説明

ガス化炉の発生ガスのダスト濃度測定装置、燃焼制御装置及び排ガス処理制御装置を備えたガス化炉設備

【課題】ガス化炉の発生ガスのチャー濃度の変化をレーザの受光強度の低下率の変化でチャーの急激な変化を捉えて、ガス化炉設備の燃焼処理系及び排ガス処理系を制御する。
【解決手段】チャーの急激な変化を捉える指標として、燃焼室3の前段においてレーザ分析計2によりガス化炉の発生ガスにレーザを照射し、受光したレーザの受光強度の低下率をチャー濃度として変換し指標とし、チャー濃度に相応して燃焼室3の吹込む燃焼空気流量を連続的に変化させ、また、チャー濃度の変化率に相応して、排ガス脱HCl制御及び脱SOx制御により薬剤吹込装置19で吹込む薬剤量を連続的に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物、産業廃棄物等の廃棄物をガス化炉で処理する際のガス化炉からの発生ガスのダスト濃度測定装置、このダスト濃度測定装置を使用した燃焼制御装置及び排ガス処理制御装置を備えたガス化炉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス化炉からの発生ガスには可燃性ダスト(チャー)および可燃ガスを含み、その発生ガスは、ガス化炉の後流に配置された燃焼室へ送って燃焼空気により完全燃焼させている。燃焼により発生した燃焼排ガスはボイラに送られて熱回収され、減温塔で排ガス温度をろ過式集じん器の適正温度まで減温される。ろ過式集じん器に導入される排ガス中には公害成分である塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)が含まれているので、これらの公害成分を除去するために、排ガス中へ消石灰等の反応助剤を吹き込み、ろ過式集じん器で集じんし、排出される排ガスは誘引送風機を通って煙突から放出される。
【0003】
燃焼室では、可燃性ガスおよびチャーを完全燃焼させるのに必要な量の燃焼空気を吹き込む必要があるが、通常、ガス化炉より排出される可燃性ガスおよびチャーの量は一定しておらず時々刻々と変化することから、これらの変化に応じて燃焼空気量を制御する必要がある。とくに、チャーの発生量はガス化炉の炉況により急変することがあることから、燃焼室はこのガス化炉の炉況変化に伴うチャーの急変にも対応できるようにしておく必要がある。
【0004】
また、廃棄物ガス化溶融システムにおける、バグフィルタ式排ガス処理設備は、ガス化炉の状況変化に伴うチャーの急変が排ガス中のHCl及びSOx濃度に影響を及ぼすため、このチャーの急変に対応しておく必要がある。
【0005】
このようなチャーの急変にも対応できる燃焼室の燃焼制御方法として、特許文献1には、燃焼室内の温度を光によって検出する放射温度計を設け、この放射温度計の温度検出センサ出力の変化率を変化率演算器で演算し、前記変化量の絶対値に相応して燃焼室に吹き込む燃焼空気の流量を連続的に変化させることが記載されている。すなわち、この特許文献1の方法は、燃焼炉内の温度変化を光として検出し、その変化量の瞬時値を用いて燃焼空気量を変化させることにより、チャーの急変に対する追従性を向上させようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−147472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1記載の燃焼制御では、チャーの急激な変化を捉える指標としては燃焼室内の放射温度計の温度変化量のみであり且つ放射温度計の温度検出センサ出力はあくまで燃焼室の温度変化を捉えたものであり、その対応は燃焼室の温度に変化が生じてからの対応となるので、可燃性ダストの急変に対する追従性は十分とはいえない。すなわち、燃焼室での可燃性ダストの滞留時間は通常数秒という短時間であるので、可燃性ダストが急増した場合に、その可燃性ダストの燃焼によって燃焼室の温度が上昇してから燃焼空気量を増加させても、数秒という短時間で急増した可燃性ダストを完全燃焼させることは困難な場合がある。
【0008】
また、チャーの急激な変化は排ガス中のHCl及びSOx濃度に影響を及ぼすが、下流の排ガスの脱HCl制御及び脱SOx制御で薬剤の吹込を連続的に変化させるのに、チャーの急激な変化に対する制御は適用されていないので、追従性が十分とはいえない。
【0009】
