアネート類等が挙げられる。これらの中でも、機械的特性の点から、ジイソシアネート化合物及び/またはトリイソシアネート化合物が好ましい。
【0060】
イソシアネート類としては、例えば、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸ニトリル、イソシアン酸ナフチル、イソシアン酸ビニル等が挙げられる。
【0061】
ジイソシナネート類としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ω,ω′−ジイソシネートジメチルシクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート類、ベンゼン−1,3−ジイソシアネート、ベンゼン−1,4−ジイソシアネート等のベンゼンジイソシアナート類;トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,5−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−3,5−ジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類;1,2−キシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,6−ジイソシアネート、1,2−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,6−ジイソシアネート等のキシレンジイソシアネート類等の芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。
【0062】
トリイソシアネート類としては、例えば、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアネート、ベンゼン−1,2,5−トリイソシアネート、ベンゼン−1,3,5−トリイソシアネート等のベンゼントリイソシアネート類;トルエン−2,3,5−トリイソシアネート、トルエン−2,3,6−トリイソシアネート、トルエン−2,4,5−トリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、トルエン−3,4,6−トリイソシアネート、トルエン−3,5,6−トリイソシアネート等のトルエントリイソシアネート類、1,2−キシレン−3,4,6−トリイソシアネート、1,2−キシレン−3,5,6−トリイソシアネート、1,3−キシレン−2,4,5−トリイソシアネート、1,3−キシレン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3−キシレン−3,4,5−トリイソシアネート、1,4−キシレン−2,3,5−トリイソシアネート、1,4−キシレン−2,3,6−トリイソシアネート等のキシレントリイソシアネート類等の芳香族トリイソシアネート類、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4− イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の脂肪族、脂環族または含ヘテロ原子含有のトリイソシアネート類が挙げられる。
【0063】
ポリイソシアネート類としては、例えば、ジイソシアネート類、トリイソシアネート類の3量体、及びこれらのポリオール付加物等が挙げられる。
【0064】
ジイソシアネート類、トリイソシアネート類としては、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(5)で表される化合物などが挙げられる。
【0065】
【化3】

【0066】
(式中、R31は水素、または炭素数1〜8のいずれかのアルキル基、nは1〜25のいずれかの整数を表す。また、nが2以上の場合には、R31も2以上存在することになるが、各R31は同一であってもよいし、異なってもよい。)
【0067】
【化4】

【0068】
(式中、R41〜R43は、それぞれ独立に、炭素数1〜24のいずれかのアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基よりなる群から選ばれた2価の基を表す。)
【0069】
【化5】

【0070】
(式中、R51は炭素数1〜8のいずれかのアルキル基、アリール基、アラルキル基よりなる群から選ばれた基であり、mは0〜4のいずれかの整数であり、nは2〜6のいずれかの整数であり、(m+n)は6以下の整数である。mが2以上の場合には、R51も2以上存在することになるが、各R51は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0071】
一般式(3)で表される分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0072】
一般式(4)で表される分子中に3個のイソシアネート基を有する化合物としては、2個のイソシアネート基を有する化合物の3量体からなるものが好ましい。2個のイソシアネート基を有する化合物としては、前記の各種ジイソシアネート類を用いることができる。
【0073】
一般式(5)で表される芳香族イソシアネート化合物としては、ベンゼン−1,3−ジイソシアネート、ベンゼン−1,4−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,5−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,6−ジイソシアネート、1,2−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,6−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
