説明

ガスバランサ

【課題】移動体と共に昇降する重量を軽減し、移動体のまわりの有効スペースを拡大できるガスバランサを提供する。
【解決手段】ガス室41に生じるガス圧力によって移動体(主軸ユニット2)の重量を支えるガスバランサ10であって、シリンダ11の上端からピストンロッド31が突出するように配置され、シリンダ11が架台(本体3)に連結される一方、ピストンロッド31の上端部が移動体(主軸ユニット2)に連結され、ピストンロッド31が移動体(主軸ユニット2)と共に昇降する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械のヘッド等の移動体を支えるガスバランサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械等にあっては、ガスバランサの反発力によってヘッド、モータ等の重量が支えられることにより、モータの駆動負荷が軽減され、省力化がはかられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ガスバランサは、筒状をしたシリンダと、このシリンダに摺動可能に挿入されるピストンロッドと、シリンダとピストンロッドとの間に画成されるガス室とを備え、このガス室に生じるガス圧力によって移動体の重量を支える。
【0004】
従来のガスバランサは、シリンダの下端からピストンロッドが突出するように配置され、シリンダが移動体に連結される一方、ピストンロッドの下端部(先端部)が架台に支持されるように倒立して配置されている。
【0005】
シリンダヘッドとピストンロッドの間にはメインシールが介装され、このメインシールによってガス室が密封される。メインシールの上方にはオイル溜めが設けられ、メインシールの摺接部を潤滑するようになっている。
【特許文献1】特開2006−114559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のガスバランサにあっては、ピストンロッドより大きいシリンダが移動体と共に昇降するように配置されるため、移動体のまわりの有効スペースが削減されるとともに、シリンダの自重が移動体にかかるため、ピストンロッドの反発力を効率的に使用できないという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、移動体と共に昇降する重量を軽減し、移動体のまわりの有効スペースを拡大できるガスバランサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筒状をしたシリンダと、このシリンダに摺動可能に挿入されるピストンロッドと、シリンダとピストンロッドとの間に画成されるガス室とを備え、ガス室に生じるガス圧力によって移動体の重量を支えるガスバランサであって、シリンダの上端からピストンロッドが突出するように配置され、シリンダが架台に連結される一方、ピストンロッドの上端部が移動体に連結され、ピストンロッドが移動体と共に昇降する構成としたことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ガスバランサの姿勢が従来のものと逆になり、ガスバランサのピストンロッドが移動体のまわりに配置されるため、ガスバランサが移動体まわりに占めるスペースが削減され、移動体まわりの有効スペースを拡大することができる。
【0010】
また、ガスバランサは、重量の大きいシリンダが架台に連結され、重量の小さいピストンロッドが移動体と共に昇降するため、可動部が軽量化され、ピストンロッドの反発力を効率的に使用して駆動装置の省力化がはかられる。
【0011】
さらに、シリンダが昇降しないため、シリンダに接続される図示しないエア配管等が動かされることがなく、エア配管のジョイント等にガス漏れが生じることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、マシニングセンタ1は、ワークを削る主軸ユニット2と、本体(架台)3に対してこの主軸ユニット2を垂直方向に移動する駆動装置5と、主軸ユニット(移動体)2の重量を支えるガスバランサ10とを備える。
【0014】
主軸ユニット2は、ワークを削る回転工具を駆動し、多種類の加工を行うものであり、図示しないモータ等の重量物を有する。
【0015】
駆動装置5は、主軸ユニット2のヘッドに螺合するボールねじ6と、このボールねじ6を駆動するサーボモータ7とを備える。ボールねじ6の回転によって主軸ユニット2が図中矢印で示すように昇降する。
【0016】
ガスバランサ10は、筒状をしたシリンダ11と、このシリンダ11に摺動可能に挿入されるピストンロッド31と、シリンダ11とピストンロッド31との間に画成されるガス室41とを備え、図示しないエア源からガス室41に導かれるガス圧力によってシリンダ11からピストンロッド31を押し出す反発力を発生する。
【0017】
ガスバランサ10は、シリンダ11の上端からピストンロッド31が突出するように配置され、シリンダ11が本体(架台)3に連結される一方、ピストンロッド31の上端部が主軸ユニット(移動体)2に連結される。
【0018】
シリンダヘッド12と本体3の間にはキー9が介装され、シリンダヘッド12が本体3に連結される。
【0019】
なお、これに限らず、シリンダチューブ25またはシリンダボトム26を本体3に連結してもよい。
【0020】
ピストンロッド31の上端部(先端部)31aは、ベアリング8が取り付けられ、このベアリング8を介して主軸ユニット2のヘッドに連結される。
【0021】
図2はガスバランサ10が収縮した状態を示している。以下、図2に基づいてガスバランサ10の説明をする。
