説明

ガスバリア性収縮ラミネートフィルム

【課題】収縮加工を施した場合にも、ガスバリア性が低下しないように改良されたガスバリア性収縮ラミネートフィルムを提供する。
【解決手段】2枚の熱収縮性フィルム7がガスバリア性接着剤8で貼り合わされてなる。ガスバリア性接着剤8が接着層兼バリア層を形成している。ガスバリア性接着剤8は、主剤となるポリエポキシ樹脂と硬化剤であるポリアミン樹脂を含む。ガスバリア層をガスバリア性接着剤8で形成するので、収縮加工時の寸法変化によっても、ガスバリア層の割れは生じ難い。収縮加工時、ガスバリア層内に隙間ができない、ひいてはガスバリア性が低下しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にガスバリア性収縮ラミネートフィルムに関するものであり、より特定的には、収縮加工を施した場合にも、ガスバリア性が低下しないように改良されたガスバリア性収縮ラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
お茶や清涼飲料水等の飲料用容器としては、軽量性、リサイクル性の観点などから、PETボトルなどのプラスチック製の容器が広く用いられている。これらの容器には、多くの場合、内容物を表示しかつ装飾性、耐スクラッチ性、滑り性などの各種機能性を付与する目的で、インキやコーティング剤等の樹脂組成物が塗工されたプラスチックフィルムからなる収縮性ラベルが装着されている。このような収縮性ラベルとしては、一般にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂などからなるフィルムを基材とするものが用いられている。
【0003】
しかし、これらのプラスチック製容器およびラベルは、ガスバリア性に劣るため、内容物の酸化による品質劣化が起こりやすく、品質保証期間が短くなるなどの問題があり、ガスバリア性の改善が求められていた。
【0004】
かかる課題を解決する手法として、例えば、特許文献1は、図4に示される収縮性ラベル1を開示している。収縮性ラベル1は、収縮性フィルム2を備え、収縮性フィルム2の片面に、印刷層3、アンカーコート層4、バリア層5、保護層6が順に設けられている。バリア層5としては、アルミナ、シリカ等の無機質薄膜層などが使用されている。バリア層5の存在により、酸素、水蒸気、炭酸ガス、窒素などの気体の透過が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−201463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図4を再び参照して、アンカーコート層4上にバリア層5を設けるので、均一な厚みのバリア層5を形成しにくく、バリア層5の密着性が低下し、収縮加工時の寸法変化によって、バリア層5に比較的大きな割れが生じやすくなり、ガスバリア性が低下するという課題があった。
【0007】
また、無機層状化合物からなるバリア層5では、収縮加工を施した場合に、無機層状化合物間に隙間ができ、ガスバリア性が低下するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、収縮加工を施した場合にも、ガスバリア性が低下しないように改良されたガスバリア性収縮ラミネートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムは、2枚の熱収縮性フィルムがガスバリア性接着剤で貼り合わされてなるものである。ガスバリア性接着剤が接着層兼バリア層を形成している。
【0010】
ガスバリア層をガスバリア性接着剤で形成するので、収縮加工時の寸法変化によっても、割れは生じ難い。収縮加工時、ガスバリア層内に隙間ができない。
【0011】
上記2枚の熱収縮性フィルムはアンカーコート剤で処理された後、上記バリア性接着剤で貼り合わされてなるのが好ましい。
【0012】
上記ガスバリア性接着剤はポリエポキシ樹脂を含むのが好ましい。
【0013】
上記ガスバリア性接着剤の塗布量は、固形分で2〜7g/m2にされているのが好ましい。
【0014】
上記アンカーコート剤の塗布量は、0.2〜2.0g/m2にされているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスバリア性収縮ラミネートフィルムによれば、ガスバリア層をガスバリア性接着剤で形成するので、収縮加工時の寸法変化によっても、割れは生じ難い。また収縮加工時、ガスバリア層内に隙間ができない、ひいてはガスバリア性が低下しないという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムの断面図である。
【図2】実施例2に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムの断面図である。
【図3】実施例2に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムの製造方法の工程を示す図である。
【図4】従来のガスバリア性収縮ラミネートフィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
収縮加工を施した場合にも、ガスバリア性が低下しないように改良されたガスバリア性収縮ラミネートフィルムを得るという目的を、2枚の熱収縮性フィルムをガスバリア性接着剤で貼り合わせるということによって実現した。
【0018】
本発明で使用される熱収縮性フィルムには特に限定はなく、一般に用いられているポリエステル系熱収縮性フィルム、ポリスチレン系熱収縮性フィルム、ポリオレフィン系熱収縮性フィルム、またはこれら積層した異種多層系の熱収縮性フィルムなどが好ましい。
【0019】
これら熱収縮性フィルムの厚みは、20〜50μmが好ましい。
【0020】
本発明のガスバリア性収縮ラミネートフィルムにおけるガスバリア性接着剤の塗布量は、2〜7g/m2が好ましい。この範囲であれば、ラミネートフィルムに適度なガスバリア性を付与することができる。
【0021】
本発明のガスバリア性収縮ラミネートフィルムの酸素透過度は、45〜170ml/m2・day・MPaである。酸素透過度は、モコン社製酸素透過率測定装置 OXTRAN 2/21を使用し、JIS K7126に準拠して、 温度20℃、湿度65%RHの条件で測定した。
【0022】
本発明のガスバリア性収縮ラミネートフィルムは、一般的に知られているドライラミネート機を用いて製造することができる。
【0023】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムの断面図である。2枚のポリエステル系熱収縮性フィルム7がガスバリア性接着剤8で貼り合わされてなる。ガスバリア性接着剤8が接着層兼バリア層を形成している。ポリエステル系熱収縮性フィルム7の厚みは30μmである。一方のポリエステル系熱収縮性フィルム7には裏印刷がなされ、他方のポリエステル系熱収縮性フィルム7には表印刷がなされている。ガスバリア性接着剤8には、主剤となるポリエポキシ樹脂と硬化剤であるポリアミン樹脂を含む、ガスバリア性ドライラミネート用接着剤「マクシーブ(登録商標)」(三菱ガス化学株式会社製)が用いられた。塗布量は4(g/m2)である。酸素バリア性は61(ml/m2・day・MPa)であった。
【0025】
ガスバリア層をガスバリア性接着剤で形成するので、収縮加工時の寸法変化によっても、割れは生じ難い。収縮加工時、ガスバリア層内に隙間ができるという問題もなく、ガスバリア性が低下する懸念もなかった。
【実施例2】
【0026】
ポリエステル系熱収縮性フィルムに代えて、ポリスチレン系熱収縮性フィルム(40μm)を用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性収縮ラミネートフィルムを得た。
【0027】
本実施例に併せて、接着剤としてウレタン接着剤を用いた場合(比較例1)と、ポリエステル系熱収縮性フィルム単独(比較例2)の場合の酸素バリア性も測定した。結果を表1に併せて示す。
【表1】

