ガイド波を用いた超音波検査装置および超音波検査方法
【課題】円筒部材の周方向の一部分に設置されたガイド波センサによる全周検査でガイド波センサを周方向に順次設置するとき、1回のガイド波センサの設置で検査する領域を広範囲にして、ガイド波センサの設置回数と測定回数を低減して検査に係わる時間を短縮する。
【解決手段】円筒部材の周方向の一部に第1センサ群1と第2センサ群2を測定する方向にガイド波波長未満の間隔で配置されたガイド波センサ3を用い、測定に使用する第1センサ群の超音波センサの個数を選定し、選定した超音波センサがガイド波センサの端からのセンサ群の超音波センサを接続する手順と、ガイド波センサの第1センサ群と第1超音波センサ群と同数の第2センサ群で送受信する手順と、ガイド波センサからの受信信号を信号処理部で処理する手順と、検査結果情報を表示部に表示する手順と、ガイド波センサを周方向の位置に取付ける手順を備える。
【解決手段】円筒部材の周方向の一部に第1センサ群1と第2センサ群2を測定する方向にガイド波波長未満の間隔で配置されたガイド波センサ3を用い、測定に使用する第1センサ群の超音波センサの個数を選定し、選定した超音波センサがガイド波センサの端からのセンサ群の超音波センサを接続する手順と、ガイド波センサの第1センサ群と第1超音波センサ群と同数の第2センサ群で送受信する手順と、ガイド波センサからの受信信号を信号処理部で処理する手順と、検査結果情報を表示部に表示する手順と、ガイド波センサを周方向の位置に取付ける手順を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径配管やタンクのような肉厚があるほぼ円筒形状をした構造物において、構造物の外面及び内面に発生する減肉や欠陥傷や変形などの部位の状態を、ガイド波を用いて長距離区間一括して検査するのに好適なガイド波を用いた超音波非破壊検査装置および非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等に使用されている配管等の円筒状構造物は、運転の経過と共に内外面から腐食、浸食が原因で劣化が生じてくる。この劣化が進行していくと配管から内容物が漏洩し、また配管破断等の事故の要因となる。そこで、これら事故を未然に防止するため、定期的に非破壊検査や目視検査などを行って配管等の健全性を確認している。
【0003】
従来からよく知られているように、配管の欠陥などの損傷個所を検査する非破壊検査装置として代表的なものにパルス反射法による超音波厚さ計がある。パルス反射法による厚さ測定は、材料表面から入射した材料中の超音波パルスの往復伝播時間を測定して、材料固有の伝播速度から伝播距離すなわち材料の厚みを算出するものである。
【0004】
プラントの配管検査では、一般にプラントを停止し、高所では足場を組み保温材を外してから一点一点測定するのが一般的である。しかし超音波厚さ装置は検査範囲が狭く、大口径配管やタンクのような大規模な構造物の検査には長い時間を要する。また、保温材がある箇所では検査前後の保温材取外し、取付け作業に要する時間も多大になる。
【0005】
また、ガイド波を利用した非破壊検査方法が提案されている(特許文献1参照)。ガイド波は配管や板等の境界面を有する物体中を伝播する超音波で、ガイド波非破壊検査方法は、ガイド波が配管の周方向断面積が変化する位置で反射する特徴を利用して、配管の長距離区間を一括して検査する方法であり、保温材を取外す箇所も低減される。
【0006】
特許文献1に記載されたガイド波を用いた非破壊検査装置は、配管全周にわたって複数の超音波センサを配置した第1センサ群および第2センサ群からなるガイド波センサを軸方向に並列に配置している。一対の第1センサ群と第2センサ群は同数の超音波センサを有し、互いに対応する一組のセンサとして同時に駆動され、配管の一方向にガイド波を送信する。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたガイド波を用いた非破壊検査装置は、円筒部材の周方向の一部に、第1センサ群および第2センサ群からなるガイド波センサを配置している。特に大径の円筒部材に用いられる周方向の一部にガイド波センサを配置する非破壊検査装置は、円筒部材の全周を検査する場合にガイド波センサを周方向に移動させながら検査する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平10−507530号公報
【特許文献2】特開2009−109390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
円筒部材の周方向の一部分に設置されたガイド波センサは、センサの長さ方向に対して垂直な円筒部材の軸方向にガイド波を送信すると、ガイド波信号の強度がセンサ中心から離れるにしたがって低下していくため検出性能が低下する。また、ガイド波信号の強度は、軸方向のセンサからの距離に対しても依存するため検出性能が悪くなる領域が生じる。
【0010】
そのため、非破壊検査でセンサを周方向に順次移動して設置する場合、検出性能が低下する領域をカバーするため、次にガイド波センサを設置するときは、ガイド波センサの端を重ね合わせて設置し測定する必要があり、重ね合わせた分だけガイド波センサの移動、設置回数と測定回数が増えるため、検査に係わる時間がかかる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、1回のガイド波センサの設置で検査する領域を広範囲にして、決められた範囲を検査する場合にガイド波センサを移動、設置する回数を削減し、ガイド波センサを設置する時間と測定回数を削減可能な、検査の工数と時間を短縮できるガイド波を用いた非破壊検査装置および非破壊検査装置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサと、ガイド波センサにおいて駆動される超音波センサを選択するセンサ切替部と、前記ガイド波センサで検出したガイド波信号を解析する信号処理解析部と、制御部とを有するガイド波を用いた超音波検査装置において、前記制御部は、前記センサ切替部を介して前記ガイド波センサの複数の超音波センサから任意の駆動パターンの超音波センサを選定して駆動することを特徴とする。