【0022】
ガスバランサ10のシリンダ11は、ピストンロッド31を摺動可能に支持するシリンダヘッド12と、このシリンダヘッド12に結合される円筒状のシリンダチューブ25と、このシリンダチューブ25の開口端を塞ぐシリンダボトム26とを備える。シリンダチューブ25の上端部25aは、シリンダヘッド12のアウタヘッド14に嵌合し、溶接部24によってアウタヘッド14に固着される。シリンダチューブ25の下端部25bには、シリンダボトム26が螺合して結合される。
【0023】
ピストンロッド31の下端部には円盤状のピストン35が結合される。このピストン35の外周部には軸受ブッシュ37が取り付けられる。この軸受ブッシュ37がシリンダチューブ25の内壁面に摺接することによって、ピストンロッド31の下端部(基端部)がピストン35を介してシリンダ11に対して摺動可能に支持される。
【0024】
ピストン35には複数の通孔36が形成される。ガスバランサ10の伸張作動時にピストン35がシリンダ11内を移動するのに伴ってガス室41のガスが通孔36を通るようになっている。
【0025】
シリンダボトム26には給排通孔27が開口している。シリンダボトム26に図示しないエア配管のジョイント28が締結される。ガス室41には給排通孔27とエア配管を介してエア圧源から所定圧力に高められた窒素ガスが導入される。
【0026】
シリンダヘッド12は、アウタヘッド14とインナヘッド13とを有し、アウタヘッド14の内側に円筒状のインナヘッド13が螺合して取り付けられる。
【0027】
図3は、図2の一部を拡大した断面図である。この図3に示すように、インナヘッド13の円筒面状の内壁には、複数の環状溝が形成され、これらの各環状溝に上から順にダストシール15、軸受ブッシュ16、サブシール17、メインシール18、Oリング19、軸受ブッシュ20がそれぞれ取付けられる。
【0028】
ダストシール15がピストンロッド31の外周面に摺接することによって、ピストンロッド31とインナヘッド13との隙間にダスト等が侵入することが防止される。
【0029】
軸受ブッシュ16、20がそれぞれピストンロッド31の外周面に摺接することによって、ピストンロッド31がシリンダ11に対して摺動可能に支持される。
【0030】
サブシール17とメインシール18がそれぞれピストンロッド31の外周面に摺接することによって、ガス室41が密封され、ガス室41に導入される加圧ガスがピストンロッド31とインナヘッド13との隙間を通って外部に洩れ出すことが防止される。
【0031】
ピストンロッド31とインナヘッド13との間には、グリス室21が円筒状の間隙として画成される。
【0032】
インナヘッド13にはグリス室21に開口する通孔22、23が形成され、アウタヘッド14には通孔32、33が形成され、通孔22、23と通孔32、33が環状の溝52、53を介してそれぞれ連通している。グリス室21には、通孔32、33の一方からグリスが充填される。こうしてグリス室21にグリスが充填された後、通孔32、33には栓体42、43が螺合して取り付けられ、グリス室21が封止される。
【0033】
グリス室21は、サブシール17とメインシール18との間に設けられる。グリス室21に充填されたグリスが、サブシール17とメインシール18の間に溜められ、サブシール17とメインシール18のピストンロッド31の外周面に対する摺接部をそれぞれ潤滑する。
【0034】
ピストンロッド31とインナヘッド13との間には、メインシール18の下方に、オイルチャンバ23が円筒状の間隙として画成される。オイルチャンバ23は、メインシール18とガス室41の間に設けられる。
【0035】
インナヘッド13にはオイルチャンバ23を画成する環状の溝44が形成される。この溝44は、メインシール18が介装される環状の溝45に連接して形成される。
【0036】
インナヘッド13にはオイルチャンバ23に開口する通孔29が形成され、アウタヘッド14には通孔39が形成され、通孔29と通孔39が環状の溝59を介して連通している。オイルチャンバ23には、通孔39、29からオイルが充填される。こうしてオイルチャンバ23にオイルが充填された後、通孔39には栓体49が螺合して取り付けられ、オイルチャンバ23が封止される。
【0037】
オイルチャンバ23は、メインシール18とOリング19との間に画成される。これにより、オイルチャンバ23に充填されたオイルは、メインシール18とOリング19の間に溜められる。
【0038】
メインシール18はオイルチャンバ23に溜められるオイルに晒され、メインシール18のピストンロッド31の外周面に対する摺接部がこのオイルによって潤滑され、メインシール18がガス室41を密封する機能が維持される。
【0039】
以上のように本実施形態において、筒状をしたシリンダ11と、このシリンダ11に摺動可能に挿入されるピストンロッド31と、シリンダ11とピストンロッド31との間に画成されるガス室41とを備え、ガス室41に生じるガス圧力によって移動体(主軸ユニット2)の重量を支えるガスバランサ10であって、シリンダ11の上端からピストンロッド31が突出するように配置され、シリンダ11が架台(本体3)に連結される一方、ピストンロッド31の上端部が移動体(主軸ユニット2)に連結され、ピストンロッド31が移動体(主軸ユニット2)と共に昇降する構成とした。
【0040】
上記構成に基づき、ガスバランサ10の姿勢が従来のものと逆になり、ガスバランサ10のピストンロッド31が移動体(主軸ユニット2)のまわりに配置されるため、ガスバランサ10が移動体(主軸ユニット2)まわりに占めるスペースが削減され、移動体(主軸ユニット2)まわりの有効スペースを拡大することができる。
