説明

ガスレーザーを用いた分子配向制御装置

【課題】連続波もしくは疑似連続波ガスレーザーを用いて照射可能な赤外光を照射することにより分子の配向方向を容易に制御できる装置を提供する。
【解決手段】赤外域の連続波もしくは疑似連続波ガスレーザーを光源とする赤外光照射装置、該照射赤外光をパルス赤外光に変換する光制御装置及び分子配向性材料の配置部を備え、該分子配向性材料の化学結合の振動励起エネルギーに相当する波長を有するパルス赤外光を照射することで該材料の分子配向を制御することを特徴とする、分子配向制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光照射による分子配向制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフェニレンやフタロシアニン、ポルフィリン系の円盤状液晶分子は、カラム軸方向に沿って大きな電荷移動度が測定されるなど、電荷輸送材料として期待されてきた。また、その液晶性を利用して基板との相互作用を利用するなど、より高性能な機能を得るために、液晶分子の配向方向を制御しようとすることが試みられてきた。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平2−277025号公報)は、液晶分子の整列方法を記載しているが、この整列方法は分子電子遷移に基づくものであり、振動励起に基づくものではない。また、この整列方法は、異方性吸収分子の露光により誘発され、該異方性分子は、サーモトロピック液晶化合物及び約150nmと約2000nmの間の二色性吸収波長帯を有する二色性染料(dichroic dyes)であり、2.5μm(2500nm;4000c
m-)以上の波長の振動励起に基づく吸収については記載していない。
【0004】
ところで、従来、液晶分子、アモルファス分子、柔粘性結晶分子、その他高分子材料等の分子性材料の配向方向を赤外光照射により制御する方法が報告されている(例えば、特許文献2;国際公開第03/024586号パンフレット参照)。このような分子配向の制御技術は、液晶や配向膜等の機能性材料を構築する上で、有用な構造構築技術として期待されている。しかしながら、このような分子配向の制御技術を、炭酸ガスレーザーあるいは一酸化炭素ガスレーザーを光源として使用できることは、これまで報告されていない。
【0005】
また、これまで炭酸ガスレーザーを用いて、アブレーションを利用した加工(例えば、特許文献3:特開2000−334909)、熱吸収による乾燥アニール(例えば、特許文献4:特開2004−363560)、高分子フィルムの融着などが行われてきているが、分子配向制御装置として使用できることは報告されていない。
【特許文献1】特開平2−277025号公報
【特許文献2】国際公開第03/024586号パンフレット
【特許文献3】特開2000−334909
【特許文献4】特開2004−363560
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ほぼ全ての分子が吸収波長を有する赤外光(波長2.5μm〜25μm)のうち、市販されている炭酸ガスレーザーあるいは一酸化炭素ガスレーザーなどの連続波もしくは疑似連続波ガスレーザーを用いて照射可能な赤外光を照射することにより分子の配向方向を容易に制御できる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、分子配向性材料の分子自体を炭酸ガスレーザー、一酸化炭素ガスレーザーなどの連続波もしくは疑似連続波ガスレーザーを光源とした赤外光照射により振動励起し特異的に加熱することで、局所的な熱的非平衡状態、つまりより運動性のある状態が起こることを利用して、照射赤外光の照射方向や偏光方向を任意に調節することにより、分子凝集系・高分子系を制御して再配向させることが可能となることを見出した。
【0008】
また、本発明では、連続波(CW)もしくは疑似CWレーザーおいて、任意のデューティー比を持つメカニカルチョッパーでチョップされた赤外光を照射することで配向制御可能なことを見出した。
【0009】
光源として自由電子レーザーを使用すれば、任意の波長のパルス赤外光を発生させることができるが、この場合、出力の安定性が低くなり、特にパルスレーザーで波長を変化させた場合には出力が低下する。
【0010】
一方、本発明で使用する赤外域のガスレーザーは、出力が安定しており(例えば±2%程度)、配向制御の誤差が小さいため好ましい。赤外域のガスレーザーで配向性材料の分子配向制御が可能であることを見出したのは、本発明が初めてである。
【0011】
本発明は、以下の分子配向制御装置に関する。