【0013】
また、ガイド波センサは、周方向に配列された複数の超音波センサからなる第1の超音波センサ群と、軸方向に並列に配置された同数の超音波センサからなる第2の超音波センサ群とを有し、前記駆動される超音波センサの選定は、前記第1の超音波センサ群と第2の超音波センサ群の各々対応する一組の超音波センサ組毎に行われることを特徴とする。
【0014】
また、所定のガイド波センサの超音波センサの駆動パターンは、組合わせによりガイド波センサに対応する円筒状部材の軸方向におけるガイド波信号の検出領域が最大になるように選定されることを特徴とする。
【0015】
また、ガイド波センサの駆動パターンは、超音波センサ全個数駆動パターンと、前記ガイド波センサ両端から任意幅の超音波センサを選定した部分駆動パターンの組合わせであることを特徴とする。
【0016】
また、部分駆動パターンは、ガイド波センサ両端から同一幅で設けられた駆動パターンであることを特徴とする。
【0017】
さらに、円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサを有するガイド波を用いた超音波検査方法において、測定に使用する前記ガイド波センサの超音波センサ群から所定個数の超音波センサを選定し、前記選定した超音波センサを超音波検査装置に接続する手順と、前記ガイド波センサから受信したガイド波信号を信号処理解析部で処理する手順と、信号処理解析部で処理した検査結果情報を表示する手順と、前記ガイド波センサを周方向の他の位置に取付ける手順とを備えることを特徴とする。
【0018】
さらに、ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサを選定する手順を備えることを特徴する。
【0019】
さらに、ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサは、前記ガイド波センサの端部から選定される超音波センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、1回のガイド波センサの設置において検査できる有効範囲を広げることができるので、決められた範囲を検査する場合に、設置によるガイド波センサの端を重ね合わせる量が少なくてすむため、設置回数や検査工数を減らすことができることから、検査に要する時間を短縮できるという効果を有する。
【0021】
また、本発明によれば、ガイド波センサの測定に使用するセンサの個数を任意に選定できるため、受信したセンサの位置により、減肉や欠陥の周方向の位置と軸方向の距離の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明実施形態のガイド波センサと検査装置を示すブロック図である。
【図2】本発明実施形態のガイド波を用いた検査方法のフローチャートである。
【図3A】本発明実施形態のガイド波センサの第1の送受信方法を示す模式図である。
【図3B】本発明実施形態のガイド波センサの第2の送受信方法を示す模式図である。
【図3C】本発明実施形態のガイド波センサの第3の送受信方法を示す模式図である。
【図3D】本発明実施形態のガイド波センサの第4の送受信方法を示す模式図である。
【図4】本発明実施形態の測定結果のイメージ表示を示す説明図である。
【図5A】本発明実施形態の欠陥位置が51部位の測定結果を示すグラフである。
【図5B】本発明実施形態の欠陥位置が53部位の測定結果を示すグラフである。
【図5C】本発明実施形態の欠陥位置が52部位の測定結果を示すグラフである。
【図5D】本発明実施形態の欠陥位置が53部位の測定結果を示すグラフである。
【図5E】本発明実施形態のセンサと欠陥位置の関係を示す模式図である。
【図6A】本発明実施形態のセンサ全駆動時の解析結果を示す模式図である。
【図6B】本発明実施形態のセンサ1/2駆動時の解析結果を示す模式図である。
【図6C】本発明実施形態のセンサ組合わせ時の解析結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態におけるガイド波を用いた検査方法の概要を、図1及び図2を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係るガイド波センサを有する超音波検査装置のブロック図を示し、図2は本発明の実施形態に係るガイド波を用いた超音波検査方法のフローチャートを示す。
【0025】
検査対象の構造部材として大口径の配管の検査を行う場合について、図面を用いて説明する。例えば、大口径配管の円周方向の一部分から検査を開始する場合、検査する位置は予め決定した部位に罫書き、テーピングなどで目印を付けておく。目印を付けた位置にガイド波センサ3を取付け、検査装置の機材のセッティングを行う(S101、S102)。
【0026】
ガイド波センサ3は、複数個の超音波センサを円周方向に測定周波数の波長以下の間隔で均等に一列に配列した第1センサ群1と、軸方向に平行に配列した同一の構成を持つ第2センサ群2で構成されている。第1センサ群1、第2センサ群2は、検査する方向、即ちガイド波送信方向に測定周波数の波長以下の間隔で平行に配置されている。配置した各々の超音波センサの入出力信号ケーブル10は、センサ切換部4に導かれ各々センサ切換部4のコネクタに自動的に接続される。ここで、各超音波センサの入出力信号ケーブル10を、後で記述する超音波センサの選定個数であらかじめ手動で並列に接続しコネクタ11に集結させて、センサ切換部4またはガイド波送受信部5のコネクタに接続しても良い。
【0027】
はじめに、入力部8からガイド波センサ3の使用する第1センサ群1の個数と位置を選定し、制御部7へ指令を入力する。制御部7はCPU、メモリ、及び制御プログラムを含んで構成され、超音波検査装置全体の動作を制御するとともに、センサ切換部4に入力情報の指令をだし、使用する第1センサ群1の超音波センサをコネクタ12で接続させる。
【0028】
