ガイド装置
【課題】直線部や曲線部をガイドでき、移動速度や移動距離が大きく取れ、騒音や振動を抑制し、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を一致させることのできるガイド装置や、動力伝達機構が備えられたガイド装置の提供。
【解決手段】ガイド溝の対向する内側面にガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、接触領域上にガイドローラ外周面を接触させ、該ガイドローラを挟む形に非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個のガイドローラを備える。ガイドローラ外周面を傾斜させて接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面としたり、少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与したり、導電接触帯と接触子を備えたり、ラックギアとピニオンギアを備えたり、動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えたりしたガイド装置とする。
【解決手段】ガイド溝の対向する内側面にガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、接触領域上にガイドローラ外周面を接触させ、該ガイドローラを挟む形に非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個のガイドローラを備える。ガイドローラ外周面を傾斜させて接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面としたり、少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与したり、導電接触帯と接触子を備えたり、ラックギアとピニオンギアを備えたり、動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えたりしたガイド装置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドの語は、直線方向や平面的な広がりをもった方向の滑り案内に用いるのが機械分野の用語としては一般的であるが、家具の引き出しや車両座席における転がり案内機構がスライドレールの部品名を持つ用例に従い、以下の記載では、スライドの語を直線方向や平面的な広がりをもった方向の転がり案内をも含む広い意味を持つものとして使用している。
【0003】
ガイド装置は主に車輌や機械等のスライド運動を制御するための不可欠の装置である。通常、ガイド装置は固定側部分と運動側部分とから成っており、例えば、鉄道車輌を一種のガイド装置の応用と見ると、地面に置かれるレールが固定側部分に相当し、車両を走行自在に支える車輪が運動側部分となって、両者を合わせてガイド装置を構成する。ガイド装置は、使用される目的によって高負荷に耐えられるものや、高精度な運動軌跡が得られるもの、高速度のスライド運動が可能なものなど種々の形式が提案されるが、スライド運動の方向を直線、もしくは、直線に近い曲線とするガイド装置が殆どである。
【0004】
スライド運動の方向を直線、もしくは、直線に近い曲線とするガイド装置としては、先に述べたレールと車輪の組み合わせによる鉄道車両におけるガイド装置が代表的である。この種のガイド装置は、荷重を受けられる方向が重力の働く方向に限られる上、敷設可能なレールの曲率には限界があるので、大きく運動方向を変えるガイドには適さないものであった。このため、荷重を受ける車輪以外にレールの側部を挟む車輪を付加して、急カーブのある曲線軌跡をガイド可能なものとした工夫も見られるが、直線部と曲部の組み合わされた方向での高精度な運動軌跡を望む機械装置のガイド装置として用いるには不適切であった。また、車輪を摺動部に換えたガイド装置も従来から多種あるが、これらのガイド装置は、潤滑や冷却に問題が生じやすく、潤滑や冷却が適切に行われなかった場合には摺動部の急激な損耗が避けられない理由から、運動速度が高い場合や運動距離が大きいガイド装置としては適さないものであった。
【0005】
上記の不都合を解消するため、例えば、特許文献1の実開平5−44906号公報に記載された技術のように、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置が提案されている。上記ガイド装置はガイドローラを断面形状が略コ字型のガイド溝の内側面に接触転動させるので、ガイド溝が曲げられた箇所ではガイドローラの走行方向も曲げられ、取り付けられた載荷台を直線や曲線の混在した経路に沿ってガイドすることができるものである。
【0006】
しかし、特許文献1で提案されたガイド装置の構造では、ガイド溝の接触領域上の地点におけるガイドローラ外周部はガイド溝の内側面に接触しているので相対速度がゼロであるのに対し、接触している前記の地点から最遠地点である180度隔てたガイドローラ外周部の地点における相対速度は、ガイドローラ中心が移動する速度の2倍になる。このため、ガイド溝に置かれたガイドローラを円滑に転動させるためには、ガイド溝のガイドローラ接触点反対側となるガイド溝の内側面とガイドローラとの間に接触を避けることができる適正な距離の間隙が必要となる。この間隙が過小な場合には、ガイドローラが転動ではなく摺動することとなり、ガイド溝内の両側面に接触しながら擦れ合うことで、ガイド溝やガイドローラを損耗させてガイド装置の精度や安定性を損なうことになる。また仮に、前記ガイド溝の内側面とガイドローラの間の間隙が適正なものであっても、間隙そのものの存在によってガイド装置の精度や安定性が一定のレベル以上には向上できないという問題点や、ガイド溝の内側面とガイドローラの間の間隙が騒音や振動の主な発生源となるという問題点があった。
【0007】
他には、特許文献2の特開平11−37154号公報に記載された直線ガイド装置や、特許文献3の特開2000−320641号公報に記載された直動装置、特許文献4の特開2004−162748号公報記載の運動案内装置、ボールねじ及びボール転走溝の製造装置の技術も提案されている。また市場には、特殊な断面形状の軌条にコロやボールを介して支持される運動側部品を組み込んだ高精度の直動ガイド装置や、固有曲率の曲線部をガイドする円弧ガイド装置も商品として供給されている。しかし、これら上記のガイド装置はすべて直線的な軌条と曲線軌条を混在させることが出来ないものであり、円弧ガイド装置は固有曲率の曲線部においてのみ使用できるものであった。
【0008】
ガイド装置を使用して精度の高いスライド運動の軌跡を得たい場合には、スライド運動の制御ばかりではなく電力や電気信号についても伝達する必要がある場合も多くあり、上記場合には、運動の軌跡と電力や電気信号の伝達軌跡を一致させることが求められる。しかし、従来はガイド装置と電力や電気信号の伝達装置を別個に用いるものであって、ガイド装置の運動軌跡と電力や電気信号の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることが困難であった。このため多くの場合には、両者の運動軌跡の齟齬を解消するために付加するコードリール装置やパンタグラフなどの機構が必要となり、機器や装置が大型化する原因になっていた。
【0009】
また、ガイド装置を使用して精度の高いスライド運動の軌跡を得たい場合には、スライド運動の制御ばかりではなく動力についても伝達する必要がある場合も多い。上記の場合には、運動の軌跡と動力の伝達軌跡を一致させることが求められ、商品として市場にも供給されている。しかし、市場に供給されている上記商品は小型のガイド装置に限定され、しかも、ガイド装置と平行する位置に動力の伝達装置が備えられている直線ガイド装置と半径の固定された円弧運動専用のガイド装置を除いては、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置は事実上皆無と言える。
【特許文献1】実開平5−44906号公報
【特許文献2】特開平11−37154号公報
【特許文献3】特開2000−320641号公報
【特許文献4】特開2004−162748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記種々の問題を解決すべくなされたもので、簡単な構造でありながら、直線部を含め様々な曲率の曲線部を精度良く円滑にガイドできるとともに、移動速度や移動距離が大きく取れるガイド装置を提供することを目的とするものである。また、スラスト方向の荷重にも耐えることができ、スライド運動時に発生しがちな騒音や振動を抑制し、耐久性にも優れたガイド装置の提供を目指すとともに、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのできるガイド装置や、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置の提供を目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置において、ガイド溝の対向する内側面の夫々にガイド溝の走行方向に平行なガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、ガイド溝の対向する内側面の一方に設けた接触領域上にガイドローラ外周面を接触させるとともに、該ガイドローラを挟む形にガイド溝内側面の他方に設けた非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個の前記ガイドローラを夫々が独立に回転可能として備えることを特徴とするガイド装置とする。
