説明

ガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法

【課題】 ガス充填容器全体の消毒・殺菌を確実に行うことができるとともに、その容器の搬入・搬出・輸送のいずれの操作においても、汚染の拡大を生じることなく、安全性が高く、操作性に優れたガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも1つガス充填容器Bの固定手段2と、該固定手段2の外周部に全周照射可能に配設された複数の紫外線照射手段4a,4b・・と、これらを収納し内面全体が鏡面処理された収納手段3とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法に関するもので、例えば、医療用ガス容器などの輸送・保管にも使用するガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、病院を始め医療機関においては、吸入用酸素(O)や笑気ガス(NO)等の高圧ガスが多く使用されている。こうしたガスは、高圧ガス容器に充填され、通常専門業者によって搬入されて特定の保管場所に配設されるとともに、定期的にあるいは所定期間後に交換されて専門業者によって搬出される。このとき、高圧ガス容器の表面に細菌が付着しているおそれがあることから、消毒処理や殺菌処理を行う必要があり、従前より、種々の消毒・殺菌方法あるいは消毒・殺菌設備が用いられ、例えば、消毒液を使用し吹き付けまたは拭取りをする方法などが多く実施されてきた。
【0003】
消毒・殺菌設備についても、図6に示すようなボンベ消毒機能付充填装置が提案されている。ガスの充填と同時にボンベの消毒を行うことができ、充填中のボンベを冷却することも可能な装置を目的とし、ボンベ充填装置におけるボンベ設置部に、ボンベの表面を消毒するための消毒剤を噴出する消毒剤噴出部を設けたことを特徴とする。具体的には、ボンベにガスを充填するためのガス充填配管(図示せず)、ボンベ11を設置するボンベ設置部12等の充填用機器を備えたボンベ充填装置において、前記ボンベ設置部12に、ボンベ11の表面を消毒するための消毒剤を噴出する消毒剤噴出孔34を有する消毒剤噴出部が設けられている。ここで、16は胴受部、17は頭受部、18は容器弁、21は充填枝管、22は充填金具、33は消毒剤供給管、35は受け皿、36は樋を表す(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−248796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような消毒・殺菌方法あるいは消毒・殺菌設備では、以下の課題が生じることがあった。
(i)液体噴霧による消毒・殺菌処理においては、設置条件に制限があることから、ガス充填容器の設置場所とは異なる特定の場所に消毒・殺菌設備を設ける必要があり、かつ流通段階での汚染に対しては全く対応ができないという欠点があった。つまり、消毒・殺菌処理が、病院から持ち帰った容器にガスを再充填する専門業者の充填工場で実施される方法であるため、病院からの容器輸送途上は実施できず、環境汚染のリスクは免れない。上記の消毒機能付充填装置においては、製品を充填する際の汚染防止が主目的であり、固定した設備として使用し、流通段階での連続した消毒ができるものがなかった。しかし、容器外表面が汚染される場所は主に病院や救急搬送中のベッドに固定した容器であり、再充填のために流通する段階では消毒・殺菌は行われていないのが実情である。また、病院等から搬出された後、運搬車両内においては他の容器と分けることなく輸送される場合が多く、汚染拡大のリスクは免れない。さらに、こうした消毒・殺菌設備においては、設備そのものの数は少数で済む長所があるが、廃液、廃物等の処理に費用がかかり、経済的な課題が大きい。
【0006】
(ii)噴霧による消毒の場合、均一に消毒液が行き届かない場合がある、例えば、オイル等の付着により水分をはじくとその部分は消毒できない。また、ガス充填容器にごみが付着していた場合、ごみで隠れた部分の消毒が不十分になる場合もある。一方、充填口に消毒液が付着した場合、製品に混入するおそれもある。
【0007】
(iii)消毒液の毒性及び使用後の消毒液の処理等二次汚染のリスクや処理設備の費用がかさむ等の問題がある。つまり、消毒液自体が毒性を持つことから、消毒後消毒液の洗浄や乾燥を必要とする等の消毒行程以外の作業が必要となる。二次的な問題として、運転手が輸送時にアルコールで消毒した場合、運転にも問題が出る場合がある。また、この消毒液にはアルコール(危険物)を使用する場合があるが、高圧ガスの酸素を扱う場合、アルコールは一緒に取り扱うと危険な物質であり、安全性を確保するための処理あるいは設備を必要とする。さらに、廃液及び廃物が発生し適切な処置が必要となり、設備規模については、回収装置も含めて大規模な設備となる。
【0008】
(iv)一方、消毒液によらない消毒・殺菌装置として、紫外線を利用した装置もあるが、軽量な製品の消毒を目的とし、液体での消毒が不適当な物に対する対策として考案されており、重量物である金属製容器には適していなかった。また、紫外線を利用した容器の殺菌においても、医薬品の包装材料や製品を入れる容器は一回のみの使用が一般的であり、製品充填直前の殺菌に対するものである。医療用ガスの高圧に耐える金属製容器のように繰り返し使用する容器に対しては、従前実用化が困難であり、流通する容器に対しては、外表面が汚染された場合、充填場に戻ってくる間、何の処置もされないことになる。
