説明

ガス化システム

【課題】 比較的簡便な方法で、ガス化処理後の高温の集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することが可能な固形燃料や有機系廃棄物のガス化システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 被燃焼物を導入する手段と、タール分解機能を有する試剤を供給する添加剤供給手段と、前記被燃焼物を加熱してガス化するガス化手段と、該ガス化手段の下流側に配置されてガス化手段から発生する生成ガスを除塵する集塵手段と、該集塵手段を逆洗する逆洗手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化システムに関し、詳しくは、有機系廃棄物のガス化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形燃料や有機系廃棄物を、加熱して熱分解あるいは部分的に燃焼することによりガス化し、生成されたガスの有する熱エネルギーを発電に利用したり、燃料に変換したりする場合に、生成ガス中に含まれるタール分あるいは灰分を除去することが必要になる。その方法としては、一般に、燃料を酸素や水蒸気を利用してガス化し、その後段でさらに酸素を投入し、1000℃以上の高温ガス化することによってタールを分解する方法が採られる。具体的には、図4に示すように、投入されたごみを熱分解して可燃性ガスG100を排出するガス化炉100を有し、可燃性ガスG100を熱交換媒体を用いて間接的に冷却して可燃性ガスG400として排出するガス冷却装置400と、可燃性ガスG400に対してそれに含まれる有害物質を処理するための脱塩素剤および脱硫黄剤を供給用媒体ガスを用いて供給する処理剤供給装置500と、脱塩素剤および脱硫黄剤が供給された可燃性ガスG400からダストおよび有害物質と結合した脱塩素剤および脱硫黄剤を抽出すると共に、有害物質が除去された可燃性ガスG600を排出する集じん器600とを有するごみのガス化システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
こうしたガス化システムにおいては、ガス化後にセラミックフィルタなどのフィルタ式の集塵手段を設けることが多く、かかる場合にタールなどの未燃炭素成分や灰分によってフィルタの圧力損失の急激な上昇がみられる。特に、灰分の多い汚泥のような原料ではそれが顕著に表われる。
【0004】
従来、こうした圧力損失の上昇を抑制には、定期的に逆洗(ブローバック法あるいはバックフラッシュ法ということがある)を行う方法が多用されている。具体的には、図5に示すように、圧力容器21内には鏡板13,23,33で3段にセラミックフィルタ12−1,12−2,12−3を支持し、含塵ガス入口14より入口管17を通し、フィルタ12−1へ、又、分岐管19よりフィルタ12−2,12−3へガスを導き、各フィルタを通過し、粒子が除去され、クリーンガス出口15−1,15−2,15−3より排出される。捕集された粒子は灰取り出し管18−1,18−2を通り、灰取り出し管20より排出する。各系路には切り替え用バルブ51〜62が設けられ、各バルブの開閉を行い、バルブ53,59,61より逆洗用ガスを投入し、各段単独で逆洗ができ、更に、逆洗中には、他の逆洗してない段を運転することもできる(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−256680号公報
【特許文献2】特許第3364094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような方法では、相当量の逆洗用の圧縮流体を必要とすることから、専用の施設を設けるなどの負担増を招くことになる。
【0006】
また、ガス化システムのように、灰以外にタール分などの未燃炭素が起因して圧力損失が上昇する場合には、逆洗のみで圧力損失が上昇するのを抑えることは、非常に困難であった。
【0007】
