説明

ガスセンサ

【課題】結露水がガス検出素子に付着しにくいガスセンサを提供する。
【解決手段】内部に被検出ガスが取り込まれるガス検出室25を有し、下部に被検出ガスの導入口24を有するハウジング20と、ハウジング20の鉛直上側の開口を塞ぐベース30と、ベース30から鉛直下方に突出するように設けられ、被検出ガスを検出するガス検出素子41と、を備える水素センサ1であって、ベース30は、周辺部から中央部に向かうにつれて、鉛直上方に凹んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素等の比重の小さい被検出ガスを検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、固体高分子型の燃料電池は、固体高分子膜の両側をアノード(燃料極)とカソード(酸素極)で挟み込んでMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)を形成し、このMEAを一対のセパレータで挟んでなる単セルを複数積層して一つの燃料電池スタックを構成している。そして、アノードには水素(燃料ガス)が供給され、カソードには空気(酸化剤ガス)が供給され、アノード及びカソードで電極反応が起こり、燃料電池が発電する。
【0003】
このような燃料電池からは未消費の水素が排出されるので、燃料電池から排出されたオフガスの流路に水素センサを設け、この水素センサにより、オフガス中の水素濃度の監視がされている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】WO2003/042678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような水素センサを構成するガス検出素子に、オフガス中の水蒸気が結露し、結露水が付着すると、検出精度が低下してしまう。
そこで、本発明は、結露水がガス検出素子に付着しにくいガスセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、内部に被検出ガスが取り込まれるガス検出室を有し、下部に被検出ガスの導入口を有するハウジングと、前記ハウジングの鉛直上側の開口を塞ぐベースと、前記ベースから鉛直下方に突出するように設けられ、被検出ガスを検出するガス検出素子と、を備えるガスセンサであって、前記ベースは、周辺部から中央部に向かうにつれて、鉛直上方に凹んでいることを特徴とするガスセンサである。
【0007】
このようなガスセンサによれば、ベースは、周辺部から中央部に向かうにつれて、鉛直上方に凹んでいるので、ベースで結露水が生成したとしても、この結露水は、ハウジングに向かって流れる。これにより、結露水が、ガス検出素子に付着しにくくなる。
【0008】
また、前記ハウジングの周壁部に、前記ガス検出室を加熱するヒータを備えることを特徴とするガスセンサである。
【0009】
このようなガスセンサによれば、ベースの周辺部に向かって、つまり、ハウジングの周壁部に向かって流れた結露水を、ヒータで加熱し、気化できる。これにより、気化した結露水、つまり、水蒸気が、外部に排出されやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結露水がガス検出素子に付着しにくいガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
≪第1実施形態≫
まず、本発明の第1実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
【0012】
≪水素センサの構成≫
図1から図5に示すように、本実施形態に係る水素センサ1(ガスセンサ)は、窒素よりも比重の小さい水素(被検出ガス)を検出するセンサである。ここでは、水素センサ1が、燃料電池システムを構成する燃料電池から排出されたオフガスが流れるオフガス配管105(図2参照)中の水素濃度を検出する場合を例示する。
【0013】
水素センサ1は、ケース10と、ケース10の下面に突設されたハウジング20と、ハウジング20の上方の開口26を塞ぐベース30と、ハウジング20に収容され、水素を検出するガス検出素子41、41と、ハウジング20の下部の導入口24に設けられた積層体50と、ハウジング20内に配置されたヒータ60と、を備えている。
【0014】
<ケース>
ケース10は、その外形が直方体形状であって、例えばポリフェニレンサルファイド製の容器であり、制御基板11を収容している。ケース10の長手方向の両端にはフランジ部12、12が形成されており、各フランジ部12にはカラー13が取り付けられている。そして、図2に示すように、各カラー13に挿入されたボルト14が、オフガスの流れるオフガス配管105に形成された取付座105Aに締結されることで、水素センサ1がオフガス配管105に固定されるようになっている。
【0015】
制御基板11は、ガス検出素子41、41からの信号に基づいて、水素濃度を算出する機能を備えている。また、制御基板11は、ヒータ60を適宜にON/OFFする機能を備えている。
【0016】
<ハウジング>
ハウジング20は、略有底円筒体であって(図3、図5参照)、オフガス配管105の周壁部に形成された取付孔に嵌合している(図2参照)。そして、ハウジング20とオフガス配管105との間には、Oリング21が介設され、気密性が高められており、オフガスが漏れないようになっている。