【0012】
また、ガイドローラ外周面をガイドローラ軸に対して傾斜させるとともに、ガイド溝の対向する内側面に設ける接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面としたり、ガイド溝に嵌合して接触領域上を接触転動させる少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与したりしたガイド装置にする。
【0013】
あるいは、上記ガイド溝に沿って電気の授受が可能な導電接触帯を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記導電接触帯と対をなす接触子を備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿ってラックギアを備えるとともに、ガイドローラ軸上にラックギアと対をなすピニオンギアを備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿って動力伝達索を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えたりしたガイド装置にする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置において、ガイド溝の対向する内側面の夫々にガイド溝の走行方向に平行なガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、ガイド溝の対向する内側面の一方に設けた接触領域上にガイドローラ外周面を接触させるとともに、該ガイドローラを挟む形にガイド溝内側面の他方に設けた非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個の前記ガイドローラを夫々が独立に回転可能として備えることを特徴とするガイド装置としたことによって、簡単な構造でありながら、直線部を含め様々な曲率の曲線部を精度良く円滑にガイドできるとともに、移動速度や移動距離が大きく取れるガイド装置を提供することができたものである。
【0015】
また、上記のガイド装置のガイドローラ外周面をガイドローラ軸に対して傾斜させるとともに、ガイド溝の対向する内側面に設ける接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面としたり、ガイド溝に嵌合して接触領域上を接触転動させる少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与したりしたガイド装置としたことによって、スラスト方向の荷重にも耐えることができ、スライド運動時に発生しがちな騒音や振動を抑制し、耐久性にも優れたガイド装置を実現できたものである。
【0016】
さらに、上記ガイド溝に沿って電気の授受が可能な導電接触帯を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記導電接触帯と対をなす接触子を備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿ってラックギアを備えるとともに、ガイドローラ軸上にラックギアと対をなすピニオンギアを備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿って動力伝達索を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えたりしたガイド装置としたことで、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのできるガイド装置の提供ができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。図1は、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の対向する内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式の本発明ガイド装置の概略を示した斜視図である。一般に長尺寸法となるガイド溝は前後を切り取って要部のみを図示すが、1が本発明ガイド装置、2はガイド溝、3はガイド溝の内側面、4はガイドローラ、であり、5はガイドローラ外周面である。また、6は後述するガイド溝3内側面上の接触領域、7は非接触領域であり、8はガイドローラ軸である。本発明ガイド装置1は、ガイド溝2の対向する内側面3の夫々にガイド溝2の走行方向に平行なガイドローラ4外周面5の接触領域6と非接触領域7を設け、ガイド溝2の対向する内側面3の内の一方に設けた接触領域6にガイドローラ4外周面5を接触させ、該ガイドローラ4を挟む形に、内側面3の他方に設けた非接触領域7を位置させる一方、前記ガイド溝2の内側面3に設けた接触領域上6を夫々が独立に回転可能で中心を共通のガイドローラ軸8上に置いた複数個のガイドローラ4を備えている。
【0018】
ガイド溝2には強靭な材料を使用し、加工後における必要な厚さを確保して機械的な強度を満たすのは言うまでもないが、ガイド溝2内側面に設ける接触領域6やガイドローラ4外周面5は高精度に加工して表面の凹凸を取り除いておく。また、ガイド溝2内側面3にガイドローラ軸8を組み付ける際には、複数個のガイドローラ4の夫々がガイド溝2内側面3に設ける接触領域上をガイドローラ軸8に組み付けられた状態で動揺することなく円滑に転動できるように、各部の寸法は厳正に管理し、ガイドローラ4とガイド溝2の間には必要により適宜与圧をする。
【0019】
本発明ガイド装置1は、ガイド溝2を固定側として所望の機器や装置の一端に固定する一方、適宜方法を用いてガイドローラ軸8を機器や装置の他端に固定する、あるいは、上記関係を逆の構成とすることで、容易に機器や装置上にガイド機構を構築することができる。図1のガイド装置1は、1個のガイド溝2と2個のガイドローラ4が取付けられた1本のガイドローラ軸8から構成されるが、機器や装置上にガイド機構を構築する際には、必要により複数組のガイド装置1を対向位置に備えたり、1個のガイド溝2に複数個のガイドローラ軸8を組み合わせたりするとよい。
【0020】
図2は、図1に示した本発明ガイド装置1をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。図の右方より2個のガイドローラ4を同軸上に並置したガイドローラ軸8がガイドローラ4をガイド溝2に嵌合させる形に置かれている。2個のガイドローラ4はガイドローラ軸8上で独立して回動自在である。ガイドローラ4の夫々は、ガイド溝2の対向する内側面上に固有の接触領域6を持つが、これを同図では、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドロール4はガイド溝2上側内側面に、ガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドロール4はガイド溝2下側内側面に専用の接触領域6として備えている。ガイドローラ4の外周面5は、ガイド溝2の内側面に設けられた接触領域6のみで接触するので、ガイド装置1の運動側部分である2個のガイドローラ4を備えたガイドローラ軸8がガイド溝2上を紙面の奥から手前に向かって移動する場合に、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドロール4はガイドロール4の手前側が下から上に向かって回転し、ガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドロール4はガイドローラ4手前側が上から下へと回転する。図中のガイドローラ4に描いた矢印は、夫々のガイドローラ4の回転方向を示すものである。
【0021】
図15は、特許文献1で提案された従来のガイド装置9の構造を前記特許文献1の図面中の図4からガイド装置に係る部分を抽出して描いた側面図であり、図中の番号は他の各図に用いるものと同じである。図示した従来のガイド装置9では、ガイド溝2に置かれたガイドローラ4を円滑に転動させるために、ガイド溝2のガイドローラ接触点の反対側(同図では、ガイドローラ4の頂上)となるガイド溝2の内側面3とガイドローラ4の間に接触を避けることができる適正な距離の間隙10が必要となる。この間隙10がなければ、ガイドローラ4がガイド溝2内の両側面に擦れ合うことで短期間の内にガイド装置の精度や安定性を損なうことになる。また仮に、前記ガイド溝2の内側面とガイドローラ4の間の間隙10が適切な距離であっても、間隙10そのものの存在によってガイド装置の精度や安定性が一定のレベル以上には向上できないという問題点や、ガイド溝2の内側面3とガイドローラ4間の間隙10が騒音や振動の主な発生源となるという問題点があることは先に述べた。
【0022】