さらに、複数のフィルタによる集塵方法の場合、逆洗のために洗浄ラインの切換えを必要とすることから装置の煩雑化を招くことになる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、比較的簡便な方法で、ガス化処理後の高温の集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することが可能なガス化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すガス化システムにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明は、ガス化システムであって、被燃焼物を導入する手段と、タール分解機能を有する試剤を供給する添加剤供給手段と、前記被燃焼物を加熱してガス化するガス化手段と、該ガス化手段の下流側に配置されてガス化手段から発生する生成ガスを除塵する集塵手段と、該集塵手段を逆洗する逆洗手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明者は、ガス化システムに用いられるフィルタ式集塵装置における圧力損失の上昇が付着物(パーマネントケーキ)の成長によるものであり、これを抑制するには、上記のように逆洗のみでは不十分な場合があり、フィルタ付着での塵埃の挙動を検証し、パーマネントケーキの成長阻止手段を案出した。つまり、パーマネントケーキの成長は、タール自体の付着成長によるものや独立的に存在する塵埃がタールの介在によって凝集して生じるのではなく、高温条件でなおタール性状を維持する高沸点物と塵埃とが混在して固化し結合体に近い状態を形成しているものと考えられ、タール分解機能を有する試剤を添加することによって固化を阻止しパーマネントケーキの成長を阻止できると推考し、後述するように実験的にも実証したものである。こうした破砕しやすい状態を形成した上で、逆洗することによって、フィルタ表面に付着した塵埃を効果的に除去することができることとなる。
【0012】
従って、被燃焼物中にタール分を含む場合あるいはガス化工程中にタール分を発生する場合などの長期的な使用においても、集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することが可能となり、効率的なガス化システムを提供することができる。特に、灰分を含む固形燃料や有機系廃棄物などの被燃焼物から燃焼ガスを有効に生成するあるいは使用することができるガス化システムにおいて有効である。また、多段集塵においては初段集塵での処理が好ましい。一般には初段の集塵手段の後段に、フィルタを通過したガス状タール分をガス化するためにガス化触媒を用いるが、本発明は実質的に係るガス化触媒の助触媒的機能を果たしているといえ、さらに効率的なガス化システムを構成することが可能となる。
【0013】
なお、タール分解機能を有する試剤とは、必ずしもタール分解を主たる機能とする触媒である必要はなく、他の機能とともに分解機能を有するものであれば十分である。詳細は後述する。また、ここでいうタールとは、特に断らない限りチャーやタールなどの未燃焼炭素類だけでなく、広くこれらと被燃焼物中の物質あるいはガス化に伴い発生する塵埃等種々の物質との結合体を含むものをいう。
【0014】
本発明は上記ガス化システムであって、前記ガス化手段から集塵手段までのガス温度を400〜900℃に制御することを特徴とする。
【0015】
ガス化システムにおいて被燃焼物を効率的にガス化するには、生成ガス中に含まれるガス状タール分を分解し、一酸化炭素(CO)や水素(H)に可燃性ガスに転換し、ガス化効率を上げることが好ましい一方、タールを含んだガスは、流路に低温部があれば局部的な凝縮や堆積を招くことから所定温度以上を確保し、集塵およびタールの分解を行う必要がある。また、タール分解は熱分解反応が基本であるとともに、上記添加剤がタール分解機能を有効に発揮するには、さらに所定温度以上であることが好ましい。従って、本発明の機能を有効に働かせるためには、ガス化手段(反応槽)から集塵手段までに存在する流路あるいは手段(例えば熱回収手段など)を所定の温度以上に維持する必要がある。一方、過度の高温状態は、システムを構成する各部材の劣化を招来し、工程中における温度の上下は、注入するエネルギーの上昇・ロスの発生を招くこととなる。また、実際の制御温度は、ガス化システムを構成する各手段の機能および処理手順によって異なるが、システム全体の最適なエネルギー効率が確保できる温度に設定することが好ましい。本発明ではこうした観点を考慮して温度制御の一貫性によって、効率的なガス化システムとすることを目指すもので、具体的には、温度範囲400〜900℃が有効であることを実証したもので、これによって、パーマネントケーキの成長を阻止し、集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することが可能となる。
