説明

ガスバリア性樹脂組成物、塗料および接着剤

【課題】エポキシ樹脂が本来有する優れた性能に加え、広い範囲の硬化条件で高いガスバリア性を発現する樹脂組成物、および該組成物により得られる塗料、接着剤を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を含むガスバリア性樹脂組成物であって、該樹脂組成物より形成される硬化物中に特定の骨格構造が含有されていることを特徴とするガスバリア性樹脂組成物、および該樹脂組成物を利用してなる塗料、接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性エポキシ樹脂組成物に関するものであり、酸素やガソリンなどの透過防止、防食を目的とする塗料、および酸素や臭気成分などに対して高いガスバリア性が要求される食品や医薬品などの包装材料に用いるラミネート用接着剤等の広い産業分野に利用される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は各種基材に対する接着性、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性など、他の樹脂に比較して多くの優れた特性を有するため、防食、美粧を目的とする塗料や、土木、建築用接着剤など広い産業分野で利用されている。一般に塗料や接着剤分野で使用されるエポキシ樹脂組成物のガスバリア性は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂などと比較すれば良好であるが、ガスバリア材料に分類されるポリ塩化ビニリデンやポリビニルアルコールなどには及ばない。従って、エポキシ樹脂を利用する場合には、腐食因子の透過抑制のために、樹脂厚みを大きくする、他材料を重ねて被覆する、フィラーを併用するなど様々な工夫がなされている。
【0003】
一方、エポキシ樹脂に関して、組成物中のアミン窒素含有率を高くすることにより、酸素や二酸化炭素などに対するガスバリア性を向上させる方法が提案されている(特許文献1〜2参照。)。しかしながら、これらの樹脂組成物のガスバリア性は必ずしも十分ではなく、また高湿度条件下でガスバリア性が低下するという現象も認められることからさらなる改良が望まれている。
【0004】
また、ポリアミン中の活性アミン水素とポリエポキシド中のエポキシ基との比が少なくとも1.5:1であって、該ポリアミンが開始ポリアミンであって炭素原子の少なくとも50%が芳香族であるポリアミンの変性物である樹脂組成物を用いることにより、上記組成物よりさらにバリア性を向上させ、また高湿度条件下でのバリア性を向上させる方法が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、上記の樹脂組成物は塗布後の反応生成物中に未反応の活性アミン水素を有するアミン基が多量に残存するため、硬化速度が遅く、防錆、防食目的で金属やコンクリート等への塗布を考えた場合に、接着性、耐熱性、耐薬品性、および電気特性などのエポキシ樹脂が本来有する優れた性能が発現しないという問題がある。
【0005】
ここで、エポキシ樹脂に関して、組成物中に硬化促進剤を用いることにより、硬化速度を速めて、エポキシ樹脂が本来有する優れた性能を十分に発現させる方法が提案されている(特許文献4〜17参照。)。しかしながら、これらの樹脂組成物中の硬化促進剤は、その効果の発現が接着性、耐熱性、耐薬品性、および電気特性などのエポキシ樹脂が本来有する性能の向上に限定されている。
【特許文献1】特公平7−91367号公報
【特許文献2】特公平7−91368号公報
【特許文献3】特表平9−511537号公報
【特許文献4】米国特許第4366108号明細書
【特許文献5】特公昭53−43999号公報
【特許文献6】特公昭53−44000号公報
【特許文献7】特開平5−287254号公報
【特許文献8】特開平6−49176号公報
【特許文献9】特開平6−80947号公報
【特許文献10】特開平6−184261号公報
【特許文献11】特開平7−278269号公報
【特許文献12】特開平7−278271号公報
【特許文献13】特開平10−251379号公報
【特許文献14】特開平11−61077号公報
【特許文献15】特開平13−164226号公報
【特許文献16】特開平13−261783号公報
【特許文献17】特開平14−317028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、エポキシ樹脂が本来有する優れた性能に加え、広い範囲の硬化条件で高いガスバリア性を発現する樹脂組成物、および該組成物により得られる塗料、接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を使用した樹脂組成物がエポキシ樹脂の優れた性能に加え、高いガスバリア性を有し、広い範囲の硬化条件で高いガスバリア性が発現され、優れたガスバリア性塗料及び接着剤が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を含むガスバリア性樹脂組成物であって、該樹脂組成物中に硬化促進剤が含有され、且つ該樹脂組成物より形成される樹脂硬化物中の(1)式に示される骨格構造の含有量が30重量%以上であることを特徴とするガスバリア性樹脂組成物、および該樹脂組成物を利用してなる塗料、接着剤に関するものである。
【化2】

【発明の効果】
【0008】
本発明のガスバリア性樹脂組成物は、広い範囲の硬化条件で高いガスバリア性が発現される。該樹脂組成物から得られる塗料は、食品や医薬品などの包装材料用途に使用されているポリオレフィンやポリエステル、ポリアミドなどのプラスチックフィルム、あるいはプラスチック容器など、加熱条件に制約のある被塗材料へ塗布される。該樹脂組成物から得られる接着剤は、包装材料用ラミネートフィルムに使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガスバリア性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を主成分とし、該樹脂組成物より形成される樹脂硬化物中に、上記(1)式の骨格構造が30重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有される。上記(1)式の骨格構造が高いレベルで含有されることにより、該樹脂組成物から形成される樹脂硬化物に高いガスバリア性が発現する。以下に、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について説明する。
【0010】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には芳香環を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂がより好ましい。
具体的にはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基および/またはグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0012】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0013】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−およびテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0014】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましいい。