ガス化炉からの発生ガス中のチャー濃度は、溶融炉の状況により急変することがあるため、チャー濃度を高速に応答でかつ直接測定することができれば、そのチャーの急激な変化をとらえて、燃焼制御及び排ガス処理制御の追随性が大きく改善されることが分かっていたが、今までガス化炉からの発生ガス中のチャー濃度を高速応答でかつ直接測定することができる測定方法はなかった。
【0010】
従来のダストを自動測定する代表的な測定方式としては、光透過式、光散乱式、接触帯電式、β線吸収式があるが、溶融炉の発生ガス中のチャー濃度測定は、ダスト量が多く(200g/m)、ガス温度が高く(800℃)、閉塞成分であるタールが多いという条件に耐える測定方式が要求され、かつそのチャーの急激な変化を燃焼制御及び排ガス処理制御に適用するためには、2秒以下の高速応答で測定することが可能な測定方式がなかった。
【0011】
そこで、本発明は、ガス化炉の発生ガスのチャー濃度の変化を、レーザを発生ガスに直接照射して受光して得られるレーザ受光強度の低下率により求めてチャーの急激な変化を高速応答で捉えことが可能となった測定装置、このチャーの急激な変化に対応することにより燃焼処理系の燃焼空気制御装置、あるいは排ガス処理系の薬剤吹込の追随性が大きく改善できる排ガス処理制御装置を備えたガス化炉設備提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、チャーの急激な変化を捉える指標として、燃焼室の前段のガス化炉発生ガスにレーザを照射し、受光したレーザの受光強度の低下率をチャー濃度として変換し指標とし、チャー濃度に相応して燃焼室へ吹き込む燃焼空気流量を連続的に変化させ、また、チャー濃度の変化率に相応して、排ガスの脱HCl制御及び脱SOx制御における吹込む薬剤量を連続的に変化させるものである。
【0013】
請求項1の発明は、ガス化炉の発生ガスを燃焼室に導入して燃焼空気により燃焼させ、燃焼後の排ガスに薬剤を吹き込んでHClおよびSOxを除去するガス化炉設備において、発生ガスの流路にレーザ光の照射ノズルと受光のズルが対向して設けられ、両ノズル端はレーザ光を通過するガラス製の板で外気と遮断され、両ノズル内は不活性ガスを間欠的に噴射してパージするパージ装置を備え、一端の照射ノズルの外側にレーザ発光器を設けてガラス板を透過してレーザ光を照射し、他端の受光ノズルの外側に照射されたレーザ光がガラス板を進入するレーザ光を受光する受光器が設けられ、受光したレーザ光の受光強度の低下率で発生ガス中のダスト濃度を演算する演算手段を有する発生ガスのダスト濃度測定装置を備えたことを特徴とするガス化炉設備である。
【0014】
請求項2の発明は、レーザの波長帯が、発生ガス中のO、COあるいはCOの吸収波長帯であることを特徴とする請求項1記載のガス化炉設備である。ガス化炉の発生ガス成分のO、CO、COに対して、赤外線半導体レーザの吸収波長帯を使用したレーザ分析計を設置することで、発生ガス中のOCO、CO濃度と同時にレーザ受光強度の低下率よりチャー濃度の指標を得る。
【0015】
また、レーザ製品の安全基準によるクラス1、2とパワーを上げることによりガス化炉の発生ガスのダスト濃度測定に適合できるようになる。
【0016】
また、発生ガスのダストによる光散乱の影響を抑えるため、発生ガスのレーザ光路長は、500mm以下にすることにより、レーザが透過しやすいようにした発生ガスのダスト濃度装置である。
【0017】
請求項3の発明は、前記ダスト濃度測定装置により測定したレーザ受光強度低下率からチャー濃度に変換し、燃焼室に吹き込む燃焼空気量の変化量を演算するレーザ受光強度低下率制御演算手段と、前記変化量を燃焼室内の放射温度計の温度測定から求めた現在の燃焼空気量に加算して燃焼室に吹き込むべき燃焼空気量を求め、燃焼空気送風機の流量調節弁の開度を調節する加算器を有する燃焼空気制御装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス化炉設備である。
【0018】
請求項4の発明は、前記ダスト濃度測定装置により測定した測定したレーザ受光強度低下率からチャー濃度、チャー濃度変化率で燃焼後の排ガスに吹き込む薬剤の変化量を演算するレーザ受光強度低下率制御演算手段と、前記変化量を現在の薬剤吹込量に加算して薬剤吹込装置から吹き込むべき薬剤吹込量を調整する加算器を有する消石灰の吹込量制御装置を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のガス化炉設備である。ガス化炉の発生ガスのダスト濃度測定装置で計測したダスト濃度の変化量に応じて、廃棄物ガス化溶融システムにおけるバグフィルタ式排ガス処理設備のバグフィルタ(ろ過式集じん器)入口煙道にHCl及びSOxのバグフィルタ(ろ過式集じん器)での除去のために吹き込まれる消石灰の吹込量を増減させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、チャー濃度を直接測定することが可能となり且つ高速応答(数秒)で検出できることにより、ガス化炉の炉況急変に対して、燃焼室の燃焼制御、排ガス処理系の排ガス処理制御(脱HCl制御,脱SOx制御)の先行制御要素に有効に適用できるようになる。