【0016】
本発明は上記ガス化システムであって、前記添加剤が、アルカリ土類系化合物を含有することを特徴とする。
【0017】
上記のように、本発明はタール分解機能を有する試剤の添加および逆洗によって有効にパーマネントケーキの成長を阻止することができ、集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することが可能となる。本発明者は、タール分解機能を有する試剤として、ガス化システムの他の構成要素への悪影響がなく、入手が容易で回収可能な各種の試剤を検討した結果、後述するようにアルカリ土類系化合物の反応性が非常に高く、また再生可能であることから、簡便な方法により有効に集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することができる。また、被燃焼物のガス化工程は通常酸性状態を形成することから、アルカリ土類系化合物の投入は、ガス化システムから排出される排気、排水、あるいは塵埃などの中和にも有用であり、排出処理まで含むガス化システムの効率的な機能を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明は、タール分解機能を有する試剤の添加と逆洗との組み合わせという比較的簡便な方法で、効果的にガス化処理後の高温の集塵手段におけるパーマネントケーキの成長を阻止し圧力損失の上昇を抑制することが可能なガス化システムを提供することができる。併せて、後段でのタール分解の補助的機能を果たす意義を有する点においても優れている。また、特にアルカリ土類化合物を添加物とした場合には、高い機能性を有するとともに、ガス化システムからの排出物の処理にも一助することが可能となり、さらに有用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら被燃焼物の一例として有機系廃棄物を含む廃棄物を挙げて説明する。ここでいう有機系廃棄物とは、木屑や汚泥あるいは農業系などを含む広い概念で捉えた廃棄物をいう。
【0020】
図1は、本実施形態に係るガス化システムの概略全体構成を例示する。廃棄物を粉砕手段1、乾燥手段2、およびガス化手段3によってガス化し、生成したガスを熱回収手段4、集塵手段5、および精製手段6によって精製後、燃料ガスとして供給するものである。さらに、集塵手段5の後段で、再度タール分解触媒を用いて高精度のガス化を図る構成も可能である。
【0021】
廃棄物は粉砕手段1により所定の大きさに粉砕され、粉砕された廃棄物は所定量以下の水分となるように乾燥手段2により乾燥される。乾燥手段2は、特に限定されるものではなく、従前の各種乾燥装置を使用することができ、直接加熱によるもの、間接加熱によるもの、あるいはヒータを用いるもの、蒸気を用いるものなど、種々の乾燥装置を適用できる。
【0022】
乾燥された廃棄物は、ガス化手段の一種である循環流動層式ガス化手段3に投入され、部分燃焼により加熱、ガス化される。このとき、ガス化手段3には、ガス化剤と同時に添加剤供給手段Cから所定量の添加剤が供給される。
【0023】
ガス化手段は、部分酸化燃焼ガス化あるいは熱分解ガス化などの方法が適用され、バブリング式流動層炉や循環流動層炉だけでなく、各種の炉が用いられるが、多種多様な燃料に対応するには循環流動層式のガス化炉などが好適である。ガス化手段3は、炉内における流動媒体と燃料、ガス化剤および添加剤との混合性に優れ、炉内を比較的均一な温度分布状態にすることができる。ガス化手段3は、700〜900℃で稼動し、ガス化剤によって廃棄物中の有機物を部分燃焼させ、CO、Hあるいは炭化水素(HC)を含むガスを生成することができる。ガス化温度は、さらには800〜900℃がより好適である。
【0024】