【0015】
本発明に用いられるエポキシ樹脂硬化剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物または複素環式化合物のいずれであってもよく、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。具体的には、ポリアミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、これらのポリアミン類とエポキシ樹脂との変性反応物、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロルヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、および一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0016】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多価フェノール、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。また、酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらのカルボン酸などが使用できる。
【0017】
高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との変性反応物、エピクロルヒドリンとの付加反応物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
【0018】
高いガスバリア性および各種材料との良好な接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)および(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0019】
前記(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。また、前記(C)の炭素数1〜8の一価のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などが挙げられ、また、それらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物なども使用することができる。これらは上記多官能性化合物と併用してポリアミン(メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン)と反応させてもよい。
【0020】
また、本発明において、エポキシ樹脂硬化剤を合成する反応における反応比は、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.3〜0.95の範囲が好ましい。0.3より少ない比率では、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成せず、高いレベルのガスバリア性が発現しない。また、0.95より高い範囲ではエポキシ樹脂と反応するアミノ基の量が少なくなり、優れた塗膜性能が発現せず、さらに高粘度となるため塗装時の作業性も低下する。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性および金属やコンクリート、プラスチックなどの基材への良好な接着強度が得られる。
【0021】
本発明における、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を含むガスバリア性樹脂組成物の硬化反応は、その硬化反応物を得るのに十分な組成物の濃度および温度で実施されるが、これは開始材料の選択により変化し得る。すなわち、該組成物を塗料あるいは接着剤用途に用いる場合、組成物の濃度は選択した材料の種類およびモル比などにより、溶剤を用いない場合から、ある種の適切な有機溶媒および/または水を用いて約5重量%程度の組成物濃度にする場合までの様々な状態をとり得る。同様に、硬化反応温度は室温から約180℃までの範囲で選択できる。適切な有機溶媒としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの非水溶性系溶媒などが挙げられるが、グリコールエーテル類、アルコール類などの水溶性系溶媒がより好ましい。
【0022】
本発明のガスバリア性樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂反応物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数の比が0.5〜5.0、好ましくは0.8〜3.0の範囲である。
【0023】
また、本発明のガスバリア性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリアクリル系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を混合してもよい。
【0024】
本発明で使用する硬化促進剤は、硬化時間の短縮または低温硬化性を増大させるものであれば特に制約はなく、例えば、三ハロゲン化ホウ素錯体や有機酸に加え、フェノール、m−クレゾール、p−クロロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、o−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カテコール、フロログリシノール、ビスフェノールA、トリスジメチルアミノフェノールなどのフェノール類;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、プロピレングリコール、チオグリセノール、ペンタエリスリトール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ベンジルアルコールのようなアルコール類;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫、トリフェニルホスフィン、リン酸トリフェニルなどが例示できる。中でも三ハロゲン化ホウ素錯体および有機酸が好ましい。これらの硬化促進剤は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0025】
三ハロゲン化ホウ素錯体としては、特に三フッ化ホウ素錯体がより好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体;三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素のエーテル錯体;その他三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体、三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素リン酸錯体、三フッ化ホウ素アセトニトリル錯体などが挙げられ、特に三フッ化ホウ素のアミン錯体、中でも三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体が好適に用いられる。これらの三ハロゲン化ホウ素錯体は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0026】
