説明

ガスセンサ

【課題】高い測定精度を可能にする、冒頭で述べた種類のガスセンサを提供する。
【解決手段】ガスセンサ(1)は少なくとも1つの導電性のガス感知層(7)を有し、当該ガス感知層(7)は目標ガスと接触可能な表面領域(9)を有し、当該表面領域内での仕事関数は表面領域と接触している目標ガスの濃度に依存している。少なくとも1つの電気ポテンシャルセンサは、エアギャップ(8)を介して表面領域(9)に容量結合している。表面領域(9)は少なくとも1つの繰り抜き部によって構造化され、当該繰り抜き部内に、ガス感知層(7)と導電結合されている平坦な材料要素(18)が配置され、当該材料要素の材料はガス感知層(7)の材料と異なり、且つ金属、および/または、金属を含有する化合物を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標ガスと接触可能な表面領域を有し、該表面領域内での仕事関数が該表面領域と接触している目標ガスの濃度に依存している少なくとも1つの導電性のガス感知層と、エアギャップを介して前記表面領域に容量結合している少なくとも1つの電気ポテンシャルセンサとを備えるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、水素ガスの濃度を測定するためのこの種のガスセンサが知られている。このガスセンサはシリコン基板を有し、該シリコン基板には、ポテンシャルセンサとして、ドレインとソースとその間にあるチャネル領域とを備えた電界効果トランジスタが一体に組み込まれている。チャネル領域上には電気絶縁層が配置され、該電気絶縁層上にはゲート電極が配置されている。ゲート電極の側方にはセンサ電極が設けられ、該電極センサはゲート電極と一体に結合されてサスペンデッドゲートを形成している。センサ電極は基板側のその下面をガス感知層で被覆され、該ガス感知層はエアギャップを介してソースに容量結合されている。ガス感知層の基板側表面領域は水素ガスと接触可能であり、水素ガスは表面領域に接触する際にこれに吸着される。水素ガスの濃度が変化すると、ガス感知層の表面領域で仕事関数が変化する。センサ電極が表面領域に容量結合され、ゲート電極と結合されているので、ゲート電極の電気ポテンシャルが変化する。このポテンシャルの変化に依存してドレインとソースとの間で電流が制御される。
【0003】
通常の室内空気中では、ガス感知層の表面に空気中酸素の薄い層が解離性吸着し、すなわち空気中にある酸素分子としてではなく酸素原子として吸着する。目標ガスがガス感知層の周囲に来ると、まず目標ガスが表面に吸着し、その際目標ガスの一部が表面に吸着されている空気中酸素を押しのけ、その吸着スペースを占める。目標ガスの吸着と酸素占有部の低減という2つの効果は、表面仕事関数の変化に付加的に寄与する。しかし、同時に、表面では、ガス感知層の触媒作用によって促進されて水素と酸素との間に反応が始まり、水が形成される。それによって、約60℃以下の低い温度だと、表面の水素付着量のみが徐々に減少する。この水素消費量は、ガス層から水素が持続的に吸着することによって相殺され、その結果安定な測定信号が保証されている。温度がこれよりも高い約60℃以上であると、反応が迅速に経過して、水素吸着が表面反応による水素消費量を完全に相殺できなくなり、加えてガス感知層の直近の周囲における水素濃度も減少する。これにより、表面の酸素付着量が再び増大することがある。3つの効果すべてが仕事関数を逆方向にシフトさせる。この反応は、ガス感知層の温度に応じて数時間にわたって行われることも、また数秒以内で行われることもあり、その結果測定信号が強く乱れることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許第4333875C2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高い測定精度を可能にする、冒頭で述べた種類のガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、表面領域が少なくとも1つの繰り抜き部によって構造化され、該繰り抜き部内に、ガス感知層と導電結合されている平坦な材料要素が配置され、該材料要素の材料がガス感知層の材料と異なり、且つ少なくとも1つの金属、および/または、金属を含有する少なくとも1つの化合物を含んでいることによって解決される。
【0007】
驚くべきことに、前記構造化により、測定すべき目標ガスと表面酸素または空気中酸素との反応の相互作用を減少させることができ、或いは阻止することができるほどにガス感知層が安定化されることが明らかになった。前記化合物は好ましくは酸化物である。ガス感知層は好ましくは金属から成り、特にプラチナおよび/またはパラジウムから成る。