1. 赤外域の連続波もしくは疑似連続波ガスレーザーを光源とする赤外光照射装置、該照射赤外光をパルス赤外光に変換する光制御装置及び分子配向性材料の配置部を備え、該分子配向性材料の化学結合の振動励起エネルギーに相当する波長を有するパルス赤外光を照射することで該材料の分子配向を制御することを特徴とする、分子配向制御装置。
2. 赤外光を偏光赤外光に変換する偏光素子を備えることを特徴とする、項1に記載の装置。
3. 赤外光を円偏光赤外光に変換する偏光素子を備えることを特徴とする、項1に記載の装置。
4. 前記ガスレーザーが、炭酸ガスレーザーである項1〜3のいずれかに記載の装置。5. 前記ガスレーザーが、一酸化炭素ガスレーザーである項1〜3のいずれかに記載の装置。
6. 前記ガスレーザーが、波長可変炭酸ガスレーザーである項1〜3のいずれかに記載の装置。
7. 前記ガスレーザーが、波長可変一酸化炭素ガスレーザーである項1〜3のいずれかに記載の装置。
8. 光制御装置が光学チョッパーである項1〜7のいずれかに記載の装置。
9. 前記分子配向性材料が液晶材料、固形材料、柔粘性結晶材料又は高分子材料である項1〜8のいずれかに記載の装置。
10. 前記分子配向性材料がネマチック相、スメクチック相、コレステリック相、カラムナー相、キュービック相、プラスチック相である液晶相もしくは関連する中間相(メソフェーズ)をある特定の温度範囲で発現し、赤外光照射で分子配向が変化する液晶材料であることを特徴とする項1〜8のいずれかに記載の装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、出力の安定した赤外域のガスレーザーを光源として使用した偏光赤外レーザー光照射により入射光の偏光方向と励起した化学結合の振動遷移モーメントの向きが±90゜の関係になるように配向制御できることを見出し、これを実現するための方法及び装置を提供した。このことより、より精緻に分子配向した構造設計が提供した装置系で可能となることを提案している。
【0013】
可視光を用いた、界面配向や液晶分子配向制御技術と異なり、可視光領域に吸収をもたなくても、分子内での結合の振動エネルギー吸収を用いるので多くの液晶系・高分子系に適用することが可能である。一様配向を得ることの難しい、自己凝集性の強いカラムナー液晶に対して、そのカラム軸方向を制御し一様配向させることが可能である。
【0014】
液晶分子骨格の一部位に対する振動エネルギー準位を励起する赤外光波長を選択することで、可視光で光異性化反応が起こったり、異方的な光吸収をするような特異的な官能基
を持たない場合でも、赤外領域に吸収帯を持つ多くの化合物での配向制御が可能である。
【0015】
分子内の特異的な官能部位の化学結合を選択的に振動励起することが可能なことから、材料を異なった波長で赤外レーザー光照射を数回あるいは同時照射を行うことによって分子内の官能部位毎の配向を各々制御することが可能なことより、液晶に限らず高分子や有機薄膜を利用する配向膜など機能性材料ならびに各種素子構築の為の新しい構造構築技術を提供することができる。
【0016】
材料を赤外レーザー光照射によって分子配向を変化させた後、光重合等によって固定化することで、作製した素子の動作温度範囲を広くすることが可能である。
【0017】
赤外光を照射するにあたり、赤外導波路・アパーチャ・金属針の散乱等を用いた近接場効果を利用することで、ナノサイズレベルでの加工への応用が可能である。
【0018】
また高分子における主鎖・側鎖を各々独立して制御できる分子配向制御技術としても用いることが可能である。可視光を用いた光配向制御法と同様に、照射赤外光線に偏光を用いることや、無偏光の場合でも基板に対して斜めから照射することにより、円盤状液晶のカラムナー相の配向方向などの分子配向方向を制御できる。赤外導波路やピペット等で近接場効果を用いることや、フォトマスク(金マスク)を通して赤外光を投射することにより、微細構造の形成が可能となる他、配向変化する際に照射赤外光強度に対して閾値があることよりもこれを利用した微細な加工も可能である。
【0019】