【0009】
本発明の目的は、ガス充填容器全体の消毒・殺菌を確実に行うことができるとともに、その容器の搬入・搬出・輸送のいずれの操作においても、汚染の拡大を生じることなく、安全性が高く、操作性に優れたガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法を提供することにある。特に、簡便な構成により、輸送中での殺菌も可能なコンパクトなガス充填容器の殺菌装置が好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示すガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、ガス充填容器の殺菌装置であって、少なくとも1つガス充填容器の固定手段と、該固定手段の外周部に全周照射可能に配設された複数の紫外線照射手段と、これらを収納し内面全体が鏡面処理された収納手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ガス充填容器の殺菌方法であって、収納手段内に固定された少なくとも1つガス充填容器に対し、その外周部に全周照射可能に配設された複数の紫外線照射手段から直接的に紫外線が照射されるとともに、該収納手段の内面から反射された紫外線が間接的に照射され、該ガス充填容器の全外面の殺菌処理を行うことを特徴とする。
【0013】
医療機関等で用いられるガス充填容器については、その容器の搬入・搬出・輸送のいずれの操作においても、その容器自体の汚染の防止を図るとともに、他への汚染の拡大を防止することが重要である。一方、一般に細菌を形成するDNA(デオシリボ核酸)は紫外領域に強い吸収帯を有するとともに、紫外線の殺菌効果のある波長領域と非常に類似していることが知られている。本発明は、従前ドライ処理が困難であったガス充填容器に対して、こうした紫外線の殺菌機能をより効果的に利用できる方法を提案するもので、ガス充填容器という比較的大きく重量があって特殊な形状部を有する被処理物に対して、紫外線照射手段からの直接的な照射だけではなく、間接的にも照射することができる構成によって、容器全体を確実に紫外線照射することを可能とした。
【0014】
具体的には、間接的な照射手段として収納手段の内面全体を鏡面処理し、紫外線照射手段の配置と反射面の効果的な利用によって、最小限の数量の紫外線照射手段で容器全体を確実に紫外線照射することを可能とした。つまり、各紫外線照射手段からガス充填容器に対して直接的に照射される紫外線照射領域に加え、前記鏡面による反射機能を利用して間接的に照射される紫外線照射領域を形成するとともに、両者が重複する紫外線領域にガス充填容器が配設されるように紫外線照射手段を配設することによって、ガス充填容器に対して全外面に紫外線を照射することができる。
【0015】
こうした機能を有するガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法によって、
(i)ウエットの拭取り方法では、処理し難くかつ病原菌の付着し易い菊型バルブの溝、裏側、あるいはねじ部の谷の部分等の表面まで消毒・殺菌が可能となり、
(ii)消毒液を使用しないため、安全性が高くまた消毒液の処理設備を必要とせず、さらに使用現場直近に設置が可能になるために、長距離の配管などの付帯設備や施工が不要となり、
(iii)無人での殺菌処理が可能であり、輸送時及び使用場所での保管時にも継続して殺菌が可能となり、二次的汚染を防止することができる。特に、輸送途上の殺菌処理により、病院などの医療機関から外界への細菌汚染リスクをなくすることができる、
(iv)鏡面反射を利用することによって、収納されるガス充填容器の数量に対応した最小限の数量で、かつ最も近接した状態で、紫外線照射手段を配置することが可能となり、装置のコンパクト化をはかることができる、
という優れたガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法を提供することが可能となった。
【0016】
本発明は、上記ガス充填容器の殺菌装置であって、前記収納手段の4つの内側面が交互に直交して交線を形成するとともに、
前記紫外線照射手段と特定のガス充填容器との平面配置関係において、
(a)近接するする2つの紫外線照射手段を結ぶ直線、
(b)特定の紫外線照射手段と、これに近接する鏡面によって形成される仮想の紫外線照射手段を結ぶ直線、
(c)前記交線とこれに近接する紫外線照射手段を該交線と直交するように結ぶ直線、
(d)特定の紫外線照射手段と、前記ガス充填容器の外周によって形成される接線、
のいずれかであって、かついずれのガス充填容器あるいは鏡面によって形成される仮想のガス充填容器にも交差しない直線または接線、
によって形成された閉空間の内部に、前記ガス充填容器が配設されることを特徴とする。
【0017】
上記のように、紫外線による殺菌機能は、被殺菌部に直接紫外線照射手段からの紫外線が照射される場合以外に、鏡面反射によって間接的に照射される場合も有効である。しかしながら、鏡面反射の回数が多いあるいは紫外線照射手段からの距離が長くなれば、それだけ紫外線の拡散によって、被殺菌部に対する照射密度が減衰する。本発明者は、検証において、紫外線による殺菌機能を確保するには、照射される紫外線が鏡面反射回数を1回とし、いずれのガス充填容器(鏡面反射を利用した紫外線については鏡面によって形成される仮想のガス充填容器を含む)にも交差しないことが好ましいことを見出した。また、複数のガス充填容器を収容する本発明に係る殺菌装置においては、ガス充填容器の全周面にこうした紫外線を照射させるには、鏡面を構成する収納手段の4つの内側面が交互に直交することが好ましく、かつ実存のガス充填容器および紫外線照射手段と、鏡面によって形成される仮想のガス充填容器および仮想の紫外線照射手段との配置関係を規定することが好ましいことを見出した。