【0008】
前記少なくとも1つの金属が銀および/または銅を含んでいると、ガスセンサの測定信号が特に良好に安定化されることが実験から明らかになった。
【0009】
表面領域と少なくとも1つの材料要素とから形成される構造がマスキングステップにより生成され、特にフォトリソグラフィーで生成されているならば、有利である。これにより、ガスセンサの作製の際に、所定の幾何学的形態を備えた構造を合目的に且つ再現可能に形成させることが可能である。構造は有利には規則的に構成され、および/または、規則的な幾何学的基本形態を有している。ガス感知層に関しては、構造は直線状、湾曲状、正方形状、長方形状、角形形状、多角形状、楕円形状および/またはリング状の構造要素を有していてよい。本発明の範囲内では、構造が等しくまたは一致している本発明によるガスセンサの少なくとも2つを有するセットも可能である。
【0010】
しかし、少なくとも1つの金属が鉄、錫、鉛、ニッケル、亜鉛および/またはコバルトを含んでいてもよい。これらの金属は電気化学列で銀および銅に隣接している。
【0011】
本発明の有利な構成では、ガス感知層の、目標ガスと接触可能な表面領域は、少なくとも1つの繰り抜き部の内部にある少なくとも1つの材料要素の目標ガスと接触可能な表面の1%よりも大きく、場合によっては5%よりも大きく、特に10%よりも大きい。目標ガスに接触可能なガス感知層の表面領域が小さすぎると、表面での目標ガス吸着量が少なくなり、これは目標ガス検出にとって致命的である。
【0012】
少なくとも1つの繰り抜き部の内部にある少なくとも1つの材料要素の目標ガスと接触可能な表面が、ガス感知層の目標ガスと接触可能な表面領域の0.001%よりも大きく、場合によっては0.1%よりも大きく、特に10%よりも大きいならば、有利である。もし材料要素の、目標ガスと接触可能な表面領域が小さすぎると、少なくとも1つの材料要素の安定な作用が低下する。
【0013】
合目的には、目標ガスと接触可能な表面領域は、どの個所においても少なくとも1つの材料要素から500μm以上、場合によっては300μm以上、特に100μm以上離れていないように構造化されている。これにより、ガスセンサの測定信号の効果的な安定化が可能になる。
【0014】
有利には、表面領域と少なくとも1つの材料要素とから形成される構造が、少なくとも2つの合同の単位構造領域を有し、これら単位構造領域が、好ましくは、互いに側方にて境を接しており、且つそれぞれ少なくとも1つの材料要素とガス感知層の表面領域の一部分とを含んでいる。この場合、前記構造がこのような多数の単位構造領域から形成され、これらの単位構造領域が1つまたは複数の枠内でマトリックス状に互いに並設されていることも可能である。
【0015】
材料要素の少なくとも2つが、その間にある、ガス感知層の部分領域によって、互いに側方に間隔をもって位置し、材料要素の前記間隔が少なくとも50nm、場合によっては少なくとも75nm、好ましくは少なくとも100nmであるならば、有利である。この場合、材料要素がたとえばガス感知層によって完全に取り囲まれることによって、材料要素が互いに分離されていてもよい。材料要素の、ガス感知層に境を接している外側輪郭は、有利には、材料要素がガス感知層に境を接している境界線ができるだけ短くなるように選定されている。これは、特に、材料要素が円板状に構成されていることによって達成できる。
【0016】
本発明の有利な実施態様では、平坦な材料要素の厚さは単一層の厚さの少なくとも0.1倍で、多くとも10μmである。実験から、層厚が10nmで、平坦な材料要素が銅または酸化銅から成っていれば、測定信号の良好な安定化を達成できることが明らかになった。
【0017】
本発明の1つの可能な構成では、少なくとも1つの材料要素はガス感知層上に配置されている。しかし、逆の配置も可能であり、すなわちガス感知層が金属層の上に配置されているのも可能である。この場合には、金属層の、ガス感知層によって覆われていない少なくとも1つの部分は、少なくとも1つの材料要素を形成している。この場合、ガスセンサの製造の際、互いに重なっている両層のうちの一方の層のみを構造化すればよい。他方埋設構造も可能であり、すなわち少なくとも1つの材料要素がガス感知層の少なくとも1つの繰り抜き部内部に完全に配置されていることも可能である。ガス感知層に関しては、少なくとも1つの材料要素は繰り抜き部の前方、内部および/または後方に配置されていてよい。少なくとも1つの材料要素が繰り抜き部の上方、下方および/または内部に配置されていてもよい。