ここで再び、図2に戻って本発明ガイド装置1について説明すると、本発明ガイド装置1においても夫々のガイドローラ4の接触領域6上の接点から180度隔てたガイド溝2内側面3にはガイドローラ4の非接触領域7が設けられることから、ガイドローラ4とガイド溝2内側面3の間には、従来のガイド装置と同様に間隙10が存在することになる。しかし、本発明ガイド装置1においては、1個のガイドローラ軸8上に並置される少なくとも2個のガイドローラ4の接触領域6がガイド溝2内側面3上で互い違いに配置されているために、実質的にガイドローラ4とガイド溝2内側面3の間には間隙10を持たない構造である。しかも、夫々のガイドローラ4外周面5はガイド溝2内側面3の接触領域6以外に接触しないので、ガイドローラ4がガイド溝2内の2つの内側面3に同時に擦れ合うことで短期間の内にガイド装置の精度や安定性を損なうという問題から開放される。また、間隙10そのものの存在によってガイド装置の精度や安定性が一定のレベル以上には向上できないという問題点や、ガイド溝2内側面3とガイドローラ4との間隙10が騒音や振動の主な発生源となるという問題点も解決されたものである。
【0023】
図3は、ガイド溝2が水平方向から垂直方向へと変化する地点における本発明ガイド装置1を示した斜視図である。本発明ガイド装置1は、ガイド溝2を固定側として所望の機器や装置の一端に固定する一方、適宜方法を用いてガイドローラ軸8を機器や装置の他端に固定する、あるいは、上記関係を逆の構成とすることで、容易に機器や装置上にガイド機構を構築することができるが、ガイド溝2に直線と曲線が混在したり、ガイド溝2の取り付けられる方向が水平以外の場合であったりしても支障無いものである。
【0024】
例えば今、ガイド溝2を固定側として所望の機器や装置の一端に固定する一方、適宜方法を用いてガイドローラ軸8を機器や装置の他端に固定した図示の場合には、ガイド溝2が水平に近い角度で位置している際に、ガイド溝2に置かれるガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドローラ4には重力によって機器や装置の荷重が掛かり、ガイドローラ4外周面5がガイド溝2内側面3の下側の接触領域6に押し付けられるとともに、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドローラ4もガイドローラ4外周面5がガイド溝2内側面3の上側の接触領域6に接触しているので、ガイドローラ軸8はガイド溝2に平行な方向にはスライド運動が可能であるが、ガイド溝2の接触領域6に鉛直な上下方向には動揺することがない。
【0025】
次に、図3中のガイドローラ軸8が移動してガイド溝2の曲部の地点に達した場合には、ガイド溝2に置かれるガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドローラ4に掛かる重力による荷重は減少するが、ガイドローラ4外周面は依然としてガイド溝2内側面3の外側の接触領域6に接触しており、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドローラ4もガイドローラ4外周面がガイド溝2内側面3の上側の接触領域6に接触しているので、この地点においても、ガイドローラ軸8はガイド溝2に平行な方向にはスライド運動が可能であるが、ガイド溝2の接触領域6に鉛直な方向には動揺することがない。
【0026】
さらに、図3中のガイドローラ軸8が上方に移動してガイド溝2が垂直となる地点に達した場合には、ガイド溝2に置かれるガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドローラ4が掛かる重力によってガイド溝2内側面3の外側の接触領域6に押し付けられることはなくなるが、ガイドローラ4はガイド溝2内側面3との間に実質的な間隙を持たないという本発明ガイド装置1の構造的な性質により、依然としてガイド溝2内側面3の外側の接触領域6に接触しており、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドローラ4はガイドローラ4外周面がガイド溝2内側面3の上側の接触領域6に接触するので、この地点においても、ガイドローラ軸8はガイド溝2に平行な方向にはスライド運動が可能であるが、ガイド溝2の接触領域6に鉛直な方向には動揺しない。
【0027】
本発明ガイド装置1は、ガイド溝2が曲線的に成型された場合や垂直方向に備えられる場合においても、常にガイドローラ4がガイド溝2の接触領域6に接触しているので、直線部を含め様々な曲率の曲線部を円滑にガイドでき、走行にともなう振動を抑制できる高精度なガイド装置を提供することができた。また、本発明ガイド装置1では、ガイド溝2の構造が単純なために長大な経路のガイド溝2の設置が容易な上、ガイドローラ軸8上に外周面がガイド溝2内側面3の接触領域6のみに接触する複数個のガイドローラ4を備えることから、移動距離や移動速度が大きく取れるガイド装置を提供することができたものである。
【0028】
図4は、図3の一部を拡大したもので、本発明ガイド装置1を示す斜視図である。同図では、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2に機器や装置に固定する際の便宜を配慮してフランジ型の取り付け部11を設け、略コ字型としたガイド溝2の対向する上下2つの側面のうち、上に位置する側面の寸法を下に位置する側面の寸法より小さくすることで、ガイド溝2の対向する2つの内側面3のうち上に位置する内側面3上に、目には見えない形の非接触領域を形成したものである。
【0029】
図5は、特許請求の範囲請求項2に記載した本発明ガイド装置1をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。図の右方より2個のガイドローラ4を同軸上に並置したガイドローラ軸8がガイドローラ4をガイド溝2に嵌合させる形に置かれている。先述したように、2個のガイドローラ4はガイドローラ軸8上で独立して回動自在であり、2個のガイドローラ4の夫々は、ガイド溝2の対向する内側面上に固有の外周面5の接触領域6を持つが、これを同図では、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドロール4はガイド溝2上側内側面に、ガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドロール4はガイド溝2下側内側面に専用の接触領域6として備えている。
【0030】
同図では、前記ガイドローラ4外周面5をガイドローラ軸8に対して傾斜させるとともに、ガイド溝2の対向する内側面3に設ける接触領域6をガイドローラ4外周面5の傾斜と対応する接触面12としている。ガイドローラ4外周面5の傾斜の形状は、図示のような凹型以外に、単純な斜面や鍔状など様々な曲面から構成されるものであってもよいもので、接触面12の形状も夫々の形状に対応させる。図示した本発明ガイド装置1は、ガイドローラ軸8上の先端から遠い位置のガイドローラ4がガイドローラ軸8のスラスト荷重を負担することができるので、スライド運動の方向と直行する方向の案内精度と安定性を向上させることが可能となった。
【0031】
図6、および、図7は、特許請求の範囲請求項3に記載した本発明ガイド装置1をガイドローラ軸8芯上で切断してガイド溝2の横断面側から見た断面図である。同図の本発明ガイド装置1は、ガイド溝2に嵌合して接触領域6上を転動する複数のガイドローラ4の内の少なくとも1個のガイドローラ4に弾性を付与したものである。ガイドローラ4に弾性を与える方法としては、図6に示したように、外周面5まで弾性材料を用いたガイドローラ4とする方法や、図7に示すようにガイドローラ4のリム部を複層として、表層に硬質材料を深層部に弾性材料を用いる方法、また、ガイドローラ4自体の形状に工夫を加えて弾性を得る方法などがある。弾性を付与することによりガイドローラ4はガイド溝2内で変形するので、変形量を見越してガイドローラ4の直径や非接触面との間隙を大きく成型することが肝要である。上記の本発明ガイド装置1では、ガイド溝2の接触領域6とガイドローラ4が接触する際の摩擦力や衝撃吸収力を増加させことができるので、ガイド装置を縦方向に取り付けた場合の安定性が向上するとともに、スライド運動時に発生しがちな騒音や振動を大幅に抑制することができるガイド装置となった。
【0032】
図8は、特許請求の範囲請求項4に記載した本発明ガイド装置1をガイドローラ軸8芯上で切断してガイド溝2の横断面側から見た断面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。同図では、ガイド溝2に沿ってガイド溝2内側面3に導電接触帯13を備えるとともに、ガイドローラ軸8上には、複数個のガイドローラ4と並列して前記導電接触帯13と対をなす略円盤状の接触子14を備えて動力や信号の授受が可能なガイド装置としている。図中では、導電接触帯と接触子を1組備えるが、必要に応じて導電接触帯と接触子を複数組備えたり、ガイド溝2内側面3に備える導電接触帯13はガイド溝2のエッジ部に備えたりしてもよいものである。また、図示の本発明ガイド装置1では、ガイドローラ軸8を中空とし、中央部の空間に接触子14から繋がる導線を絶縁貫通させて電力や電気信号の授受を可能としている。
【0033】