【0018】
具体的には、(a)近接する2つの紫外線照射手段を結ぶ直線、(b)特定の紫外線照射手段とこれに近接する鏡面によって形成される仮想の紫外線照射手段を結ぶ直線、(c)前記交線とこれに近接する紫外線照射手段を該交線と直交するように結ぶ直線、(d)特定の紫外線照射手段と、前記ガス充填容器の外周によって形成される接線、のいずれかであって、かついずれのガス充填容器あるいは鏡面によって形成される仮想のガス充填容器にも交差しない直線または接線、によって形成された閉空間の内部に、前記ガス充填容器が配設されることによって、多くとも1回の鏡面反射された紫外線を含む紫外線を、ガス充填容器の全周面に照射させることができる。こうした殺菌機能を確保した状態で、鏡面の反射機能を有効に活かすことによって、最小数量の紫外線照射手段を用いて優れたガス充填容器の殺菌装置を構成することが可能となった。
【0019】
本発明は、上記ガス充填容器の殺菌装置であって、前記固定手段がキャスター付の移動可能な構造体であって、前記収納手段からスライドして搬入・搬出可能であることを特徴とする。
【0020】
医療機関に限らずガス充填容器の保守交換は、不定期で個別的であることが多く、輸送中に他の容器と混在した場合には汚染拡大のおそれがある。一方、少数のガス充填容器が収納された殺菌装置であっても、装置そのものの移動は、装置自体の汚染防止処理を必要とし、コスト面においても負荷が大きい。そこで、本発明は、医療機関等に殺菌装置を設置するとともに運搬車にも殺菌装置を設置し、医療機関等にある殺菌装置の収納手段からスライドして搬入・搬出可能なキャスター付の固定手段を用いてガス充填容器を移動し、運搬車の殺菌装置に搬入することによって、輸送時の時間を利用して消毒・殺菌が可能となり、汚染の拡散防止にも繋がる。また、医療機関等で消毒・殺菌されなかった容器であっても、輸送時の時間を利用して消毒・殺菌が可能となる。
【0021】
本発明は、上記ガス充填容器の殺菌装置であって、前記収納手段が、その内部にオゾン吸収剤もしくはオゾン分解器を配設すること、またはその内部を清浄気体によってパージする機能を有することを特徴とする。
【0022】
一般に紫外線照射手段を使用した場合、その線源近くに酸素が存在していれば、その一部が反応してオゾンが発生する。オゾンは、直接医療現場に設置されることは少ないが、強酸化能力を有する有害物質であり、殺菌装置が設置された環境に対して悪影響を及ぼさないように防止処理をすることが好ましい。このとき、殺菌装置の収容手段のシール性を上げる方法があるが、大きなガス充填容器の出し入れができる収容手段のシールは困難性が高い。本発明は、こうした方法に代えあるいはこれと合せて、収納手段の内部にオゾン吸収剤もしくはオゾン分解器を配設すること、またはその内部を清浄気体によってパージする機能を有することによって、環境に対する悪影響を未然に防止することができる。
【0023】
本発明は、上記ガス充填容器の殺菌方法であって、前記収納手段の開閉に対応する接点を設け、該接点の動作によって前記紫外線照射手段のON−OFFを制御することを特徴とする。
【0024】
殺菌装置は、例えばガス充填容器の保守交換など特別な場合でなければ、収容手段を開放することはない。しかしながら、人為的なミスを含め、稼働中の殺菌装置においては紫外線照射手段が収納手段の内部全体に照射されていることから、万が一この状態で開放された場合には、特に目に対して影響が大きく疾患に繋がる可能性がある。本発明は、収納手段の開閉に対応する接点を設け、該接点の動作によって紫外線照射手段のON−OFFを制御することによって、こうした不測の事態を未然に防止し、安全性の向上を図ることができる。
【0025】
本発明は、上記ガス充填容器の殺菌方法であって、前記接点の動作によって、前記収納手段の内部を換気することを特徴とする。
【0026】
上記のように、紫外線照射手段を用いた殺菌装置においては、その内部を清浄気体によってパージする機能を有することが好ましく、これによって、環境に対する悪影響を未然に防止することができる。本発明は、さらにこれを自動的に機能させるものであって、収納手段の開閉に対応する接点の動作に応じて、パージ機能のON−OFFを制御することによって、不測の事態を未然に防止し、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、紫外線照射手段の安全性の高い殺菌機能と収納手段の反射機能を効果的に組合せることによって、最小限の紫外線照射手段でガス充填容器の外表面全体をむらなく殺菌することができ、特別な処理設備を必要とせずに搬入・搬出・輸送のいずれの操作においても殺菌処理が可能となり、汚染の拡大を生じることなく、安全性が高く、操作性に優れたガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明に係るガス充填容器の殺菌装置(以下「本装置」という)は、少なくとも1つガス充填容器(以下「容器」という)の固定手段と、該固定手段の外周部に着脱可能に配設された、複数の全周照射可能な紫外線照射手段と、これらを収納し内面全体が鏡面処理された収納手段とを有することによって、優れた殺菌機能を有することを特徴とする。