図3A〜3Dに超音波センサの駆動パターンを示す。使用する第1センサ群1の超音波センサの駆動パターンは4種類あり、図3Aはセンサ群の超音波センサの全個数、図3Bはセンサ群の超音波センサの全個数に対して1/2個数、図3Cはセンサ群の超音波センサの全個数に対して1/2未満個数、図3Dはセンサ群の超音波センサの全個数に対して1/2を超える超音波センサの個数があるものを選定する。
【0029】
選定した第1センサ群1は、ずべて同じ動作と駆動をする。また、第2センサ群2は、第1センサ群1と同じ配置位置と同じ個数の超音波センサが自動的に選定され、同じ動作と駆動をする。ここで、使用する超音波センサの入出力信号ケーブル10をあらかじめ手動で選定した位置と個数の超音波センサを並列にコネクタ11に接続させて結線しても良い(S103)。
【0030】
測定を開始する際は、制御部7とガイド波送受信部5から同時に動作、駆動する第1センサ群1にガイド波を送信し、続いて同時に作動、駆動する第2センサ群2に遅延時間を与えてガイド波を送信し、検査方向と反対方向のガイド波を抑制する。
【0031】
送信されたガイド波に基づき、それぞれ第1センサ群1と第2センサ群2で検出したガイド波反射信号をガイド波送受信部5で受信する。受信信号は、A/D変換器が組み込まれてある信号処理解析部6により合成し、合成波形を出力部9に表示、出力して確認後、図示しない制御装置7内のメモリ内にデータを保存する。ガイド波送信波形、測定周波数、測定ゲインなど種々の検査条件での測定があれば繰返し測定を行う(S104、S105)。
【0032】
ガイド波センサ3を取付けた場所での測定が終了した場合は次のYesに進むが(S106)、選定する超音波センサの別の駆動パターンで測定する場合にはNoの矢印に進み、再度、使用する超音波センサの位置と個数を選定して再測定を実施する。通常の測定パターンは、図3A〜3Dに示したが、はじめの1回目の測定は、
(a)第1センサ群1、第2センサ群2の超音波センサの全個数を全部駆動するパターンで測定を行う。
【0033】
次の2回目以降の測定は、全駆動(a)で測定した検出性能が低下している領域をカバーするため、ガイド波センサ3の両端側を再度測定する必要がある。そのため、
(b)第1センサ群1の全個数に対し1/2個の超音波センサを駆動、または、
(c)第1センサ群1の全個数に対し1/2個未満の超音波センサを駆動、または、
(d)第1センサ群1の全個数に対して1/2個を超える超音波センサを駆動
させて、測定する駆動パターンを任意に選択する。
【0034】
これは、1回目の全駆動の測定で遠方までの検査が可能で、2回目以降の選定した超音波センサ個数の測定でガイド波センサ3の両端近傍の領域を検査することで、1回のガイド波センサ設置で検査範囲を広くすることを可能にするためである。なお、図3A〜3Dに示す各駆動パターンのセンサ群の超音波センサの選定は、順不同でも同じ検査結果が得られる。
【0035】
測定した1回目の測定結果と2回目の測定結果から、センサを取付けた場所からの減肉の位置、すなわちガイド波センサ3からの距離がわかる。測定結果の表示の一例を図5A〜5Eに示す。実際、配管に付与した模擬欠陥が、図5A〜5Dの欠陥信号E1、欠陥信号E2のように、ガイド波センサ3からの距離1.5mと2mの位置に検出されていることがわかる(S107、S108)。
【0036】
このように、円筒部材の周方向を順次、ガイド波センサ3のセンサ群の測定する位置と個数を選定し、測定した後、再び、ガイド波センサ3の取付け位置を移動して、全周または決められた検査範囲を測定していく(S109、S110、S111)。
【0037】
図4は大口径配管の周方向を移動させて全周検査した測定結果を表示させた場合のイメージを示す説明図である。周方向に欠陥21、欠陥22、欠陥23がガイド波センサ3から1.3m、4.3m、2.7mの距離にある場合、欠陥21は、ガイド波センサ3からの距離が1.3mと近いため全駆動では検出が難しく、他の3種類の駆動パターンで検出される可能性がある。欠陥21の位置は、2回目以降の測定で使用した超音波センサの位置情報で周方位は限定できる。
【0038】
一方、欠陥22はガイド波センサ3からの距離が4.3mと遠方のため、全駆動で測定したパターンだけ検出される可能性が有り、他の3種類の駆動パターンでの測定では検出性能は低下する。そのため、欠陥22の周方向の長さは、全駆動のガイド波センサ3長さ分が検出可能範囲となる。
【0039】
また、欠陥23はガイド波センサ3からの距離が2.7mで、4種類の駆動パターンで検出される可能性があり、ちょうど周方向の方位が180°の場合、図4のようにガイド波センサ3の測定したセンサ群の長さ分が欠陥23の範囲となるため、−180度、180度の位置に分割して表示されている。
【0040】
図5A〜5Dは、本実施形態の効果を確認するため、ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数を全駆動させて測定した場合とセンサ群の超音波センサ個数の1/2個数を駆動させて測定した場合の測定結果を示す波形図である。用いた配管試験体は、公称外径1117mm、厚さ9.5mm、内面には厚さ1mm以上のポリエチレンライニングが施工されており、ドリルによりポリエチレンライニングを除く断面積60mm2の模擬欠陥を1個(E1)と、軸方向にさらに500mm離れた位置に断面積120mm2の模擬欠陥を1個(E2)設けてある。
【0041】
ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数の全部を駆動して測定した場合、模擬欠陥E1が1.5mの距離でガイド波センサ3のセンサ群の中心51に位置するようにガイド波センサ3を取り付けて測定した結果、両方の模擬欠陥E1、E2は、図5Aに示すように有意な信号として検出されている。
【0042】
模擬欠陥E1が1.5mの距離で全部駆動のガイド波センサ3の端53に位置するようにガイド波センサ3を取付けて測定した結果、模擬欠陥E1、E2は、図5Bに示すようにSN比の悪い信号で検出されている。T1は試験体の管端からの反射信号である。
【0043】