上述したイソシアネート化合物のうち、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,5−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−キシレン−3,6−ジイソシアネート、1,2−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,4−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,3−キシレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−キシレン−4,6−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,5−ジイソシアネート、1,4−キシレン−2,6−ジイソシアネートを特に好ましく用いられる。これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0075】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の中でも、カーボンナノチューブ(a)の分散性の観点から、一般式(1)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートまたは一般式(2)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートと、一般式(3)で表されるイソシアネート、一般式(4)で表されるイソシアネート、一般式(5)で表されるイソシアネートのいずれかとの反応物が特に好ましく用いられる。
【0076】
(3)の製造方法では、カーボンナノチューブ含有組成物中の重合性単量体(d)を熱及び/または光で重合させるために、重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤としては、光重合開始剤、熱重合開始剤が挙げられる。
【0077】
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、市販の光重合開始剤としては、「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、「イルガキュア907」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、「ダロキュア1173」(メルク・ジャパン(株)製)、「エザキュアKIP100F」(日本シーベルヘグナー(株)製)等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
熱重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物、レドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物とアミン類との組み合わせ等が挙げられる。
熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
(3)の製造方法では、溶剤(c)を併用してもよい。この場合、溶剤(c)は特に限定されないが、重合性単量体(d)が溶解する溶剤(c)が好ましい。また、カーボンナノチューブの分散性を向上させるために、前記分散剤(e)を併用してもよい。
【0080】
(3)の製造方法におけるカーボンナノチューブ含有組成物では、重合性単量体(d)にカーボンナノチューブ(a)を添加し、分散させてもよいし、溶剤(c)を併用する場合には、あらかじめ重合性単量体(d)を溶剤(c)に溶解し、カーボンナノチューブ(a)を添加し、分散させてもよい。複数の重合性単量体(d)を混合して使用する場合には、1種の重合性単量体(d)にカーボンナノチューブ(a)を添加し、分散処理した後、その他の重合性単量体(d)及び/または溶剤(c)で希釈してもよい。
【0081】
(3)の製造方法によりカーボンナノチューブ含有構造体を製造する場合に、面積率[A1]の平均値を10%以上、且つ、面積率[A2]の平均値を25%以上にする方法としては、単分散したカーボンナノチューブが流動性を持つ状態で微凝集を形成させ、その状態で固化させることにより、その状態を保持、固定化する方法であれば、特に限定されない。例えば、塗工方法、塗工から硬化までの時間、硬化温度、重合性単量体種、分散剤種、分散剤量、溶剤種、溶剤量、カーボンナノチューブ含有組成物の粘度、乾燥温度、乾燥時間の最適化等を挙げることができる。
【0082】
前記(2)の製造方法及び前記(3)の製造方法では、各成分を混合する際に、超音波、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサーなどの撹拌又は混練装置を用いることができる。特に、カーボンナノチューブ(a)の分散処理を行う際には、これに超音波を照射することが好ましく、この際、超音波照射とホモジナイザーを併用(超音波ホモジナイザー)して処理をすることが特に好ましい。超音波照射処理の条件は、特に限定されるものではないが、カーボンナノチューブ(a)がカーボンナノチューブ含有組成物中に均一に分散あるいは溶解させるだけの充分な超音波の強度と処理時間があればよい。例えば、超音波発振機における定格出力は、超音波発振機の単位底面積当たり0.1〜2.0ワット/cm2 が好ましく 、より好ましくは0.3〜1.5ワット/cm2 の範囲である。発振周波数は、10〜200kHzが好ましく、より好ましくは20〜100kHzの範囲である。また、超音波照射処理の時間は、1分〜48時間が好ましく、より好ましくは5分から48時間である。この後、更にボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミルなどのボール型混練装置を用いて分散あるいは溶解を徹底化してもよい。
【0083】
また、超音波照射処理を行う際のカーボンナノチューブ含有組成物の温度は、分散性向上の点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。特に重合性単量体(d)を用いてカーボンナノチューブ含有組成物を調製する際には、重合防止の観点からも40℃以下がより好ましい。
【0084】
(複合体)
本発明の複合体は、基材の片面または両面に、膜状のカーボンナノチューブ含有構造体を有するものである。
基材としては、例えば、合成樹脂のフィルム、シート、発泡体、多孔質膜、エラストマー、各種成形体;木材、紙材、セラミックス、繊維、不織布、炭素繊維、炭素繊維紙、ガラス板、ステンレス板等が挙げられる。