有機酸としてはp−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸、安息香酸、p−トルイル酸、p−アミノ安息香酸、p−クロロ安息香酸、2,4−ジクロロ安息香酸、サリチル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、マロンさん、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、蟻酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、n−酪酸、iso−酪酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクタン酸、n−ヘプチル酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、などが挙げられ、特にp−トルエンスルホン酸が好適に用いられる。これらの有機酸は単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0027】
本発明において、ガスバリア性樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は0.1〜10重量%であり、好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。硬化促進剤が0.1重量%未満では、促進効果が不足して、短時間または低温の硬化条件で得られた硬化物のガスバリア性が低下する。また10重量%より大きいと、配合後の樹脂組成物のポットライフが短くなって、塗布などの作業性が低下する。
【0028】
本発明において硬化促進剤の添加は、該樹脂組成物の硬化性を増大させて、短時間または低温など広い範囲の硬化条件で高いガスバリア性を発現させることを目的としている。本発明のガスバリア性樹脂組成物を金属やコンクリート、プラスチックなど一般的な基材に塗布した後の標準的な硬化乾燥の条件は、硬化促進剤の添加によって、例えば80℃の温度において、10〜15分あるいは100〜180℃の温度において、3〜7分への時間短縮が可能になる。また低温条件としては60℃の温度において、30〜60分での硬化が可能になる。
【0029】
本発明におけるガスバリア性樹脂組成物を金属やコンクリート、プラスチックなど一般的な基材に塗布する場合においては、撹拌混合や塗布時に発生する泡の消失を助けるため、あるいは各種基材の表面の湿潤を助けるために、本発明のガスバリア性樹脂組成物の中に、シリコン系あるいはアクリル系化合物からなる消泡剤や湿潤剤を添加しても良い。適切な消泡剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK019、BYK020、BYK051などがあり、適切な湿潤剤としては、ビックケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK344、BYK348、BYK381などがある。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。また、耐衝撃性などの諸性能を向上させるために、本発明のガスバリア性樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機フィラーを添加しても良い。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0030】
また、本発明のガスバリア性樹脂組成物には、必要に応じて、酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0031】
さらに、本発明のガスバリア性樹脂組成物中には必要に応じ、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0032】
本発明のガスバリア性樹脂組成物は、そのまま、または必要に応じて溶剤や着色顔料、体質顔料などの各種顔料を混合して、塗料あるいはガスバリアコート剤として使用することができる。
【0033】
本発明のガスバリア性樹脂組成物から得られる塗料は、防食、美粧などを目的として金属やコンクリートなど従来のエポキシ樹脂塗料が使用されている被塗材料に同様に塗布され得る。さらに、本発明のガスバリア性樹脂組成物は、従来のエポキシ樹脂塗料ではそのガスバリア性の低さから適用されていなかった高ガスバリア性が要求される各種ガス透過性基材、例えば食品や医薬品などの包装材料用途に使用されているポリオレフィンやポリエステル、ポリアミドなどのプラスチックフィルム、あるいはプラスチック容器などへのガスバリアコート剤としての塗布も可能であり、高バリア性のコートフィルムや容器を得ることができる。
【0034】
本発明のガスバリア性樹脂組成物を利用してラミネート用接着剤とすることができる。本発明のラミネート用接着剤は、ガスバリア性樹脂組成物をそのまま、または必要に応じて溶剤や他の添加剤を混合して、接着剤として使用することができる。該接着剤は各種フィルム材料(後述)に対する好適な接着性能に加え、高いガスバリア性を有する事を特徴としていることから、該接着剤により形成されるラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)などを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。また、これら従来のガスバリア性材料とシーラント材料とを貼り合せる接着剤として併用することにより、得られるフィルムのガスバリア性を著しく向上させることもできる。また、接着剤層を形成するエポキシ樹脂硬化物は、靭性、耐湿熱性に優れることから、耐衝撃性、耐レトルト処理性などに優れたガスバリア性ラミネートフィルムが得られる。
【0035】
また、本発明のガスバリア性樹脂組成物にはプラスチックフィルム、金属箔、紙などの各種フィルム材料に対する接着性を向上させるために、該樹脂組成物中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、該樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0036】
さらに、本発明のガスバリア性樹脂組成物には各種フィルム材料に塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、ガスバリア性樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0037】