上記ガイド装置1では、前記導電接触帯13と対をなす接触子14をガイドローラ軸8上に複数個のガイドローラ4と並列して備えられているので、スライド運動の軌跡と電力や電気信号の伝達経路を常に一致した状態に保つことができる。ガイド装置によって正確な運動の軌跡を得ようとする場合には、動力や信号についても伝達する必要がある場合も多いことから、運動の軌跡と動力や信号の伝達軌跡を一致させることが求められるが、従来はガイド装置と動力や信号の伝達装置を個別に用いるものであって、ガイド装置の運動軌跡と動力や信号の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることが困難であり、多くの場合に両者の運動軌跡の矛盾を解消するための機構を付加する必要があった。本発明ガイド装置1では、ガイド装置の運動軌跡と動力や信号の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのできるので、ガイド装置の運動軌跡と動力や信号の伝達装置の運動軌跡の不整合を吸収するコードリール装置やパンタグラフなどの機構や装置は不要となり、機器や装置を小型化できるとともに費用を抑制できたものである。
【0034】
図9は、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2の対向する内側面3に備える接触領域6上をガイドローラ4の外周面5を接触転動させる形式の本発明ガイド装置1の概略を示した斜視図である。同図では、さらにガイド溝2に沿ってラックギア15を備えるとともに、ガイドローラ軸8上にラックギア15と対をなすピニオンギア16を備えている。図示したガイド装置1では、ガイド溝2内側面3にラックギア15を備えているが、ラックギア15はガイド溝2のエッジ部に備えてもよいものである。この場合、ラックギア15に嵌合するピニオンギア16はガイドローラ軸8の根元寄りに配置する。また同図では、動力伝達機構として、ラックギア15とピニオンギア16の組み合わせを描いているが、これをガイド溝2内側面3に鎖を伸張して備える一方、鎖車をピニオンギア16に置き換えたガイド装置としてもよい。
【0035】
図10は、本発明ガイド装置1をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。同図では、切断面として示されるガイド溝2に沿って、これも切断面として示される動力伝達索17を備えるとともに、ガイドローラ軸8上に動力伝達点18を備えている。図示したガイド装置1では、ガイド溝2内側面3に動力伝達索17を備えているが、動力伝達索17をガイド溝2の側壁の外部に備える一方、動力伝達索17と結合する動力伝達点18をガイド溝2の側壁を開放して伸張したガイドローラ軸8の先端寄りに配置してもよい。また同図では、ロープを動力伝達点に結んだ動力伝達機構を描いているが、これを、鎖や伝動ベルトを動力伝達点に結んだ動力伝達機構に置き換えたガイド装置としても支障がない。ガイド溝2に曲部を持つ場合には、ガイドローラ軸8を回転自在にする等して、動力伝達点18を回転可能とすることが必要である。
【0036】
図10のガイド装置1では、ガイド溝2に沿って備える動力伝達索17を走行させることで、動力伝達点18を備えたガイドローラ軸8にスライド運動のための動力を伝達できるものである。ガイド溝を垂直方向に設けることで、例えばエレベータ装置のように長大なスライド運動が必要なガイド装置においても、ガイド装置としての本来の機能に加えてスライドのための動力を供給することが可能である。また、経路の途中に曲部を設けて、ガイド溝を水平方向や斜め方向とすることによって、垂直方向以外へも移動できるエレベータ装置を実現できるものである。この場合には、ガイドローラ軸8上の動力伝達点18と動力伝達索17を複数組備えることで運行上の安全性を飛躍的に高めることができる。
【0037】
一般に、ガイド装置を使用して精度の高いスライド運動の軌跡を得たい場合には、スライド運動の制御ばかりではなく動力についても伝達する必要がある場合も多い。上記の場合には、運動の軌跡と動力の伝達軌跡を一致させることが求められ、商品として市場にも供給されている。しかし、市場に供給されている上記商品は小型のガイド装置に限定され、しかも、ガイド装置と平行する位置に動力の伝達装置が備えられている直線ガイド装置と半径の固定された円弧運動専用のガイド装置を除いては、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置は事実上皆無と言えるが、本ガイド装置1によって、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのでき、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置の提供ができた。
【実施例1】
【0038】
図11は、本発明ガイド装置1における一つの実施例を示す斜視図である。1はガイド装置、2はガイド溝、3はガイド溝の内側面、4はガイドローラ、であり、8はガイドローラ軸、11はガイド溝3に備えたフランジ型の取付け部である。図示のガイド装置1では、1つのガイド溝3上に複数のガイドローラ軸8を備えて、スライド運動時における運動側部分の安定化を図っている。
【実施例2】
【0039】
図12は、本発明ガイド装置1における他の実施例を示す斜視図である。1はガイド装置、2はガイド溝、3はガイド溝の内側面、4はガイドローラ、であり、8はガイドローラ軸、11はガイド溝3に備えた取付け部である。図示のガイド装置1では、フランジ型の取付け部11をガイド溝3側壁の前縁に備えて、本ガイド装置1を機器や装置上にガイド機構を構築する際の便宜を図っている。取り付け部11は、必要に応じてガイド溝上の位置や形状を変更すればよい。
【実施例3】
【0040】
図13は、本発明ガイド装置1における他の実施例をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。実施例の本発明ガイド装置1は、ガイド溝2内側面3に設けるガイドローラ4外周面5の接触領域6の位置を一定の範囲で調整可能とする調整機構を備えるとともに、ガイドローラ軸8のガイドローラ4から遠い端部にフランジ型の取り付け部11を設けたものである。図示の調整機構は、斜面を利用してガイドローラ4外周面とガイド溝2上の接触領域6との距離を調整するものであるが、例えば、シムを使用する等他の方法によるものでもよい。また、ガイドローラ軸8のガイドローラ4から遠い端部に設ける取り付け部11は、軸端部にネジを成型するなど他の方法によるものでも支障がないものである。
【実施例4】
【0041】
図14は、本発明ガイド装置1における他の実施例をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。図の右方より3個のガイドローラ4を同軸上に並置したガイドローラ軸8がガイドローラ4をガイド溝2に嵌合させる形に置かれている。先述したガイド装置と同様に、3個のガイドローラ4はガイドローラ軸8上で独立して回動自在であり、ガイドローラ4の夫々は、ガイド溝2の対向する内側面上に固有の外周面5の接触領域6を備えている。実施例の本発明ガイド装置1は、ガイドローラ4の接触点が3箇所となるために、ガイドローラ軸8の安定性を一層向上できる利点を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図2】本発明によるガイド装置の側面図である。
【図3】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図4】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図5】本発明によるガイド装置の側面図である。
【図6】本発明によるガイド装置の断面図である。
【図7】本発明によるガイド装置の断面図である。
【図8】本発明によるガイド装置の断面図である。
【図9】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図10】本発明によるガイド装置の側面図である。
【図11】本発明によるガイド装置の一つの実施例を示す斜視図である。
【図12】本発明によるガイド装置の他の実施例を示す斜視図である
【図13】本発明によるガイド装置の他の実施例を示す側面図である。
【図14】本発明によるガイド装置の他の実施例を示す側面図である。
【図15】従来のガイド装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ガイド装置
2 ガイド溝
3 内側面
4 ガイドローラ
5 外周面
6 接触領域
7 非接触領域
8 ガイドローラ軸
9 従来のガイド装置
10間隙
11取り付け部
12接触面
13導電接触帯
14接触子
15ラックギア
16ピニオンギア
17動力伝達索
18動力伝達点
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドの語は、直線方向や平面的な広がりをもった方向の滑り案内に用いるのが機械分野の用語としては一般的であるが、家具の引き出しや車両座席における転がり案内機構がスライドレールの部品名を持つ用例に従い、以下の記載では、スライドの語を直線方向や平面的な広がりをもった方向の転がり案内をも含む広い意味を持つものとして使用している。
【0003】
ガイド装置は主に車輌や機械等のスライド運動を制御するための不可欠の装置である。通常、ガイド装置は固定側部分と運動側部分とから成っており、例えば、鉄道車輌を一種のガイド装置の応用と見ると、地面に置かれるレールが固定側部分に相当し、車両を走行自在に支える車輪が運動側部分となって、両者を合わせてガイド装置を構成する。ガイド装置は、使用される目的によって高負荷に耐えられるものや、高精度な運動軌跡が得られるもの、高速度のスライド運動が可能なものなど種々の形式が提案されるが、スライド運動の方向を直線、もしくは、直線に近い曲線とするガイド装置が殆どである。
【0004】