高分子膜、液晶分子、有機薄膜の配向を制御することによる、光記録材料としてのみならず、電子写真感光体、電界発光素子用電荷輸送材料、液晶用など各種配向膜などの電子材料、光電子材料の高性能化技術のみならず、高分子を利用する素子に対する新しい微細構造作製技術としても用途が見込まれる。分子内の化学結合毎の配向方向を制御できることより、より高性能な材料開発への用途も見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による分子配向制御装置は、炭酸ガスレーザーまたは一酸化炭素ガスレーザーなどのガスレーザーを光源とする赤外光照射装置(波長可変型であっても波長固定型であってもよい)、レーザー光導光部、必要に応じ照射赤外光を明滅させる光制御装置(例えばメカニカルチョッパー、電気的にパルス制御する装置、例えば電気制御可能な液晶シャッター、音響光学素子(AOM)、電気光学素子による光偏向で光直進状態をON、光回折効果による光偏向状態をOFFとして、光の進行方向を変える素子等を用いて、ON/OFFの光遮蔽を制御する装置など)および赤外光照射の対象物である分子配向性材料の配置部を備えている。必要に応じて、回転可能な赤外偏光子又は偏光素子、或いは集光系のレンズ又は集光凹面鏡を含む(図1参照)。
【0021】
光制御装置は、光を完全にON/OFFしてパルス光とするのが望ましいが、光を減衰させて、光強度を調節する様式であってもよい。
【0022】
上記赤外光照射装置と上記配置部間の距離は、集光系のレンズあるいは集光凹面鏡の焦点距離に依存して変化するが、集光系を用いる場合は焦点付近が望ましい。
【0023】
赤外光照射装置と光制御装置(例えばメカニカルチョッパー)は別々の部品として配置してもよく、電気的にパルス制御されたレーザー光源部のように両者が一体となっていてもよい。
【0024】
赤外光照射装置は、赤外光だけを発し、偏光二色性を持つものでもよいが、直線偏光性
あるいは円偏光性をもち、波長を可変出来るものがより望ましい。ただし、同時に可視光を発していても問題はない。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、赤外光は、炭酸ガスレーザーあるいは一酸化炭素レーザーを光源とし、赤外光の波長は、分子内の化学結合の振動励起エネルギーに相当する波長であればよい。分子骨格部分である芳香族部分、あるいはそれに直接結合している置換部位の化学結合を振動励起するのが、再配向後の配向方向を制御しやすい点で好ましい。光の強度は光照射対象物の温度状態に依存するが、0.1〜100 mW程度である。
本発明における赤外光照射装置の光源として、例えば波長可変型炭酸ガスレーザー、または波長固定型炭酸ガスレーザー(CW型、パルス型いずれでもよい)を使用することができる。
【0026】
赤外光照射の照射時間は温度に依存するが、数ミリ秒から数十分である。パルス数は5〜50マクロパルス/秒程度であり、1マクロパルスは1〜2万マイクロパルスから成っている。照射量は1 mJから5 J程度である。
【0027】
パルス照射の調節はCWレーザー光をメカニカルチョッパーでON/OFFさせることでも実現できる。この際、チョッパーブレードの回転数によりON/OFFの周波数を変化させることができ、周波数は温度、照射光強度に依存するが、1〜4000Hz程度であり、5〜40Hzが望ましい。また、チョッパーブレードの開口部を調節することにより、照射光のデューティー比(照射時間と非照射時間の割合)を変化させることができ、デューティー比は、温度、照射光強度、周波数に依存するが、1〜100%程度であり、5〜20%が望ましい。また、同様にレーザーの発振自身を電気的に調節することでもパルス照射の調節が可能である。
【0028】
本発明によると、カラムナー相など粘性の高い高秩序な液晶系に対しても再配向させることが可能であり、高粘性や高秩序の系の方が再配向した領域の配向が長時間安定に保つことが可能である。
【0029】
該配置部は、流動性のある物質を保持できる構造であり、温度制御可能であることが好ましく、また、移動ないし回転可能であることが好ましい。温度制御に関しては、ヒーターと温度感知するセンサーを備え、センサーで測定した温度によりヒーターのスイッチをオン、オフするようにすればよい。温度の幅は、室温〜200℃程度である。移動の程度は特に限定されないが、面内方向および垂直方向に関して1μmから5mm程度で、回転は+90〜−90度程度であるのがよい。
【0030】
赤外光照射装置について、入射光の方向は、一定方向であり、複数の照射装置の組み合わせであってもよい。入射方向は、ミラーを用いたり、偏光子が回転可能なものを用いたり、光路に位相板を挿入することや被照射物体を回転したりすることにより制御することができる。ミラー類と上記集光レンズとの順序はどちらが光源側でもよい。また、導光部に中空ファイバーを用いることも可能であり、これにより、より容易に被光照射部へ導光が可能である。
【0031】
入射方向において、1割程度の変動は許容範囲内である。
【0032】
本発明で用いられる分子配向性材料は、液晶材料、固形材料、柔粘性結晶材料、又は高分子材料である。
【0033】