【0017】
このようなハウジング20は、筒状の周壁部22と底壁部23とを有している。そして、底壁部23の中央には円形の貫通孔が形成されており、この貫通孔が水素(被検出ガス)を含むオフガスの出入口として機能する導入口24となっている。また、ハウジング20内がオフガスの取り込まれるガス検出室25となっている。
【0018】
さらに、ハウジング20は、熱伝導性を有する材料、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂や、金属から形成されている。これにより、ヒータ60の熱が、ハウジング20を介して、ガス検出素子41、撥水フィルタ51、防爆フィルタ52に伝導するようになっている。
【0019】
<ベース>
ベース30は、ハウジング20を構成する周壁部22の鉛直上側の開口26を閉塞し、ガス検出室25の天壁部を構成している。そして、ベース30は、周辺部から中央部に向かうにつれて、鉛直上方に凹むように形成されている。すなわち、ベース30の下面、つまり、ガス検出室25の上方の天壁面31は、鉛直上方に凹んだ略半球状の凹曲面であり、その周縁が最も低く、中心に向かうにつれて徐々に高くなり、中心で最も高くなるように形成されている。
【0020】
ベース30の天壁面31のうち、後記するステー42が貫通する貫通孔の周りは、鉛直上方に凹んでおり、凹部32が形成されている(図4参照)。
なお、ベース30は、ハウジング20と同様に、熱伝導性を有する材料から形成されている。また、結露水の流れを促進するべく、天壁面31及び凹部32の内面に撥水層が形成されていることが好ましい。
【0021】
<ガス検出素子>
ガス検出素子41は、ガス検出室25に取り込まれたオフガス中の水素濃度を検出する素子であり、ベース30から鉛直下方に突出するように設けられると共に、ガス検出室25内に配置されている。
さらに説明すると、制御基板11の下面に、2本のステー42、42の上端が接続されており、各ステー42はケース10及びベース30を貫通し、各ステー42の下端はガス検出室25内に延びている。なお、各ステー42の中間部分は、エポキシ樹脂等によってベース30に固定されている。
そして、ガス検出素子41が、ステー42、42の下端に接続されており、制御基板11が、水素濃度に対応したガス検出素子41の抵抗値等を、ステー42、42を介して検出するようになっている。
【0022】
なお、ガス検出素子41の種類及び数並びに配置は、水素濃度の検出方式に応じて、適宜に変更される。
例えば、水素の検出方式がガス接触燃焼式である場合は、ガス検出素子41は検出素子と温度補償素子との対により構成される。そして、水素が各素子に接触し、燃焼した際に発生する熱を利用し、検出素子と温度補償素子と間の電気抵抗差に基づいて水素濃度が検出される。
また、水素の検出方式が半導体方式である場合、ガス検出素子41は、検出素子と検知素子との対により構成され、水素が各素子表面の酸素と接触・離脱した際に発生する抵抗値に基づいて、水素濃度が検出される。
【0023】
<積層体>
積層体50は、撥水フィルタ51と防爆フィルタ52とを備え、ガス検出素子41から遠ざかるオフガス配管105に向かって、防爆フィルタ52、撥水フィルタ51の順で積層されることで一体に構成された、2層構造を有する薄型の円盤体である。そして、積層体50は、導入口24に蓋をするようにハウジング20に取り付けられている。
【0024】
撥水フィルタ51は、ガスを透過しつつ、ガスに含まれる液体を透過しないフィルタであり、例えば、テトラフルオロエチレン膜から構成される。これにより、気体状のオフガスをガス検出室25に取り込みつつ、オフガス中に含まれる液体の水分が撥水フィルタ51ではじかれ、ガス検出室25に侵入しないようになっている。
防爆フィルタ52は、防爆性を確保するためのフィルタであり、例えば、液体状の水を通すことが可能な程度の金属製のメッシュや多孔質体から構成される。
この他に例えば、撥水フィルタ51と防爆フィルタ52との間に、撥水フィルタ51及び防爆フィルタ52を加熱する円盤状のヒータを備える構成としてもよい。
【0025】
<ヒータ>
ヒータ60は、ハウジング20の内壁面に沿って配置された略有底円筒状(おわん型)の電気ヒータであり、筒状の周壁部61と、周壁部61の下端部から径方向内側に延設すると共に、導入口24と略重なる貫通孔63が形成された底壁部62と、を備えている。このようなヒータ60は、例えばPTCヒータやセラミックスヒータから構成され、周壁部61と底壁部62とは一体に構成され、一体で発熱するようになっている。
【0026】
また、ヒータ60は、図示しない配線を介して、制御基板11に接続されている。そして、制御基板11は、ガス検出室25の温度・湿度に基づいて、結露水が生成しないように、ヒータ60をON/OFF制御するようになっている。なお、ガス検出室25の温度・湿度は、ガス検出室25に設けられた温度・湿度センサ(図示しない)によって検出される。
【0027】
≪水素センサの作用・効果≫
次に、水素センサ1の作用効果を説明する。
【0028】
<水素センサの作動時(ヒータ60のON時)>
まず、燃料電池(図示しない)が発電し、これから排出されたオフガス中の水素濃度を水素センサ1で検出する、水素センサ1の作動時を説明する。