スライド運動の方向を直線、もしくは、直線に近い曲線とするガイド装置としては、先に述べたレールと車輪の組み合わせによる鉄道車両におけるガイド装置が代表的である。この種のガイド装置は、荷重を受けられる方向が重力の働く方向に限られる上、敷設可能なレールの曲率には限界があるので、大きく運動方向を変えるガイドには適さないものであった。このため、荷重を受ける車輪以外にレールの側部を挟む車輪を付加して、急カーブのある曲線軌跡をガイド可能なものとした工夫も見られるが、直線部と曲部の組み合わされた方向での高精度な運動軌跡を望む機械装置のガイド装置として用いるには不適切であった。また、車輪を摺動部に換えたガイド装置も従来から多種あるが、これらのガイド装置は、潤滑や冷却に問題が生じやすく、潤滑や冷却が適切に行われなかった場合には摺動部の急激な損耗が避けられない理由から、運動速度が高い場合や運動距離が大きいガイド装置としては適さないものであった。
【0005】
上記の不都合を解消するため、例えば、特許文献1の実開平5−44906号公報に記載された技術のように、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置が提案されている。上記ガイド装置はガイドローラを断面形状が略コ字型のガイド溝の内側面に接触転動させるので、ガイド溝が曲げられた箇所ではガイドローラの走行方向も曲げられ、取り付けられた載荷台を直線や曲線の混在した経路に沿ってガイドすることができるものである。
【0006】
しかし、特許文献1で提案されたガイド装置の構造では、ガイド溝の接触領域上の地点におけるガイドローラ外周部はガイド溝の内側面に接触しているので相対速度がゼロであるのに対し、接触している前記の地点から最遠地点である180度隔てたガイドローラ外周部の地点における相対速度は、ガイドローラ中心が移動する速度の2倍になる。このため、ガイド溝に置かれたガイドローラを円滑に転動させるためには、ガイド溝のガイドローラ接触点反対側となるガイド溝の内側面とガイドローラとの間に接触を避けることができる適正な距離の間隙が必要となる。この間隙が過小な場合には、ガイドローラが転動ではなく摺動することとなり、ガイド溝内の両側面に接触しながら擦れ合うことで、ガイド溝やガイドローラを損耗させてガイド装置の精度や安定性を損なうことになる。また仮に、前記ガイド溝の内側面とガイドローラの間の間隙が適正なものであっても、間隙そのものの存在によってガイド装置の精度や安定性が一定のレベル以上には向上できないという問題点や、ガイド溝の内側面とガイドローラの間の間隙が騒音や振動の主な発生源となるという問題点があった。
【0007】
他には、特許文献2の特開平11−37154号公報に記載された直線ガイド装置や、特許文献3の特開2000−320641号公報に記載された直動装置、特許文献4の特開2004−162748号公報記載の運動案内装置、ボールねじ及びボール転走溝の製造装置の技術も提案されている。また市場には、特殊な断面形状の軌条にコロやボールを介して支持される運動側部品を組み込んだ高精度の直動ガイド装置や、固有曲率の曲線部をガイドする円弧ガイド装置も商品として供給されている。しかし、これら上記のガイド装置はすべて直線的な軌条と曲線軌条を混在させることが出来ないものであり、円弧ガイド装置は固有曲率の曲線部においてのみ使用できるものであった。
【0008】
ガイド装置を使用して精度の高いスライド運動の軌跡を得たい場合には、スライド運動の制御ばかりではなく電力や電気信号についても伝達する必要がある場合も多くあり、上記場合には、運動の軌跡と電力や電気信号の伝達軌跡を一致させることが求められる。しかし、従来はガイド装置と電力や電気信号の伝達装置を別個に用いるものであって、ガイド装置の運動軌跡と電力や電気信号の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることが困難であった。このため多くの場合には、両者の運動軌跡の齟齬を解消するために付加するコードリール装置やパンタグラフなどの機構が必要となり、機器や装置が大型化する原因になっていた。
【0009】
また、ガイド装置を使用して精度の高いスライド運動の軌跡を得たい場合には、スライド運動の制御ばかりではなく動力についても伝達する必要がある場合も多い。上記の場合には、運動の軌跡と動力の伝達軌跡を一致させることが求められ、商品として市場にも供給されている。しかし、市場に供給されている上記商品は小型のガイド装置に限定され、しかも、ガイド装置と平行する位置に動力の伝達装置が備えられている直線ガイド装置と半径の固定された円弧運動専用のガイド装置を除いては、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置は事実上皆無と言える。
【特許文献1】実開平5−44906号公報
【特許文献2】特開平11−37154号公報
【特許文献3】特開2000−320641号公報
【特許文献4】特開2004−162748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記種々の問題を解決すべくなされたもので、簡単な構造でありながら、直線部を含め様々な曲率の曲線部を精度良く円滑にガイドできるとともに、移動速度や移動距離が大きく取れるガイド装置を提供することを目的とするものである。また、スラスト方向の荷重にも耐えることができ、スライド運動時に発生しがちな騒音や振動を抑制し、耐久性にも優れたガイド装置の提供を目指すとともに、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのできるガイド装置や、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置の提供を目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置において、ガイド溝の対向する内側面の夫々にガイド溝の走行方向に平行なガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、ガイド溝の対向する内側面の一方に設けた接触領域上にガイドローラ外周面を接触させるとともに、該ガイドローラを挟む形にガイド溝内側面の他方に設けた非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個の前記ガイドローラを夫々が独立に回転可能として備えることを特徴とするガイド装置とする。
【0012】
また、ガイドローラ外周面をガイドローラ軸に対して傾斜させるとともに、ガイド溝の対向する内側面に設ける接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面としたり、ガイド溝に嵌合して接触領域上を接触転動させる少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与したりしたガイド装置にする。
【0013】
あるいは、上記ガイド溝に沿って電気の授受が可能な導電接触帯を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記導電接触帯と対をなす接触子を備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿ってラックギアを備えるとともに、ガイドローラ軸上にラックギアと対をなすピニオンギアを備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿って動力伝達索を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えたりしたガイド装置にする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置において、ガイド溝の対向する内側面の夫々にガイド溝の走行方向に平行なガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、ガイド溝の対向する内側面の一方に設けた接触領域上にガイドローラ外周面を接触させるとともに、該ガイドローラを挟む形にガイド溝内側面の他方に設けた非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個の前記ガイドローラを夫々が独立に回転可能として備えることを特徴とするガイド装置としたことによって、簡単な構造でありながら、直線部を含め様々な曲率の曲線部を精度良く円滑にガイドできるとともに、移動速度や移動距離が大きく取れるガイド装置を提供することができたものである。
【0015】
また、上記のガイド装置のガイドローラ外周面をガイドローラ軸に対して傾斜させるとともに、ガイド溝の対向する内側面に設ける接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面としたり、ガイド溝に嵌合して接触領域上を接触転動させる少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与したりしたガイド装置としたことによって、スラスト方向の荷重にも耐えることができ、スライド運動時に発生しがちな騒音や振動を抑制し、耐久性にも優れたガイド装置を実現できたものである。
【0016】