本発明の接着剤によりラミネートされ得るフィルム材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシレンアジパミドなどのポリアミド系フィルム、ポリ(メタ)アクリル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、カートンなどの紙類、アルミや銅などの金属箔、およびこれらの材料に各種ポリマーによるコーティングを施したり、酸素捕捉機能を付与したフィルムなどが使用できる。酸素捕捉機能を付与させる方法としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を含む組成物を少なくとも一部に使用する方法等が挙げられる。これらのフィルム材料の厚さとしては10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度が実用的であり、プラスチックフィルムの場合は一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。
【0038】
これらのフィルム材料の表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理が実施されることが望ましい。このような処理は各種フィルム材料に対する接着層の良好な接着を促進する。また、フィルム材料の表面に適切な表面処理がなされた後で、必要に応じて印刷層を設けることもできる。印刷層を設ける際には、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等の従来のポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷設備が同様に適用され得る。また、印刷層を形成するインキについても、アゾ系、フタロシアニン系などの顔料、ロジン、ポリアミド樹脂、ポリウレタンなどの樹脂、メタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの溶剤等から形成される従来のポリマーフィルムへの印刷層に用いられてきたインキが同様に適用され得る。
【0039】
これらのフィルム材料の中で、シーラント材料として使用するものとしては、良好なヒートシール性の発現を考慮し、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルムを選択することが好ましい。これらのフィルムの厚さは、10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度が実用的であり、フィルムの表面には火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
【0040】
本発明のラミネート用接着剤を使用して、各種フィルム材料をラミネートする場合には、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出しラミネート等公知のラミネート法を用いることが可能である。
【0041】
ラミネート用接着剤をポリマーフィルムに塗布する際の塗装形式としては、ロール塗布やスプレー塗布、エアナイフ塗布、浸漬、はけ塗りなどの一般的に使用される塗装形式のいずれも使用され得る。そのうちロール塗布またはスプレー塗布が特に好ましい。例えば、ポリウレタン系接着剤成分をポリマーフィルムに塗布し、ラミネートする場合と同様のロールコートあるいはスプレー技術および設備が適用され得る。
【0042】
続いて、各ラミネート方法での具体的な操作について説明する。ドライラミネート法の場合には、基材となるフィルム材料に本発明のラミネート用接着剤の有機溶剤および/または水による希釈溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布後、溶剤を乾燥させ、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。この場合、ラミネート後に必要に応じて室温〜60℃で一定時間のエージング、例えば40℃の温度において3〜5日あるいは60℃の温度において1〜3日のエージングを行ない、硬化反応を完了させることが望ましい。一定時間のエージングを行なうことにより、十分な反応率でエポキシ樹脂硬化反応物が形成され、高いガスバリア性が発現するが、もちろん本発明のガスバリア性樹脂組成物はラミネート用接着剤として用いられた場合にも、硬化促進剤の添加によって硬化乾燥条件の短縮が可能になる。
【0043】
また、ノンソルベントラミネート法の場合には、基材となるフィルム材料に予め40℃〜100℃程度に加熱しておいた本発明のラミネート用接着剤を40℃〜120℃に加熱したグラビアロールなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。この場合もドライラミネート法の場合と同様にラミネート後に必要に応じて一定時間のエージングを行なうことが望ましい。
【0044】
押出しラミネート法の場合には、前記フィルム材料に接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明のラミネート用接着剤の主成分であるエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤の有機溶剤および/または水による希釈溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。
溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0045】
本発明のラミネート用接着剤を各種フィルム材料等に塗布、乾燥、貼り合わせ、熱処理した後の接着層の厚さは0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μmが実用的である。0.1μm未満では十分なガスバリア性および接着性が発揮し難く、一方100μmを超えると均一な厚みの接着層を形成することが困難になる。
【実施例】
【0046】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0047】
尚、実施例に記載したエポキシ樹脂硬化剤は以下の方法で調製した。
<エポキシ樹脂硬化剤A>
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間撹拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した後、100℃まで冷却してエポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0048】
<エポキシ樹脂硬化剤B>
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.67molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間撹拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した。その後100℃まで冷却し、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0049】
<エポキシ樹脂硬化剤C>
反応容器に1molのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.50molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間撹拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で180℃まで昇温した後、100℃まで冷却してエポキシ樹脂硬化剤Cを得た。
【0050】
また、コートフィルムあるいはラミネートフィルムの評価方法は以下の通りである。