【0029】
図1(A)および(B)は、本装置を例示する概略図である。本装置は、酸素などが充填された5本の容器B1〜B5が、固定具2(固定手段に相当)によって保持された状態で固定され、収納具3(収納手段に相当)の内部に配設される。収納具3の各側面3a〜3dには、それぞれ紫外線ランプ4a〜4d(紫外線照射手段に相当。以下「ランプ4a〜4d」という)が配置される。ここで、収納具3の底面3e,側面3a〜3dおよび上面3fの内面には、鏡面処理がされている。詳細は後述する。
【0030】
5本の容器B1〜B5は、図1(B)に示すように等間隔に配設され、4つのランプ4a〜4dからの紫外線および収納具3の各側面3a〜3dで反射された紫外線によって、容器B1〜B5の側面全体が照射されるとともに、図1(A)に示すように収納具3の上面3f(図1(A)では開放状態を示しているが、稼動時は蓋閉状態となる。)で反射された紫外線によって、容器B1〜B5の頭頂部B1a〜B5aが照射される。また、固定具2の底部2aは、収納具3の底部3aとは直接接することはなく、収納具3の底面3eによって反射された紫外線が、容器B1〜B5の底面(図示せず)に照射できる状態となっている。
【0031】
一般に医療用ガスとしては、表1に示すよう種々のガスを挙げることができる(日本医療ガス協会資料)。こうしたガスが、容器B1〜B5に充填され医療機関等に搬入・搬出される。
【表1】

【0032】
容器B1〜B5の大きさは、医療機関等の規模に依存するが、本発明においては、数〜数10L程度の小型容器あるいは中型容器として数10〜100L規模の耐圧容器が挙げられる。具体的には、例えば二酸化炭素の場合、内容積47Lの容器の内部圧力を約0.1〜0.15MPaG、液温度約13〜25℃の液化ガスが充填された容器となる。
【0033】
固定具2は、図1(B)に示すように、1つの収納具3に対して同一形態の複数の固定具2を配設することが好ましい。容器B1〜B5に対して、固定具2の底部2a,下側部ガイド2b,中側部ガイド2cおよび上側部ガイド2dによって保持することによって、安定的に固定することができる。ただし、容器B1〜B5の容量に対応した数種類の固定具2を配設することも可能である。底部2a,ガイド2b〜2dを、容器B1〜B5のサイズ(直径)に合わせて自由に交換できるアダプターとすることによって、容器B1〜B5のサイズに応じて堅固に保持することができる。また、固定具2は、底部2aにキャスター(図示せず)を付加し、移動可能な構造とすることが好ましい。収納具3からスライドして運搬車に搬入・搬出することができる。このとき、1つの容器ごとに移動可能な構成や、複数の容器を同時に移動できるように一体化した構成をとることが可能である。
【0034】
ランプ4a〜4dは、紫外線を放射する低圧水銀ランプを用いている。これに代えて、中圧水銀ランプやキセノンランプなども使用可能であるが、上述のようなDNAの紫外吸収領域と殺菌機能が高い紫外領域は240〜280nmで重なり、254nmに大きなピークがある分光エネルギー特性を有する低圧水銀ランプは、熱密度が高く、非常に好適である。また、応答性に優れ、容器B1〜B5の高さに応じた長さや形状の製作も容易で、容器B1〜B5全体を効率よく照射することができる点においても優れている。さらに、各種の微生物を殺菌するためには、数〜数10mW・sec/cmの線量が必要とされ(岩崎電気技術資料<紫外線殺菌>参照)、低圧水銀ランプはこうした線量を長期に確保することが可能である点においても優れている。
【0035】
ランプ4a〜4dは、スイッチON/OFFとほぼ同時に紫外線が照射される。ランプ4a〜4dは、長円筒形状で側面全周から紫外線を照射するタイプが好ましく、中型の容器のように縦方向に長い場合には、必要に応じて複数のランプを直列に配置して容器全体を照射することも可能である。また、ランプ4a〜4dは、図1(B)では収納具3の各側面3a〜3dに配設されているが、その最適な配置の詳細については、後述する。
【0036】
ランプは、所定容量の本数を任意に設置可能であるため、本数ならびに出力を任意にコントロールすることによりきめ細かい照射条件を制御することが可能となる。例えば、複数のランプを固定的に配置し、使用する固定手段に対応したランプのみを点燈させることによって、エネルギー効率の高い使用方法とすることができる。また、着脱可能なランプを用いることによって、固定される容器の数量に対応した、より適切なランプの配置と反射面の効果的な利用が可能である。
【0037】
収納具3は、複数の容器B1〜B5を収容するとともに、ランプ4a〜4dを配設して紫外線照射による殺菌処理を行うもので、内面を鏡面処理したことを特徴とする。鏡面反射によって、各容器B1〜B5の頭頂部B1a〜B5aおよび底面(図示せず)を含む全外面に紫外線を照射することができる。また、複数の容器B1〜B5を収容する本装置においては、容器B1〜B5の全周面にこうした紫外線を照射させるには、鏡面を構成する収納具3の4つの内側面3a〜3dが交互に直交することが好ましいことを見出した。ここで、上面3fおよび側面3a〜3dを開閉可能な構造として、容器B1〜B5を個別に操作、取出し可能とすることが好ましい。また、図1(A)に示すように、底面3eにキャスター3gを設けて収納具3全体を移動可能とすることができるとともに、固定式として上記のように固定2を移動可能とすること、あるいは両方を移動可能とすることもできる。
