説明

カーボンナノチューブ(CNT)電子源を用いた環境有害物質処理方法

【課題】有害な副生成物を出さず、エネルギー効率が高い環境有害物質(ダイオキシン類又はNOx)の処理方法を提案する。
【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)電子源7から放出される電子9およびその加速を用いて、上述した環境有害物質を脱塩素化および還元反応によって処理すれば、処理過程で高温を必要とせず、有害物質を出すことなく分解無害化処理が可能である。電子のみにエネルギーが注入され、高密度電子発生が可能なため、エネルギー効率および試料の処理量、時間が大幅に改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)から放出される電子およびその加速を用いた環境有害物質{ダイオキシン類、クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)、NOx}処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のダイオキシン類の処理方法は燃焼法が、NOx処理に関しては、吸着剤併用放電プラズマ方式が主流である。
【0003】
燃焼法は、800度以上での燃焼温度が必要であり工業的に不利、燃焼過程で再びダイオキシン類が発生する可能性が高い。吸着剤併用放電プラズマを用いたNOx処理は、処理およびエネルギー効率の低さが問題である。(例えば特許公報 特開2001−300249号参照)
【0004】
【特許文献1】 特開2001−300249号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高性能な環境汚染物質除去技術を実現するための課題として高温を必要としない、エネルギー効率が高い、処理速度が速い技術の開発が課題となっている。
【0006】
本発明は、これら従来の処理方式が抱える問題を解決するものであり、CNTから放出される電子およびその加速を用いて還元反応を起こし、高度に酸化された有害物{ダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)、NOx}を効率良く、無害化(還元)することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、CNTを電極として用いた点、さらにこの電極を環境有害物質処理に適用したことである。
【0008】
CNTは、化学的に安定、機械的に強靭であり、縦横(アスペクト)比が非常に高く、電流密度は、GA/cm程度得られる。そのため、低電圧(低電界強度)で、高密度の電子放出が可能、真空中もしくは低気圧中で使用することで、放出された電子は強く加速され、ほとんど損失なく大きな電子エネルギーを得る。
【0009】
真空中でCNT電極を用いると、その電極から放出される電子の作用により、高度に酸化されたダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)は、脱塩素化および還元反応により無害化され、処理過程で有害な副生成物は発生しない。
【0010】
CNT電極を用いたNOx処理に関しては、電子のみにエネルギーが注入されるので、エネルギー効率が放電プラズマ方式と比較して大幅に改善される。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明のCNT電子源をダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)、NOxの環境有害物質処理に適用することは、高度に酸化された有害物を完全に無害化することができ、高効率処理方式として提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
処理を目的とした試料に電子を均一に照射するために、CNT電子源の上部にグリッド電極、さらにアノード電極を設置する。グリッド電極には、直流正電圧1kV、アノード電極には、直流もしくはパルス正電圧 >1kVを用いるのが望ましい。
【0013】
CNTは、多層カーボンナノチューブを用いる。電流密度は、CNT1本あたり、>500μA/cmが望ましい。
【0014】
処理用の容器内は、真空もしくは低圧力下で用いることが望ましい。
【0015】
[0014]の条件下では、低電界強度でCNTから電子放出およびその加速が容易に起こるので、大型の高電圧発生装置は必要とせず、装置の小型化、コスト低減に大きく寄与できる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。6に直流電圧を印加、8を接地することで7から高密度の電子放出、その後、放出された9は加速され、大きなエネルギーを得て10に衝突。10がダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)の場合、9の寄与で脱塩素化、還元反応を起こし、ダイオキシン類は無害化処理される。10がNOxの場合、9の寄与でNOxは、還元され、無害な窒素ガスもしくは酸素ガスに分解処理される。
【0017】
CNT電子源から放出される電子のみにエネルギーが注入され、電子密度は、CNTの電流密度にも依存するが1015cm−3以上は発生可能であり、放電プラズマ方式と比較してエネルギー効率および試料の処理量、時間は大幅に改善される。
【0018】
電子を用いた還元反応処理のため、処理の過程で高温を必要とせず、有害な副生成物が発生することは、極めて低い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
ダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)、NOxなどの大気汚染物質の高効率分解無害化処理に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】CNT電子源から放出される電子およびその加速を用いたダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)、およびNOx処理用装置図
【符号の説明】
(1) 有害物質処理用チャンバー
(2) ガス導入口
(3) ガス排出口
(4) アノード電極
(5) 直流もしくはパルス高電圧
(6) グリッド電極
(7) カーボンナノチューブ(CNT)電子源
(8) 接地
(9) CNTから放出された電子
(10) 処理を目的とした試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)から放出される高密度の電子およびその加速を用いて、ダイオキシン類(クロロフェノールおよびポリ塩化ビフェニール(PCB)などの含ハロゲン化合物を含む)を脱塩素化、還元反応により高効率分解、無害化処理する方法。一酸化窒素(NO)もしくは二酸化窒素(NO)などの大気汚染物質であるNOxを、CNTから放出される高密度の電子およびその加速を用いて還元反応により、窒素および酸素の無害なガスに効率良く分解、無害化処理する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−200057(P2008−200057A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177219(P2006−177219)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者 財団法人レーザー技術総合研究所 刊行物名 LASER CROSS 巻数、号数 No.215、1〜2頁 掲載年月日 平成18年2月19日 掲載アドレス http://www.ilt.or.jp/cross/no215.pdf 発行者 電気学会 刊行物名 平成18年電気学会全国大会 講演論文集 [1]基礎 巻数、号数 84頁 発行年月日 平成18年3月15日 研究集会名 平成18年 電気学会全国大会 主催者 電気学会 開催日 平成18年3月15〜18日(発表日:3月15日) 発表者 山浦道照 発表題目 カーボンナノチューブ電子源を用いた高効率ダイオキシン類脱塩素化処理の基礎的研究
【出願人】(591114803)財団法人レーザー技術総合研究所 (36)
【Fターム(参考)】