<ガスバリア性(酸素透過係数:cc−mm/m・day・atm)>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN10/50A)を使用して、23℃、相対湿度60%の条件下でコートフィルムの酸素透過率を測定し、塗布層の酸素透過係数を以下の式を用いて計算した(同様にラミネートフィルムの接着層の酸素透過係数を計算した):
1/R = 1/Rn(n=1,2,..) + DFT/P
ここで、R = コートフィルムの酸素透過率(cc/m・day・atm)
Rn(n=1,2,..) = 各基材フィルムの酸素透過率(cc/m・day・a
tm)
DFT= 塗布層の厚み(mm)
P = 塗布層の酸素透過係数(cc−mm/m・day・atm)
【0051】
<硬化性>
JIS K−5400の6.5に規定された方法によって、所定乾燥後のコートフィルムの塗布層表面の硬化性を評価し、以下の基準で結果を判定した。
◎:硬化乾燥(優)
○:半硬化乾燥(良)
△:指触乾燥(可)
×:粘着あり(不可)
【0052】
<接着性(接着強度:g/15mm)>
JIS K−6854に規定された方法によって、ラミネートフィルムの接着強度をT型剥離試験(剥離速度100mm/min)で評価した。
【0053】
<実施例1>
エポキシ樹脂硬化剤Aを60重量部、およびメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製:TETRAD−X)を30重量部配合し、これをメタノール/酢酸エチル=9/1(重量比)溶液に固形分濃度35wt%となるように溶解させ、そこに三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)を1.0重量部とアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製:BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌して塗布液を得た。この塗布液を厚み40μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製:パイレンフィルム)にバーコーターNo.24を使用して塗布し(塗布量:固形分20g/m)、80℃で10分乾燥させてコートフィルムを得た。得られたコートフィルムのガスバリア性と塗布層表面の硬化性を評価した。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0054】
<実施例2>
エポキシ樹脂硬化剤Aを60重量部、およびメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製:TETRAD−X)を30重量部配合し、これをメタノール/酢酸エチル=9/1(重量比)溶液に固形分濃度35wt%となるように溶解させ、そこに三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)を1.0重量部とアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製:BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌して塗布液を得た。この塗布液を厚み25μmの延伸ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製:エステルフィルム)にバーコーターNo.24を使用して塗布し(塗布量:固形分20g/m)、120℃で5分乾燥させてコートフィルムを得た。得られたコートフィルムのガスバリア性と塗布層表面の硬化性を評価した。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0055】
<実施例3>
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを30重量部および三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)を0.5重量部用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は56.3重量%である。
【0056】
<実施例4>
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを20重量部および三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)を0.5重量部用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は49.8重量%である。
【0057】
<実施例5>
エポキシ樹脂硬化剤Aを60重量部、およびメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製:TETRAD−X)を30重量部配合し、これをメタノール/酢酸エチル=9/1(重量比)溶液に固形分濃度35wt%となるように溶解させ、そこに三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)を1.0重量部とアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製:BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌して接着剤塗布液を得た。この塗布液を厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(東洋紡(株)製:ハーデンフィルム)にバーコーターNo.3を使用して塗布し(塗布量:固形分3g/m)、80℃で30秒乾燥させた後、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡(株)製:リックスフィルム)をニップロールを使って貼り合わせ、40℃で1日間エージングすることによりラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの接着性とガスバリア性を評価した。結果を表2に示す。尚、接着層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0058】
<実施例6>
三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)の代わりにp−トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)を1.0重量部用いた以外は実施例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0059】
<実施例7>
三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)の代わりにp−トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)を1.0重量部用いた以外は実施例2と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0060】
<実施例8>
三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)の代わりにp−トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)を0.5重量部用いた以外は実施例3と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は56.3重量%である。