【0038】
収納具3の内面3a〜3fの鏡面処理は、内面3a〜3f全体を覆うように反射板を配設することや、内面側に反射膜をコーティングした面状体によって収納具3の上下面3eと3fおよび側面3a〜3dを構成することにより形成することができる。反射板は、紫外線を反射するものであれば、特に限定されるものではないが、金属あるいは樹脂などの部材の表面に金やアルミニウムなどの反射機能の高い薄膜を形成したものを用いることができる。あるいはアルミニウムや銅などの金属表面を鏡面加工することによって、鏡面処理に代えることも可能である。
【0039】
ここで、収納具3は、その内部にオゾン吸収剤もしくはオゾン分解器を配設すること、またはその内部を清浄気体によってパージする機能を有することが好ましい。例えば、図2に示すように、ファン等の換気機能を有しオゾン吸収剤もしくはオゾン分解器を内蔵した浄化ユニット5を上面3fに設けることによって、収納具3の内部に発生したオゾンを処理して、設置環境に対する悪影響のない殺菌装置を構成することができる。つまり、ランプ4a〜4dの点燈強度によっては、その周辺の空気中の酸素をオゾン化されることから、オゾンの漏洩を未然防止するために、浄化ユニット5を駆動させ、底面3eあるいは側面3a〜3dから外気を吸引して内部を換気するとともに、内気に含まれるオゾンを吸収あるいは分解して除去するものである。オゾン吸収剤としては活性炭や活性アルミナなどを用いることができ、オゾン分解器としては、マンガン系やチタニア系あるいは銅系などの触媒が担持されたセラッミクスなどを用いることができる。これらによって、低温・低電力での処理が可能となる。
【0040】
また、上面3fおよび側面3a〜3dを開閉可能な構造とする場合、図2に例示するように、開閉に対応する接点6を設け、接点6の動作によってランプ4a〜4fのON−OFFを制御することが好ましい。例えば容器B1〜B6の保守交換など特別な場合でなければ、収納具3を開放することはない。しかしながら、人為的なミスを含め、紫外線が収納具3の外部へ漏洩する可能性があれば自動的にランプ4a〜4fをOFFとし、また、こうした状態で始動してもランプ4a〜4fが点燈しない状態とすることによって、稼働中の不測の事態を未然に防止し安全性の向上を図ることができる。
【0041】
さらに、接点6の動作によって、収納具3の内部を換気することが好ましい。つまり、収納具3が密閉状態となり、稼動可能となった時点で、換気機能を稼動させ、その後速やかに、ランプ4a〜4fの点燈を開始する。稼働中に収納具3が密閉状態となった場合には、速やかにランプ4a〜4fを消灯し、さらにしばらく換気機能を稼動させた状態を維持した後にOFFとすることによって、不測の事態を未然に防止し、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【0042】
また、固定具2をスライド式にして医療機関等に収納具3を設置するとともに、運搬車にも同様の収納具3を設置することによって、輸送時の時間を利用して消毒・殺菌が可能となり、汚染の拡散防止を図ることが可能となる。また、医療機関等で消毒・殺菌されなかった容器であっても、輸送時の時間を利用して消毒・殺菌が可能となる。
【0043】
<本装置における殺菌方法>
本装置は、以上のような機能を用いて、収納手段内に固定された少なくとも1つガス充填容器に対し、その外周部に全周照射可能に配設された複数の紫外線照射手段から直接的に紫外線が照射されるとともに、該収納手段の内面から反射された紫外線が間接的に照射され、該ガス充填容器の全外面の殺菌処理を行うことを特徴とする殺菌方法によって、処理される。
【0044】
このとき、以下のプロセスを、タイマー等を配備して常時あるいは定時に行うことによって、適切な消毒時間を確保しつつ過度の処理を防止することが可能となる。なお、ここでは、図2の装置に基づき説明するが、各手順および機能を含めこれに限定されるものではない。また、送気されたガスを消費する設備等については触れない。
【0045】
〔本装置の設置〕
医療機関等に初めて本装置の設置する場合であって、既設については不要である。
(1)収納具3を固定し、上面3fおよび側面3cを開とする。
(2)容器B1〜B6を設置した固定具2を収納具3に、搬入しセットする。このとき、予めランプ4a〜4eは固定具2または/および収納具3に配設しておく。
(3)容器B1〜B6に口金部(図示せず)を接続する。口金部は、バルブ、減圧弁および送気用配管(図示せず)を介してガス消費設備に繋がる。
【0046】
〔本装置の稼動〕
容器B1〜B6の交換後においても同様の状態から開始する。
(4)収納具3を閉状態にする。同時に接点6が作動し内部の換気が始まる。
(5)ランプ4a〜4eを起動し、容器B1〜B6を殺菌する。
(6)容器B1〜B6からの送気を開始する。具体的には、バルブを開とすることによって、ガス消費設備に送気される。
(7)以上の操作によって、所望のガスを送気するとともに、所定時間後に容器B1〜B6の殺菌操作を完了し、次の殺菌操作に備える。
【0047】
〔容器B1〜B6の交換〕
所定の使用期間の後、消費された容器B1〜B6のうちの何本かを交換する。
(8)容器B1〜B6からの送気を停止する。