【0018】
少なくとも1つの材料要素とガス感知層との間に接着介在層が配置されていれば、有利である。これにより、ガス感知層での少なくとも1つの材料要素のより良好な接着を達成できる。接着介在層は、有利には、繰り抜き部内のガス感知層を覆わないように構造化されている。
【0019】
なお、少なくとも1つの材料要素の材料は、好ましくは180℃以下の温度で、特に目標ガスが水素である場合に、ガス露出下で長期間安定であるべきであり、少なくとも1つの材料要素は湿気に対しても耐性がなければならない。さらに、少なくとも1つの材料要素は目標ガスとの接触の際のガス感知層の仕事関数の変化を阻害すべきでない。
【0020】
本発明の有利な構成では、ポテンシャルセンサは電界効果トランジスタであり、該電界効果トランジスタが基板を有し、該基板上にドレインとソースとが配置され、この場合ドレインとソースとの間にチャネル領域が形成され、チャネル領域は、エアギャップを介して直接に、または、チャネル領域と協働するゲート電極と該ゲート電極に導電接続されているセンサ電極とを介して間接的に、ガス感知層の表面領域に容量結合されている。すなわち、ガスセンサはポテンシャルセンサとしてSGFETおよび/またはCCFETを有していてよい。
【0021】
本発明の他の構成では、ガスセンサはケルビンプローブとして構成されており、ポテンシャルセンサは、エアギャップを通じてガス感知層の表面領域から間隔をもって位置して該ガス感知層に接離可能な電極を介して、ガス感知層の表面領域に容量結合されている。このようなケルビンプローブは、有利には実験室での実験で使用される。
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】SGFETを有し、そのチャネル領域がエアギャップを介してガス感知層に容量結合されているガスセンサの横断面図である。
【図2】CCFETを有し、そのセンサ電極がエアギャップを介してガス感知層に容量結合されているガスセンサの横断面図である。
【図3】ケルビンプローブとして構成されたガスセンサの横断面図である。
【図4】繰り抜き部として構造化されたガス感知層の第1実施形態を上から見た図である。
【図5】繰り抜き部として構造化されたガス感知層の第2実施形態を上から見た図である。
【図6】ガスセンサ周囲での水素ガスセンサの測定信号と水素濃度とを示すグラフであり、横軸に時間tを秒で、左縦軸に測定信号の振幅を、右縦軸に水素濃度をプロットしたグラフである。
【図7】構造化したガス感知層を配置した担持部分の部分横断面図である。
【図8】構造化したガス感知層を配置した担持部分の部分横断面図である。
【図9】構造化したガス感知層を配置した担持部分の部分横断面図である。
【図10】繰り抜き部として構造化されたガス感知層の第3実施形態を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1において全体を1で示したガスセンサは基板2を有し、該基板上にはnドープしたトランジスタタンク内にドレイン3とソース4とが配置されている。ドレイン3とソース4とは、たとえばpドープしたシリコンから成ることができる。ドレイン3は、導電軌道部を介して、図面に詳細に図示していないドレイン接続部と接続されている。対応的に、ソース4はソース接続部と接続されている。ドレイン3とソース4との間には、基板2内にチャネル領域5が形成され、該チャネル領域には、ゲート誘電体として用いる電気絶縁性の酸化薄層または窒化物が配置されている。
【0025】
チャネル領域5の上方には、担持部分6にガス感知層7が配置されている。ガス感知層7はたとえば貴金属から成り、特にプラチナまたはパラジウムから成り、エアギャップ8によってチャネル領域5から間隔をもって位置している。ガス感知層7のチャネル領域5側の表面領域9は、エアギャップ8を介してチャネル領域5に容量結合されている。
【0026】
担持部分6は、該担持部6とガス感知層7とがサスペンデッドゲートを形成するように、ガス感知層7の両側で電気絶縁層10を介して基板2と結合されている。
【0027】
エアギャップ8は、図面には詳細に図示していない少なくとも1つの開口部を介して、ガスセンサ1を取り囲む大気と連通している。前記開口部を介してガス感知層7の表面領域9は感知すべき目標ガス、すなわち水素と接触することができる。目標ガスは表面領域9と接触した時に該表面領域9に吸着する。その際に表面領域9で仕事関数が変化して、チャネル領域5での電気ポテンシャルが変化する。
【0028】