さらに、上記ガイド溝に沿って電気の授受が可能な導電接触帯を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記導電接触帯と対をなす接触子を備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿ってラックギアを備えるとともに、ガイドローラ軸上にラックギアと対をなすピニオンギアを備えたり、上記ガイド装置のガイド溝に沿って動力伝達索を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えたりしたガイド装置としたことで、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのできるガイド装置の提供ができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。図1は、横断面形状を略コ字型としたガイド溝の対向する内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式の本発明ガイド装置の概略を示した斜視図である。一般に長尺寸法となるガイド溝は前後を切り取って要部のみを図示すが、1が本発明ガイド装置、2はガイド溝、3はガイド溝の内側面、4はガイドローラ、であり、5はガイドローラ外周面である。また、6は後述するガイド溝3内側面上の接触領域、7は非接触領域であり、8はガイドローラ軸である。本発明ガイド装置1は、ガイド溝2の対向する内側面3の夫々にガイド溝2の走行方向に平行なガイドローラ4外周面5の接触領域6と非接触領域7を設け、ガイド溝2の対向する内側面3の内の一方に設けた接触領域6にガイドローラ4外周面5を接触させ、該ガイドローラ4を挟む形に、内側面3の他方に設けた非接触領域7を位置させる一方、前記ガイド溝2の内側面3に設けた接触領域上6を夫々が独立に回転可能で中心を共通のガイドローラ軸8上に置いた複数個のガイドローラ4を備えている。
【0018】
ガイド溝2には強靭な材料を使用し、加工後における必要な厚さを確保して機械的な強度を満たすのは言うまでもないが、ガイド溝2内側面に設ける接触領域6やガイドローラ4外周面5は高精度に加工して表面の凹凸を取り除いておく。また、ガイド溝2内側面3にガイドローラ軸8を組み付ける際には、複数個のガイドローラ4の夫々がガイド溝2内側面3に設ける接触領域上をガイドローラ軸8に組み付けられた状態で動揺することなく円滑に転動できるように、各部の寸法は厳正に管理し、ガイドローラ4とガイド溝2の間には必要により適宜与圧をする。
【0019】
本発明ガイド装置1は、ガイド溝2を固定側として所望の機器や装置の一端に固定する一方、適宜方法を用いてガイドローラ軸8を機器や装置の他端に固定する、あるいは、上記関係を逆の構成とすることで、容易に機器や装置上にガイド機構を構築することができる。図1のガイド装置1は、1個のガイド溝2と2個のガイドローラ4が取付けられた1本のガイドローラ軸8から構成されるが、機器や装置上にガイド機構を構築する際には、必要により複数組のガイド装置1を対向位置に備えたり、1個のガイド溝2に複数個のガイドローラ軸8を組み合わせたりするとよい。
【0020】
図2は、図1に示した本発明ガイド装置1をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。図の右方より2個のガイドローラ4を同軸上に並置したガイドローラ軸8がガイドローラ4をガイド溝2に嵌合させる形に置かれている。2個のガイドローラ4はガイドローラ軸8上で独立して回動自在である。ガイドローラ4の夫々は、ガイド溝2の対向する内側面上に固有の接触領域6を持つが、これを同図では、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドロール4はガイド溝2上側内側面に、ガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドロール4はガイド溝2下側内側面に専用の接触領域6として備えている。ガイドローラ4の外周面5は、ガイド溝2の内側面に設けられた接触領域6のみで接触するので、ガイド装置1の運動側部分である2個のガイドローラ4を備えたガイドローラ軸8がガイド溝2上を紙面の奥から手前に向かって移動する場合に、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドロール4はガイドロール4の手前側が下から上に向かって回転し、ガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドロール4はガイドローラ4手前側が上から下へと回転する。図中のガイドローラ4に描いた矢印は、夫々のガイドローラ4の回転方向を示すものである。
【0021】
図15は、特許文献1で提案された従来のガイド装置9の構造を前記特許文献1の図面中の図4からガイド装置に係る部分を抽出して描いた側面図であり、図中の番号は他の各図に用いるものと同じである。図示した従来のガイド装置9では、ガイド溝2に置かれたガイドローラ4を円滑に転動させるために、ガイド溝2のガイドローラ接触点の反対側(同図では、ガイドローラ4の頂上)となるガイド溝2の内側面3とガイドローラ4の間に接触を避けることができる適正な距離の間隙10が必要となる。この間隙10がなければ、ガイドローラ4がガイド溝2内の両側面に擦れ合うことで短期間の内にガイド装置の精度や安定性を損なうことになる。また仮に、前記ガイド溝2の内側面とガイドローラ4の間の間隙10が適切な距離であっても、間隙10そのものの存在によってガイド装置の精度や安定性が一定のレベル以上には向上できないという問題点や、ガイド溝2の内側面3とガイドローラ4間の間隙10が騒音や振動の主な発生源となるという問題点があることは先に述べた。
【0022】
ここで再び、図2に戻って本発明ガイド装置1について説明すると、本発明ガイド装置1においても夫々のガイドローラ4の接触領域6上の接点から180度隔てたガイド溝2内側面3にはガイドローラ4の非接触領域7が設けられることから、ガイドローラ4とガイド溝2内側面3の間には、従来のガイド装置と同様に間隙10が存在することになる。しかし、本発明ガイド装置1においては、1個のガイドローラ軸8上に並置される少なくとも2個のガイドローラ4の接触領域6がガイド溝2内側面3上で互い違いに配置されているために、実質的にガイドローラ4とガイド溝2内側面3の間には間隙10を持たない構造である。しかも、夫々のガイドローラ4外周面5はガイド溝2内側面3の接触領域6以外に接触しないので、ガイドローラ4がガイド溝2内の2つの内側面3に同時に擦れ合うことで短期間の内にガイド装置の精度や安定性を損なうという問題から開放される。また、間隙10そのものの存在によってガイド装置の精度や安定性が一定のレベル以上には向上できないという問題点や、ガイド溝2内側面3とガイドローラ4との間隙10が騒音や振動の主な発生源となるという問題点も解決されたものである。
【0023】
図3は、ガイド溝2が水平方向から垂直方向へと変化する地点における本発明ガイド装置1を示した斜視図である。本発明ガイド装置1は、ガイド溝2を固定側として所望の機器や装置の一端に固定する一方、適宜方法を用いてガイドローラ軸8を機器や装置の他端に固定する、あるいは、上記関係を逆の構成とすることで、容易に機器や装置上にガイド機構を構築することができるが、ガイド溝2に直線と曲線が混在したり、ガイド溝2の取り付けられる方向が水平以外の場合であったりしても支障無いものである。
【0024】
例えば今、ガイド溝2を固定側として所望の機器や装置の一端に固定する一方、適宜方法を用いてガイドローラ軸8を機器や装置の他端に固定した図示の場合には、ガイド溝2が水平に近い角度で位置している際に、ガイド溝2に置かれるガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドローラ4には重力によって機器や装置の荷重が掛かり、ガイドローラ4外周面5がガイド溝2内側面3の下側の接触領域6に押し付けられるとともに、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドローラ4もガイドローラ4外周面5がガイド溝2内側面3の上側の接触領域6に接触しているので、ガイドローラ軸8はガイド溝2に平行な方向にはスライド運動が可能であるが、ガイド溝2の接触領域6に鉛直な上下方向には動揺することがない。
【0025】
次に、図3中のガイドローラ軸8が移動してガイド溝2の曲部の地点に達した場合には、ガイド溝2に置かれるガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドローラ4に掛かる重力による荷重は減少するが、ガイドローラ4外周面は依然としてガイド溝2内側面3の外側の接触領域6に接触しており、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドローラ4もガイドローラ4外周面がガイド溝2内側面3の上側の接触領域6に接触しているので、この地点においても、ガイドローラ軸8はガイド溝2に平行な方向にはスライド運動が可能であるが、ガイド溝2の接触領域6に鉛直な方向には動揺することがない。
【0026】
さらに、図3中のガイドローラ軸8が上方に移動してガイド溝2が垂直となる地点に達した場合には、ガイド溝2に置かれるガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドローラ4が掛かる重力によってガイド溝2内側面3の外側の接触領域6に押し付けられることはなくなるが、ガイドローラ4はガイド溝2内側面3との間に実質的な間隙を持たないという本発明ガイド装置1の構造的な性質により、依然としてガイド溝2内側面3の外側の接触領域6に接触しており、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドローラ4はガイドローラ4外周面がガイド溝2内側面3の上側の接触領域6に接触するので、この地点においても、ガイドローラ軸8はガイド溝2に平行な方向にはスライド運動が可能であるが、ガイド溝2の接触領域6に鉛直な方向には動揺しない。