【0061】
<実施例9>
三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)の代わりにp−トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)を0.5重量部用いた以外は実施例4と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は49.8重量%である。
【0062】
<実施例10>
三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体(ステラケミファ(株)製:三フッ化ホウ素モノエチルアミン)の代わりにp−トルエンスルホン酸(関東化学(株)製)を1.0重量部用いた以外は実施例5と同様の方法でラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの接着性とガスバリア性を評価した。結果を表2に示す。尚、接着層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0063】
<比較例1>
エポキシ樹脂硬化剤Aを60重量部、およびメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製:TETRAD−X)を30重量部配合し、これをメタノール/酢酸エチル=9/1(重量比)溶液に固形分濃度35wt%となるように溶解させ、そこにアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製:BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌して塗布液を得た。この塗布液を厚み40μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製:パイレンフィルム)にバーコーターNo.24を使用して塗布し(塗布量:固形分20g/m)、80℃で10分乾燥させてコートフィルムを得た。得られたコートフィルムのガスバリア性と塗布層表面の硬化性を評価した。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0064】
<比較例2>
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを30重量部用いた以外は比較例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は56.3重量%である。
【0065】
<比較例3>
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Cを20重量部用いた以外は比較例1と同様の方法でコートフィルムを作製し、評価を行った。結果を表1に示す。尚、塗布層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は49.8重量%である。
【0066】
<比較例4>
エポキシ樹脂硬化剤Aを60重量部、およびメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製:TETRAD−X)を30重量部配合し、これをメタノール/酢酸エチル=9/1(重量比)溶液に固形分濃度35wt%となるように溶解させ、そこにアクリル系湿潤剤(ビック・ケミー社製:BYK381)を0.02重量部加え、よく攪拌して接着剤塗布液を得た。この塗布液を厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(東洋紡(株)製:ハーデンフィルム)にバーコーターNo.3を使用して塗布し(塗布量:固形分3g/m)、80℃で30秒乾燥させた後、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡(株)製:リックスフィルム)をニップロールを使って貼り合わせ、40℃で1日間エージングすることによりラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムの接着性とガスバリア性を評価した。結果を表2に示す。尚、接着層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式に示される骨格構造の含有量は59.5重量%である。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤を含むガスバリア性樹脂組成物であって、該樹脂組成物より形成される硬化物中の(1)式に示される骨格構造の含有量が30重量%以上であることを特徴とするガスバリア性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基および/またはグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂および/またはビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1に記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂硬化剤が、下記の(A)および(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【請求項6】
前記硬化促進剤が該樹脂組成物中に0.1〜10重量%含有される請求項1記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化促進剤が三ハロゲン化ホウ素錯体および/または有機酸である請求項1記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項8】
前記硬化促進剤が三フッ化ホウ素のアミン錯体および/またはp−トルエンスルホン酸である請求項1記載のガスバリア性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物を利用してなる塗料。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物を利用してなるラミネート用接着剤。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物を利用してなる接着補助剤(アンカーコート剤)。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性樹脂組成物を利用してなるガスバリアコート剤。
【請求項13】
請求項10に記載のラミネート用接着剤を使用して作製したラミネートフィルム。
【請求項14】
請求項11に記載の接着補助剤(アンカーコート剤)を使用し、押出しラミネート法により作製したラミネートフィルム。
【請求項15】
請求項12に記載のガスバリアコート剤を使用して作製したコートフィルム。

【公開番号】特開2007−126627(P2007−126627A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74091(P2006−74091)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】