【0085】
基材を構成する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタンが挙げられる。合成樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0086】
本発明の複合体は、膜中にカーボンナノチューブ(a)が、高い分散性で分散または溶解しているため、透明性に優れる。このため、本発明の複合体の全光線透過率は、50%以上、とりわけ70%以上となり、透明導電性フィルム、透明導電性シート、透明導電性成形体として好適に使用できる。
【0087】
本発明の複合体においては、必要に応じて、膜状のカーボンナノチューブ含有構造体の上に反射防止膜を設けてもよい。また、基材の片面に、膜状のカーボンナノチューブ含有構造体を設け、他方の面に反射防止膜、拡散層、接着層等の他の機能性薄膜を設けてもよい。
【0088】
<複合体の製造方法>
複合体の製造方法としては、例えば、(i)基材の表面にカーボンナノチューブ含有組成物を塗布し、硬化させる方法;(ii)型の内面に、カーボンナノチューブ含有組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成した後、型内に重合性原料または溶融樹脂を流し込み、固化させて基材を形成し、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法;(iii)型と基材との間にカーボンナノチューブ含有組成物を流し込んで硬化させて硬化膜を形成した後、基材とともに硬化膜を型から剥離する方法等が適用される。
【0089】
(i)の方法におけるカーボンナノチューブ含有組成物の塗工方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等を用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等が挙げられる。
【0090】
(i)〜(iii)の方法のうち、埃等の影響で外観が低下することもなく、表面状態の良好な硬化膜を得ることができるため、(ii)の方法が好ましい。
(ii)の方法で用いられる型としては、注型重合用の鋳型、成形用型等が挙げられる。鋳型が2枚の表面平滑な板状物からなる場合、表面平滑な板状積層体を得ることができる。この際、硬化膜を一方の鋳型のみで形成してもよいし、両方の鋳型で形成してもよい。
【0091】
(ii)の方法における基材の形成方法としては、重合性原料を注型重合用の型に注入して重合させる、いわゆるキャスト重合法が好ましい。
キャスト重合法としては、例えば、カーボンナノチューブ(a)、重合性単量体(d)、光重合開始剤を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物をガラス板からなる注型重合用のガラス型の内面に塗布し、光硬化させた後、ガラス型内に重合性原料を流し込んで重合させる方法が挙げられる。ガラス型は、例えば、2枚のガラス板の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等からなるガスケットを挟み込み、これらをクランプ等で固定することにより、組み立てられる。
【0092】
キャスト重合法は連続的に行うこともできる。連続的キャスト重合法としては、例えば、特公昭46−41602号公報に記載されている装置を用い、2枚のスチールベルトの間でメタクリル酸メチル等を重合する方法が挙げられる。この連続的キャスト重合法においては、例えば、スチールベルト表面に重合性単量体(d)及び光重合開始剤または重合性単量体(d)及び熱重合開始剤を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を塗布し、硬化させて硬化膜を形成する。また、スチールベルト表面にあらかじめ凹凸等の意匠を付与しておけば、表面に意匠性を有する複合体を製造できる。また、表面に凹凸を有し、かつカーボンナノチューブ含有組成物に溶解または膨潤しないフィルム等をスチールベルトに貼り付け、その凹凸面に重合性単量体(d)及び光重合開始剤または重合性単量体(d)及び熱重合開始剤を用いて調製したカーボンナノチューブ含有組成物を塗布し、硬化させてもよい。
【0093】
重合性原料としては、複合体の透明性の観点から、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分、この単量体成分の一部が重合した重合体と単量体成分との混合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0094】
単量体成分は、必要に応じて、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等の他の重合性単量体を含有していてもよい。他の重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
単量体成分の一部が重合した重合体と単量体成分との混合物における、単量体成分の重合率は35質量%以下が好ましい。
【0095】
重合性原料には連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸、チオフェノール、それらの混合物等のメルカプタン系連鎖移動剤が好ましく、n−オクチルメルカプタンやn−ドデシルメルカプタン等のアルキル鎖の短いメルカプタンが特に好ましい。
【0096】
重合性原料を加熱により重合させる場合には、アゾ化合物、有機過酸化物、レドックス系重合開始剤等のラジカル重合開始剤を添加してもよい。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。レドックス系重合開始剤としては、有機過酸化物とアミン類との組み合わせ等が挙げられる。
【0097】