図1の実施形態では、チャネル領域5は開口して形成され(ISFET)、酸化薄層とエアギャップ8とを介して直接ガス感知層7に容量結合されている。チャネル領域5がエアギャップ8のガス感知層7とは逆の側に配置されていることがはっきり見て取れる。
【0029】
図2の実施形態では、電界効果トランジスタがCCFETとして形成され、チャネル領域5はガス感知層7の横に位置するように基板2内に取り付けられ、ゲート電極11で覆われている。チャネル領域5をガス感知層7に容量結合させるため、ゲート電極11は電気接続線12を介してセンサ電極13と結合され、センサ電極13は、エアギャップ8の、ガス感知層7の表面領域9とは反対側の面に位置するように、基板2上にある絶縁層10上に配置されている。絶縁層10はたとえばSiO層であることができる。SGFETのサスペンデッドゲートの構成は、図1のものに対応している。
【0030】
図3に示した実施形態では、ガスセンサ1はケルビンプローブとして構成されている。ガス感知層7は導電性担持体14上に配置され、該担持体14とは逆の側のその側面に表面領域9を有し、該表面領域で目標ガスを吸着することができる。表面領域9はエアギャップ8によって電極15から間隔をもって位置し、該電極とともに電気容量部を形成している。
【0031】
電極15は、図面に詳細に図示していないアクチュエータを用いて振動させることができる。この場合、電極15は矢印Pfに対応してガス感知層7に対し交互に接近および離間するように運動する。電極15と担持体14またはガス感知層7とは評価・制御装置17の接続部16と接続されている。評価・制御装置は図面に詳細に図示していないポテンシャルセンサを有し、該ポテンシャルセンサはガス感知層7と電極15との間の電圧を測定するために接続部16と接続されている。評価・制御装置17は、さらに、前記ポテンシャルセンサと制御接続している調整可能な電圧源を有し、該電圧源を用いてポテンシャルセンサと電極15および/または担持体14との間に逆電圧が印加される。逆電圧は、ポテンシャルセンサによって測定されるポテンシャルが平均でゼロに等しいように選定される。これとは択一的に、たとえば電極15と担持体14との間で流れる電流を測定することで、振動によって生じる電極15と担持体14との間の電気容量の変化を直接測定するようにしてもよい。
【0032】
ガス感知層7の表面領域9は、図1ないし図3に示したどの実施形態でも、それぞれ繰り抜き部によってフォトリソグラフィーで構造化されており、これら繰り抜き部内にはそれぞれ、ガス感知層と導電接続されている平坦な材料要素18が配置されている。材料要素18の材料はガス感知層7の材料とは異なっており、好ましくは銅および/または銀を含んでいる。
【0033】
ガス感知層7の、目標ガスと接触可能で、チャネル領域5に容量結合されている表面は、ガス感知層の表面と材料要素18の表面とから成る全表面の1%よりも大きく且つ99.999%よりも小さい。
【0034】
ガス感知層7の、目標ガスと接触可能な表面領域9は、どの個所においても材料要素18から500μm以上離れていないように、構造化されている。
【0035】
図4に示した実施形態では、ガス感知層7はチェス盤状に構造化されている。ガス感知層7の、目標ガスに接触可能な表面領域9が、多数の正方形部分に分割され、これらの正方形部分が複数の列および行を成して交互に互いにずれていることがはっきり見て取れる。ガス感知層7の互いに隣り合っている2つの部分の間の中間空間内には、それぞれ1つの材料要素18が配置され、その表面サイズは前記部分のそれに対応している。互いに隣り合っている2つの材料要素18の間隔Aは100nmと500μmとの間である。材料要素18の全表面とガス感知層7の表面領域9との面積比率は1:1である。
【0036】
図5に示した実施形態では、材料要素18は、これら材料要素の間にあって目標ガスと接触可能な、ガス感知層7の表面領域9によって、すべての側で互いに間隔をもって位置している。
【0037】
表面領域9と材料要素18とから形成される構造が、ほぼ正方形の外側輪郭を備えた複数個の合同の単位構造領域19を有していることがはっきり認められる。どの単位構造領域19もそれぞれ、1つの材料要素18と、この材料要素18を枠状に取り囲んでいる、ガス感知層7の表面領域9の一部分とを含んでいる。互いに隣り合っている単位構造領域19は、表面領域9の前記一部分でもって互いに直接に且つ途切れなく境を接しており、その結果1つの連続した、目標ガスと接触可能な表面領域9が生じる。材料要素18の全表面とガス感知層7の表面領域9との面積比率はB/(C−B)であり、ここでBは材料要素18のエッジ長さ、Cは単位構造領域19のエッジ長さである。