また、ガス化剤としては、通常空気や水蒸気が用いられるが、空気の代わりに高濃度酸素(例えば、酸素富化空気)や水蒸気を用いることができる。
【0025】
添加剤の詳細は後述するが、供給量は被燃焼物の導入量の数%程度、より具体的には1〜10%程度が効果的である。
【0026】
生成されたガスは、直接、あるいは熱回収手段4によって冷却後、集塵手段5に導入され除塵される。この場合、生成ガス中の灰分、未燃成分は再度ガス化手段3内に戻すことも可能であり、ガス化手段3内を循環して十分な滞留時間を確保され、ガス化効率の向上に寄与されることになる。灰分は、集塵手段5下方から系外に排出される。
【0027】
熱回収手段4は、図1に示すようにガス化手段3と集塵手段5との中間位置に設ける場合だけではなく、集塵手段5の後段、あるいは精製手段6の後段のいずれにも設けることがある。熱回収手段4では、800〜900℃の高温ガス体が、熱交換器によって200〜400℃程度まで冷却される。回収された熱エネルギーは、本システムにおけるガス化手段や、系外のボイラや加熱炉などに送られて有効に利用される。熱交換器は、シェルアンドチューブ式やボイラ水管構造などが用いられる。
【0028】
集塵手段5としては、高温での使用に適した方法として、フィルタ式やサイクロン式が挙げられる。廃棄物のガス化システムにおいては、セラミックフィルタの使用が好適であり、その孔径としては、ガス中の飛灰、固形カーボン類を除去するため数10μm程度のものを使用できる。
【0029】
ここで、集塵手段5に対しては、逆洗手段Bによって定期的に逆洗を行うことが好ましい。上記の試剤の添加によって生じるタール分解機能によるパーマネントケーキの成長抑制効果と逆洗の凝集物の拡散・洗浄効果との相乗作用によって、フィルタでの圧力損失の上昇防止を有効に機能させることが可能となる。
【0030】
逆洗は、フィルタの濾過面に付着した物を、反対面からの流体のブローによって除去する方法で、特に粉塵などの細粒物に対して有効である。一般には、圧縮空気や気化窒素などの高圧の気体を用いることが多い。通常、数10〜数1000L/minの気体を一気に吹き掛けることで、瞬間的な物理的負荷を付着物に与えることができ、フィルタ表面からの着脱・落下による除去を行うことができる。
【0031】
また、添加剤としては、タール分解機能を有するものであれば、他の機能を主とするものでも十分である。各種のアルカリ金属系化合物あるいはアルカリ土類金属化合物が適しており、特にアルカリ土類金属系化合物が好ましい。非常に反応性が高く、また再生可能であるとともに、ガス化システムから排出される排気、排水、あるいは塵埃などの中和にも有用であるためである。
【0032】
具体的には、ナトリウム(Na)やカリウム(K)、あるいはカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などの炭酸化合物、水酸化物や硫酸化合物あるいは塩化化合物などが挙げられる。実用面では、ドロサイト(CaMg(CO)、消石灰(Ca(OH))石灰(Ca(CO)あるいはマグネサイト(MgCO)が有用である。こうしたアルカリ土類金属化合物は、上記の特性に加え、入手・取扱いの容易性などにも優れ、さらには、脱硫効果をも期待できる試剤であるためである。
【0033】
ここで、試剤を使用する時には焼成することが好ましい。焼成することによって、試剤中の不純物の排除や試剤中の分解機能成分の表面抽出、あるいは凹凸面の形成による表面積の拡大などを行うことができ、反応性あるいは触媒機能の活性化を図ることができるためである。また、添加剤の粒径は供給後の流路内あるいはフィルタ付着状態での粒子表面でのタール分解反応および物理的なフィルタ清掃機能の面から、50〜200μ程度が好適である。
【0034】
添加剤と逆洗の相乗効果を実証は、〔実施例〕に示すとおりであるが、こうした実験および本発明者の知見を基に検証した結果、次のことを推考することができる。
【0035】
(1)圧力損失の上昇はガス化プロセス特有の現象であり、その原因がガス化によって発生するタールによるものと考えられる。
【0036】