【0027】
本発明ガイド装置1は、ガイド溝2が曲線的に成型された場合や垂直方向に備えられる場合においても、常にガイドローラ4がガイド溝2の接触領域6に接触しているので、直線部を含め様々な曲率の曲線部を円滑にガイドでき、走行にともなう振動を抑制できる高精度なガイド装置を提供することができた。また、本発明ガイド装置1では、ガイド溝2の構造が単純なために長大な経路のガイド溝2の設置が容易な上、ガイドローラ軸8上に外周面がガイド溝2内側面3の接触領域6のみに接触する複数個のガイドローラ4を備えることから、移動距離や移動速度が大きく取れるガイド装置を提供することができたものである。
【0028】
図4は、図3の一部を拡大したもので、本発明ガイド装置1を示す斜視図である。同図では、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2に機器や装置に固定する際の便宜を配慮してフランジ型の取り付け部11を設け、略コ字型としたガイド溝2の対向する上下2つの側面のうち、上に位置する側面の寸法を下に位置する側面の寸法より小さくすることで、ガイド溝2の対向する2つの内側面3のうち上に位置する内側面3上に、目には見えない形の非接触領域を形成したものである。
【0029】
図5は、特許請求の範囲請求項2に記載した本発明ガイド装置1をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。図の右方より2個のガイドローラ4を同軸上に並置したガイドローラ軸8がガイドローラ4をガイド溝2に嵌合させる形に置かれている。先述したように、2個のガイドローラ4はガイドローラ軸8上で独立して回動自在であり、2個のガイドローラ4の夫々は、ガイド溝2の対向する内側面上に固有の外周面5の接触領域6を持つが、これを同図では、ガイドローラ軸8上の先端に近いガイドロール4はガイド溝2上側内側面に、ガイドローラ軸8上の先端から遠いガイドロール4はガイド溝2下側内側面に専用の接触領域6として備えている。
【0030】
同図では、前記ガイドローラ4外周面5をガイドローラ軸8に対して傾斜させるとともに、ガイド溝2の対向する内側面3に設ける接触領域6をガイドローラ4外周面5の傾斜と対応する接触面12としている。ガイドローラ4外周面5の傾斜の形状は、図示のような凹型以外に、単純な斜面や鍔状など様々な曲面から構成されるものであってもよいもので、接触面12の形状も夫々の形状に対応させる。図示した本発明ガイド装置1は、ガイドローラ軸8上の先端から遠い位置のガイドローラ4がガイドローラ軸8のスラスト荷重を負担することができるので、スライド運動の方向と直行する方向の案内精度と安定性を向上させることが可能となった。
【0031】
図6、および、図7は、特許請求の範囲請求項3に記載した本発明ガイド装置1をガイドローラ軸8芯上で切断してガイド溝2の横断面側から見た断面図である。同図の本発明ガイド装置1は、ガイド溝2に嵌合して接触領域6上を転動する複数のガイドローラ4の内の少なくとも1個のガイドローラ4に弾性を付与したものである。ガイドローラ4に弾性を与える方法としては、図6に示したように、外周面5まで弾性材料を用いたガイドローラ4とする方法や、図7に示すようにガイドローラ4のリム部を複層として、表層に硬質材料を深層部に弾性材料を用いる方法、また、ガイドローラ4自体の形状に工夫を加えて弾性を得る方法などがある。弾性を付与することによりガイドローラ4はガイド溝2内で変形するので、変形量を見越してガイドローラ4の直径や非接触面との間隙を大きく成型することが肝要である。上記の本発明ガイド装置1では、ガイド溝2の接触領域6とガイドローラ4が接触する際の摩擦力や衝撃吸収力を増加させことができるので、ガイド装置を縦方向に取り付けた場合の安定性が向上するとともに、スライド運動時に発生しがちな騒音や振動を大幅に抑制することができるガイド装置となった。
【0032】
図8は、特許請求の範囲請求項4に記載した本発明ガイド装置1をガイドローラ軸8芯上で切断してガイド溝2の横断面側から見た断面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。同図では、ガイド溝2に沿ってガイド溝2内側面3に導電接触帯13を備えるとともに、ガイドローラ軸8上には、複数個のガイドローラ4と並列して前記導電接触帯13と対をなす略円盤状の接触子14を備えて動力や信号の授受が可能なガイド装置としている。図中では、導電接触帯と接触子を1組備えるが、必要に応じて導電接触帯と接触子を複数組備えたり、ガイド溝2内側面3に備える導電接触帯13はガイド溝2のエッジ部に備えたりしてもよいものである。また、図示の本発明ガイド装置1では、ガイドローラ軸8を中空とし、中央部の空間に接触子14から繋がる導線を絶縁貫通させて電力や電気信号の授受を可能としている。
【0033】
上記ガイド装置1では、前記導電接触帯13と対をなす接触子14をガイドローラ軸8上に複数個のガイドローラ4と並列して備えられているので、スライド運動の軌跡と電力や電気信号の伝達経路を常に一致した状態に保つことができる。ガイド装置によって正確な運動の軌跡を得ようとする場合には、動力や信号についても伝達する必要がある場合も多いことから、運動の軌跡と動力や信号の伝達軌跡を一致させることが求められるが、従来はガイド装置と動力や信号の伝達装置を個別に用いるものであって、ガイド装置の運動軌跡と動力や信号の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることが困難であり、多くの場合に両者の運動軌跡の矛盾を解消するための機構を付加する必要があった。本発明ガイド装置1では、ガイド装置の運動軌跡と動力や信号の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのできるので、ガイド装置の運動軌跡と動力や信号の伝達装置の運動軌跡の不整合を吸収するコードリール装置やパンタグラフなどの機構や装置は不要となり、機器や装置を小型化できるとともに費用を抑制できたものである。
【0034】
図9は、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2の対向する内側面3に備える接触領域6上をガイドローラ4の外周面5を接触転動させる形式の本発明ガイド装置1の概略を示した斜視図である。同図では、さらにガイド溝2に沿ってラックギア15を備えるとともに、ガイドローラ軸8上にラックギア15と対をなすピニオンギア16を備えている。図示したガイド装置1では、ガイド溝2内側面3にラックギア15を備えているが、ラックギア15はガイド溝2のエッジ部に備えてもよいものである。この場合、ラックギア15に嵌合するピニオンギア16はガイドローラ軸8の根元寄りに配置する。また同図では、動力伝達機構として、ラックギア15とピニオンギア16の組み合わせを描いているが、これをガイド溝2内側面3に鎖を伸張して備える一方、鎖車をピニオンギア16に置き換えたガイド装置としてもよい。
【0035】
図10は、本発明ガイド装置1をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。同図では、切断面として示されるガイド溝2に沿って、これも切断面として示される動力伝達索17を備えるとともに、ガイドローラ軸8上に動力伝達点18を備えている。図示したガイド装置1では、ガイド溝2内側面3に動力伝達索17を備えているが、動力伝達索17をガイド溝2の側壁の外部に備える一方、動力伝達索17と結合する動力伝達点18をガイド溝2の側壁を開放して伸張したガイドローラ軸8の先端寄りに配置してもよい。また同図では、ロープを動力伝達点に結んだ動力伝達機構を描いているが、これを、鎖や伝動ベルトを動力伝達点に結んだ動力伝達機構に置き換えたガイド装置としても支障がない。ガイド溝2に曲部を持つ場合には、ガイドローラ軸8を回転自在にする等して、動力伝達点18を回転可能とすることが必要である。
【0036】
図10のガイド装置1では、ガイド溝2に沿って備える動力伝達索17を走行させることで、動力伝達点18を備えたガイドローラ軸8にスライド運動のための動力を伝達できるものである。ガイド溝を垂直方向に設けることで、例えばエレベータ装置のように長大なスライド運動が必要なガイド装置においても、ガイド装置としての本来の機能に加えてスライドのための動力を供給することが可能である。また、経路の途中に曲部を設けて、ガイド溝を水平方向や斜め方向とすることによって、垂直方向以外へも移動できるエレベータ装置を実現できるものである。この場合には、ガイドローラ軸8上の動力伝達点18と動力伝達索17を複数組備えることで運行上の安全性を飛躍的に高めることができる。
【0037】
