説明

カーボンマットブラケット

【課題】カーボン繊維で織られたカーボンクロスを、透明な樹脂シートまたは樹脂板で両面から挟み込み接着したベース材を加熱して、成形型で加圧成形することで表面が滑らかでカーボンクロスの織目文様に乱れの無い、薄くても十分な強度とデザイン性を兼備えたカーボンマットブラケット及び成形法を提供することを目的とする。
【解決手段】補強繊維材で織られた織布材2と、該織布材の両面を熱可塑性樹脂3aからなる表層材3を積層して接着されたベース材1を、成形型6により前記ベース材1を加熱して軟化させて加圧成形することで所定の形状10に成形されることを特徴とするカーボンマットブラケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン繊維で織られたカーボンクロスを熱可塑性樹脂材で両面を挟み加熱し加圧成形された、強度とデザイン性を兼備えたカーボンマットブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンマットブラケットは、複合材料の一種でCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics、カーボン繊維強化プラスチック)と呼ばれ、航空機やスポーツカーの車体やパネルを成形する際に、軽量で強度の高い素材として広く使用されている。従来のカーボンマットブラケットの成形は、カーボン繊維で織った織布材(以下、カーボンクロスと記す)を型の上に敷いて、硬化剤を混ぜたエポキシ樹脂等の液体樹脂に浸し、ローラや刷毛等で塗り固めて成形する熱硬化法と、熱可塑性樹脂を加熱して軟化させ型に嵌めて成形する方法が一般的である。
【0003】
図4に示す熱硬化法は、柔らかいカーボンクロス41を型47に嵌めて、硬化剤を混ぜた液体樹脂44をローラ46で塗り重ねるため、カーボンマットブラケットの成形を簡単に行うことができる。
【0004】
熱可塑性樹脂を使用した加熱加圧成形は、例えば成形型の表面を局所的に加熱し、ワークを加熱することにより熱可塑性樹脂を軟化させて変形加工を容易にし、または射出成形型の表面を加熱して加圧加工を容易にして熱可塑性樹脂の流動を円滑にする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−119847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のカーボンマットブラケットは、成形する工程で液体樹脂44を均等にカーボンクロス41の繊維に浸み込ませる必要から、図4に示すようにカーボンクロス41を液体樹脂44に浸しながら、ローラ46や刷毛等で掃いて液体樹脂44を浸透させている。ローラ46や刷毛でカーボンクロス41の表面を掃く際に、カーボンクロス41の織目の間隔が開いて織目文様が乱れてしまうという問題がある。
【0007】
また、機械による射出成形の場合、重ねたカーボンクロスと熱可塑性樹脂板の周辺は固定されているが織目は自由な状態で保持されるため、型に入れて射出成形される際に軟化した熱可塑性樹脂の流動により織目が乱れることがあり、完成したカーボンマットブラケットの表面に浮き出たカーボンクロスの織目文様が乱れて、美観を損なう製品となってしまう問題がある。
【0008】
本発明は以上の点に着目し成されたもので、透明な熱可塑性の樹脂シートまたは樹脂板からなる表層材でカーボンクロスを両面から挟み込み一旦接着したベース材を作成し、カーボンクロスの織目文様を固定して織目の乱れをなくした後、ベース材を加熱し軟化させ成形型で加圧成形する2段階の成形法を実施することで、表面は表層材の樹脂層により滑らかとなり、浮出るカーボンクロスの織目文様も均一で見栄えも良く、薄くても十分な強度とデザイン性を兼備えたカーボンマットブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の目的を達成するため、以下(1)〜(3)の構成を備えるものである。
【0010】
(1)補強繊維材で織られた織布材と、該織布材の両面を熱可塑性樹脂からなる表層材を積層して接着されたベース材を、成形型により前記ベース材を加熱して軟化させて加圧成形することで所定の形状に成形されることを特徴とするカーボンマットブラケット。
【0011】
(2)前記補強繊維材が、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維を含む化学繊維からなること特徴とする前記(1)記載のカーボンマットブラケット。
【0012】
(3)前記ベース材の厚さに応じて、前記ベース材を軟化させる加熱の温度を任意に設定できることを特徴とする前記(1)または(2)記載のカーボンマットブラケット。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカーボンマットブラケットでは、予めカーボンクロスの織目文様の乱れをなくすため、製品仕様の厚さに応じて透明な熱可塑性の樹脂シートまたは樹脂板の表層材で、カーボンクロスの両面を挟み込んで接着し、カーボンマットブラケットのベース材を作成する。次に作成したベース材を加熱して樹脂を軟化させ、型に入れて加圧成形する2段階の成形法を実施することで、表面は表層材の樹脂層により滑らかで光沢があり、且つカーボンクロスの織目文様にも乱れのない均一な仕上がりに成形することが可能となり、カーボンクロスの持つ強度と均一な織目文様からなるデザイン性を兼備えたカーボンマットブラケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例に係るカーボンマットブラケットのベース材の構成図、(a)ベース材の外観図、(b)ベース材の分解図
【図2】本実施例に係るカーボンマットブラケットの成形法を示す図、(a)成形型による加圧成形の構成図、(b)加圧成形されたカーボンマットブラケットを示す図
【図3】本実施例に係るカーボンマットブラケットの斜視図、(a)加圧成形されたカーボンマットブラケットの斜視図、(b)A−A断面図