【0020】
燃焼室の燃焼制御では、図3に示すように、従来の放射温度計よりも前段の指標により制御するので、チャーの急激な燃焼に対応する燃焼空気流量の制御応答を改善できる。チャーの急激な変化に対しての燃焼空気流量の制御応答を改善することにより、例えば処理量を大幅にアップする溶融炉や組成成分の異なる廃棄物を処理する溶融炉においてチャーの急激な変化が大きくなると推測される場合でも、本制御が適用できる。
【0021】
また、チャーの急激な変化は、排ガス中のHCl及びSOx濃度に影響を及ぼすので、図4に示すようにチャー濃度の変化率を指標にして制御応答を改善することにより、薬剤吹込み制御の制御応答を改善でき、薬剤の過剰吹込み改善、排ガス公害成分(HCl、SOx)の抑制改善が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用したガス化炉設備の構成図である。
【図2】レーザ受光強度低下率制御演算の説明図である。
【図3】燃焼系における従来例と本発明の制御応答性を示すグラフである。
【図4】排ガス処理系における従来例と本発明の制御応答性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1の構成図に示すガス化炉設備では、シャフト炉式のガス化炉1で廃棄物を熱分解、燃焼及び溶融し、これによって発生したチャーを含有する可燃性ガスは、燃焼室3で燃焼空気により燃焼させている。燃焼空気は燃焼空気送風機4によって燃焼室3に吹き込まれる。
【0024】
燃焼室3で発生した高温の排ガスは、ボイラ5で熱交換された後、さらに減温塔6で所定の温度まで冷却される。その後、ろ過式集じん器7で除塵され、誘引通風機8を経て煙突9から放散される。
【0025】
このような設備構成において、本発明では、チャーの急変に対し、遅れることなく燃焼室3に適切な燃焼空気を供給するために、燃焼室の前段のガス化炉の発生ガスにレーザの受光強度の低下率を測定する赤外半導体レーザ2を使用したレーザ式分析計2を配置する。レーザ式分析計2のレーザの波長帯は、発生ガス中のO、COあるいはCOの吸収波長帯を使用し、その成分毎にレーザ式分析計2が配置される。
【0026】
レーザ式分析計2は、ガス化炉の発生ガスにレーザを照射し、受光したレーザの受光強度の低下率をチャー濃度として変換して指標とする。レーザ受光強度低下率制御演算手段10において、ガス化炉1のレーザ式分析計2からのセンサ出力に応じて、図2に示すように、レーザ受光強度低下率を測定し、チャー濃度を求め、チャー濃度の折線関数から燃焼室3に吹き込む燃焼空気量の変化量(加算量又は減算量)を演算し、この変化量を加算器13によって現在の燃焼空気量に加算し、燃焼室3に吹き込むべき燃焼空気量を求め、燃焼空気送風機の流量調節弁4aの開度を調節する。
【0027】
また、レーザ受光強度低下率制御演算手段10に加え、燃焼室3内の温度を光によって検出する放射温度計14のセンサ出力の変化率に応じて、燃焼室3に吹き込む燃焼空気量の変化量を演算する放射温度計制御演算手段15を設けている。これらのレーザ受光強度低下率制御演算手段10及び放射温度計制御演算手段15は、それぞれ入力されるセンサ出力が所定レベル以上になった場合に作動するが、実施例では切替器16を設け、レーザ受光強度低下率制御演算手段10および放射温度計制御演算手段15の両方が作動した場合は、レーザ受光強度低下率制御演算手段10からの信号を加算器13に送信するようにしている。
【0028】
ガス化炉1の炉況の変化により、チャーが急変する場合は、レーザ受光強度低下率を入力信号とするレーザ透過率制御演算手段10の方が先に作動し、その後、燃焼室3の温度に変化が現れて放射温度計制御演算手段15が作動する。レーザ受光強度低下率制御演算手段10が作動中に、放射温度計制御演算手段15が作動する条件を満たす場合は、レーザ受光強度低下率制御演算手段10に、レーザ受光強度低下率が加算される。
【0029】