【0038】
図6には、ガス感知層7の構造の異なるサイズB,C(図5を参照)に対するケルビンプローブの測定信号がグラフで示してある。この場合、目標ガスの濃度はほぼゼロから最大値へ階段状に上昇し、その後階段状にほぼゼロへ減少している。測定信号の振幅が構造のサイズに依存していること、値B=10μm、C=50μmで最大感度が達成されることがはっきり認められる。
【0039】
図7において認められるように、ガス感知層7は担持部分6上に配置され、材料要素18はガス感知層7上に配置されている。ガス感知層7は途切れなく担持部分6上に延在している。ガス感知層7は担持部分6に接着し、材料要素18はガス感知層7に接着している。材料要素18の厚さは、1つの単一層の厚さの0.1倍の厚さと10μmとの間である。必要な場合は、担持部分6とガス感知層7との間、および/または、ガス感知層と材料要素18との間に、接着介在層が配置されていてよい。
【0040】
他方、図8に示したように、材料要素18を担持部分6上に配置し、ガス感知層7を、材料要素18を有している金属層の上に配置することも可能である。この場合、材料要素18は1つの連続する金属層の一部分によって形成される。金属層は担持部分6に接着し、ガス感知層7は金属層に接着する。必要な場合は、担持部分6と金属層との間、および/または、金属層とガス感知層7との間に、接着介在層が配置されていてよい。
【0041】
図9において認められるように、ガス感知層7と材料要素18とは互いに横に並んで担持部分6上に配置されていてもよい。材料要素18はガス感知層7の側方にて境を接している。ガス感知層7と材料要素18とはそれぞれ直接に担持部分6の表面に接着している。この場合も、担持部分6とガス感知層7または材料要素18との間に、接着介在層が設けられていてよい。
【0042】
図10には他の実施形態が示され、この実施形態では、ガス感知層の目標ガスと接触可能な表面領域9はリングを有し、これらのリングの間にリング状の材料要素18が配置されている。この場合、表面領域9のリングと材料要素18とは互いにほぼ同心に配置されている。図10に示した構造は複数個の仮想の単位構造領域を有し、これら仮想の単位構造領域は、セグメント状に形成され、互いに途切れなく境を接するように1つのアングルラスター内で中心のまわりに互いにずれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標ガスと接触可能な表面領域(9)を有し、該表面領域内での仕事関数が該表面領域と接触している目標ガスの濃度に依存している少なくとも1つの導電性のガス感知層(7)と、エアギャップ(8)を介して前記表面領域(9)に容量結合している少なくとも1つの電気ポテンシャルセンサとを備えるガスセンサ(1)において、前記表面領域(9)が少なくとも1つの繰り抜き部によって構造化され、該繰り抜き部内に、前記ガス感知層(7)と導電結合されている平坦な材料要素(18)が配置され、該材料要素の材料が前記ガス感知層(7)の材料と異なり、且つ少なくとも1つの金属、および/または、金属を含有する少なくとも1つの化合物を含んでいることを特徴とするガスセンサ(1)。
【請求項2】
前記表面領域(9)と少なくとも1つの前記材料要素(18)とから形成される構造がマスキングステップにより生成され、特にフォトリソグラフィーで生成されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスセンサ(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの金属が銀および/または銅を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスセンサ(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属が鉄、錫、鉛、ニッケル、亜鉛および/またはコバルトを含んでいることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項5】
前記ガス感知層(7)の、目標ガスと接触可能な前記表面領域(9)が、前記少なくとも1つの繰り抜き部の内部にある前記少なくとも1つの材料要素(18)の目標ガスと接触可能な表面の1%よりも大きく、場合によっては5%よりも大きく、特に10%よりも大きいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの繰り抜き部の内部にある前記少なくとも1つの材料要素(18)の目標ガスと接触可能な表面が、前記ガス感知層の目標ガスと接触可能な表面領域(9)の0.001%よりも大きく、場合によっては0.1%よりも大きく、特に10%よりも大きいことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項7】