(2)具体的には、タール自体がフィルタ表面に付着しパーマネントケーキに成長する場合、タールがフィルタ表面に付着し塵埃などがそのタールを介して固化しパーマネントケーキに成長する場合、あるいは両者が同時に起こりパーマネントケーキに成長する場合などが考えられる。
【0037】
(3)試剤添加の効果は、1つには添加剤の触媒作用によるタールを改質あるいは分解する作用が考えられる。つまり、パーマネントケーキの大きな要因であるタールを低減することによって、フィルタ表面での付着物の発生を抑制することができるものであり、添加剤自身がフィルタ表面に付着した状態で反応する場合だけでなく、ガス化炉あるいはそれ以降の流路において反応することによっても効果を得ることができると考えられる。従って、試剤の供給位置は、図1での集塵手段5の前段であれば、被燃焼物と混合することも有効でありガス化手段3に供給することも可能であると考えられる。
【0038】
(4)しかしながら、<比較例1>に示すように、流動媒体として添加剤と同じ試剤を用い添加剤を供給しない場合には、圧力損失の上昇を抑制することができない。つまり、フィルタ表面におけるパーマネントケーキの形成・成長を抑制するためには、フィルタ表層部での試剤の触媒機能が大きな役割を果たしていることが考えられる。従って、フィルタ表層部に添加剤が付着するように供給することによって、フィルタ表面におけるパーマネントケーキの形成に関与するタールを分解・改質する作用を有効に働かせることができる。つまり、ガス化システムによって条件は異なるが、試剤の供給は、タール分と十分攪拌され、試剤温度がフィルタ表面到達までに十分に上昇し、かつ均一にフィルタ表層部に付着する位置であれば、集塵手段5に近いほどよいといえる。
【0039】
(5)ここで、フィルタ表層部に付着した添加剤が有する、付着灰の払い落としあるいはタールの吸着による効果も考えられるが、<比較例2>に示すように同様の効果を有すると期待された珪砂では十分な効果が得られていないことを考慮すると、本発明に寄与する割合は上記の反応効果との対比では比較的小さいと考えられる。
【0040】
(6)固化した付着物に対する逆洗の効果は、単なる付着物に対する効果と比較にならないほど差があることがよく知られている。つまり、タールの存在下で付着・固化するパーマネントケーキを除去ことは非常に困難であり、本発明においても、固化しない状態で逆洗を行うことが必要となる。従って、試剤を添加し付着物の固化・成長を抑制することによって、フィルタ表面おけるタールおよび塵埃等を単なる付着に近い状態を作り出すことが可能となり、逆洗によってフィルタ表面からの付着物の除去を行うことができると考えられる。
【0041】
(7)上記の効果は、添加剤のみでも困難であり、また逆洗のみでも困難である。つまり、添加剤と逆洗が相乗して初めて得られる効果であり、パーマネントケーキの形成・成長を抑制し付着物を有効に除去することができる。その結果、集塵用フィルタの圧力損失の上昇を防止することができると考えられる。
【0042】
具体的には、図2(A)に示すようなフィルタ7の表面での塵埃、タールを含むパーマネントケーキの状態が考えられる。つまり、まず、図2(B)のように、脱塵(フィルタ)作用によってフィルタ7の濾過面7aの付着した塵埃等が凝集し、パーマネントケーキ8が形成される。次に、図2(C)のように、内面7bからの逆洗によって除塵される。このとき、添加剤によってタールが分解あるいは改質されるためにパーマネントケーキ8の固化・成長することがないことから、効果的に除塵される。従って、図2(D)に示すように、フィルタ7の濾過面7aと内面7bの間の差圧ΔPの上昇を抑制することができる。
【0043】
以上のように、集塵用フィルタの圧力損失の上昇を有効に防止することができることは、波及的に圧力あるいは流量を低下した条件で従来と同様の効果を有する逆洗を行うことが可能となり、逆洗方法を簡易あるいは少ない負荷とすることができる。また、逆洗時の差圧変動が少ないことから、システム全体の圧力変動を軽減し、安定性の高いガス化システムを構成することができる。さらに、集塵手段5の後段にタール分解触媒による処理手段が設けられている場合には、集塵手段5の段階で灰分等を除去し、高沸点物によるパーマネントケーキの成長を抑制することで、タール分解触媒の被毒(灰付着による活性劣化など)を防止し、該触媒の長寿命化を図ることができる。
【0044】