水素を含むオフガスは、撥水フィルタ51及び防爆フィルタ52を通って、ガス検出室25に侵入する。そして、オフガス中の水素が、ガス検出素子41に接触し、水素濃度が検出される。ここで、オフガスは、撥水フィルタ51及び防爆フィルタ52を通った後、ガス検出室25内を鉛直上方に進み、ベース30の天壁面31に吹き付けられる。これにより、オフガスに含まれる水蒸気は、天壁面31で結露し、天壁面31に結露水が付着する。
【0029】
この結露水は、径方向外側に向かって低くなっている天壁面31に沿って、径方向外側に、つまり、ヒータ60の周壁部61に向かって誘導される(図5、矢印A1参照)。このとき、ステー42の周りには凹部32が形成されているので、結露水がステー42を迂回し(図5、矢印A2参照)、結露水がステー42に付着することはない。これにより、結露水がステー42に沿って鉛直下方に流れることはなく、結露水がガス検出素子41に付着することは防止される。
また、ヒータ60の周壁部61に到達した結露水は、発熱するヒータ60によって加熱され、気化して水蒸気となり、撥水フィルタ51及び防爆フィルタ52を通って、外部に排出可能となる。
【0030】
<水素センサの停止時(ヒータ60のOFF時)>
次に、燃料電池の発電が停止し、ヒータ60がOFFされ、水素濃度を検出しない水素センサ1の停止時について説明する。
ヒータ60がOFFされると、ハウジング20及びベース30の温度が、徐々に低下する。このとき、ヒータ60から遠いベース30の中央部の温度が下がりやすくなる。このようにベース30の温度が下がると、ガス検出室25に残留する水蒸気が、ベース30の天壁面31で結露し、結露水が天壁面31に付着する。
【0031】
この結露水は、水素センサ1の作動時と同様に、径方向外側に向かって、ステー42を迂回しつつ誘導される(図5、矢印A1参照)。これにより、結露水がステー42に沿って下方に流れることはなく、結露水がガス検出素子41に付着することは防止される。
【0032】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図6から図8を参照して説明する。
第2実施形態に係るベース70の天壁面71は、第1実施形態に係るベース30の天壁面31と同様に、周辺部から中央部に向かうにつれて、鉛直上方に凹んでおり、各ステー42の周りには、凹部72が形成されている。天壁面71は、周方向において、凸凹しており(図7、図8参照)、天壁面71に付着した結露水は、周方向において、天壁面71の低い部分に流れつつ(図7、矢印A3参照)、径方向外側に向かって流れるようになっている(図7、矢印A4参照)。なお、天壁面71のステー42が貫通する部分は、周方向において他の部分よりも高くなっており、結露水がステーに付着しにくくなっている。
【0033】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
【0034】
前記した実施形態では、被検出ガスが水素である場合を例示したが、その他のガスでもよい。
前記した実施形態では、水素センサ1が燃料電池の下流に設けられ、燃料電池から排出されるオフガス中の水素濃度を検出する場合を例示したが、水素センサ1の取付位置はこれに限定されず、例えば、車室や、水素タンクが配置されるタンク室等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る水素センサの平面図である。
【図2】第1実施形態に係る水素センサの縦断面図である。
【図3】第1実施形態に係る水素センサの要部の縦断面図であり、図5のX2−X2線断面に対応している。
【図4】水素センサのベース部の拡大図である。
【図5】図3に示す水素センサのX1−X1線断面図である。
【図6】第2実施形態に係る水素センサの要部の縦断面図であり、図3に対応するものである。
【図7】第2実施形態に係る水素センサの平断面図である。
【図8】図6に示す水素センサのX2−X2線断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 水素センサ(ガスセンサ)
20 ハウジング
24 導入口
25 ガス検出室
26 開口
30 ベース
31 天壁面
41 ガス検出素子
60 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被検出ガスが取り込まれるガス検出室を有し、下部に被検出ガスの導入口を有するハウジングと、
前記ハウジングの鉛直上側の開口を塞ぐベースと、
前記ベースから鉛直下方に突出するように設けられ、被検出ガスを検出するガス検出素子と、
を備えるガスセンサであって、
前記ベースは、周辺部から中央部に向かうにつれて、鉛直上方に凹んでいる
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記ハウジングの周壁部に、前記ガス検出室を加熱するヒータを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−2193(P2010−2193A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158806(P2008−158806)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】