(9)収納具3を閉状態にする。同時に接点6が作動し、換気が閉状態の場合には開状態に切換り、所定時間内部の換気が行われる。
(10)換気完了後に、固定具2全体または、交換の対象となる容器Bnに係る固定具2のみをスライドさせて引き出し、容器Bnを交換品と置換える。
(11)交換された容器Bnについて、上記(2)〜(7)を繰返す。
以上の操作によって、本殺菌方法を利用するができ、殺菌された容器を搬出し、新たに搬入された容器を使用時に殺菌することができる。なお、運搬車においても同様の操作によって殺菌処理を行うことができることから、容器の搬入・搬出・輸送という全て操作において容器自体の汚染の防止を図るとともに、他への汚染の拡大を防止することができる。
【0048】
<本装置におけるランプの数量と配置について>
本装置の基本は、紫外線による殺菌機能において、ランプからの紫外線を直接照射した場合に加え、鏡面反射回数を1回とし、他のいずれの容器にも交差しない紫外線が照射された場合をも利用する点にある。また、複数の容器を収容する本装置においては、容器の全周面にこうした紫外線を照射させるには、実存の容器とランプ、および鏡面によって形成される仮想の容器と仮想のランプの配置関係を規定する点にある。
【0049】
本装置は、ランプからの直接的な照射だけではなく、収納具の内面の鏡面反射による間接的にも照射することができる構成によって、容器全体を確実に紫外線照射することを特徴とするとともに、容器の数量に対応したランプの数量および最適配置の検討した結果、収納具の4つの内側面が交互に直交するとともに、
前記紫外線照射手段と特定のガス充填容器との平面配置関係において、
(a)近接するする2つの紫外線照射手段を結ぶ直線、
(b)特定の紫外線照射手段と、これに近接する鏡面によって形成される仮想の紫外線照射手段を結ぶ直線、
(c)前記交線とこれに近接する紫外線照射手段を該交線と直交するように結ぶ直線、
(d)特定の紫外線照射手段と、前記ガス充填容器の外周によって形成される接線、
のいずれかであって、かついずれのガス充填容器あるいは鏡面によって形成される仮想のガス充填容器にも交差しない直線または接線、によって形成された閉空間の内部に、前記ガス充填容器が配設されることが好ましいことを見出した。以下、その検証内容を説明するとともに、〔実施例〕においてその確認実験の結果を説明する。
【0050】
〔適正なランプ数量と配置の検証〕
容器の全周を照射するために必要なランプの数量と配置を、まず、1つの容器について検証し、次に複数の容器を配設した場合について検証した。ここでは、検証の簡便を図るために、ランプの大きさは無視することとした。
【0051】
(1)1つの容器に対して鏡面を利用しない場合
(1a)2つのランプ4a,4bを用いた場合
図3(A)に示すように、容器Bを中心に無限遠の相対する位置にランプ4a,4bを配置する必要がある。従って採用することはできない。
(1b)3つのランプ4a〜4cを用いた場合
図3(B)に示すように、隣接するランプ同士を結ぶ直線が容器Bの外周に対して接線を形成し、その接線同士の交角αが60°より小さい角度になる位置にランプ4a〜4cを配置する必要がある。占有面積は、ランプ4a〜4cが正三角形の頂点に位置する場合で、交角αが60°のとき最小となる。このとき、ランプ4a〜4cをこの頂点から容器Bの中心Cに対し等しく矢印方向に離れる位置に配設すると、交角が60°以下となる接線において紫外線の照射が可能となる。以下、同様の考え方が適用できるので、最小となる場合について言及する。
(1c)4つのランプ4a〜4dを用いた場合
図3(C)に示すように、容器Bの外周との接線と接線の交角αが90°より小さい角度になる位置にランプ4a〜4dを配置する必要があり、占有面積は、ランプ4a〜4dが正方形の頂点に位置する場合で、交角αが90°のとき最小となる。
(1d)n個(5つ以上)のランプ4a,4b・・4nを用いた場合
以上の結果から、容器Bの外周との接線と接線の交角αが[360/n]°より小さい角度になる位置にランプ4a〜4nを配置する必要があり、占有面積は、ランプ4a〜4nが正n角形の頂点に位置する場合で、交角αが[360/n]°のとき最小となる。
(1e)以上から、鏡面を利用しない場合には、ランプの数量を3つとし、容器の接線を各辺とする正三角形の頂点にランプを配置することによって、効率的な照射を行うことができる。
【0052】
(2)1つの容器に対して鏡面を利用した場合
(2a)収納具の1つの内側面を鏡面M(平面鏡)として利用した場合
基本的には、上記(1b)において得られた3つのランプ4a〜4cの配置を基に、検証することができる。具体的には、図3(D)に示すように、鏡面Mの位置を、鏡面Mに平行な容器Bにおける接線と正三角形の1つの仮想の頂点4a’との中間に、配置することによって、最短で容器Bの全周を照射することができる。つまり、2つの実在のランプ4b,4cからの紫外線が鏡面を介して1つの仮想のランプ4a’を形成し、これらの3つの頂点4a〜4c’によって正三角形を形成することによって、上記(1b)と同一の条件を作り出すことができる。実際の紫外線は、鏡面反射して容器Bの外周の4a”に集光する。従って、ランプの数量を2つとし、容器Bの接線を各辺とする正三角形の頂点に配置することによって、効率的な照射を行うことができる。
(2b)収納具3の内側面が直交する鏡面M1,M2を利用した場合