【実施例3】
【0028】
図2は実施例3に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムの断面図である。実施例3に係るフィルムが実施例1に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムと異なる点は、アンカーコート剤からなるアンカーコート層(AC)9が、ガスバリア性接着剤8からなる接着層兼バリア層とポリエステル系熱収縮性フィルム7、7との間に形成されている点である。アンカーコート層(AC)9を設けることにより、密着性を高めることができる。アンカーコート剤には、大日精化工業(株)製のアルミック(登録商標)No.3メジウム、大日精化工業(株)製のセイカシール(登録商標)OPS−106、東洋インキ(株)ファインスターRメジウムなどが用いられる。
【0029】
図3を用いて、実施例3に係るガスバリア性収縮ラミネートフィルムの製造方法の一例について説明する。
【0030】
図3(A)を参照して、ポリエステル系熱収縮性フィルムの原反7を準備する。図3(B)を参照して、アンカーコート剤をポリエステル系熱収縮性フィルム7の原反の表面全面にグラビア印刷機を用いて塗工し、アンカーコート層(AC)9を形成する。アンカーコート剤の塗布量は、0.2〜2.0g/m2にされる。図3(C)を参照して、一方のフィルムのアンカーコート層(AC)9を形成した面に、ガスバリア性接着剤8を塗布し、乾燥後、他方のフィルムのアンカーコート層(AC)9を形成した面と貼り合わせる。図3(D)を参照して、ラミネート品に対して、表面および裏面に印刷を施す。その後、センターシール加工し筒状に加工する。ユーザで、筒状ガスバリア性収縮ラミネートフィルムをボトルに嵌め込み、熱収縮させて装着する。
【0031】
アンカーコート層(AC)が存在する場合(実施例3)と存在しない場合(実施例1)のラミネート強度(単位:N/15mm)の測定結果を表2に、比較して記載する。ラミネート強度は、島津製作所製オートグラフAGS−100Aを用いて、長さ100mm×幅15mmのサンプルを、チャック間距離40mmでセットし、T型剥離にて測定速度200mm/minで測定したときの最大値とした。
【表2】

【0032】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、表裏両面に印刷が必要なわけではなく、片面(裏面)印刷のみの場合もある。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、収縮加工を施した場合にも、ガスバリア性が低下しないように改良されたガスバリア性収縮ラミネートフィルムを与える。
【符号の説明】
【0034】
1 収縮性ラベル
2 収縮性フィルム
3 印刷層
4 アンカーコート層
5 バリア層
6 保護層
7 ポリエステル系熱収縮性フィルム
8 ガスバリア性接着剤
9 アンカーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の熱収縮性フィルムがガスバリア性接着剤で貼り合わされてなるガスバリア性収縮ラミネートフィルム。
【請求項2】
前記2枚の熱収縮性フィルムはアンカーコート剤で処理された後、前記バリア性接着剤で貼り合わされてなる請求項1に記載のガスバリア性収縮ラミネートフィルム。
【請求項3】
前記ガスバリア性接着剤はポリエポキシ樹脂を含む請求項1又は2に記載のガスバリア性収縮ラミネートフィルム。
【請求項4】
前記ガスバリア性接着剤の塗布量は、固形分で2〜7g/m2にされている請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性収縮ラミネートフィルム。
【請求項5】
前記アンカーコート剤の塗布量は、0.2〜2.0g/m2にされている請求項2に記載のガスバリア性収縮ラミネートフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−37156(P2011−37156A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187156(P2009−187156)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】