ここで、ガス化手段3から集塵手段5までのガス温度は、次の理由から400〜900℃に制御することが好ましい。
【0045】
(1)本プロセスの各機能を有効に働かせるためには、ガス化手段3(反応槽)から集塵手段5までに存在する流路あるいは手段(例えば熱回収手段4など)を所定の温度以上に維持する必要がある。
【0046】
(2)タールの分解・改質反応は加熱反応が基本であることから、本発明における添加剤によるタール分解機能を有効に発揮するには、所定温度以上であることが好ましい。
【0047】
(3)タールを含んだガスは流路に低温部があれば局部的な凝縮や堆積を招くことから、所定温度以上であることが好ましい。
【0048】
(4)一方、過度の高温状態は、システムを構成する各部材の劣化を招来し、工程中における温度の上下は、注入するエネルギーの上昇・ロスの発生を招くこととなる。
【0049】
(5)システム全体の最適なエネルギー効率を確保するには、工程中の制御温度の幅を小さくし、上下の変動を小さくすることが好ましい。
【0050】
実際の制御温度は、ガス化システムを構成する各手段の機能および処理手順によって異なるが、本発明では、以上のような観点を考慮し温度制御の一貫性によって、効率的なガス化システムとすることを目指すもので、具体的には、温度範囲400〜900℃が有効であることを実証したもので、これによって、パーマネントケーキの成長を阻止し、集塵手段における圧力損失の上昇を抑制することが可能となる。
【0051】
また、本発明の効果は、フィルタ式集塵手段のフィルタ表面に生成されるパーマネントケーキだけではなく、サイクロン式における内壁に生成されるパーマネントケーキ、あるいは方式を問わず逆洗の効果が及ぶ範囲に生成するものに対しても有効である。特に、サイクロン式においては、回転速度の比較的遅い内壁で生成されて徐々に成長したパーマネントケーキは、やがて回転流の乱れを誘導し、気体−固体分離機能を低下させることになることから、こうした成長を抑制することによって好循環的に分離機能を保持することが重要となる。
【0052】
なお、添加剤の条件によっては、400℃を超える方がタール分解機能の効率化を図ることができる場合があり、熱交換手段4による低温化を行わずに集塵手段5に導入し、後段に熱交換手段4を配した方が好ましいことがある。つまり、800〜900℃の高温条件でガス化した後、400〜900℃で集塵し、その後に熱回収して200〜400℃とすることによって、システム全体のエネルギー効率を高めることができる。
【0053】
除塵された生成ガスは、更に、精製手段6によって所定の精製処理を施すことで、非常にクリーンな燃焼ガスを生成することができる。精製処理は、低温下で析出する物質の除去のため第2の集塵手段(図示せず)により除塵され、その後、湿式ガス精製法により、脱塩素処理、脱硫黄処理、脱アンモニア処理あるいは中和処理などが施され、クリーンな生成ガスとして精製することができる。第2の集塵手段は、除塵精度の面からはバグフィルタ等を用いることが好ましい。
【0054】
また、集塵手段5の後段には、流動層を構成するタール分解手段が設けられることがあるが(図示せず)、精製手段6までの管路中に直接触媒を供給して高温流路中で、生成ガス中のタール分を分解しCO、HあるいはHCに変換されることも可能である。高温集塵手段5を通り抜けたタール分を分解・除去することで、後段の精製手段6などでのタール分による内壁の膜層の形成や局部的な閉塞を防止することができるとともに、タール分をガス化することによりガス化効率の向上を図ることが可能となる。分解触媒は、特に限定するものではないが、上記700〜900℃の範囲で活性度が高いNi系やアルカリ土類系などの触媒を使用することが可能である。
【0055】
このように、本発明は、有効に廃棄物などの被燃焼物のガス化を図るとともに、その工程中に発生するタール・灰分などによる集塵手段での圧力損失の上昇を効率的に防止することを目的としたもので、灰分の多い固形燃料や有機系廃棄物などの被燃焼物から燃焼ガスを生成するガス化システムにおいて、特に有効である。
【0056】
なお、上記の各構成手段の種類あるいは配列順などについては、被燃焼物の種類や使用条件によって、任意に変更することが可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0057】