重合性原料を紫外線照射により重合させる場合には、フェニルケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の光重合開始剤を添加してもよい。市販の光重合開始剤としては、「イルガキュア184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、「イルガキュア907」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、「ダロキュア1173」(メルク・ジャパン(株)製)、「エザキュアKIP100F」(日本シーベルヘグナー(株)製)等が挙げられる。
【0098】
また、重合性原料を紫外線照射により重合させる場合、光増感剤を添加してもよい。光増感剤としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロゲキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。また、400nm以下の波長域において増感作用を有する光増感剤を添加してもよい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、原料のカーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブを使用した。以下、多層カーボンナノチューブのことを、MWNTと表記することもある。
【0100】
(製造例1)
ウレタン化合物1:
ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体からなるトリイソシアネート1モルに対して、3モルのジメタクリル酸2−ヒドロキシトリメチレンを反応させてウレタン化合物1を得た。
【0101】
(調製例1)
カーボンナノチューブ含有組成物1
製造例1のウレタン化合物1を32質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)58質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート4質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート6質量部を混合した重合性単量体に多層カーボンナノチューブ0.05質量部を室温にて混合した。この混合物を、氷冷下、1時間、超音波ホモジナイザー処理(SONIC社製 vibra cell 20kHz)した後、光重合開始剤としてベンゾインエチルエーテル1.5質量部を添加して、カーボンナノチューブ含有組成物1を調製した。
【0102】
(実施例1〜3)
カーボンナノチューブ含有構造体1〜3
カーボンナノチューブ含有組成物1を、アクリル樹脂板(厚さ3mm)上に滴下し、その上に厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人(株)製)を配置し、JIS硬度30°のゴムロームにてしごき、該組成物の厚さを10μmに調整した。その後、出力40Wの蛍光紫外線ランプ((株)東芝製、FL40BL)の下10cmの位置を、PETフィルム面を上にして、0.8m/分のスピードで通過させ、該組成物を予備硬化させた後、PETフィルムを剥離した。ついで、出力30W/cmの高圧水銀灯の下20cmの位置を、塗膜を上にして0.8m/cmのスピードで通過させ、該組成物を本硬化させることにより、表面にカーボンナノチューブ含有構造体からなる硬化膜を有する複合体を得た。ゴムロールによる塗膜形成後から予備硬化開始までの時間は、実施例1では1分、実施例2では3分、実施例3では15分とした。
【0103】
(比較例1)
カーボンナノチューブ含有構造体4
ゴムロールによる塗膜形成後から予備硬化開始までの時間を30秒(0.5分)にした以外は実施例1〜3と同様にしてカーボンナノチューブ含有構造体4を得た。
【0104】
<評価方法>
実施例1〜3及び比較例1のカーボンナノチューブ含有構造体4について、表面抵抗値、全光線透過率を以下のように測定した。また、共焦点レーザー顕微鏡により観察し、面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値を算出し、さらに厚さ方向のカーボンナノチューブの分散状態を解析した。それらの結果を表1に示す。
(表面抵抗値)
表面抵抗値は、温度25℃、相対湿度50%の条件下、ハイレスタUP(三菱化学製)により、リング状プローブを用いて印加電圧500Vで測定した。
(全光線透過率)
全光線透過率(%)は日本電色製ヘイズメーターNDH2000により測定した。
【0105】
(カーボンナノチューブ含有構造体の観察)
カーボンナノチューブ含有構造体の観察は、共焦点レーザー顕微鏡(LSM5 PASCAL Axioplan2 imaging:カールツァイス社製)で、100倍油浸レンズ(開口数1.4、Plan−APOCHROMAT)を用いて、1000倍の画像を取得した。画像取得の際のレーザーとしては、波長458nmアルゴンレーザーを使用した。また、画像取得の際には、屈折率1.518の屈折率調整液(Immersol 518F:カールツァイス社製)を使用した。
カーボンナノチューブ含有構造体の厚さ方向の走査は、表面から基材との界面まで行い、約11μmの画像を0.1μmのピッチでスライス画像を取得した。この条件での1画像あたりの光学厚さは300nm程度であった。
(面積率[A1]の平均値及び面積率[A2]の平均値の算出)
前記方法により取得したスライス画像から拡張フォーカス画像を作成し、画像処理ソフト(Image−Pro PLUS ver4.5.0:Media Cybernetics社製)を用いて、二値化処理により画像内のカーボンナノチューブを抽出して、画像内に占める単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値及び長さを計測した。これにより、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積を求めた。そして、式(1)により面積率[A1]を求め、式(2)により面積率[A2]を求めた。一つのサンプルに付き5箇所解析を行い、これら5箇所の面積率[A1]及び面積率[A2]の平均値を算出した。
【0106】
(厚さ方向のカーボンナノチューブの分布状態の解析)