このように、レーザ受光強度低下率制御演算手段10は、チャーの急変を、その影響が燃焼室3に現れる前の段階で捉えて、フィードフォワード的な制御により燃焼空気量を変化させるもので、これによって可燃性ダストの急変に対し、遅れることなく燃焼室3に適切な燃焼空気を供給することができる。
【0030】
また、チャーの急変は、燃焼室から排気される排ガス公害成分であるHCIおよびSOx濃度に影響を及ぼすので、図2に示すように、レーザ受光強度低下率制御演算手段10において、測定したレーザ受光強度低下率からチャー濃度を求め、チャー濃度変化率を演算し、折線関数から吹込む薬剤(消石灰)の変化量(加算量又は減算量)を演算し、この変化量を加算器18によって薬剤吹込装置19の薬剤の吹込量を連続的に変化させてHCl、SOxを抑制する。
【0031】
薬剤吹込量の設定は、折線関数で排ガス量に応じて増減させることをベースとし、煙突の排ガス濃度を見て、薬剤吹込量を補正することを基本制御としている。そこにより上流で検出したレーザ受光強度低下率から求めた薬剤加算量を加味して、HCl、SOxの濃度が上がることを事前にキャッチして、薬剤を増やしておく。ガス化炉1の炉況の変化により、チャーが急変する場合は、レーザ受光強度低下率を入力信号とするレーザ透過率制御演算手段10の方が先に作動し、その後、排ガス濃度変化が現れて排ガス濃度制御演算12が作動する。
【0032】
レーザ受光強度低下率制御演算手段10が作動中に、排ガス濃度制御演算12が作動する条件を満たす場合は、排ガス濃度制御演算12にレーザ受光強度低下率制御演算手段10が加算される。
【符号の説明】
【0033】
1 ガス化炉
2 レーザ式分析計
3 燃焼室
4 燃焼空気送風機
4a 流量調節弁
5 ボイラ
6 減温塔
7 ろ過式集じん器
8 誘引通風機
9 煙突
10 レーザ受光強度低下率制御演算手段
11 排ガス量制御演算手段
12 排ガス濃度制御演算手段
13 加算器
14 放射温度計
15 放射温度計制御演算手段
16、17 切替器
18 加算器
19 薬剤吹込装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化炉の発生ガスを燃焼室に導入して燃焼空気により燃焼させ、燃焼後の排ガスに薬剤を吹き込んで塩化水素および硫黄酸化物を除去するガス化炉設備において、
発生ガスの流路にレーザ光の照射ノズルと受光ノズルが対向して設けられ、両ノズル端はレーザ光を通過するガラス製の板で外気と遮断され、両ノズル内は不活性ガスを間欠的に噴射してパージするパージ装置を備え、一端の照射ノズルの外側にレーザ発光器を設けてガラス板を透過してレーザ光を照射し、他端の受光ノズルの外側に照射されたレーザ光がガラス板を進入するレーザ光を受光する受光器が設けられ、受光したレーザ光の受光強度の低下率で発生ガス中のダスト濃度を演算する演算手段を有する発生ガスのダスト濃度測定装置を備えたことを特徴とするガス化炉設備。
【請求項2】
レーザの波長帯が、発生ガス中のO、COあるいはCOの吸収波長帯であることを特徴とする請求項1記載のガス化炉設備。
【請求項3】
前記ダスト濃度測定装置により測定したレーザ光の受光強度低下率からチャー濃度で燃焼室に吹き込む燃焼空気量の変化量を演算するレーザ受光強度低下率制御演算手段と、前記変化量を燃焼室内の放射温度計の温度測定から求めた現在の燃焼空気量に加算して燃焼室に吹き込むべき燃焼空気量を求め、燃焼空気送風機の流量調節弁の開度を調節する加算器を有する燃焼空気制御装置を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス化炉設備。
【請求項4】
前記ダスト濃度測定装置により測定したレーザ光の受光強度低下率からチャー濃度、チャー濃度変化率で燃焼後の排ガスに吹き込む薬剤の変化量を演算するレーザ受光強度低下率制御演算手段と、前記変化量を現在の薬剤吹込量に加算して薬剤吹込装置から吹き込むべき薬剤吹込量を調整する加算器を有する消石灰の吹込量制御装置を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のガス化炉設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243084(P2010−243084A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93089(P2009−93089)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】