基本的には、上記(2a)と同様、図3(E)に示すように、正三角形の1つの仮想の頂点4aを、鏡面M1とM2の交線Pとすることによって、上記(1b)と同一の条件を作り出すことができる。つまり、2つの実在のランプ4b,4cから交線Pに照射された紫外線は重複して、交線Pにおいて、これを頂点とする90°の開口角を有する1つの仮想のランプ4a’を形成し、これらの3つのランプ4a〜4cからなる頂点によって正三角形が形成される。従って、ランプの数量を2つ以上とし、交線Pからの容器の接線を2辺とする正三角形の頂点にランプを配置することによって、効率的な照射を行うことができる。
【0053】
(3)2つ以上の容器B1に対して鏡面を利用しない場合
基本的には、上記(1b)において得られた3つのランプの配置を基に、検証することができる。具体的には、図3(F)に示すように、上記(1b)の構成を、これを垂直方向に反転した構成と重ね合せることによって形成することができる。このとき、容器B1についてランプ4a〜4cによって正三角形が形成され、容器B2についてランプ4b〜4dによって正三角形が形成され、容器B3についてランプ4c〜4eによって正三角形が形成される。従って、ランプの数量を5つとし、容器B1〜B3の接線を各辺とする正三角形の頂点に配置することによって、効率的な照射を行うことができる。
【0054】
(4)2つ以上の容器に対して鏡面を利用した場合
(4a)鏡面M(平面鏡)として利用した場合
基本的には、上記(1b)において得られた3つのランプ4a’〜4cの配置を基に、検証することができる。具体的には、図3(G)に示すように、上記(1b)の構成を、これを水平方向に反転した構成と重ね合せることによって形成することができる。このとき、容器B1についてランプ4a’〜4cによって正三角形が形成され、容器B2についてランプ4c〜4e’によって正三角形が形成される。従って、ランプの数量を3つとし、容器B1,B2の接線を各辺とする正三角形の頂点に配置することによって、効率的な照射を行うことができる。
(4b)直交する鏡面を利用した場合
図3(H)に示すように、基本的には、上記(2b)の構成を、これを水平方向に反転した構成と重ね合せることによって形成することができる。このとき、容器B1について交線P1、ランプ4b,4cによって正三角形が形成され、容器B2について交線P2、ランプ4c,4dによって正三角形が形成される。従って、ランプの数量を3つ以上とし、交線P1,P2からの容器の接線を2辺とする正三角形の頂点あるいは頂点よりも容器の中心に対し等しく離れる位置にランプを配置することによって、効率的な照射を行うことができる。
【0055】
(5)2つ以上の容器を収納した場合
(5a)最密充填式に2つ以上の容器を配置した場合
図3(J)に示すように、基本的には、交線P1〜P4に近接する容器B1〜B4については、上記(2b)の構成を、これを水平方向または垂直方向に反転あるいは180°回転した構成と重ね合せることによって形成することができる。鏡面M2,M4に近接する容器B5,B6については、上記(1b)の構成と、これを垂直方向に反転した構成とを利用することによって形成することができる。容器B7,B8については、上記(1c)の構成を利用することによって形成することができる。このとき、隣接する容器同士でランプを共有することによって、容器B1〜B8について、ランプの数量を7つ配置することによって、陰を作ることなく紫外線を容器B1〜B8全体に照射可能となる。ここで、陰とは、紫外線が全く照射されない部分、鏡面反射が2回以上で照射される部分、容器等によって反射されて照射される等照射が弱い場合をいう。
(5b)縦列式に2つ以上の容器を配置した場合
図3(K)に示すように、鏡面M1〜M4に近接する容器B1〜B6を基本とし、上記(2a)の構成と、これを垂直方向に反転あるいは90°と270°回転した構成とを利用することによって形成することができる。交線P1〜P4に近接する容器B7〜B10については、上記(1b)の構成を、45°,135°225°あるいは315°回転した構成と重ね合せることによって形成することができる。容器B11,B12については、上記(1c)の構成を利用することによって形成することができる。このとき、隣接する容器同士でランプを共有することによって(ランプ4s〜4zは共有なし)、容器B1〜B12について、ランプの数量を10つ配置することによって、陰を作ることなく紫外線を容器B1〜B12全体に照射可能となる。
【0056】
以上のように、近接する2つのランプを結ぶ直線、あるいは特定のランプとこれに近接する鏡面によって形成される仮想のランプを結ぶ直線であって、かついずれの容器あるいは鏡面によって形成される仮想の容器にも交差しない直線によって、被照射体となる容器が囲まれることによって、多くとも1回の鏡面反射された紫外線を含む紫外線を、該容器の全周面に照射させることができる。こうした殺菌機能を確保した状態で、鏡面の反射機能を有効に活かすことによって、最小数量のランプを用いて優れた容器の殺菌装置を構成することができる。
【実施例】
【0057】
上記の検証結果について、実際に容器外周表面におけるUV光量を測定し、実装条件で評価した。
(1)実験方法
(1−1)実験装置
図4(A)に示すような、容量3.4Lの5つの容器B1〜B5が収納され、4つのランプ4a〜4dが設置された殺菌装置を用いて実験した。UVランプは、外径32.5mm、長さ580mm、出力7.5Wの低圧水銀ランプ(東芝社製、GL20形)を用いた。
(1−2)UV光量の測定