一方、ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数を1/2駆動した場合、模擬欠陥E1が1.5mの距離でガイド波センサ3のセンサ群の中心52に位置するようにガイド波センサ3を取り付けて測定した結果、図5Cに示すように両方の模擬欠陥E1、E2は、有意な信号として検出されている。
【0044】
また、模擬欠陥E1が1.5mの距離で1/2駆動ガイド波センサ3の端53に位置するようにガイド波センサ3を取付けて測定した結果、模擬欠陥E1、E2は、図5Dに示すように有意な信号として検出されている。このことは、図5Eのガイド波センサ3のセンサ群の駆動による振幅の分布を解析した結果でもわかるように、超音波センサ個数を1/2駆動したガイド波センサ3の端53に位置する模擬欠陥E1は破線で示す50%振幅範囲内に有り感度が高く、解析結果と相対的に一致する。
【0045】
図5Eは、ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数を全部駆動、1/2駆動したときのガイド波信号振幅の分布を解析した結果を示すが、全部駆動時に位置53は破線で示す50%振幅範囲より外れている領域にあるため、振幅が小さくなる解析結果と一致する。
【0046】
図6A〜6Cにガイド波伝播挙動を解析した結果を模式図で示す。図6Aに示すように、第1センサ群の有効長690mmを全駆動させた時のガイド波の反射強度は、中心部が一番強く中心部から離れるに従って弱くなる。ここで、最大振幅値を100%とした時の50%振幅範囲を破線で示す。等高線は10%間隔で示す。センサ長さに対向する軸方向の範囲では、ガイド波センサ3からの距離1.5m〜2mでガイド波の相互干渉の影響で振幅低下が急激に現れる領域がある。
【0047】
一方、図6Bに示すように、第1センサ群の半分(1/2)に相当する有効長330mmを駆動させた時のガイド波の反射強度は、中心部が一番強く、中心部から離れるに従って弱くなる。センサ長さに対向する軸方向の範囲では、ガイド波センサ3からの距離による波の干渉の影響が少ない。
【0048】
したがって、図6Cに示すように、第1センサ群を全駆動させた時に生ずる振幅低下領域(図6C中の斜線領域)をカバーするには、ガイド波センサ3の端側から1/2駆動させた時、即ち、第1センサ群より少ない数のセンサ群の個数を駆動させる駆動パターンを用いた時の測定を組合せることで達成される。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態のガイド波を用いた非破壊検査方法によれば、周方向の一部に設置するガイド波センサに対しても、センサ群の超音波センサ個数を選定し測定することで、1回のガイド波センサの設置で、検査できる有効範囲を広げることができるので、決められた範囲を検査する場合、設置によるガイド波センサの端を重ね合わせる量が少なくてすむため、設置回数や検査工数を減らすことができることから、検査に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 第1センサ群
2 第2センサ群
3 ガイド波センサ
4 センサ切換部
5 ガイド波送受信部
6 信号処理解析部
7 制御部
8 入力部
9 出力部
E1 模擬欠陥からの反射信号1
E2 模擬欠陥からの反射信号2
T1 試験体の管端からの反射信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径配管やタンクのような肉厚があるほぼ円筒形状をした構造物において、構造物の外面及び内面に発生する減肉や欠陥傷や変形などの部位の状態を、ガイド波を用いて長距離区間一括して検査するのに好適なガイド波を用いた超音波非破壊検査装置および非破壊検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等に使用されている配管等の円筒状構造物は、運転の経過と共に内外面から腐食、浸食が原因で劣化が生じてくる。この劣化が進行していくと配管から内容物が漏洩し、また配管破断等の事故の要因となる。そこで、これら事故を未然に防止するため、定期的に非破壊検査や目視検査などを行って配管等の健全性を確認している。
【0003】
従来からよく知られているように、配管の欠陥などの損傷個所を検査する非破壊検査装置として代表的なものにパルス反射法による超音波厚さ計がある。パルス反射法による厚さ測定は、材料表面から入射した材料中の超音波パルスの往復伝播時間を測定して、材料固有の伝播速度から伝播距離すなわち材料の厚みを算出するものである。
【0004】
プラントの配管検査では、一般にプラントを停止し、高所では足場を組み保温材を外してから一点一点測定するのが一般的である。しかし超音波厚さ装置は検査範囲が狭く、大口径配管やタンクのような大規模な構造物の検査には長い時間を要する。また、保温材がある箇所では検査前後の保温材取外し、取付け作業に要する時間も多大になる。
【0005】
また、ガイド波を利用した非破壊検査方法が提案されている(特許文献1参照)。ガイド波は配管や板等の境界面を有する物体中を伝播する超音波で、ガイド波非破壊検査方法は、ガイド波が配管の周方向断面積が変化する位置で反射する特徴を利用して、配管の長距離区間を一括して検査する方法であり、保温材を取外す箇所も低減される。
【0006】
特許文献1に記載されたガイド波を用いた非破壊検査装置は、配管全周にわたって複数の超音波センサを配置した第1センサ群および第2センサ群からなるガイド波センサを軸方向に並列に配置している。一対の第1センサ群と第2センサ群は同数の超音波センサを有し、互いに対応する一組のセンサとして同時に駆動され、配管の一方向にガイド波を送信する。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたガイド波を用いた非破壊検査装置は、円筒部材の周方向の一部に、第1センサ群および第2センサ群からなるガイド波センサを配置している。特に大径の円筒部材に用いられる周方向の一部にガイド波センサを配置する非破壊検査装置は、円筒部材の全周を検査する場合にガイド波センサを周方向に移動させながら検査する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平10−507530号公報