【図4】従来のカーボンマットブラケットの成形方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳しく説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本実施例に係るカーボンマットブラケットのベース材で、図1(a)はベース材の外観図、図1(b)はサンドイッチ構造を示すベース材の分解図である。図中において、1はカーボンマットブラケット10のベース材、2はカーボンクロス、及び3はカーボンクロス2を挟み込む透明な熱可塑性樹脂の表層材で、同じ厚さの樹脂板3aを2枚合わせにして構成される。
【0017】
本実施例に係るカーボンマットブラケット10のベース材1の作成方法は、製品仕様の厚さに応じて、2枚の透明な熱可塑性の樹脂板3aの片面に熱可塑性樹脂からなる接着剤を塗布し、その内側にカーボンクロス2を挟み積層して接着する方法と、接着剤を使用せず2枚の透明な樹脂板3aの間にカーボンクロス2を挟み込んで加熱し、熱可塑性の樹脂板3aを軟化させ接着を行う方法とにより、カーボンクロス2と表層材3を構成する樹脂板3aとが一体となったサンドイッチ構造のベース材1を作成する。
【0018】
サンドイッチ構造のベース材1を作成する目的は、表層材3を構成する樹脂板3aでカーボンクロス2を挟み込んで接着し一体化することで、予め織目を固定して織目文様の乱れをなくし、カーボンマットブラケット10を加圧成形する際、カーボンクロス2が表層材3の厚さの中央位置に来るようにすることである。
【0019】
尚、本実施例における表層材3については、厚さにおいて1mm未満をシート、1mm以上を板とする。また表層材3に使用する樹脂板3aの厚さにより熱可塑性樹脂が軟化する温度が異なるため、樹脂を軟化する際に100℃〜300℃の間で任意に温度が設定できるものとする。
【0020】
図2はカーボンマットブラケット10の成形法を示す図である。最初にカーボンクロス2と表層材3とが一体となったサンドイッチ構造のベース材1を作成し、次に該ベース材1の厚さに合わせ任意の温度で加熱して表層材3の熱可塑性樹脂を軟化させ、所定の形状の成形型6で加圧成形を行う2段階の成形法によりカーボンマットブラケット10を作成する。図2(a)に示す予め製品型6cが成形された成形型6の凹型6aと凸型6bとの間に、加熱して軟化させたベース材1を挟み込み加圧成形することで、図2(b)に示す所定の製品型6cの形状に型抜きされたカーボンマットブラケット10が成形される。
【0021】
図3の型抜きされたカーボンマットブラケット10で、その構造を説明する。図3(a)に示す型抜きされたカーボンマットブラケット10の斜視図より、作成したカーボンマットブラケット10の表面は、表層材3の樹脂層により滑らかで光沢があり、表面に浮き出るカーボンクロス2の織目文様にも乱れのない均一な仕上がりとなる。図3(b)に示すA−A断面図より、カーボンマットブラケット10は、予めサンドイッチ構造に成形したベース材1を使用することで、カーボンクロス2の位置が表層材3の断面の板厚中央に来るように成形される。カーボンクロス2を覆う透明な表層材3の厚さを均一に成形することで、カーボンクロス2の織目文様の見え方が、表層材3のレンズ効果による視覚的な歪み等の乱れが発生しない均一な見え方を確保することで、カーボンクロス2の織目文様に乱れのない均一な仕上がりとなり、デザイン性と強度を兼備えたカーボンマットブラケット10を作成することができる。
【0022】
尚、本実施例の補強繊維材として、カーボン繊維で織られたカーボンクロス2を主に説明したが、表層材で挟み込む補強繊維材で織られた織布材は、ガラス繊維、アラミド繊維等の化学繊維の織布であっても同様に作成することができる。
【0023】
以上、本発明のカーボンマットブラケットによれば、最初に透明な熱可塑性の表層材でカーボンクロスの両面を挟み込んで接着したカーボンマットブラケットのベース材を作成し、次にベース材を加熱して樹脂を軟化させ、成形型で加圧成形する2段階の成形法を実施することで、表面は表層材の厚さが均一な樹脂層により滑らかで光沢があり、且つカーボンクロスの織目文様にも乱れのない仕上がりとなり、強度とデザイン性を兼備えたカーボンマットブラケットを提供することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 ベース材
2 カーボンクロス(補強繊維材で織られた織布材に対応)
3 表層材
3a 樹脂板(熱可塑性樹脂に対応)
6 成形型
6a 凹型
6b 凸型
6c 製品型
10 カーボンマットブラケット
41 カーボンクロス
44 液体樹脂
45 容器
46 ローラ
47 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維材で織られた織布材と、該織布材の両面を熱可塑性樹脂からなる表層材を積層して接着されたベース材を、
成形型により前記ベース材を加熱して軟化させて加圧成形することで所定の形状に成形されることを特徴とするカーボンマットブラケット。
【請求項2】
前記補強繊維材が、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維を含む化学繊維からなること特徴とする請求項1記載のカーボンマットブラケット。
【請求項3】
前記ベース材の厚さに応じて、前記ベース材を軟化させる加熱の温度を任意に設定できることを特徴とする請求項1または請求項2記載のカーボンマットブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218581(P2011−218581A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87020(P2010−87020)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(510094746)
【Fターム(参考)】