テストは、容器外面に紫外線の照射量によって色が変化するUVラベル(日油技研工業社製、商品名「紫外線インジケータ」)を貼付し、照射箱にセットした後、時間による変色状態を確認した。測定位置は、図4(B)に示すように、容器上部の口金部Ba、上側部Bb、中側部Bc、下側部Bdおよび底部Beとした。側部Bb〜Bdは、図4(B)に示すように、容器の周方向を均等割した位置Ra〜Rdについて測定した。
(2)評価のポイント
図4(A)に示すように、実験装置(紫外線照射箱)における、容器表面への紫外線照射量は照射箱の反射を利用した照射となる、各コーナーにおける容器位置(Rb)が最も少なくなる。この部分においても、滅菌に十分な照射量を得る時間を確認するためにテストを行った。
(3)実験結果
結果を図5に示す。照射量が多いほどUVラベルが濃く変色する。照射量の確認まで約5分程度必要であったが、照射量が少ない点RbおよびRdにおいても十分な照射がされていることを確認することができた。また、照射量が最も少ない底部Beについても、5〜10分程度の照射時間において十分な照射量に達することを確証することができた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上記においては、主として医療機関で用いられるガス充填容器の殺菌装置およびその殺菌方法について述べたが、本発明は、技術分野に限られず、ガス充填容器に充填されたガス成分あるいはそれが空気中で反応して生じる生成物などが紫外線照射によって分解可能な成分であって、そのガス充填容器に付着して、その容器そのもの、あるいはそれを操作する者を汚染すること、さらには他の容器や機器を汚染することを防止する場合などに適用することができる。例えば、半導体プロセス等に用いる腐食性のある液化ガスで塩素含有化合物あるいはフッ素含有化合物などを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るガス充填容器の殺菌装置を例示する概略図
【図2】本発明に係るガス充填容器の殺菌装置の他の形態を例示する説明図
【図3】適正なランプ数量と配置の検証内容を例示する説明図
【図4】実施例における本装置の実験条件を例示する説明図
【図5】実施例における本装置の実験結果を例示する説明図
【図6】従来技術に係るボンベ消毒機能付充填装置を例示する概略図
【符号の説明】
【0060】
2 固定具(固定手段)
2a 底部
2b 下側部ガイド
2c 中側部ガイド
2d 上側部ガイド
3 収納具(収納手段)
3a〜3d 側面
3e 底面
3f 上面
3g キャスター
4a〜4f,4s〜4z ランプ(紫外線ランプ,紫外線照射手段)
5 浄化ユニット
6 接点
B,B1〜B15 容器(ガス充填容器)
B1a〜B5a 頭頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つガス充填容器の固定手段と、該固定手段の外周部に全周照射可能に配設された複数の紫外線照射手段と、これらを収納し内面全体が鏡面処理された収納手段とを有することを特徴とするガス充填容器の殺菌装置。
【請求項2】
前記収納手段の4つの内側面が交互に直交して交線を形成するとともに、
前記紫外線照射手段と特定のガス充填容器との平面配置関係において、
(a)近接する2つの紫外線照射手段を結ぶ直線、
(b)特定の紫外線照射手段と、これに近接する鏡面によって形成される仮想の紫外線照射手段を結ぶ直線、
(c)前記交線とこれに近接する紫外線照射手段を該交線と直交するように結ぶ直線、
(d)特定の紫外線照射手段と、前記ガス充填容器の外周によって形成される接線、
のいずれかであって、かついずれのガス充填容器あるいは鏡面によって形成される仮想のガス充填容器にも交差しない直線または接線、
によって形成された閉空間の内部に、前記ガス充填容器が配設されることを特徴とする請求項1記載のガス充填容器の殺菌装置。
【請求項3】
前記固定手段がキャスター付の移動可能な構造体であって、前記収納手段からスライドして搬入・搬出可能であることを特徴とする請求項1または2記載のガス充填容器の殺菌装置。
【請求項4】
前記収納手段が、その内部にオゾン吸収剤もしくはオゾン分解器を配設すること、またはその内部を清浄気体によってパージする機能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス充填容器の殺菌装置。
【請求項5】
収納手段内に固定された少なくとも1つガス充填容器に対し、その外周部に全周照射可能に配設された複数の紫外線照射手段から直接的に紫外線が照射されるとともに、該収納手段の内面から反射された紫外線が間接的に照射され、該ガス充填容器の全外面の殺菌処理を行うことを特徴とするガス充填容器の殺菌方法。
【請求項6】
前記収納手段の開閉に対応する接点を設け、該接点の動作によって前記紫外線照射手段のON−OFFを制御することを特徴とする請求項5記載のガス充填容器の殺菌方法。
【請求項7】
前記接点の動作によって、前記収納手段の内部を換気することを特徴とする請求項5または6記載のガス充填容器の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−58008(P2009−58008A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224270(P2007−224270)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】