【特許文献2】特開2009−109390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
円筒部材の周方向の一部分に設置されたガイド波センサは、センサの長さ方向に対して垂直な円筒部材の軸方向にガイド波を送信すると、ガイド波信号の強度がセンサ中心から離れるにしたがって低下していくため検出性能が低下する。また、ガイド波信号の強度は、軸方向のセンサからの距離に対しても依存するため検出性能が悪くなる領域が生じる。
【0010】
そのため、非破壊検査でセンサを周方向に順次移動して設置する場合、検出性能が低下する領域をカバーするため、次にガイド波センサを設置するときは、ガイド波センサの端を重ね合わせて設置し測定する必要があり、重ね合わせた分だけガイド波センサの移動、設置回数と測定回数が増えるため、検査に係わる時間がかかる。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、1回のガイド波センサの設置で検査する領域を広範囲にして、決められた範囲を検査する場合にガイド波センサを移動、設置する回数を削減し、ガイド波センサを設置する時間と測定回数を削減可能な、検査の工数と時間を短縮できるガイド波を用いた非破壊検査装置および非破壊検査装置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサと、ガイド波センサにおいて駆動される超音波センサを選択するセンサ切替部と、前記ガイド波センサで検出したガイド波信号を解析する信号処理解析部と、制御部とを有するガイド波を用いた超音波検査装置において、前記制御部は、前記センサ切替部を介して前記ガイド波センサの複数の超音波センサから任意の駆動パターンの超音波センサを選定して駆動することを特徴とする。
【0013】
また、ガイド波センサは、周方向に配列された複数の超音波センサからなる第1の超音波センサ群と、軸方向に並列に配置された同数の超音波センサからなる第2の超音波センサ群とを有し、前記駆動される超音波センサの選定は、前記第1の超音波センサ群と第2の超音波センサ群の各々対応する一組の超音波センサ組毎に行われることを特徴とする。
【0014】
また、所定のガイド波センサの超音波センサの駆動パターンは、組合わせによりガイド波センサに対応する円筒状部材の軸方向におけるガイド波信号の検出領域が最大になるように選定されることを特徴とする。
【0015】
また、ガイド波センサの駆動パターンは、超音波センサ全個数駆動パターンと、前記ガイド波センサ両端から任意幅の超音波センサを選定した部分駆動パターンの組合わせであることを特徴とする。
【0016】
また、部分駆動パターンは、ガイド波センサ両端から同一幅で設けられた駆動パターンであることを特徴とする。
【0017】
さらに、円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサを有するガイド波を用いた超音波検査方法において、測定に使用する前記ガイド波センサの超音波センサ群から所定個数の超音波センサを選定し、前記選定した超音波センサを超音波検査装置に接続する手順と、前記ガイド波センサから受信したガイド波信号を信号処理解析部で処理する手順と、信号処理解析部で処理した検査結果情報を表示する手順と、前記ガイド波センサを周方向の他の位置に取付ける手順とを備えることを特徴とする。
【0018】
さらに、ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサを選定する手順を備えることを特徴する。
【0019】
さらに、ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサは、前記ガイド波センサの端部から選定される超音波センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、1回のガイド波センサの設置において検査できる有効範囲を広げることができるので、決められた範囲を検査する場合に、設置によるガイド波センサの端を重ね合わせる量が少なくてすむため、設置回数や検査工数を減らすことができることから、検査に要する時間を短縮できるという効果を有する。
【0021】
また、本発明によれば、ガイド波センサの測定に使用するセンサの個数を任意に選定できるため、受信したセンサの位置により、減肉や欠陥の周方向の位置と軸方向の距離の推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明実施形態のガイド波センサと検査装置を示すブロック図である。
【図2】本発明実施形態のガイド波を用いた検査方法のフローチャートである。
【図3A】本発明実施形態のガイド波センサの第1の送受信方法を示す模式図である。
【図3B】本発明実施形態のガイド波センサの第2の送受信方法を示す模式図である。
【図3C】本発明実施形態のガイド波センサの第3の送受信方法を示す模式図である。
【図3D】本発明実施形態のガイド波センサの第4の送受信方法を示す模式図である。
【図4】本発明実施形態の測定結果のイメージ表示を示す説明図である。
【図5A】本発明実施形態の欠陥位置が51部位の測定結果を示すグラフである。
【図5B】本発明実施形態の欠陥位置が53部位の測定結果を示すグラフである。
【図5C】本発明実施形態の欠陥位置が52部位の測定結果を示すグラフである。
【図5D】本発明実施形態の欠陥位置が53部位の測定結果を示すグラフである。
【図5E】本発明実施形態のセンサと欠陥位置の関係を示す模式図である。
【図6A】本発明実施形態のセンサ全駆動時の解析結果を示す模式図である。
【図6B】本発明実施形態のセンサ1/2駆動時の解析結果を示す模式図である。
【図6C】本発明実施形態のセンサ組合わせ時の解析結果を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態におけるガイド波を用いた検査方法の概要を、図1及び図2を用いて説明する。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係るガイド波センサを有する超音波検査装置のブロック図を示し、図2は本発明の実施形態に係るガイド波を用いた超音波検査方法のフローチャートを示す。