以下、具体的実施例により本発明をさらに説明する。なお、本発明がかかる実施例等に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0058】
<実施例1>
ガス化装置としてドロマイトを流動媒体とする循環流動層式(処理能力3t/day:脱水汚泥ベース)を用い、被燃焼物として汚泥を導入し、添加剤として粒径50〜200μmの焼成ドロマイトを重量比5%供給した。800℃に調整されたセラミックフィルタの集塵手段において、定期的(15回/hr)に逆洗を行ったときの、フィルタ前後の圧力を測定し、圧力損失の変化を追跡した。図3(A)に示すように、圧力損失の変化が殆ど生じていないことが判り、本発明の有用性を顕している。
【0059】
<実施例2>
添加剤を焼成ドロマイトから同量の消石灰に変更し、他は同様の条件とした場合の圧力損失の変化を追跡した。図3(A)と同様の結果が得られ、消石灰についても、本発明の有用性を顕した。
【0060】
<比較例1>
添加剤を投入せずに、他は同様の条件で、逆洗のみを行った場合の圧力損失の変化を追跡した。図3(B)に示すように、徐々に圧力損失が上昇していることが判る。
【0061】
<比較例2>
添加剤を焼成ドロマイトから同量の珪砂(平均粒径約35μm)に変更し、他は同様の条件とした場合の圧力損失の変化を追跡した。図3(C)に示すように、徐々に圧力損失が上昇していることが判る。図3(B)に比較しても同程度の圧力損失の上昇がみられた。
【0062】
<参考例>
循環流動層式ガス化炉に代えて流動層式燃焼炉を用い、被燃焼物(汚泥)を完全に燃焼させたときの圧力損失の変化を追跡した。ここでは、ガス量が上記と同じになるように負荷を調整し、また、高温集塵手段入口でのガス中に含まれる灰分をガス化時と同量にすべく灰分の循環使用を行った。図3(D)に示すように、圧力損失の上昇がみられず安定している。つまり、比較例1および2における圧力損失の上昇が、ガス化に伴うチャーあるいはタールなどの発生が要因と推考することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明の実施態様を、被燃焼物の一例として有機系廃棄物を含む廃棄物を挙げて説明したが、本発明を適用することが可能な被燃焼物は、これに限定されるものではなく、各種固形燃料、産業廃棄物などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係るガス化システムまたはガス化方法の説明図
【図2】本発明の実施形態に係るフィルタ表層面での除塵状態の説明図
【図3】添加剤投入の有無によるフィルタ圧力損失の変化の相違を示す説明図
【図4】従来技術に係るガス化システムの説明図
【図5】従来技術に係る逆洗機能を有するフィルタの説明図
【符号の説明】
【0065】
3 ガス化手段
4 熱回収手段
5 集塵手段
6 精製手段
7 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被燃焼物を導入する手段と、タール分解機能を有する試剤を供給する添加剤供給手段と、前記被燃焼物を加熱してガス化するガス化手段と、該ガス化手段の下流側に配置されてガス化手段から発生する生成ガスを除塵する集塵手段と、該集塵手段を逆洗する逆洗手段と、を備えることを特徴とするガス化システム。
【請求項2】
前記ガス化手段から集塵手段までのガス温度を400〜900℃に制御することを特徴とする請求項1記載のガス化システム。
【請求項3】
前記添加剤が、アルカリ土類系化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス化システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−241229(P2006−241229A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55995(P2005−55995)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】