【0041】
また、ガスバランサ10は、重量の大きいシリンダ11が架台(本体3)に連結され、重量の小さいピストンロッド31が移動体(主軸ユニット2)と共に昇降するため、マシニングセンタ1の可動部が軽量化され、ピストンロッド31の反発力を効率的に使用してサーボモータ7の省力化がはかられる。
【0042】
さらに、シリンダ11が昇降しないため、シリンダ11に接続される図示しないエア配管等が動かされることがなく、エア配管のジョイント28等にガス漏れが生じることを防止できる。
【0043】
本実施形態において、シリンダ11は、ピストンロッド31を摺動可能に突出させるシリンダヘッド12と、ピストンロッド31とシリンダヘッド12との間に介装されてガス室41を密封するメインシール18と、ピストンロッド31とシリンダヘッド12との間に画成されるオイルチャンバ23とを備え、このオイルチャンバ23をメインシール18とガス室41の間に設ける構成とした。
【0044】
上記構成に基づき、メインシール18はオイルチャンバ23に溜められるオイルが導かれ、メインシール18のピストンロッド31の外周面に対する摺接部がこのオイルによって潤滑され、メインシール18がガス室41を密封する機能が維持される。
【0045】
本実施形態において、シリンダ11は、ピストンロッド31とシリンダヘッド12との間に介装されるOリング19を備え、このOリング19をメインシール18の下方に配置し、Oリング19とメインシール18の間にオイルチャンバ23を画成する構成とした。
【0046】
上記構成に基づき、Oリング19によってオイルがオイルチャンバ23に溜められ、このオイルによってメインシール18のピストンロッド31の外周面に対する摺接部が潤滑される。
【0047】
本実施形態において、オイルチャンバ23を画成する環状の溝44が、メインシール18が介装される環状の溝45に連接して形成される構成とした。
【0048】
上記構成に基づき、メインシール18はオイルチャンバ23に溜められるオイルに晒され、メインシール18のピストンロッド31の外周面に対する摺接部がこのオイルによって潤滑され、メインシール18がガス室41を密封する機能が維持される。
【0049】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態を示すマシニングセンタの構成図。
【図2】同じくガスバランサの断面図。
【図3】同じくガスバランサの一部を拡大した断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 マシニングセンタ
2 主軸ユニット
3 本体(架台)
5 駆動装置
6 ボールねじ
7 サーボモータ
10 ガスバランサ
11 シリンダ
12 シリンダヘッド
13 インナヘッド
14 アウタヘッド
15 ダストシール
16 軸受ブッシュ
17 サブシール
18 メインシール
19 Oリング
20 軸受ブッシュ
21 グリス室
23 オイルチャンバ
31 ピストンロッド
35 ピストン
41 ガス室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をしたシリンダと、
このシリンダに摺動可能に挿入されるピストンロッドと、
シリンダと前記ピストンロッドとの間に画成されるガス室とを備え、
前記ガス室に生じるガス圧力によって移動体の重量を支えるガスバランサであって、
前記シリンダの上端から前記ピストンロッドが突出するように配置され、
前記シリンダが架台に連結される一方、
前記ピストンロッドの上端部が前記移動体に連結され、
前記ピストンロッドが前記移動体と共に昇降する構成としたことを特徴とするガスバランサ。
【請求項2】
前記シリンダは、
前記ピストンロッドを摺動可能に突出させるシリンダヘッドと、
前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間に介装されてガス室を密封するメインシールと、
前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間に画成されるオイルチャンバとを備え、
このオイルチャンバを前記メインシールと前記ガス室の間に設ける構成としたことを特徴とする請求項1に記載のガスバランサ。
【請求項3】
前記シリンダは、
前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間に介装されるOリングを備え、
このOリングと前記メインシールの間に前記オイルチャンバを画成する構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載のガスバランサ。
【請求項4】
前記オイルチャンバを画成する環状の溝が、前記メインシールが介装される環状の溝に連接して形成される構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のガスバランサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−91035(P2010−91035A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262720(P2008−262720)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(000155609)株式会社柳沢精機製作所 (18)
【出願人】(394007849)株式会社堀内機械 (7)
【Fターム(参考)】