本発明における柔粘性結晶材料は、固相にある程度自由度のある化合物で、フラーレンなどがある。液体に近い化合物については、低温にして、化合物の流動性を下げてから、
分子配向制御を行なうこともできる。
【0034】
また、ポリマー等の高分子材料では融点以下に加熱し、ある程度流動的にしてから分子配向制御を行なうこともできる。
【0035】
本発明における固形材料は、固形ではあるが、ある程度自由度のあるものであり、例えば液晶材料の結晶状態、柔粘性結晶材料、結晶材料、アモルファス材料がある。また、固形材料であれば、長時間照射あるいは強い光を照射する方が望ましい。
【0036】
本発明における液晶材料としては、特に限定されないが、一般的な棒状液晶、円盤状液晶、分子が選択的に会合することによって形成される液晶などが挙げられ、例えば、トリフェニレン系、フタロシアニン系、ポルフィリン系の円盤状液晶分子を有するものが好ましい。
【0037】
中でも、トリフェニレン系の円盤状液晶分子を有するものが好ましく、下記一般式(I)で表されるトリフェニレン化合物を含むものが好ましい。
【0038】
【化1】

上記一般式(I)中のRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、アルキルベンゾイルオキシ基、アルコキシベンゾイルオキシ基、アルキルチオ基などが挙げられる。これらの基のアルキル部分としては、直鎖状、環状又は分枝状の炭素数1〜18、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8の脂肪族炭化水素基が挙げられる。中でも、Rとしては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8のアルコキシ基が挙げられる。
【0039】
本発明に用いる高分子材料に含まれる高分子液晶材料としては、該材料の赤外光吸収体に相当する波長を有する赤外光の照射により分子配向が変更する高分子であれば特に限定されないが、側鎖型高分子液晶、あるいは主鎖型高分子液晶など、側鎖部あるいは主鎖部にビフェニル基のような棒状メソゲン部位を有する高分子が挙げられる。
【0040】
分子内の特異的な官能部位の化学結合を選択的に振動励起することが可能なことから、材料を異なった波長で赤外レーザー光照射を数回あるいは同時照射を行うことによって分子内の官能部位毎の配向を各々制御することが可能なことより、液晶に限らず高分子や有機薄膜を利用する配向膜など機能性材料ならびに各種素子構築の為の新しい構造構築技術を提供することができる。例えば、固体ポリマーをそのガラス転移点と融点の間に加熱すれば、固体のポリマーでも配向できる。液晶材料については、液晶状態を呈する温度範囲だけでなく、結晶など、液晶より秩序の高い状態においても再配向させることが可能である。
【0041】
本発明において、偏光赤外光を用いると分子配向は特定の方向を向き、表示装置として
好ましく、また、光の導波路の構築が可能である。
【0042】
本発明において、偏光二色性を持つ赤外光を用いると、入射方向と平行方向に液晶分子が配向し、液晶フィルム中に光学異方性をもった導波路形成や異方的導電路の形成が可能である。
【0043】
本発明において、円偏光性を持つ赤外光を用いると、該分子の照射光を吸光する化学結合部位が入射方向に向くように該分子が配向し、フィルム中に光学異方性をもった導波路形成や異方的導電路の形成が可能である。
【0044】
本発明による分子配向の保持性は、液晶状態の温度に依存し、液晶状態において温度が低いほど配向は安定である。
【実施例】
【0045】
実施例1
85℃で一様水平配向しているヘキサゴナルカラムナー液晶(ヘキサキスヘキシルオキシトリフェニレン(下記化合物))に、図1(b)に示す装置によって偏光二色性を持つ赤
外線レーザーパルスをH字型に走査しながら照射した。照射時間は1分間である。照射量は約900 mJである。集光系のレンズとの焦点距離は、127 mmであった。その結果、照射部分のドメイン構造が変化し、分子配向が、垂直配向から一様な水平配向に変化することが見出された。
【0046】
【化2】

特に、ヘキサキスヘキシルオキシトリフェニレンのアルコシキ部位の芳香族C−O−C結合が振動吸収する波長9.65 μm (1036cm-1)の炭酸ガスレーザーパルスを照射した際に
変化が見られ、赤外吸収帯のない波長10.29 μm (972cm-1)の赤外線レーザーパルスを照
射した場合には偏光顕微鏡像に変化が見られなかった。赤外線レーザーパルスは、メカニカルチョッパーのチョッパーブレードの開口部を調節することで光照射および非照射時間の割合(デューティー比)を5%から100%まで変化させた。また、回転数を変化させることにより光照射のON/OFFの周波数変化を2Hzから4kHzまで行った。試料直上からの炭酸ガスレーザーによる波長9.65μmの赤外光をチョッパーによりデューティー比を