一般に、ガイド装置を使用して精度の高いスライド運動の軌跡を得たい場合には、スライド運動の制御ばかりではなく動力についても伝達する必要がある場合も多い。上記の場合には、運動の軌跡と動力の伝達軌跡を一致させることが求められ、商品として市場にも供給されている。しかし、市場に供給されている上記商品は小型のガイド装置に限定され、しかも、ガイド装置と平行する位置に動力の伝達装置が備えられている直線ガイド装置と半径の固定された円弧運動専用のガイド装置を除いては、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置は事実上皆無と言えるが、本ガイド装置1によって、ガイド装置の運動軌跡と電気や動力の伝達装置の運動軌跡を完全に一致させることのでき、直線運動と曲線運動が組み合わされた運動軌跡が得られるガイド装置内に動力伝達機構が備えられる精度の高いガイド装置の提供ができた。
【実施例1】
【0038】
図11は、本発明ガイド装置1における一つの実施例を示す斜視図である。1はガイド装置、2はガイド溝、3はガイド溝の内側面、4はガイドローラ、であり、8はガイドローラ軸、11はガイド溝3に備えたフランジ型の取付け部である。図示のガイド装置1では、1つのガイド溝3上に複数のガイドローラ軸8を備えて、スライド運動時における運動側部分の安定化を図っている。
【実施例2】
【0039】
図12は、本発明ガイド装置1における他の実施例を示す斜視図である。1はガイド装置、2はガイド溝、3はガイド溝の内側面、4はガイドローラ、であり、8はガイドローラ軸、11はガイド溝3に備えた取付け部である。図示のガイド装置1では、フランジ型の取付け部11をガイド溝3側壁の前縁に備えて、本ガイド装置1を機器や装置上にガイド機構を構築する際の便宜を図っている。取り付け部11は、必要に応じてガイド溝上の位置や形状を変更すればよい。
【実施例3】
【0040】
図13は、本発明ガイド装置1における他の実施例をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。実施例の本発明ガイド装置1は、ガイド溝2内側面3に設けるガイドローラ4外周面5の接触領域6の位置を一定の範囲で調整可能とする調整機構を備えるとともに、ガイドローラ軸8のガイドローラ4から遠い端部にフランジ型の取り付け部11を設けたものである。図示の調整機構は、斜面を利用してガイドローラ4外周面とガイド溝2上の接触領域6との距離を調整するものであるが、例えば、シムを使用する等他の方法によるものでもよい。また、ガイドローラ軸8のガイドローラ4から遠い端部に設ける取り付け部11は、軸端部にネジを成型するなど他の方法によるものでも支障がないものである。
【実施例4】
【0041】
図14は、本発明ガイド装置1における他の実施例をガイド溝2の横断面側から見た側面図である。図の左側には、横断面形状を略コ字型としたガイド溝2があり、ガイド溝2は紙面を貫いて紙面後方に延びている。図の右方より3個のガイドローラ4を同軸上に並置したガイドローラ軸8がガイドローラ4をガイド溝2に嵌合させる形に置かれている。先述したガイド装置と同様に、3個のガイドローラ4はガイドローラ軸8上で独立して回動自在であり、ガイドローラ4の夫々は、ガイド溝2の対向する内側面上に固有の外周面5の接触領域6を備えている。実施例の本発明ガイド装置1は、ガイドローラ4の接触点が3箇所となるために、ガイドローラ軸8の安定性を一層向上できる利点を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図2】本発明によるガイド装置の側面図である。
【図3】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図4】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図5】本発明によるガイド装置の側面図である。
【図6】本発明によるガイド装置の断面図である。
【図7】本発明によるガイド装置の断面図である。
【図8】本発明によるガイド装置の断面図である。
【図9】本発明によるガイド装置の斜視図である。
【図10】本発明によるガイド装置の側面図である。
【図11】本発明によるガイド装置の一つの実施例を示す斜視図である。
【図12】本発明によるガイド装置の他の実施例を示す斜視図である
【図13】本発明によるガイド装置の他の実施例を示す側面図である。
【図14】本発明によるガイド装置の他の実施例を示す側面図である。
【図15】従来のガイド装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ガイド装置
2 ガイド溝
3 内側面
4 ガイドローラ
5 外周面
6 接触領域
7 非接触領域
8 ガイドローラ軸
9 従来のガイド装置
10間隙
11取り付け部
12接触面
13導電接触帯
14接触子
15ラックギア
16ピニオンギア
17動力伝達索
18動力伝達点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置において、ガイド溝の対向する内側面の夫々にガイド溝の走行方向に平行なガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、ガイド溝の対向する内側面の一方に設けた接触領域上にガイドローラ外周面を接触させるとともに、該ガイドローラを挟む形にガイド溝内側面の他方に設けた非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個の前記ガイドローラを夫々が独立に回転可能として備えることを特徴とするガイド装置。
【請求項2】
ガイドローラ外周面をガイドローラ軸に対して傾斜させるとともに、ガイド溝の対向する内側面に設ける接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面とすることを特徴とする特許請求の範囲請求項1記載のガイド装置。
【請求項3】
ガイド溝に嵌合して接触領域上を接触転動させる少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与した特許請求の範囲請求項1、あるいは、請求項2に記載のガイド装置。
【請求項4】
ガイド溝に沿って電気の授受が可能な導電接触帯を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記導電接触帯と対をなす接触子を備えることを特徴とする特許請求の範囲請求項1、ないし請求項3のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項5】
ガイド溝に沿ってラックギアを備えるとともに、ガイドローラ軸上にラックギアと対をなすピニオンギアを備えることを特徴とする特許請求の範囲請求項1、ないし請求項4のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項6】
ガイド溝に沿って動力伝達索を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えることを特徴とする特許請求の範囲請求項1、ないし請求項4のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項1】
横断面形状を略コ字型としたガイド溝の内側面にガイドローラの外周面を接触転動させる形式のガイド装置において、ガイド溝の対向する内側面の夫々にガイド溝の走行方向に平行なガイドローラ外周面の接触領域と非接触領域を設け、ガイド溝の対向する内側面の一方に設けた接触領域上にガイドローラ外周面を接触させるとともに、該ガイドローラを挟む形にガイド溝内側面の他方に設けた非接触領域を位置させる一方、一個のガイドローラ軸上に複数個の前記ガイドローラを夫々が独立に回転可能として備えることを特徴とするガイド装置。
【請求項2】
ガイドローラ外周面をガイドローラ軸に対して傾斜させるとともに、ガイド溝の対向する内側面に設ける接触領域をガイドローラ外周面の傾斜と対応する接触面とすることを特徴とする特許請求の範囲請求項1記載のガイド装置。
【請求項3】
ガイド溝に嵌合して接触領域上を接触転動させる少なくとも1個のガイドローラに弾性を付与した特許請求の範囲請求項1、あるいは、請求項2に記載のガイド装置。
【請求項4】
ガイド溝に沿って電気の授受が可能な導電接触帯を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記導電接触帯と対をなす接触子を備えることを特徴とする特許請求の範囲請求項1、ないし請求項3のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項5】
ガイド溝に沿ってラックギアを備えるとともに、ガイドローラ軸上にラックギアと対をなすピニオンギアを備えることを特徴とする特許請求の範囲請求項1、ないし請求項4のいずれかに記載のガイド装置。
【請求項6】
ガイド溝に沿って動力伝達索を備えるとともに、ガイドローラ軸上に前記動力伝達索と結ぶ動力伝達点を備えることを特徴とする特許請求の範囲請求項1、ないし請求項4のいずれかに記載のガイド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−43192(P2011−43192A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190707(P2009−190707)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(391021938)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(391021938)
【Fターム(参考)】
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