前記目標ガスと接触可能な表面領域(9)は、どの個所においても前記少なくとも1つの材料要素(18)から500μm以上、場合によっては300μm以上、特に100μm以上離れていないように構造化されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項8】
前記表面領域(9)と前記少なくとも1つの材料要素(18)とから形成される前記構造が、少なくとも2つの合同の単位構造領域(19)を有し、これら単位構造領域が、好ましくは、互いに側方にて境を接しており、且つそれぞれ少なくとも1つの材料要素(18)と前記ガス感知層(7)の前記表面領域(9)の一部分とを含んでいることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項9】
前記材料要素(18)の少なくとも2つが、その間にある、前記ガス感知層(7)の部分領域によって、互いに側方に間隔をもって位置していること、前記材料要素(18)の前記間隔が少なくとも50nm、場合によっては少なくとも75nm、好ましくは少なくとも100nmであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項10】
平坦な前記材料要素(18)の厚さが単一層の厚さの少なくとも0.1倍で、多くとも10μmであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの材料要素(18)が前記ガス感知層(7)上に配置されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項12】
前記ガス感知層(7)が金属層の上に配置されていること、前記金属層の、前記ガス感知層(7)によって覆われていない少なくとも1つの部分が、前記少なくとも1つの材料要素(18)を形成していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの材料要素(18)と前記ガス感知層(7)との間に接着介在層が配置されていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項14】
目標ガスが還元ガス、特に水素であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項15】
前記ポテンシャルセンサが電界効果トランジスタであり、該電界効果トランジスタが基板を有し、該基板上にドレイン(3)とソース(4)とが配置されていること、前記ドレイン(3)と前記ソース(4)との間にチャネル領域(5)が形成されていること、前記チャネル領域(5)が、前記エアギャップ(8)を介して直接に、または、前記チャネル領域(5)と協働するゲート電極(11)と該ゲート電極(11)に導電接続されているセンサ電極(13)とを介して間接的に、前記ガス感知層(7)の前記表面領域(9)に容量結合されていることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。
【請求項16】
前記ガスセンサがケルビンプローブとして構成されており、前記ポテンシャルセンサが、前記エアギャップ(8)を通じて前記ガス感知層(7)の前記表面領域(9)から間隔をもって位置して該ガス感知層(7)に接離可能な電極(15)を介して、前記ガス感知層(7)の前記表面領域(9)に容量結合されていることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載のガスセンサ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−526361(P2011−526361A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515203(P2011−515203)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004577
【国際公開番号】WO2010/000413
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(501409670)マイクロナス ゲーエムベーハー (23)
【氏名又は名称原語表記】Micronas GmbH
【Fターム(参考)】