【0025】
検査対象の構造部材として大口径の配管の検査を行う場合について、図面を用いて説明する。例えば、大口径配管の円周方向の一部分から検査を開始する場合、検査する位置は予め決定した部位に罫書き、テーピングなどで目印を付けておく。目印を付けた位置にガイド波センサ3を取付け、検査装置の機材のセッティングを行う(S101、S102)。
【0026】
ガイド波センサ3は、複数個の超音波センサを円周方向に測定周波数の波長以下の間隔で均等に一列に配列した第1センサ群1と、軸方向に平行に配列した同一の構成を持つ第2センサ群2で構成されている。第1センサ群1、第2センサ群2は、検査する方向、即ちガイド波送信方向に測定周波数の波長以下の間隔で平行に配置されている。配置した各々の超音波センサの入出力信号ケーブル10は、センサ切換部4に導かれ各々センサ切換部4のコネクタに自動的に接続される。ここで、各超音波センサの入出力信号ケーブル10を、後で記述する超音波センサの選定個数であらかじめ手動で並列に接続しコネクタ11に集結させて、センサ切換部4またはガイド波送受信部5のコネクタに接続しても良い。
【0027】
はじめに、入力部8からガイド波センサ3の使用する第1センサ群1の個数と位置を選定し、制御部7へ指令を入力する。制御部7はCPU、メモリ、及び制御プログラムを含んで構成され、超音波検査装置全体の動作を制御するとともに、センサ切換部4に入力情報の指令をだし、使用する第1センサ群1の超音波センサをコネクタ12で接続させる。
【0028】
図3A〜3Dに超音波センサの駆動パターンを示す。使用する第1センサ群1の超音波センサの駆動パターンは4種類あり、図3Aはセンサ群の超音波センサの全個数、図3Bはセンサ群の超音波センサの全個数に対して1/2個数、図3Cはセンサ群の超音波センサの全個数に対して1/2未満個数、図3Dはセンサ群の超音波センサの全個数に対して1/2を超える超音波センサの個数があるものを選定する。
【0029】
選定した第1センサ群1は、ずべて同じ動作と駆動をする。また、第2センサ群2は、第1センサ群1と同じ配置位置と同じ個数の超音波センサが自動的に選定され、同じ動作と駆動をする。ここで、使用する超音波センサの入出力信号ケーブル10をあらかじめ手動で選定した位置と個数の超音波センサを並列にコネクタ11に接続させて結線しても良い(S103)。
【0030】
測定を開始する際は、制御部7とガイド波送受信部5から同時に動作、駆動する第1センサ群1にガイド波を送信し、続いて同時に作動、駆動する第2センサ群2に遅延時間を与えてガイド波を送信し、検査方向と反対方向のガイド波を抑制する。
【0031】
送信されたガイド波に基づき、それぞれ第1センサ群1と第2センサ群2で検出したガイド波反射信号をガイド波送受信部5で受信する。受信信号は、A/D変換器が組み込まれてある信号処理解析部6により合成し、合成波形を出力部9に表示、出力して確認後、図示しない制御装置7内のメモリ内にデータを保存する。ガイド波送信波形、測定周波数、測定ゲインなど種々の検査条件での測定があれば繰返し測定を行う(S104、S105)。
【0032】
ガイド波センサ3を取付けた場所での測定が終了した場合は次のYesに進むが(S106)、選定する超音波センサの別の駆動パターンで測定する場合にはNoの矢印に進み、再度、使用する超音波センサの位置と個数を選定して再測定を実施する。通常の測定パターンは、図3A〜3Dに示したが、はじめの1回目の測定は、
(a)第1センサ群1、第2センサ群2の超音波センサの全個数を全部駆動するパターンで測定を行う。
【0033】
次の2回目以降の測定は、全駆動(a)で測定した検出性能が低下している領域をカバーするため、ガイド波センサ3の両端側を再度測定する必要がある。そのため、
(b)第1センサ群1の全個数に対し1/2個の超音波センサを駆動、または、
(c)第1センサ群1の全個数に対し1/2個未満の超音波センサを駆動、または、
(d)第1センサ群1の全個数に対して1/2個を超える超音波センサを駆動
させて、測定する駆動パターンを任意に選択する。
【0034】
これは、1回目の全駆動の測定で遠方までの検査が可能で、2回目以降の選定した超音波センサ個数の測定でガイド波センサ3の両端近傍の領域を検査することで、1回のガイド波センサ設置で検査範囲を広くすることを可能にするためである。なお、図3A〜3Dに示す各駆動パターンのセンサ群の超音波センサの選定は、順不同でも同じ検査結果が得られる。
【0035】
測定した1回目の測定結果と2回目の測定結果から、センサを取付けた場所からの減肉の位置、すなわちガイド波センサ3からの距離がわかる。測定結果の表示の一例を図5A〜5Eに示す。実際、配管に付与した模擬欠陥が、図5A〜5Dの欠陥信号E1、欠陥信号E2のように、ガイド波センサ3からの距離1.5mと2mの位置に検出されていることがわかる(S107、S108)。
【0036】
このように、円筒部材の周方向を順次、ガイド波センサ3のセンサ群の測定する位置と個数を選定し、測定した後、再び、ガイド波センサ3の取付け位置を移動して、全周または決められた検査範囲を測定していく(S109、S110、S111)。
【0037】
図4は大口径配管の周方向を移動させて全周検査した測定結果を表示させた場合のイメージを示す説明図である。周方向に欠陥21、欠陥22、欠陥23がガイド波センサ3から1.3m、4.3m、2.7mの距離にある場合、欠陥21は、ガイド波センサ3からの距離が1.3mと近いため全駆動では検出が難しく、他の3種類の駆動パターンで検出される可能性がある。欠陥21の位置は、2回目以降の測定で使用した超音波センサの位置情報で周方位は限定できる。
【0038】
一方、欠陥22はガイド波センサ3からの距離が4.3mと遠方のため、全駆動で測定したパターンだけ検出される可能性が有り、他の3種類の駆動パターンでの測定では検出性能は低下する。そのため、欠陥22の周方向の長さは、全駆動のガイド波センサ3長さ分が検出可能範囲となる。