10%に調節し、10Hzで赤外レーザー光を5分間照射した後に、ステージを45゜回転させ偏光顕微鏡観察をしたところ、光照射部分が明るくなるのが確認された(図2)。
【0047】
また、赤外線レーザーの照射を停止しても、一度配向が変化した部分は保たれていた。85℃において、配向は少なくとも一昼夜以上保たれていた。
【0048】
また、変化したドメイン部の光軸方向は照射した赤外線パルスレーザーの偏光方向と励
起した振動励起の遷移モーメントの方向に±90゜の関係で変化した(図4)。
【0049】
以上より、赤外照射光の偏光方向及び再配向する該分子および該分子内の官能部位の分子配向方向との関連を利用することで偏光二色性のある赤外光照射によって精緻な配向制御手法を実現するための装置を提供することができる。また、偏光赤外レーザー光照射により配向させた構造を偏光赤外吸収測定した結果、入射光の偏光方向と励起した化学結合の振動遷移モーメントの向きが±90゜の関係になっていることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、赤外光照射による分子配向制御を実現する為の装置概略図を示す。
【図2】図2は、実施例1における偏光顕微鏡像を示す。(a)は照射前のホメオトロピック配向での偏光顕微鏡像を示す。(b)は赤外光照射後の偏光顕微鏡像を示し、(c)は(b)の試料ステージを45゜右回転させた時の偏光顕微鏡像を示す。
【図3】図3は、実施例1における照射赤外レーザービーム出力の偏光方向依存性を示す(縦軸:光強度、円周方向:角度)。
【図4】図4は、実施例1の液晶分子を図3に示した赤外光により配向制御した領域での分子のコア部の芳香族C-C結合に帰属される1615cm-1(●)およびコア部の芳香族C-H面外振動に帰属される835cm-1(▲)での顕微偏光赤外吸収強度の角度依存性(縦軸:吸収強度、円周方向:角度)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外域の連続波もしくは疑似連続波ガスレーザーを光源とする赤外光照射装置、該照射赤外光をパルス赤外光に変換する光制御装置及び分子配向性材料の配置部を備え、該分子配向性材料の化学結合の振動励起エネルギーに相当する波長を有するパルス赤外光を照射することで該材料の分子配向を制御することを特徴とする、分子配向制御装置。
【請求項2】
赤外光を偏光赤外光に変換する偏光素子を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
赤外光を円偏光赤外光に変換する偏光素子を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ガスレーザーが、炭酸ガスレーザーである請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記ガスレーザーが、一酸化炭素ガスレーザーである請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記ガスレーザーが、波長可変炭酸ガスレーザーである請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記ガスレーザーが、波長可変一酸化炭素ガスレーザーである請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
光制御装置が光学チョッパーである請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記分子配向性材料が液晶材料、固形材料、柔粘性結晶材料又は高分子材料である請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記分子配向性材料がネマチック相、スメクチック相、コレステリック相、カラムナー相、キュービック相、プラスチック相である液晶相もしくは関連する中間相(メソフェーズ)をある特定の温度範囲で発現し、赤外光照射で分子配向が変化する液晶材料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−25100(P2007−25100A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205242(P2005−205242)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】