前記方法により取得したスライス画像から、表面から0.5μmピッチの深さでの画像を選択し、画像処理ソフト(Image−Pro PLUS ver4.5.0:Media Cybernetics社製)を用いて、二値化処理により画像内のカーボンナノチューブを抽出して、画像内に占める単分散カーボンナノチューブ及びカーボンナノチューブにより形成される微凝集体の面積値を計測した。得られた計測値から、厚さ方向に三等分にした際に形成される3つの層(表面層、中間層、底面層)に存在するカーボンナノチューブの面積割合を算出した。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
面積率[A1]の平均値が10%以上で、面積率[A2]の平均値が25%であった実施例1〜3の構造体は導電性が高かった。
しかし、同じ含有量のカーボンナノチューブ含有組成物を使用して製造したにもかかわらず、面積率[A1]の平均値が25%未満であった比較例1のカーボンナノチューブ含有構造体は導電性が低かった。これは、面積率[A2]がカーボンナノチューブ含有構造体中のカーボンナノチューブにより形成された導電性ネットワーク構造に由来する成分であり、導電性ネットワーク構造が少なかったためと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のカーボンナノチューブ含有構造体は、含有するカーボンナノチューブ量で発現し得る最大限に近い導電性を発現させることができるため、各種帯電防止剤、コンデンサー、電気二重層キャパシタ、電池、燃料電池及びその高分子電解質膜、電極層、触媒層、ガス拡散層、ガス拡散電極層、セパレーターなどの部材、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、紡糸用材料、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装用導電性プライマー、電気防食、電池の蓄電能力向上などの用途に適用可能である。
また、本発明の複合体は、半導体、電器電子部品などの工業用包装材料、半導体製造のクリーンルームなどで使用される透明導電性樹脂板、オーバーヘッドプロジェクタ用フィルム、スライドフィルムなどの電子写真記録材料等の帯電防止フィルム、透明導電性フィルム、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータ用テープ、フレキシブルディスクなどの磁気記録用テープの帯電防止、電子デバイスのLSI配線、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)の電子銃(源)及び電極、水素貯蔵剤、更に透明タッチパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの入力及び表示デバイス表面のディスプレイ保護板、前面板、帯電防止や透明電極、透明電極フィルム、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する発光材料、バッファ材料、電子輸送材料、正孔輸送材料及び蛍光材料、熱転写シート、転写シート、熱転写受像シート、受像シートとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有するカーボンナノチューブ含有構造体であって、
下記式(I)で表されるカーボンナノチューブ面積率[A1]の平均値が10%以上、且つ、下記式(II)で表されるカーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]の平均値が25%以上であることを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体。
式(I):カーボンナノチューブ面積率[A1]=[(観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積)/(全観察面積)]×100(%)
式(II):カーボンナノチューブ微凝集体面積率[A2]=[(長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計)/(観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積)]×100(%)
ただし、観察面積中の全カーボンナノチューブ占有面積、長さ30μm以上のカーボンナノチューブ微凝集体の面積の合計、観察画像中の全カーボンナノチューブの占有面積は、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡の共焦点モードを用いて、カーボンナノチューブ含有構造体を、厚さ方向に所定の間隔毎に観察してスライス画像を取得し、該スライス画像から再構築した拡張フォーカス画像を解析して求めた値である。また、面積率[A1]及び面積率[A2]は3箇所以上で求め、面積率[A1]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A1]の平均値であり、面積率[A2]の平均値は、3箇所以上で測定した面積率[A2]の平均値である。
【請求項2】
膜状である請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
【請求項3】
厚さ方向に三等分にした際のいずれか部分にカーボンナノチューブ(a)が45面積%以上含有されている請求項2に記載のカーボンナノチューブ含有構造体。
【請求項4】
基材の片面または両面上に、請求項2または3に記載のカーボンナノチューブ含有構造体を有する複合体。
【請求項5】
透明導電性フィルムまたは透明導電性シートである請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
カーボンナノチューブ(a)及び樹脂(b)を含有するカーボンナノチューブ含有構造体を、液浸レンズを具備し共焦点光学系を有する顕微鏡で観察することを特徴とするカーボンナノチューブ含有構造体の観察方法。

【公開番号】特開2008−308583(P2008−308583A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157679(P2007−157679)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】