【0039】
また、欠陥23はガイド波センサ3からの距離が2.7mで、4種類の駆動パターンで検出される可能性があり、ちょうど周方向の方位が180°の場合、図4のようにガイド波センサ3の測定したセンサ群の長さ分が欠陥23の範囲となるため、−180度、180度の位置に分割して表示されている。
【0040】
図5A〜5Dは、本実施形態の効果を確認するため、ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数を全駆動させて測定した場合とセンサ群の超音波センサ個数の1/2個数を駆動させて測定した場合の測定結果を示す波形図である。用いた配管試験体は、公称外径1117mm、厚さ9.5mm、内面には厚さ1mm以上のポリエチレンライニングが施工されており、ドリルによりポリエチレンライニングを除く断面積60mm2の模擬欠陥を1個(E1)と、軸方向にさらに500mm離れた位置に断面積120mm2の模擬欠陥を1個(E2)設けてある。
【0041】
ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数の全部を駆動して測定した場合、模擬欠陥E1が1.5mの距離でガイド波センサ3のセンサ群の中心51に位置するようにガイド波センサ3を取り付けて測定した結果、両方の模擬欠陥E1、E2は、図5Aに示すように有意な信号として検出されている。
【0042】
模擬欠陥E1が1.5mの距離で全部駆動のガイド波センサ3の端53に位置するようにガイド波センサ3を取付けて測定した結果、模擬欠陥E1、E2は、図5Bに示すようにSN比の悪い信号で検出されている。T1は試験体の管端からの反射信号である。
【0043】
一方、ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数を1/2駆動した場合、模擬欠陥E1が1.5mの距離でガイド波センサ3のセンサ群の中心52に位置するようにガイド波センサ3を取り付けて測定した結果、図5Cに示すように両方の模擬欠陥E1、E2は、有意な信号として検出されている。
【0044】
また、模擬欠陥E1が1.5mの距離で1/2駆動ガイド波センサ3の端53に位置するようにガイド波センサ3を取付けて測定した結果、模擬欠陥E1、E2は、図5Dに示すように有意な信号として検出されている。このことは、図5Eのガイド波センサ3のセンサ群の駆動による振幅の分布を解析した結果でもわかるように、超音波センサ個数を1/2駆動したガイド波センサ3の端53に位置する模擬欠陥E1は破線で示す50%振幅範囲内に有り感度が高く、解析結果と相対的に一致する。
【0045】
図5Eは、ガイド波センサ3のセンサ群の超音波センサ個数を全部駆動、1/2駆動したときのガイド波信号振幅の分布を解析した結果を示すが、全部駆動時に位置53は破線で示す50%振幅範囲より外れている領域にあるため、振幅が小さくなる解析結果と一致する。
【0046】
図6A〜6Cにガイド波伝播挙動を解析した結果を模式図で示す。図6Aに示すように、第1センサ群の有効長690mmを全駆動させた時のガイド波の反射強度は、中心部が一番強く中心部から離れるに従って弱くなる。ここで、最大振幅値を100%とした時の50%振幅範囲を破線で示す。等高線は10%間隔で示す。センサ長さに対向する軸方向の範囲では、ガイド波センサ3からの距離1.5m〜2mでガイド波の相互干渉の影響で振幅低下が急激に現れる領域がある。
【0047】
一方、図6Bに示すように、第1センサ群の半分(1/2)に相当する有効長330mmを駆動させた時のガイド波の反射強度は、中心部が一番強く、中心部から離れるに従って弱くなる。センサ長さに対向する軸方向の範囲では、ガイド波センサ3からの距離による波の干渉の影響が少ない。
【0048】
したがって、図6Cに示すように、第1センサ群を全駆動させた時に生ずる振幅低下領域(図6C中の斜線領域)をカバーするには、ガイド波センサ3の端側から1/2駆動させた時、即ち、第1センサ群より少ない数のセンサ群の個数を駆動させる駆動パターンを用いた時の測定を組合せることで達成される。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態のガイド波を用いた非破壊検査方法によれば、周方向の一部に設置するガイド波センサに対しても、センサ群の超音波センサ個数を選定し測定することで、1回のガイド波センサの設置で、検査できる有効範囲を広げることができるので、決められた範囲を検査する場合、設置によるガイド波センサの端を重ね合わせる量が少なくてすむため、設置回数や検査工数を減らすことができることから、検査に要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 第1センサ群
2 第2センサ群
3 ガイド波センサ
4 センサ切換部
5 ガイド波送受信部
6 信号処理解析部
7 制御部
8 入力部
9 出力部
E1 模擬欠陥からの反射信号1
E2 模擬欠陥からの反射信号2
T1 試験体の管端からの反射信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサと、ガイド波センサにおいて駆動される超音波センサを選択するセンサ切替部と、前記ガイド波センサで検出したガイド波信号を解析する信号処理解析部と、制御部とを有するガイド波を用いた超音波検査装置において、
前記制御部は、前記センサ切替部を介して前記ガイド波センサの複数の超音波センサから任意の駆動パターンの超音波センサを選定して駆動することを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記ガイド波センサは、周方向に配列された複数の超音波センサからなる第1の超音波センサ群と、軸方向に並列に配置された同数の超音波センサからなる第2の超音波センサ群とを有し、前記駆動される超音波センサの選定は、前記第1の超音波センサ群と第2の超音波センサ群の各々対応する一組の超音波センサ組毎に行われることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記ガイド波センサの超音波センサの駆動パターンは、組合わせによりガイド波センサに対応する円筒状部材の軸方向におけるガイド波信号の検出領域が最大になるように選定されることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記ガイド波センサの駆動パターンは、超音波センサ全個数駆動パターンと、前記ガイド波センサ両端から任意幅の超音波センサを選定した部分駆動パターンの組合わせであることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記部分駆動パターンは、ガイド波センサ両端から同一幅で設けられた駆動パターンであることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項6】
円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサを有するガイド波を用いた超音波検査方法において、
測定に使用する前記ガイド波センサの超音波センサ群から所定個数の超音波センサを選定し、前記選定した超音波センサを超音波検査装置に接続する手順と、
前記ガイド波センサから受信したガイド波信号を信号処理解析部で処理する手順と、
信号処理解析部で処理した検査結果情報を表示する手順と、
前記ガイド波センサを周方向の他の位置に取付ける手順と
を備えることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載されたガイド波を用いた超音波検査方法において、
前記ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサを選定する手順を備えることを特徴するガイド波を用いた超音波検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載されたガイド波を用いた超音波検査方法において、
前記ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサは、前記ガイド波センサの端部から選定される超音波センサであることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査方法。
【請求項1】
円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサと、ガイド波センサにおいて駆動される超音波センサを選択するセンサ切替部と、前記ガイド波センサで検出したガイド波信号を解析する信号処理解析部と、制御部とを有するガイド波を用いた超音波検査装置において、
前記制御部は、前記センサ切替部を介して前記ガイド波センサの複数の超音波センサから任意の駆動パターンの超音波センサを選定して駆動することを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記ガイド波センサは、周方向に配列された複数の超音波センサからなる第1の超音波センサ群と、軸方向に並列に配置された同数の超音波センサからなる第2の超音波センサ群とを有し、前記駆動される超音波センサの選定は、前記第1の超音波センサ群と第2の超音波センサ群の各々対応する一組の超音波センサ組毎に行われることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記ガイド波センサの超音波センサの駆動パターンは、組合わせによりガイド波センサに対応する円筒状部材の軸方向におけるガイド波信号の検出領域が最大になるように選定されることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記ガイド波センサの駆動パターンは、超音波センサ全個数駆動パターンと、前記ガイド波センサ両端から任意幅の超音波センサを選定した部分駆動パターンの組合わせであることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたガイド波を用いた超音波検査装置において、前記部分駆動パターンは、ガイド波センサ両端から同一幅で設けられた駆動パターンであることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査装置。
【請求項6】
円筒状部材の周方向に配置されるとともにガイド波の送受信を行う複数の超音波センサを有するガイド波センサを有するガイド波を用いた超音波検査方法において、
測定に使用する前記ガイド波センサの超音波センサ群から所定個数の超音波センサを選定し、前記選定した超音波センサを超音波検査装置に接続する手順と、
前記ガイド波センサから受信したガイド波信号を信号処理解析部で処理する手順と、
信号処理解析部で処理した検査結果情報を表示する手順と、
前記ガイド波センサを周方向の他の位置に取付ける手順と
を備えることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載されたガイド波を用いた超音波検査方法において、
前記ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサを選定する手順を備えることを特徴するガイド波を用いた超音波検査方法。
【請求項8】
請求項7に記載されたガイド波を用いた超音波検査方法において、
前記ガイド波センサの超音波センサより少ない個数の超音波センサは、前記ガイド波センサの端部から選定される超音波センサであることを特徴とするガイド波を用いた超音波検査方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【公開番号】特開2011−21892(P2011−21892A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164412(P2009−164412)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】
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